説明

フィルタエレメント

【課題】ケースのダスティ側空間内に水が侵入しても、クリーン側空間内に水が侵入するおそれを防止することができるフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】ケース11内においてエア通路17と交差した状態で、上下方向の面に沿って設置されるフィルタエレメント18において、下側の部分に非透水部18bを形成する。フィルタエレメント18全体を熱可塑性の不織布により構成し、下側の部分を熱圧着することにより非透水部18bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用エンジン等の吸気系に接続されるエアクリーナのフィルタエレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタエレメントとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、エアクリーナのケース内に、フィルタエレメントがエア通路と交差した状態で上下方向の面に沿うように設置されている。フィルタエレメントは不織布等の濾材により構成され、そのほぼ前面にわたって襞状の濾過部が形成されている。そして、エンジンの吸気系に吸引されるエアが、ケース内のダスティ側空間からフィルタエレメントの濾過部を通してクリーン側空間に導かれることにより、そのエアが濾過されて清浄化される。
【特許文献1】特開平6−7622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来構成では、前記のようにフィルタエレメントがケース内において上下方向の面に沿うように設置されている。このため、ケースのダスティ側空間内に雨水等の水が侵入した場合、フィルタエレメントの濾過部、特にその濾過部の下部側の部分が水を吸収して、クリーン側空間内に水が侵入し、その水がエンジンに吸引されてエンジンの動作に悪影響を及ぼすというおそれがあった。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ケースのダスティ側空間内に水が侵入した場合でも、クリーン側空間内に水が侵入するおそれを防止することができるフィルタエレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明は、ケース内においてエア通路と交差した状態で、上下方向の面に沿って設置されるフィルタエレメントにおいて、下側の部分に非透水部を形成したことを特徴としている。
【0006】
従って、この発明においては、ケースのダスティ側空間内に水が侵入しても、フィルタエレメントの下側部分に非透水部が設けられているため、水がフィルタエレメントを透過することなく、この非透水部により遮断される。よって、フィルタエレメントを介してクリーン側空間内に水が侵入することを抑制することができて、エンジンの動作に悪影響を及ぼすおそれを防止することができる。
【0007】
また、前記の構成において、フィルタエレメント全体を熱可塑性の不織布により構成し、下側の部分を熱圧着することにより前記非透水部を形成するとよい。このように構成した場合には、不織布によりフィルタエレメントの濾過部を形成する際に、熱圧着にて非透水部を一体に形成することができる。よって、フィルタエレメントの構造が簡単であるとともに、その製造を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、この発明によれば、フィルタエレメントを介してクリーン側空間内に水が侵入するおそれを防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した第1実施形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、エアクリーナのケース11は、一端面を開口した第1ケース部12と、その第1ケース部12と対応する端面を開口した第2ケース部13とから構成されている。両ケース部12,13は、それらの開口端部において複数のクランプ14により着脱可能に結合されている。第1ケース部12の下部には、大気に連通されるインレット15が形成されている。第2ケース部13の上部には、エンジンの吸気系に接続されるアウトレット16が形成されている。ケース11内において、インレット15とアウトレット16との間にはエア通路17が形成されている。
【0010】
図1に示すように、ケース11内においてエア通路17と交差した状態で上下方向の面に沿って設置されるように、両ケース部12,13の開口端部間にはフィルタエレメント18が着脱可能に取り付けられている。そして、このフィルタエレメント18によって、ケース11の内部がインレット15側のダスティ側空間S1と、アウトレット16側のクリーン側空間S2とに区画され、エンジン(図示しない)に吸入されるエアが濾過される。
【0011】
そこで、前記フィルタエレメント18の構成について詳細に説明する。図1〜図3に示すように、フィルタエレメント18は、熱可塑性樹脂の不織布により一体状に形成されている。フィルタエレメント18の上側部分には、通気性を有する厚肉襞状の濾過部18aが折り曲げ形成されている。フィルタエレメント18の下側部分には、不織布を熱圧着することによって、通気性及び通水性のほとんどない薄肉平板状の非透水部18bが形成されている。フィルタエレメント18の外周部分には、不織布を熱圧着することによって、通気性及び通水性のない薄板状の湾曲補強部18c及びシールリング取付部18dが形成されている。フィルタエレメント18のシールリング取付部18dには、別部品のシールリング19が取り付けられている。
【0012】
さて、このエアクリーナが車両用エンジンの吸気系に接続された状態で、エンジンが運転されると、エアがインレット15からケース11のダスティ側空間S1内に吸引される。そして、そのエアがダスティ側空間S1からフィルタエレメント18の濾過部18aを通してクリーン側空間S2に導かれ、その濾過部18aの濾過作用により清浄化される。そして、清浄化されたエアは、アウトレット16からケース11外に導出されて、エンジンの吸気系に供給される。
【0013】
このエアクリーナの使用時等において、インレット15からケース11のダスティ側空間S1内に雨水等の水が侵入し、場合によってはダスティ側空間S1の下部に溜まることがある。このような場合、フィルタエレメント18の下側部分を含む全周は、シールリング19を介して第1,第2ケース部12,13間に気密状に保持されている。しかも、フィルタエレメント18の下側部分に非透水部18bが設けられているため、ダスティ側空間S1内の水はフィルタエレメント18を透過することなく、遮断される。
【0014】
従って、この実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1) フィルタエレメント18を介してクリーン側空間S2内に水が侵入することを防止することができて、エンジンの動作に悪影響を及ぼすおそれを防止することができる。
【0015】
(2) エンジンの吸気音の一部が、フィルタエレメント18の非透水部18bによって遮断される。よって、インレット15からケース11外に漏れ出す吸気音を低減することができて、エンジン音の静粛化に寄与できる。
【0016】
(3) フィルタエレメント18全体が熱可塑性の不織布により構成され、そのフィルタエレメント18の下側部分を熱圧着することにより非透水部18bが形成されている。このため、不織布によりフィルタエレメント18の濾過部18aを熱圧成形する際に、非透水部18bを同時に形成することができる。よって、フィルタエレメント18の構造が簡単であるとともに、その製造を容易に行うことができる。
【0017】
ちなみに、例えば、第1ケース部12の下部の内側に上方に突出する壁部を一体に形成して、その壁部によって水をブロックすることも考えられる。しかし、このようにすると、第1ケース部12を成形するための型としてスライド型等が必要となり、型構造が複雑となる。
【0018】
(4) 非透水部18bがフィルタエレメント18の下部に一体形成されているため、クリーン側空間S2内への水の侵入を防止するための新たな部品が不要であり、構成が簡単である。
【0019】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第2実施形態においては、図4に示すように、フィルタエレメント18の外周縁を除いたほぼ全面にわたって襞状の濾過部18aが形成されている。そして、濾過部18aの下側部分に非透水性の撥水塗料等の防水塗料22を塗布または含浸させることにより、非透水部18bが形成されている。
【0020】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0021】
さて、この第3実施形態においては、図5に示すように、フィルタエレメント18が合成樹脂製の外枠24と、その外枠24内に固定された不織布よりなる濾材23とから構成されている。濾材23にはほぼ全面にわたって襞状の濾過部23aが折り曲げ形成されている。濾過部23aの下側に位置するように、外枠24の下部側には平板状の非透水部24aが一体に形成されている。外枠24の外周縁には、シールリング19を取り付けるためのシールリング取付部24bが形成されている。
【0022】
従って、この第3実施形態においては、前記第1実施形態の(1)〜(3)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0023】
・ フィルタエレメント18の下側部分に非透水性の樹脂を含浸させて硬化させることにより、非透水部18bを形成すること。
・ フィルタエレメント18の下側部分に非透水性のフィルムを貼付することにより、非透水部18bを形成すること。
【0024】
・ 不織布以外のフィルタエレメント、例えば紙製のフィルタエレメントにおいてこの発明を具体化すること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握され、請求項に記載の技術的思想以外の技術的思想について述べれば以下の通りである。
【0025】
(A) 下側の部分に非透水材を塗布または含浸させることにより前記非透水部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
(B) 合成樹脂製の外枠と、その外枠内に固定された不織布よりなる濾材とから構成され、濾材の下側に位置するように、外枠の下部側には平板状の非透水部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
【0026】
(C) 請求項1,請求項2,前記他の技術的思想(A)項,他の技術的思想(B)項のうちのいずれか1項に記載のフィルタエレメントをケース内においてインレットとアウトレットとの間におけるほぼ上下方向の面に沿って配置したことを特徴とするエアクリーナ。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態のフィルタエレメントを備えたエアクリーナを示す断面図。
【図2】図1のフィルタエレメントを示す斜視図。
【図3】図2の3−3線における要部拡大断面図。
【図4】第2実施形態のフィルタエレメントを示す斜視図。
【図5】第3実施形態のフィルタエレメントを示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
11…エアクリーナのケース、12…第1ケース部、13…第2ケース部、15…インレット、16…アウトレット、17…エア通路、18…フィルタエレメント、18a…濾過部、18b…非透水部、22…非透水性の塗料、23…濾材、23a…濾過部、24…外枠、24a…非透水部、24a…非透水部、S1…ダスティ側空間、S2…クリーン側空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内においてエア通路と交差した状態で、上下方向の面に沿って設置されるフィルタエレメントにおいて、
下側の部分に非透水部を形成したことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
全体が熱可塑性の不織布により構成され、下側の部分を熱圧着することにより前記非透水部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−287430(P2009−287430A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139457(P2008−139457)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】