フィルタエレメント
本発明に係るフィルタエレメントは、平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有する巻き取り型フィルタを備えている。上記巻き取り型フィルタには、上記平均流方向に略平行な軸を有し、平均流方向において上記巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体を更に設けられている。上記筐体は、径方向にガスを透過させない。上記巻き取り型フィルタは、繊維を含むフィルタ材により充填され、上記繊維の多くは、少なくとも部分的に軸を取り囲む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメント及びフィルタエレメントを製造する方法に関する。本発明は、特に、ディーゼル燃焼エンジン等のディーゼル燃焼装置のディーゼル排気ガスを濾過することに適するフィルタエレメント(ディーゼル酸化触媒の担体等)のように、排ガスを濾過してすすを取り除くことに適したフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
この分野では、金属繊維を含むフィルタ媒体が知られている。例えば、特許文献1には、ディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼルの煤を取り除く為の焼結金属繊維の多層構造型フィルタ媒体が開示されている。この媒体は、申し分なく機能するが、媒体が詰まるまでに限られた量しか煤を吸着することできないという欠点がある。その要因の一つとしては、低間隙率のフィルタエレメントを用いている点が挙げられる。結果として、電気的再生を用いた再生(つまり、媒体に電流を流し、ジュール効果によって媒体を発熱させるなど)やディーゼルガス又は排気ガスに触媒混合物を注入することによる再生を非常に頻繁に数多く行う必要がある。他の欠点としては、この媒体は効率に制限があり、当該媒体全体における圧力降下が大きく、むしろ費用がかかることである。
【0003】
ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置のディーゼル排気ガスを濾過することに適した、他の多数構造のフィルタ媒体が特許文献2にて述べられている。この媒体は、かなり大きな厚みによって、煤の吸着容量が増加している。この増加した煤の吸着容量に到達する為に、上記媒体は大量に必要であり、未焼結のフィルタ媒体、つまり未使用のフィルタ媒体であっても、フィルタ媒体全体における圧力降下が相対的に大きいという欠点がある。
【0004】
上記フィルタ媒体は、この分野で良く知られている空気集積又は湿式集積によって設けられる金属繊維の層を含む。上記繊維層は、繊維網としても知られている。上記繊維は、実質的に上記網表面に対して平行な平面内に延伸している。各平面において、上記繊維はランダムな方向を向いている。そのような繊維網を、上記網の必要な厚さとなるように複数積み重ねた後に、上記フィルタエレメントに一体化する場合もある。
【0005】
平均流路(つまり円筒型容積の軸)に沿って、隣接した連続的な複数の繊維網を含んでいる円筒型フィルタエレメントが設けられるとき、設けられる複数の繊維網は、適切な厚みを有することになる。上記繊維網中の繊維を結び付けるように、及び/又は密度(つまり、間隙率)を増加するように、上記繊維網は焼結されることもある。各繊維網から、例えばダイカットによって円形のディスクが切り取られる。上記ディスクは、正しい順序で積み重ねられ、円筒型の筐体に収められる。設けられるフィルタエレメントは、上記円筒型筐体の2つの外端に位置する吸気側及び排気側を有し、上記円筒型筐体の軸に略平行な流路を定める。上記繊維は、実質的に上記繊維網表面に対して平行な平面内に延伸しているので、フィルタエレメント中の上記繊維は、上記流路に対して略垂直方向を向いている。
【0006】
外側の繊維網、つまり上記フィルタエレメントの吸気側又は排気側の2つの繊維網が焼結しない場合、上記フィルタエレメントに供給されたガスとともに上記繊維が上記円筒型筐体の外へ流れ落ちないようにする為の手段を設けてもよい。そのような手段は、金属ワイヤーのメッシュ、穴の開いたプレート、又はシートであってもよい。
【0007】
切断操作又は穴あけ操作は、上記繊維網の整合性に影響を与えることがある。上記繊維網が焼結されないのであれば、穴あけされた繊維網及び切断された繊維網は、その整合性を失い、バラバラになることがある。その圧縮性の為に、穴あけ中、切断中、及び使用中に、高間隙率を長い間制御および維持することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/047720号
【特許文献2】国際公開第04/104386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、良質な濾過効果を有し、圧力降下が低減されているフィルタエレメント及びそのようなフィルタエレメントを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特にディーゼル燃焼エンジンの排ガスからディーゼル煤を濾過する為のフィルタエレメントを提供する。上記フィルタエレメントは、巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体であって、平均流方向を定める吸気側の側面及び排気側の側面を有し、上記平均流方向に対して略平行な軸を有し、吸気側に断面領域を有する筐体を備え、上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、上記フィルタ材の上記吸気側の断面領域は、上記筐体の断面領域よりも面積が大きい。上記筐体の上記断面領域に対する上記フィルタ材の上記吸気口表面領域の面積比は、2よりも大きいことが好ましい。
【0011】
上記目的は、本発明の一態様に係るフィルタエレメントであって、特にディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼル煤を取り除く為のフィルタエレメントによっても達成される。ここで、上記フィルタエレメントは、巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体であって、平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有し、上記平均流ー方向に対して略平行な軸を有する筐体を備え、上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、上記巻き取り型フィルタは、上記フィルタ材よりも空気透過率が高いインサート材であって、該インサート材の一部が上記平均流方向に突き出ているようなインサート材を備えている。本発明に係るフィルタエレメントは、繊維(とりわけ金属繊維)を有していてもよい。これらの繊維は互いに焼結されていないが、軸方向に変位することはない。焼結することは必要不可欠ではないので、上記フィルタエレメントは、よりコスト効率の良い方法により提供される。
【0012】
上記フィルタ材の包囲繊維、特に包囲金属繊維により、上記フィルタ材は、既知のフィルタエレメントに比べ、与えられた間隙率に対する増加した空気透過率を有する。上記フィルタエレメントが排気ガス(例えば、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置からの排気ガス)を濾過する場合、上記フィルタ媒体全体における低減された圧力降下によって、上記燃焼装置が受ける排気ガス中の反発圧力が小さくなる。それ故に、低減された圧力降下によって、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置の低燃費及び低操作コストという結果につながる。
【0013】
上記インサート材により、排気ガスを濾過する上記フィルタ材の外部表面が増大する。上記フィルタ材の増大した外部表面が目詰まりするまでの時間も増大する為、同一のフィルタ材であって、上記インサート材の無いフィルタ材と比べると、経時的な圧力降下が低減される。上記インサート材がフィルタ効果を奏することは必要不可欠ではない為、上記インサート材の空気透過率は、上記フィルタ材の空気透過率に比べて非常に高い。上記インサート材の圧力降下が非常に低く無視できるように、特に、上記インサート材は自由空間を提供するように設計され、好ましくは流体の流路のように形成される。上記インサート材は、流方向において、上記フィルタ材の全長を越えて延伸する訳ではないので、流体のどの部分も、濾過されずにフィルタエレメントを通過してしまうことはない。流入する流体の一部が上記フィルタエレメントの内部に速く向き付けられるように、少なくとも上記インサート材の一部は、吸入側から始まることが好ましい。
【0014】
上記フィルタ材は、上記インサート材よりも低い空気透過率を有するので、当該インサート材内部の圧力は、当該フィルタ材内部の圧力に比べ低い。上記インサート材内部の高圧力によって、上記流体が、当該インサート材の内部に簡単に流れ込み、続けて、軸方向だけでなく軸方向に対する垂直方向においても、上記フィルタ材を通過して流れるような効果をもたらす。排気ガスの煤は、搬送ガスに比べ高密度であるので、当該キャリアガスが上記フィルタエレメントの圧力降下の発生頻度を増加させることなく、径方向に表面を通過して尚流れるように、当該煤は上記インサート材の端部に堆積する。
【0015】
好ましい実施形態において、吸気側から始まる第一インサート材、及び排気側から始まる第二インサート材が、巻き取り型フィルタ内部において異なった直径にて提供される。特に、いくつかの第一インサート材、及び/又はいくつかの第二インサート材は、互い違いに提供される。上記フィルタエレメントの中軸から、径方向の筐体まで、上記第一インサート材及び上記第二インサート材は、代わる代わる配置される。これにより、上記フィルタ材は、軸方向の断面図において、ジグザグ状又はメアンダ状のデザインとなる。特に、流方向におけるフィルタ材の、一定の最小厚みが保たれるように、隣り合ったインサート材の距離は略一定である。特に、上記第二インサート材により圧力降下がかなり低減される。これは、濾過された流体の少なくとも一部が、第二インサート材に沿って上記フィルタエレメントを出て行くためである。
【0016】
他の実施形態において、上記インサート材は波型の金属シートにより提供される。ここで、上記金属シートは、特に開口部を有す。波型のシートにより、軸方向おいて複数の流路が提供される。ここで、各流路の一表面は上記フィルタ材により提供される。上記金属シートにおける開口部の場合、開口部の領域は、上記フィルタ材により提供された流路の表面を増大させる上記フィルタ材により閉じられている。開口部を有する上記金属シートは、流路を提供する為に十分な形状安定性を有するメッシュワイヤー又はその類のものでも構わない。上記シートの波型デザインは、断面におけるジグザグ状、U字状、又は上記フィルタ材内部において空間を提供する他のどのような形でも構わない。
【0017】
上記金属シートは、金属繊維網から、特に上記フィルタ材と同一の素材から作られることが好ましい。ここで、上記金属シートは、上記フィルタ材よりも高い形状安定性を有す。例えば、上記金属シートの繊維は、より大きな直径を有したり、より濃密に配列されたりする。上記インサート材の上記金属繊維網により、排気ガス中の上記搬送ガスが上記インサート材を通過し、煤粒子が上記フィルタ材だけでなく上記インサート材によっても吸着されるので、上記インサート材自身は、付加的なフィルタ効果を奏する。
【0018】
特に、上記インサート材は、筐体の軸を少なくとも部分的に取り囲む。ここで、上記インサート材の平均流方向の断面は、リング型又は部分的なリング型に形成される。断面におけるその(部分的な)リング状の形状に起因して、上記フィルタエレメントが上記フィルタ材及び上記インサート材を巻回するによって製造されている場合、上記インサート材は簡単に提供される。更に、上記フィルタエレメントのパーツがバラバラにならないので、特に円筒型巻き取り型フィルタ内部のインサート材の丸い形状は、強靭なデザインをもたらす。更に、チューブ状のインサート材を提供することも可能である。ここで、上記チューブには軸方向にスリットが入っている。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態に従って、巻き取り型フィルタ中のフィルタ材の繊維の内、少なくとも50%が、少なくとも部分的に上記軸を取り囲む。本発明の幾つかの実施形態に従って、巻き取り型フィルタ内のフィルタ材の繊維中、少なくとも85%が、少なくとも部分的に上記軸を取り囲む。
【0020】
「取り囲む(encircle)」という言葉は、「回行する(pass around)」という言葉として理解される。それ故に、「少なくとも部分的に軸を取り囲む繊維」とは、「少なくとも部分的に軸を回行する」という意味である。これは、平均流路に垂直である平面AA’上の平均流路方向に繊維を投影することにより、最も適切に理解される。
【0021】
平均流路に垂直である平面AA’上の平均流路方向に投影された繊維の投影線は、平面AA’上の軸の投影と中心を同じくする円又は円弧であることは必要不可欠ではない。平均流路に垂直である平面AA’上の平均流路方向に投影された最適なフィットライン、つまり、繊維の投影線に最もフィットするラインは、平面AA’上の軸の投影に向きつけられた凹状の側面を有す。
【0022】
繊維や金属繊維を有する上記フィルタ材は、70%〜99%の間隙率Pを有す。同一容積及び同一間隙率を有し、同一繊維から提供され、上記流路に垂直である平面に対して平行に向いている繊維を有するフィルタエレメントと比較すると、本発明の第一の態様に従って、上記フィルタエレメントの空気透過率の大きな増加が得られる。実に、60%以上の増加が得られる。与えられた繊維の特性(マントル表面、等価直径平均断面像などのような特性)や与えられたフィルタ媒体の、間隙率及びフィルタ材で充満された巻き取り型フィルタの高さのような特性に対する、上記のより高い空気透過率は、上記フィルタエレメントが排気ガス(例えば、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置からの排気ガス)を濾過する場合に、特に有利である。
【0023】
上記巻き取り型フィルタは、円形又は楕円形の断面を有する円錐形であっても良い。円筒形の巻き取り型フィルタに関しては、当該巻き取り型フィルタは、円形又は楕円形の断面を有する円筒形であっても良い。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態に従って、繊維の多くは、少なくともフィルタエレメントの軸方向に延伸する。実質的にフィルタ材の中にある繊維の少なくとも50%が、少なくとも上記フィルタエレメントの軸方向に延伸しても良い。実質的にフィルタ材の中にある繊維の少なくとも85%が、少なくとも上記フィルタエレメントの軸方向に延伸しても良い。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記繊維は、強化繊維構造、つまり平均流方向に対して実質的に平行な巻回軸の周りに巻回された繊維構造の一部であっても良い。上記強化繊維構造は繊維網であっても良い。上記繊維網は、エアーレイド網、ウェットレイド網、又はカード網のような、どの最適な繊維網生成プロセスによって得られた繊維網であっても良い。上記繊維網は、不織の繊維網又は針でパンチされた繊維網であることが好ましい。
【0026】
上記強化繊維構造は、少なくとも一つの繊維束を含んでも良い。また、上記強化繊維構造は、少なくとも一又は複数の同一な繊維束や一又は複数の相互に異なる繊維束を含んでも良い。ここで、相互に異なる繊維束とは、繊維の種類、繊維の相当直径若しくは繊維の素材のような繊維の特性、又は束の繊度のような繊維束の特性が異なるもののことをいう。上記繊維束は、ボール紙の薄片であってもよい。
【0027】
繊維網又は少なくとも一つの繊維束のような上記強化繊維構造であって、筐体の一端に平行な軸の周りに巻回され又は巻きつけられたり、上記筐体の一端自身の周りに巻回されたりする。上記強化繊維構造は、当該筐体が除去された場合、径方向に延伸する。これは、特に、上記筐体が径方向の内向力を上記フィルタ材の境界に働かせる場合である。上記内向力には、ガスが上記フィルタエレメントを通過して流れる場合に、上記フィルタ材が巻き取り型フィルタ内において、平均流方向にほとんど変位しない又は全く変位しないという効果がある。上記フィルタ材は、筐体及び/又はインサート材の内部に留め置かれている。上記フィルタ材はほとんど変位しない又は全く変位しないので、上記巻き取り型フィルタの吸気側側面又は排気側側面における上記繊維が焼結されていない場合であっても、上記繊維が上記円筒型筐体の外部へ移動することを抑制する手段は、必要不可欠ではない。
【0028】
上記フィルタ媒体の全ての層は、金属繊維を含んだり、金属繊維によって構成されたりすることがある。
【0029】
金属又は金属合金の何れの適切な種類もまた、金属繊維を提供するために用いられても良い。上記金属繊維は、例えばステンレスのような鉄から生成される。ステンレス合金は、AISI316L又はAISI347のようなAISI300シリーズ又はAISI400シリーズであることもあり、鉄、アルミニウム、クロム、及び、ステンレスを含む合金であることもある。ここで、上記ステンレスは、クロム、アルミニウム及び/又はニッケル、及び重量%においてイットリウム、セリウム、ランタン、ハフニウム、又はチタンが0.05%〜0.3%含まれている。銅や銅合金又はチタンやチタン合金も用いられることがある。
【0030】
金属繊維は、現在知られている何れの金属繊維生成方法を用いて生成されても良い。例えば、繊維束の引き上げ工程、JP3083144に述べられているコイル切削工程、ワイヤー切削工程(スチールウールのような)、又は、溶解された金属合金槽から金属繊維を提供する方法である。平均長を有する金属繊維を提供する為に、当該金属繊維は、WOO2/057035に述べられている方法、又は、US4664971に述べられているような金属繊維の粒状物を提供する方法を用いて切断されても良い。さもなければ、伸縮性が壊れてしまう。
【0031】
上記金属繊維の相当直径Dは、65μm以下のように100μm以下が好ましい。35μm、22μm、又は、17μmのように36μm以下であることがより好ましい。上記金属繊維の同一直径は、14μm、12μm、又は、11μmのように15μm以下であったり、8μmのように9μm以下であったりしても良い。上記金属繊維の同一直径Dは、7μm以下又は6μm以下であっても良い。また、1μm、1.5μm、2μm、3μm、3.5μm、又は、4μmのように5μm以下であっても良い。
【0032】
上記金属繊維は、循環型金属繊維又は単繊維としても知られている循環型繊維であっても良いし、0.1cmから5cmの間において変化する平均繊維長Lfiberを有しても良い。
【0033】
それ故に、上記繊維束は、金属繊維を削ったコイルの束であっても良い。また、上記繊維束は、繊維束の引き上げ工程によって得られた金属繊維束であっても良い。上記金属繊維からの引き上げ束は、EP280340に述べられている方法を用いて縮れた繊維であっても良い。
【0034】
上記繊維束は、200から10000又はそれ以上の数の繊維や単繊維のような複数の金属繊維を含んでも良い。
【0035】
金属繊維を含んでいる繊維網が用いられる場合、当該繊維網はエアーレイド方法又はウェットレイド方法によって提供されても良い。上記金属繊維網は、1mmから50mmの厚さ及び100g/m2から600g/m2の表面重量を有しても良い。
【0036】
上記フィルタ材は、更に、金属パウダー粒子のようなパウダー状のエレメント及び/又は触媒作用の要素を含んでも良い。
【0037】
上記巻き取り型フィルタの高さ、つまり、平均流路に沿った巻き取り型フィルタの長さは、本発明においては、制限を考慮していない。巻き取り型フィルタの高さは、例えば、典型的な5cmのように、3cmから20cmの間において変化しても良い。
【0038】
上記巻き取り型フィルタを満たしている上記フィルタ材は、70%〜99%の間隙率を有しても良い。上記フィルタ剤の上記間隙率は、上記巻き取り型フィルタの高さに沿って均一であっても良いし、上記巻き取り型フィルタの高さに沿って変化しても良い。上記間隙率は、吸気側側面から排気側側面へ徐々に又は段差のように変化しても良い。ここで、吸気側側面の間隙率は、排気側側面の間隙率よりも大きい。
【0039】
上記筐体の上記断面領域に対する上記フィルタ材の上記吸気口表面領域の比率は、2よりも大きいことが好ましい。上記平均流路に垂直な平面に従う上記巻き取り型フィルタの断面の表面領域は、(円筒型の巻き取り型フィルタの場合のように)上記巻き取り型フィルタの高さに沿って均一でも良いし、(円錐型の巻き取り型フィルタの場合のように)変化しても良い。上記平均流路に垂直な平面に従った断面の表面領域は、450mm2から13000mm2の間のように、又は12500mm2から96200mm2の間のように、例えば、450mm2から100000mm2の間において変化しても良い。
【0040】
金属繊維が用いられる場合、上記筐体は、当該金属繊維が提供される為に用いられた金属合金と類似又は同一の金属合金から提供される金属筐体であっても良い。
【0041】
好ましい実施形態において、上記フィルタ材は、軸方向に略円錐型の空洞部及び/又は軸方向に略円錐型の延長部を含んでいる。特に、上記円錐型の空洞は、吸気側側面において設置され、上記円錐型の延長部は、排気側側面において設置されても良い。上記円錐型の空洞部により、吸気側側面におけるフィルタエレメントの表面が増加する。吸気側側面における上記フィルタエレメントが目詰まりするのは遅くなるか、または、防止される。特に、上記円錐型の空洞部及び上記円錐型の延長部は、隣接したフィルタ材が軸上の表面と表面とが接触するように、略同一形状を成す。近隣のフィルタエレメントは、一フィルタ材の円錐型の延長部を、他のフィルタ材の円錐型の空洞部に挿入することで、より強く固着される。「円錐型の」という言葉は、「錐台のように形成される」又は「三角形の断面や部分的に円形又は部分的に楕円形の断面を有する錐台のように形成される」という意味もあると理解される。
【0042】
本発明の目的は、本発明の第二の態様に従って、フィルタエレメントを製造する方法により、更に達成される。
上記方法は、以下のステップを含む。
・繊維を含む、少なくとも先端を有する強化繊維構造を提供するステップ。
・上記強化繊維構造を上記先端に対して平行な巻回軸の周りに巻回させ、その結果、第一の直径を含むフィルタ材を提供するステップ。
・インサート材を軸方向においてごく部分的に上記フィルタ材上に提供するステップ、上記インサート材を上記巻回軸の周りに上記フィルタ材上に巻回させるステップ。
・更なる強化繊維構造を上記巻回軸の周りに巻回させ、その結果、第二の直径を含むフィルタ材を提供するステップ。
・フィルタ材で充満された巻き取り型フィルタを提供する為に、上記巻回軸に実質的に平行な方向において上記フィルタ材の外側境界と接している、ガスを透過させない筐体を提供するステップ。ここで、上記筐体は、上記巻き取り型フィルタへの平均流方向を規定する吸気側側面及び排気側側面を含んでおり、上記巻き取り型フィルタは、上記平均流方向に対して実質的に平行な軸を有している。
【0043】
そのようなフィルタエレメントが提供されると、特定の円筒型フィルタ材が規定される。上記フィルタ材は、本発明の第一の態様によれば、少なくとも50%又は少なくとも85%の複数の繊維が、少なくとも部分的に上記軸を取り囲むような繊維を含む。巻回することにより、上記フィルタ材の直径は、正確に調整される。更に、異なる層は隣接する外側の層により結合され、強靭なフィルタエレメントになる。インサート材を巻回する際に、フィルタ材が、当該インサート材が供給されない表面の周りに同時に巻回される。異なる素材が用いられても、軸方向における一定の直径は保たれる。
【0044】
特に、インサート材を巻回すること及び強化繊維構造を巻回することが続いて起こるステップが、一度以上、特に数度、提供される。第一インサート材は、吸気側側面から始まるように設置され、第二インサート材は、排気側側面から始まるように設置されることが好ましい。フィルタ材を巻回し、インサート材を巻回するという上記巻回するステップが数回繰り返されるので、排気ガス等を濾過する、大きく増加したフィルタ材表面を有する強靭なフィルタエレメントが提供される。ここで、必要な異なる製造ステップの数は少ない。第一インサート材及び第二インサート材は、互いに入れ替えて配置されるので、フィルタ材の軸方向における断面はメアンダ状となり、流入するガスに対する増加した表面及び低減された圧力降下をもたらす。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態に従って、ガスを透過させない筐体が提供される。これは、巻回軸に対して実質的に平行な方向におけるフィルタ材の外側境界を、ホイル又はプレートを用いて覆うことにより行われる。また、上記境界をホイル又はプレートを用いて覆うことは、(1)当該フィルタ材の周りに当該ホイル又は当該プレートを巻回することによって、また、(2)巻き取り型フィルタの軸方向において上記巻き取り型フィルタの外側境界に接している上記筐体を提供しつつ、径方向にガスを透過させないようにホイル又はプレートを密封することによって行われる。金属ホイル又は金属プレートのようなホイル又はプレートを、巻回されたフィルタ材の周りに巻回することにより提供される上記筐体は、当該フィルタ材に対し径方向内側に向けて(すなわち、巻回軸に向けて)向心力を及ぼす。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態に従って、巻き取り型フィルタは筐体を提供される。ここで上記筐体は、少なくとも2つのフィルタエレメントが提供されるように巻き取り型フィルタの軸に沿って少なくとも2つの部分に分割される巻き取り型フィルタの外側境界と接している。同一のフィルタ材及び同一の筐体を有する多数のフィルタエレメントが効果的に提供される。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記強化繊維構造は、自身の先端の周りに巻回される。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記強化繊維構造は、繊維網である。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記強化繊維構造には、少なくとも1つの繊維束が含まれる。
【0050】
平均流路に沿って与えられた位置における繊維量は、与えられた位置における網の繊維量を変化させたり、巻回された繊維網の層や繊維束の数、及び、巻きつけられた繊維網の層や繊維束の数を局所的に増やしたりすることにより、変化させることができる。特に、繊維束が巻回される為に用いられるとき、平均流路に沿って与えられた高さにおける繊維量、及び、上記フィルタエレメントのこの部分における間隙率は、容易に変化させることができる。
【0051】
上記繊維が金属繊維であっても良く、上記筐体が金属繊維を有するフィルタ材の周りに金属ホイル又は金属プレートを巻回することにより提供されても良い。
【0052】
本発明の第三の態様によれば、フィルタモジュールを製造する方法が提供される。上記方法は、以下のようなステップを含む。
・N個のフィルタエレメントを提供するステップ。ここで、上で述べられているように、本発明の第二の態様によれば、Nは2以上である。
・i番目のフィルタエレメントの吸気側側面と(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面とを結合するステップ。ここで、iは2からNの間において変化する。
【0053】
N個のフィルタエレメントの筐体は、同一の外周を有す。上記筐体が金属から提供される場合、筐体を互いに溶接したり、留め置いたりすることにより、フィルタエレメントの結合が行われる。
【0054】
フィルタエレメントが異なれば、フィルタ材は異なっても良い。上記フィルタ材は、同一の強化繊維構造又は異なる強化繊維構造を巻回することにより提供される。
【0055】
好ましい実施形態において、軸方向における略円錐型の空洞部及び/又は軸方向における略円錐型の延長部が、対応する形状の道具を用いて、上記フィルタエレメントに対して軸方向に圧力を印加することにより、上記フィルタエレメントに提供される。上記フィルタエレメントは、例えば留め置きなどのような保持手段により、自身の筐体によって保持される。上記フィルタエレメントを動かないようにした後で、円錐型の空洞部を提供するように円錐型の道具がフィルタ材にプレスされる。上記フィルタ材の軸方向における厚さが一定であり続けるように、印加圧力により、上記フィルタ材は圧力方向に部分的に動かされる。もしそうであれば、上記フィルタ材の規定された円錐型の延長部を保つ為に、反対側において対応する形状の道具が提供される。
【0056】
幾つかの実施形態に従って、N個のフィルタエレメントの少なくとも1つは触媒要素を含む。もしN個のフィルタエレメントの少なくとも2つが触媒要素を含むのであれば、1つのフィルタエレメントの触媒要素は、他のフィルタエレメントの触媒要素と異なる。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記方法は、第一フィルタエレメントの前面、又は、連続する2つのフィルタエレメントの間に、少なくとも1つのヒーターを提供するステップを含む。第一フィルタエレメントの前面、及び、連続するフィルタエレメントの幾つかのペアの間又は各ペアの間に、複数のヒーター(加熱部)が提供されても良い。ヒーターは電気的なヒーターである。
【0058】
上記ヒーターの制御は、連続するフィルタエレメントの前面、又は、連続するフィルタエレメントの間に位置づけられた温度センサー及び/又は圧力センサーに基づいて行われる。
【0059】
本発明の第四の態様によれば、フィルタモジュールが提供される。上記フィルタモジュールは、N個のフィルタエレメントを含む。ここで、Nは2以上であり、上記フィルタエレメントは、上述されているように、本発明の第一の態様に係るフィルタエレメントである。上記N個のフィルタエレメントは、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面を(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面に結合することにより、互いに結合している。ここで、iは2からNの間を変化する。
【0060】
本発明の実施形態に従って、少なくとも1つのフィルタエレメントは触媒要素を含む。
【0061】
本発明の実施形態に従って、上記フィルタモジュールは、第一フィルタエレメントの前面又は2つの連続したフィルタエレメントの間に位置づけられている、少なくとも1つのヒーター又はN個のヒーターを含む。
【0062】
本発明の特に好ましい側面は、付随の独立請求項及び従属請求項において述べられる。請求項において、明快なだけではなく適切に述べられるように、従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と結び付けられる。
【0063】
この分野の装置は、絶えず改善され、変化され、そして発展されているが、本発明の概念により、先行技術から出発し、効率的であり、安定した、信頼できるこの種の装置の提供に到達するという、実質的に新しく、優れた改善が示される。
【発明の効果】
【0064】
本発明を教示することで、改善されたディーゼル排気ガスフィルタシステムのデザイン、つまり、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置の排気ガスを濾過する為のデザインが可能になる。増加した空気透過率による、フィルタ媒体全体における低減された圧力降下によって、上記燃焼装置が受ける反発圧力が小さくなる。それ故に、この低減された圧力降下によって、本発明に従ったフィルタ媒体を有する排気フィルタが提供されるディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置の低燃費及び低操作コストという結果がもたらされる。低燃費であることにより、二酸化炭素の排出が少なくなり、温室効果ガスの排出が少なることにより、粒子性物質及びNOxに関する厳しいディーゼル放出規制が和らぐ。
【0065】
本発明における上記及び他の特性、特徴、及び利点は、本発明の原理を実例を挙げて図解している添付の図面と共に考慮すれば、以下の詳しい説明から明らかとなる。この詳細は、本発明の範囲を限定するものではなく、実例のためだけに与えられている。以下に引用される参照図面は、添付の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1a】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図1b】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図1c】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2a】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2b】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2c】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2d】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2e】増加した吸気口表面領域を有する、本発明に係るフィルタエレメントの実施形態を更に示している。
【図3a】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図3b】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図3c】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図4a】本発明の一態様に係るフィルタエレメント内に存在する繊維の投影図である。
【図4b】本発明の一態様に係るフィルタエレメント内に存在する繊維の投影図である。
【図5】本発明の一態様に係るフィルタモジュールを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図6】本発明の一態様に係るフィルタモジュールの概要を示している。
【図7】本発明の一態様に係るフィルタエレメントの径方向における断面図の概要を示している。
【図8】図7に係る上記フィルタエレメントの軸方向における断面図の概要を示している。
【0067】
夫々の図面において、同一の符号は、同一又は類似の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、特定の実施形態に関して述べられ、幾つかの図面を参考にして述べられているが、本発明は、この実施形態や図面に限って限定される訳ではなく、請求項によってのみ限定される。上記図面は、概要が書かれているだけであり、限定されるものではない。上記図面において、エレメントの幾つかの大きさは、図示する為に誇張されており、必ずしも本来のスケールで書かれている訳ではない。ここでの寸法及び相対寸法は、本発明の現実の実施化に対応している訳ではない。
【0069】
更に、本明細書中及び請求項中の「第一の」、「第二の」、及び、「第三の」等の用語は、同様のエレメントを区別する為に用いられているものであり、時間的、空間的、等級上、又は他の方法における順序を示す為に用いられている訳ではない。使用される用語は、適切な環境下においては交換可能であると理解されるべきである。また、本明細書において述べられている本発明の実施形態は、本明細書において述べられ図解された順序以外においても実施可能であると理解されるべきである。
【0070】
加えて、本明細書中及び請求項中の「上」、「下」、「上に」、及び、「下に」等の用語は、便宜的に用いられているものであり、必ずしも相対的な位置を述べる為に用いられている訳ではない。使用されている用語は、適切な環境下においては交換可能であると理解されるべきである。また、本明細書において述べられている本発明の実施形態は、本明細書において述べられ図解された方向づけ以外においても実施可能である。
【0071】
請求項で用いられている「含んでいる(備えている)」という言葉を、その後に記載されている手段に制限するものと解釈すべきでない。「含んでいる(備えている)」という用語は、他のエレメント又は他のステップを除外しない。したがって、「含んでいる(備えている)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、又は、構成要素の存在を、ありのままに特定するが、一又は複数の特徴、整数、ステップや構成要素、又は、これらのグループの存在又は追加を排除するものではない。この為、「手段A及びBを備えている装置」という表現の範囲を、構成要素A及び構成要素Bのみで構成される装置に限定すべきでない。本発明に関しては、「手段A及びBを備えている装置」という表現は、装置の構成要素であって、関連する構成要素がA及びBであるという意味である。
【0072】
同様に、請求項で用いられている「接続されている」という用語を、直接的な接続にのみ制限するように解釈すべきでない。「接続されている」及び「連結されている」という用語は、夫々の派生語と共に用いられてもよい。これらの用語は、互いに同義語である訳ではないことを考慮すべきである。それ故に、「装置Bに接続されている装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接接続されている装置又はシステムに制限されるべきではない。「装置Bに接続されている装置A」という表現は、装置Aの出力と装置Bの入力との間にパスが存在するという意味である。ここで、上記パスは他の装置又は他の手段を含んでも良い。「接続されている」という用語は、2つ又はそれ以上のエレメントが、物理的に又は電気的に直接の接触を有すること、又は、2つ又はそれ以上のエレメントが、互いに直接的に接触していないが、互いに協調して動作していること又は相互作用していることを意味することがある。
【0073】
本明細書を通して、「一実施形態」又は「1つの実施形態」という言及は、当該実施形態に関して述べられた特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。それ故に、本明細書中の様々な箇所において見られる、「一実施形態において」又は「1つの実施形態において」という表現については、すべてが必ずしも同一の実施形態について言及するものではないが、全てが同一の実施形態について言及するものであっても良い。更に、上記特定の特徴、構造、又は特性は、一又は複数の実施形態において、任意の適した方法を用いて組み合わされても良い。上記方法は、本発明の開示により通常の一当業者にとっては明白な方法である。
【0074】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、単一の実施形態、図面、又は説明にまとめられていることがある。これは、効率良く開示する為、及び、様々な発明の態様の一又は複数を理解する手助けになる為である。しかしながら、この開示方法は、各請求項に記載された発明が各請求項において明白に列挙された特徴よりも多くの特徴を必要とする、という意味を示していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が示すように、発明の態様は、先に開示された単一の実施形態の全特徴にある訳ではない。それ故に、詳細な説明に付随する請求項は、その詳細な説明の中に取り込まれ、各請求項は、本発明における個々の実施形態として独立している。
【0075】
更に、本明細書で述べられている幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれている特徴のうち、いくつかの特徴を含みそれ以外の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴を組合せたものは、当業者が理解できるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の請求項において、クレームされた任意の実施形態を、任意の実施形態と組合せとして用いることができる。
【0076】
その上、上記実施形態の幾つかは、コンピュータシステムのプロセッサによって実行される方法や方法のエレメントの組合せ、又は、機能を実行する他の方法によって実行される方法や方法のエレメントの組合せとして、本明細書において述べられている。それ故に、方法及び方法のエレメントを実行する為に必要不可欠な命令を有するプロセッサは、方法又は方法のエレメントを実行する為の手段を形成する。更に、装置の実施形態の本明細書に記述されたエレメントは、本発明を実行する為のエレメントによって実行される機能を実行する為の手段の一例である。
【0077】
本明細書の記述において、多くの特定された詳細が述べられている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定された詳細を用いずに実施することができる。他には、良く知られている方法、構造及び技術は、詳しく示されていない。これは、本明細書の理解を不明確にしないようにする為である。
【0078】
以下の用語は、単に、本発明の理解の手助けとなることを目的とするものである。
【0079】
「間隙率」Pは、P=100*(1−d)であるとして理解される。ここで、dは、焼結された金属繊維媒体1m3の重量をSFで割った値である。ここで、SFは、上記焼結された金属繊維媒体の金属繊維を提供する合金の1m3当たりの比重である。
【0080】
「空気透過率」(APとも記述される)は、ISO4002と同等である、NF95−352にて述べられた装置を用いて測定される。NF95−352の試験方法、つまりISO4002は、上記装置を巻き取り型フィルタのより大きな直径に適応させるように修正される。これは、じょうご状の中間エレメントを上記巻き取り型フィルタと上記装置の吸気口との間に取り付けることにより行われる。上記じょうご状のエレメントは、片側においては上記吸気口の周囲と合致し、反対側においてはフィルタの筐体の周囲と合致する。上記じょうご状のエレメントは、リークを避ける為に、上記吸気口及び上記フィルタ筐体の両方に封止される。
【0081】
特定繊維の「相当直径」は、円形の径方向断面を有する仮想繊維の直径である。ここで、上記断面は、特定繊維の断面の平均的な表面領域と同等の表面領域を有す。
【0082】
本発明は、本発明の幾つかの実施形態に関する詳しい記述によって述べられる。本発明の他の実施形態が、真の精神又は本発明の技術的な教示から出発しなくとも、当業者の知識によって再現されるということ、及び、本発明が、添付の請求項における用語によってのみ制限されるということは明白である。
【0083】
本発明の第二の態様に従って、フィルタエレメントを製造する為の連続したステップが、図1aから図1cに示されている。
【0084】
図1aの第一ステップに示されているように、強化繊維構造101が提供される。ここで、構造101は繊維102を含んでいる。繊維網である上記強化繊維構造は、先端103、後端104、側端105及び側端106を有す。強化繊維構造101は、実質的に矩形の繊維網である。
【0085】
強化繊維構造に適した例として、例えば、相当直径が35μmのコイル切削金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び300g/m2の表面重量を有する。他には、相当直径が22μmのコイル切削金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び450g/m2の表面重量を有する。また、相当直径が17μmの繊維束引き上げ金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び300g/m2の表面重量を有する。更に、相当直径が12μmの繊維束引き上げ金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び200g/m2の表面重量を有する。
【0086】
強化繊維構造101中の繊維102は、実質的に繊維網表面107に平行な平面に方向付けられている。上記平面において、上記繊維はランダムに方向付けられている。実質的に後端及び先端に沿って一直線な繊維もあれば、側端に平行な平面方向に延伸する繊維もあり、両者の中間に方向付けられる繊維もある。
【0087】
後端104に沿って、金属ホイル110が強化繊維構造101に取り付けられる。例えば、後端に沿ってホイル110は、強化繊維構造101に対して、溶接112を用いて溶接することによって取り付けられる。ホイル110は、FECRALLOY(登録商標)ホイルのような鉄―クロム―アルミニウム合金ホイルであり、強化繊維構造101の幅と同一の幅Wを有し、巻回された強化繊維構造の周囲を少なくともひと巻きするに足る長さLfを有す。上記ホイルの幅は、幅Wと適合する部分にて略700mmの幅を有するホイルを細長く切ることにより調節可能である。
【0088】
強化繊維構造101は、巻回軸130の周りに巻回され又は巻きつけられる。ここで、巻回軸130は、先端103に対して平行である。この実施形態において、強化繊維構造101は、先端103自身の周りに巻回される。巻回は、矢印131が示すような方向に従って行われる。巻回の際は、強化繊維構造101が実質的に矩形であるので、側端105及び側端106は、夫々一直線になっており、一度巻回されると一平面となる。
【0089】
強化繊維構造101を巻回することにより、フィルタ材111が提供される。以下に詳しい記述を示すが、繊維102の多数(この実施形態においては、例えば85%以上)は、少なくとも軸130を部分的に取り囲む。これは、繊維が繊維網の中において存在しており、実質的に繊維網表面107に平行な向きに方向付けられるからである。繊維網表面107が、軸130の周りに螺旋状に変形される場合、繊維網表面107と同一平面上の繊維は、この螺旋形状に従って少なくとも部分的に軸130を取り囲む。
【0090】
ガスを透過させない筐体は、巻回軸130に対して実質的に平行な方向に、フィルタ材111の外側境界113をホイル110を用いて覆うことにより提供される。これは、図1bに示されているように、フィルタ材の周りにおいてホイルを巻回することを続けることにより行われる。ホイル110及び強化繊維構造101が互いに結合されるように、これは1つの操作において行われる。ホイル110は、フィルタ材111の周りに少なくとも一度は完全に巻回されている。ホイル110の後端114がホイルと接するところで、図1cに示されているように、例えば、溶接141に沿って溶接することにより、ホイルはホイル自身によって密封される。このようにして、筐体140は提供される。ここで、筐体140は、フィルタ材111によって充満されている巻き取り型フィルタ150を提供する為に、巻回軸130に実質的に平行な方向にフィルタ材111の外側境界113と接している。
【0091】
筐体140は、径方向に、つまり、巻回軸130から外方向にガスが浸透しないようになっている。
【0092】
巻回の際に、ホイルにかなり大きな巻回張力を印加することにより、フィルタ材111は径方向内側に圧縮される。この圧縮により、上記フィルタ材が径方向にあらかじめ張力をかけられている状態になる。この張力により、筐体内のフィルタ材が、フィルタエレメントを通過するガスに沿った軸方向に変位しないように留め置かれ、フィルタ材の変位及びフィルタ材の繊維部分の変位が避けられる。
【0093】
このようにして、本発明の第一の態様に係るフィルタエレメント100は提供される。フィルタエレメント100は、ガスを透過させない筐体を含んでいる。ここで、上記筐体は、巻き取り型フィルタ150に対する平均流方向153を規定する吸気側側面151及び排気側側面152を提供する。円筒型の巻き取り型フィルタ150は、巻回軸130と同一の軸であって、平均流方向153と実質的に平行な軸を有す。フィルタエレメント100の巻き取り型フィルタ150は、幅WWと同一の高さHを有す。
【0094】
後端又は先端に対して平行な構成要素を有する方向に従った繊維網に存在する上記繊維は、少なくとも部分的に軸130を取り囲む。側端に対して平行な構成要素を有する方向に従った繊維網に存在する上記繊維は、少なくとも部分的にフィルタエレメント100の軸方向に延伸する。
【0095】
繊維網である強化繊維構造101及びホイル110は、上記フィルタエレメントが127mmの直径Dを有するように巻回される。上記フィルタ材は、例えば97%又はそれ以上の間隙率を有す。空気透過率は、吸気側側面151と排気側側面152との間において200Paの圧力降下を用いて測定される。ここで、上記空気透過率は、下記の表1に示されているように、特に繊維の相当直径、巻き取り型フィルタの高さ、及び間隙率に依存している。
【0096】
【表1】
【0097】
本発明の第一の態様に係る他のフィルタエレメント200は、図2a〜図2dに大まかに示されている連続したステップである方法を用いて提供される。
【0098】
図2aに示されているように、強化繊維構造201が提供される。ここで、構造201は、繊維202の束208を含んでいる。強化繊維構造201は、先端203を有す。
【0099】
繊維束208は、例えば、35μm又は22μmのような適切な相当直径を有するコイル切削金属繊維又は繊維束引き上げ金属繊維を含んでいる。上記繊維束は、典型的な3g/mの繊度を有す。繊維束引き上げ金属繊維の繊維束が用いられる場合、繊維束の繊維は、繊維の厚み、つまり繊維束の厚みを増加させるように、ひだを寄せて提供される。
【0100】
強化繊維構造201の繊維202は、実質的に繊維束208に平行な向きに方向付けられる。
【0101】
強化繊維構造201は、シャフト232の周りに巻回され又は巻きつけられる。ここで、シャフト232は巻回軸230を規定する。矢印231によって示された方向に従って巻回される。繊維束208は、シャフト232の周りにL1の長さに巻回される。上記繊維束は、シャフトの2つの端点(点a及び点bとして示されている)間において繊維束208をガイドする往復ガイド手段234を用いてガイドされる。シャフトの回転及びガイド手段の往復動作により、繊維束は、例えば、シャフト232の周りの螺旋状パス又は渦巻状パスに巻回される。
【0102】
シャフトの長さに沿って与えられた位置において巻回の数を注意深く規定することにより、異なる位置における繊維の量が決定されたり、変更されたりする。図2bに示されているように、円錐の長さに沿って厚みが異なる円錐型巻回繊維層が提供される。22においては、巻回が行われている際のガイド手段に従うパスが示されている。第一フェーズIにおいては、上記繊維束は円錐の全長であるゾーンZ1に沿って提供される。第二フェーズIIの際、上記繊維束はゾーンZ2の長さに沿って巻回され、第三フェーズIIIにおいては、上記繊維束はゾーンZ3にのみ沿って巻回される。ゾーンZ3においてはより多くの繊維が提供されるのに対し、ゾーンZ1においては最小の繊維しか提供されない。
【0103】
強化繊維構造201を巻回することにより、フィルタ材211が提供される。以下において詳しく説明するように、繊維202の多く(この実施形態では85%又はそれ以上)は、少なくとも部分的に軸230を取り囲む。これは、繊維が、繊維束の中において繊維束に対して平行な方向に存在するからである。繊維束208が、軸230に沿って螺旋状に変形される場合、上記繊維は、軸230を部分的に取り囲む。
【0104】
図2cにおいて示される更なるステップにおいては、FECRALLOY(登録商標)のような鉄―クロム―アルミニウム合金ホイルであるホイル210は、強化繊維構造101の巻回長L1と同一の幅Wfを有し、巻回された強化繊維構造の周囲を少なくともひと巻きするに足る長さLfを有す。上記ホイルは、略230μmの厚みを有す。上記ホイルの幅は、幅Wと適合する部分にて略700mmの幅を有するホイルを細長く切ることにより調節可能である。
【0105】
ガスを透過させない筐体は、ホイル210を用いて巻回軸230に対して実質的に平行な方向にフィルタ材211の外側境界213を覆うことにより提供される。これは、図2cに示されているように、上記ホイルを上記フィルタ材の周りに巻回することにより行われる。ホイル210はフィルタ材211の周りに少なくとも一度は完全に巻回されている。ホイル210の後端214がホイルと接するところにおいて、図2dに示されているように、例えば、溶接241に沿って溶接することにより、当該後端は当該ホイルによって密封される。このようにして、筐体240は提供される。ここで、図2dに示されているように、フィルタ材211で充満された巻き取り型フィルタ250を提供する為に、筐体240は、巻回軸230と実質的に平行な方向にフィルタ材211の外側境界213と接している。
【0106】
筐体240において、ガスは、径方向に、つまり、巻回軸230から外側方向に透過しない。
【0107】
巻回の際に、ホイルにかなり大きな巻回張力を印加することにより、フィルタ材211は径方向内側に圧縮され、巻回又は巻き付けの際に得られたフィルタ材211の円錐型形状は円筒型形状に変化する。より多くの繊維が存在するゾーンは、より強く圧縮され、これらのゾーンにおける当該フィルタ材は、密度がより大きくなる。異なる間隙率を有する連続したゾーンP1、P2、及び、P3を有するフィルタ材211が得られる。
【0108】
筐体240が提供された後で、フィルタ材211から軸方向に引き抜くことにより、シャフト232は除去される。
【0109】
このようにして、ガスを透過させない筐体240を有するフィルタエレメント200が提供される。ここで、上記筐体は、巻き取り型フィルタ250に対する平均流方向253を規定する、吸気側側面251及び排気側側面252を提供する。円筒型である巻き取り型フィルタ250は、平均流方向253に対して実質的に平行な巻回軸230と同一の軸を有す。フィルタエレメント200の巻き取り型フィルタ250は、幅Wfと同一の高さHを有す。
【0110】
繊維束208は、円筒型の巻き取り型フィルタ、及び、例えば、当該巻き取り型フィルタの周りに巻回されたホイルのような筐体を有する円筒型の巻き取り型フィルタを提供する為に巻回されると理解される。軸方向に実質的に均一の間隙率を有する同様のフィルタエレメントが得られる。例えば、22μmの相当直径を有するコイル切削繊維の繊維束である強化繊維構造201及びホイル210は、フィルタエレメントが直径127mm及び長さ50mmを有するように巻回される。間隙率が97%であるフィルタ材は、空気透過率が470l/dm2/minである。間隙率が98%となるように巻回された同一の繊維束は、空気透過率が635l/dm2/minである。例えば、35μmの相当直径を有するコイル切削繊維の繊維束である結合繊維構造201及びホイル210は、フィルタエレメントが直径127mm及び長さ50mmを有するように巻回される。間隙率が97%であるフィルタ材は、空気透過率が722l/dm2/minである。間隙率が98%となるように巻回された同一の繊維束は、空気透過率が926l/dm2/minである。空気透過率は、吸気側側面251と排気側側面252との間において200Paの圧力降下を用いて測定される。
【0111】
上記繊維の多くが、繊維束方向に沿って繊維束208の中に存在するので、上記繊維の多くが、少なくとも部分的に軸230を取り囲む。上記繊維束が螺旋状又は渦巻状に巻回されているので、上記繊維の方向は軸方向の成分を有するものとなり、それ故に、繊維の多くは、少なくとも部分的にフィルタエレメント200の軸方向に延伸する。
【0112】
また、図1a〜図1c及び図2a〜図2dには示されていないが、巻き取り型フィルタの外側境界と接している筐体が一度提供された巻き取り型フィルタは、少なくとも2つのフィルタエレメントを提供するように、巻き取り型フィルタの軸に沿って少なくとも2つの部分に分割される。上記巻き取り型フィルタ及び筐体からの切削長に従って、異なる高さ又は等しい高さを有するフィルタエレメントが提供される。円錐型のフィルタ媒体211を有する、本発明に従ったフィルタエレメントの更なる実施形態が図2eに示されている。この実施形態において、フィルタ材は、軸方向における略円錐型の空洞部及び/又は軸方向における略円錐型の延長部を含んでいる。特に、上記円錐型の空洞部は吸気側側面に位置し、上記円錐型の延長部は排気側側面に位置する。上記円錐型の空洞部により、吸気側における上記フィルタエレメントの表面は増加する。円錐形状ではなく単に平面形状であった場合に比べて、上記フィルタの表面領域は2倍以上になる。増加した表面領域により、吸気側側面におけるフィルタエレメントの目詰まりは減少したり、遅延したりする。特に、上記円錐型の空洞部及び上記円錐型の延長部は、隣接したフィルタ材の軸上の表面と表面とが接触するように、略同一形状を成す。
【0113】
本発明の第一の態様に係る他のフィルタエレメント300は、図3a〜図3cに大まかに示されている連続したステップである方法を用いて提供される。
【0114】
円錐型のフィルタ媒体211は、図2a〜図2bを用いて述べられた方法と同一の方法にて提供される。
【0115】
ガスを透過させない筐体340は、2つの円錐型の外殻301及び302を用いて、巻回軸230に対して実質的に平行な方向にフィルタ材211の外側境界213を覆うことにより提供される。フィルタ材211は、互いに連結している2つの外殻301と302との間に留め置かれる。これは、径方向に延伸しているフランジ310及び311を互いにボルトで締めたり、溶接したり、リベットで留めたりすることにより行われる。また、フランジの間において封止312が行われる。このようにして、筐体340は提供される。ここで、筐体340は、図3a〜図3cに示されているように、フィルタ材211で充満された巻き取り型フィルタ350を提供する為に、フィルタ材211の外側境界213に接している。
【0116】
筐体340において、ガスは、径方向に、つまり、軸230から外方向に透過しない。
【0117】
円錐状に巻回されることにより繊維がより多く存在するゾーンにおいては、軸230に対して実質的に垂直な平面に従った断面に対する表面領域がより広くなる。
【0118】
筐体340が提供された後で、シャフト232は、フィルタ材211から軸方向に引き抜くことにより除去される。
【0119】
このようにして、フィルタエレメント300は提供される。ここで、当該フィルタエレメントは、ガスを透過しない筐体340を有し、当該筐体は、巻き取り型フィルタ350に対する平均流方向353を規定する吸気側側面351及び排気側側面352を有す。円錐型の巻き取り型フィルタ350は、平均流方向353に対して実質的に平行な巻回軸230と同一の軸を有する。フィルタエレメント300の巻き取り型フィルタ350は、巻回長L1と同一の高さHを有す。
【0120】
上記繊維の多くは、繊維束方向に沿って繊維束208の中に存在するので、上記繊維の多くは、少なくとも部分的に軸230を取り囲む。上記繊維束が螺旋状又は渦巻状に巻回されているので、上記繊維の方向は軸方向の成分を有するものとなり、それ故に、繊維の多くは、少なくとも部分的にフィルタエレメント300の軸方向に延伸する。
【0121】
図4a及び図4b中の401及び411は、平面AA’上の平均流路方向に投影された、幾つかの繊維の投影線403及び413を夫々大まかに示している。ここで、平面AA’は平均流路400に対して垂直である。
【0122】
図4a及び図4b中の402及び412は、平面BB’上の、幾つかの繊維の投影線404及び414を夫々大まかに示している。ここで、平面BB’は平面BB’に対して垂直な方向に投影された平均流路を有す。
【0123】
図4aはフィルタエレメント100に対応する。405は軸130の投影を表す。
【0124】
図4bはフィルタエレメント200に対応する。415は軸230の投影を表す。
【0125】
401から明白なように、平面AA’上の繊維の投影は、少なくとも部分的に軸の投影405を取り囲むパスを示している。それ故に、平面AA’上に投影された繊維は、三次元で見られるものと同様に、少なくとも部分的に軸を取り囲む。最適なフィットラインの凹状側は、投影405に向き付けられる。
【0126】
402から明白なように、平面BB’上の繊維の投影は、軸方向に延伸している構成要素を有するパスを示している。例えば、投影が406によって表される繊維は、軸方向に長さLaに沿って延伸している。
【0127】
411から明白なように、平面AA’上の繊維の投影は、少なくとも部分的に軸の投影415を取り囲むパスを示している。これは、フィルタ材を提供する為に用いられた繊維束208中の繊維が、フィルタエレメント100を提供する為に用いられた繊維網中の繊維に比べ長いことから、より明白である。それ故に、平面AA’に投影された繊維は、三次元で見られるものと同様に、少なくとも部分的に軸を取り囲む。最適なフィットラインの凹状側は、投影415に向き付けられる。
【0128】
412から明白なように、平面BB’上の繊維の投影は、軸方向に延伸している構成要素を有するパスを示している。例えば、投影が416によって表される繊維は、軸方向に長さLaに沿って延伸している。
【0129】
図5には、本発明の第三の態様に従って、フィルタモジュールを製造する為の方法が示されている。この実施形態3において、上記方法は、N個のフィルタエレメント501、502、及び503を提供するステップを含んでいる。上記フィルタエレメントは、例えば、円筒型のフィルタエレメントである。上記フィルタエレメントの各々は、本発明の何れの方法にも従って、巻き取り型フィルタの外側境界に接する筐体511、521、及び531の夫々を有する巻き取り型フィルタ510、520、及び530の夫々をまず提供することにより提供される。上記巻き取り型フィルタの外側境界に接する筐体を有する上記巻き取り型フィルタは、巻き取り型フィルタの軸方向に沿って幾つかの部分に分割され、その結果、本発明に従ったフィルタエレメントを毎回少なくとも2つ提供する。
【0130】
この実施形態において、3つの異なるフィルタエレメント501、502、及び503が提供される。各フィルタエレメントは吸気側側面510及び排気側側面511を有す。
【0131】
更なるステップにおいて、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面が(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面に結合されている。実施形態2及び実施形態3において、iは変化する。金属筐体である上記筐体は、例えば、溶接507に沿って溶接されるように、上記筐体の外端に沿って互いにきつく結合されている。吸気側側面505及び排気側側面506を有し、本発明に従った複数のフィルタエレメントを含むフィルタモジュール500が提供される。フィルタエレメントをフィルタモジュールに結合する為に、多数が組み合わせて行われる。ここで、上記フィルタエレメントは、本発明の方法に従って提供される。
【0132】
例として、吸気側側面505及び排気側側面506を有し、直径が127mmである3つの円筒型フィルタエレメントを含むフィルタモジュール500が提供される。このフィルタエレメントは以下の通りである。
(1)吸気側側面505を提供する第一フィルタエレメント501は、30μmのコイル切削繊維を含む。ここで、上記コイル切削繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた300g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。
(2)中間にある第二フィルタエレメント502は、22μmのコイル切削繊維を含む。ここで、上記コイル切削繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた450g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。
(3)第三フィルタエレメント503は、17μmの繊維束引き上げ繊維を含む。ここで、上記繊維束引き上げ繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた300g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。上記第三フィルタエレメントは、排気側側面506を提供する。
【0133】
また、図5には示されていないが、第四フィルタエレメントが、流方向に沿って第三エレメント503の後方に提供される。この第四エレメントは12μmの繊維束引き上げ繊維を含む。ここで、上記繊維束引き上げ繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた200g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。第四フィルタエレメントを含む実施形態においては、上記第四フィルタエレメントが、第三フィルタエレメントに代わり排気側側面を提供する。
【0134】
他の例として、第一フィルタエレメントは、3g/mの繊度を有する30μmのコイル切削繊維の少なくとも一束又は複数束を巻回することにより提供される。上記繊維束は、図2の実施形態に従って巻回され、軸方向に実質的に均一の間隙率を有する円筒型の巻き取り型フィルタを提供する。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲内において変化するが、典型的には50mmである。
【0135】
第二フィルタエレメントは、3g/mの繊度を有する22μmのコイル切削繊維の少なくとも一束又は複数束を巻回することにより提供される。上記繊維束は、図2の実施形態に従って巻回され、軸方向に実質的に均一の間隙率を有する円筒型の巻き取り型フィルタを提供する。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲内において変化するが、典型的には50mmである。
【0136】
図6に示されているように、フィルタモジュール600はヒーター601を含む。例えば、電気ヒーターは、第一フィルタエレメント610の前方、及び/又は連続したフィルタエレメント620や630の夫々の間、及び630と640との間に提供される。
【0137】
これらのヒーターは、同時又は個々に制御され、上記フィルタモジュールを通過するガスを加温する為に電流が通される。このガスの温度上昇により、上記フィルタエレメント610、620、630、及び/又は640を用いて保有されていた炭素が、フィルタモジュール600を再生させる為に熱せられる。
【0138】
ヒーター601の制御は、温度及び/又は連続したフィルタエレメントの前又は間に設置された圧力センサーに基づいて行われる。
【0139】
本発明に従ったフィルタモジュールにおいて、少なくとも1つのフィルタエレメントが、例えば巻き取り型フィルタ中の金属繊維の少なくとも一部をコートすることにより、触媒が提供される。本発明の実施形態において、DOC−触媒キャリアを用いる。DOCとは、ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst)を意味し、このようなエレメントは典型的にディーゼル微粒子フィルタの前に設置される。本発明の実施形態に従ったDOCエレメントは、炭化水素を二酸化炭素及び水へと酸化し、NOxからN2Oを生成することを促す。本発明の実施形態には、例えば100μmのような、50μmよりも大きな繊維直径を有する繊維を有するDOCエレメントとしてのフィルタエレメントが含まれる。
【0140】
本発明に従ったフィルタモジュールの他の実施形態において、上記フィルタエレメントの少なくとも1つに、例えば巻き取り型フィルタ内の金属繊維の少なくとも一部をコートすることにより、選択的接触還元(SCR)を用いて排気ガス中のNOxを還元させる為に最適な触媒が設けられる。
【0141】
本発明に従ったフィルタモジュールの他の実施形態において、上記フィルタエレメントの少なくとも1つに、炭素、炭素を含む混合物、及び一酸化炭素を二酸化炭素に酸化させる触媒が設けられる。
【0142】
本発明に従ったフィルタモジュールの他の実施形態において、上記フィルタエレメントの少なくとも1つに、排気ガスを濾過して炭素微粒子の大部分を取り除いた後、NOxをNO2に酸化させる為の触媒が設けられる。少なくとも第一フィルタエレメントの下流側に設置された少なくとも第二フィルタエレメントの少なくとも繊維の一部が、NO2からN2への還元により提供された酸素を用いることによる、濾過された炭素微粒子の酸化を促進する触媒を用いてコートされる。
【0143】
図7に示されているように、フィルタエレメント700は、数層から成るフィルタ材702及び中軸708の周りに巻回されたインサート材704及び706を含む。インサート材704により、流路710を形成する自由空間が提供される。第一インサート材704は吸気側側面712から始まり、第二インサート材706は排気側側面714から始まる。ここで、第一インサート材704及び第二インサート材706は、中軸708からその外側において入れ替えることが出来る。フィルタ材702の繊維束及びインサート材704及び706は、特に圧着されることにより、筐体716に受け止められる。吸気側側面712における流路710により、排気ガス等を濾過するフィルタ材702の表面が増加する。排気側側面714における流路710により、濾過されたガスに対しての圧力降下が低減される。
【0144】
図8に示されているように、インサート材704及び706は、チューブ状に形成され、中軸708に対して同軸となるように配置される。これにより、径方向の断面図においてインサート材704及び706のリング状デザインがもたらされる。図解された実施形態において、インサート材704及び706は、隣接する曲面間に流路710を提供するように、波型のシート又はワイヤーメッシュである。
【0145】
本発明を実施する方法及びフィルタエレメントの、目的を達成する為の他の組合せは、当業者にとって明白である。
【0146】
本明細書において、本発明に従ったデバイスにとっての好ましい実施形態、特定の構造や配置、及び素材について議論が成されたが、簡単な数々の変更又は補正及び詳細な数々の変更又は補正は、添付の請求項により規定されているように、本発明の範囲から逸脱することなく行われる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメント及びフィルタエレメントを製造する方法に関する。本発明は、特に、ディーゼル燃焼エンジン等のディーゼル燃焼装置のディーゼル排気ガスを濾過することに適するフィルタエレメント(ディーゼル酸化触媒の担体等)のように、排ガスを濾過してすすを取り除くことに適したフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
この分野では、金属繊維を含むフィルタ媒体が知られている。例えば、特許文献1には、ディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼルの煤を取り除く為の焼結金属繊維の多層構造型フィルタ媒体が開示されている。この媒体は、申し分なく機能するが、媒体が詰まるまでに限られた量しか煤を吸着することできないという欠点がある。その要因の一つとしては、低間隙率のフィルタエレメントを用いている点が挙げられる。結果として、電気的再生を用いた再生(つまり、媒体に電流を流し、ジュール効果によって媒体を発熱させるなど)やディーゼルガス又は排気ガスに触媒混合物を注入することによる再生を非常に頻繁に数多く行う必要がある。他の欠点としては、この媒体は効率に制限があり、当該媒体全体における圧力降下が大きく、むしろ費用がかかることである。
【0003】
ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置のディーゼル排気ガスを濾過することに適した、他の多数構造のフィルタ媒体が特許文献2にて述べられている。この媒体は、かなり大きな厚みによって、煤の吸着容量が増加している。この増加した煤の吸着容量に到達する為に、上記媒体は大量に必要であり、未焼結のフィルタ媒体、つまり未使用のフィルタ媒体であっても、フィルタ媒体全体における圧力降下が相対的に大きいという欠点がある。
【0004】
上記フィルタ媒体は、この分野で良く知られている空気集積又は湿式集積によって設けられる金属繊維の層を含む。上記繊維層は、繊維網としても知られている。上記繊維は、実質的に上記網表面に対して平行な平面内に延伸している。各平面において、上記繊維はランダムな方向を向いている。そのような繊維網を、上記網の必要な厚さとなるように複数積み重ねた後に、上記フィルタエレメントに一体化する場合もある。
【0005】
平均流路(つまり円筒型容積の軸)に沿って、隣接した連続的な複数の繊維網を含んでいる円筒型フィルタエレメントが設けられるとき、設けられる複数の繊維網は、適切な厚みを有することになる。上記繊維網中の繊維を結び付けるように、及び/又は密度(つまり、間隙率)を増加するように、上記繊維網は焼結されることもある。各繊維網から、例えばダイカットによって円形のディスクが切り取られる。上記ディスクは、正しい順序で積み重ねられ、円筒型の筐体に収められる。設けられるフィルタエレメントは、上記円筒型筐体の2つの外端に位置する吸気側及び排気側を有し、上記円筒型筐体の軸に略平行な流路を定める。上記繊維は、実質的に上記繊維網表面に対して平行な平面内に延伸しているので、フィルタエレメント中の上記繊維は、上記流路に対して略垂直方向を向いている。
【0006】
外側の繊維網、つまり上記フィルタエレメントの吸気側又は排気側の2つの繊維網が焼結しない場合、上記フィルタエレメントに供給されたガスとともに上記繊維が上記円筒型筐体の外へ流れ落ちないようにする為の手段を設けてもよい。そのような手段は、金属ワイヤーのメッシュ、穴の開いたプレート、又はシートであってもよい。
【0007】
切断操作又は穴あけ操作は、上記繊維網の整合性に影響を与えることがある。上記繊維網が焼結されないのであれば、穴あけされた繊維網及び切断された繊維網は、その整合性を失い、バラバラになることがある。その圧縮性の為に、穴あけ中、切断中、及び使用中に、高間隙率を長い間制御および維持することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/047720号
【特許文献2】国際公開第04/104386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、良質な濾過効果を有し、圧力降下が低減されているフィルタエレメント及びそのようなフィルタエレメントを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特にディーゼル燃焼エンジンの排ガスからディーゼル煤を濾過する為のフィルタエレメントを提供する。上記フィルタエレメントは、巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体であって、平均流方向を定める吸気側の側面及び排気側の側面を有し、上記平均流方向に対して略平行な軸を有し、吸気側に断面領域を有する筐体を備え、上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、上記フィルタ材の上記吸気側の断面領域は、上記筐体の断面領域よりも面積が大きい。上記筐体の上記断面領域に対する上記フィルタ材の上記吸気口表面領域の面積比は、2よりも大きいことが好ましい。
【0011】
上記目的は、本発明の一態様に係るフィルタエレメントであって、特にディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼル煤を取り除く為のフィルタエレメントによっても達成される。ここで、上記フィルタエレメントは、巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体であって、平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有し、上記平均流ー方向に対して略平行な軸を有する筐体を備え、上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、上記巻き取り型フィルタは、上記フィルタ材よりも空気透過率が高いインサート材であって、該インサート材の一部が上記平均流方向に突き出ているようなインサート材を備えている。本発明に係るフィルタエレメントは、繊維(とりわけ金属繊維)を有していてもよい。これらの繊維は互いに焼結されていないが、軸方向に変位することはない。焼結することは必要不可欠ではないので、上記フィルタエレメントは、よりコスト効率の良い方法により提供される。
【0012】
上記フィルタ材の包囲繊維、特に包囲金属繊維により、上記フィルタ材は、既知のフィルタエレメントに比べ、与えられた間隙率に対する増加した空気透過率を有する。上記フィルタエレメントが排気ガス(例えば、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置からの排気ガス)を濾過する場合、上記フィルタ媒体全体における低減された圧力降下によって、上記燃焼装置が受ける排気ガス中の反発圧力が小さくなる。それ故に、低減された圧力降下によって、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置の低燃費及び低操作コストという結果につながる。
【0013】
上記インサート材により、排気ガスを濾過する上記フィルタ材の外部表面が増大する。上記フィルタ材の増大した外部表面が目詰まりするまでの時間も増大する為、同一のフィルタ材であって、上記インサート材の無いフィルタ材と比べると、経時的な圧力降下が低減される。上記インサート材がフィルタ効果を奏することは必要不可欠ではない為、上記インサート材の空気透過率は、上記フィルタ材の空気透過率に比べて非常に高い。上記インサート材の圧力降下が非常に低く無視できるように、特に、上記インサート材は自由空間を提供するように設計され、好ましくは流体の流路のように形成される。上記インサート材は、流方向において、上記フィルタ材の全長を越えて延伸する訳ではないので、流体のどの部分も、濾過されずにフィルタエレメントを通過してしまうことはない。流入する流体の一部が上記フィルタエレメントの内部に速く向き付けられるように、少なくとも上記インサート材の一部は、吸入側から始まることが好ましい。
【0014】
上記フィルタ材は、上記インサート材よりも低い空気透過率を有するので、当該インサート材内部の圧力は、当該フィルタ材内部の圧力に比べ低い。上記インサート材内部の高圧力によって、上記流体が、当該インサート材の内部に簡単に流れ込み、続けて、軸方向だけでなく軸方向に対する垂直方向においても、上記フィルタ材を通過して流れるような効果をもたらす。排気ガスの煤は、搬送ガスに比べ高密度であるので、当該キャリアガスが上記フィルタエレメントの圧力降下の発生頻度を増加させることなく、径方向に表面を通過して尚流れるように、当該煤は上記インサート材の端部に堆積する。
【0015】
好ましい実施形態において、吸気側から始まる第一インサート材、及び排気側から始まる第二インサート材が、巻き取り型フィルタ内部において異なった直径にて提供される。特に、いくつかの第一インサート材、及び/又はいくつかの第二インサート材は、互い違いに提供される。上記フィルタエレメントの中軸から、径方向の筐体まで、上記第一インサート材及び上記第二インサート材は、代わる代わる配置される。これにより、上記フィルタ材は、軸方向の断面図において、ジグザグ状又はメアンダ状のデザインとなる。特に、流方向におけるフィルタ材の、一定の最小厚みが保たれるように、隣り合ったインサート材の距離は略一定である。特に、上記第二インサート材により圧力降下がかなり低減される。これは、濾過された流体の少なくとも一部が、第二インサート材に沿って上記フィルタエレメントを出て行くためである。
【0016】
他の実施形態において、上記インサート材は波型の金属シートにより提供される。ここで、上記金属シートは、特に開口部を有す。波型のシートにより、軸方向おいて複数の流路が提供される。ここで、各流路の一表面は上記フィルタ材により提供される。上記金属シートにおける開口部の場合、開口部の領域は、上記フィルタ材により提供された流路の表面を増大させる上記フィルタ材により閉じられている。開口部を有する上記金属シートは、流路を提供する為に十分な形状安定性を有するメッシュワイヤー又はその類のものでも構わない。上記シートの波型デザインは、断面におけるジグザグ状、U字状、又は上記フィルタ材内部において空間を提供する他のどのような形でも構わない。
【0017】
上記金属シートは、金属繊維網から、特に上記フィルタ材と同一の素材から作られることが好ましい。ここで、上記金属シートは、上記フィルタ材よりも高い形状安定性を有す。例えば、上記金属シートの繊維は、より大きな直径を有したり、より濃密に配列されたりする。上記インサート材の上記金属繊維網により、排気ガス中の上記搬送ガスが上記インサート材を通過し、煤粒子が上記フィルタ材だけでなく上記インサート材によっても吸着されるので、上記インサート材自身は、付加的なフィルタ効果を奏する。
【0018】
特に、上記インサート材は、筐体の軸を少なくとも部分的に取り囲む。ここで、上記インサート材の平均流方向の断面は、リング型又は部分的なリング型に形成される。断面におけるその(部分的な)リング状の形状に起因して、上記フィルタエレメントが上記フィルタ材及び上記インサート材を巻回するによって製造されている場合、上記インサート材は簡単に提供される。更に、上記フィルタエレメントのパーツがバラバラにならないので、特に円筒型巻き取り型フィルタ内部のインサート材の丸い形状は、強靭なデザインをもたらす。更に、チューブ状のインサート材を提供することも可能である。ここで、上記チューブには軸方向にスリットが入っている。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態に従って、巻き取り型フィルタ中のフィルタ材の繊維の内、少なくとも50%が、少なくとも部分的に上記軸を取り囲む。本発明の幾つかの実施形態に従って、巻き取り型フィルタ内のフィルタ材の繊維中、少なくとも85%が、少なくとも部分的に上記軸を取り囲む。
【0020】
「取り囲む(encircle)」という言葉は、「回行する(pass around)」という言葉として理解される。それ故に、「少なくとも部分的に軸を取り囲む繊維」とは、「少なくとも部分的に軸を回行する」という意味である。これは、平均流路に垂直である平面AA’上の平均流路方向に繊維を投影することにより、最も適切に理解される。
【0021】
平均流路に垂直である平面AA’上の平均流路方向に投影された繊維の投影線は、平面AA’上の軸の投影と中心を同じくする円又は円弧であることは必要不可欠ではない。平均流路に垂直である平面AA’上の平均流路方向に投影された最適なフィットライン、つまり、繊維の投影線に最もフィットするラインは、平面AA’上の軸の投影に向きつけられた凹状の側面を有す。
【0022】
繊維や金属繊維を有する上記フィルタ材は、70%〜99%の間隙率Pを有す。同一容積及び同一間隙率を有し、同一繊維から提供され、上記流路に垂直である平面に対して平行に向いている繊維を有するフィルタエレメントと比較すると、本発明の第一の態様に従って、上記フィルタエレメントの空気透過率の大きな増加が得られる。実に、60%以上の増加が得られる。与えられた繊維の特性(マントル表面、等価直径平均断面像などのような特性)や与えられたフィルタ媒体の、間隙率及びフィルタ材で充満された巻き取り型フィルタの高さのような特性に対する、上記のより高い空気透過率は、上記フィルタエレメントが排気ガス(例えば、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置からの排気ガス)を濾過する場合に、特に有利である。
【0023】
上記巻き取り型フィルタは、円形又は楕円形の断面を有する円錐形であっても良い。円筒形の巻き取り型フィルタに関しては、当該巻き取り型フィルタは、円形又は楕円形の断面を有する円筒形であっても良い。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態に従って、繊維の多くは、少なくともフィルタエレメントの軸方向に延伸する。実質的にフィルタ材の中にある繊維の少なくとも50%が、少なくとも上記フィルタエレメントの軸方向に延伸しても良い。実質的にフィルタ材の中にある繊維の少なくとも85%が、少なくとも上記フィルタエレメントの軸方向に延伸しても良い。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記繊維は、強化繊維構造、つまり平均流方向に対して実質的に平行な巻回軸の周りに巻回された繊維構造の一部であっても良い。上記強化繊維構造は繊維網であっても良い。上記繊維網は、エアーレイド網、ウェットレイド網、又はカード網のような、どの最適な繊維網生成プロセスによって得られた繊維網であっても良い。上記繊維網は、不織の繊維網又は針でパンチされた繊維網であることが好ましい。
【0026】
上記強化繊維構造は、少なくとも一つの繊維束を含んでも良い。また、上記強化繊維構造は、少なくとも一又は複数の同一な繊維束や一又は複数の相互に異なる繊維束を含んでも良い。ここで、相互に異なる繊維束とは、繊維の種類、繊維の相当直径若しくは繊維の素材のような繊維の特性、又は束の繊度のような繊維束の特性が異なるもののことをいう。上記繊維束は、ボール紙の薄片であってもよい。
【0027】
繊維網又は少なくとも一つの繊維束のような上記強化繊維構造であって、筐体の一端に平行な軸の周りに巻回され又は巻きつけられたり、上記筐体の一端自身の周りに巻回されたりする。上記強化繊維構造は、当該筐体が除去された場合、径方向に延伸する。これは、特に、上記筐体が径方向の内向力を上記フィルタ材の境界に働かせる場合である。上記内向力には、ガスが上記フィルタエレメントを通過して流れる場合に、上記フィルタ材が巻き取り型フィルタ内において、平均流方向にほとんど変位しない又は全く変位しないという効果がある。上記フィルタ材は、筐体及び/又はインサート材の内部に留め置かれている。上記フィルタ材はほとんど変位しない又は全く変位しないので、上記巻き取り型フィルタの吸気側側面又は排気側側面における上記繊維が焼結されていない場合であっても、上記繊維が上記円筒型筐体の外部へ移動することを抑制する手段は、必要不可欠ではない。
【0028】
上記フィルタ媒体の全ての層は、金属繊維を含んだり、金属繊維によって構成されたりすることがある。
【0029】
金属又は金属合金の何れの適切な種類もまた、金属繊維を提供するために用いられても良い。上記金属繊維は、例えばステンレスのような鉄から生成される。ステンレス合金は、AISI316L又はAISI347のようなAISI300シリーズ又はAISI400シリーズであることもあり、鉄、アルミニウム、クロム、及び、ステンレスを含む合金であることもある。ここで、上記ステンレスは、クロム、アルミニウム及び/又はニッケル、及び重量%においてイットリウム、セリウム、ランタン、ハフニウム、又はチタンが0.05%〜0.3%含まれている。銅や銅合金又はチタンやチタン合金も用いられることがある。
【0030】
金属繊維は、現在知られている何れの金属繊維生成方法を用いて生成されても良い。例えば、繊維束の引き上げ工程、JP3083144に述べられているコイル切削工程、ワイヤー切削工程(スチールウールのような)、又は、溶解された金属合金槽から金属繊維を提供する方法である。平均長を有する金属繊維を提供する為に、当該金属繊維は、WOO2/057035に述べられている方法、又は、US4664971に述べられているような金属繊維の粒状物を提供する方法を用いて切断されても良い。さもなければ、伸縮性が壊れてしまう。
【0031】
上記金属繊維の相当直径Dは、65μm以下のように100μm以下が好ましい。35μm、22μm、又は、17μmのように36μm以下であることがより好ましい。上記金属繊維の同一直径は、14μm、12μm、又は、11μmのように15μm以下であったり、8μmのように9μm以下であったりしても良い。上記金属繊維の同一直径Dは、7μm以下又は6μm以下であっても良い。また、1μm、1.5μm、2μm、3μm、3.5μm、又は、4μmのように5μm以下であっても良い。
【0032】
上記金属繊維は、循環型金属繊維又は単繊維としても知られている循環型繊維であっても良いし、0.1cmから5cmの間において変化する平均繊維長Lfiberを有しても良い。
【0033】
それ故に、上記繊維束は、金属繊維を削ったコイルの束であっても良い。また、上記繊維束は、繊維束の引き上げ工程によって得られた金属繊維束であっても良い。上記金属繊維からの引き上げ束は、EP280340に述べられている方法を用いて縮れた繊維であっても良い。
【0034】
上記繊維束は、200から10000又はそれ以上の数の繊維や単繊維のような複数の金属繊維を含んでも良い。
【0035】
金属繊維を含んでいる繊維網が用いられる場合、当該繊維網はエアーレイド方法又はウェットレイド方法によって提供されても良い。上記金属繊維網は、1mmから50mmの厚さ及び100g/m2から600g/m2の表面重量を有しても良い。
【0036】
上記フィルタ材は、更に、金属パウダー粒子のようなパウダー状のエレメント及び/又は触媒作用の要素を含んでも良い。
【0037】
上記巻き取り型フィルタの高さ、つまり、平均流路に沿った巻き取り型フィルタの長さは、本発明においては、制限を考慮していない。巻き取り型フィルタの高さは、例えば、典型的な5cmのように、3cmから20cmの間において変化しても良い。
【0038】
上記巻き取り型フィルタを満たしている上記フィルタ材は、70%〜99%の間隙率を有しても良い。上記フィルタ剤の上記間隙率は、上記巻き取り型フィルタの高さに沿って均一であっても良いし、上記巻き取り型フィルタの高さに沿って変化しても良い。上記間隙率は、吸気側側面から排気側側面へ徐々に又は段差のように変化しても良い。ここで、吸気側側面の間隙率は、排気側側面の間隙率よりも大きい。
【0039】
上記筐体の上記断面領域に対する上記フィルタ材の上記吸気口表面領域の比率は、2よりも大きいことが好ましい。上記平均流路に垂直な平面に従う上記巻き取り型フィルタの断面の表面領域は、(円筒型の巻き取り型フィルタの場合のように)上記巻き取り型フィルタの高さに沿って均一でも良いし、(円錐型の巻き取り型フィルタの場合のように)変化しても良い。上記平均流路に垂直な平面に従った断面の表面領域は、450mm2から13000mm2の間のように、又は12500mm2から96200mm2の間のように、例えば、450mm2から100000mm2の間において変化しても良い。
【0040】
金属繊維が用いられる場合、上記筐体は、当該金属繊維が提供される為に用いられた金属合金と類似又は同一の金属合金から提供される金属筐体であっても良い。
【0041】
好ましい実施形態において、上記フィルタ材は、軸方向に略円錐型の空洞部及び/又は軸方向に略円錐型の延長部を含んでいる。特に、上記円錐型の空洞は、吸気側側面において設置され、上記円錐型の延長部は、排気側側面において設置されても良い。上記円錐型の空洞部により、吸気側側面におけるフィルタエレメントの表面が増加する。吸気側側面における上記フィルタエレメントが目詰まりするのは遅くなるか、または、防止される。特に、上記円錐型の空洞部及び上記円錐型の延長部は、隣接したフィルタ材が軸上の表面と表面とが接触するように、略同一形状を成す。近隣のフィルタエレメントは、一フィルタ材の円錐型の延長部を、他のフィルタ材の円錐型の空洞部に挿入することで、より強く固着される。「円錐型の」という言葉は、「錐台のように形成される」又は「三角形の断面や部分的に円形又は部分的に楕円形の断面を有する錐台のように形成される」という意味もあると理解される。
【0042】
本発明の目的は、本発明の第二の態様に従って、フィルタエレメントを製造する方法により、更に達成される。
上記方法は、以下のステップを含む。
・繊維を含む、少なくとも先端を有する強化繊維構造を提供するステップ。
・上記強化繊維構造を上記先端に対して平行な巻回軸の周りに巻回させ、その結果、第一の直径を含むフィルタ材を提供するステップ。
・インサート材を軸方向においてごく部分的に上記フィルタ材上に提供するステップ、上記インサート材を上記巻回軸の周りに上記フィルタ材上に巻回させるステップ。
・更なる強化繊維構造を上記巻回軸の周りに巻回させ、その結果、第二の直径を含むフィルタ材を提供するステップ。
・フィルタ材で充満された巻き取り型フィルタを提供する為に、上記巻回軸に実質的に平行な方向において上記フィルタ材の外側境界と接している、ガスを透過させない筐体を提供するステップ。ここで、上記筐体は、上記巻き取り型フィルタへの平均流方向を規定する吸気側側面及び排気側側面を含んでおり、上記巻き取り型フィルタは、上記平均流方向に対して実質的に平行な軸を有している。
【0043】
そのようなフィルタエレメントが提供されると、特定の円筒型フィルタ材が規定される。上記フィルタ材は、本発明の第一の態様によれば、少なくとも50%又は少なくとも85%の複数の繊維が、少なくとも部分的に上記軸を取り囲むような繊維を含む。巻回することにより、上記フィルタ材の直径は、正確に調整される。更に、異なる層は隣接する外側の層により結合され、強靭なフィルタエレメントになる。インサート材を巻回する際に、フィルタ材が、当該インサート材が供給されない表面の周りに同時に巻回される。異なる素材が用いられても、軸方向における一定の直径は保たれる。
【0044】
特に、インサート材を巻回すること及び強化繊維構造を巻回することが続いて起こるステップが、一度以上、特に数度、提供される。第一インサート材は、吸気側側面から始まるように設置され、第二インサート材は、排気側側面から始まるように設置されることが好ましい。フィルタ材を巻回し、インサート材を巻回するという上記巻回するステップが数回繰り返されるので、排気ガス等を濾過する、大きく増加したフィルタ材表面を有する強靭なフィルタエレメントが提供される。ここで、必要な異なる製造ステップの数は少ない。第一インサート材及び第二インサート材は、互いに入れ替えて配置されるので、フィルタ材の軸方向における断面はメアンダ状となり、流入するガスに対する増加した表面及び低減された圧力降下をもたらす。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態に従って、ガスを透過させない筐体が提供される。これは、巻回軸に対して実質的に平行な方向におけるフィルタ材の外側境界を、ホイル又はプレートを用いて覆うことにより行われる。また、上記境界をホイル又はプレートを用いて覆うことは、(1)当該フィルタ材の周りに当該ホイル又は当該プレートを巻回することによって、また、(2)巻き取り型フィルタの軸方向において上記巻き取り型フィルタの外側境界に接している上記筐体を提供しつつ、径方向にガスを透過させないようにホイル又はプレートを密封することによって行われる。金属ホイル又は金属プレートのようなホイル又はプレートを、巻回されたフィルタ材の周りに巻回することにより提供される上記筐体は、当該フィルタ材に対し径方向内側に向けて(すなわち、巻回軸に向けて)向心力を及ぼす。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態に従って、巻き取り型フィルタは筐体を提供される。ここで上記筐体は、少なくとも2つのフィルタエレメントが提供されるように巻き取り型フィルタの軸に沿って少なくとも2つの部分に分割される巻き取り型フィルタの外側境界と接している。同一のフィルタ材及び同一の筐体を有する多数のフィルタエレメントが効果的に提供される。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記強化繊維構造は、自身の先端の周りに巻回される。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記強化繊維構造は、繊維網である。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記強化繊維構造には、少なくとも1つの繊維束が含まれる。
【0050】
平均流路に沿って与えられた位置における繊維量は、与えられた位置における網の繊維量を変化させたり、巻回された繊維網の層や繊維束の数、及び、巻きつけられた繊維網の層や繊維束の数を局所的に増やしたりすることにより、変化させることができる。特に、繊維束が巻回される為に用いられるとき、平均流路に沿って与えられた高さにおける繊維量、及び、上記フィルタエレメントのこの部分における間隙率は、容易に変化させることができる。
【0051】
上記繊維が金属繊維であっても良く、上記筐体が金属繊維を有するフィルタ材の周りに金属ホイル又は金属プレートを巻回することにより提供されても良い。
【0052】
本発明の第三の態様によれば、フィルタモジュールを製造する方法が提供される。上記方法は、以下のようなステップを含む。
・N個のフィルタエレメントを提供するステップ。ここで、上で述べられているように、本発明の第二の態様によれば、Nは2以上である。
・i番目のフィルタエレメントの吸気側側面と(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面とを結合するステップ。ここで、iは2からNの間において変化する。
【0053】
N個のフィルタエレメントの筐体は、同一の外周を有す。上記筐体が金属から提供される場合、筐体を互いに溶接したり、留め置いたりすることにより、フィルタエレメントの結合が行われる。
【0054】
フィルタエレメントが異なれば、フィルタ材は異なっても良い。上記フィルタ材は、同一の強化繊維構造又は異なる強化繊維構造を巻回することにより提供される。
【0055】
好ましい実施形態において、軸方向における略円錐型の空洞部及び/又は軸方向における略円錐型の延長部が、対応する形状の道具を用いて、上記フィルタエレメントに対して軸方向に圧力を印加することにより、上記フィルタエレメントに提供される。上記フィルタエレメントは、例えば留め置きなどのような保持手段により、自身の筐体によって保持される。上記フィルタエレメントを動かないようにした後で、円錐型の空洞部を提供するように円錐型の道具がフィルタ材にプレスされる。上記フィルタ材の軸方向における厚さが一定であり続けるように、印加圧力により、上記フィルタ材は圧力方向に部分的に動かされる。もしそうであれば、上記フィルタ材の規定された円錐型の延長部を保つ為に、反対側において対応する形状の道具が提供される。
【0056】
幾つかの実施形態に従って、N個のフィルタエレメントの少なくとも1つは触媒要素を含む。もしN個のフィルタエレメントの少なくとも2つが触媒要素を含むのであれば、1つのフィルタエレメントの触媒要素は、他のフィルタエレメントの触媒要素と異なる。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態に従って、上記方法は、第一フィルタエレメントの前面、又は、連続する2つのフィルタエレメントの間に、少なくとも1つのヒーターを提供するステップを含む。第一フィルタエレメントの前面、及び、連続するフィルタエレメントの幾つかのペアの間又は各ペアの間に、複数のヒーター(加熱部)が提供されても良い。ヒーターは電気的なヒーターである。
【0058】
上記ヒーターの制御は、連続するフィルタエレメントの前面、又は、連続するフィルタエレメントの間に位置づけられた温度センサー及び/又は圧力センサーに基づいて行われる。
【0059】
本発明の第四の態様によれば、フィルタモジュールが提供される。上記フィルタモジュールは、N個のフィルタエレメントを含む。ここで、Nは2以上であり、上記フィルタエレメントは、上述されているように、本発明の第一の態様に係るフィルタエレメントである。上記N個のフィルタエレメントは、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面を(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面に結合することにより、互いに結合している。ここで、iは2からNの間を変化する。
【0060】
本発明の実施形態に従って、少なくとも1つのフィルタエレメントは触媒要素を含む。
【0061】
本発明の実施形態に従って、上記フィルタモジュールは、第一フィルタエレメントの前面又は2つの連続したフィルタエレメントの間に位置づけられている、少なくとも1つのヒーター又はN個のヒーターを含む。
【0062】
本発明の特に好ましい側面は、付随の独立請求項及び従属請求項において述べられる。請求項において、明快なだけではなく適切に述べられるように、従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と結び付けられる。
【0063】
この分野の装置は、絶えず改善され、変化され、そして発展されているが、本発明の概念により、先行技術から出発し、効率的であり、安定した、信頼できるこの種の装置の提供に到達するという、実質的に新しく、優れた改善が示される。
【発明の効果】
【0064】
本発明を教示することで、改善されたディーゼル排気ガスフィルタシステムのデザイン、つまり、ディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置の排気ガスを濾過する為のデザインが可能になる。増加した空気透過率による、フィルタ媒体全体における低減された圧力降下によって、上記燃焼装置が受ける反発圧力が小さくなる。それ故に、この低減された圧力降下によって、本発明に従ったフィルタ媒体を有する排気フィルタが提供されるディーゼル燃焼エンジンのようなディーゼル燃焼装置の低燃費及び低操作コストという結果がもたらされる。低燃費であることにより、二酸化炭素の排出が少なくなり、温室効果ガスの排出が少なることにより、粒子性物質及びNOxに関する厳しいディーゼル放出規制が和らぐ。
【0065】
本発明における上記及び他の特性、特徴、及び利点は、本発明の原理を実例を挙げて図解している添付の図面と共に考慮すれば、以下の詳しい説明から明らかとなる。この詳細は、本発明の範囲を限定するものではなく、実例のためだけに与えられている。以下に引用される参照図面は、添付の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1a】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図1b】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図1c】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2a】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2b】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2c】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2d】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図2e】増加した吸気口表面領域を有する、本発明に係るフィルタエレメントの実施形態を更に示している。
【図3a】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図3b】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図3c】本発明の一態様に係るフィルタエレメントを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図4a】本発明の一態様に係るフィルタエレメント内に存在する繊維の投影図である。
【図4b】本発明の一態様に係るフィルタエレメント内に存在する繊維の投影図である。
【図5】本発明の一態様に係るフィルタモジュールを提供する方法の連続したステップの概要を示している。
【図6】本発明の一態様に係るフィルタモジュールの概要を示している。
【図7】本発明の一態様に係るフィルタエレメントの径方向における断面図の概要を示している。
【図8】図7に係る上記フィルタエレメントの軸方向における断面図の概要を示している。
【0067】
夫々の図面において、同一の符号は、同一又は類似の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、特定の実施形態に関して述べられ、幾つかの図面を参考にして述べられているが、本発明は、この実施形態や図面に限って限定される訳ではなく、請求項によってのみ限定される。上記図面は、概要が書かれているだけであり、限定されるものではない。上記図面において、エレメントの幾つかの大きさは、図示する為に誇張されており、必ずしも本来のスケールで書かれている訳ではない。ここでの寸法及び相対寸法は、本発明の現実の実施化に対応している訳ではない。
【0069】
更に、本明細書中及び請求項中の「第一の」、「第二の」、及び、「第三の」等の用語は、同様のエレメントを区別する為に用いられているものであり、時間的、空間的、等級上、又は他の方法における順序を示す為に用いられている訳ではない。使用される用語は、適切な環境下においては交換可能であると理解されるべきである。また、本明細書において述べられている本発明の実施形態は、本明細書において述べられ図解された順序以外においても実施可能であると理解されるべきである。
【0070】
加えて、本明細書中及び請求項中の「上」、「下」、「上に」、及び、「下に」等の用語は、便宜的に用いられているものであり、必ずしも相対的な位置を述べる為に用いられている訳ではない。使用されている用語は、適切な環境下においては交換可能であると理解されるべきである。また、本明細書において述べられている本発明の実施形態は、本明細書において述べられ図解された方向づけ以外においても実施可能である。
【0071】
請求項で用いられている「含んでいる(備えている)」という言葉を、その後に記載されている手段に制限するものと解釈すべきでない。「含んでいる(備えている)」という用語は、他のエレメント又は他のステップを除外しない。したがって、「含んでいる(備えている)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、又は、構成要素の存在を、ありのままに特定するが、一又は複数の特徴、整数、ステップや構成要素、又は、これらのグループの存在又は追加を排除するものではない。この為、「手段A及びBを備えている装置」という表現の範囲を、構成要素A及び構成要素Bのみで構成される装置に限定すべきでない。本発明に関しては、「手段A及びBを備えている装置」という表現は、装置の構成要素であって、関連する構成要素がA及びBであるという意味である。
【0072】
同様に、請求項で用いられている「接続されている」という用語を、直接的な接続にのみ制限するように解釈すべきでない。「接続されている」及び「連結されている」という用語は、夫々の派生語と共に用いられてもよい。これらの用語は、互いに同義語である訳ではないことを考慮すべきである。それ故に、「装置Bに接続されている装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接接続されている装置又はシステムに制限されるべきではない。「装置Bに接続されている装置A」という表現は、装置Aの出力と装置Bの入力との間にパスが存在するという意味である。ここで、上記パスは他の装置又は他の手段を含んでも良い。「接続されている」という用語は、2つ又はそれ以上のエレメントが、物理的に又は電気的に直接の接触を有すること、又は、2つ又はそれ以上のエレメントが、互いに直接的に接触していないが、互いに協調して動作していること又は相互作用していることを意味することがある。
【0073】
本明細書を通して、「一実施形態」又は「1つの実施形態」という言及は、当該実施形態に関して述べられた特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。それ故に、本明細書中の様々な箇所において見られる、「一実施形態において」又は「1つの実施形態において」という表現については、すべてが必ずしも同一の実施形態について言及するものではないが、全てが同一の実施形態について言及するものであっても良い。更に、上記特定の特徴、構造、又は特性は、一又は複数の実施形態において、任意の適した方法を用いて組み合わされても良い。上記方法は、本発明の開示により通常の一当業者にとっては明白な方法である。
【0074】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、単一の実施形態、図面、又は説明にまとめられていることがある。これは、効率良く開示する為、及び、様々な発明の態様の一又は複数を理解する手助けになる為である。しかしながら、この開示方法は、各請求項に記載された発明が各請求項において明白に列挙された特徴よりも多くの特徴を必要とする、という意味を示していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が示すように、発明の態様は、先に開示された単一の実施形態の全特徴にある訳ではない。それ故に、詳細な説明に付随する請求項は、その詳細な説明の中に取り込まれ、各請求項は、本発明における個々の実施形態として独立している。
【0075】
更に、本明細書で述べられている幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれている特徴のうち、いくつかの特徴を含みそれ以外の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴を組合せたものは、当業者が理解できるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の請求項において、クレームされた任意の実施形態を、任意の実施形態と組合せとして用いることができる。
【0076】
その上、上記実施形態の幾つかは、コンピュータシステムのプロセッサによって実行される方法や方法のエレメントの組合せ、又は、機能を実行する他の方法によって実行される方法や方法のエレメントの組合せとして、本明細書において述べられている。それ故に、方法及び方法のエレメントを実行する為に必要不可欠な命令を有するプロセッサは、方法又は方法のエレメントを実行する為の手段を形成する。更に、装置の実施形態の本明細書に記述されたエレメントは、本発明を実行する為のエレメントによって実行される機能を実行する為の手段の一例である。
【0077】
本明細書の記述において、多くの特定された詳細が述べられている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定された詳細を用いずに実施することができる。他には、良く知られている方法、構造及び技術は、詳しく示されていない。これは、本明細書の理解を不明確にしないようにする為である。
【0078】
以下の用語は、単に、本発明の理解の手助けとなることを目的とするものである。
【0079】
「間隙率」Pは、P=100*(1−d)であるとして理解される。ここで、dは、焼結された金属繊維媒体1m3の重量をSFで割った値である。ここで、SFは、上記焼結された金属繊維媒体の金属繊維を提供する合金の1m3当たりの比重である。
【0080】
「空気透過率」(APとも記述される)は、ISO4002と同等である、NF95−352にて述べられた装置を用いて測定される。NF95−352の試験方法、つまりISO4002は、上記装置を巻き取り型フィルタのより大きな直径に適応させるように修正される。これは、じょうご状の中間エレメントを上記巻き取り型フィルタと上記装置の吸気口との間に取り付けることにより行われる。上記じょうご状のエレメントは、片側においては上記吸気口の周囲と合致し、反対側においてはフィルタの筐体の周囲と合致する。上記じょうご状のエレメントは、リークを避ける為に、上記吸気口及び上記フィルタ筐体の両方に封止される。
【0081】
特定繊維の「相当直径」は、円形の径方向断面を有する仮想繊維の直径である。ここで、上記断面は、特定繊維の断面の平均的な表面領域と同等の表面領域を有す。
【0082】
本発明は、本発明の幾つかの実施形態に関する詳しい記述によって述べられる。本発明の他の実施形態が、真の精神又は本発明の技術的な教示から出発しなくとも、当業者の知識によって再現されるということ、及び、本発明が、添付の請求項における用語によってのみ制限されるということは明白である。
【0083】
本発明の第二の態様に従って、フィルタエレメントを製造する為の連続したステップが、図1aから図1cに示されている。
【0084】
図1aの第一ステップに示されているように、強化繊維構造101が提供される。ここで、構造101は繊維102を含んでいる。繊維網である上記強化繊維構造は、先端103、後端104、側端105及び側端106を有す。強化繊維構造101は、実質的に矩形の繊維網である。
【0085】
強化繊維構造に適した例として、例えば、相当直径が35μmのコイル切削金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び300g/m2の表面重量を有する。他には、相当直径が22μmのコイル切削金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び450g/m2の表面重量を有する。また、相当直径が17μmの繊維束引き上げ金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び300g/m2の表面重量を有する。更に、相当直径が12μmの繊維束引き上げ金属繊維のランダムエアーレイド網がある。この繊維網は、例えば、10mmから150mmの幅及び200g/m2の表面重量を有する。
【0086】
強化繊維構造101中の繊維102は、実質的に繊維網表面107に平行な平面に方向付けられている。上記平面において、上記繊維はランダムに方向付けられている。実質的に後端及び先端に沿って一直線な繊維もあれば、側端に平行な平面方向に延伸する繊維もあり、両者の中間に方向付けられる繊維もある。
【0087】
後端104に沿って、金属ホイル110が強化繊維構造101に取り付けられる。例えば、後端に沿ってホイル110は、強化繊維構造101に対して、溶接112を用いて溶接することによって取り付けられる。ホイル110は、FECRALLOY(登録商標)ホイルのような鉄―クロム―アルミニウム合金ホイルであり、強化繊維構造101の幅と同一の幅Wを有し、巻回された強化繊維構造の周囲を少なくともひと巻きするに足る長さLfを有す。上記ホイルの幅は、幅Wと適合する部分にて略700mmの幅を有するホイルを細長く切ることにより調節可能である。
【0088】
強化繊維構造101は、巻回軸130の周りに巻回され又は巻きつけられる。ここで、巻回軸130は、先端103に対して平行である。この実施形態において、強化繊維構造101は、先端103自身の周りに巻回される。巻回は、矢印131が示すような方向に従って行われる。巻回の際は、強化繊維構造101が実質的に矩形であるので、側端105及び側端106は、夫々一直線になっており、一度巻回されると一平面となる。
【0089】
強化繊維構造101を巻回することにより、フィルタ材111が提供される。以下に詳しい記述を示すが、繊維102の多数(この実施形態においては、例えば85%以上)は、少なくとも軸130を部分的に取り囲む。これは、繊維が繊維網の中において存在しており、実質的に繊維網表面107に平行な向きに方向付けられるからである。繊維網表面107が、軸130の周りに螺旋状に変形される場合、繊維網表面107と同一平面上の繊維は、この螺旋形状に従って少なくとも部分的に軸130を取り囲む。
【0090】
ガスを透過させない筐体は、巻回軸130に対して実質的に平行な方向に、フィルタ材111の外側境界113をホイル110を用いて覆うことにより提供される。これは、図1bに示されているように、フィルタ材の周りにおいてホイルを巻回することを続けることにより行われる。ホイル110及び強化繊維構造101が互いに結合されるように、これは1つの操作において行われる。ホイル110は、フィルタ材111の周りに少なくとも一度は完全に巻回されている。ホイル110の後端114がホイルと接するところで、図1cに示されているように、例えば、溶接141に沿って溶接することにより、ホイルはホイル自身によって密封される。このようにして、筐体140は提供される。ここで、筐体140は、フィルタ材111によって充満されている巻き取り型フィルタ150を提供する為に、巻回軸130に実質的に平行な方向にフィルタ材111の外側境界113と接している。
【0091】
筐体140は、径方向に、つまり、巻回軸130から外方向にガスが浸透しないようになっている。
【0092】
巻回の際に、ホイルにかなり大きな巻回張力を印加することにより、フィルタ材111は径方向内側に圧縮される。この圧縮により、上記フィルタ材が径方向にあらかじめ張力をかけられている状態になる。この張力により、筐体内のフィルタ材が、フィルタエレメントを通過するガスに沿った軸方向に変位しないように留め置かれ、フィルタ材の変位及びフィルタ材の繊維部分の変位が避けられる。
【0093】
このようにして、本発明の第一の態様に係るフィルタエレメント100は提供される。フィルタエレメント100は、ガスを透過させない筐体を含んでいる。ここで、上記筐体は、巻き取り型フィルタ150に対する平均流方向153を規定する吸気側側面151及び排気側側面152を提供する。円筒型の巻き取り型フィルタ150は、巻回軸130と同一の軸であって、平均流方向153と実質的に平行な軸を有す。フィルタエレメント100の巻き取り型フィルタ150は、幅WWと同一の高さHを有す。
【0094】
後端又は先端に対して平行な構成要素を有する方向に従った繊維網に存在する上記繊維は、少なくとも部分的に軸130を取り囲む。側端に対して平行な構成要素を有する方向に従った繊維網に存在する上記繊維は、少なくとも部分的にフィルタエレメント100の軸方向に延伸する。
【0095】
繊維網である強化繊維構造101及びホイル110は、上記フィルタエレメントが127mmの直径Dを有するように巻回される。上記フィルタ材は、例えば97%又はそれ以上の間隙率を有す。空気透過率は、吸気側側面151と排気側側面152との間において200Paの圧力降下を用いて測定される。ここで、上記空気透過率は、下記の表1に示されているように、特に繊維の相当直径、巻き取り型フィルタの高さ、及び間隙率に依存している。
【0096】
【表1】
【0097】
本発明の第一の態様に係る他のフィルタエレメント200は、図2a〜図2dに大まかに示されている連続したステップである方法を用いて提供される。
【0098】
図2aに示されているように、強化繊維構造201が提供される。ここで、構造201は、繊維202の束208を含んでいる。強化繊維構造201は、先端203を有す。
【0099】
繊維束208は、例えば、35μm又は22μmのような適切な相当直径を有するコイル切削金属繊維又は繊維束引き上げ金属繊維を含んでいる。上記繊維束は、典型的な3g/mの繊度を有す。繊維束引き上げ金属繊維の繊維束が用いられる場合、繊維束の繊維は、繊維の厚み、つまり繊維束の厚みを増加させるように、ひだを寄せて提供される。
【0100】
強化繊維構造201の繊維202は、実質的に繊維束208に平行な向きに方向付けられる。
【0101】
強化繊維構造201は、シャフト232の周りに巻回され又は巻きつけられる。ここで、シャフト232は巻回軸230を規定する。矢印231によって示された方向に従って巻回される。繊維束208は、シャフト232の周りにL1の長さに巻回される。上記繊維束は、シャフトの2つの端点(点a及び点bとして示されている)間において繊維束208をガイドする往復ガイド手段234を用いてガイドされる。シャフトの回転及びガイド手段の往復動作により、繊維束は、例えば、シャフト232の周りの螺旋状パス又は渦巻状パスに巻回される。
【0102】
シャフトの長さに沿って与えられた位置において巻回の数を注意深く規定することにより、異なる位置における繊維の量が決定されたり、変更されたりする。図2bに示されているように、円錐の長さに沿って厚みが異なる円錐型巻回繊維層が提供される。22においては、巻回が行われている際のガイド手段に従うパスが示されている。第一フェーズIにおいては、上記繊維束は円錐の全長であるゾーンZ1に沿って提供される。第二フェーズIIの際、上記繊維束はゾーンZ2の長さに沿って巻回され、第三フェーズIIIにおいては、上記繊維束はゾーンZ3にのみ沿って巻回される。ゾーンZ3においてはより多くの繊維が提供されるのに対し、ゾーンZ1においては最小の繊維しか提供されない。
【0103】
強化繊維構造201を巻回することにより、フィルタ材211が提供される。以下において詳しく説明するように、繊維202の多く(この実施形態では85%又はそれ以上)は、少なくとも部分的に軸230を取り囲む。これは、繊維が、繊維束の中において繊維束に対して平行な方向に存在するからである。繊維束208が、軸230に沿って螺旋状に変形される場合、上記繊維は、軸230を部分的に取り囲む。
【0104】
図2cにおいて示される更なるステップにおいては、FECRALLOY(登録商標)のような鉄―クロム―アルミニウム合金ホイルであるホイル210は、強化繊維構造101の巻回長L1と同一の幅Wfを有し、巻回された強化繊維構造の周囲を少なくともひと巻きするに足る長さLfを有す。上記ホイルは、略230μmの厚みを有す。上記ホイルの幅は、幅Wと適合する部分にて略700mmの幅を有するホイルを細長く切ることにより調節可能である。
【0105】
ガスを透過させない筐体は、ホイル210を用いて巻回軸230に対して実質的に平行な方向にフィルタ材211の外側境界213を覆うことにより提供される。これは、図2cに示されているように、上記ホイルを上記フィルタ材の周りに巻回することにより行われる。ホイル210はフィルタ材211の周りに少なくとも一度は完全に巻回されている。ホイル210の後端214がホイルと接するところにおいて、図2dに示されているように、例えば、溶接241に沿って溶接することにより、当該後端は当該ホイルによって密封される。このようにして、筐体240は提供される。ここで、図2dに示されているように、フィルタ材211で充満された巻き取り型フィルタ250を提供する為に、筐体240は、巻回軸230と実質的に平行な方向にフィルタ材211の外側境界213と接している。
【0106】
筐体240において、ガスは、径方向に、つまり、巻回軸230から外側方向に透過しない。
【0107】
巻回の際に、ホイルにかなり大きな巻回張力を印加することにより、フィルタ材211は径方向内側に圧縮され、巻回又は巻き付けの際に得られたフィルタ材211の円錐型形状は円筒型形状に変化する。より多くの繊維が存在するゾーンは、より強く圧縮され、これらのゾーンにおける当該フィルタ材は、密度がより大きくなる。異なる間隙率を有する連続したゾーンP1、P2、及び、P3を有するフィルタ材211が得られる。
【0108】
筐体240が提供された後で、フィルタ材211から軸方向に引き抜くことにより、シャフト232は除去される。
【0109】
このようにして、ガスを透過させない筐体240を有するフィルタエレメント200が提供される。ここで、上記筐体は、巻き取り型フィルタ250に対する平均流方向253を規定する、吸気側側面251及び排気側側面252を提供する。円筒型である巻き取り型フィルタ250は、平均流方向253に対して実質的に平行な巻回軸230と同一の軸を有す。フィルタエレメント200の巻き取り型フィルタ250は、幅Wfと同一の高さHを有す。
【0110】
繊維束208は、円筒型の巻き取り型フィルタ、及び、例えば、当該巻き取り型フィルタの周りに巻回されたホイルのような筐体を有する円筒型の巻き取り型フィルタを提供する為に巻回されると理解される。軸方向に実質的に均一の間隙率を有する同様のフィルタエレメントが得られる。例えば、22μmの相当直径を有するコイル切削繊維の繊維束である強化繊維構造201及びホイル210は、フィルタエレメントが直径127mm及び長さ50mmを有するように巻回される。間隙率が97%であるフィルタ材は、空気透過率が470l/dm2/minである。間隙率が98%となるように巻回された同一の繊維束は、空気透過率が635l/dm2/minである。例えば、35μmの相当直径を有するコイル切削繊維の繊維束である結合繊維構造201及びホイル210は、フィルタエレメントが直径127mm及び長さ50mmを有するように巻回される。間隙率が97%であるフィルタ材は、空気透過率が722l/dm2/minである。間隙率が98%となるように巻回された同一の繊維束は、空気透過率が926l/dm2/minである。空気透過率は、吸気側側面251と排気側側面252との間において200Paの圧力降下を用いて測定される。
【0111】
上記繊維の多くが、繊維束方向に沿って繊維束208の中に存在するので、上記繊維の多くが、少なくとも部分的に軸230を取り囲む。上記繊維束が螺旋状又は渦巻状に巻回されているので、上記繊維の方向は軸方向の成分を有するものとなり、それ故に、繊維の多くは、少なくとも部分的にフィルタエレメント200の軸方向に延伸する。
【0112】
また、図1a〜図1c及び図2a〜図2dには示されていないが、巻き取り型フィルタの外側境界と接している筐体が一度提供された巻き取り型フィルタは、少なくとも2つのフィルタエレメントを提供するように、巻き取り型フィルタの軸に沿って少なくとも2つの部分に分割される。上記巻き取り型フィルタ及び筐体からの切削長に従って、異なる高さ又は等しい高さを有するフィルタエレメントが提供される。円錐型のフィルタ媒体211を有する、本発明に従ったフィルタエレメントの更なる実施形態が図2eに示されている。この実施形態において、フィルタ材は、軸方向における略円錐型の空洞部及び/又は軸方向における略円錐型の延長部を含んでいる。特に、上記円錐型の空洞部は吸気側側面に位置し、上記円錐型の延長部は排気側側面に位置する。上記円錐型の空洞部により、吸気側における上記フィルタエレメントの表面は増加する。円錐形状ではなく単に平面形状であった場合に比べて、上記フィルタの表面領域は2倍以上になる。増加した表面領域により、吸気側側面におけるフィルタエレメントの目詰まりは減少したり、遅延したりする。特に、上記円錐型の空洞部及び上記円錐型の延長部は、隣接したフィルタ材の軸上の表面と表面とが接触するように、略同一形状を成す。
【0113】
本発明の第一の態様に係る他のフィルタエレメント300は、図3a〜図3cに大まかに示されている連続したステップである方法を用いて提供される。
【0114】
円錐型のフィルタ媒体211は、図2a〜図2bを用いて述べられた方法と同一の方法にて提供される。
【0115】
ガスを透過させない筐体340は、2つの円錐型の外殻301及び302を用いて、巻回軸230に対して実質的に平行な方向にフィルタ材211の外側境界213を覆うことにより提供される。フィルタ材211は、互いに連結している2つの外殻301と302との間に留め置かれる。これは、径方向に延伸しているフランジ310及び311を互いにボルトで締めたり、溶接したり、リベットで留めたりすることにより行われる。また、フランジの間において封止312が行われる。このようにして、筐体340は提供される。ここで、筐体340は、図3a〜図3cに示されているように、フィルタ材211で充満された巻き取り型フィルタ350を提供する為に、フィルタ材211の外側境界213に接している。
【0116】
筐体340において、ガスは、径方向に、つまり、軸230から外方向に透過しない。
【0117】
円錐状に巻回されることにより繊維がより多く存在するゾーンにおいては、軸230に対して実質的に垂直な平面に従った断面に対する表面領域がより広くなる。
【0118】
筐体340が提供された後で、シャフト232は、フィルタ材211から軸方向に引き抜くことにより除去される。
【0119】
このようにして、フィルタエレメント300は提供される。ここで、当該フィルタエレメントは、ガスを透過しない筐体340を有し、当該筐体は、巻き取り型フィルタ350に対する平均流方向353を規定する吸気側側面351及び排気側側面352を有す。円錐型の巻き取り型フィルタ350は、平均流方向353に対して実質的に平行な巻回軸230と同一の軸を有する。フィルタエレメント300の巻き取り型フィルタ350は、巻回長L1と同一の高さHを有す。
【0120】
上記繊維の多くは、繊維束方向に沿って繊維束208の中に存在するので、上記繊維の多くは、少なくとも部分的に軸230を取り囲む。上記繊維束が螺旋状又は渦巻状に巻回されているので、上記繊維の方向は軸方向の成分を有するものとなり、それ故に、繊維の多くは、少なくとも部分的にフィルタエレメント300の軸方向に延伸する。
【0121】
図4a及び図4b中の401及び411は、平面AA’上の平均流路方向に投影された、幾つかの繊維の投影線403及び413を夫々大まかに示している。ここで、平面AA’は平均流路400に対して垂直である。
【0122】
図4a及び図4b中の402及び412は、平面BB’上の、幾つかの繊維の投影線404及び414を夫々大まかに示している。ここで、平面BB’は平面BB’に対して垂直な方向に投影された平均流路を有す。
【0123】
図4aはフィルタエレメント100に対応する。405は軸130の投影を表す。
【0124】
図4bはフィルタエレメント200に対応する。415は軸230の投影を表す。
【0125】
401から明白なように、平面AA’上の繊維の投影は、少なくとも部分的に軸の投影405を取り囲むパスを示している。それ故に、平面AA’上に投影された繊維は、三次元で見られるものと同様に、少なくとも部分的に軸を取り囲む。最適なフィットラインの凹状側は、投影405に向き付けられる。
【0126】
402から明白なように、平面BB’上の繊維の投影は、軸方向に延伸している構成要素を有するパスを示している。例えば、投影が406によって表される繊維は、軸方向に長さLaに沿って延伸している。
【0127】
411から明白なように、平面AA’上の繊維の投影は、少なくとも部分的に軸の投影415を取り囲むパスを示している。これは、フィルタ材を提供する為に用いられた繊維束208中の繊維が、フィルタエレメント100を提供する為に用いられた繊維網中の繊維に比べ長いことから、より明白である。それ故に、平面AA’に投影された繊維は、三次元で見られるものと同様に、少なくとも部分的に軸を取り囲む。最適なフィットラインの凹状側は、投影415に向き付けられる。
【0128】
412から明白なように、平面BB’上の繊維の投影は、軸方向に延伸している構成要素を有するパスを示している。例えば、投影が416によって表される繊維は、軸方向に長さLaに沿って延伸している。
【0129】
図5には、本発明の第三の態様に従って、フィルタモジュールを製造する為の方法が示されている。この実施形態3において、上記方法は、N個のフィルタエレメント501、502、及び503を提供するステップを含んでいる。上記フィルタエレメントは、例えば、円筒型のフィルタエレメントである。上記フィルタエレメントの各々は、本発明の何れの方法にも従って、巻き取り型フィルタの外側境界に接する筐体511、521、及び531の夫々を有する巻き取り型フィルタ510、520、及び530の夫々をまず提供することにより提供される。上記巻き取り型フィルタの外側境界に接する筐体を有する上記巻き取り型フィルタは、巻き取り型フィルタの軸方向に沿って幾つかの部分に分割され、その結果、本発明に従ったフィルタエレメントを毎回少なくとも2つ提供する。
【0130】
この実施形態において、3つの異なるフィルタエレメント501、502、及び503が提供される。各フィルタエレメントは吸気側側面510及び排気側側面511を有す。
【0131】
更なるステップにおいて、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面が(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面に結合されている。実施形態2及び実施形態3において、iは変化する。金属筐体である上記筐体は、例えば、溶接507に沿って溶接されるように、上記筐体の外端に沿って互いにきつく結合されている。吸気側側面505及び排気側側面506を有し、本発明に従った複数のフィルタエレメントを含むフィルタモジュール500が提供される。フィルタエレメントをフィルタモジュールに結合する為に、多数が組み合わせて行われる。ここで、上記フィルタエレメントは、本発明の方法に従って提供される。
【0132】
例として、吸気側側面505及び排気側側面506を有し、直径が127mmである3つの円筒型フィルタエレメントを含むフィルタモジュール500が提供される。このフィルタエレメントは以下の通りである。
(1)吸気側側面505を提供する第一フィルタエレメント501は、30μmのコイル切削繊維を含む。ここで、上記コイル切削繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた300g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。
(2)中間にある第二フィルタエレメント502は、22μmのコイル切削繊維を含む。ここで、上記コイル切削繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた450g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。
(3)第三フィルタエレメント503は、17μmの繊維束引き上げ繊維を含む。ここで、上記繊維束引き上げ繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた300g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。上記第三フィルタエレメントは、排気側側面506を提供する。
【0133】
また、図5には示されていないが、第四フィルタエレメントが、流方向に沿って第三エレメント503の後方に提供される。この第四エレメントは12μmの繊維束引き上げ繊維を含む。ここで、上記繊維束引き上げ繊維は、エアーレイド製法によりランダムに織られた200g/m2の繊維網を用いて提供される。上記繊維網は、図1に示されている実施形態に従って巻回されている。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲にあり、典型的には50mmである。第四フィルタエレメントを含む実施形態においては、上記第四フィルタエレメントが、第三フィルタエレメントに代わり排気側側面を提供する。
【0134】
他の例として、第一フィルタエレメントは、3g/mの繊度を有する30μmのコイル切削繊維の少なくとも一束又は複数束を巻回することにより提供される。上記繊維束は、図2の実施形態に従って巻回され、軸方向に実質的に均一の間隙率を有する円筒型の巻き取り型フィルタを提供する。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲内において変化するが、典型的には50mmである。
【0135】
第二フィルタエレメントは、3g/mの繊度を有する22μmのコイル切削繊維の少なくとも一束又は複数束を巻回することにより提供される。上記繊維束は、図2の実施形態に従って巻回され、軸方向に実質的に均一の間隙率を有する円筒型の巻き取り型フィルタを提供する。上記フィルタエレメントの高さは、10mmから150mmの範囲内において変化するが、典型的には50mmである。
【0136】
図6に示されているように、フィルタモジュール600はヒーター601を含む。例えば、電気ヒーターは、第一フィルタエレメント610の前方、及び/又は連続したフィルタエレメント620や630の夫々の間、及び630と640との間に提供される。
【0137】
これらのヒーターは、同時又は個々に制御され、上記フィルタモジュールを通過するガスを加温する為に電流が通される。このガスの温度上昇により、上記フィルタエレメント610、620、630、及び/又は640を用いて保有されていた炭素が、フィルタモジュール600を再生させる為に熱せられる。
【0138】
ヒーター601の制御は、温度及び/又は連続したフィルタエレメントの前又は間に設置された圧力センサーに基づいて行われる。
【0139】
本発明に従ったフィルタモジュールにおいて、少なくとも1つのフィルタエレメントが、例えば巻き取り型フィルタ中の金属繊維の少なくとも一部をコートすることにより、触媒が提供される。本発明の実施形態において、DOC−触媒キャリアを用いる。DOCとは、ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst)を意味し、このようなエレメントは典型的にディーゼル微粒子フィルタの前に設置される。本発明の実施形態に従ったDOCエレメントは、炭化水素を二酸化炭素及び水へと酸化し、NOxからN2Oを生成することを促す。本発明の実施形態には、例えば100μmのような、50μmよりも大きな繊維直径を有する繊維を有するDOCエレメントとしてのフィルタエレメントが含まれる。
【0140】
本発明に従ったフィルタモジュールの他の実施形態において、上記フィルタエレメントの少なくとも1つに、例えば巻き取り型フィルタ内の金属繊維の少なくとも一部をコートすることにより、選択的接触還元(SCR)を用いて排気ガス中のNOxを還元させる為に最適な触媒が設けられる。
【0141】
本発明に従ったフィルタモジュールの他の実施形態において、上記フィルタエレメントの少なくとも1つに、炭素、炭素を含む混合物、及び一酸化炭素を二酸化炭素に酸化させる触媒が設けられる。
【0142】
本発明に従ったフィルタモジュールの他の実施形態において、上記フィルタエレメントの少なくとも1つに、排気ガスを濾過して炭素微粒子の大部分を取り除いた後、NOxをNO2に酸化させる為の触媒が設けられる。少なくとも第一フィルタエレメントの下流側に設置された少なくとも第二フィルタエレメントの少なくとも繊維の一部が、NO2からN2への還元により提供された酸素を用いることによる、濾過された炭素微粒子の酸化を促進する触媒を用いてコートされる。
【0143】
図7に示されているように、フィルタエレメント700は、数層から成るフィルタ材702及び中軸708の周りに巻回されたインサート材704及び706を含む。インサート材704により、流路710を形成する自由空間が提供される。第一インサート材704は吸気側側面712から始まり、第二インサート材706は排気側側面714から始まる。ここで、第一インサート材704及び第二インサート材706は、中軸708からその外側において入れ替えることが出来る。フィルタ材702の繊維束及びインサート材704及び706は、特に圧着されることにより、筐体716に受け止められる。吸気側側面712における流路710により、排気ガス等を濾過するフィルタ材702の表面が増加する。排気側側面714における流路710により、濾過されたガスに対しての圧力降下が低減される。
【0144】
図8に示されているように、インサート材704及び706は、チューブ状に形成され、中軸708に対して同軸となるように配置される。これにより、径方向の断面図においてインサート材704及び706のリング状デザインがもたらされる。図解された実施形態において、インサート材704及び706は、隣接する曲面間に流路710を提供するように、波型のシート又はワイヤーメッシュである。
【0145】
本発明を実施する方法及びフィルタエレメントの、目的を達成する為の他の組合せは、当業者にとって明白である。
【0146】
本明細書において、本発明に従ったデバイスにとっての好ましい実施形態、特定の構造や配置、及び素材について議論が成されたが、簡単な数々の変更又は補正及び詳細な数々の変更又は補正は、添付の請求項により規定されているように、本発明の範囲から逸脱することなく行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼルの煤を取り除くためのフィルタエレメントにおいて、
巻き取り型フィルタ(filter volume)の外側境界を定める筐体であって、平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有し、上記平均流方向に対して略平行な軸を有する筐体を備え、
上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、
上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、
上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、
上記巻き取り型フィルタは、上記フィルタ材よりも空気透過率が高いインサート材であって、該インサート材の一部が上記平均流方向に沿って突き出ているようなインサート材を備えている、ことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
上記巻き取り型フィルタ内に、上記吸気側側面から第1のインサート材が設けられ、且つ、上記排気側側面から第2のインサート材が設けられており、
上記第1のインサート材と上記第2のインサート材とは、上記巻き取り型フィルタ内の直径が異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
上記インサート材は波型の金属シートによって設けられ、
上記金属シートは特に開口部を含んでいる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
上記金属シートは、金属繊維網(特に上記フィルタ材と同一の素材)から生成され、
上記金属シートは、上記フィルタ材よりも形状安定性が高い、ことを特徴とする請求項3に記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
上記インサート材は、上記筐体の上記軸を少なくとも部分的に取り囲み、
上記インサート材の上記平均流方向における断面の形状は、円環状、または部分円環状になっている、ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項6】
上記繊維は、上記平均流方向に対して略平行な巻回軸の周りに巻回された強化繊維構造の一部となっている、ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項7】
上記フィルタ材は、軸方向に略円錐型の空洞部及び略円錐型の延長部の少なくともいずれかを備えている、ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項8】
フィルタエレメントを製造する製造方法であって、
繊維を含む、少なくとも前縁部を有する強化繊維構造を設けるステップと、
上記強化繊維構造を上記前縁部に対して平行な巻回軸の周りに巻回させることによって、第1の直径を持つフィルタ材を設けるステップと、
上記フィルタ材のインサート材を部分的に軸方向に設けるステップと、
上記フィルタ材への上記インサート材を上記巻回軸の周りに巻回させるステップと、
更に別の強化繊維構造を上記巻回軸の周りに巻回させることによって、第2の直径を持つフィルタ材を設けるステップと、
上記巻回軸に略平行な方向に沿って上記フィルタ材の外側境界と接するように、ガスを透過させない筐体を設けることによって、フィルタ材が充填された巻き取り型フィルタ(filter volume)を製造するステップと、
を含んでおり、
上記筐体は、上記巻き取り型フィルタへの平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を備えており、
上記巻き取り型フィルタの軸は、上記平均流方向に対して略平行になっている、ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
連続して行われる上記インサート材を巻回させるステップ及び上記強化繊維構造を巻回させる上記ステップを、1回以上、特に数回に亘って行い、
上記インサート材を軸方向に設けるステップにおいて、第1のインサート材を上記吸気側側面から設置し、第2のインサート材を上記排気側側面から設置する、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ガスを透過させない筐体を設けるステップは、上記巻回軸に対して略平行な方向におけるフィルタ材の外側境界を、ホイル又はプレートで覆うステップを含んでおり、
該ステップにおいて、上記筐体が上記巻き取り型フィルタの軸方向における上記外側境界に接するように、且つ、上記筐体が径方向にガスを透過させないように、上記ホイル又は上記プレートを上記フィルタ材の周りに巻回させるとともに、上記ホイル又はプレートを密封する、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
上記筐体及び上記巻き取り型フィルタを、それぞれ、上記巻き取り型フィルタの上記軸に沿って少なくとも2つの部分に分割することにより、少なくとも2つのフィルタエレメントを製造する、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
フィルタモジュールを製造する製造方法であって、
請求項8から11のいずれか1項に記載の製造方法に従ってN個のフィルタエレメントを製造するステップと、
2からNまでの各iについて、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面と(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面とを結合するステップと、を含んでいる、ことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
上記フィルタエレメントを製造するステップにおいて、対応する形状の道具を用いて、上記フィルタエレメントに対して軸方向に圧力を印加することにより、略円錐型の空洞部及び略円錐型の延長部を軸方向に沿って上記フィルタエレメントに設ける、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
N個のフィルタエレメントを備えているフィルタモジュールであって、
Nは2以上であり、
上記フィルタエレメントは請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタエレメントであり、
上記N個のフィルタエレメントは、2からNまでの各iにおける、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面と(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面との結合により、互いに結合している、ことを特徴とするフィルタモジュール。
【請求項15】
上記フィルタモジュールは、最初のフィルタエレメントの直前か、又は連続した2つのフィルタエレメントの間に加熱部を少なくとも1つ含んでいる、ことを特徴とする請求項14に記載のフィルタモジュール。
【請求項16】
特にディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼルの煤を取り除くためのフィルタエレメントにおいて、
巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体であって、
平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有し、上記平均流方向に対して略平行な軸を有し、吸気側に断面領域を有する筐体を備え、
上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、
上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、
上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、
上記フィルタ材の上記吸気側の断面領域は、上記筐体の断面領域よりも面積が大きいことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項17】
上記筐体の上記断面領域に対する上記フィルタ材の上記吸気側の断面領域の面積比は2より大きい、ことを特徴とする請求項16に記載のフィルタエレメント。
【請求項1】
特にディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼルの煤を取り除くためのフィルタエレメントにおいて、
巻き取り型フィルタ(filter volume)の外側境界を定める筐体であって、平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有し、上記平均流方向に対して略平行な軸を有する筐体を備え、
上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、
上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、
上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、
上記巻き取り型フィルタは、上記フィルタ材よりも空気透過率が高いインサート材であって、該インサート材の一部が上記平均流方向に沿って突き出ているようなインサート材を備えている、ことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
上記巻き取り型フィルタ内に、上記吸気側側面から第1のインサート材が設けられ、且つ、上記排気側側面から第2のインサート材が設けられており、
上記第1のインサート材と上記第2のインサート材とは、上記巻き取り型フィルタ内の直径が異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
上記インサート材は波型の金属シートによって設けられ、
上記金属シートは特に開口部を含んでいる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
上記金属シートは、金属繊維網(特に上記フィルタ材と同一の素材)から生成され、
上記金属シートは、上記フィルタ材よりも形状安定性が高い、ことを特徴とする請求項3に記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
上記インサート材は、上記筐体の上記軸を少なくとも部分的に取り囲み、
上記インサート材の上記平均流方向における断面の形状は、円環状、または部分円環状になっている、ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項6】
上記繊維は、上記平均流方向に対して略平行な巻回軸の周りに巻回された強化繊維構造の一部となっている、ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項7】
上記フィルタ材は、軸方向に略円錐型の空洞部及び略円錐型の延長部の少なくともいずれかを備えている、ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項8】
フィルタエレメントを製造する製造方法であって、
繊維を含む、少なくとも前縁部を有する強化繊維構造を設けるステップと、
上記強化繊維構造を上記前縁部に対して平行な巻回軸の周りに巻回させることによって、第1の直径を持つフィルタ材を設けるステップと、
上記フィルタ材のインサート材を部分的に軸方向に設けるステップと、
上記フィルタ材への上記インサート材を上記巻回軸の周りに巻回させるステップと、
更に別の強化繊維構造を上記巻回軸の周りに巻回させることによって、第2の直径を持つフィルタ材を設けるステップと、
上記巻回軸に略平行な方向に沿って上記フィルタ材の外側境界と接するように、ガスを透過させない筐体を設けることによって、フィルタ材が充填された巻き取り型フィルタ(filter volume)を製造するステップと、
を含んでおり、
上記筐体は、上記巻き取り型フィルタへの平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を備えており、
上記巻き取り型フィルタの軸は、上記平均流方向に対して略平行になっている、ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
連続して行われる上記インサート材を巻回させるステップ及び上記強化繊維構造を巻回させる上記ステップを、1回以上、特に数回に亘って行い、
上記インサート材を軸方向に設けるステップにおいて、第1のインサート材を上記吸気側側面から設置し、第2のインサート材を上記排気側側面から設置する、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ガスを透過させない筐体を設けるステップは、上記巻回軸に対して略平行な方向におけるフィルタ材の外側境界を、ホイル又はプレートで覆うステップを含んでおり、
該ステップにおいて、上記筐体が上記巻き取り型フィルタの軸方向における上記外側境界に接するように、且つ、上記筐体が径方向にガスを透過させないように、上記ホイル又は上記プレートを上記フィルタ材の周りに巻回させるとともに、上記ホイル又はプレートを密封する、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
上記筐体及び上記巻き取り型フィルタを、それぞれ、上記巻き取り型フィルタの上記軸に沿って少なくとも2つの部分に分割することにより、少なくとも2つのフィルタエレメントを製造する、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
フィルタモジュールを製造する製造方法であって、
請求項8から11のいずれか1項に記載の製造方法に従ってN個のフィルタエレメントを製造するステップと、
2からNまでの各iについて、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面と(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面とを結合するステップと、を含んでいる、ことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
上記フィルタエレメントを製造するステップにおいて、対応する形状の道具を用いて、上記フィルタエレメントに対して軸方向に圧力を印加することにより、略円錐型の空洞部及び略円錐型の延長部を軸方向に沿って上記フィルタエレメントに設ける、ことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
N個のフィルタエレメントを備えているフィルタモジュールであって、
Nは2以上であり、
上記フィルタエレメントは請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルタエレメントであり、
上記N個のフィルタエレメントは、2からNまでの各iにおける、i番目のフィルタエレメントの吸気側側面と(i−1)番目のフィルタエレメントの排気側側面との結合により、互いに結合している、ことを特徴とするフィルタモジュール。
【請求項15】
上記フィルタモジュールは、最初のフィルタエレメントの直前か、又は連続した2つのフィルタエレメントの間に加熱部を少なくとも1つ含んでいる、ことを特徴とする請求項14に記載のフィルタモジュール。
【請求項16】
特にディーゼル燃焼エンジンの排気ガスを濾過してディーゼルの煤を取り除くためのフィルタエレメントにおいて、
巻き取り型フィルタの外側境界を定める筐体であって、
平均流方向を定める吸気側側面及び排気側側面を有し、上記平均流方向に対して略平行な軸を有し、吸気側に断面領域を有する筐体を備え、
上記筐体は、上記平均流方向に沿って、上記巻き取り型フィルタの上記外側境界を定めるようになっており、
上記筐体は、径方向にガスが透過しないようになっており、
上記巻き取り型フィルタの少なくとも一部分に、繊維を含んでいるフィルタ材が、上記繊維の大部分が上記軸の少なくとも一部分を取り囲むように充填されており、
上記フィルタ材の上記吸気側の断面領域は、上記筐体の断面領域よりも面積が大きいことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項17】
上記筐体の上記断面領域に対する上記フィルタ材の上記吸気側の断面領域の面積比は2より大きい、ことを特徴とする請求項16に記載のフィルタエレメント。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−528078(P2011−528078A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517758(P2011−517758)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059199
【国際公開番号】WO2010/006638
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(502385850)エン・ベー・ベカルト・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】N.V. BEKAERT S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059199
【国際公開番号】WO2010/006638
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(502385850)エン・ベー・ベカルト・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】N.V. BEKAERT S.A.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]