説明

フィルタハウジングおよびフィルタハウジングの製作方法

本発明は、フィルタハウジングに関し、特に内燃機関の吸入空気フィルタ用のフィルタハウジングに関し、フィルタハウジング(16)は少なくとも一つの上側ハウジング部材(12)と少なくとも一つの下側ハウジング部材(11)を有する。上側ハウジング部材(12)は下側ハウジング部材(11)と気密に連結される。ハウジング部材(11、12)は遠心鋳造法により製作され、ハウジング部材(11、12)は幾何学的に規定された外側面(A)および幾何学的に規定されない下側面(I)を有する。ハウジング部材(11、12)のうちの一つのハウジング部材の外側面(A)はハウジング部材(11、12)の他のハウジング部材の外側あるいは内側面と連結される。かくて、コスト的に有利な製作方法とともに互いにぴったりと合うハウジング(11、12)を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタハウジングおよびフィルタハウジングの製作方法に関する。特に本発明は内燃機関の吸入空気フィルタ用のフィルタハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタハウジングは、典型的には射出成形法により製作される。射出成形の際にハウジングの上側部材と下部側材は別々の型工具で製作される。その際、熱可塑性の鋳込み材料(粉末状、粒状、ペレット状、ペースト状等)が流動点(約180℃)まで熱せられ、ついで閉じられた、二つの部分からなる、鋼鉄製の、水冷式の空洞型工具に高圧力のもとで噴出され、そこで鋳込まれた材料は冷却し凝固する。鋳込み材料としては、ポリスチロール、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテルおよびエステル、ポリエチレン、メタクリル酸エステル、およびその他の熱可塑性プラスチック、型工具内で硬化する熱硬化性プラスチックまたは生ゴムあるいはシリコン生ゴムを加硫したエラストマーおよび部分的には発砲プラスチック材も用いられる。
【0003】
空気フィルタにおいては、清浄前の空気が正常前空気領域から清浄後空気領域に流入しないように、両ハウジング部材間の良好な気密が保証をされなければならない。そしてまた、他の適用例では、ハウジング部材はできるだけ気密に蓋部材で閉じられるのが目的に叶い有利である。そのために、通常は蓋部材とハウジング殻体の間に配置されるシール部材が用いられる。プラスチック製のハウジングの場合には、ハウジング成形の際に変形が生じ、その際の公差は場合によっては両ハウジング部材間に隙間ができる危険が生じる可能性がある。
【0004】
このような隙間が生じるのを防止する従来知られている方策は、シール領域の部分を例えば材料の量を増やして強化する、あるいは場合によっては金属材料からなる補強部材を入れることであった。材料の量を増やすことは、プラスチックの場合さらに大きな変形をもたらすことになる。しかるに、金属材料の補強部材を用いるとプラスチックのリサイクルが不可能となり、また少しではあるが重量が増大するという欠点がある。
【0005】
特許文献1(EP0726389B)には、一方あるいは両方のプラスチック部材に全面的に閉じた少なくとも一つの通路を設けて該通路が前記部材の剛性および曲げ強度を高めたものが既に提案されている。該通路は内部ガス圧力法により形成される。この方法においては、先ず1回の射出でプラスチック材が射出成形され、ついで射出成形ノズルあるいは別のノズルで空気が形成すべき通路に吹き込まれて空気を通す通路が形成される。
【0006】
この方式もまた射出成形法を用いるので、フィルタハウジングの上側部材および下側部材用に2つの別々の型工具を必要とし、その際型工具は空気ノズルのために非常に高価となる。
【特許文献1】EP0726389B
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、十分な気密性と剛性を有し、型工具を用いて簡単で低コストで製作できるフィルタハウジングおよびフィルタハウジングの製作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1および5に記載の特徴により解決される。
【0009】
本発明によるフィルタハウジングは一つの上側および一つの下側ハウジング部材を有し、これら両ハウジング部材は互いに気密に連結されている。ハウジング部材の連結は、例えばねじあるいはスナップ締め具でなされるが、勿論その他現状技術で公知の連結方法を用いてもよい。両ハウジング部材の間には両ハウジング部材をシールするシール部材を設けることができる。その際、該シールは両ハウジング部材に密着する。フィルタハウジング内には、該フィルタハウジングにより囲まれる清浄前領域を同じく該フィルタハウジングで囲まれる清浄後領域から分けるフィルタエレメントを装着することができる。該フィルタエレメントにより気体状あるいは液体状の流体が清浄化される。このような流体は、例えば自動車内の空気あるいは内燃機関の吸入空気であってよい。前記ハウジング部材は遠心鋳造法で製作され、幾何学的に規定された外側面と幾何学的に規定されない内側面を有する。外側面は型工具に直接に接触することにより比較的小さな公差で形成される。ハウジング部材の内側面は製作中に前記工具に接触することがなく、ハウジング部材の壁厚と外側面の輪郭により決まる。したがって、内側面の公差は比較的大きなものとなる。一方のハウジング部材の幾何学的に規定された外側面が他方のハウジング部材の外側面あるいは内側面に連結される。そして両ハウジング部材は、それぞれが互いに他方の部材とシール領域で接続できるように形成される。該シール領域は、好ましくは一方のハウジング部材では受け部に、他方のハウジング部材では挿入部に形成される。前記受け部は外側面によっても、あるいは内側面によっても形成することができる。前記挿入部は前記受け部に嵌め込まれるハウジング部材領域である。該挿入部は同様に外側面あるいは内側面によって形成することができる。このようにして、フィルタエレメントの十分な気密を達成することができる。ハウジング部材は遠心鋳造法によって製作されるので、工具にかかるコストが射出成形の場合ほど高くなく、このことは少量生産の場合に有利である。さらに、バス、トラックなどの商業車両用吸気装置など容積が大きいハウジング部材を安価に製作することができる。
【0010】
本発明の別の形態では、少なくとも一つのハウジング部材は二重壁に形成されて内側面が少なくとも部分的に外側面により囲まれる。特別な実施形態では、内側面は外側面により完全に囲まれてハウジング内に密閉された容積が形成される。両ハウジング部材が二重壁に形成される場合は、それらの幾何学的に正確に規定された外側面が互いに対応してフィルタハウジングの十分な気密と剛性が達成される。
【0011】
本発明の他の実施形態では、下側ハウジング部材は上側ハウジング部材と一体で遠心鋳造法により製作される。これら両ハウジング部材は工具から取り出した後に互いに分割される。この場合もまた、両ハウジング部材間の廃棄部分を取り除いて分割することができる。この実施形態の利点は、両ハウジング部材を同時に製作することにより、一方においては製作コストが二つのハウジング部材を別々に製作するのに比べて低くなり、他方においては外側および内側面の幾何学形状を互いに合わせることができることであり、これにより最適にぴったりと嵌り合う形状と気密が達成される。
【0012】
本発明によるフィルタハウジング製作方法には、少なとも空洞型工具にプラスチック粉体を充填する工程と、該空洞型工具を加熱、回転、冷却および開く工程がある。空洞型工具を開いた後に形成されたハウジング部材が型抜きされる。形成されたハウジング部材は互いに連結されるが、その際一方のハウジング部材の外側面が他方のハウジング部材の外側あるいは内側面と連結される。この方法により、ハウジング部材は、低いコストで、ぴったりと嵌り合うように、したがって良好な気密性を保持するように製作される。
【0013】
プラスチック粉体の充填に際しては正確に計量された量が空洞型工具内に入れられる。プラスチック粉体としては、例えば粉状あるいは粒状であってよい。さらに、該プラスチック粉体は、また、例えば流動性のようなプラスチック成形材として適する粘り気があってもよい。該プラスチック粉体には、例えばカーボンブラック、炭素繊維、ガラス球あるいは繊維のような充填材を混入してもよく、これらの充填材は形成される部品の機械的強度を高め、並びに化学的安定性を向上する。充填されるプラスチック粉体の量は形成される部品の大きさと壁厚に応じて決められる。フィルタハウジングの材料としては、例えばポリアミドが適する。この材料は特に自動車用のフィルタハウジングに適する、というのは、この材料は価格が手頃であり、自動車における条件に適するからである。プラスチック粉体を充填する前に、空洞型工具には離形剤を吹きつけ、あるいは塗布することができ、これにより形成されたプラスチック部品を空洞型工具から容易に取り出すことができる。空洞型工具は、例えばアルミニューム鋳物、鋼板、あるいは電気的に製造されたニッケルまたは銅で製作される。形成される部品の外側面の輪郭形状に内表面が形成された空洞型工具は加熱される。この加熱は空洞型工具に内臓された加熱装置あるいは外部からの供給熱により行うことができる。空洞型工具に、特にその壁に内臓される加熱装置は、例えば加熱ワイヤを具えることができる。空洞型工具は充填されたプラスチック粉体が溶解する温度まで加熱され、該プラスチックが空洞型工具の極軸および赤道軸回りの回転により空洞型工具の内表面に均一に分布される。この時空洞型工具は、例えば毎分約5回転で回転される。かくて、成形された部品の壁厚は略均等となる。プラスチック粉体が全て溶解して空洞型工具内に均等に分布されると、空洞型工具は再び冷却されて溶解物が凝縮し、部品が形成される。空洞型工具の冷却は該部品が均等に冷却されるようになされ、それにより収縮による過大な変形が避けられる。前記部品が十分に冷却されると空洞型工具は型分割面で開かれ、部品が取り出される。これらの部品が完全に冷却した後に、これらのハウジング部材はフィルタハウジングに組み立てられるが、場合によってはこれらハウジング部材に機械加工が行われる。そのような加工は、例えば清浄化する流体の流入および流出のための開口である。組立てに際しては、一方の部品の外側面は他方の部品の内側あるいは外側面に嵌め込まれて両部品が互いに最適に気密に連結される。
【0014】
遠心鋳造により製作された部品は形成過程においてその外側面のみが空洞型工具に接触する。該部品の内側面は空洞型工具に接触することはなく、したがって該内側面は規定の形状に従って形成されることはない。
【0015】
有利な実施形態では、両ハウジング部材は一つの空洞型工具内で一体に形成される。ハウジング全体部材は型抜き後に二つあるいはそれ以上のハウジング部材に分割される。このように分割することにより個々のハウジング部材が得られる。ハウジング部材を分割する場合には、前記ハウジング全体部材を形成する際に個々のハウジング部材を連結しておく廃棄部分を設けておくことができる。ハウジング全体部材の製作に際して、前記廃棄部分は両ハウジング部材を単に繋いでおく役目をするものであり、両ハウジング部材間の繋ぎ部は空洞型工具内の溶融物が各部に流れることができるように形成される。この繋ぎ部分を大きくすることは避けるべきである。
【0016】
プラスチック粉体としてポリエチレンおよびポリプロピレンを用いることは有利である。これらの材料は手頃な価格であり、遠心鋳造法で容易に成形することができる。さらにこれらの材料は耐水性がある。
【0017】
上記およびその他の本発明の好ましい実施例の特徴が、請求項のほか、明細書及び図面から読み取れ、それらの特徴が個々にあるいは幾つかが組み合わされて本発明の実施形態に実施され、および他の分野で適用されて有利かつそれ自身保護され得る実施形態を具現することができ、それらに対して茲に保護を要請する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のさらなる詳細は以下図面を参照して説明される。図1にハウジング全体部材10が断面で示されている。該ハウジング全体部材10は一つの空洞型工具(図示せず)内に壁厚sを有する大きな一体の空洞部品として形成される。ハウジング全体部材10の外側面Aと内側面Iの間の壁厚sはハウジング全体部材全体に亘り略一定である。該ハウジング全体部材10は下側ハウジング部材11となる一つの領域を有する。他の一つの領域は上側ハウジング部材12となる。これら両ハウジング部材11、12は、鎖線で示す線に沿って廃棄部分13で繋がっている。ハウジング部材11、12の形状は、前記廃棄部分13を除去した後に互いに嵌り合って互いに連結できるような形状にしてある。そのために、前記下側ハウジング部材11は幾何学的には下側ハウジング部材11の外側面Aで形成される挿入部14を有する。前記上側ハウジング部材12は前記廃棄部分13を除去した後に前記挿入部14を受け入れる受け部15を有する。該受け部15は幾何学的には上側ハウジング12の内側面Iで形成される。
【0019】
図2にはフィルタハウジング16が断面で示してある。図1に対応する構成には同じ符号が付してある。該フィルタハウジング16は上側ハウジング部材12と下側ハウジング部材11を有する。下側ハウジング部材11にはフィルタエレメント17が取り付けてある。該フィルタエレメント17は下側ハウジング部材11と上側ハウジング部材12の間で気密に装着されていて、それにより清浄前領域18が清浄後領域19から分離されている。清浄前領域18は上側ハウジング12内にあり、該上側ハウジング12は機械加工により明けられた流入口20を有している。清浄後領域19は下側ハウジング11内にあり、該下側ハウジング11は同じく機械加工により明けられた流出口21を有している。流入口20および流出口21は勿論、空洞型工具を特別な形状とすることにより、ハウジング部材製作時に形成することができる。清浄化すべき流体は、矢印方向に流入口20を通ってフィルタハウジング16内に流入し、フィルタエレメント17を通って清浄化され、続いて流出口21を通って同様に矢印方向に流出する。
【0020】
図3には二重壁の上側ハウジング部材12’が断面で示されている。該上側ハウジング部材12’では、外側面Aは内側面Iを全面的に囲むように形成されている。かくして、上側ハウジング部材12’は全面が空洞型工具で幾何学的に規定されて小さな公差で形成された外側面Aを有する。この小さな公差により、挿入部14’は幾何学的に正確に形成されてハウジング部材12’の壁厚の影響を受けることがない。内側面Iは閉じられた内部容積22を囲み、そこは流体が通り抜けて流れることがない。該内部容積22は内燃機関の吸気騒音を減衰させることができる音響効果を有する。さらに、この上側ハウジング部材12’はその二重壁構造により高い剛性を有する。
【0021】
図4には同様に二重壁に形成された下側ハウジング部材11’が示されている。図3に対応する構成には同じ符号が付してあり、外側面A、内側面I、および内部容積についての説明は下側ハウジング部材11’についても同様である。受入れ部15’は図3の挿入部14’と同様に全部が外側面で形成されている。したがって、受入れ部15’は幾何学的に正確な輪郭を有する。この受入れ部15’にフィルタエレメント(不図示)を嵌め込み、上側ハウジング部材12’の挿入部14’で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ハウジング全体部材の概略断面図である。
【図2】フィルタハウジングの断面図である。
【図3】2重壁の上側ハウジング部材の断面図である。
【図4】図4は、2重壁の下側ハウジング部材の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの上側ハウジング部材(12)と一つの下側ハウジング部材(11)を有し、前記上側ハウジング部材(12)は前記下側ハウジング部材(11)と連結可能な特に内燃機関の吸入空気フィルタ用のフィルタハウジング(16)であって、前記ハウジング部材(11、12)は遠心鋳造法により製作され、該ハウジング部材(11、12)は幾何学的に規定された外側面(A)および幾何学的に規定されない下側面(I)を有し、これらハウジング部材(11、12)のうちの一つのハウジング部材の外側面(A)はこれらハウジング部材(11、12)の他のハウジング部材の外側あるいは内側面と連結されることを特徴とするフィルタハウジング。
【請求項2】
前記ハウジング部材(11、12)のうちの少なくとも一つのハウジング部材は二重壁に形成され、内側面(I)は少なくとも部分的に、特に全面的に外側面(A)により囲まれていることを特徴とする請求項1記載のフィルタハウジング。
【請求項3】
前記上側および下側ハウジング部材(11、12)は一体に製作され、つぎの加工工程で前記上下のハウジング部材に分割されることを特徴とする請求項1記載のフィルタハウジング。
【請求項4】
前記ハウジング部材(11、12)の間に分割のための廃棄部分(13)が設けられていることを特徴とする請求項3記載のフィルタハウジング。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項によるフィルタハウジングを製作する、少なくともつぎの加工工程、すなわち製作するハウジング部材の形状に対応する空洞型工具にプラスチック粉体を満たし、該空洞型工具を加熱し、該空洞型工具を赤道軸および極軸回りに回転し、該空洞型工具を冷却して開き、ハウジング部材(11、12)を型抜きする工程を有する製作方法であって、前記両ハウジング部材(12)および(11)は互いに連結され、その際これらのハウジング部材(11、12)のうちの一つのハウジング部材の外側面(A)はこれらのハウジング部材(11、12)の他のハウジング部材の外側面(A)あるいは内側面(I)と連結されることを特徴とするフィルタハウジング製作方法。
【請求項6】
前記両ハウジング部材(11、12)は、一体に一つの工程で製作され、型抜き後に二つあるいはそれ以上の部材に分割されてハウジング部材(11、12)にされ、ついでハウジング部材(11、12)が互いに連結されることを特徴とする請求項5記載のフィルタハウジング製作方法。
【請求項7】
プラスチック粉体としてポリエチレンあるいはポリプロピレンが用いられることを特徴とする請求項5あるいは6に記載のフィルタハウジング製作方法。
【請求項8】
前記ハウジング部材(11、12)が締付け具、ねじ、あるいは同様な部材で互いに連結されることを特徴とする請求項5乃至7に記載のフィルタハウジング製作方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−515587(P2007−515587A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544459(P2006−544459)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053600
【国際公開番号】WO2005/061880
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(505229863)マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (86)
【Fターム(参考)】