説明

フィルタユニットに対するフィルタエレメントの装着構造及びその構造を備えたフィルタユニット

【課題】フィルタエレメントの交換の作業を精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができ、また部品の飛び出し分の余分なスペースを確保する必要もなく、見栄えも優れたフィルタエレメントの装着構造及びその構造を備えたフィルタユニットを提供すること。
【解決手段】基体20は、軸部材33を回転可能に支持する支持部21を備えており、押圧部材30は、凹部12に挿入される挿入部30aと、螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジ31とを備えており、軸部材33は、この第1ネジ31と螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジ32を備えていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームなどの天井や壁などに設置される吹出し(又は給気)フィルタユニット又は吸込み(又は排気)フィルタユニットなどに好適に用いられるフィルタエレメントの装着構造に関し、特にフィルタエレメントの取替え又は着脱を確実に、しかも素早く、容易に行うことができるフィルタエレメントの装着構造及びその構造を備えたフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クリーンルームなどの高い清浄度が要求される室には、前処理用のフィルタ装置によって塵埃を除去した清浄空気が部屋の天井などから吹出すように、又は吸込むように、吹出し口又は吸い込みロが設けられており、この吹出しロ又は吸い込みロには、さらに空気の清浄度を高めるべく、高性能のフィルタエレメントを内蔵する吹出し又は吸い込みフィルタユニット(以下、単にフィルタユニットという)が設置されている。
【0003】
そして、この高性能のフィルタエレメントが目詰まりした際には、フィルタユニットに取り付けられていたフィルタエレメントを新品と交換する必要があり、交換の作業をできる限り精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができることが求められていた。このようなフィルタユニットとしては、例えば特許文献1や特許文献2や図12に示すフィルタユニットにおいて種々提案されてきている。
【特許文献1】実開昭62−40434号公報
【特許文献2】実開平7−9419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、図13の(1)及び図13の(2)に示すような取付構造が従来技術として記載されている。また、図12に示すような取付構造が知られている。しかし、このような取付け構造では、ナットに螺合している長ボルト210の長さが長いために、ナットの締め付け具合の調整が難しく、幾つかのナットの間でアンバランスが生じるとエアリークの原因となることから、取付けに手間を要していた。また、フィルタエレメントの吹き出しロ側から押圧金具211を取り付けるため、ナット212や長ボルトの頭が吹き出し口よりも飛び出してしまい、飛び出し分の余分なスペースが必要になったり、見栄えも悪いという問題があった。
【0005】
また、この従来技術を改良した特許文献1の技術では、図13に示すように、長ボルトの替わりにボルト213を用いて、フィルタエレメントの吹き出しロ側からフィルタ枠214を取り付けている。しかし、この例では、押圧金具ではなく枠構造をしたフィルタ枠支持体214をボルト213を用いて取り付ける必要があるため、取付けに手間がかかったり、またナットや長ボルト215の頭が吹き出しロよりも飛び出してしまうという問題があり、飛び出し分の余分なスペースが必要になったり、見栄えも悪いという問題があった。
【0006】
このような吹出しフィルタユニットに関連して、特許文献2には、図15に示すように、長手方向両側に方形突状部2aを備えた枠板2からなる外枠3を備えたフィルタ1の固定装置であって、受部材5に立設した軸部材7と、前記方形突状部2aの対向間隙9内に没入可能に前記軸部材7と直行方向に回動自在に取付けられた当て具8と、この当て具8を前記受部材5に向かって締め付ける締付部材4からなるフィルタ固定装置が記載されている。
【0007】
しかし、この特許文献2におけるフィルタ固定装置では、当て具8を方形突状部2aの対向間隙9内に没入するのは、人手による作業となっており、またナット4で締め付けるには横の空間から行なう必要があるなど、吹出しフィルタユニットや、狭い空問しか許されない場合には、この固定装置を適用することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決して、フィルタエレメントの交換の作業を精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができ、また部品の飛び出し分の余分なスペースを確保する必要もなく、見栄えも優れたフィルタエレメントの装着構造及びその構造を備えたフィルタユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、
「側面に凹部12が形成されたフレーム11を有するフィルタエレメント10を、基体20に押圧部材30によって装着する構造であって、
基体20は、軸部材33を回転可能に支持する支持部21を備えており、
押圧部材30は、凹部12に挿入される挿入部30aと、螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジ31とを備えており、軸部材33又は支持部21は、この第1ネジ31と螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジ32を備えていて、
第2ネジ32と第1ネジ31とを螺合させ、且つ軸部材33を支持部21で支持しながら回転させることにより、押圧部材30を回動させて、その挿入部30aが凹部12に挿入されると共に、押圧部材30の挿入部30aが基体20に取り付けられたフィルタエレメント10のフレーム11に押し当てるようにしたことを特徴とするフィルタエレメント10の装着構造」
である。
【0010】
すなわち、この請求項1に係る発明は、図2に示すように、側面に凹部12が形成されたフレーム11を有するフィルタエレメント10を、基体20に押圧部材30によって装着する構造に関するものである。
【0011】
この場合、基体20は、図2、図4、図5、図6、及び図7の(1)に示すように、後述する押圧部材30のための軸部材33を回転可能に支持する支持部21を備えている。また、この支持部21の下方には、図2、図4、図5、及び図6に示すように、軸部材33の下端を回転自在に支持することになる取付穴22が形成してあり、この取付穴22は、上記支持部21に形成してある挿通孔と軸心を一致させるように形成してある。
【0012】
押圧部材30は、例えば図2に示すように、凹部12に挿入される挿入部30aと、螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジ31とを備えており、また軸部材33又は支持部21は、この第1ネジ31と螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジ32を備えている。
【0013】
以上のような構成を有することによって、この請求項1に係る発明のフィルタエレメント10の装着構造においては、第2ネジ32と第1ネジ31とを螺合させ、且つ軸部材33を支持部21で支持しながら回転させることにより、押圧部材30を回動させて、その挿入部30aが凹部12に挿入されると共に、押圧部材30の挿入部30aが基体20に取り付けられたフィルタエレメント10のフレーム11に押し当てられることになる。
【0014】
つまり、このフィルタエレメント10の装着構造においては、フィルタエレメントの交換の作業を精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができ、また部品の飛び出し分の余分なスペースを確保する必要もなく、見栄えも優れたものとなっているのである。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のフィルタエレメントの装着構造について、
「第1ネジ31は押圧部材30に設けられたネジ孔であり、このネジ孔に螺合される第2ネジ32のネジ部は軸部材33の少なくとも一部の外周面に形成したこと」
である。
【0016】
すなわち、この請求項2に係る発明では、図2及び図6に示すように、第1ネジ31を押圧部材30に設けられたネジ孔とし、このネジ孔に螺合される第2ネジ32のネジ部を軸部材33の少なくとも一部の外周面に形成したものである。
【0017】
これにより、軸部材33の先端に設けてある押圧部材30の挿入部30aが、フレーム11の凹部12内に入って当該フレーム11に当接するまで第2ネジ32とともに回転するが、挿入部30aがフレーム11に当接してそれ以上の回転ができなくなると、第2ネジ32の回転によってこれに螺合している第1ネジ31が上方または下方に移動するだけとなる。第2ネジ32を上記とは反対側に回転させた場合も同様である。なお、第2ネジ32の回転は、基体20の取付穴22から露出している下端にドライバ等の工具を差し込んで行う。
【0018】
以上のようにして軸部材33を回転させるとき、押圧部材30は、その挿入部30aがフレーム11の凹部12内に入って当該フレーム11に当接するまで軽く回転するが、挿入部30aがフレーム11に当接してそれ以上の回転ができなくなると、軸部材33の回転は重くなる。つまり、軸部材33の回転が重くなったとき、押圧部材30の挿入部30aがフレーム11に当接したことを意味し、更に数回転することによりフィルタエレメント10の基体20に対する固定作業完了を簡単に認識できるのである。
【0019】
従って、この請求項2に係る構造にあっては、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、軸部材33の回転操作状況で固定完了が容易に認識できるものとなっているのである。また、この構造では、フィルタエレメント10を取り外す場合は、第2ネジ32を装着時に反対側に回転させ、第1ネジ31を下方または上方に移動しながら、押圧部材30の挿入部30aをフレーム11の凹部12の外へ基体20の壁に当接するまで回動することによって容易に取り外しができるのである。
【0020】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のフィルタエレメントの装着構造について、
「第1ネジ31が押圧部材30に立設固定したボルト30bであり、軸部材33の少なくとも一部が中空となっており、その中空の周面が第2ネジ32としてのネジ孔となっていること」
である。
【0021】
すなわち、この請求項3に係る装着構造では、図4に示すように、上述した請求項2のそれとは逆に、第1ネジ31を押圧部材30に立設固定したボルト30bとし、軸部材33の少なくとも一部を中空として、この中空部分の周面を第2ネジ32としてのネジ孔としたものである。
【0022】
これにより、この第2ネジ32の下端は、図4に示すように、基体20の取付穴22から露出していることになり、この第2ネジ32と螺合する第1ネジ31の上端に押圧部材30が直接的に一体化されることになる。これにより、固定作業停止時期が、第2ネジ32の回転操作が重くなった時の後にくることを直接的に感知することができるのである。
【0023】
従って、この請求項3に係る構造にあっては、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、第2ネジ32自体の回転操作状況で固定完了が容易に認識できるものとなっているのである。また、この構造では、フィルタエレメント10を取り外す場合は、第2ネジ32を装着時と反対側に回転させることによって、容易に取り外しができるのである。
【0024】
また、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のフィルタエレメントの装着構造について、
「押圧部材30は軸部材33と摺動可能に一体化されており、支持部21が第2ネジ32を備えていること」
である。
【0025】
すなわち、この請求項4に係る発明では、図7に示すように、押圧部材30は軸部材33と押圧部材30に設けた潤滑部材(この例では樹脂製のジュラコンブッシュ35)を介して摺動可能に一体化させてあり、支持部材21に第2ネジ32を形成したものである。
【0026】
これにより、軸部材33を支持部材21に設けた第2ネジ32を介して、支持部材21で支持しながら回転させることにより、軸部材33の先端部分に摺動可能に一体化した押圧部材30を回動させて、その挿入部30aがフレーム11の凹部12に入って当該フレーム11に当接してそれ以上の回転ができなくなると、第1ネジ31を有する軸部材33の先端部分の摺動部で押圧部材30が摺動することになり、その一方第1ネジ31は回転し続けて上方または下方に移動して、押圧部材30がフィルタエレメント10のフレーム11に押し当てられることになる。
【0027】
以上のようにして軸部材33を回転させるとき、押圧部材30は、その挿入部30aがフレーム11の凹部12内に入って当該フレーム11に当接するまで軽く回転するが、挿入部30aがフレーム11に当接してそれ以上回転ができなくなると、軸部材33の摺動部に摺動が発生して回転は重くなる。つまり、軸部材33の回転が重くなったとき、押圧部材30の挿入部30aがフレーム11に当接したことを意味し、更に数回転することにより、フィルタエレメント10の基体20に対する固定作業完了を簡単に認識できるのである。
【0028】
従って、この請求項4に係る構造にあっては、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、軸部材33の回転操作状況で固定完了が容易に認識できるものとなっているのである。また、この構造では、フィルタエレメント10を取り外す場合は、第2ネジ32を装着時に反対側に回転させ、第1ネジ31を下方または上方に移動しながら、押圧部材30の挿入部30aをフレーム11の凹部12の外へ基体20の壁に当接するまで回動することによって容易に取り外しができるのである。
【0029】
さらに、上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、
「請求項1〜4の何れかに記載の装着構造を備えたフィルタユニット100であって、
基体20としての、フィルタユニット外枠にフィルタエレメント10が装着されており、フィルタユニット外枠に、天井面60または壁面と実質的に同じ高さに吹き出しロ又は吸込み□70が設けられており、
軸部材33の先端が天井面60または壁面と実質的に同位置にあり、軸部材33の回転を天井面60または壁面で行なう構造としたことを特徴とするフィルタユニット100」
である。
【0030】
すなわち、この請求項5のフィルタユニット100は、図1、図8〜図12の各(2)及び(3)に示すように、まず、フィルタユニット外枠(基体20)に、天井面60または壁面と実質的に同じ高さに吹き出しロ又は吸込み口70を設けたものであり、つぎに、軸部材33の先端を天井面60または壁面と実質的に同位置にし、軸部材33の回転を天井面60または壁面で行なう構造としたものである。
【0031】
つまり、上述したフィルタエレメント10の各装着構造を採用したフィルタユニット100においては、フィルタエレメント10の交換の作業を精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができ、また部品の飛び出し分の余分なスペースを確保する必要もなく、見栄えも優れたものとなっているのである。
【0032】
そして、上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項5に記載のフィルタユニット100について、
「フィルタエレメント10の吹き出しロ又は吸込み口70を覆うカバー部材50がフィルタエレメントの吹き出し口又は吸込みロ70のみに取り付けられていること」
を特徴とするものである。
【0033】
すなわち、この請求項6に係るフィルタユニット100は、図1、図8、図9及び図10の各(2)及び(3)に示すように、フィルタエレメント10の吹き出しロ又は吸込み口70を覆うカバー部材50をフィルタエレメントの吹き出し口又は吸込みロ70のみに取り付けたものである。
【0034】
これにより、この請求項6のフィルタユニット100においては、フィルタエレメント10の交換の作業を精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができ、また部品の飛び出し分の余分なスペースを確保する必要もなく、見栄えも優れたものとなっているだけでなく、フィルタエレメント10をカバー部材50によって保護したものとなっているのである。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、
「側面に凹部12が形成されたフレーム11を有するフィルタエレメント10を、基体20に押圧部材30によって装着する構造であって、
基体20は、軸部材33を回転可能に支持する支持部材21を備えており、
押圧部材30は、凹部12に挿入される挿入部30aと、螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジ31とを備えており、軸部材33又は支持部21はこの第1ネジ31と螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジ32を備えていて、
第2ネジ32と第1ネジ31とを螺合させ、且つ軸部材33を支持部21で支持しながら回転させることにより、押圧部材30を回動させて、その挿入部30aが凹部12に挿入されると共に、押圧部材30の挿入部30aが基体20に取り付けられたフィルタエレメント10のフレーム11に押し当てるようにしたことを特徴とするフィルタエレメント10の装着構造」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、従来技術の問題を解決して、フィルタエレメント10の交換の作業を精度よく且つ迅速に、しかも容易に行うことができ、また部品の飛び出し分の余分なスペースを確保する必要もなく、見栄えも優れたフィルタエレメント10の装着構造を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態に基づいて説明するが、この最良形態は、上記各請求項に係る発明を実質的に含むものである。
【0037】
図1及び図2に示すように、本発明のフィルタエレメント10の装着構造は、フレーム11を有するフィルタエレメント10を、基体20に装着する構造である。フレーム11の側面には、図2に示したように、凹部12が形成されており、基体20は、凹部12に挿入される挿入部30aを有した押圧部材30と、この押圧部材30と螺合する軸部材33と、この軸部材33を回転可能に支持する支持部21とを備えている。
【0038】
なお、フレーム11の側面の最良形態では、図2に示したように、実質的に押出成形した「Cチャンネル形状」にしたCチャンネル形状体であり、その内側には凹部12が形成されるものである。また、このCチャンネル形状体の凹部12内には、当該凹部12に向けて突出するネジ止め14が上下2個一体成形してある。これらのネジ止め14は、Cチャンネル形状体自体の剛性を高めると同時に、所定寸法に切断したCチャンネル形状体を互いに連結する場合の「ネジ止め部」としても利用されるものである。
【0039】
押圧部材30は、図2及び図3に示したように、螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジ31を有し、軸部材33はこの第1ネジ31と螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジ32を有している。
【0040】
そこで、軸部材33の第2ネジ32と押圧部材30の第1ネジ31とを螺合させ、且つ軸部材33を支持部で支持しながら回転させることにより、押圧部材30が回動して、挿入部30aが凹部12に挿入されると共に、押圧部材30がフィルタエレメント10を基体20に設けられた固定部23に押し当てられるのである。
【0041】
本発明の装着構造において、フィルタエレメント10はフレーム11を有する限り、特に限定されず、ガラス繊維や有機質繊維からなる高性能濾材をプリーツ折り加工したHEPAフィルタのみならず、比較的太い繊維が3次元的に配向された嵩高な平板状の粗塵用フィルタであることも可能である。しかし、本発明では、特にクリーンルームなどで用いられるHEPAフィルタや中高性能フィルタなどを用いたフィルタエレメント10に好適な装着構造である。
【0042】
HEPAフィルタや中高性能フィルタに用いられる不織布の濾材の具体例としては、例えば、メルトブロー法によって製造された平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維5〜50質量%と、平均繊維径が10〜100μmの熱融着性繊維50〜95質量%とが混在し、この熱融着性繊維が融着した不織布からなる濾材がある。このような濾材とすることにより、JIS比色法効率90%以上の高性能フィルタ、同比色法効率40%以上の中性能フィルタに適合させることが可能である。なお、JIS比色法効率はJIS109908に規定される試験による値である。
【0043】
基体20は、図1及び図2に示すように、フィルタユニット100の外枠であることが可能であり、また天井や壁であることも可能である。天井や壁の場合は例えば天井や壁にフレーム材やチャンネル材などを取付けて基体20とすれば適用可能である。そして、本発明では、特にクリーンルームなどの天井に設けられる吹出し又は吸込みフィルタユニット100に好適な装着構造である。また、この基体20の、図2の下方左部には、軸部材33を収納するのに適した収納部13が形成してある。
【0044】
本発明では、フレーム11の側面に凹部12が形成されているが、凹部12の形成は、挿入部30aが回動しながら挿入可能である限り特に限定されず、例えば図2のようにCチャンネル形状体でり、且つ断面コ型が向かい合った形状のフレーム11であることも、或いはフレーム11に部分的に角型や丸型等の穴が設けられている形状であることも可能である。断面コ型が向かい合った形状のフレーム11の場合は、挿入部30aが回動しながら挿入された際にフレーム11の壁に当たり回動が止まるようにすればよく、このためには回動の中心から壁までの距離よりも挿入部30aの長軸の長さを長くすればよい。或いは凹部12にストッパーを設けることも可能である。
【0045】
また、フレーム11に部分的に穴が設けられている形状である場合は、前述と同様に挿入部30aの長軸の長さを長くするか、或いは穴の一方から挿入可能なように、そして他方から挿入部30aが出られないように穴を配置しておくことも可能である。
【0046】
本発明では、図1〜図3に示すように、基体20は、凹部12に挿入される挿入部30aを有した押圧部材30と、押圧部材30と螺合する軸部材33と、軸部材33を回転可能に支持する支持部21とを備えている。
【0047】
そして、押圧部材30は螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジ31を有し、軸部材33は螺旋状のネジ部と螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジ32を有している。
【0048】
なお、図2に示すように、回転部では、回転をスムーズに行なえるように、基体20に設けられた穴に潤滑部材(この例では樹脂製のジュラコンブッシュ)を嵌め込み、クリアランスを小さく取って回転のぶれを防ぐことが好ましい。
【0049】
本発明では、このような構造であるので、軸部材33の第2ネジ32と押圧部材30の第1ネジ31とを螺合させ、且つ軸部材33を支持部21で支持しながら回転させることにより、押圧部材30が回動して、挿入部30aが凹部12に挿入されると共に、押圧部材30がフィルタエレメント10を基体20に設けられた固定部23に押し当てるのである。
【0050】
また、本発明では、上記の様に装着したフィルタエレメント10を容易に脱着することができる。すなわち、前配軸部材33を支持部21で支持しながら装着した際の方向と逆に回転させることにより、押圧部材30が回動して、挿入部30aが凹部12から離脱すると共に、フィルタエレメント10を基体20に設けられた固定部23に押し当てていた押圧が解除され、フィルタエレメント10を脱着できる。
【0051】
なお、押圧部材30が回動して、挿入部30aが凹部12から離脱する際に、回動し続けて再び挿入部30aが凹部12に挿入されないように、挿入部30aがフィルタユニット100の外枠の壁にあたって止まるようにするか、あるいは基体20にストッパーを設けることが好ましい。
【0052】
このように、本発明の装着構造では、挿入部30aが回動によりその先端付近がフィルタエレメント10の壁にあたり、且つフィルタユニット100の外壁にあたる程度の狭い空間での操作が可能である。すなわち、フィルタユニット100の外枠の大きさを小さくすることが可能となる。また、この場合、フィルタエレメント10の壁とフィルタユニット100の外壁との間の最短距離の長さが、挿入部30aの回動の中心から先端までの長さの2倍未満であれば特別なストッパーなどの部材を配置する必要がないことをも意味している。
【0053】
また、本発明の装着構造は図4〜図7の形態であることも可能である。図6では、第1ネジ31が押圧部材30に設けられた穿孔であり、第2ネジ32が軸部材33の少なくとも一部の外周面となっている。また、軸部材33を回転可能に支持する支持部21と取り付け穴22とを結ぶようにフィルタエレメント10のフレーム11の端から端まで軸部材33が設けられている。このような形態であれば押圧部材30がぶれることなく安定して移動する利点がある。
【0054】
また、図4及び図5では、第1ネジ31が押圧部材30に立設固定したボルト30bであり、軸部材33の少なくとも一部が中空となっており、その中空の周面が第2ネジ32となっている。
【0055】
特に、図5では、固定ボルト30bを回転可能に支持する基体20に設けられた受け部材21aと取り付け穴22とを結ぶようにフィルタエレメント10のフレーム11の端から端まで押圧部材30に立設固定したボルト30bが設けられている。このような形態であれば押圧部材30がぶれることなく安定して移動する利点がある。
【0056】
さらに、図4及び図5では、ボルト30bの先端面(下端面)を最初は飛び出させておき、回転終了後に天井面と実質的に同一平面となるようにすれば、押圧部材30の押圧を一定にすることができる。また、ボルトの下端に印をつけておけば、挿入部30aが凹部12に確実に挿入したことを確認することができるという利点がある。
【0057】
また、図7では、押圧部材30は軸部材33と摺動可能に一体化されており、支持部21が第2ネジ32を備えている。この図では、押圧部材30は軸部材33と押圧部材30に設けた潤滑部材(この例では樹脂製のジュラコンブッシュ)を介して摺動可能に一体化させている。具体的には、押圧部材30に設けたソケットの内壁にジュラコンブッシュ35を嵌め込んで押圧部材30の摺動部を形成して、軸部材33の先端部分のシャフトに設けた摺動部に、上部から挿入するようにして摺動可能に一体化させている。この一体化は、固定されているわけではなく、ある程度の荷重がからないと外れない程度の一体化である。また、押圧部材30がフィルタエレメント10のフレーム11に押し当てられる際の反力を支えるための部材としてナット36が軸部材33に取り付けられている。
【0058】
このように、図7では、支持部材21で支持しながら回転させることにより、軸部材33の先端部分に摺動可能に一体化した押圧部材30を回動させて、その挿入部30aがフレーム11の凹部12に入って当該フレーム11に当接してそれ以上の回転ができなくなると、第1ネジ31を有する軸部材33の先端部分の摺動部で押圧部材30が摺動することになり、その一方第1ネジ31は回転し続けて上方または下方に移動して、押圧部材30がフィルタエレメント10のフレーム11に押し当てられることになる。これに対して図2〜図6の構造では、挿入部30aがフレーム11の凹部12に入って当該フレーム11に当接してそれ以上の回転ができなくなった時に、第1ネジ31と第2ネジ32との係合部分が摺動部となる構造であり、ここでの図7の構造とは摺動する部分に違いがある。
【0059】
そして、この図7では、軸部材33の回転数または押圧部材30の押圧の程度がフィルタユニット100の吹き出し口側から分かるように改良した構造となっている。すなわち、図7に示すように、軸部材33の回転に伴ない、軸部材33自体が上昇するようにしておき、適度な押圧が加わった時に、軸部材33の先端がフィルタユニット外枠、すなわちフィルタユニット100の外枠の天井面60と実質的に同一平面になるように、軸部材33の回転を止めるストッパー34(この例ではナット)を設けるようにすることもできる。つまり、軸部材33の回転に伴ない、ストッパー34が上昇して支持部材21の下端に当たり回転が止まるようにすればよい。
【0060】
また、この図7では、ストッパーを設ける複雑な構造となるため、部品一式をフィルタユニット100の外枠に取り付けることができるように、支持部を支持部材21としてフィルタユニット100の外枠に取り付ける構造としている。
【0061】
本発明の装着構造をフィルタユニット100に適用するにあたり、装着構造の取り付け数は特に限定されず、例えば図11に示すように、フィルタユニット100の4隅に近い部分に各1個ずつ合計4個設けることが可能であり、装着構造の数は、フィルタユニット100の大きさに応じて適宜決めることができる。
【0062】
本発明の装着構造をフィルタユニット100に適用した図1〜図7において、フィルタユニット100の外枠の天井面60をフィルタエレメント10のフレーム11の下端と近接させることにより、装着構造の収まる収納部13からの塵埃の発生を少なくすることができ、また見栄えも良くすることができる。また、必要に応じて、近接させた間にパッキンなどを詰めることにより更にシールを完全にすることも可能である。
【0063】
以上のようにして、軸部材33を支持部で支持しながら回転させることにより、押圧部材30が回動して、挿入部30aが凹部12に挿入されると共に、押圧部材30がフィルタエレメント10を基体20に設けられた固定部23に押し当てることができる。なお、基体20に設けられた固定部23に押し当てるに先立って、フィルタエレメント10には固定部23に当接する部分にパッキン24を予め設けておくことが好ましい。
【0064】
フィルタユニットの吹き出し口又は吸い込み口の開口部の寸法は特に限定されないが、好ましくは、巾方向及び横方向ともに200〜1300mmであり、実用的には,例えば310mm、615mmなどの寸法を採用することができる。
【0065】
また、本発明では、外枠12やフレーム11の材質も特に限定されず、例えば木材、金属、合成樹脂などを挙げることができるが、フィルタユニット100に適用する場含は、シール性を十分に確保するため金属性であることが好ましく、また大量生産する場合も考慮すると、アルミニウムなどが押出し成形された材料からなることも好ましい。
【0066】
また、吹出しフィルタユニット100において、フィルタエレメント10の吹き出し口又は吸い出し口70を覆うカバー部材50をフェイスガードとして設けることも可能である。この場合、図9及び図10に示すように、フィルタエレメント10の吹き出し口又は吸い出しロ70を覆うカバー部材50がフィルタエレメント10の吹き出しロ又は吸い出し口70のみに取り付けられている吹出しフィルタユニット100であれば、フィルタエレメント10の交換作業の後にカバー部材50を必ずしも取付ける必要はなく、例えば予めフィルタエレメント10のフレーム11にカバー部材50(フェースガード)を取付けておき、カバー部材50付きのフィルターエレメント10を外枠に装着するだけで作業が完了するため、現場の作業効率を向上させることができる。
【0067】
なお、カバー部材50をフィルタユニット100やフィルタエレメント10の吹き出しロ70に取り付ける場合は、フラットな形状又は凸状が好ましく、フィルタユニット100やフィルタエレメント10の吸込み口70に取り付ける場合は、フラットな形状が好ましい。
【0068】
また、カバー部材50は従来から使用されている網又は穴あけ加工された金属(鉄、アルミニウムなど)板や樹脂板などを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のフィルタエレメントの装着構造を備えたフィルタユニットであって、フィルタエレメントの厚さが薄く、フレキシブルダクト接続タイプのフィルタユニットを示すもので、(1)はその底面図、(2)は(1)中のA−A線に沿ってみた部分断面図、(3)は(1)中のB−B線に沿ってみた部分断面図である。
【図2】図1の(2)中の1−1線部の部分拡大縦断面図である。
【図3】図2中で使用されている押圧部材及びこれに付随する部品を示すもので、(1)はその平面図、(2)は分解側面図である。
【図4】図2に示したものの他の実施例を示す部分拡大断面図である。
【図5】図2に示したもののさらに他の実施例を示す部分拡大断面図である。
【図6】図2に示したもののさらに他の実施例を示す部分拡大断面図である。
【図7】図2に示したもののさらに他の実施例を示すもので、(1)は部分拡大断面図、(2)は分解側面図である。
【図8】本発明のフィルタエレメントの装着構造を備えた他の吹出しフィルタユニットであって、フィルタエレメントの厚さが薄く、角ダクト接続タイブのフィルタユニットを示すもので、(1)はその底面図、(2)は(1)中のA−A線に沿ってみた部分断面図、(3)は(1)中のB−B線に沿ってみた部分断面図である。
【図9】本発明のフィルタエレメントの他の装着構造を備えたさらに他の吹出しフィルタユニットであって、フィルタエレメントの厚さが中程度で、カバー部材を備え、角ダクト接続タイブのフィルタユニットを示すもので、(1)はその底面図、(2)は(1)中のA−A線に沿ってみた部分断面図、(3)は(1)中のB−B線に沿ってみた部分断面図である。
【図10】本発明のフィルタエレメントの装着構造を備えたさらに他の吹出しフィルタユニットであってカバー部材を備え、細いダクトが接続され、ダクトが角ダクト接続タイブのフィルタユニットを示すもので、(1)はその底面図、(2)は(1)中のA−A線に沿ってみた部分断面図、(3)は(1)中のB−B線に沿ってみた部分断面図である。
【図11】カバー部材を備えた吹出しフィルタユニットであって、細いダクトが接続され、ダクトが角ダクト接続タイブのフィルタユニットを示すもので、(1)はその側面図、(2)は正面図、(3)底面図である。
【図12】従来のフィルタエレメントの装着構造を備えた吹出しフィルタユニットで、(1)はその底面図、(2)は(1)中のA−A線に沿ってみた部分断面図、(3)は(1)中のB−B線に沿ってみた部分断面図である。
【図13】従来のフィルタエレメントの装着構造を備えた吹出しフィルタユニットを示すもので、(1)は開口部に網を装着したタイプ、(2)は開口部にカバー部材を装着したタイプの各部分断面図である。
【図14】別の従来技術のフィルタエレメントの装着構造を示す部分断面図である。
【図15】さらに別の従来技術のフィルタエレメントの装着構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 フィルタエレメント
11 フレーム
12 凹部
13 収納部
14 ネジ止め
20 基体
21 支持部又は支持部材
22 取付穴
23 固定部
30 押圧部材
30a 挿入部
30b ボルト
31 第1ネジ
32 第2ネジ
33 軸部材
40 ダクト
50 カバー部材
60 天井面
70 吹き出し口又は吸入口
100 フィルタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に凹部が形成されたフレームを有するフィルタエレメントを、基体に押圧部材によって装着する構造であって、
前記基体は、軸部材を回転可能に支持する支持部を備えており、
前記押圧部材は、前記凹部に挿入される挿入部と、螺旋状のネジ部が設けられた第1ネジとを備えており、前記軸部材又は前記支持部は、この第1ネジと螺合する螺旋状のネジ部が設けられた第2ネジを備えていて、
前記第2ネジと第1ネジとを螺合させ、且つ前記軸部材を前記支持部で支持しながら回転させることにより、前記押圧部材を回動させて、その前記挿入部が前記凹部に挿入されると共に、前記押圧部材の挿入部が前記基体に取り付けられたフィルタエレメントのフレームに押し当てるようにしたことを特徴とするフィルタエレメントの装着構造。
【請求項2】
前記第1ネジは押圧部材に設けられたネジ孔であり、このネジ孔に螺合される前記第2ネジのネジ部は前記軸部材の少なくとも一部の外周面に形成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメントの装着構造。
【請求項3】
前記第1ネジが押圧部材に立設固定したボルトであり、前記軸部材の少なくとも一部が中空となっており、その中空の周面が第2ネジとしてのネジ孔となっている請求項1に記載のフィルタエレメントの装着構造。
【請求項4】
前記押圧部材は前記軸部材と摺動可能に一体化されており、前記支持部が第2ネジを備えている請求項1に記載のフィルタエレメントの装着構造。
【請求項5】
前記請求項1〜4の何れかに記載の装着構造を備えたフィルタユニットであって、
前記基体としてのフィルタユニット外枠に前記フィルタエレメントが装着されており、前記フィルタユニット外枠に、天井面または前記壁面と実質的に同じ高さに吹き出しロ又は吸込み口が設けられており、
前記軸部材の先端が前記天井面または前記壁面と実質的に同位置にあり、前記軸部材の回転を前記天井面または前記壁面で行なう構造としたことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項6】
前記フィルタエレメントの吹き出しロ又は吸込み口を覆うカバー部材が前記フィルタエレメントの吹き出し口又は吸込みロのみに取り付けられている請求項5に記載のフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−268411(P2007−268411A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97243(P2006−97243)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】