説明

フィルタユニット

【課題】均一な流れや層流が形成できることは勿論、風量調整を局所的にしかも容易に行うことができ、小規模な塗装ブースにも大規模な塗装ブースにも適用可能なフィルタユニットを提供すること。
【解決手段】空気浄化用のフィルタ20と、このフィルタ20を支持する枠体10とを備え、室内に給気用または排気用として配置されるフィルタユニット100であって、枠体10の、フィルタ20に対向する部分に、互いに重ねて配置される少なくとも2枚の多孔板31・32を相対移動可能に設けて、これらの多孔板31・32を面方向に沿って相対移動させることにより、各多孔板31・32に形成してある開口31a・32aの重なり程度を変更して、フィルタ20を通過する空気の風量調整が行えるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に給気用または排気用として配置されるフィルタユニットに関し、例えば、家具等の小型構造物は勿論、自動車や大型構造物の塗装を行う塗装ブースを構成するフィルタユニットや、クリーンルームや病院などで、塵埃や汚染ガスを除去するフィルタユニットなどに使用されるフィルタユニットに関し、特に、均一な空気の流れや定常的な層流を生成しながら風量調整をも確実に行えるようにしたフィルタユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の塗装ブースは、被塗装物の大小に拘わらず、また塗装方式の湿式または乾式を問わず、塗料を定常的な「層流」に乗せて被塗装物に塗装するものであるが、この層流が乱れていると不均一な塗膜となってしまうため、例えば特許文献1において、均一な層流形成及び風量調整に努力が払われている。
【特許文献1】特開平11−179255号公報、代表図、図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1にて提案されている「多孔板を有するプッシュ・プル型塗装ブース」は、「乾式塗装ブースに於ける給気室を前面に設けた事により均一な層流を発生させ易くし、給気層流の調整時間を短縮する」ことを目的としてなされたもので、図15にも示すように、「給気室を塗装ブースの背面に設け、排気室を該塗装ブースの前面に設けて均一な層流を発生させ易くし、汚染空気の拡散防止及び滞留防止に効果的な調整時間の短縮する構成とし、且つ給気と排気のバランス調整、風速調整時間の短縮する構成とする」ものである。
【0004】
しかしながら、この「給気と排気のバランス調整、風速調整」は、当該特許文献1の段落0015と0020の内容、及び同図5を本願の図16として示したように、「該1整流板16は、所要直径と所要間隔で穿設したフィルタ16a及びエクスバンド・メタル16bとから成る多孔板である」点、「該第1整流板16を所要面積の区画板16c・16cとし、該各区画板16cを夫々蝶番16dにより開閉式フィルタ扉とした」点からすると、所要面積の区画板16c・16cの開度によって「空気の淀み部分」が発生するものと考えられる。
【0005】
また、この特許文献1において、「各区画板16cを夫々蝶番16dにより開閉式フィルタ扉」による風量調整を具体的にどのような機構を利用して行うかは不明であるが、「開閉式フィルタ扉」とすると、その開閉量によって風量が変化するから、その風量調整は当該「開閉式フィルタ扉」の開度調整によって行わなければならず、風量調整が非常に困難であると考えられる。しかも、その調整位置での扉の固定をしなければならない筈であるから、そのような手段も採用しなければならないが、当該特許文献1には何も示されていないと考えられる。
【0006】
さらに、この特許文献1の技術では、給気部に備えられたダンパーによって塗装ブース内の風量を調節するため、個々のフィルタでの風量調整を行うことができなかった。そのため、風速の大きい部分と小さい部分とが同時にできてしまい、この特許文献1の技術では均一な塗装ができないと考えられる。
【0007】
特に、この特許文献1の技術を、大規模塗装ブース(大型構造物の塗装を行うブース)に適用した場合には、均一な流れや風量の調整を行うことが益々困難になるのではないかと考えられる。
【0008】
そこで、本発明者等は、この種のフィルタユニットについて、均一な流れや層流が形成できることは勿論、風量調整を局所的にしかも容易に行うことができ、小規模な塗装ブースにも大規模な塗装ブースにも適用可能とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0009】
すなわち、本発明の目的とするところは、均一な流れや層流が形成できることは勿論、風量調整を局所的にしかも容易に行うことができ、小規模な塗装ブースにも大規模な塗装ブースにも適用可能なフィルタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「空気浄化用のフィルタ20と、このフィルタ20を支持する枠体10とを備え、室内に給気用または排気用として配置されるフィルタユニット100であって、
枠体10の、フィルタ20に対向する部分に、互いに重ねて配置される少なくとも2枚の多孔板31・32を相対移動可能に設けて、
これらの多孔板31・32を面方向に沿って相対移動させることにより、各多孔板31・32に形成してある開口31a・32aの重なり程度を変更して、フィルタ20を通過する空気の風量調整が行えるようにしたことを特徴とするフィルタユニット100」
である。
【0011】
すなわち、この請求項1のフィルタユニット100は、図3〜図5に示すように、空気浄化用のフィルタ20と、このフィルタ20を支持する枠体10とを備えたものであり、枠体10の、フィルタ20に対向する部分に、互いに重ねて配置される少なくとも2枚の多孔板31・32を相対移動可能に設けたものである。
【0012】
また、このフィルタユニット100は、これを単独で用いることもあるが、その複数あるいは多数を枠体10の外周面にて互いに連結することにより、図2や図10に示すような広い面積のものとすることができるものであり、家具等の小型構造物は勿論、図1に示すような自動車や大型構造物の塗装を行う塗装ブース200の壁を構成することもできるものである。さらに、このフィルタユニットは、単独または連結して、クリーンルームや病院などで塵埃や汚染ガスを除去するフィルタユニットなどとしても用いることができるものである。
【0013】
図1に示した塗装ブース200においては、図2の(2)にも示すように、フィルタユニット100によって形成した壁の内側を、実際の塗装作業を行う塗装室210とし、塗装室210のフィルタユニット100とは反対側には、空気の排出あるいは供給を行うための吸気または排気ダクト220が形成されるのである。つまり、本発明に係るフィルタユニット100は、塗装室210内の塗料を含む空気をダクト220側から吸引する場合には、その中のフィルタ20によって塗料を除去し、塗装室210内へ空気をダクト220側から送り込む場合には、その中のフィルタ20によって塵埃の除去を行って、塗装室210内へクリーンな空気を送り込むものである。
【0014】
さて、この請求項1のフィルタユニット100は、図3〜図5に示すように、フィルタ20と、このフィルタ20を支持する枠体10とを備え、この枠体10に少なくとも2枚の多孔板31・32を相対移動可能に設けたものであった。
【0015】
各多孔板31・32は、図3〜図5に示すように、フィルタを通過する空気、すなわちフィルタ20からの空気、あるいはフィルター20に向かう空気を通すための開口31a・32aを有する文字通り板状のものであり、図4〜図6に示すように、互いに面方向に移動可能に枠体10側に組み付けられるものである。これらの各多孔板31・32は、これらが完全に重ねられているときには、図3の(1)に示すように、各開口31a・32aが一致した状態になり、これらを互いに少しズラせたときには、図3の(2)に示すように、各開口31a・32aの一部が他方を隠す状態になるものである。
【0016】
勿論、各多孔板31・32は、その面方向に沿って相対移動するものであるが、その移動の際には、互いに離れ過ぎてはいけない。何故なら、これらの各多孔板31・32の重なり具合によって風量調整がなされなければならないからである。このため、図3に示す最良形態では、枠体10または第1多孔板31の、フィルタ20とは反対側の面、すなわち空気の上流側に押さえレール12を固定しておき、この押さえレール12によって第2多孔板32の第1多孔板31に対する近接設置を行うようにしている。なお、この形態では、各多孔板31・32の相対移動を手動により調整した後固定するために、例えば第2多孔板32側にガイド長穴32bを形成しておき、このガイド長穴32b内に第1多孔板31側に固定したガイドピン等を係合させるようにしてある。
【0017】
また、以上の説明では、多孔板として第1多孔板31と第2多孔板32との2枚を使用する場合を説明したが、例えば、互いに連結された2枚の第1多孔板31内に一枚の第2多孔板32を入れて、両者の相対移動を行う場合の安定性を確保する構成、つまり多孔板を3枚用いるようにして実施してもよい。
【0018】
ところで、各多孔板31・32を一致させたりズラせたりするには、塗装室の裏側から多孔板を追接移動させる単純な手作業によってもよいし、後述する操作機構40を利用して行ってもよい。図3に示したもので、第2多孔板32の第1多孔板31に対する相対移動を手作業によって行う場合、その作業を行い易くするために、第2多孔板32側につまみ(図示しない)などを設けておくことも可能である。
【0019】
また、このフィルタユニット100において、各多孔板31・32は、枠体10の、フィルタ20に対向する部分に、フィルタ20と所定寸法隔てながら配置するようにすることも好ましい。このように設置することにより、フィルタ20交換の際に奥ゆき寸法の大きいフィルタ20と交換することが可能となる。
【0020】
以上のようにした結果、この請求項1に係るフィルタユニット100は、図3に示す状態で塗装ブース200の塗装室210内に露出することになり、第1多孔板31または第2多孔板32に多数形成してある各開口31aまたは32aから、フィルタ20を通して送られてきた空気流が均一な流れや層流となって塗装室210内に流れ込むことになるのである。勿論、空気の流れが逆の場合には、第1多孔板31または第2多孔板32に多数形成してある各開口31aまたは32aから吸引された塗装室210内の空気(この空気も均一な流れや層流となってフィルタユニット100に向けて流れる)が、フィルタ20側に均一な流れや層流となって吸引されていくのである。
【0021】
これらのフィルタユニット100に向かうあるいはフィルタユニット100からの空気の風量は、第1多孔板31及び第2多孔板32の相対位置を変えることにより調整されるのであり、その調整は、例えば最良形態の場合には、第2多孔板32の面方向への移動によって容易に行えるのである。この第2多孔板32の移動は、第1多孔板31の面方向へ、つまり同一面上にて行えるので、非常に容易になっているのである。
【0022】
勿論、当該フィルタユニット100は、単独で用いたり、あるいは複数を組み合わせて使用するのであるから、一つの同じ大きさのものを用意しておけば、上記の機能を有したまま、あらゆる大きさの塗装ブース200に対応できるのである。
【0023】
従って、この請求項1のフィルタユニット100は、均一な流れや層流が形成できることは勿論、風量調整を局所的にしかも容易に行うことができ、小規模な塗装ブース200などの室にも大規模な塗装ブース200などの室にも適用可能なものとなっているのである。
【0024】
以上の課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のフィルタユニット100について、
「各開口31a・32aの総面積の比率を、各多孔板31・32の面積に対して15%〜70%としたこと」
である。
【0025】
すなわち、この請求項2のフィルタユニット100では、これを構成している各多孔板31・32について、各開口31a・32aの総面積の比率を、各多孔板31・32の面積に対して15%〜70%としたものである。
【0026】
このようにしたのは、各多孔板31・32を通して空気の均一な流れや層流を形成するとともに、風量の調整をも行うのであるから、その均一な流れや層流形成と風量調整を最も効率よく行う必要があるからである。
【0027】
その意味では、各開口31a・32aの各多孔板31・32に対する総面積の比率が、各多孔板31・32の面積に対して15%より小さいと、各開口31a・32aを全開状態にしても、形成された層流や空気の流れが小さいため、効率が悪いものとなってしまう。これとは逆に、各開口31a・32aの各多孔板31・32に対する総面積の比率が各多孔板31・32の面積に対して70%を超えると、各多孔板31・32の剛性が低くなってしまい、第1多孔板31または第2多孔板32の相対移動させる際の操作性が非常に悪くなってしまう。その意味では、各開口31a・32aの各多孔板31・32に対する総面積の比率としては、図3に示したような状態となるのが最も効果的となり、具体的にはより好ましくは20〜50%であり、25〜40%であることが更に好ましいのである。
【0028】
従って、この請求項2のフィルタユニット100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、これを通して形成された層流や空気の流れを効果的なものとし得るのである。
【0029】
以上の課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載のフィルタユニット100について、
「各多孔板31・32に形成してある各開口31a・32aの形状及び配置間隔が同一であること」
としたことである。
【0030】
すなわち、この請求項3のフィルタユニット100は、その各多孔板31・32に形成した各開口31a・32aについて、同一間隔及び同一形状にしたものである。これにより、図3にも示すように、第1多孔板31と第2多孔板32との相対移動によって風量調整を行うにあたって、穴の重なり部分の開口面積をなだらかに変えていくことが可能となり、非常に簡単な操作で、しかも効率的に行うことができるのである。
【0031】
従って、この請求項3のフィルタユニット100も、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、これを通して形成された層流や空気の流れの調整を簡単に行えるものとし得るのである。
【0032】
以上の課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフィルタユニット100について、
「各多孔板31・32の相対移動操作を、枠体10に設けた操作機構40によって、フィルタ20側から行うようにしたこと」
である。
【0033】
すなわち、この請求項4のフィルタユニット100では、各多孔板31・32の相対移動操作を、枠体10に設けた操作機構40によってフィルタ20側から行うようにしたものであり、各フィルタユニット100における開口31aまたは32aの開閉操作を、塗装などの作業室の室内側で層流状態や風速、風量を確認しながら効率的かつ定量的に行えるようにしたものである。
【0034】
この操作機構40としては、以下に述べる請求項5のような形式は勿論、図8及び図9に例示する変形例、図11、図12、図13及び図14に示すような他の変形例を用いることが可能である。
【0035】
以上のように、各多孔板31・32の相対移動操作を、枠体10に設けた操作機構40によってフィルタ20側から行うようにしたことによって、各フィルタユニット100の流量調整を、塗装室210内にいる作業者が風速や風量の確認を行いながらできるのである。何故なら、フィルタ20は通常塗装室210側に直接露出しているものであり、塗装室210という広い空間で、各フィルタユニット100における開口31aまたは32aの開閉操作を効率的かつ定量的に行えるのである。
【0036】
換言すれば、この請求項4のフィルタユニット100によれば、各多孔板31・32の相対移動操作を、排気ダクト220内や、塗装ブース200の外側で行うような必要はなく、例えば狭い空間でしかない排気ダクト220内に操作のための空間を余分に設ける必要がないものになっているのである。
【0037】
従って、この請求項4のフィルタユニット100は、上記請求項1〜請求項3の何れかに係るそれと同様な機能を発揮する他、各多孔板31・32の相対移動操作を塗装室210などの広い空間で行えるのである。
【0038】
そして、以上の課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項4に記載のフィルタユニット100について、
「操作機構40は、一端41aが多孔板31・32の何れかに連結されるとともに、中間部41bがフィルタ20の外周付近に延在され、かつ他端41cに、枠体10に支持されているフィルタ20側に突出するつまみ42を設けた作動体41によって構成したこと」
である。
【0039】
すなわち、この請求項5のフィルタユニット100では、図6〜図14に示すように、一端41aが多孔板31・32の何れかに連結されるとともに、中間部41bがフィルタ20の外周付近に延在され、かつ他端41cに、枠体10に支持されているフィルタ20側に突出するつまみ42を設けた作動体41によって構成した操作機構40によって行うようにしたものである。
【0040】
これにより、この請求項5のフィルタユニット100では、その各多孔板31・32の相対移動操作を、塗装室210内に露出しているつまみ42を左右方向に移動するか、又は出し入れするか、又は回動だけで行えるのである。例えば、つまみ42は、図7の(2)あるいは図9に示すように、枠体10側に形成してある調整穴13内を移動させるだけで、その開度調整が簡単に行えるのである。
【0041】
図6に示した操作機構40では、つまみ42を動かすと板状の作動体41全体がフィルタ20の外側で平行移動し、この作動体41の一端41aに連結してある第2多孔板32が動かされるのである。また、図8に示した操作機構40では、つまみ42を動かすと操作板41の他端41cが揺動し、これに伴って中間棒41eが図8中の矢印にて示すように回動する。そうすると、この中間棒41eに連結してある中間板41gが中間棒41eを中心に揺動するから、作動体41の一端41aに連結されている第2多孔板32が移動するのである。勿論、この一端41aと第2多孔板32との連結部分には、図9に示すように長穴が形成してあるから、操作板41の揺動運動が第2多孔板32の往復運動に変換される。
【0042】
従って、この請求項5のフィルターユニット100は、上記請求項4それと同様な機能を発揮する他、各多孔板31・32の相対移動操作を塗装室210などの広い空間で確実に行えるのである。
【発明の効果】
【0043】
以上、説明した通り、本発明においては、
「空気浄化用のフィルタ20と、このフィルタ20を支持する枠体10とを備え、室内に給気用または排気用として配置されるフィルタユニット100であって、
枠体10の、フィルタ20に対向する部分に、互いに重ねて配置される少なくとも2枚の多孔板31・32を相対移動可能に設けて、
これらの多孔板31・32を面方向に沿って相対移動させることにより、各多孔板31・32に形成してある開口31a・32aの重なり程度を変更して、フィルタ20を通過する空気の風量調整が行えるようにしたこと」
に主たる特徴があり、これにより、均一な空気の流れや層流が形成できることは勿論、風量調整を局所的にしかも容易に行うことができ、小規模な塗装ブースにも大規模な塗装ブースにも或いは、クリーンルームや病院などの各室にも適用可能なフィルタユニット100を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
次に、以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態に基づいて説明すると、図1には、本発明に係るフィルタユニット100を採用した塗装ブース200を例示してある。この塗装ブース200は、例えば自動車や大型構造物の塗装を行う大型のものであるが、以下に述べるフィルタユニット100の組立方式を変えることにより、家具等の小型構造物に適した小型のものとすることもできる。
【0045】
また、この塗装ブース200内は、図2に示したように、塗装室210が形成してあるが、この塗装室210内には、図2の(1)に示したように、本発明に係るフィルタユニット100を多数組み付けて形成した壁が面している。この多数のフィルタユニット100からなる壁の後側は、図2の(2)に示したように、吸気または排気ダクト220となっているのである。
【0046】
さて、このフィルタユニット100は、図3〜図5に示したように、フィルタ20と、このフィルタ20を支持する枠体10とを備え、この枠体10に少なくとも2枚の多孔板31・32を相対移動可能に設けたものである。
【0047】
このフィルタユニット100は、上述したようにこれを単独で用いることもあるが、その複数あるいは多数を枠体10の外周面にて互いに連結することにより、図2に示したような広い面積のものとすることは勿論、図10に示すようなある程度の高さのものとしても構成できるものである。
【0048】
このフィルタユニット100を構成している枠体10は、図3〜図5に示したように、第1多孔板31や第2多孔板32側からみた形状が正方形であり、かつ多数を連結し易くするために、所謂箱形に形成したものである。そして、この枠体10では、図5に示すように、フィルタ20側に扉11を設けておき、この扉11を開閉することにより、中のフィルタ20の取付や交換が第1多孔板31や第2多孔板32とは無関係に行えるようにしてある。
【0049】
前記枠体10の材質は特に限定されないが金属であれば好ましく、鋼板から製作されることがより好ましい。また、第1多孔板31や第2多孔板32の材質も特に限定されず、金属(鉄、アルミニウムなど)板や樹脂板などを用いることができるが、軽さや耐久性を考慮するとアルミニウムから製作されることがより好ましい。また、第1多孔板31や第2多孔板32の外寸も特に限定されないが、巾方向及び横方向ともに200〜1300mmであり、実用的には、例えば305mm、610mmなどの寸法を採用することができる。
【0050】
また、第1多孔板31や第2多孔板32に設けられている開口の形状や開口の配置間隔や開口面積の比率などは特に限定されないが、穴の形状としては図3に示したように、多孔板の移動方向に対して垂直方向が長径である長穴であることが好ましい。また、穴の配置も等間隔であることが好ましい。
【0051】
フィルタ20は、この種の塗装ブース200において一般的に使用されているものであり、特に限定されるものではないが、ガラス繊維や有機質繊維からなる高性能濾材をプリーツ折り加工したHEPAフィルタのみならず、比較的太い繊維が3次元的に配向された嵩高な平板状の粗塵用フィルタであることも可能である。
【0052】
具体的には、例えば塗装用ブースの排気用であれば、比較的細い繊維が3次元的に配向された不織布からなる嵩高な平板状の中性能フィルタが好適である。或いは前記3次元的に配向された不織布からなる比較的厚さの薄い中性能フィルタをプリーツ加工したフィルタエレメントが好適である。このような不織布の具体例としては、例えば、メルトブロー法によって製造された平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維5〜50質量%と、平均繊維径が10〜100μmの熱融着性繊維50〜95質量%とが混在し、この熱融着性繊維が融着した不織布からなる濾材がある。このような濾材とすることにより、JIS比色法効率40%以上の中性能フィルタとすることが可能である。この効率はより好ましくは55〜75%であり、75%を超えると圧力損失が高くなりエネルギーロスが大きくなる場合があり、55%未満であると塵埃や塗料のミストの除去が不十分になる場合がある。なお、JIS比色法効率はJISB9908に規定される試験による値である。
【0053】
各多孔板31・32は、図3〜図5に示したように、フィルタ20からの空気、あるいはフィルタ20に向かう空気を通すための開口31a・32aを有する文字通り板状のものであり、図4〜図6に示したように、互いに面方向に移動可能に枠体10側に組み付けてある。これらの各多孔板31・32は、これらが完全に重ねられているときには、図3の(1)に示したように、各開口31a・32aが一致した状態になり、これらを互いに少しズラせたときには、図3の(2)に示したように、各開口31a・32aの一部が他方を隠す状態になるものである。
【0054】
また、各多孔板31・32は、図3に示した最良形態では、枠体10または第1多孔板31の、フィルター20とは反対側の面にすなわち、空気の上流側に押さえレール12を固定しておき、この押さえレール12によって第2多孔板32の第1多孔板31に対する近接設置を行うようにしてある。なお、この例では、各多孔板31・32の相対移動を手動により調整した後固定するために、第2多孔板32側にガイド長穴32bを形成しておき、このガイド長穴32b内に第1多孔板31側に固定したガイドピン等を係合させるようにしてある。
【0055】
さらに、このフィルタユニット100において、各多孔板31・32は、枠体10の、フィルタ20に対向する部分に、フィルタ20と所定寸法隔てながら配置してある。換言すれば、フィルタ20は、第1多孔板31または第2多孔板32に密着しない状態で配置してある。
【0056】
このフィルタユニット100は、給気用にも排気用にも使用可能であり、図4に示すように、ブース室内への給気用の場合は、空気の流れの方向を矢印で示すと、第2多孔板32(移動用)、第1多孔板31(固定用)、メインフィルタ20(粗塵用)の順に空気が流れるように配置されている。また、ブース室内からの排気用の場合は、プレフィルタ(粗塵用)、メインフィルタ20(微塵用)、第2多孔板32(移動用)、第1多孔板31(固定用)の順に空気が流れるように配置されている。すなわち、空気の流れの上流側にはプレフィルタが配され、また上流側に第2多孔板32(移動用)が配されるようにするのが好ましく、第2多孔板32が風圧によって第1多孔板31(固定用)に密着することによって、空気の流れを安定させることができる。
【0057】
ところで、各多孔板31・32を一致させたりズラせたりするには、単純な手作業によってもよいが、最良形態ではフィルタ側なら遠隔操作により操作機構40を利用して行うようにしてある。この操作機構40としては、図6及び図7に示した第1実施例、図8及び図9に示した第2実施例、図10〜図12に示した第3実施例、図13に示した第4実施例、及び図14に示した第5実施例等、様々が形態のものが考えられる。
【0058】
(操作機構40の第1実施例)
図6及び図7に示した操作機構40は、一端41aが多孔板31・32の何れかに連結されるとともに、中間部41bがフィルタ20の外周付近に延在され、かつ他端41cに、枠体10に支持されているフィルタ20側に突出するつまみ42を設けた板状の作動体41によって構成したものである。これらの図では、板状の作動体41は、平板を折り曲げて形成したものである。
【0059】
これにより、この操作機構40では、その各多孔板31・32の相対移動操作を、塗装室210内に露出しているつまみ42を左右方向に移動するだけで行えるのである。この場合、つまみ42は、図7の(2)に示したように、枠体10側に形成してある調整穴13内を移動させるだけで、その開度調整と、移動寸法の確認が簡単に行えるのである。つまり、図6に示した操作機構40では、つまみ42を動かすと作動体41全体がフィルタ20の外側で平行移動し、この作動体41の一端41aに連結してある第2多孔板32が動かされるのである。なお、作動体41の他端41cに長穴41dを形成しておき、この表穴41d内に係合する固定ネジ41f(枠体10側に取り付けられる)によって、その図示水平方向への移動を安定させ、且つ固定できるようにしてある。
【0060】
(操作機構40の第2実施例)
また、図8及び図9に示した操作機構40は、上記の第1実施例のものと構成がよく似ているが、つまみ42を動かすと作動体41の他端41cが揺動し、これに伴って中間棒41eが図8中の矢印にて示したように回動するものとしてある。そして、この中間棒41eに連結してある中間板41gが中間棒41eを中心に揺動することになり、作動体41の一端41aに連結されている第2多孔板32が移動するのである。勿論、この一端41aと第2多孔板32との連結部分には、図9に示すように長穴が形成してあるから、中間板41gの揺動運動が第2多孔板32の往復運動に変換される。
【0061】
この第2実施例の操作機構40では、図8に示したように、作動体41の中間部41bを回動する中間棒41eとしたものであるから、この中間棒41eを枠体10に対して回動可能に支えなければならない。そのために、この例では、枠体10内にブラケット14を立設しておき、このブラケット14によって中間棒41eを回動自在に支持しているものである。
【0062】
そして、作動体41の他端41cは、図9に示すように、中間棒41eを回動させるために横方向に長く延在しているものとしてあり、つまみ42の水平移動を中間棒41eの回転運動に変えるものである。なお、この他端41cに長穴41dを形成しておき、この長穴41d内に係合する固定ネジ41f(枠体10側に取り付けられる)によってその図示水平方向への移動を安定させ、且つ固定できるようにしてある。
【0063】
(操作機構40の第3実施例)
図10〜図13に示した操作機構40も、実質的には上記第1実施例や第2実施例のものと同様であるが、その基本的な考え方は、図12に示したように、つまみ42とそれに連結された操作棒43とを操作棒の軸を中心として回動させることによって第2多孔板32に連結してある揺動棒44を揺動させるようにしたものである。勿論、第2多孔板32との連結部分には、図12に示すように長穴44aが形成してあるから揺動棒44の揺動運動が第2多孔板32の往復運動に変換される。
【0064】
(操作機構40の第4実施例)
図13に示した第4実施例に係る操作機構40は、枠体10内に回動自在に固定した「L字状」のクランクアーム45を回動させることである。このクランクアーム45の一端は、ワイヤーまたは棒材45aを介してつまみ42に連結したものであり、他端は連結杆45bを介して第2多孔板32に連結したものである。
【0065】
以上のようにした結果、つまみ42を押し引きすることにより、図13中の矢印にて示したように、「L字状」のクランクアーム45が回動され、これに伴って連結杆45bを介して第2多孔板32が往復動されるのである。
【0066】
(操作機構40の第5実施例)
図14に示した第5実施例に係る操作機構40は、作動体41の他端に設けたつまみ42を回動することにより、このつまみ42に連結された揺動アーム46a、及び揺動アーム46aに連結された第1ロッド(空気の流れ方向に設けられるており、図示しない)と、この第1ロッドに連結された第2ロッド46b、及びその端に連結した第2多孔板32が順次作動して、第2多孔板32が往復動されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るフィルタユニットを適用した塗装ブースの部分側面図である。
【図2】図1に示した塗装ブースの内部を示すもので、(1)は塗装室からみた壁の正面図、(2)は(1)の縦断面図である。
【図3】本発明に係るフィルタユニットを示すもので、(1)は各開口が一致した状態の正面図、(2)は各開口が互いにズレた状態の正面図である。
【図4】図3に示したフィルタユニットの側面図である。
【図5】図3に示したフィルタユニットの平面図である。
【図6】第1実施例に係る操作機構を示す部分拡大側面図である。
【図7】第1実施例に係る操作機構を示すを示すもので、(1)は図6の1の矢印方向からみた部分拡大平面図、(2)は図6の2の矢印の方向からみた(1)で示した部分の正面図である。
【図8】第2実施例に係る操作機構を示す部分拡大側面図である。
【図9】第2実施例に係る操作機構を示す部分拡大正面概略図である。
【図10】本発明に係るフィルタユニットの組み付け方を変えたものを示すもので、(1)は部分正面図、(2)は断面図である。
【図11】同フィルタユニットの断面を示すもので、(1)は図10中の4−4線部の部分拡大図、(2)は図10中の5−5線部の部分拡大図である。
【図12】図11において使用している第3実施例に係る操作機構を示す部分拡大斜視図である。
【図13】第4実施例に係る操作機構を示す部分拡大側面図である。
【図14】第5実施例に係る操作機構を示す正面図である。
【図15】従来の技術を示す塗装ブースの断面図である。
【図16】図15の従来技術において使用している区画板を示部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0068】
100 フィルタユニット
10 枠体
11 扉
12 押さえレール
13 調整穴
14 ブラケット
20 フィルタ
31 第1多孔板
31a 開口
32 第2多孔板
32a 開口
32b ガイド長穴
40 操作機構
41 作動体
41a 一端
41b 中間部
41c 他端
41d 長穴
41e 中間棒
41f 固定ネジ
41g 中間板
42 つまみ
43 操作棒
44 揺動棒
44a 長穴
44b 連結ピン
45 クランクアーム
45a ワイヤーまたは棒
45b 連結杆
200 塗装ブース
210 塗装室
220 排気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気浄化用のフィルタと、このフィルタを支持する枠体とを備え、室内に給気用または排気用として配置されるフィルタユニットであって、
前記枠体の、前記フィルタに対向する部分に、互いに重ねて配置される少なくとも2枚の多孔板を相対移動可能に設けて、
これらの多孔板を面方向に沿って相対移動させることにより、各多孔板に形成してある開口の重なり程度を変更して、前記フィルタを通過する空気の風量調整が行えるようにしたことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
前記各開口の総面積の比率を、各多孔板の面積に対して15%〜70%としたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項3】
各多孔板に形成してある各開口の形状及び配置間隔が同一であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルタユニット。
【請求項4】
各多孔板の相対移動操作を、前記枠体に設けた操作機構によって、前記フィルタ側から行うようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフィルタユニット。
【請求項5】
前記操作機構は、一端が前記多孔板の何れかに連結されるとともに、中間部が前記フィルタの外周付近に延在され、かつ他端に、前記枠体に支持されている前記フィルタ側に突出するつまみを設けた作動体によって構成したことを特徴とする請求項4に記載のフィルタユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−268449(P2007−268449A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98523(P2006−98523)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【出願人】(592024505)株式会社新和製作所 (1)
【Fターム(参考)】