説明

フィルターおよび多孔質剤および空気清浄機および不織布およびマスクおよび熱交素子および加湿器およびウイルス不活化処理方法

【課題】空気清浄機のフィルター等において、SARSウイルスが活性力を持ったままでの再飛散を防止し、SARSウイルスを確実に不活化させ感染を防ぐフィルター、空気清浄機等、SARSウイルスを不活化処理するウイルス不活化処理方法を提供することを目的としている。
【解決手段】カテキン類等SARSウイルス不活化成分と吸湿剤を担持することにより、吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等、水に溶けるSARSウイルス不活化剤が溶解し、そこにSARSウイルスが捕集されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化剤と捕集されたSARSウイルスとの接触性が向上し浸透し、その結果、捕集、捕捉したSARSウイルスを確実迅速に不活化できるフィルターが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARSウイルスを不活化し、SARSウイルスの感染を防止するフィルター、多孔質剤、空気清浄機、不織布、マスク、熱交素子、加湿器、及びウイルス不活化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウイルスでは無いが空気中の細菌を除去するフィルターとして、茶等の抽出分のフラバノールを含浸したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、インフルエンザウイルスの空気感染を予防するものとして、茶ポリフェノールのカテキン類を主成分としたインフルエンザウイルス感染予防剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、茶ポリフェノールの成分のカテキン類をフィルターに含浸させた抗ウイルスフィルターが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】実開昭59−070719号公報(第2−5頁)
【特許文献2】特開平03−101623号公報
【特許文献3】特許第2719088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SARS(重症急性呼吸器症候群、新型肺炎)が近年突然発生し、SARSウイルスの強力な感染力のもと、大きな感染被害を持たらしている。SARSウイルスが新型コロナウイルスであるとか、感染経路は飛沫感染が主と言われているが、ワクチン、予防剤等、未だ根本的な治療方法が無く、感染を防ぐ方法として、流行期に病院を訪れるのを手控えるとか、うがいの励行、こまめな手洗いといった程度であり、感染を防止する有効な手立てに乏しく、早急な感染防止対応の開発が望まれている。
【0006】
このような上記従来のフィルターでは、フラバノールにはカテキンを含むが、単に、茶ポリフェノールのカテキン類をフィルターに含浸させただけでは、カテキン類がSARSウイルスの不活化に効果があるかどうか不明であり、また、捕集したSARSウイルスが接触後すぐに再飛散する等十分な接触時間が取れない場合、あるいはカテキンとフィルター捕集したSARSウイルスとが接触しないなどの接触性が悪い場合、SARSウイルスが活性力を持ったまま、再飛散する恐れがあり、あるいは不活化していないSARSウイルスに、手等の人体の部位が触れた場合感染の恐れが生じ、SARSウイルスを確実に不活化させ感染を防ぐことができないという課題があり、SARSウイルスを確実に不活化させようとすると、SARSウイルス不活化剤の開発およびSARSウイルス不活化剤とSARSウイルスを確実に接触させる不活化処理方法の開発が必要となる。
【0007】
また、茶ポリフェノールのカテキン類を主成分としたインフルエンザウイルス感染予防剤は、飴などの食品やうがい薬で用いるために、フィルターに捕集したウイルスを不活化するのに適していないという課題があった。
【0008】
すなわち、確実にSARSウイルスを不活化し、活性力を持ったまま再飛散を防止することが要求されている。
【0009】
また、空気中で確実にSARSウイルスを不活化することが要求されている。
【0010】
また、SARSウイルスを確実に不活化させるウイルス不活化処理方法の開発が要求されている。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、確実にSARSウイルスを不活化し、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルター、空気清浄機、不織布、マスク、熱交素子、および、空気中で確実にSARSウイルスを不活化する加湿器およびSARSウイルスを不活化処理するウイルス不活化処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフィルターは上記目的を達成するために、SARSウイルスを不活化するようにしたものである。
【0013】
この手段によりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0014】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、天然物抽出SARSウイルス不活化成分を担持してなる請求項1記載としたものである。
【0015】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0016】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、茶抽出SARSウイルス不活化成分を担持してなる請求項1記載としたものである。
【0017】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0018】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、吸湿する吸湿手段を備えた請求項1、2または3に記載としたものである。
【0019】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0020】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、水分を保持する保持手段を備えた請求項1、2または3に記載としたものである。
【0021】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0022】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、茶抽出SARSウイルス不活化成分と吸湿剤を担持してなるとしたものである。
【0023】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0024】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項6記載としたものである。
【0025】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0026】
また、本発明の多孔質剤は上記目的を達成するために、SARSウイルス不活化成分を担持してなるとしたものである。
【0027】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる多孔質剤が得られる。
【0028】
また、本発明のフィルターは上記目的を達成するために、請求項8あるいは9に記載の多孔質剤を備えたとしたものである。
【0029】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるフィルターが得られる。
【0030】
また、本発明の空気清浄機は上記目的を達成するために、請求項1乃至7いずれかに記載あるいは請求項10に記載のフィルターあるいは請求項8あるいは9に記載の多孔質剤を備えたとしたものである。
【0031】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる空気清浄機が得られる。
【0032】
また、本発明の不織布は上記目的を達成するために、SARSウイルスを不活化するようにするようにしたものである。
【0033】
この手段によりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる不織布が得られる。
【0034】
また、本発明の不織布は上記目的を達成するために、カテキンと吸湿剤を担持してなるとしたものである。
【0035】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる不織布が得られる。
【0036】
また、本発明の不織布は上記目的を達成するために、吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項13記載としたものである。
【0037】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる不織布が得られる。
【0038】
また、本発明のマスクは上記目的を達成するために、請求項12、13、14、あるいは15に記載の不織布を備えたとしたものである。
【0039】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるマスクが得られる。
【0040】
また、本発明の顕熱あるいは潜熱を熱交換する熱交素子は上記目的を達成するために、SARSウイルスを不活化するようにしてなるとしたものである。
【0041】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる熱交素子が得られる。
【0042】
また、本発明の顕熱あるいは潜熱を熱交換する熱交素子は上記目的を達成するために、カテキンと吸湿剤を担持してなるとしたものである。
【0043】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる熱交素子が得られる。
【0044】
また、本発明の顕熱あるいは潜熱を熱交換する熱交素子は上記目的を達成するために、吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項17記載としたものである。
【0045】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができる熱交素子が得られる。
【0046】
また、本発明の加湿器は上記目的を達成するために、SARSウイルスを空気中で不活化するようにするとしたものである。
【0047】
これによりSARSウイルスを確実に空気中で不活化することができ、活性力を持ったままでの空気中での浮遊を防止することができる加湿器が得られる。
【0048】
また、本発明のウイルス不活化処理方法は上記目的を達成するために、SARSウイルスを不活化するようにしてなるとしたものである。
【0049】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるウイルス不活化処理方法が得られる。
【0050】
また、本発明のウイルス不活化処理方法は上記目的を達成するために、ウイルス不活化成分と吸湿剤を混合処理してなるとしたものである。
【0051】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるウイルス不活化処理方法が得られる。
【0052】
また、本発明のウイルス不活化処理方法は上記目的を達成するために、ウイルス不活化成分が茶抽出成分であることを特徴とする請求項20に記載としたものである。
【0053】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるウイルス不活化処理方法が得られる。
【0054】
また、本発明のウイルス不活化処理方法は上記目的を達成するために、吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項20あるいは21に記載としたものである。
【0055】
これによりSARSウイルスを確実に不活化することができ、活性力を持ったまま再飛散を防止することができるウイルス不活化処理方法が得られる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、確実に迅速にSARSウイルスを不活化し、活性力を持ったままでの再飛散を防止することができ、あるいは不活化剤との接触不良によるSARSウイルスの不活化を防止でき、有効迅速確実にSARSウイルスの感染を防止することができるという効果のあるフィルター、空気清浄機、不織布、マスク、熱交素子およびウイルス不活化処理方法を提供することができる。
【0057】
また、空気中で確実にSARSウイルスを不活化できるという効果のある加湿器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明のフィルター、不織布の発明は、SARSウイルスを不活化するようにしたものであり、SARSウイルス不活化成分あるいはカテキン類等茶抽出SARSウイルス不活化成分と、湿分を吸湿する吸湿手段あるいはおよび水分を保持する保持手段を担持したもので、SARSウイルスをフィルター捕集、不織布捕集した際、吸湿剤等吸湿手段により吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等、水に溶けるSARSウイルス不活化剤が溶解し、そこにSARSウイルスがフィルター捕集、不織布捕集されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化剤と捕集されたSARSウイルスとの接触性が向上し浸透し、その結果、捕集、捕捉したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。水分を保持する保持手段を備えた場合も同様に、保持された水分を介して、SARSウイルス不活化剤と捕集されたSARSウイルスとの接触性、浸透性が向上し、捕集したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。
【0059】
なお、SARSウイルス不活化剤との水を介しての接触性、浸透性向上による不活化作用は、SARSウイルスに限らず、他のインフルエンザウイルス等のウイルスあるいは細菌に対しても同様の確実迅速な不活化効果を発揮する。
【0060】
なお、SARSウイルス不活化剤と、湿分を吸湿する吸湿剤あるいはおよび水分を保持する保持剤を混合担持するのは、湿分、水分を介してのSARSウイルス不活化剤とSARSウイルスとの接触性の点でより良い。
【0061】
なお、担持とは、含浸処理、材料等への練り込み処理、付着処理、表面付着処理等により担持させることであり、担持できれば良い。
【0062】
なお、カテキン類等とは、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン、(+)カテキンおよびこれらの異性体体、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートB等であり、これらが少なくとも1種以上含めばよい。
【0063】
また、本発明の多孔質剤は、SARSウイルス不活化成分あるいはカテキン類等の茶抽出SARSウイルス不活化成分を活性炭、シリカゲルあるいはゼオライト等の多孔質剤に含浸処理、担持したものであり、水分、湿分が多孔質内部に吸着されると孔の内部の担持されたSARSウイルス不活化成分上に薄い水分子の被膜が形成されあるいは水分とSARSウイルス不活化成分が混合担持され、そこに、SARSウイルスが吸着、捕捉されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化成分とSARSウイルスとの接触性、浸透性が向上し、捕集したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。
【0064】
なお、SARSウイルス不活化剤との水を介しての接触性、浸透性向上による不活化作用は、SARSウイルスに限らず、他のインフルエンザウイルス等のウイルスあるいは細菌に対しても同様の確実迅速な不活化効果を発揮する。
【0065】
また、本発明の熱交素子の発明は、SARSウイルスを不活化するようにしたものであり、SARSウイルス不活化成分あるいはカテキン類等茶抽出SARSウイルス不活化成分と、湿分を吸湿する吸湿手段あるいはおよび水分を保持する保持手段を担持したもので、SARSウイルスを捕捉、付着した際、吸湿剤等吸湿手段により吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等、水に溶けるSARSウイルス不活化剤が溶解し、そこにSARSウイルスが捕捉、付着されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化剤と捕捉、付着されたSARSウイルスとの接触性が向上し浸透し、その結果、捕捉、付着したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。水分を保持する保持手段を備えた場合も同様に、保持された水分を介して、SARSウイルス不活化剤と捕捉、付着されたSARSウイルスとの接触性、浸透性が向上し、捕捉、付着したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。
【0066】
なお、SARSウイルス不活化剤との水を介しての接触性、浸透性向上による不活化作用は、SARSウイルスに限らず、他のインフルエンザウイルス等のウイルスあるいは細菌に対しても同様の確実迅速な不活化効果を発揮する。
【0067】
また、本発明の空気清浄機、マスクは上記のフィルター、あるいは不織布を備えることにより、確実に迅速にSARSウイルスを不活化させるという作用を有する。
【0068】
また、本発明の加湿器は、SARSウイルスを空気中で不活化するようにしたものであり、カテキン類等のSARSウイルス不活化剤と吸湿剤との混合物を水とともに、空気中に放出、加湿することにより、空気中のSARSウイルスとの接触、捕捉時に、SARSウイルス不活化剤が吸湿剤により保持された水分、吸湿された湿分、水分を介して、SARSウイルスと接触するため、接触性、浸透性が向上し、空気中で確実に迅速にSARSウイルスを不活化させるという作用を有する。
【0069】
また本発明のウイルス不活化処理方法は、SARSウイルスを不活化するようにしたものであり、SARSウイルス不活化成分あるいはカテキン類等茶抽出SARSウイルス不活化成分と、湿分を吸湿する吸湿剤を混合処理したもので、SARSウイルスを捕捉、付着した際、吸湿剤等吸湿手段により吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等、水に溶けるSARSウイルス不活化剤が溶解し、そこにSARSウイルスが捕捉、付着されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化剤と捕捉、付着されたSARSウイルスとの接触性が向上し浸透し、その結果、捕捉、付着したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。SARSウイルス不活化剤と捕捉、付着されたSARSウイルスとの接触性、浸透性が向上し、捕捉、付着したSARSウイルスを確実に迅速に不活化できるという作用を有する。
【0070】
なお、混合処理とは、SARSウイルス不活化剤と吸湿剤の混合物を空調機、家電機器等の枠体等の材料に練り込み、あるいは表面担持することで、これにより、機器がSARSウイルスに汚染されても、SARSウイルスが確実に不活化され、再飛散による空気感染あるいは接触による感染を防止することができるものである。
【0071】
なお、SARSウイルス不活化剤との水を介しての接触性、浸透性向上による不活化作用は、SARSウイルスに限らず、他のインフルエンザウイルス等のウイルスあるいは細菌に対しても同様の確実迅速な不活化効果を発揮する。
【0072】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0073】
(実施の形態1)
緑茶あるいは紅茶成分から分離精製したカテキン類等と吸湿剤を、純水に溶かし調整液とし、この調整液に集塵性能を有したフィルターを噴霧処理し、脱水後乾燥処理を行い、SARSウイルス不活化フィルターを製造する。調整液はカテキン類等を0.1〜10%、吸湿剤である茶抽出のカフェインを0.01〜10%程度の濃度に調整される。SARSウイルス不活化不織布、熱交素子もフィルターと同様に、上記調整液で噴霧し、脱水後乾燥処理を行い、製造する。カテキン類等の担持量が約0.5〜3g/m2、カフェイン担持量が約0.05〜3g/m2のフィルターが得られる。本実施例では調整液を噴霧担持処理したが、調整液を浸漬、含浸担持処理しても良いし、調整液を印刷担持処理しても良い。
【0074】
カテキン類等とは、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン、(+)カテキンおよびこれらの異性体体、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートB等であり、これらが少なくとも1種以上含むものである。
【0075】
吸湿剤として、水和物を形成するカリウム、カルシウム、ナトリウム等のミネラル、シリカゲル、ゼオライト等の多孔質剤、無機物では水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、有機物では、繊維状高分子のセルロース、リグニン等の食物繊維、ショ糖等の炭水化物、テアニン等のアミノ酸、たんぱく質、カフェイン(メチルテオブロミン)等がある。吸湿剤は、湿分を吸湿し、表面に薄い水分子の膜が形成されるものであれば良く、潮解性を持っても良い。
【0076】
なお、フィルターは粗塵フィルター、中性能フィルター、高性能フイルター、HEPAフィルター等、集塵性能を有しておれば良く、材質も、ポリプロピレン、ガラス繊維等集塵性能を持つものであれば良い。不織布も綿、ポリプロピレン等、不織布機能を持つものであれば良い。熱交素子も、紙、ポリプロピレン、アルミ等、潜熱、あるいは顕熱を熱交換できるものであれば良い。
【0077】
上記構成において、吸湿剤により吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等、水に溶けるSARSウイルス不活化剤が溶解し、そこにSARSウイルスがフィルター捕集、不織布捕集、熱交素子捕捉されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化剤と捕集されたSARSウイルスとの接触性、浸透性が向上し、その結果、捕集、捕捉したSARSウイルスを確実に迅速に不活化し、活性力を持ったままでの再飛散を防止できることとなる。活性炭等の多孔質剤等の水分を保持する保持手段を備えた場合も同様に、保持された水分を介して、SARSウイルス不活化剤と捕集、捕捉されたSARSウイルスとの接触性、浸透性が向上し、捕集したSARSウイルスを確実に迅速に不活化し、活性力を持ったままでの再飛散を防止できることとなる。
【0078】
SARSウイルス吸着剤の混入は、カテキン類等のSARSウイルス不活化成分のSARSウイルス不活化の働きを阻害しないものであれば良く、SARSウイルスを吸着保持することで、SARSウイルス不活化成分によりSARSウイルスを確実に不活化することとなる。吸着剤としては、活性炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト等の多孔質剤がある。
【0079】
なお、フィルターのカテキン類等の担持量を約0.5〜3g/m2としたが、SARSウイルス不活化能力を確保できる程度に適宜調整すれば良い。
【0080】
また、フィルターの吸湿剤であるカフェインの担持量を約0.05〜3g/m2としたが、吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が形成され、SARSウイルス不活化剤と捕捉、付着されたSARSウイルスとの接触性と浸透性が向上し、確実迅速にSARSウイルスを不活化できる程度であれば、その値にとらわれず、適宜調整すれば良い。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分については、詳細な説明は省略する。
【0082】
緑茶あるいは紅茶成分から分離精製したカテキン類等を、純水に溶かし調整液とし、この調整液に多孔質剤を浸漬し、脱水後乾燥処理を行い、SARSウイルス不活化フィルターを製造する。製造した多孔質剤に、カテキン類等が0.1〜5g/100g程度含まれるように、調整、製造する。多孔質剤としては、活性炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト等がある。
【0083】
上記構成において、水分、湿分が多孔質内部に吸着されると孔の内部の担持されたSARSウイルス不活化成分上に薄い水分子の被膜が形成され、そこに、SARSウイルスが吸着、捕捉されるため、その結果、水を介してのSARSウイルス不活化剤とSARSウイルスとの接触性および浸透性が向上し、捕集したSARSウイルスを確実に迅速に不活化し、活性力を持ったままでの再飛散を防止できることとなる。
【0084】
(実施の形態3)
実施の形態1あるいは2と同一部分については、詳細な説明は省略する。
【0085】
実施の形態1のフィルター、不織布、あるいは実施の形態2の多孔質剤を備えたフィルターを空気清浄機のフィルターとして使用すると、空気中のSARSウイルスを捕集し、捕集したSARSウイルスを確実に迅速に不活化し、活性力を持ったままでの再飛散を防止できることとなる。
【0086】
なお、空気清浄機の他、エアコン、空調機、加湿器、布団乾燥機のフィルターに使用しても、空気清浄機と同様に、空気中のSARSウイルスを捕集し、捕集したSARSウイルスを確実に迅速に不活化し、活性力を持ったままでの再飛散を防止できることとなる。
【0087】
(実施の形態4)
実施の形態1、2あるいは3と同一部分については、詳細な説明は省略する。
【0088】
実施の形態1の不織布をマスクに使用すると、呼吸時の湿分、水分を吸湿剤が吸湿し、その湿分、水分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等、水に溶けるSARSウイルス不活化剤が溶解し、そこにSARSウイルスが捕集されると、湿分、水分、水分子の膜を介してSARSウイルス不活化剤と捕集されたSARSウイルスとの接触性が向上し浸透し、その結果、捕集、捕捉したSARSウイルスを確実に迅速に不活化し、活性力を持ったままでのマスクからの再飛散、通過を防止できることとなる。
【0089】
(実施の形態5)
実施の形態1、2、3あるいは4と同一部分については、詳細な説明は省略する。
【0090】
カテキン類等のSARSウイルス不活化剤とセルロース等の食物繊維状高分子あるいはテアニンあるいはカフェイン等の実施の形態1に記載された人体に無害な吸湿剤との混合物を純水に溶かし、調整液とし、この調整液を水で5〜10倍程度に希釈し、超音波加湿水として超音波加湿器により、空気中に噴霧加湿する。
【0091】
空気中に水とともに、噴霧、加湿することにより、空気中のSARSウイルスとの接触時に、SARSウイルス不活化剤が吸湿剤により保持された水分、吸湿された湿分、水分、水分子の膜を介して、SARSウイルスと接触するため、接触性、浸透性が向上し、空気中で確実に迅速にSARSウイルスを不活化させることができ、感染を防止することとなる。
【0092】
(実施の形態6)
実施の形態1、2、3、4あるいは5と同一部分については、詳細な説明は省略する。
【0093】
緑茶あるいは紅茶成分から分離精製したカテキン類等とカフェイン等の吸湿剤を混合し、純水に溶かし調整液とし、この調整液に対象物、あるいは対象材料を浸漬し、脱水後乾燥処理を行い、ウイルス不活化処理をする。対象物、あるいは対象材料とは、ウイルス不活化処理を必要とするもので、空調機器本体、家電機器本体、あるいはそれらを構成する材料、枠体等をいう。
【0094】
上記構成により、SARSウイルスを捕捉、付着した際、カフェインにより吸湿された湿分により表面に薄い水分子の膜が生成され、カテキン類等が溶解し、そこにSARSウイルスが捕捉され、付着すると、湿分、水分、水分子の膜を介してカテキン類等と捕捉、付着されたSARSウイルスとの接触性が向上し浸透し、その結果、捕捉、付着したSARSウイルスを確実に不活化でき、空調機器、家電機器等がSARSウイルスにより汚染されても、汚染物との接触、あるいは再飛散による感染を防止することとなる。
【実施例】
【0095】
実施の形態1で製造したフィルターを用いての、SARSウイルスの不活化試験結果を以下に示す。
【0096】
1.供試フィルター:実施の形態1のフィルター。5×5cm2×5枚
2.供試株
1)SARS−COV−P4 コロナウイルス分離株
2)SARS−COV−P11 コロナウイルス分離株
3.SARSウイルスの分離と鑑定(鑑定済みのものを再確認)
1)ARS患者の急性期のP4、P11血清をもとに、ウイルス分離
2)SARSウイルスのS遺伝子の配列を解読:陽性
3)中和試験と免疫蛍光測定により、IgMとIgG4を試験測定:IgM陽性、I gG4倍増
4.培養細胞:アフリカミドリザルの腎継代細胞(VERO E6)
5.有毒株の毒性の測定:ウイルスCPE法
6.予備試験:供試フィルターのVERO E6に対する毒性作用−無毒を確認
7.試験回数:3回平均
8.試験結果(SARS−COV−P4、SARS−COV−P11とも)
1)供試フィルターと100TCID50/mlSARSウイルス希釈液5mlと室
温で6時間作用−不活化率100%
2)供試フィルターと100TCID50/mlSARSウイルス希釈液5mlと室
温で4時間作用−不活化率50%
3)供試フィルターと100TCID50/mlSARSウイルス希釈液5mlと室
温で2時間作用−不活化率25%
4)対照フィルター:不活化0%
*対照フィルター:SARSウイルス不活化剤と吸湿剤が無担持のフィルター
上記結果により、SARSウイルスを不活化するようにしたフィルターでは、不活化率100%と十分な不活化効果が得られている。
【0097】
したがって、作用時間である接触時間、すなわち接触性を良くすることにより、確実に迅速にSARSウイルスを不活化し、活性力を持ったまま再飛散を防止でき、あるいは不活化剤との接触不良によるSARSウイルスの不活化を防止で、有効迅速確実にSARSウイルスの感染を防止することができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
SARSウイルスの感染を防止するもので、病院、ビル、住宅、学校、オフィース、家庭等でのフィルター、不織布、空気清浄機、空調機、各種機器、マスク、熱交素子、加湿器等、及びウイルス不活化処理方法等の用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARSウイルスを不活化するようにするフィルター。
【請求項2】
天然物抽出SARSウイルス不活化成分を担持してなる請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
茶抽出SARSウイルス不活化成分を担持してなる請求項1記載のフィルター。
【請求項4】
湿気を吸湿する吸湿手段を備えた請求項1、2または3に記載のフィルター。
【請求項5】
水分を保持する保持手段を備えた請求項1、2または3に記載のフィルター。
【請求項6】
茶抽出SARSウイルス不活化成分と吸湿剤を担持してなるフィルター。
【請求項7】
吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項6記載のフィルター。
【請求項8】
SARSウイルス不活化成分を担持してなる多孔質剤。
【請求項9】
SARSウイルス不活化成分が茶抽出成分であることを特徴とする請求項8記載の多孔質剤。
【請求項10】
請求項8あるいは9に記載の多孔質剤を備えたフィルター。
【請求項11】
請求項1乃至7いずれかに記載あるいは請求項10に記載のフィルターあるいは請求項8あるいは9に記載の多孔質剤を備えた空気清浄機。
【請求項12】
SARSウイルスを不活化するようにする不織布。
【請求項13】
SARSウイルス不活化成分と吸湿剤を担持してなる不織布。
【請求項14】
吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項13記載の不織布。
【請求項15】
請求項12、13、14、あるいは15に記載の不織布を備えたマスク。
【請求項16】
SARSウイルスを不活化するようにしてなる顕熱あるいは潜熱を熱交換する熱交素子。
【請求項17】
SARSウイルス不活化成分と吸湿剤を担持してなる顕熱あるいは潜熱を熱交換する熱交素子。
【請求項18】
吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項17記載の熱交素子。
【請求項19】
SARSウイルスを空気中で不活化するようにする加湿器。
【請求項20】
SARSウイルス不活化成分と吸湿剤を混合処理することを特徴とするウイルス不活化処理方法。
【請求項21】
SARSウイルス不活化成分が茶抽出成分であることを特徴とする請求項20記載のウイルス不活化処理方法。
【請求項22】
吸湿剤が茶抽出成分であることを特徴とする請求項20あるいは21記載のウイルス不活化処理方法。


【公開番号】特開2006−21095(P2006−21095A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200229(P2004−200229)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000006242)松下エコシステムズ株式会社 (36)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】