説明

フィルタ掃除機構、フィルタユニット、光学ユニットおよび投写型映像表示装置

【課題】 フィルタ面と対向するように塵埃を除去する除塵体が配置されているため、フィルタ支持体として機能する補助ローラを取り付ける必要があり、部品点数が多くなるという問題があった。
【解決手段】 空気をろ過するエアフィルタ10を取り付けたループ形状の帯状網体であるフィルタ枠11を駆動軸22および案内軸23により保持する。除塵体であるブラシユニット25を駆動軸22とともにフィルタ枠11を挟むように配置し、フィルタ枠11を駆動することでエアフィルタ10に付着した塵埃をブラシユニット25のブラシ25cにより掻き取り、エアフィルタ10の掃除を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアフィルタによって捕集された塵埃を除去するフィルタの掃除機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、年々高輝度化が進む傾向にある。高輝度化を図ることは、明るい環境でも鮮明な映像を見られるという点で、ユーザーにとってもメリットが大きい。
【0003】
一方、高輝度化に伴って、プロジェクタ内部の発熱量が高くなる傾向にある。特に光学部品は、輝度が高くなる分だけ受熱量も多くなるため、性能および安全性を確保するためにも冷却手段は必須である。従来から、光学部品の冷却には様々な手法が採られてきた。その中でも、プロジェクタの筐体内に外部の空気を取り込み、光学部品に吹き付けて冷却する方式は、安価且つ簡易な構造で実現可能という事もあり、最も多く採用されている。
【0004】
しかし、外気を取り込むという事は、同時に外部の塵や埃も取り込む事になる。光学部品に付着した塵や埃は、投写映像に影や輝点として現れ、映像の品位を著しく落とす。このため、塵や埃を除去する必要がある。その対策としてエアフィルタを設ける手法が一般的となっており、防塵性を高める技術も存在する。
【0005】
ところが、エアフィルタは、それ自身が外気を吸引する際の空気抵抗になる。また、長期使用していると塵埃による目詰まりを起こし、更なる冷却能力の低下を招く。そのため定期的に清掃、交換などのメンテナンスが必要となる。例えば、スクリーンの前方から投射するフロントプロジェクタなどで高所に据付けられる場合では、作業を行う事自体が大変な手間となるため、極力メンテナンスをせずに長期間使用可能な防塵対策も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−51902号公報(段落0041、0042、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のフィルタの掃除機構では、フィルタ面と対向するように塵埃を除去する除塵体が配置されているため、フィルタ面に対して除塵体の反対側に除塵体を確実にフィルタ面に押し当てるためのフィルタ支持体として機能する補助ローラを取り付ける必要があり、部品点数が多くなるという問題があった。
【0008】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、フィルタ掃除機構の部品点数の削減を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るフィルタ掃除機構は、空気をろ過するエアフィルタと、前記エアフィルタを保持しループ形状のフィルタ枠と、前記フィルタ枠を保持し回転することで前記フィルタ枠をループ方向に搬送する第1の搬送軸と、前記第1の搬送軸とともに前記フィルタ枠を保持する第2の搬送軸と前記第1の搬送軸とともに前記エアフィルタを挟むように配置された除塵ローラとを備え、前記第1の搬送軸の円筒面は弾力性を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、除塵ローラをフィルタ枠の搬送軸とともにエアフィルタを挟むように配置することで、簡易な構成のフィルタ掃除機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのフィルタ固定部の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのフィルタカートリッジ部の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのフィルタカートリッジ部の分解斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのフィルタ枠の構成を示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのフィルタ枠の構成を示す部分構成図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのフィルタ枠の位置構成を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットの駆動軸とクッション部材との構成を示す構成図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットの塵埃除去動作を説明する説明図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係るフィルタユニットのクッション部材の別構成を示す構成図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るフィルタユニットの構成を説明する斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係るフィルタユニットの駆動軸の構成を説明する分解斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係るフィルタユニットの駆動軸の構成を説明する断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係るフィルタユニットの駆動軸とブラシユニットとの構成を示す構成図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係るフィルタユニットの塵埃除去動作を説明する説明図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係るフィルタユニットのフロントプロジェクションへの搭載例を示す斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係るフィルタユニットのプロジェクションテレビへの搭載例を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係るフィルタユニットの光学ユニットへの搭載例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1から図5は本発明の実施の形態1に係るフィルタユニット101の構成を示す図である。図1はフィルタユニット101の斜視図、図2はフィルタユニット101の分解斜視図、図3はフィルタ固定部105の分解斜視図、図4、図5はフィルタカートリッジ部106の分解斜視図である。ここで、図の説明を容易にするために、フィルタ枠11の送り方向をX軸方向、駆動軸22の軸方向をY軸方向、フィルタユニット101の奥行き方向で空気が流れる方向をZ軸方向とする。X軸方向で駆動機構4と駆動軸22とが配置された方向を−X軸方向とし、その逆方向を+X軸方向。Y軸方向で駆動機構4が配置された方向を−Y軸方向とし、その逆方向を+Y軸方向。Z軸方向で外気側を−Z軸方向とし、その逆方向を+Z軸方向とする。なお、説明上+Y軸方向を上側、−Y軸方向を下側と呼ぶ。
【0013】
フィルタユニット101はフィルタユニット固定部105とフィルタカートリッジ部106で構成される。フィルタユニット101はメッシュ材を使用したエアフィルタ10が投写型映像表示装置200の外気側に位置するように投写型映像表示装置200に取り付けられ、エアフィルタ10の+Z軸方向に配置されたファン6でエアフィルタ10を通じて外気を吸入する構成となっている。なお、メッシュ材は、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)で作製された繊維を網目状に編んで作製されたフィルタ部材である。また、投写型映像表示装置200は、後述する図17、図18に示すようなフロントプロジェクタ200aやプロジェクションテレビ200b等である。
【0014】
図2を用いてフィルタ固定部105の構成を説明する。フィルタユニット筐体1は投写型映像表示装置200に取り付けられる。フィルタカートリッジ部106のカートリッジ筐体20は、フィルタユニット筐体1の中に収められる。カートリッジ筐体20の+Y軸方向である上面にはバネ2がネジ止めされている。バネ2は、フィルタユニット筐体1に対してカートリッジ筐体20を−Y軸方向である下方に押さえつけることで、フィルタユニット筐体1に対するカートリッジ筐体20の位置決めを行っている。フィルタユニット筐体1の+Z軸側にはファン6とほぼ同サイズの開口部1aが設けられ、開口部1aを覆うように目の粗いフィルタ部材3がフィルタユニット筐体1の−Z軸方向である外側から取り付けられている。
【0015】
図3を用いて駆動機構4の構成を説明する。フィルタユニット筐体1の−Y軸方向の面である底面にはギアベース7がネジ止めされている。モータ5はギアベース7の+X軸方向の側面に取り付けられている。モータ5のモータ軸にはウォーム5aが圧入され、ウォーム5aはウォームホイールであるギア4aとともにウォームギアを構成している。ウォーム5aと第1から第3までのギア4a,4b,4cは減速機構を構成している。ギア4bは二段ギアである。
【0016】
駆動ギア9の軸は側面の一部が平面であるDカット形状となっている。一方、ギア4cの軸上には駆動ギア9のDカットされた軸に対応したD形状の穴が形成されている。駆動ギア9の軸をギア4cの穴にD形状を合わせるように挿入することで、駆動ギア9はギア4cと回転方向の位相がずれることなく、つまりギア4cに対して駆動ギア9が回転することなくギア4cに取り付けられる。圧縮コイルバネ8はギア4cと駆動ギア9との間の軸に取り付けられ、ギア4cと駆動ギア9とが互いに軸方向に反発するようにバネ力を与えている。つまり、ギア4cと駆動ギア9とは互いに回転軸の方向に反発するように圧縮コイルバネ8のバネ力を受けている。なお、駆動ギア9は後述する駆動軸22に隙間をもって嵌め合わされている。
【0017】
図4、図5を用いてフィルタカートリッジ部106の構成を説明する。カートリッジ筐体20の−Z側の面には矩形状の開口部20aが形成され、外気が開口部20aを通して+Z軸方向に取り込まれる構造となっている。第1の搬送軸である駆動軸22の軸部22e,22fと除塵部材で除塵ローラとして機能するブラシユニット25の回転軸25eとは、カートリッジ筐体20の+Y軸方向の側面である上面の内側に設けられたU字形状の切欠き部20c,20dと、カートリッジ筐体20の−Y軸方向の側面である下面に設けられた長穴20e,20fに回転自在に取り付けられる。第2の搬送軸である案内軸23はカートリッジ筐体20の+Y軸方向の側面である上面と−Y軸方向の側面である下面とに形成されたL字状の長穴20gに回転自在に取り付けられる。
【0018】
第1のカートリッジカバー21aをカートリッジ筐体20に+Z軸方向から取り付けることにより、駆動軸22とブラシユニット25とは、各々カートリッジカバー21aに形成されたU字形状の切欠き部21c,21dによりカートリッジ筐体20に対するZ軸方向の位置が決められる。一方、案内軸23は、板バネ26aのV字状に折り曲げられた先端部26bにより+X軸方向に押し付けられて位置決めされる。板バネ26aは、カートリッジ筐体20の+Y軸方向の側面と−Y軸方向の側面との内面側に設けられた取付け部20hに板バネ26aの取付け部26cを差し込むことで取り付けられる。
【0019】
ブラシユニット25の側面には、エアフィルタ10から塵埃を掻き取るブラシ25cが取り付けられている。このブラシ25cに付着した塵埃を除去するための塵埃除去部として機能する剥離板24は、先端に三角形状の歯形が形成され、歯形の先端はブラシユニット25の側面に取り付けられたブラシ25cに接している。このとき、剥離板24は歯形の先端からブラシユニット25の円周に沿うように円弧等の曲線で形成されている。剥離板24は第2のカートリッジカバー21bにネジ止めされている。ブラシユニット25、剥離板24と第2のカートリッジカバー21bは、ブラシユニット25に付着した塵埃が外に漏れないように略密閉空間である集塵部27を形成し、ブラシユニット25に付着した塵埃を収納する。
【0020】
カートリッジ筐体20の−Y軸方向の下面の内側にはフィルタ枠11の位置を検出するためのフォトインタラプタを用いたセンサ20bが取り付けられている。フィルタ枠11の一部に切欠き部11fが形成され、X軸方向に駆動するフィルタ枠11の位置を光学的に検出し、ホームポジションである初期位置の検出ならびに位置ずれ防止の効果を有する。
【0021】
図6、図7にフィルタ枠11の構成を示す。フィルタ枠11はループ形状の帯状網体で、フィルタユニット101のフィルタカートリッジ部106に取り付けられたとき、長方形形状の第1の面である面11aと第2の面である面11bを形成する。図6においては、面11aは破線枠で示し、面11bは実線枠で示している。
【0022】
リブ11cは、フィルタ枠11をループ形状の帯状網体に形成し、エラストマなどの弾性を有するゴム材料で構成されている。フィルタユニット101が外気を吸入する状態では、面11bに形成されたリブ11cは、XY平面上において、面11aに形成されたリブ11cと重なるように位置決めされている。つまりZ軸方向から見ると面11bに形成されたリブ11cと面11aに形成されたリブ11cとが重なって見える。このため、開口部1aからエアフィルタ10を通して投写型映像表示装置200内に流入する外気は、リブ11cにその流れを妨げられ難い。
【0023】
外気をろ過して吸気するためのエアフィルタ10はフィルタ枠11の面11b以外の面に取り付けられており、面11bはエアフィルタ10が取り付けられていない開口面を形成している。フィルタ枠11のY方向の両端の内側にはラック11d,11eが形成されている。図7にラック11eの部分を拡大した部分構成図を示している。なお、ラック11eの構成を分かり易くするためにエアフィルタ10は記載していない。
【0024】
図8にフィルタ枠11と駆動軸22、案内軸23、ブラシユニット25との位置関係を示す。駆動機構4から駆動力を伝達される駆動ギア9は駆動軸22の伝達部22aに−Y軸方向から隙間をもって嵌め合わされている。駆動軸22に対して駆動ギア9が軸まわりに回転しないように伝達部22aには3つのリブが設けられている。このため、駆動軸22に対して駆動ギア9は回転軸まわりに回転しない。つまり駆動ギア9と駆動軸22は一体として回転する。なお、図8には駆動ギア9は記載されていない。駆動軸22の両端にはギア22b,22cが形成され、ギア22b,22cはフィルタ枠11のラック11d,11eにそれぞれかみ合っている。フィルタ枠11は、1方向のみに回転するモータ5の駆動力により、図8の+Y軸方向から見て時計回りである矢印方向に駆動される。
【0025】
案内軸23のY軸方向の両端付近にはギア23b,23cが形成され、ギア23b,23cはそれぞれフィルタ枠11のラック11d,11eにかみ合っている。さらに、案内軸23の両端の先端部23aは、図5に示すように板バネ26aにより、+X方向に押し付けられてカートリッジ筐体20に対して位置決めされている。従って、フィルタ枠11の+X軸方向の端部は+X方向に引っ張られているため、フィルタ枠11はたるむことなく駆動される。
【0026】
ここで、本実施の形態1では、案内軸23に形成されたギア23b,23cが、フィルタ枠11のラック11d,11eにかみ合ってフィルタ枠11を駆動する構成とした。しかし、フィルタ枠11に形成したラック11d,11eとギア23b,23cとがフィルタ枠11の駆動の際に歯飛びする場合、ラック11d,11eとギア23b,23cとのかみ合いが元に戻らない限り、フィルタ枠11に撓みが生じるという問題がある。この場合は、案内軸23にギア23b,23cを形成しない構成とすることができる。フィルタ枠11のラック11d,11eが、円柱状の軸に接する構成とすれば、ラック11d,11eの歯飛びを伴うフィルタ枠11の撓みが発生せず、安定した駆動が可能となる。しかし、ラック11d,11eの先端部のみで案内軸23に接するためラック11d,11eの変形等を考慮する必要がある。
【0027】
一方、ブラシユニット25はブラシ回転軸25aと、駆動軸22からの駆動力を伝達されるギア25bと、ブラシ回転軸25aに巻きつけられた起毛を有するブラシ25cで構成されている。駆動軸22にはブラシユニット25に形成されるギア25bとかみ合う位置にギア22dが形成されている。
【0028】
図9に駆動軸22と弾性体であるクッション部材30の構成を示す。駆動軸22の軸方向の中央部分には円筒形状で弾性を有するクッション部材30が取付けられている。クッション部材30はスポンジ状の軟らかい材料で形成され、クッション部材30の外周には、ビニール等のクッション部材よりも耐久性に優れた材料で皮膜が形成されている。クッション部材30の厚みTは、駆動軸22の半径をA、ブラシユニット25の半径をB、そして駆動軸22とブラシユニット25の軸間距離をYとしたとき、次式(1)を満たすように構成されている。
【0029】
【数1】

【0030】
つまり、クッション部材30は圧縮されるため、駆動軸22に形成されたクッション部材30はフィルタ枠11ならびエアフィルタ10をブラシユニット25に対してブラシユニット25の半径方向に押し付ける機能を有している。なお、エアフィルタ10の厚みは約0.3mmと薄いため、式(1)の検討からは省いている。さらにクッション部材30はスポンジ状の軟らかい材料であるため、フィルタ枠11のリブ11cはクッション部材30に沈み込む。このため、クッション部材30がエアフィルタ10をブラシユニット25のブラシ25cに押し付け、エアフィルタ10とブラシ25cの密着性を高めることができる。
【0031】
図10はフィルタユニット101の塵埃の除去動作を説明する図である。駆動機構4の駆動力により、駆動軸22は図10中で時計回りに回転する。それに伴いフィルタ枠11が図10中の矢印方向である一つの方向に駆動される。同時に、駆動軸22に形成されたギア22dとブラシユニット25に形成されたギア25bとがかみ合うことで、ブラシユニット25は駆動軸22に対して反対方向である反時計回りに回転する。
【0032】
ブラシユニット25に取り付けられたブラシ25cは、フィルタ枠11に取り付けられたエアフィルタ10と接触するため、接触部分においてエアフィルタ10に付着した塵埃を取り除く。ブラシ25cは起毛を有するので、取り除いた後の塵埃をブラシ25cに付着させることができる。エアフィルタ10としてメッシュ材を使用することで、ブラシ25cの起毛がメッシュ材の網目状に編まれた繊維の間に入り込み塵埃を掻き出すため、ブラシ25cによる塵埃の除去を容易にすることができる。
【0033】
一方、ブラシ25cには先端に歯形を有する剥離板24が接触しているため、剥離板24の先端の歯形によりエアフィルタ10で捕集した塵埃を掻き取って集塵することができる。剥ぎ取った塵埃は、略密閉空間27に堆積させることで略密閉空間27をゴミ収納ボックスとして機能させる。
【0034】
以上の動作により、エアフィルタ10に付着した塵埃はブラシ25cによって除去される。除去された塵埃は剥離板24によりエアフィルタ10から掻き取られ、略密閉空間27に堆積される。外気をろ過するためのエアフィルタ10に付着した塵埃を除去することで、冷却性能の低下を抑制することが可能となり、エアフィルタ10に付着した塵埃は略密閉空間27に堆積されるため、除去した塵埃が投写型映像表示装置200の内部に入る量を抑制することが可能となる。
【0035】
ここで、駆動軸22にクッション部材30を取り付けることにより、エアフィルタ10とブラシ25cの密着性を高めることが可能となり、エアフィルタ10に付着した塵埃の除去効率を高めることが可能となる。加えて、クッション部材30はスポンジ状の軟らかい材料を使用することにより、リブ11cをブラシ25cに押し付ける力を低減できるため、駆動機構4の負荷の増大を抑えることができる。
【0036】
以上の構成により、フィルタ枠11を駆動する駆動軸22上においても高い塵埃の除去性能を実現することができ、フィルタユニット筐体1の薄型化に有利な構成で、フィルタ支持体として機能する補助ローラを追加することなくエアフィルタ10に付着した塵埃の高い除去効率を備えるフィルタユニットを実現することができる。
【0037】
さらに、クッション部材30の外周にはビニール等のクッション部材よりも耐久性に優れた材料で皮膜を形成しているため、ブラシ25cとの接触による磨耗に対して耐久性を向上させることが可能となり、信頼性を向上することができるという効果を得ることができる。
【0038】
ここでは、駆動軸22とクッション部材30の組合せによる構成を示したが、駆動軸22の軸部をシリコン材やウレタン材などの弾性材料で作製することでクッション部材30の機能を果たし、クッション部材30と同様の効果を得ることが可能となる。
【0039】
図11に本実施の形態1のクッション部材30の別構成を示す。クッション部材30の外周には環状の溝30a、30bが形成されている。環状の溝30a、30bはフィルタ枠11のX軸方向のリブ11cと対応するようにクッション部材30の円周方向に形成されている。つまり、リブ11cのY軸方向の位置と溝30a、30bのY軸方向の位置とは一致している。
【0040】
これにより、定常的にクッション部材30を押し付け、クッション部材30を変形させるX軸方向のリブ11cを避けることができ、クッション部材30の不要な変形を抑えることができる。
【0041】
また、以上の構成により、フィルタ枠11を駆動する際、クッション部材30はフィルタ枠11のX軸方向のリブ11cと干渉しないため、駆動機構4の負荷の増大を抑えることが可能となり、低負荷で高い塵埃の除去性能を有することが可能となる。
【0042】
実施の形態2.
図12から図14を用いて実施の形態2に係るフィルタユニット102の説明をする。図12はフィルタ枠11と駆動軸42の構成を示す斜視図、図13は駆動軸42の構成を示す分解斜視図、図14は駆動軸42の断面図である。上述の実施の形態1のフィルタユニット101の構成と同様である部分については説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0043】
駆動機構4から駆動力を伝達される伝達ギア9は、駆動軸42の伝達部42aに−Y軸方向から取り付けられる。駆動軸42に対して駆動ギア9が軸まわりに回転しないように伝達部42aには3つのリブが設けられている。このため、駆動軸42に対して駆動ギア9は回転軸まわりに回転しない。つまり駆動ギア9と駆動軸42は一体として回転する。駆動軸42の両端にはギア42b,42cが形成され、ギア42b,42cはフィルタ枠11のラック11d,11eにそれぞれかみ合い、一つの方向のみに回転するモータ5の駆動力により、フィルタ枠11は図12中の矢印方向に駆動される。
【0044】
バネ部材44は、駆動軸42の外径と等しい内径の穴部44cを備える円筒部材44aと、円筒部材44aのY軸方向の両端に、各々4つで合計8つのY軸方向に延びる板バネ44bとを備える。板バネ44bは、外周方向にバネ力を発生し、円筒部材44aは軸部である駆動軸42にネジ止めされる。
【0045】
図12、図14に示すように、筒部である筒軸43の外周の半径は、フィルタ枠11が折り返す位置でのX軸方向のリブ11cの外側の面が形成する円弧の半径と等しくなるように形成されている。筒軸43の外周面に設けられた環状の溝43a,43bは、フィルタ枠11のX軸方向に形成されたリブ11cとY軸方向において同じ位置に設けられている。これにより、X軸方向のリブ11cが筒軸43の外周面より突出しないようにし、エアフィルタ10のY軸方向の平坦性を向上して、ブラシユニット25のブラシ25cとエアフィルタ10との密着性を向上することができる。筒軸43は、実施の形態1で説明したクッション部材30とは異なりプラスチック等で作製され、バネ部材44によるバネ力により大きく変形しない程度の剛性を有している。
【0046】
図14に示すように、筒軸43の内周面には縦溝43c,43d,43e,43fが形成されている。縦溝43c,43d,43e,43fはY軸に平行で、バネ部材44の板バネ44bの位置に対応して略90度の間隔で形成されている。縦溝43c,43d,43e,43fの溝幅は、板バネ44bが収まる幅で形成され、底部43hに板バネ44bが接している。板バネ44bは外周方向である筒軸43を押し広げる方向にバネ力を発生している。
【0047】
また、筒軸43の内径がギア42cの歯先円直径より小さい場合、ギア42cは駆動軸42と一体で形成できず、別部品で構成する必要がある。さらに筒軸43がY軸方向に抜けることを防ぐために、筒軸43の両端付近の内側には当て面43gを設け、例えばギア42bの+Y軸方向とギア42cの−Y軸方向とにギア42b,42cに隣接するようなリブを設け、その図示しないリブと当て面43gとが嵌合することで筒軸43の抜け止めの効果を得ることができる。また、ギア42bの+Y軸方向の面とギア42cの−Y軸方向の面とに筒軸43のY軸方向の2つの端面が当たるようにすることで、筒軸43の抜け止めの効果を得ることができる。ただし、この場合は駆動軸42に筒軸43を+Y軸方向から挿入するためにギア42cを別部品とする必要がある。
【0048】
以上の構成により、筒溝43の溝43a,43bは、X軸方向のリブ11cを中に収めるように形成されているので、筒溝43の円周面はエアフィルタ10のみに当接し、エアフィルタ10とブラシ25cとの密着性を高めることが可能となる。
【0049】
さらにY軸方向のリブ11cが存在する箇所においては、筒軸43の外周面がY軸方向のリブ11cと接してリブ11cから圧力を受けることにより板バネ44bが変形し、筒軸43はリブ11cから遠ざかる方向へ移動する。これにより、駆動機構4にかかる負荷を低負荷に抑え、パワーの小さいモータを採用によるモータ5の小型化と消費電力の低減を可能にしながら高い塵埃の除去性能を有することが可能となる。
【0050】
実施の形態3.
図15、図16を用いて実施の形態3に係るフィルタユニット103の説明をする。図15は駆動軸52とブラシユニット55との構成を示す構成図、図16はフィルタユニット103の塵埃の除去動作を説明する図である。上述の実施の形態1のフィルタユニット101の構成と同様である部分については説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。なお、図15においてクッション部材30とブラシ55cとの間にフィルタ枠11およびフィルタ枠11に取り付けられたエアフィルタ10が挟まれているが、図15が複雑となるため記載していない。駆動軸52とブラシユニット55の軸間の寸法関係は、エアフィルタ10の厚みが約0.3mmと薄く、フィルタ枠11のリブ11cの部分は、クッション部材30が弾性によりクッション部材30に沈み込むため、図15を用いた説明上は問題が無い。
【0051】
ブラシ55cは例えばエチケットブラシ(登録商標)のように、集塵時の移動方向に対して毛足の短いブラシ毛が逆目となる方向に傾斜した構成となっている。エアフィルタ10に付着した塵埃を除去する際、傾斜したブラシ毛がエアフィルタ10に接触し、傾斜したブラシ毛の逆目方向に移動することにより、で捕集された塵埃を掻き取って集塵することができる。
【0052】
上記構成のブラシ55cを使用すれば、除去後の塵埃がエアフィルタ10に再付着することを抑制することができる。また、上述のように、このようなブラシ材55cを使用する場合、埃除去を容易にするためには、エアフィルタ10として、メッシュ材であることがのぞましい。
【0053】
塵埃の除去のために使用する剥離板24は先端に歯形を形成し、歯形の先端はブラシユニット55の側面に取り付けられたブラシ55cに接するように配置されている。このとき剥離板24は、歯形の先端からブラシユニット55の外周面に沿うような曲面で形成されている。ブラシ55cの傾斜したブラシ毛が剥離板24の先端に向けて順目方向で移動するように、ブラシユニット55は回転する。このため、ブラシ55cに付着した塵埃を効率よく除去することが可能となる。順目方向に移動するとは、ブラシユニット55が回転する際、剥離板24の先端部がブラシ55cのブラシ毛の根元側から先端部に向けて接触しながら移動していくということである。このため、ブラシ毛に引っかかった塵埃は、ブラシ毛の根元側から先端部の方向に移動することになり、剥離板24は容易に塵埃をブラシ毛から取り除くことができる。
【0054】
駆動軸52からブラシユニット55に伝達する減速機構55dは、駆動軸52のギア52dの歯数をZk、ブラシユニット55のギア55bの歯数をZbとして、駆動軸52の中心からエアフィルタ10とブラシ毛55cが接触する点Sまでの距離の2倍となる値をDk、ブラシユニット55の直径をDbとすると、各値は次式(2)の関係を満たす。なお、Dkはクッション部材30の変形によりクッション部材30の直径より若干小さな値となる。
【0055】
【数2】

【0056】
駆動軸52の回転数をRk、ブラシユニット55の回転数をRbとし、エアフィルタ10とブラシ55cと接触する点Sにおけるエアフィルタ10の速度をVk、ブラシ55cの外周の速度をVbとすると、速度Vkは次式(3)、速度Vbは次式(4)で表される。
【0057】
【数3】

【0058】
【数4】

【0059】
高い塵埃の除去機能を得るためには、傾斜したブラシ55cのブラシ毛がエアフィルタ10に接触し、傾斜したブラシ毛55cの逆目方向にエアフィルタ10の表面を移動する必要がある。ブラシ55cのエアフィルタ10と接する部分において、ブラシ毛の移動方向とエアフィルタ10の移動方向は同一方向であるため、傾斜したブラシ毛がエアフィルタ10の表面を逆目方向に移動するためには、エアフィルタ10の速度Vkはブラシ毛の速度Vbより大きな値である必要がある。つまり、Vk>Vbである必要がある。従って、減速機構60は上記の式(3)と式(4)とを満たす必要がある。
【0060】
以上の構成により、傾斜したブラシ毛のブラシ55cがエアフィルタ10に接触し、傾斜したブラシ毛の逆目方向に移動するため、高い塵埃の除去機能を備える。また、傾斜したブラシ毛により確実に塵埃を保持しているため除去後の塵埃がエアフィルタ10に再付着することを抑制することができる。さらに、ブラシユニット55が、剥離板24の先端に対して傾斜したブラシ毛の順目方向に接触するように回転するため、ブラシ55cに付着した塵埃を効率よく除去することが可能となる。
【0061】
また、速度差が小さすぎると高い塵埃の除去性能が確保できないため、VkとVbとの速度差は1mm/s以上であることが望ましい。
【0062】
本実施の形態3の構成では、減速機構52dを構成することでVkとVbとが所望の速度差になるように構成したが、駆動軸52とブラシユニット55のモータ等の駆動源がそれぞれ独立することでも同様の効果を得ることが可能となる。しかしながら、その場合は駆動源が増加することとなるので、フィルタユニットの小型化が困難となり、また、部品点数の増加による組立性が悪くなり、駆動源の増加による消費電力の増加という欠点がある。
【0063】
また、上記実施の形態1から3までのフィルタユニット101,102,103は図17に示すようなフロントプロジェクタ200aや図18に示すようなプロジェクションテレビ200b等の投写型映像表示装置に使用されるが、これに限ったものではない。図19は画像をスクリーンに投写するための光学ユニット300に搭載した例である。光学ユニット300にはキセノンランプ等の光源300bとスクリーンに映像を投写するための投写レンズ300aを備えている。内部に配置された光学系を構成する部品は、塵埃を嫌うため光学ユニット300はほぼ密閉構造を採用しているが、光源300bの発熱による温度上昇が、内部の光学系の精度に影響するため冷却用のファンを搭載している。また、上述の例とは逆に、内部の塵埃を外に出さずに内部を冷却する場合や、内部の塵埃を集塵する場合のように内部の空気を浄化して外部に放出する場合にも利用が可能である。このように塵埃の侵入や放出を防ぎつつ冷却用の空気の吸気や排気が必要な装置であれば、どのような装置にも適用可能であり、メンテナンス性に有利なフィルタユニット101,102,103の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10 エアフィルタ、 11 フィルタ枠、 22 駆動軸、 22b,22c,22d ギヤ、 23 案内軸、 24 剥離板、 25 ブラシユニット、 25b ギア、 25c ブラシ、 30 クッション部材、 42 駆動軸、 43 筒軸、 44 バネ部材、 44a 円筒部材、44b 板バネ、 52b,52c,52d ギア、 55b ギア、 55d 減速機構、 101,102,103 フィルタユニット、 200 投射型映像表示装置、200a フロントプロジェクタ、 200b プロジェクションテレビ、 300 光学ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気をろ過するエアフィルタと、
前記エアフィルタを保持しループ形状のフィルタ枠と、
前記フィルタ枠を保持し回転することで前記フィルタ枠をループ方向に搬送する第1の搬送軸と、
前記第1の搬送軸とともに前記フィルタ枠を保持する第2の搬送軸と
前記第1の搬送軸とともに前記エアフィルタを挟むように配置された除塵ローラとを備え、
前記第1の搬送軸の円筒面は弾力性を有することを特徴とするフィルタ掃除機構。
【請求項2】
空気をろ過するエアフィルタと、
前記エアフィルタを保持しループ形状のフィルタ枠と、
前記フィルタ枠を保持し回転することで前記フィルタ枠をループ方向に搬送する第1の搬送軸と、
前記第1の搬送軸とともに前記フィルタ枠を保持する第2の搬送軸と
前記第1の搬送軸とともに前記エアフィルタを挟むように配置された除塵ローラとを備え、
前記第1の搬送軸は軸部と筒部とを有し前記筒部は前記軸部に対して半径方向に移動することを特徴とするフィルタ掃除機構。
【請求項3】
第1の搬送軸は、軸部と筒部との間に弾性体を有することで筒部が半径方向に移動することを特徴とする請求項2に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項4】
弾性体は板バネであることを特徴とする請求項3に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項5】
第1の搬送軸と除塵ローラとはギアで連結され一方を駆動することで他方が従動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項6】
フィルタ枠の搬送速度が除塵ローラの外周面の速度より大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項7】
除塵ローラの円筒面は略円周方向に傾斜したブラシ毛を有するブラシでありエアフィルタに対する前記ブラシ毛の移動方向が前記ブラシ毛の逆目方向であることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項8】
ブラシ毛の移動方向は前記ブラシ毛に付着した塵埃を除去する塵埃除去部に対して前記ブラシ毛の準目方向であることを特徴とする請求項7に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項9】
塵埃除去部は先端がブラシ毛に接触する板材であることを特徴とする請求項8に記載のフィルタ掃除機構。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のフィルタ掃除機構を有するフィルタユニット。
【請求項11】
請求項10に記載のフィルタユニットを備える光学ユニット。
【請求項12】
請求項10に記載のフィルタユニットまたは請求項11に記載の光学ユニットを備える投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−245461(P2011−245461A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124347(P2010−124347)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】