説明

フィルタ移動機構及び空調室内機

【課題】フィルタを移動して清掃する空調室内機において、フィルタを駆動するためのフィルタ移動機構を小型化することにある。
【解決手段】自動清掃のためにエアフィルタ16を移動させるフィルタ移動機構50は、駆動ローラ54とアシストローラ70とを備えている。アシストローラ70は、エアフィルタ16を挟んで駆動ローラ54に対向するように配置され、エアフィルタ16を駆動ローラ54に押し付ける。駆動ローラ54は、アシストローラ70との間にエアフィルタ16を挟んだ状態で回転することにより、スリップしないようにエアフィルタ16を移動させる。支持枠51には、エアフィルタ16を引っ張り又は押すことによりエアフィルタ16のテンションを強める部材が設けられていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタを移動するフィルタ移動機構及びフィルタ移動機構を備える空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアフィルタ清掃装置付きの空調室内機が広く普及している。例えば、特許文献1(実開昭62−160221号のマイクロフィルム)に開示されているエアフィルタ清掃装置では、室内熱交換器の風上側に配置されたエアフィルタが環形状に成形されている。そして、エアフィルタの清掃時には、回転する駆動ローラからエアフィルタが摩擦により力を受けてエアフィルタが周回し、ブラシのような掻き取り部材がそのエアフィルタに接触して塵埃を掻き落している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の空調室内機では、エアフィルタ清掃装置を大型化しないために、ループ状のエアフィルタを、駆動ローラに平行に設けられた円筒形の従動ローラと駆動ローラとを使ってこれらの周りを周回させるように移動している。これら駆動ローラや従動ローラでエアフィルタがスリップしないようにするために、駆動ローラと従動ローラとの間に張られるエアフィルタに比較的高いテンションを掛けておく必要が生じる。このように高いテンションを掛けながら駆動ローラでエアフィルタを駆動することから、駆動ローラを駆動するために比較的高いトルクが必要になり、駆動ローラを駆動するモータの小型化が難しくなる。
【0004】
本発明の課題は、フィルタを移動して清掃する空調室内機において、フィルタを駆動するためのフィルタ移動機構を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係るフィルタ移動機構は、空調室内機において自動清掃のためにフィルタを移動させる。フィルタ移動機構は、駆動ローラとアシストローラと支持枠とを備えている。駆動ローラは、フィルタに接触してフィルタを移動させるための力をフィルタに作用させる。アシストローラは、フィルタを挟んで駆動ローラに対向するように配置され、駆動ローラとともにフィルタを挟み込むことによってフィルタを駆動ローラに押し付ける。支持枠は、駆動ローラを着脱できるように支持するためのものであり、フィルタを引っ張り又は押すことによりフィルタのテンションを強める部材が設けられていない。
【0006】
第1観点に係るフィルタ移動機構によれば、駆動ローラとアシストローラでフィルタを挟んで移動させることにより、フィルタに高いテンションを発生させて駆動ローラにフィルタが強く接触するようにしなくてもフィルタと駆動ローラのスリップを防ぐことができる。
【0007】
本発明の第2観点に係るフィルタ移動機構は、第1観点に係るフィルタ移動機構において、アシストローラは、フィルタの移動に従って回転するよう構成されている。
【0008】
第2観点に係るフィルタ移動機構によれば、アシストローラをフィルタの移動に従って回転するようにしたので、駆動ローラやアシストローラの回転ムラなどによってアシストローラから駆動ローラに対して応力が生じるようなことがなくなる。そのため、駆動ローラの駆動力に余計なゆとりを持たせて駆動ローラを大きな力で回転させるように設定しなくても済む。
【0009】
本発明の第3観点に係るフィルタ移動機構は、第1観点又は第2観点のフィルタ移動機構において、アシストローラに嵌合する軸受け部と支持枠に取り付けるための嵌合部と軸受け部と嵌合部とを連結する連結部とを有する支持部材をさらに備え、連結部は、アシストローラと支持枠との間に設けられる弾性部材で形成され、弾性部材は、アシストローラと駆動ローラとの間にフィルタが挟まれた状態で弾性変形してアシストローラを駆動ローラの方に押す。
【0010】
第3観点に係るフィルタ移動機構によれば、駆動ローラを支持枠に取り付ける際に、弾性部材を弾性変形させてアシストローラを駆動ローラ側に押し付けることができるので、簡単な構成でアシストローラが駆動ローラ側にフィルタを押し付ける力を発生させることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係るフィルタ移動機構は、第1観点から第3観点のいずれかに係るフィルタ移動機構において、フィルタは、塵埃が取り除かれる空気の通過する網目を有し、駆動ローラは、少なくともアシストローラに対向する領域に、フィルタの網目に入り込む毛材を有する。
【0012】
第4観点に係るフィルタ移動機構によれば、フィルタの網目と駆動ローラの毛材との間の作用によって、駆動ローラとアシストローラとでフィルタを挟んでフィルタを駆動する際のフィルタのスリップを防止し、フィルタを滑らかに移動させることができる。
【0013】
本発明の第5観点に係るフィルタ移動機構は、第1観点から第4観点のいずれかに係るフィルタ移動機構において、支持枠は、フィルタを弛まないように支える支え部材を有する。
【0014】
第5観点に係るフィルタ移動機構によれば、フィルタの下方の部分も、例えばガイド部材などの湾曲に沿って湾曲した形で周回動作を行うことができる。
【0015】
本発明の第6観点に係るフィルタ移動機構は、第1観点から第5観点のいずれかに係るフィルタ移動機構において、アシストローラは、少なくとも2つ設けられ、移動方向に沿うフィルタの2つの辺の近傍にそれぞれ配置されている。
【0016】
第6観点に係るフィルタ移動機構によれば、フィルタの2つの辺の近傍は、フィルタを通過する室内空気の通風抵抗を増加させ難くい場所であるから、フィルタの2つの辺の近傍にのみアシストローラを配置することで通風抵抗の増加を抑え易くなる。
【0017】
本発明の第7観点に係るフィルタ移動機構は、第1観点から第6観点のいずれかに係るフィルタ移動機構において、駆動ローラとフィルタとの位置決めを行なうとともにフィルタを案内するガイド部材と、駆動ローラとフィルタとがガイド部材によって位置決めされた状態で、ガイド部材を支持枠に固定する固定具とをさらに備える。そして、弾性部材は、固定具がガイド部材を支持枠に固定することによって弾性変形する。
【0018】
第7観点に係るフィルタ移動機構によれば、駆動ローラとフィルタをガイド部材で位置決めしてから、固定具で支持枠に固定することでアシストローラを駆動ローラ側へ押し付ける力を発生させることができる。
【0019】
本発明の第8観点に係る空調室内機は、第1観点から第7観点のいずれかに係るフィルタ移動機構を備える。
【0020】
第8観点に係る空調室内機によれば、フィルタ移動機構の駆動ローラとアシストローラとでフィルタを挟んで移動させることにより、フィルタに高いテンションを発生させてフィルタを駆動ローラに強く接触させなくてもフィルタと駆動ローラのスリップを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1観点あるいは第5観点に係るフィルタ移動機構又は第8観点に係る空調室内機では、駆動ローラを駆動するための力を小さくでき、フィルタ移動機構が小型化できる。
【0022】
また、駆動ローラやフィルタの着脱が容易になり、メンテナンスが容易になる。
【0023】
本発明の第2観点に係るフィルタ移動機構では、駆動ローラがアシストローラから応力を殆ど受けないため、フィルタ移動機構をさらに小型化し易くなる。
【0024】
本発明の第3観点に係るフィルタ移動機構では、フィルタ移動機構の構造が簡素化され、より小型化し易くなる。
【0025】
本発明の第4観点に係るフィルタ移動機構では、駆動ローラとアシストローラとでフィルタを挟んでフィルタを駆動する形態において、フィルタの移動を滑らかにかつ確実に行わせることができ、フィルタのスリップなどで塵埃除去に不具合が生じるのを防止することができる。
【0026】
本発明の第6観点に係るフィルタ移動機構では、通風抵抗の増加を抑えることができ、アシストローラを設けることによる性能低下を抑制することができる。
【0027】
本発明の第7観点に係るフィルタ移動機構では、駆動ローラとフィルタの支持枠への脱着が容易になり、メンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態に係る空調室内機の断面図。
【図2】エアフィルタの外観を示す斜視図。
【図3】図2に示すエアフィルタの平面図。
【図4】一実施形態に係るフィルタ清掃装置の分解図。
【図5】一実施形態に係るフィルタ組立体の分解図。
【図6】図5のフィルタ組立体の平面図。
【図7】アンダーカバーの平面図。
【図8】アンダーカバーの正面図。
【図9】アンダーカバーの底面図。
【図10】アンダーカバーの背面図。
【図11】図8のI−I線断面図。
【図12】支持枠の背面図。
【図13】アシストローラの拡大斜視図。
【図14】アシストローラの拡大正面図。
【図15】アシストローラの支持部材の拡大斜視図。
【図16】図15の支持部材の拡大側面図。
【図17】フィルタ組立体が装着された支持枠を示す正面図。
【図18】図17のII−II線断面図。
【図19】固定具の正面図。
【図20】フィルタ組立体の部分拡大斜視図。
【図21】支持枠の部分拡大斜視図。
【図22】図17のIII−III線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0030】
(1)空調室内機
空調室内機の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタ移動機構を備える空調室内機の断面図である。図1において、空調室内機10は、主に、上面、前面及び下面を覆う本体ケーシング11と背面を覆う背面板12とで外殻が構成されている。本体ケーシング11の上面には、グリル13が形成されており、本体ケーシング11の前面には前面パネル14が取り付けられている。そして、本体ケーシング11及び背面板12は、本体フレーム15に取り付けられる。
【0031】
グリル13の下方の本体内に、エアフィルタ16が配置される。グリル13から吸い込まれた室内空気は、エアフィルタ16を通過することにより、塵埃が除去される。
【0032】
エアフィルタ16の下流には、室内熱交換器17が配置されている。この室内熱交換器17は本体フレーム15に取り付けられている。グリル13から取り込まれてエアフィルタ16を通過した室内空気は、室内熱交換器17を通過するときに温度や湿度が調整される。この空調室内機10では、室内熱交換器17を通過した室内空気が調和空気になる。
【0033】
室内熱交換器17の下方には、クロスフローファン18が配置されている。クロスフローファン18は本体フレーム15に取り付けられている。このクロスフローファン18が、本体フレーム15のスクロール構造と協働して、室内熱交換器17から下方の吹出通路19へ向かう気流を発生する。
【0034】
吹出通路19の内部には垂直フラップ20が設けられており、吹出通路19の出口である吹出口19aには水平フラップ21が設けられている。クロスフローファン18によって吹出通路19に導かれた調和空気は、垂直フラップ20と水平フラップ21によって吹出される風向が調節される。
【0035】
(1−1)エアフィルタ
エアフィルタ16の構成を図2及び図3に示す。エアフィルタ16は、数十デニールのポリエチレンテレフタレート製の縦糸と横糸からなる、数十メッシュの1枚の網で作られている。この網は、両端部を互いに5〜10mm程度重ねて超音波溶着されてなる筒状の部材である。そのため、溶着されてできた高剛性部16aは、他の部分よりも剛性が高くなっている。この筒状のエアフィルタ16の2つの辺16b,16cの近傍(幅5〜10mm程度)は、糸が解れないように熱処理されている。
【0036】
(2)フィルタ清掃装置
エアフィルタ16は、図1に示すように、側面から見て環形状になるように取り付けられており、清掃時にはエンドレスのループの上を移動する。このように、エアフィルタ16を移動させながら自動的に清掃するために、空調室内機10は、フィルタ清掃装置30を備えている。このフィルタ清掃装置30は、主に、塵埃除去機構40とフィルタ移動機構50とからなる。
【0037】
(2−1)塵埃除去機構
図1に示すように、塵埃除去機構40は、ブラシ41と、ダストボックス42と、櫛部44と、圧縮ローラ43と、後述するブラシ駆動モータとを備えている。ブラシ41には、多数の比較的長い毛材が植毛されている。ブラシ41は、ブラシ駆動モータで回転駆動され、毛材がエアフィルタ16を擦ることによってエアフィルタ16から塵埃を掻き落とす。
【0038】
ブラシ41で掻き落とされた塵埃は、ダストボックス42に溜められる。ブラシ41の毛材中に入り込んだ塵埃はブラシ41から離れ難いため、櫛部44で塵埃が梳き落とされる。このとき、ダストボックス42に多くの塵埃を溜められるように、圧縮ローラ43が回転して塵埃を圧縮する。
【0039】
(2−2)フィルタ移動機構
フィルタ移動機構50は、図4に示すように、主に、支持枠51と、フィルタ組立体52のエアフィルタ16を除く部分とで構成される。1つの支持枠51に、2つのフィルタ組立体52が取り付けられる。
【0040】
(a)ガイドフレーム
フィルタ組立体52の分解図を図5に示す。ガイドフレーム53は、2本の幅広の桁531の間に複数の横棒532が渡されている。これら桁531は、側面視において湾曲した形状を呈している。そして、横棒532に垂直に複数の縦棒533が取り付けられ、複数の横棒532と複数の縦棒533とによって格子が組まれている。それにより、室内空気の通風抵抗の小さく抑えながらガイドフレーム53の形状を保てるようになっている。また、縦棒533と桁531との間を結ぶ横棒534のようなものも設けられている。
【0041】
ガイドフレーム53の2本の桁531が側面視において湾曲しているのは、図1に示すように、エアフィルタ16及びフィルタ移動機構50が、空調室内機10の前面パネル14の背面側から上方のグリル13の下方にかけて配置されているためである。このように湾曲することで、エアフィルタ16の面積が大きくなる。エアフィルタ16を通過する風量が同じであれば、面積が大きくなった分だけ、エアフィルタ16を通過する室内空気の風速が小さくなるので、塵埃の除去や通風抵抗を低減できる点で有利である。しかし、この湾曲した桁531に沿うようにエアフィルタ16を移動させるようにしないと、空調室内機10の小型化にとっては不利になる。そのため、エアフィルタ16が桁531に沿って湾曲しながら移動するように、エアフィルタ16の下から支持枠51がエアフィルタ16を支えている。
【0042】
(b)駆動ローラとエンドローラ
ガイドフレーム53の2本の桁531の前面側の端部には、駆動ローラ54を取り付けるためのリング状の支持部535が設けられている。駆動ローラ54は、その芯になる部分が平行な複数のリブからなる形状を有するが、断面の表面形状が略円形になるように構成されている。そのような断面略円形の表面形状とするために、駆動ローラ54の表面には短い毛材が立毛されたフィルムが螺旋状に巻回されている。この毛材としては、例えば短繊維(パイル)などがある。駆動ローラ54は、この支持部535に支持された状態で回転することができる。駆動ローラ54には、被駆動ギア55が嵌め込まれる。この被駆動ギア55は、後述するローラ駆動モータの回転を駆動ローラ54に伝える。
【0043】
2本の桁531の背面側の端部には、エンドローラ56を取り付けるための開孔部536が形成されている。エンドローラ56は、断面形状が略十字形の基部561と、断面形状が円形の端部562とからなっている。このエンドローラ56の端部562が開孔部536に嵌め込まれる。そのため、エンドローラ56は、2本の桁531で支持された状態で、回転することができる。
【0044】
筒状に形成されたエアフィルタ16は、駆動ローラ54とエンドローラ56との間に掛け渡される。2本の桁531には、この掛け渡されたエアフィルタ16を案内するための多数の突部537が設けられている。突部537は、平面視において、前面側から背面側に向けて一直線に並んでいる。エアフィルタ16の移動方向Dr1に沿う2つの辺16b,16cが、これら複数の突部537の並ぶ方向に沿って案内される(図6参照)。そして、エアフィルタ16の2つの辺16b,16cの近傍は、2本の桁531の上を移動する。
【0045】
(c)取っ手部材
図5及び図6に示すように、ガイドフレーム53の2本の桁531には、2個の取っ手部材57がそれぞれ固定される。この取っ手部材57は、フィルタ組立体52を支持枠51に取り付けるときに掴む場所を設けるためのものである。これら取っ手部材57を掴んだときにフィルタ組立体52が歪むのを防止するため、2個の取っ手部材57を補強棒58により繋げて取っ手部材57周辺の強度が高められている。
【0046】
(d)支持枠
図4に示す支持枠51は、図1に示す本体フレーム15に取り付けられている。そのために支持枠51には、本体フレーム15に留めるための爪部519などが設けられている。この支持枠51には、向かって右側から、右側部材511、中央部材512及び左側部材513が並行に配置されている。右側部材511と中央部材512との間がそれぞれビーム(梁)515と複数の横棒516で接続され、同様に中央部材512と左側部材513との間がビーム515と横棒516とで接続されている。複数の横棒516に垂直に交わるように、縦棒と板とからなる複数の補強部材517が設けられている。
【0047】
これら支持枠51の横棒516や補強部材517の上をエアフィルタ16が通過するようにフィルタ組立体52が支持枠51に取り付けられる。それにより、横棒516や補強部材517に支えられて、エアフィルタ16の下方側がガイドフレーム53に沿うように、エアフィルタ16は周回移動することができる。
【0048】
フィルタ組立体52を支持枠51に取り付けるために、支持枠51の右側部材511、中央部材512及び左側部材513の上部には、ガイドレール518が設けられている。このガイドレール518には、ガイドフレーム53の2本の桁531の側端部531aをスライドさせながら嵌め込むことができる。ガイドレール518も湾曲しているため、ガイドフレーム53の桁531はガイドレール518に嵌め込む際に屈曲できるような柔らかい樹脂で形成されている。
【0049】
支持枠51には、2本の駆動ローラ54を駆動するため、ローラ駆動モータ59が2個取り付けられている。これらローラ駆動モータ59によって、図には現れていない駆動ギアが駆動される。なお、図4に示すように、向かって左側に取り付けられる駆動ギアを駆動するためローラ駆動モータ59の一つから駆動軸59aが延びている。駆動ギアは被駆動ギア55と噛み合わされており、駆動ローラ54にローラ駆動モータ59のトルクを伝達することができる。また、支持枠51にはブラシ駆動モータ47が1個取り付けられている。
【0050】
(e)アンダーカバー
図4に示すように、支持枠51の下部には。駆動ローラ54に沿ってU字型に折り返されるエアフィルタ16の下方をカバーするアンダーカバー60が取り付けられている。図7は、アンダーカバー60の平面図であり、図8はアンダーカバー60の正面図であり、図9はアンダーカバーの底面図であり、図10はアンダーカバー60の背面図であり、図11は図8のI−I線断面である。
【0051】
アンダーカバー60は、背面側に支持枠51にネジ止めするためのネジ穴62a,62bが中央と両側に設けられている。図12は、支持枠51を背面側から見た図であり、支持枠51にアンダーカバー60がネジ64によって固定された状態を示している。
【0052】
アンダーカバー60は、水平方向に延びるカバー部61と垂直方向に延びる壁面部62とからなる。カバー部61は、駆動ローラ54の形状に沿う断面円弧状の窪みがあり、その窪みに6つの開口部63が形成されている。アンダーカバー60の下方に、図1に示したブラシ41が配置されており、これら開口部63を通してブラシ41の毛材がエアフィルタ16に接触する。
【0053】
アンダーカバー60には、後述するアシストローラが取り付けられる。アシストローラは、図11に示す突出部65と2つの開口部66a,66bを使って取り付けられる。突出部65は、図7及び図9に示すように、左右方向に4箇所設けられており、4個のアシストローラが取り付けられる。
【0054】
また、アンダーカバー60には、ダストボックス42の一部を構成するブラシカバー45(図1参照)が取り付けられる。ブラシカバー45は、背面側にフックが一体的に形成されており、このフックをアンダーカバー60の開口部67に引っ掛けることによって固定される。
【0055】
(f)アシストローラ
図13はアシストローラ70の拡大斜視図であり、図14はアシストローラ70の拡大平面図である。アシストローラ70は、十字形のハブを内部に有する円筒形の2つのローラ部71,72とこれらを繋ぐ回転軸73とからなる。
【0056】
アシストローラ70は、図15に示す支持部材75によって、アンダーカバー60の突出部65及び開口部66a,66bに固定される。支持部材75は、アシストローラ70の回転軸73に嵌合する軸受け部76と、突出部65及び開口部66a、66bと嵌合する嵌合部77と、軸受け部76と嵌合部77とを連結する連結部78とからなる。嵌合部77は、アンダーカバー60の開口部66aに挿入される突出部77aと、開口部66bに挿入される突出部77bと、アンダーカバー60の突出部65が嵌まる凹部77cとを有する。支持部材75がアンダーカバー60に嵌合した後に抜けないように、突出部77bには、突起77dが設けられている(図16参照)。
【0057】
図17は、支持枠51にフィルタ組立体52が取り付けられた状態を示す正面図であり、図18は、図17におけるII−II線断面図である。なお、図18には図17に二点鎖線で示した固定具80及び非固定状態のフィルタ組立体52の記載は省かれている。図18に示すように、支持枠51にフィルタ組立体52が取り付けられた状態で、アシストローラ70が駆動ローラ54の方にエアフィルタ16を押すように構成されている。それにより、エアフィルタ16は、アシストローラ70と駆動ローラ54によって挟まれるため、エアフィルタ16と駆動ローラ54との間でスリップが起こるなどして、エアフィルタ16の移動に不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0058】
アシストローラ70が適切な力で駆動ローラ54の方にエアフィルタ16を押すように、連結部78は、弾性変形を起し易いように薄く、かつ側面視における断面形状が円弧になるように成形されている。連結部78は、撓み易く、かつ変形を繰り返しても破損し難いように、ポリプロピレンでつくられている。
【0059】
軸受け部76は、切れ目が下方を向いているような略C字型の断面形状に成形されており、アシストローラ70の回転軸73が無理嵌めされる。この軸受け部76の内径がアシストローラ70の回転軸73よりも0.2mm程度大きくなっており、アシストローラ70は、回転軸73が軸受け部76に嵌まった後には、回転軸がぶれることなく極めて僅かな力で回転することができる。
【0060】
(g)固定具
上述のように、アシストローラ70は、支持部材75の連結部78の弾性変形によって、駆動ローラ54を押す。そのため、駆動ローラ54がアシストローラ70によって押されてもフィルタ組立体52の位置が変わらないように、アシストローラ70の連結部78を弾性変形させた状態でフィルタ組立体52を固定する固定具80が支持枠51に取り付けられている(図17及び図18参照)。図19は、固定具80の正面図である。固定具80は、一つの軸を中心に回転移動するように構成されており、この軸上に設けられている2つの嵌合部81,82が支持枠51に嵌め込まれる。固定具80が回転移動できるようにするため、これら2つの嵌合部81,82は円形又は円弧が組み合わさった形状の断面に形成されている。
【0061】
図20は、フィルタ組立体の部分拡大斜視図である。図20に示すように、フィルタ組立体52のガイドフレーム53の桁531の側面には、被固定部531bが形成されている。図21は、支持枠の部分拡大斜視図である。図21に示す状態は、フィルタ組立体52が取り付けられる前の状態であり、固定具80が前面側に回転しきっており、それ以上は前面側へ回転しない状態である。図21に示すように、固定具80には固定部83が形成されている。
【0062】
フィルタ組立体52が固定具80に押されて、フィルタ組立体52が支持枠51に装着される様子を図18及び図22を用いて説明する。図22は、図17のIV‐IV線断面の図であるが、実線で示されている固定状態の固定具80及びそれに対応するフィルタ組立体52の記載を省略し、代わりに二点鎖線で示されている非固定状態の固定具80及びそれに対応するフィルタ組立体52が記載されている。
【0063】
従って、図22に、固定前のフィルタ組立体52が示されており、固定後のフィルタ組立体52が図18に示されている。同様に、固定前の固定具80が図22に示され、固定後の固定具80が図18に示されている。
【0064】
支持枠51のガイドレール518にフィルタ組立体52の側端部531aを挿入した状態で、図22に示すように、固定具80を持ち上げて背面側の方(矢印の方向Dr2)に向かって回転させる。固定具80が回転すると、固定具80の固定部83に被固定部531bが押されてフィルタ組立体52の全体が背面側に向かって押し込まれる。フィルタ組立体52は、ガイドフレーム53の側端部531aがガイドレール518をスライドして、ガイドフレーム53がわずかに変形しながら押し込まれる。そして、フィルタ組立体52が支持枠51に固定された後は、前面側に向かっての動きが固定具80によって規制され、これらガイドレール518と固定具80によってフィルタ組立体52が支持枠51に固定される。
【0065】
(3)フィルタ清掃運転
空調室内機10は、フィルタ清掃装置30を制御する制御部を内蔵しており、制御部の制御の下で自動制御を行う。制御部は、空調室内機10の運転時間をカウントしている。前回フィルタ清掃装置30が行ったフィルタ清掃運転の後、累積運転時間が予め設定されている時間(例えば18時間)に達すると新たにフィルタ清掃運転を行う。
【0066】
フィルタ清掃運転では、図18に示す方向で見て、駆動ローラ54を反時計回りに回転させる。エアフィルタ16は、短毛のある駆動ローラ54とアシストローラ70で挟まれ、この駆動ローラ54の回転によって、駆動ローラ54とエンドローラ56とで折り返されて反時計回りに周回移動を行なう。このとき、エアフィルタ16は、ガイドフレーム53よりも上を前面側に向かって移動するときには、ガイドフレーム53の桁531、横棒532及び縦棒533などによって支えられながら移動する。このフィルタ移動機構50には、従来のようにエアフィルタ16を強く引っ張り、或いは押すことによりテンションをエアフィルタ16のテンションを強める部材が設けられていない。そのため、支えが無ければ、ガイドフレーム53の下を背面側に向かって移動するときにエアフィルタ16が弛んでしまう。エアフィルタ16に強いテンションを発生させないが、弛まない程度に、支持枠51の補強部材517や横棒516によってエアフィルタ16が支えられる。それにより、エアフィルタ16の下方の部分も、ガイドフレーム53の桁531の湾曲に沿って湾曲した形で周回動作を行うことができる。エアフィルタ16は、比較的ゆっくり回転され、例えば3分程度で1周回る。
【0067】
このようにエアフィルタ16が移動しているときに、ブラシ41は、図5に示すブラシ駆動モータ47によって反時計回りに回転させられる。そのため、ブラシ41の毛材がエアフィルタ16の移動方向とは反対に動いて、エアフィルタ16の網目からブラシ41の毛材が塵埃を掻き出す。ブラシ41によって掻き出された塵埃は、既に説明したように、図1に示した櫛部44と圧縮ローラ43とによってダストボックス42に溜められる。
【0068】
(4)特徴
(4−1)
空調室内機10のエアフィルタ16の自動清掃の際に、フィルタ移動機構50の駆動ローラ54にアシストローラ70がエアフィルタ16を押し付けて、駆動ローラ54の回転によってエアフィルタ16を駆動する。駆動ローラ54にアシストローラ70がエアフィルタ16を押し付けても、エアフィルタ16がアシストローラ70によってテンションを高めるように作用しないので、従来のように棒状の部材でエアフィルタ16を押したり、或いは引いたりして、エアフィルタ16のテンションが高くなることはない。そのため、エアフィルタ16のテンションを低く抑えられることによって、エアフィルタ16を周回させるために必要なトルクを小さくでき、ローラ駆動モータ59の小型化が行なえる。
【0069】
(4−2)
このアシストローラ70は、支持部材75の軸受け部76に回転できるように嵌合されているだけであるため、駆動ローラ54の回転に従って回転する。そのため、駆動ローラ54の周面の速度とアシストローラ70のローラ部71,72の周面の速度が一致するから、周面の速度のバラツキによってアシストローラ70から受ける力を見込んで高い駆動力を駆動ローラ54に与えなくてもよく、ローラ駆動モータ59のトルクを低く抑えることができる。
【0070】
(4−3)
アシストローラ70の配置される位置は、エアフィルタ16の2つの辺16b,16cの近傍である。図1に示すように、室内熱交換器17は、逆V字型に配置されており、空調室内機10の底部の近傍まで延びている。そのため、エアフィルタ16を通過する室内空気の流れの一部が、空調室内機10の前面に近いところでは、上方から下方に向かう。そのため、アシストローラ70の周囲でも室内空気が下方に向かうが、アシストローラ70がエアフィルタ16の2つの辺16b,16cの近傍に配置されることで、この室内空気の流れの妨げになるのを防いでいる。それにより、アシストローラ70のような部材をエアフィルタ16の周辺に配置するにもかかわらず、通風抵抗の増加を抑えることができる。勿論、アシストローラ70を駆動ローラ54のように長くしないことによっても、通風抵抗の増加が抑えられている。
【0071】
(4−4)
駆動ローラ54は、フィルタ組立体52の中に組み込まれ、フィルタ組立体52として支持枠51に対して着脱される。そして、フィルタ組立体52が支持枠51に装着された状態においては、駆動ローラ54は、フィルタ組立体52ごと支持枠51によって支持される。アシストローラ70は、この駆動ローラ54が着脱される支持枠51の方に取り付けられている。そのため、駆動ローラ54をエアフィルタ16と一緒に装着すると、駆動ローラ54とアシストローラ70との間にエアフィルタ16が挟まれる状態にすることができ、駆動ローラ54やエアフィルタ16の装脱が容易になる。
【0072】
(4−5)
フィルタ組立体52に組み込まれた駆動ローラ54を支持枠51に装着すると、アシストローラ70を支持している支持部材75の連結部78(弾性部材)が弾性変形を起し、その弾性変形によって発生する力でアシストローラ70が駆動ローラ54の方に押し付けられる。支持部材75のような簡単な構成でアシストローラ70を押し付けるための力を発生でき、フィルタ移動機構50の構成が簡素化される。
【0073】
(4−6)
アシストローラ70の連結部78の弾性力に抗して駆動ローラ54を装着するには困難を伴う。そこで、固定具80で、駆動ローラ54が組み込まれて駆動ローラ54とエアフィルタ16との位置決めをガイドフレーム53(ガイド部材)で行なったもの即ちフィルタ組立体52を押し込んで固定することで、簡単に適切な弾性変形を連結部78に起こさせることができる。それにより、装着が簡単になり、メンテナンスを行ない易くなる。
【0074】
(4−7)
駆動ローラ54の毛材とエアフィルタ16の網目とが互いに作用する部分をアシストローラ70で押している。そのため、駆動ローラ54とエアフィルタ16とが滑ることがなくなるため、清掃中におけるエアフィルタ16の移動を滑らかに行わせることができる。
【0075】
(5)変形例
(5−1)変形例1A
上記実施形態では、1つのエアフィルタ16の2つの辺16b,16cの近傍に、アシストローラ70を2つに分割して配置している。しかし、アシストローラ70の個数は2つに限定されるものではなく、3つ以上に分けてもよく、或いは1つのエアフィルタ16全体を押すような1本のローラで構成することもできる。
【0076】
(5−2)変形例1B
上記実施形態では、空調室内機10にエアフィルタ16と駆動ローラ54とを着脱するときに、フィルタ組立体52を支持枠51に対して着脱する態様で行なっている。しかし、エアフィルタ16や駆動ローラ54を組み立ててフィルタ組立体52という状態にして着脱しなければならないものではなく、エアフィルタ16や駆動ローラ54を個別に空調室内機10に対して着脱するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10 空調室内機
50 フィルタ移動機構
51 支持枠
52 フィルタ組立体
54 駆動ローラ
70 アシストローラ
75 支持部材
78 連結部材
80 固定具
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】実開昭62−160221号のマイクロフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室内機(10)において自動清掃のためにフィルタ(16)を移動させるフィルタ移動機構(50)であって、
前記フィルタに接触して前記フィルタを移動させるための力を前記フィルタに作用させる駆動ローラ(54)と、
前記フィルタを挟んで前記駆動ローラに対向するように配置され、前記駆動ローラとともに前記フィルタを挟み込むことによって前記フィルタを前記駆動ローラに押し付けるアシストローラ(70)と、
前記駆動ローラを着脱できるように支持するための支持枠(51)と、
を備え、
前記支持枠は、前記フィルタを引っ張り又は押すことにより前記フィルタのテンションを強める部材が設けられていない、フィルタ移動機構。
【請求項2】
前記アシストローラは、前記フィルタの移動に従って回転するよう構成されている、
請求項1に記載のフィルタ移動機構。
【請求項3】
前記アシストローラに嵌合する軸受け部(76)と前記支持枠に取り付けるための嵌合部(77)と前記軸受け部と前記嵌合部とを連結する連結部(78)とを有する支持部材(75)をさらに備え、
前記連結部は、前記アシストローラと前記支持枠との間に設けられる弾性部材(78)で形成され、
前記弾性部材は、前記アシストローラと前記駆動ローラとの間に前記フィルタが挟まれた状態で弾性変形して前記アシストローラを前記駆動ローラの方に押す、
請求項1又は請求項2に記載のフィルタ移動機構。
【請求項4】
前記フィルタは、塵埃が取り除かれる空気の通過する網目を有し、
前記駆動ローラは、少なくとも前記アシストローラに対向する領域に、前記フィルタの前記網目に入り込む毛材を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタ移動機構。
【請求項5】
前記支持枠は、前記フィルタを弛まないように支える支え部材(516,517)を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルタ移動機構。
【請求項6】
前記アシストローラは、少なくとも2つ設けられ、移動方向に沿う前記フィルタの2つの辺(16b,16c)の近傍にそれぞれ配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルタ移動機構。
【請求項7】
前記駆動ローラと前記フィルタとの位置決めを行なうとともに前記フィルタを案内するガイド部材(53)と、
前記駆動ローラと前記フィルタとが前記ガイド部材によって位置決めされた状態で、前記ガイド部材を前記支持枠に固定する固定具(80)と、
をさらに備え、
前記弾性部材は、前記固定具が前記ガイド部材を前記支持枠に固定することによって弾性変形する、
請求項3に記載のフィルタ移動機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルタ移動機構を備える、
空調室内機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−247184(P2012−247184A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194104(P2012−194104)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2010−197460(P2010−197460)の分割
【原出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】