説明

フィルタ装置、特に還流吸引フィルタ、および、このフィルタ装置用のフィルタ部材

その中に長手軸(25)を定める少なくとも1つのフィルタ部材(3)を収容可能な、少なくとも1つのフィルタハウジング(7)と、特にバイパス弁(V2)と予圧弁(V1)の形式の、少なくとも2つの弁ユニットとを有する、フィルタ装置、特に還流−吸引フィルタは、弁ユニットが、それぞれのフィルタ部材(3)の長手軸(25)に対して同心の配置で、この長手軸(25)に沿って配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その中に長手軸を定める少なくとも1つのフィルタ部材を収容可能な、少なくとも1つのフィルタハウジングと、特にバイパス弁および予圧弁の形式の、少なくとも2つの弁ユニットとを有する、フィルタ装置、特に還流吸引フィルタに関する。さらに本発明は、この種のフィルタ装置用のフィルタ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
上で挙げた種類の還流吸引フィルタは、知られている。ARGO−HYTOS GmbH社から販売されているこの種の装置は、たとえば型番E084で市場で入手できる。還流フィルタは、油圧システム内で、システム内に開放した油圧循環(たとえば作業油圧装置)も閉鎖された静水圧システムも存在している場合に(たとえば走行駆動装置)、使用される。その場合に還流吸引フィルタは、開放した油圧システムの還流流が静水圧システム用の供給ポンプの体積流よりも小さくないことを前提として、開放した回路の還流フィルタの機能も、閉鎖された回路(駆動装置)の吸引フィルタの機能も引き受けることができる。
【0003】
この種の装置を駆動する場合に、たとえば作業油圧装置の、還流量がフィルタへ供給されて、フィルタ部材のフィルタ媒体によって浄化され、その場合に全流−微細濾過を行うことができる。油圧システムの供給ポンプへ提供される、濾過された液体内に、予圧弁を用いて予圧が維持され、その予圧が、静水圧装置の供給ポンプから必要な量の濾過された還流量を取り出すことができることを、保証する。余分な量は、予圧弁を介してタンク接続端へ達して、タンクへ放出される。たとえば汚れに基づいて、フィルタ部材の動圧が高い場合に、バイパス弁の応答によって圧力崩壊が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特にスペース状況が狭くて、わずかな組込み空間しか提供されない場合でも、該当する油圧システム内へ問題なく組み込むことを可能にする構造の、考察される種類のフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、特許請求項1の全体の特徴を有するフィルタ装置によって解決される。
【0006】
それによれば、本発明の本質的な特殊性は、すべてのメインコンポーネントが、フィルタ部材の長手軸に対して同心に配置されていることにある。それによって装置全体が、たとえば伸張された円筒形状の、細長い統一的な組立てボディを形成し、組立てボディの側方に張り出す、あるいは長手軸に対して変位された、たとえば円筒状のボディの側方に配置されたバイパス弁の形式の、アグリゲートが存在することはない。
【0007】
すなわち、好ましい実施例においては、追加吸引弁の形式の、第3の弁ユニットも、フィルタ部材の長手軸に対して同心の配置で設けられている。それによって、イン−ライン構造から離れることなしに、還流圧力がなくなった場合に、非常機能の形式で追加吸引弁を介してタンクから流体量が静水圧回路の供給ポンプの吸引側へ達することが保証されるので、たとえば接続されている走行駆動装置の停止は行われない。
【0008】
フィルタハウジングが、流体ガイドを備えた頭部側の蓋部分を有し、その流体ガイドが、挿入されたフィルタ部材の上方の終端領域および還流液のための少なくとも1つのフィルタ入口および浄化された液体のための少なくとも1つのフィルタ出口に隣接している、特に好ましい実施例において、バイパス弁は、蓋部分の領域内に、かつフィルタ入口に接する流体ガイドと流体接続して、配置されている。従って、バイパス弁のために設けられる、通常の位置配置に比較して、フィルタサンプから離れて頭部側へ、すなわちフィルタ入口の近傍領域へ、変位しているので、動圧が高い場合に、圧力崩壊が直接フィルタ入口で行われる。それによって、特に冷間始動相の間の、駆動安全性の向上が得られる。
【0009】
好ましくは、フィルタハウジングは、余分な還流量をタンクへ流出させるために、底側のタンク接続端を有しており、その場合に、フィルタ出口とタンク接続端との間の流体接続を遮断あるいは解放するために、予圧弁がフィルタハウジングの、タンク接続端に隣接する底領域内に配置されている。
【0010】
追加吸引弁が、予圧弁の下方において、タンク接続端により近く、フィルタハウジングの底領域内に配置されている実施例は、装置のタンク組込みに特に適している。というのは、追加吸引弁への別体の供給導管が必要とされないからである。
【0011】
装置は、好ましくは、濾過の際に外側から内側へ向かって貫流可能な、フィルタ部材のフィルタ媒体が、流体を通過させる同軸の支持パイプを包囲するように、形成することができ、その場合にこの支持パイプの内部かつそれから距離をもって、同心の内側パイプが配置されており、かつその場合にその外側にある、浄化された液体が、内側パイプの端部において、フィルタハウジングの底領域内にある、予圧弁と追加吸引弁の形式のユニットと流体接続されている。それによって、フィルタ部材の内部に、パイプ−イン−パイプ−システムが形成され、そのシステムにおいて、内側パイプ(その外側が濾過の際にクリーン側に隣接する)のパイプ外側が、底側の弁ユニットへの流体接続を形成する。このパイプ−イン−パイプ−構造は、駆動中に万一圧力変動が生じた場合でも、高い固有安定性を有する、装置の特にコンパクトな、細長い組立てボディをもたらす。
【0012】
この種の実施例において、好ましくは、フィルタハウジングの底領域は、挿入されたフィルタ部材の内側パイプを延長するパイプボディを有することができ、そのパイプボディ上で予圧弁と追加吸引弁の弁体が、互いに対して逆方向の、開放運動と閉鎖運動のために案内されている。従ってこれら弁ユニットは、フィルタ部材の下側に直接的な同軸の突出部を形成する。
【0013】
特に好ましい実施例において、バイパス弁は、フィルタ部材の頭部側の終端キャップ内に統合されており、その場合にその終端キャップ内に少なくとも1つのバイパス通路が形成されており、そのバイパス通路は、フィルタ部材が挿入された場合に、フィルタハウジングの蓋部分のフィルタ入口を、バイパス弁の入口側と接続する。
【0014】
好ましくは、バイパス弁として、ばねで付勢されたスライド弁が設けられており、そのスライダが、長手軸に対して同心の中空円筒状の弁ハウジング内で案内されており、かつ動圧によって開放する場合に、バイパス通路と弁ハウジングの内部との間に流体接続を形成する。
【0015】
特にコンパクトな構造は、フィルタ部材の内側パイプがバイパスパイプとして設けられている場合に得られ、そのバイパスパイプの内側が、バイパス弁の弁ハウジングの内部空間と底領域内に位置するタンク接続端との間の流体接続の少なくとも一部を形成する。その場合に、バイパス弁の弁ハウジングは、内側パイプのこちら側の端部に直接的な流体接続を形成することができるので、バイパス弁が開放された場合に、弁ハウジングから直接、バイパス通路として用いられる内側パイプを通してタンク接続端へ向かって圧力崩壊が行われる。
【0016】
本発明は、油圧回路を望みに応じて変化させる、特に好ましい可能性を提供する。開放したバイパスパイプを内側パイプとして使用する場合には、バイパス弁が応答した場合に圧力崩壊は内側パイプを介して直接タンクへと行われるが、回路を次のように、すなわちバイパス弁が開放した場合に、流出する液体がタンクへではなく、弁ハウジングから直接フィルタ部材のクリーン側へ、すなわち装置のフィルタ出口へ達するように、形成することもできる。この場合には、フィルタ部材の内側パイプは閉鎖されており、弁ハウジングは流出領域を有しており、その流出領域は、バイパス弁が開放された場合に、弁ハウジングの内部空間から蓋部分内のフィルタ出口への流体接続を形成する。
【0017】
その場合に、バイパス弁の流出領域は、弁ハウジング蓋内の開口部によって形成することができ、その弁ハウジング蓋は、頭部側の丸い栓として、バイパス弁の閉鎖ばねの支持部を形成する。弁ハウジング蓋内の開口部を介して流出する液体のために、弁ハウジング蓋内の開口部が、星形に分配された配置で、かつ台形の開口面をもって形成されている場合に、特に好ましい流れ状況が得られる。
【0018】
特に、内側パイプが閉鎖されており、かつバイパス弁が応答した場合に液体が直接フィルタ出口へ流れる場合において、好ましくは、蓋部分内の該当する流体ガイド内へ、バイパス保護スクリーンが統合されているので、クリーン側へ達する液体は、少なくとも大まかに汚れを除かれている。
【0019】
追加吸引弁が開放している場合でも、追加吸引された液体を介して汚れがクリーン側へ、そしてそれに伴って後段に接続されている静水圧の回路の供給ポンプの接続端へ達し得る危険を回避するために、好ましくは、追加吸引弁の追加吸引開口部とタンク接続端との間の流体路内へ挿入された、追加吸引スクリーン装置が設けられている。
【0020】
請求項1から19のいずれか1項に記載のフィルタ装置のためのフィルタ部材も、本発明の対象であって、その場合にフィルタ部材は、請求項20に記載された特徴を有している。
【0021】
以下、図面に示す実施例を用いて、本発明の詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づくフィルタ装置の第1の実施形態のコンポーネントの回路をシンボルで示している。
【図2】本発明に基づくフィルタ装置の第2の実施形態のコンポーネントの回路をシンボルで示している。
【図3】本発明に基づくフィルタ装置の第3の実施形態のコンポーネントの回路をシンボルで示している。
【図4】図1の回路に相当する実施形態におけるフィルタ装置の上方の蓋側の部分のみを、図1に対して付加的に設けられたバイパス保護スクリーンと共に破断して示す縦断面図である。
【図5】図4に示す装置の実施例の底側の下方部分のみを示す縦断面図である。
【図6】図4と同様の表示であるが、その場合に頭部側の部分は、図4に対して90度回動して示されている。
【図7】図3の回路に相当する実施形態において、フィルタ装置の実施例の縦断面を、図4から6に比べて小さい縮尺寸法で示している。
【図8】図1の回路に相当する実施形態において、本発明に基づくフィルタ装置の実施例のフィルタ部材のみを示す縦断面図である。
【図9】図7の実施例のバイパス弁の弁ハウジング蓋を斜視図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から3に示す回路例において、図示されない作業油圧装置の液体−還流量が供給される接続端が、符号Aで示されている。符号Bで示す接続端を介して、図示されない静水圧装置、たとえば静水圧走行駆動装置(図示せず)の供給ポンプに、充填量として必要とされる液体量が供給される。これは、フィルタ部材3のクリーン側1において、すなわち全流において濾過された、後段に接続された静水圧装置の供給ポンプによって必要とされる充填流を上回る還流流から、取り出される。フィルタ部材3のクリーン側1は、予圧弁V1を介してタンク接続端Tと接続されている。圧力操作によって開放可能な予圧弁V1は、開放圧力に調節されており、その開放圧力が、クリーン側1とそれに伴って接続端Bにおいて、後段に接続された静水圧装置の供給ポンプが必要とする量を接続端Bを介して取り出すことができるような圧力水準が維持されることを保証する。標準的に、予圧弁V1は、0.5バールの開放圧力に調節されている。
【0024】
予圧弁V1の後段に、同様に圧力操作によって開放可能な追加吸引弁V3が接続されており、それは、たとえば約0.05バールの、より小さい開放圧力に調節されており、かつ、クリーン側1において還流量の圧力が降下し、従って接続端Bの後段に接続されている吸引ポンプの駆動のために、非常機能としてタンクから追加吸引弁V3を介して液体の追加吸引が必要な場合に、開放する。フィルタ部材3に印加される動圧が、しきい値を上回った場合に(これは、たとえば接続端Aにおいて汚れ側と接続された汚れ表示器VAによって認識される)、圧力操作可能なバイパス弁V2が、特に図1に示す回路においてタンクへ向かって、接続端Aの圧力を崩壊させるために、開放する。通常、フィルタ部材3に生じる約2バールの動圧が、バイパス弁V2の開放圧力として設けられている。従って予圧弁V1が0.5バールの開放圧力に調節されている、図1の表示において、バイパス弁V2は、2.5バールの開放圧力に調節されていることになる。
【0025】
図2と3の変形例は、図1に対して、接続端Aからの圧力崩壊が、バイパス弁V2を介してタンクへ向かって行われるのではなく、フィルタ部材3のクリーン側1を介し、かつ予圧弁V1を介してタンク接続端Tへ向かって行われることによって、異なっており、その場合にバイパス弁V2は、標準的に2.0バールの開放圧力に調節することができる。
【0026】
図3に示す回路変形例は、バイパス保護スクリーン5(フィルタ部材の形式も)が、バイパス弁V2を貫流する液体の流路内に配置されているので、バイパス弁が開放されている場合でも、接続端Bが汚れから保護されていることを別にして、図2のそれに相当する。図示のように、開放されたバイパス弁V2が直接フィルタ部材3を迂回することができ、バイパス弁を介して流出する液体が保護スクリーンまたは保護フィルタを貫流する必要のない、図2の回路変形例は、たとえば冷間始動の間そうであるように、オイルが粘性の高いオイルである場合に、利点を有している。さらに詳しく後述するように、本発明は、簡単なやり方で、図1または図2と図3に示す駆動種類の間で回路を切り替えることを可能にする。
【0027】
図4と6はそれぞれ、バイパス保護スクリーン5またはバイパスフィルタ部材が設けられている実施形態において、装置のフィルタハウジング7の頭部側の終端領域を示している。これらの図において、フィルタハウジング7の頭部側の蓋部分が符号9で、蓋部分9と螺合される上方の終端部が符号11で示されている。終端部11を外した後に、全体として見て円筒形状のフィルタ部材3が、中空円筒状のメインボディ15内へ挿入可能であって、そのメインボディの底領域17(図5を参照)がフィルタ収容部19を形成し、その中にフィルタ部材3のリングボディ21がシールを形成しながら収容可能である。リングボディ21は、フィルタ部材13の底側の終端キャップ23の、フィルタ部材13の長手軸25に対して同軸の突出部を形成しており、その場合に終端キャップ23は、フィルタ部材3のフィルタ媒体27の下方の端部のためのフレームを形成している。リングボディ21は、終端キャップ23の開放区域29を包囲している。この区域29は、フィルタ部材3の、濾過の際にクリーン側を形成する内側のフィルタ中空室31と流体接続している。
【0028】
図4は、上方の装置領域を、図1から3の接続端Bに相当するフィルタ出口33が見える位置で示している。それに対して図6は、この装置部分を、フィルタ入口35が見える回動位置で示している。後者の図から同様に明らかなように、フィルタ部材3が挿入された場合に、フィルタ入口35は、流体ガイド51を介してフィルタ媒体27の、濾過の際に汚れ側を形成する外側37と流体接続されており、そのフィルタ媒体は、濾過の際に外側から、クリーン側を形成する内側のフィルタ中空室31へ向かって貫流される。フィルタ部材3の上方の頭部側の終端キャップ39は、フィルタ媒体27の上方の端部のためのフレームを形成するだけでなく、バイパス弁のための中空円筒状の弁ハウジング41と、長手軸25に対して同心の内側パイプ43のための軸受も形成し、その内側パイプは、クリーン側を形成するフィルタ中空室31を残しながら、支持パイプ45に対して距離をもって延びており、その支持パイプにフィルタ媒体27の外側が添接する。クリーン側を形成するフィルタ中空室31は、終端キャップ39内の通路(そのうちの1つが図4に見られ、符号47で示されている)を介して蓋部分9内の流体ガイド49と接続されており、その流体ガイドがフィルタ出口33へ、すなわち接続端Bへ通じている。フィルタ媒体27の、汚れ側を形成する外側37は、再び蓋部分9内で流体ガイド51と接続されており、その流体ガイドが蓋部分9内でフィルタ入口35と、すなわち接続端Aと接続されている。図6から明らかなように、流体ガイド51からバイパス通路53が弁ハウジング41の内部空間へ延びている。この弁ハウジング41内で、スライド弁として形成されたバイパス弁V2の弁スライダ55が摺動可能に案内されている。弁ハウジング41は、長手軸25に対して同心の中空円筒を形成し、その内壁に接して弁スライダ55が案内されており、その弁スライダは端部側の閉鎖エッジ57を有しており、その閉鎖エッジは、弁スライダ55が開放位置へ移動した場合に、バイパス通路53から弁ハウジング41の内部へ、そしてそれに伴って内側パイプ43内への流体路を解放する。図4と6に示すように、内側パイプ43が開放している、すなわち通り抜けできる実施例において、バイパス弁V2が開放されている場合に圧力崩壊は、流体が内側パイプ43を通ってタンク接続端Tへ流出することによって行うことができる。弁スライダ55は、圧縮ばね59によって閉鎖位置へ付勢されており、その圧縮ばねは弁スライダ55と、弁ハウジング41の端部側の終端を形成する蓋61との間に弾装されている。通り抜けできる内側パイプ43を有する実施例(図4から6と8)において、弁ハウジング蓋61は、閉鎖されたキャップの形式の丸い栓である。
【0029】
すでに述べたように、装置は、回路的に簡単なやり方で次のように、すなわちバイパス弁V2を介して流出する液体が、図1の回路においてそうであるように、直接タンクへ達するのではなく、図2と3の回路に従って、バイパス弁V2が開放されている場合に、流出する液体がフィルタ部材3のクリーン側1へ達し、そこから予圧弁V1を介してタンク接続端Tへ達することができるように、変更される。回路をこのように形成するために、すなわち装置を図7に示す状態へ移行させるために、2つの措置のみが、必要であって、すなわち、たとえば図7に符号63で示す横ウェブを用いて、内側パイプ43を閉鎖すること。第2に、閉鎖されたキャップの形式のハウジング蓋61の代わりに、図9に別に示すように、上側が開放したハウジング蓋65が利用される。このハウジング蓋は、図9にはっきりと示すように、星状に配置された、台形の開口面の流出開口部67を有しており、弁スライダ55がばね59の力に抗して開放運動を実施した場合に、その流出開口部を介して液体が弁ハウジング41から、比較的強い流れ抵抗を克服することなしに、流体ガイド49へ、そしてそれに伴ってフィルタ出口33へ流出することができ、開放運動の際に閉鎖エッジ57が開放間隙を形成するので、バイパス通路53から液体が弁ハウジング41内へ流入する。
【0030】
それによってバイパス弁V2が開放された場合に、フィルタ入口35とフィルタ出口33の間に形成される直接的な流れ接続は、特にバイパス通路53の前段にバイパス保護スクリーン5またはフィルタが接続されていない場合に、粘性の液体において、たとえば冷間始動相の間支配する、オイルの大きい粘性において、効果的である。他方で、バイパス保護スクリーンまたはフィルタを利用することによって、バイパス弁V2が開放された場合に汚れがフィルタ出口33へ達してしまう危険が、回避される。図4から7に示す実施例において、それぞれバイパス保護スクリーン5は、ベル形状の中間ボディ69内に、流体ガイド51とバイパス通路53の間に位置するように配置されている。ベル形状の中間ボディ69は、蓋部分9の内部で、流体ガイド49と51を互いに分離し、同時にフィルタ部材3の上方の終端キャップ39のシールを形成している。
【0031】
図5と7は、フィルタ収容部19に連続する下方の底領域17を示しており、その詳細が、図5からはっきりと見られる。図示のように、フィルタ部材3の内側パイプ43が、タンク接続Tへ向かって下方へ延長されている。フィルタ部材3の、クリーン側を形成するフィルタ中空室31は、フィルタ部材の終端キャップ23内の開放区画29を介してパイプボディ73と接続されている。このパイプボディは、ばねハウスを形成するために、長手軸に対して同心の中空円筒状のばねハウジング75によって包囲されている。このばねハウス内に、予圧弁V1のための閉鎖ばね77と追加吸引弁V3のためのばね79が配置されており、その場合に2つの圧縮ばねがパイプボディ73を包囲している。予圧弁V1は、軸方向に摺動可能な弁体81を有しており、その弁体がパイプボディ73の外側に接して、かつ中空円筒状の突出部83がばねハウジング75の内側に接して案内されている。ばねハウジングは、カップ底85と複数の追加吸引開口部87を有しており、そのカップ底を通してパイプボディ73が延びている。このカップ底85は、追加吸引弁V3の、リングプレートとして形成された弁体86のための弁座を形成している。
【0032】
予圧弁V1の弁体81は、挿入されたフィルタ部材3の終端キャップ23に設けられた、弁座としてのリングボディ21と協働し、その弁座に対して弁体81が閉鎖ばね77によって圧接される。弁体81が閉鎖ばね77の力に抗して持ち上がった場合に、液体が内部空間31から、すなわちフィルタ部材3のクリーン側から、終端キャップ23の開放した区画29を介してばねハウジング75の外側に沿って直接タンク接続端Tへ流れる。装置内にフィルタ部材3が挿入されていない場合には、弁体81が径方向外側に位置する弁皿端縁89において、弁皿端縁89がハウジングメイン部分15の部材収容部19に密着することによって、タンク接続側に対して装置のシールを形成する。
【0033】
ばねハウジング75の内部空間は、弁体81内に形成された流体通路91を介し、かつ終端キャップ23の開放区画29を介してフィルタ内部空間31と、すなわちクリーン側と、流体接続している。リングプレートとして形成された弁体86が、閉鎖ばね79の力に抗して追加吸引開口部87から持ち上がった場合に、このクリーン側へ向かって、タンク接続端Tの側から液体を追加吸引することができ、それによって弁体81の流体通路91を介して中空室31へ、そしてそれに伴ってクリーン側と接続端Bへ達する。
【0034】
図5から同様に明らかなように、ばねハウジング75の底85の下側に、スクリーンハウジング93が連続しており、その内部空間95が追加吸引開口部87に隣接している。内部空間95とその外側、すなわちタンク接続端Tとの間に追加吸引スクリーン97または追加吸引フィルタが設けられているので、追加吸引プロセスにおいて、タンク接続端Tから液体が直接、濾過されずに追加吸引されることはない。
【0035】
図5と7から明らかなように、ハウジングメインボディ15の底領域17に、延長パイプ99が連続しており、その延長パイプは、それぞれ組込み条件に応じて、たとえばタンクに組み込む場合に、所望の長さの埋没パイプとして形成することができる。
【0036】
図8には、フィルタ部材3が別に示されており、そのフィルタ部材は、通り抜けできる開放した内側パイプ43と、それに応じて閉鎖されたキャップの形状の弁ハウジング蓋61とを有している。図から明らかなように、上方の終端キャップ39は、内側パイプ43の端部内へ嵌め合いで突出するパイプスリーブ98を有しており、その開放端縁100が、弁スライダ55の閉鎖エッジ57と協働する。従って、閉鎖エッジ57が端縁100から持ち上がった場合に、バイパス通路53から弁ハウジング41の内部への、そして内側パイプ43の内部への流体路が解放され、それが、タンク側へのバイパスパイプとして機能する。
【0037】
本発明に基づく装置によって、新しい種類のパイプ−イン−パイプ−システムが形成され、それにおいてバイパスパイプは部材支持パイプの中央を通って案内されており、バイパス弁の位置が、「フィルタサンプ」から上方へ変化する。バイパスパイプと他のバイパス閉鎖蓋の閉鎖によって、フィルタ装置の切替え論理を簡単に変化させることができ、すなわちバイパスが直接吸引側へ通じる。これは特に、スライダ構造の新種の内側の中空バイパス弁を使用することによって、可能である。さらに、本発明に基づくフィルタ装置によって、フィルタ部材の挿入なしでは供給圧力構築が存在しないことが、保証され、それはフィルタ部材がないことの表示である。いわゆるクロス−フロー構造の新種のバイパスキャップは、横通路の特別な台形形状によって、濾過されたオイルの横断面が狭くならないことを許すので、濾過駆動におけるエネルギ損失が回避される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ装置、特に還流−吸引フィルタであって、
その中に長手軸(25)を定める少なくとも1つのフィルタ部材(3)を収容可能な、少なくとも1つのフィルタハウジング(7)と、
特にバイパス弁(V2)と予圧弁(V1)の形式の、少なくとも2つの弁ユニットとを有する、ものにおいて、
弁ユニットが、それぞれのフィルタ部材(3)の長手軸(25)に対して同心の配置で、この長手軸(25)に沿って配置されている、
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
追加吸引弁(V3)の形式の第3の弁装置が、フィルタ部材(3)の長手軸(25)に対して同心の配置で設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
フィルタハウジング(7)が、流体ガイド(49、51)を備えた頭部側の蓋部分(9)を有しており、
流体ガイドが、挿入されたフィルタ部材(3)の上方の終端領域と還流液のための少なくとも1つのフィルタ入口(35)および浄化された液体のための少なくとも1つのフィルタ出口(33)に隣接しており、かつ
バイパス弁(V2)が、蓋部分(9)の領域内に、かつフィルタ入口(35)に接する流体ガイド(51)と流体接続して配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
フィルタハウジング(7)が、余分な還流量をタンクへ流出されせるために、底側のタンク接続端(T)を有しており、かつ
フィルタ出口(33)とタンク接続端(T)の間の流体接続を遮断または解放するために、予圧弁(V1)がフィルタハウジング(7)の、タンク接続端(T)に隣接する底領域(17)内に配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
追加吸引弁(V3)が、予圧弁(V1)の下方において、タンク接続端(T)により近づいて、フィルタハウジング(7)の底領域(17)内に配置されている、ことを特徴とする請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
濾過する際に外側から内側へ向かって貫流可能な、フィルタ部材(3)のフィルタ媒体(27)が、流体を通過させる同軸の支持パイプ(45)を包囲しており、
支持パイプの下方かつそれから距離をおいて、同心の内側パイプ(43)が配置されており、かつ
その外側にある浄化された液体が、内側パイプ(43)の端部において、フィルタハウジング(7)の底領域(17)内にある、予圧弁(V1)と追加吸引弁(V3)の形式の弁ユニットと流体接続されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
フィルタハウジング(7)の底領域(17)が、挿入されたフィルタ部材(4)の内側パイプ(43)を延長するパイプボディ(73)を有しており、
パイプボディ上で予圧弁(V1)と追加吸引弁(V3)の弁体(81ないし86)が、互いに対して逆方向の、開放運動と閉鎖運動のために、摺動可能に案内されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
上述した2つの弁の閉鎖ばね(77、79)が、パイプボディ(73)を包囲している、ことを特徴とする請求項7に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
予圧弁(V1)の弁体(81)が、閉鎖ばね(77、79)の外側に沿って延びる中空円筒状の突出部(83)を有し、
突出部の外側が、ばねハウジング(75)の内側に接して案内されており、
ばねハウジングが円筒壁を有するカップの形式でパイプボディ(73)を同心に包囲しており、かつ、その底(85)がパイプボディ(73)によって貫通されており、
パイプボディの端部が、タンク接続端(T)を形成している、
ことを特徴とする請求項8に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
ばねハウジング(75)の底(85)が、追加吸引弁(V3)の弁体を形成するリングプレート(86)のための弁座を形成し、
リングプレートによってばねハウジング(75)の底(85)内の追加吸引開口部(87)が遮断可能または解放可能である、
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
予圧弁(V1)の弁体(81)が、流体通路(91)を有しており、
流体通路がばねハウジング(75)のカップの内部を、パイプボディ(73)と挿入されたフィルタ部材(3)の内側パイプ(43)の外側にあるクリーン側と接続する、
ことを特徴とする請求項10に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
バイパス弁(V1)が、フィルタ部材(3)の頭部側の終端キャップ(39)内に統合されており、
終端キャップ内に少なくとも1つのバイパス通路(53)が形成されており、
バイパス通路は、フィルタ部材(3)が挿入されている場合に、フィルタハウジング(7)の蓋部分(9)のフィルタ入口(35)をバイパス弁(V2)の入口側と接続する、
ことを特徴とする請求項3から11のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項13】
バイパス弁として、ばねで付勢されたスライド弁が設けられており、
そのスライダ(55)が、長手軸(25)に対して同心の、中空円筒状の弁ハウジング(41)内で案内されており、かつ動圧によって開放した場合に、バイパス通路(53)と弁ハウジング(41)の内部空間との間に流体接続を形成する、
ことを特徴とする請求項12に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
フィルタ部材(3)の内側パイプ(43)が、バイパスパイプとして設けられており、 バイパスパイプの内側が、バイパス弁(V2)の弁ハウジング(41)の内部空間と底領域(17)内に位置するタンク接続端(T)との間の流体接続の少なくとも一部を形成する、
ことを特徴とする請求項13に記載のフィルタ装置。
【請求項15】
フィルタ部材(3)の内側パイプ(43)が閉鎖されており、かつ
弁ハウジング(41)が流出領域(65、67)を有しており、
流出領域は、バイパス弁(V2)が開放された場合に、弁ハウジング(41)の内部空間から蓋部分(9)内のフィルタ出口(33)への流体接続を形成する、
ことを特徴とする請求項14に記載のフィルタ装置。
【請求項16】
流出領域が、弁ハウジング蓋(65)内の開口部(67)によって形成されており、
弁ハウジング蓋が、頭部側の丸い栓として、バイパス弁(V2)の閉鎖ばね(59)の支持部を形成する、
ことを特徴とする請求項15に記載のフィルタ装置。
【請求項17】
開口部(67)が星状に分配された配置で、かつ台形の開口面をもって、弁ハウジング蓋(65)内に形成されている、
ことを特徴とする請求項16に記載のフィルタ装置。
【請求項18】
蓋部分(9)の該当する流体ガイド(51)内へ、それぞれのバイパス通路(53)内に配置されたバイパス保護スクリーン(5)またはバイパスフィルタが統合されている、
ことを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項19】
ばねハウジング(75)のカップの底(85)のフレームとパイプボディ(73)の突出部とを形成する、追加吸引スクリーン装置(97)または追加吸引フィルタのための支持体(93)が設けられており、
追加吸引スクリーン装置または追加吸引フィルタが、追加吸引弁(V3)の追加吸引開口部(87)とタンク接続端(T)との間の流体路内に挿入されている、
ことを特徴とする請求項9から18のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項20】
長手軸(25)を定める、流体を通過させる支持パイプ(45)を包囲する、フィルタ媒体(27)、
それぞれフィルタ媒体(27)の終端フレームを形成する、底側と頭部側の終端キャップ(23ないし39)、
支持パイプ(45)の内部かつそれから距離をもって、長手軸(25)に対して同心に配置された内側パイプ(43)であって、その底側の端部が底側の終端キャップ(23)の開放区画(29)を通って延びている、内側パイプ、および
長手軸(25)に対して同心の弁ハウジング(41)内で案内される、ばねで付勢された弁スライダ(55)を備えたスライド弁の形式の、頭部側の終端キャップ(39)内に統合されたバイパス弁(V2)、
を有する、
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載のフィルタ装置用のフィルタ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−504413(P2011−504413A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534388(P2010−534388)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009267
【国際公開番号】WO2009/065489
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(510084286)ハイダック フィルターテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】