説明

フィルタ装置

【課題】従来の4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ回路と等価で、しかもこれに比べて小型で、通過帯域の挿入損失が少ないフィルタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端1,2の一端1及び二つの出力端3,4の一端3に、直列に接続されたのと等しいインダクタLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路5を構成したフィルタ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触高周波電源は、図3に示すように駆動回路、電力増幅器、整合用回路、電力制御回路、トランス及び高周波除去用フィルタを用いた送受信側回路で構成され、そのうち受信側回路はトランス及び高周波除去用フィルタ及び整合調整用回路で構成される(非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
受信側高周波除去用フィルタとしては、主に、図4に示すように4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ及び図5に示す梯子型LCフィルタが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-285140
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】稲葉、13.56MHz、150W高周波電源の設計と製作、トランジスタ技術、2005年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記の4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいては、入力端と出力端の間に4個のLが含まれているため、回路が大型化する難点があり、また図5に示す梯子型LCフィルタにおいては、必要な特性が得られない欠点がある。
【0007】
また、通過帯域の挿入損失はフィルタにおけるLの数に比例するが、前記の格子型フィルタにおいてはLの数4個であり、通過帯域の挿入損失が大きくなる。梯子型フィルタの場合も、通過帯域の通過損失を制限すると必要な減衰特性が得られない。
【0008】
そこで、本願発明者らは、前記の4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタと特性が等価であり、しかも前記格子型フィルタ装置に比べて小型化され、しかも通過帯域の挿入損失が少ない格子型フィルタ装置の開発を目的として研究し、その結果下記に示すような本願発明を完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1発明は、4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端及び出力端に、直列に接続される等しい共通インピーダンスを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてインピーダンスにより格子型回路を構成したフィルタ装置を提案するものである。
【0010】
本願第2発明は、4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端及び出力端に、直列に接続された等しいインダクタンスLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路を構成したフィルタ装置を提案するものである。
【0011】
本願第3発明は、4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端及び出力端に、直列に接続されたインダクタンス値が等しくないインダクタLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてよりキャパシタCにより格子型回路を構成したフィルタ装置を提案するものである。
【0012】
本願第4発明は、4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端の一端及び二つの出力端の一端に、直列に接続されたのと等しいインダクタLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路を構成したフィルタ装置を提案するものである。
【0013】
即ち、本願発明に係るフィルタ装置はは前記4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、入力端及び出力端に、直列に接続されたLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路を構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本願発明ではキャパシタCのみ構成される格子型回路では、入力端と出力端の間は非接触な電界結合であるため、トランスを用いる電磁結合の場合に比較して小型化が可能である。
【0015】
また、本願発明では入力端と出力端との間に設けられる格子型回路はキャパシタCのみで構成され、Lは入力端及び出力端に直列に設けられ、Lの数が少ないか、Lの値が小さいため、通過帯域の挿入損失を前記4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタに比べて減少させることができる。
【0016】
なお、高周波電源回路及び充電器においては、入力から最大電力を得るため、電力増幅器と負荷との間にインピーダンス整合器が必要となるが、本願発明では入力端及び出力端に、直列に接続されたLが設けられており、このLをインピーダンス整合器の一部として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本願の実施例1におけるフィルタ回路を示す図
【図2】図2は本願の実施例2におけるフィルタ回路を示す図
【図3】図3は駆動源、電力増幅器及びトランス等を用いた非接触高周波及び電源充電器の送受信側回路
【図4】図4は4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ回路を示す図
【図5】図5は3個のLと4個のCから構成される梯子型フィルタ回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端の一端及び二つの出力端の一端に、直列に接続されたのと等しいインダクタLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路を構成したフィルタ装置。
【実施例1】
【0019】
図1において、1、2は入力端、3、4は出力端で、入力端1と出力端3には、直列にインダクタンスLaが設けられ、入力端1,2と出力端3,4の間にはキャパシタCa及びCbから構成される格子型回路5が設けられている。
【0020】
この回路では入力端1と出力端3に直列にインダクタンスLaを加えることにより、図4に示す4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ回路と等価な特性が得られる。
【実施例2】
【0021】
図2においては、入力端1,2と出力端3,4に、直列にインダクタンスLbが設けられ、インダクタンスLbを前記インダクタンスLaの1/2に設定することにより、図4に示す4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ回路と等価な特性が得られる。
次に、実施例1、2の特徴を次のように列挙することができる。
【0022】
(1)Cのみの格子型回路構成で、実施例1の場合2個のLで、実施例2の場合4個のLであるが何れも、入力端、出力端に直列に設けられているが、
このLは、電力増幅器と負荷との間に設けられるインピーダンス整合用回路の一部として使用できる。
【0023】
(2)Cのみの格子型回路構成において、容量は直列設けられている。即ち、入力端と出力端の間は、非接触電界結合であるため、非接触電磁結合のトランスに比較して小型化が可能である。
【0024】
(3)実施例1の場合、図4の格子型フィルタに比較して、Lは同じ値でLの数は2個、これに対して図4の格子型フィルタの場合Lの数は4個である。通過帯域の挿入損失は、近似的にLの数に比例するので、挿入損失はほぼ1/2である。
【0025】
(4)実施例2の場合、図4の格子型フィルタに比較して、インダクタンスLbの値は、実施例1のインダクタンス値Laの1/2のL値で、図4の場合Lの数は4個、実施例2の場合Lの数は4個であるが、総L値は実施例と同じであるので、通過帯域の挿入損失はほぼ1/2である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上要するに、本願発明によれば従来の4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタ回路と等価で、しかもこれに比べて小型で、通過帯域の挿入損失が少ないフィルタ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0027】
1、2は入力端
3、4は出力端
5はキャパシタCにより構成される格子型回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端及び出力端に、直列に接続される等しい共通インピーダンスを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてインピーダンスにより格子型回路を構成したフィルタ装置。
【請求項2】
4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端及び出力端に、直列に接続された等しいインダクタンスLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路を構成したフィルタ装置。
【請求項3】
4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端及び出力端に、直列に接続されたインダクタンス値が等しくないインダクタLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてより格子型回路を構成したフィルタ装置。
【請求項4】
4個のLC共振回路から構成される対称型格子型フィルタにおいて、二つの入力端の一端及び二つの出力端の一端に、直列に接続されたのと等しいインダクタLを設け、前記入力端と出力端の間に、前記各共振回路の共通インピーダンスを除いてキャパシタCにより格子型回路を構成したフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−182661(P2012−182661A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44284(P2011−44284)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(510140113)
【出願人】(510140124)
【Fターム(参考)】