説明

フィルタ

【課題】部品数が少なくなるとともに、組み立てを容易に行うことができるフィルタを提供する。
【解決手段】シート状の濾過部12を襞状に形成したフィルタにおいて、濾過部12の襞列設方向の端部の襞片12a1,12a2を襞頂部で切断する。その切断襞片12a1,12a2を端板13A,13Bとして濾過部12の襞幅方向の端部に固着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用空調装置において空調エア濾過のために用いられるフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタとしては、襞状に折り曲げ形成された濾材の襞幅方向の両端部に、一対の細長平板状の端板を接着や熱溶着により固着した構成が知られている。しかしながら、この従来構成においては、濾材と一対の細長平板状の端板とが必要になる。そのため、部品数が多くなって、組み立てが面倒になったり、部品管理に手間がかかったりするという問題があった。
【0003】
このような問題に対応するため、例えば、特許文献1に開示されるような構成も従来から提案されている。この従来構成では、襞状に折り曲げ形成された濾材の襞幅方向の両端部に、端板を構成する複数の端片が襞部ごとに一体に突出形成されている。そして、これらの各端片が折り曲げられ、隣接する端片が重ねた状態で接合されて接着されることにより、各襞折り部の両側縁が端片によって閉鎖されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1に記載の従来構成においては、襞部ごとに突出形成された多数の端片をそれぞれ折り曲げたり、接着したりする必要がある。このため、組み立てがきわめて煩雑になるものであった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、部品数が少なくなるとともに、組み立てを容易に行うことができるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、シート状の濾材を襞状に形成したフィルタにおいて、前記濾材の襞列設方向の端部の襞片を襞幅方向に沿って切断し、その切断襞片を端板として濾材の襞幅方向の端部に固着したことを特徴としている。
【0008】
従って、この発明のフィルタにおいては、襞状の濾材と、一対の端板とを別々に形成する必要がなく、濾材の襞列設方向の端部の襞片を利用して端板を構成することができる。よって、部品数が少なくなって、部品管理を容易化することができる。また、襞状の濾材と端板とが同一の材料で構成されているため、端板を濾材に熱溶着で組み付け固着する場合に、その固着を強固に行うことができる。
【0009】
前記の構成においては、前記襞片の襞頂部を切断して切断襞片を形成することが好ましい。
前記の構成において、前記切断襞片を切り残し部分が形成されるように切断し、その切り残し部分を中心に切断襞片を折り返して濾材の襞幅方向の端部に固着することが好ましい。
【0010】
前記の構成において、前記切断襞片を襞形状に従う鋸刃状に形成し、その切断襞片を濾材の襞に嵌め合わせ固着することが好ましい。
前記の構成において、前記端板を複数の切断襞片により複層構造にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、部品数が少なくなるとともに、組み立てを容易に行うことができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のフィルタを示す斜視図。
【図2】図1のフィルタの製造方法を示す斜視図。
【図3】同フィルタの製造方法を図2に続いて示す斜視図。
【図4】第2実施形態のフィルタを示す斜視図。
【図5】図4のフィルタの製造方法を示す斜視図。
【図6】第3実施形態のフィルタの製造方法を示す斜視図。
【図7】(a)(b)は、それぞれ第3実施形態のフィルタの製造方法の過程を示す斜視図。
【図8】同じく第3実施形態のフィルタの製造方法の過程を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したフィルタの第1実施形態を、図1〜図3に従って説明する。
【0014】
図1に示すように、この実施形態のフィルタ11は、全体が濾材よりなり、襞状に折り曲げ形成された中央の濾過部12と、その濾過部12の襞幅方向の両端部に熱溶着や接着で固着された一対の細長平板状の端板13A,13Bとを備えている。図3に示すように、端板13A,13Bは、濾過部12の襞列設方向の両端部における各2つの分の襞片12a1,12a2を利用することによって構成されている。
【0015】
すなわち、このフィルタ11の製造に際しては、図2に示すように、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の抄紙あるいは不織布からなるシート材を襞状に折り曲げ形成することによって、濾過部12が形成される。この場合、濾過部12の襞片12aの数は、フィルタ11を構成するために必要な襞片12aの数よりも多くなるように構成される。例えば、フィルタ11を構成するのに必要な襞片12aの数が30であるのに対して、濾過部12の製造時には必要数より4襞分多い34の襞片12aが形成される。なお、第1実施形態を含む各実施形態の図面においては、理解を容易にするために、襞片12aの数を少なく描いている。
【0016】
続いて、図3に示すように、濾過部12の襞列設方向の両端部におけるそれぞれ2つ分の襞片12a1,12a2が、襞頂部12bに沿って幅端部の切り残し部分12cを有するように切断される。この場合、濾過部12の襞列設方向の一端側の襞片12a1,12a2と他端側の襞片12a1,12a2とにおいては、切り残し部分12cが濾過部12の襞幅方向の互いに反対側の端部に設けられる。そして、同図に矢印で示すように、この2箇所の切断襞片12a1,12a2がそれぞれ切り残し部分12cを中心に濾過部12の襞幅方向の端部側へ折り返されて、その濾過部12の襞幅方向の端部に接合配置される。この場合、隣接する切断襞片12a1,12a2は、互いに重ね合わされる。
【0017】
その後、切断襞片12a1,12a2が端板13A,13Bとして、濾過部12の襞幅方向の両端部に熱溶着や接着剤を用いた接着で固着されることにより、図1に示すように、フィルタ11が構成される。このため、端板13A,13Bの固着によって、濾過部12が襞状の折り曲げ状態に形状保持される。端板13A,13Bが長すぎる場合には、切除される。
【0018】
以上のように構成されたフィルタ11は以下のように作用する。
すなわち、前記のように構成されたフィルタ11は図示しない空調装置のエア通路内にセットされる。そして、前記エア通路内を通るエアがフィルタ11の濾過部12によって濾過される。この場合、濾過部12が端板13A,13Bに固着されているため、襞片12aの形状及び襞片12a間の間隔が保持される。従って、フィルタ11は良好な濾過機能を果たす。
【0019】
この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このフィルタにおいては、襞状に折り曲げ形成された濾過部12の襞列設方向の端部の襞片12a1,12a2が襞頂部12bで切断され、その切断襞片12a1,12a2が端板13A,13Bとして濾過部12の襞幅方向の端部に固着されている。このため、襞状の濾過部12と、一対の端板13A,13Bとを別々に形成する必要がなく、濾過部12の襞列設方向の端部の襞片12a1,12a2を利用して端板13A,13Bを構成することができる。よって、部品数が少なくなって、部品管理を容易化することができる。また、襞状の濾過部12と端板13A,13Bとが同一の材料で構成されるため、特に、端板13A,13Bを濾過部12の端部に熱溶着する場合に、その溶着を強固に行うことができる。
【0020】
(2) このフィルタにおいては、前記切断襞片12a1,12a2が切り残し部分12cを有するように切断され、その切り残し部分12cを中心に切断襞片12a1,12a2が折り返されて濾過部12の襞幅方向の端部に固着されている。従って、切断襞片12a1,12a2が切り残し部分12cを介して濾過部12に繋がったままの状態であるため、仮に切断襞片12a1,12a2が濾過部12から剥がれても、切断襞片12a1,12a2が濾過部12から離れることを防止できる。
【0021】
(3) このフィルタにおいては、前記端板13A,13Bが濾過部12の襞列設方向の端部の襞片12a1,12a2を複数用いることにより、複層構造となるように形成されている。このため、端板13A,13Bとして充分な剛性を確保することができる。従って、襞片12aの形状や間隔を適切に保持できて、良好な濾過機能を維持できる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0023】
この第2実施形態においては、図4及び図5に示すように、濾過部12の襞列設方向の両端部の切断襞片12a1,12a2に濾過部12の襞形状と対応する鋸刃部16が形成されて、その切断襞片12a1,12a2が鋸刃状に構成されている。そして、切断襞片12a1,12a2が端板13A,13Bとして切り残し部分12cを中心に濾過部12の襞幅方向の端部側へ折り返されて、鋸刃部16において濾過部12の襞に嵌め合わされ、この状態で熱溶着や接着で相互に固着されている。なお、隣接する切断襞片12a1,12a2は各鋸刃の尖端間で連結するとよい。
【0024】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) このフィルタにおいては、鋸刃状の切断襞片12a1,12a2が端板13A,13Bとして濾過部12の襞に嵌め合わせ固着されている。このため、襞片12aの形状及び間隔をより確実に保持できて、良好な濾過機能を維持できる。しかも、端板13A,13Bの総面積が小さくなるため、フィルタ全体の軽量化が可能になる。
【0025】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
この第3実施形態においては、図6に示すように、フィルタ11の端板13A,13Bの長さL1が濾過部12の襞幅方向の長さL2よりも大きくなっている。この場合には、図6及び図7(a)(b)に示すように、濾過部12の襞列設方向の両端部の3つの襞片12a1,12a2,12a3が用いられ、その切断襞片12a1〜12a3が濾過部12の襞幅方向の両端部側に折り返される。そして、それぞれ襞片12a1,12a2がそれぞれ襞片12a3,12a2から展開されることによって、図8に示すように、端板13A,13Bが形成される。なお、図8に2点鎖線で示すように、濾過部12の襞列設方向の端部から突出した端板13A,13Bの余剰部分13aは、切断除去される。
【0027】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができるとともに、この第3実施形態では、以下の効果を得ることができる。
【0028】
(5) 襞片12a1,12a3が展開されることによって端板13A,13Bが構成されるため、襞列設方向に長い濾過部12であっても、その襞幅方向の両端部に端板13A,13Bを設けることができる。
【0029】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 濾過部12の襞列設方向の端部から切断する襞片12aの枚数を変更して、一重構造または三重以上の複層構造の端板13A,13Bを形成すること。
【0030】
・ 切断襞片を濾過部12の襞列設方向の端部から切り残し部分12cを設けることなく切り離し形成し、その切断襞片を両端板13A,13Bとして濾過部12の襞幅方向の両端部に固着すること。
【0031】
・ 前記両端板13A,13Bの切断襞片を切り離し形成する場合において、その切断襞片を濾過部12の襞列設方向の両端部からでなく、いずれか一方の端部のみから形成すること。
【0032】
・ 前記各実施形態においては、襞の頂部を切断して切断襞片を形成したが、襞の谷部を切断したり、頂部と谷部との間の中腹部で切断したりすること。
【符号の説明】
【0033】
11…フィルタ、12…濾過部、12a…襞片、12a1,12a2,12a3…切断襞片、12b…襞頂部、12c…切り残し部分、13A,13B…端板、16…鋸刃部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の濾材を襞状に形成したフィルタにおいて、前記濾材の襞列設方向の端部の襞片を襞幅方向に沿って切断し、その切断襞片を端板として濾材の襞幅方向の端部に固着したことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記襞片の襞頂部を切断して切断襞片を形成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記切断襞片を切り残し部分が形成されるように切断し、その切り残し部分を中心に切断襞片を折り返して濾材の襞幅方向の端部に固着したことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記切断襞片を襞形状に従う鋸刃状に形成し、その切断襞片を濾材の襞に嵌め合わせ固着したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記端板を複数の切断襞片により複層構造にしたことを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200713(P2012−200713A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70382(P2011−70382)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】