説明

フィルムキャリア

【課題】 写真フィルムを走査スキャンする読取ポイントと、搬送レーン上で写真フィルムを搬送するフィルム搬送機構とを備え、搬送レーンの途中に写真フィルムを巻き取る巻取り部が配置され、搬送レーンの端部には巻取り部を通過した写真フィルムを外に送り出す排出口が配置され、巻取り部での巻取り不良に基づくループ状の写真フィルム部位を収納空間の外部に開放する開放手段を設け、写真フィルムを排出口から排出する第1モードと、写真フィルムを巻取り部に巻き取る第2モードとの間で選択的に操作可能なフィルムキャリアにおいて、第2モードにおける巻き取り不良の発生を迅速に認知可能にする。
【解決手段】 第1モードにおいて排出口10bから送り出される写真フィルムFを検出可能なフィルムセンサ70を設け、フィルムセンサ70が第2モードにおいては開放手段42から開放されるループ状の写真フィルム部位を検出する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真フィルムを走査スキャンする際に用いるフィルムキャリアに関し、より具体的には、写真フィルムを走査スキャンするための読取ポイントと、前記読取ポイントを含む搬送レーン上で写真フィルムを搬送するためのフィルム搬送機構とを備え、前記搬送レーンの途中には写真フィルムを巻き取って収納空間に収納する巻取り部が配置され、前記搬送レーンの端部には前記巻取り部を通過した写真フィルムを前記搬送レーン外に送り出す排出口が設けられており、さらに前記巻取り部での巻取り不良によって形成されるループ状の写真フィルム部位を前記収納空間の外部に開放する開放手段が設けられており、前記フィルム搬送機構によって搬送される写真フィルムを前記排出口から排出する第1モードと、写真フィルムを前記巻取り部にて巻き取る第2モードとのいずれかで選択的に操作可能に構成されているフィルムキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルムキャリアとしては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたフィルムキャリアでは、巻取り部と排出口とを備えているので、巻取り部を素通りさせて排出口から写真フィルムの先端を排出しながら最初から高解像度の画像読取りを行うワンパスモード(第1モードの一例)での走査スキャンができるが、他の選択肢として、読取ポイントよりも下流側に位置する巻取り部で写真フィルムを巻き取りながらプレスキャンとして低解像度の画像読取りを行い、次に、巻取り部から引き出しながら本スキャンとして高解像度の画像読取りを行うツーパスモード(第2モードの一例)による走査スキャンをも可能とした構成である。そして、巻取り部に開放手段が設けられているので、巻取り不良によってループ状の写真フィルム部位が形成されてしまう場合も、ループ状の部位が収納空間内に閉じ込められることなく外部に開放され、写真フィルムが損傷を受け難い。
【0003】
【特許文献1】特開2004−37693号公報(段落番号0008、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記されたフィルムキャリアに設けられた開放手段は、巻取り部の上方部を閉鎖する開閉カバーを、ループ状となった写真フィルム部位から発生する押付け力によって開放する機構によって実現しているので、第2モードにおいてオペレータは開閉カバーが開き始めるまでは巻き取り不良の発生に気付き難く、そのため、外部に開放された写真フィルムの部位に浮遊塵埃などが付着し易いという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上に例示した従来技術によるフィルムキャリアの持つ前述した欠点に鑑み、オペレータが第2モードにおける巻き取り不良の発生を迅速に認知可能で、そのため写真フィルムに浮遊塵埃などが付着し難いフィルムキャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、写真フィルムを走査スキャンするための読取ポイントと、前記読取ポイントを含む搬送レーン上で写真フィルムを搬送するためのフィルム搬送機構とを備え、
前記搬送レーンの途中には写真フィルムを巻き取って収納空間に収納する巻取り部が配置され、前記搬送レーンの端部には前記巻取り部を通過した写真フィルムを前記搬送レーン外に送り出す排出口が設けられており、さらに
前記巻取り部での巻取り不良によって形成されるループ状の写真フィルム部位を前記収納空間の外部に開放する開放手段が設けられており、
写真フィルムを前記排出口から排出しながら走査スキャンする第1モードと、写真フィルムを前記巻取り部にて巻き取りながら走査スキャンする第2モードとのいずれかで選択的にスキャニング可能に構成されているフィルムキャリアであって、
前記第1モードにおいて前記排出口から送り出される写真フィルムを検出可能なフィルムセンサが設けてあり、前記フィルムセンサは、前記第2モードにおいて前記開放手段から開放されるループ状の前記写真フィルム部位を検出可能に構成されている点にある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によるフィルムキャリアでは、第1モードにおいて排出される写真フィルムを検出するためのフィルムセンサが、第2モードにおいては、巻き取り不良を早急に検出して、モニタ或いはブザーを通じてオペレータに警告することができるので、オペレータは巻き取り不良に対する迅速な対処が可能となり、しかも、巻取り不良によってループ状の写真フィルム部位が形成されたことを、ループ状の写真フィルム部位が押開く開閉カバーの動きや開閉カバーから外部に出て来た写真フィルム部位によってオペレータに知らせる必要がないので、外部に開放された写真フィルムの部位に浮遊塵埃などが付着する等の問題が生じ難い。勿論、同じフィルムセンサを第1モードにおいては、排出口から送り出される写真フィルムの検出手段として使用可能なので、読取ポイントに向けて次の写真フィルムを挿入可能なタイミングを迅速に知ることができ、処理能率の高さも確保できる。また、このように単一のセンサが、第1モードにおけるフィルムセンサと、第2モードにおける巻き取り不良検出センサとを兼ねているので、フィルムキャリアに搭載するセンサの数を減らすことが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記搬送レーンを備えた本体と、前記本体の上面部位を閉鎖可能なカバー部材とが設けられており、前記フィルムセンサは、前記本体と前記カバー部材とに分割配置された光センサ対からなる点にある。
【0009】
本構成であれば、単一の検出センサに、第1モードにおけるフィルムセンサと、第2モードにおける巻き取り不良検出センサとを兼ねさせる構成を合理的に且つ簡単に実現できる。しかも、搬送レーンを開放すべくカバー部材を開けるだけで、光センサ対を構成する発光部と受光部とが互いに分離され、各部へ容易にアクセス可能となるので、光センサ対の点検やメンテナンスが容易にできる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記搬送レーンを備えた本体の上面部位を閉鎖可能なカバー部材が設けられており、前記フィルムセンサは、前記本体上に写真フィルムの搬送方向に沿って離間配置された光センサ対と、前記光センサ対の一方から出射される光を他方に反射すべく前記カバー部材に配置された光反射手段とからなる点にある。
【0011】
本構成であれば、第2の特徴構成と同様に、単一の検出センサに、第1モードにおけるフィルムセンサと、第2モードにおける巻き取り不良検出センサとを兼ねさせる構成を合理的に実現できる。しかも、カバー部材にはミラーなどの単なる光反射手段を設けるだけで良く、本体にヒンジ等で連結されたカバー部材に、発光・受光素子と電気的に接続するための配線を設けずに済む。また、このように構成すれば、光ビームの通過位置をより自由に設定可能となり、例えば図17に示す例のように、発光素子から反射手段に向かう光ビーム又は反射手段から受光素子に向かう光ビームの通過位置を、フィルムの排出方向に関してより上流側に配置できるので、第2モードにおける巻き取り不良を早期に検出できる構成にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明による最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1と図2に、本発明の一実施形態としてのフィルムキャリア9、及び、フィルムキャリア9を用いて写真フィルムから画像データを読み取り可能なスキャナ装置1の外観を示す。
【0013】
(スキャナ装置とその構成)
スキャナ装置1は、現像済みの写真フィルムF(ネガフィルムまたはポジフィルム)に形成されている画像を、写真フィルムの各画像駒を透過する透過光をCCDなどの受光素子で受光し、光電変換することによってデジタル画像データに変換する。得られたデジタル画像データは、一般に、スキャナ装置1に接続されたデジタルプリント装置(不図示)乃至はコンピュータ(不図示)の記憶部などに一旦格納され、任意のタイミングで出力することができる。出力方式としては、前記デジタルプリント装置などによる銀塩式の写真プリントへの出力の他に、CDなど各種記憶媒体への保存という形態の出力が可能となる。
【0014】
図1に示すように、スキャナ装置1は、スキャナ本体2と、スキャナ本体2の上面付近などに着脱自在に設けられたフィルムキャリア9とで構成されている。ここでは、フィルムの外形の幅が約35mmの135フィルムF1と、幅が24mmでAPSフィルムとも呼ばれる240フィルムF2との2種類のフィルムに対応した兼用型のフィルムキャリア9について解説する。また、ここでは、135フィルムF1としては、6駒程度以下の画像駒を備えた短いピースフィルムの状態の写真フィルムを、240フィルムF2としては、専用のカートリッジFC内に引き出し可能に収納されている240フィルムF2を処理するものとして説明する。
【0015】
(スキャナ本体の構成)
スキャナ本体2の内部にはハロゲンランプなどの光源5が配置されており、スキャナ本体2の上面には、光源5から発された光ビームを、フィルムキャリア9内に支持された写真フィルムFを透過する下向きの光ビームに変換する導光アーム6が設けられている。
スキャナ本体2の内部には、さらに、写真フィルムFの画像駒を透過した透過光を受光し、デジタル画像データに光電変換するためのライン状のCCD8、幾つかのフィルム幅規格から選択される任意の幅を備えた写真フィルムFから届けられる光ビームの幅をCCD8の幅に適合させ、同時に、前記透過光が形成するアナログ画像をCCD8の入力面に合焦させるズームレンズ7などが配置されている。ライン状のCCD8は、スキャニングの主走査方向と一致する図1の矢印Aと平行に延びている。
【0016】
(フィルムキャリアの構成)
図2と図3に示すように、フィルムキャリア9は、主に合成樹脂などで形成された筐体状のフィルムキャリア本体10を有する。フィルムキャリア本体10は、スキャナ本体2の上面に設けられた位置決めレールを受け入れる係合溝(不図示)を下面に備えた下側本体10Lと、下側本体10Lの上面を覆う上側本体10Uとからなる。フィルムキャリア本体10の右辺には、オペレータが装入する135フィルムF1を受け入れる装入口10aが設けられており、左辺には必要に応じて135フィルムF1を左向きに排出するための排出口10bが設けられている。
【0017】
図2に示すように、上側本体10Uは、オペレータから見て遠い側の第1部位10Fと、オペレータから見て手前側の第2部位10Gとからなる。第1部位10Fは下側本体10Lにネジ止めされているが、第2部位10G(カバー部材の一例)は、下側本体10Lの上面を閉じた閉鎖姿勢(図2の状態)と、下側本体10Lの上面が開放されて、後述する搬送レーンなどにアクセス可能な開放姿勢(不図示)との間で、水平軸芯周りで揺動可能に設けられている。第2部位10Gと下側本体10Lの間には、第2部位10Gを閉鎖姿勢で保持するロック機構(不図示)が設けられている。フィルムキャリア9は閉鎖姿勢でスキャナ本体2の導光アーム6の下に設置可能となる。
【0018】
上側本体10Uには、導光アーム6の先端から下向きに延びるスキャニング用の光ビームを受け入れる上側開口部11Uが形成されている。同様に、下側本体10Lには、写真フィルムFの画像駒を透過した透過光をスキャナ本体2の内部のCCD8に導く下側開口部(不図示)が形成されている。上側開口部11Uと下側開口部の光軸方向に延びた中心軸は、CCD8による読取ポイントSPと略一致する。装入口10aから受け入れられた135フィルムF1は(240フィルムF2も同様)、装入口10aと排出口10bを結ぶ直線状の搬送軸芯Xmに沿って、すなわち、矢印Aと直交する副走査方向に搬送されながら読取ポイントSPでスキャニングされる。
【0019】
また、図3と図6に示すように、フィルムキャリア本体10内には、135フィルムF1用の第1搬送レーンFL1と240フィルムF2用の第2搬送レーンFL2とを同時に備えたデュアルレーンユニット30が設けられている。第1搬送レーンFL1と第2搬送レーンFL2の各搬送方向の軸芯X1,X2上には、それぞれ、導光アーム6の先端から送られる光ビームを各写真フィルムに照射するための第1スリットSL1と第2スリットSL2が設けられている。
【0020】
図6(イ)と図6(ロ)とに示すように、デュアルレーンユニット30は、下側本体10Lの床面に形成された一対のレール(不図示)上を主走査方向に沿って摺動自在に支持されており、135フィルムF1用の第1スリットSL1が読取ポイントSPと一致する第1位置(図6(イ)の状態)と、240フィルムF2用の第2スリットSL2が読取ポイントSPと一致する第2位置(図6(ロ)の状態)とのいずれか一方の位置で選択的にロックすることができる。デュアルレーンユニット30の位置の切り換え、及び、仮止めは、フィルムキャリア9外に突出した第1操作ハンドルH1を介して、オペレータの手動操作によって行われる。
【0021】
(フィルム搬送機構)
フィルムキャリア9には、写真フィルムFを副走査方向に搬送するフィルム搬送機構20が搭載されている。図5に示すように、フィルム搬送機構20は、デュアルレーンユニット30の第1搬送レーンFL1上に副走査方向に沿って配置された4組の搬送ローラ対Rp1a,Rp1b,Rp1c,Rp1dと、第2搬送レーンFL2上に副走査方向に沿って配置された3組の搬送ローラ対Rp2a,Rp2b,Rp2cと、やはりデュアルレーンユニット30上に固定されたモータM1と、モータM1の回転駆動力をこれらの各搬送ローラ対に伝達するために適宜回転自在に配置されたタイミングギヤとタイミングベルトとを有する。モータM1を正転させると、写真フィルムFは第1搬送レーンFL1或いは第2搬送レーンFL2上を図4の左向きに搬送され、モータM1を逆転させると、第1搬送レーンFL1或いは第2搬送レーンFL2上を右向きに搬送される。
【0022】
図3に示すように、デュアルレーンユニット30は、フィルムキャリア9の下側本体10Lに前述の一対のレールを介して支持されたレーンユニット本体30aと、レーンユニット本体30aの上面に揺動自在に支持された第1と第2揺動プレート31a,31bとを有する。
レーンユニット本体30aには、第1と第2搬送レーンFL1,FL2の下面が形成されており、第1と第2揺動プレート31a,31bには、第1と第2搬送レーンFL1,FL2の上面が形成されている。そして、第1と第2揺動プレート31a,31bを、上下の搬送ローラどうしが圧着される閉鎖状態でレーンユニット本体30aに対してロックするロック機構(不図示)が設けられている。
【0023】
(フィルム搬送機構の巻取りユニットについて)
さらに、図5に示すように、フィルム搬送機構20は、排出口10bの直前に配置された固定排出ローラ対Rp1e、および、排出ローラ対Rp1eとデュアルレーンユニット30の下流側端部の間に配置された巻取りユニット40(巻取り部の一例)を含む。
巻取りユニット40は、排出口10bから135フィルムF1をフィルムキャリア9外に排出させたくない場合に、その先端から巻き取って一時的にフィルムキャリア9内に保管する。尚、240フィルムF2については、原則的に排出口10bから排出させることはなく、必ず先端側から巻取りユニット40に巻き取りながらスキャン操作される。
【0024】
他方、固定排出ローラ対R1e,R1eは、デュアルレーンユニット30側から供給されてくる135フィルムF1を、右側の装入口10a側に戻すことなく、巻取りユニット40を素通りさせて左側の排出口10bからフィルムキャリア9外に排出するため、或いは、排出させながらスキャンするための補助機構として設けられている。
そのために、巻取りユニット40は、デュアルレーンユニット30側から供給されてくる写真フィルムFを巻取りユニット40のドラム41の周面上に巻き取る巻取りモード(図12(イ)の状態)と、供給されてくる写真フィルムFを巻き取ることなく、そのまま素通りさせ、下流の排出ローラ対Rp1eに向けて供給可能な通過モード(図12(ロ)の状態)との間で切り換え可能に設けられている。
【0025】
尚、巻取りユニット40と固定排出ローラ対R1e,R1eとは、移動可能なデュアルレーンユニット30上ではなく、フィルムキャリア9内の一定の位置に固定設置されているが、デュアルレーンユニット30上の各ローラ対と同様にモータM1からの回転駆動力によって駆動される。すなわち、図5に示すように、デュアルレーンユニット30の下流側端部の手前側の下面には、モータM1の回転駆動力をデュアルレーンユニット30外に分配するための出力ギヤDGが設けられており、他方、下側本体10Lには、出力ギヤDGと噛合する入力ギヤLGが回転自在に支持されている。入力ギヤLGは、デュアルレーンユニット30の第1と第2位置の間での移動に関わらず常に出力ギヤDGと噛合状態を保持可能なように、主走査方向に長い幅を備えた形状を有する。
【0026】
(2つのスキャニング操作方法について)
フィルムキャリア9では、ツーパス方式とワンパス方式という2種類のスキャン操作が可能となる。
135フィルムF1をツーパス方式でスキャン操作する例を図14(イ)、(ロ)に、240フィルムF2をツーパス方式でスキャン操作する例を図15(イ)、(ロ)に示す。ツーパス方式では、先ず、第1工程として、装入口10aから受け入れられた写真フィルムFを左向きに高速で搬送し、読取ポイントSPを越えた写真フィルムFの部位を巻取りユニット40に巻き取りながら、指定された画像駒のプレスキャンを行う(図14(イ)並びに図15(イ)の工程)。次に、第2工程として、巻き取られた写真フィルムFの部位を巻取りユニット40から引き出しながら、写真フィルムFを今度は右向きに低速で搬送しながら搬送しながら本スキャンを行う(図14(ロ)並びに図15(ロ)の工程)。
【0027】
ツーパス方式におけるプレスキャンでは、スキャニングを必要とする画像駒の基準位置(言い換えれば画像駒どうしの間に位置する素抜け部の位置など)を特定するための情報など補助的な情報の入手を行うと共に、前記デジタルプリント装置などのモニタスクリーンに表示された画像に基づいて色補正操作等のプレジャッジを実施するために最小限必要な低解像度の画像データを、前記画像駒からCCD8によって前記記憶部の所定領域に取込む。
【0028】
ツーパス方式における本スキャンでは、前記プレスキャンで得られた画像駒の位置情報などに基づいて、前記デジタルプリント装置によるプリント出力などに必要な高解像度の画像データを前記画像駒からCCD8によって前記記憶部の別の所定領域に取込む。次に、前記記憶部に取込まれた高解像度の画像データに前記プレジャッジで得られた色補正条件を反映したプリントデータが作成され、例えば、前記記憶部の前記所定領域に上書きされ、適宜プリント等に出力される。
【0029】
次に、135フィルムF1をワンパス方式でスキャン操作する例を図14(ハ)に示す。ワンパス方式では、装入口10aから受け入れられた写真フィルムFを左向きに低速で搬送しながら、指定された画像駒の一度限りのスキャンを、プレスキャンと本スキャンを兼ねた高解像度のスキャニングとして行う。
図14(ハ)に示すように、135フィルムF1をワンパス方式でスキャン操作する場合には、デュアルレーンユニット30から下流側に供給される写真フィルムFの部位を巻取りユニット40に巻き取る操作は行われず、巻取りユニット40を通過モードに設定しておくことで、135フィルムF1に巻取りユニット40の巻取りドラム41上を素通りさせ、下流の固定排出ローラ対R1e,R1eの搬送力によって排出口10bからフィルムキャリア9外に排出しながらスキャン操作する。これによって、スキャンを完了した135フィルムF1を右向きに戻す必要がなくなることから、オペレータは直ぐに次の135フィルムF1を装入口10aから装入することができ、スキャニングの処理効率が大きく向上する。尚、前述したように、240フィルムF2に対しては一般にワンパス方式のスキャニングは行わない。
【0030】
(排出ローラ対の構成)
図12と図13に示すように、固定排出ローラ対R1e,R1eは、レーンユニット本体30aに支持された下側の搬送ローラR1eと、第3揺動プレート31cに支持された上側の搬送ローラR1eとからなる。下側の搬送ローラR1eは、タイミングギヤとタイミングベルトを介してモータM1によって直接回転駆動される駆動ローラであるが、上側の搬送ローラR1eは、下側の搬送ローラR1eとの互いの周面の間で発生する摩擦に基づいて従動的に駆動される従動ローラである。尚、この駆動ローラと従動ローラとの関係は前述の各搬送ローラ対Rp1a,Rp1b,Rp1c,Rp1d,Rp2a,Rp2b,Rp2cについても同様である。
【0031】
図4に示すように、下側の搬送ローラR1eと直結したタイミングプーリの軸芯の上には、ワンウェイクラッチ機構33が介装されている。この構成の結果、モータM1が正転駆動されると、下側の搬送ローラR1eは、レーンユニット本体30aの下側の各搬送ローラR1a,R1b,R1c,R1d,R2a,R2b,R2cと同一の周速度で回転駆動されて、135フィルムF1を下流側に搬送するが(図13(イ)の状態)、モータM1が逆転駆動された場合には、ワンウェイクラッチ33の作用で、モータM1の駆動力は実質的に排出ローラ対R1e,R1eに伝えられず(図13(ロ)の状態)、下側の搬送ローラR1eは、僅かな荷重抵抗によって回転不能な状態に保持される。
【0032】
このワンウェイクラッチ33を用いた搬送ローラR1eの構成は、もしもワンパス方式によるスキャン操作を完了した135フィルムF1が、排出ローラ対R1e,R1eによって排出口10bからフィルムキャリア9外に排出された後に、ツーパス方式によるスキャン操作を完了した135フィルムF1、または、ツーパス方式乃至はワンパス方式によるスキャン操作を完了した240フィルムF2が、モータM1の逆転によって右向きに戻された場合に、先の一旦排出された135フィルムF1が排出ローラ対R1e,R1eによって再びフィルムキャリア9内に引き込まれ、他のフィルムと衝突して巻取りユニット40などでジャミングを起こす、と言った事態を防止するためである。
【0033】
(巻取りユニットの詳細な構造)
図5及び図10に示すように、巻取りユニット40は、主に、巻取りドラム41と、モータM1の正転に基づく回転力を巻取りドラム41に伝えて巻取りドラム41をフィルム巻取り方向に回転駆動するための入力部41Bとを有する。また、図9及び図11に示すように、巻取りユニット40は、巻取りドラム41の上流側上方に位置する軸芯X3周りで揺動自在に支持された第1ガイドアーム42(上部ガイドの一例)と、巻取りドラム41の下流側下方に位置する軸芯X4周りで揺動自在に支持された第2ガイドアーム43と、巻取りドラム41の上流側下方に位置する軸芯X5周りで揺動自在に支持された保持アーム44を有する。また、図10に示すように、巻取りユニット40は、第1ガイドアーム42と第2ガイドアーム43とを揺動操作するために、第1ガイドアーム42と共通の軸芯X3周りで揺動可能に支持された操作アーム51と、操作アーム51を揺動操作するソレノイド49とを有するアクチュエータ機構50を含む。
【0034】
尚、巻取りドラム41による写真フィルムFの巻き取り速度は、巻取りドラム41上への写真フィルムFの巻き取りが進行して写真フィルムFの最外周面の径が増大するに従って高まっていくので、モータM1の正転に応じた巻取りドラム41の回転速度は、巻き取り開始時期に写真フィルムFの弛みが生じないように、巻取りドラム41上への写真フィルムFの巻き取り操作が開始される前の状態を基準にして設定されている。
そして、図5に示すように、写真フィルムFの巻き取りが進行した時に、逆に写真フィルムFどうしが巻取りドラム41の回転力が与える強い力で互いに押し付けられて損傷することのないように、入力部41Bと巻取りドラム41の間にはフリクションクラッチ41cが介装されている。
【0035】
また、巻取りドラム41に巻き取られた写真フィルムFを、モータM1の逆転操作によって引き出しながら高解像度のスキャニングを行う際に、巻取りドラム41を固定しようとするフリクションクラッチ41cの作用が、写真フィルムFに損傷を与えたり、写真フィルムFの搬送速度に微妙な影響を与えたりすることのないように、巻取りドラム41とフリクションクラッチ41cの間には、写真フィルムFの引き出し操作に応じて巻取りドラム41を遊転させるためのワンウェイクラッチ41dが介装されている。
【0036】
(操作アームの構造)
アクチュエータ機構50の操作アーム51は、図12(イ)に示す水平姿勢と、図12(ロ)に示すリフト姿勢との間で、軸芯X3周りで揺動可能に支持されている。8に示すように、操作アーム51は、ソレノイド49からの上向きの操作力を入力するための被操作部51aと、第1ガイドアーム42に操作力を伝える第1操作部51bと、第2ガイドアーム43に操作力を伝える第2操作部51cとを有する。
【0037】
(第1ガイドアームの構造)
図8、図9および図12に示すように、第1ガイドアーム42(上部ガイド)の先端には、一対の遊転ローラ42a,42aが支持されている。また、第1ガイドアーム42の下面には、軸芯X3付近から遊転ローラ42a,42a付近まで延びた案内面42bが形成されている。案内面42bは、下向き凹面状の断面形状を有し、写真フィルムFの先端をスムースに案内する働きを有する。また、第1ガイドアーム42の遊転ローラ42a,42aよりも上方の位置からは、被操作軸42cが横向きに延びている。
【0038】
第1ガイドアーム42は、遊転ローラ42a,42が巻取りドラム41の周面に近接し、写真フィルムを巻取りドラム41の周面に押付ける第1姿勢(図12(イ)の状態)と、遊転ローラ42a,42aが巻取りドラム41の周面から離間した第2姿勢(図12(ロ)の状態)との間で、軸芯X3周りで揺動可能に支持されている。そして、図9から図11に示すように、第1ガイドアーム42を前記第1姿勢に付勢するコイルスプリング42sが設けられている。尚、第1ガイドアーム42の被操作軸42cは、コイルスプリング42sの付勢力によって常に操作アーム51の第1操作部51bに向けて下向きに押付けられている。
【0039】
ソレノイド49に給電されると、操作アーム51が前記リフト姿勢に操作され、操作アーム51の第1操作部51bが第1ガイドアーム42の被操作軸42cを上方に持ち上げることによって、第1ガイドアーム42をコイルスプリング42sの付勢力に抗して前記第2姿勢に切り換え操作する。ソレノイド49への給電が解除されると、操作アーム51が操作解除されて図12(イ)の状態に復帰するので、第1ガイドアーム42はコイルスプリング42sの付勢力に基づいて前記第1姿勢に復帰する。
【0040】
(第2ガイドアームの構造)
図8、図9および図12に示すように、第2ガイドアーム43は鋭角な断面形状を備えた先端部43aを有する。第2ガイドアーム43の内面には、軸芯X4付近から先端部43aまで概して上方に延びた第1案内面43bが形成されている。第1案内面43bは、凹面状の断面形状を有し、写真フィルムFの先端を下方側にスムースに案内する働きを有する。先端部43aからは、下流側に向かって水平に延びた第2案内面43cが延びている。第2案内面43cは平面状の断面形状を有し、写真フィルムFの先端を排出口10b側へとスムースに案内する働きを有する。また、第2ガイドアーム43の第2案内面43cよりも下方の位置からは、被操作軸43dが横向きに延びている。
【0041】
第2ガイドアーム43は、先端部43aが前記第2姿勢にある第1ガイドアーム42の案内面42bよりも径方向外側に退避した第1姿勢(図12(イ)の状態)と、先端部43aが巻取りドラム41の周面に突出形成された弾性ベルト41aの外周面よりも巻取りドラム41の中心側に進入した第2姿勢(図12(ロ)の状態)との間で、軸芯X4周りで揺動可能に支持されている。そして、第2ガイドアーム43を前記第1姿勢に付勢するコイルスプリング43sが設けられている。
【0042】
第2ガイドアーム43が第1姿勢にある時、写真フィルムFの先端は、巻取りドラム41に巻き取られるべく、第1案内面43bに沿って下方に案内される。他方、第2ガイドアーム43が第2姿勢にある時、写真フィルムFの先端は、第2案内面43cによって水平に案内され、巻取りドラム41の上方を素通りして排出口10b側へと進む。尚、第2ガイドアーム43の被操作軸43dは、コイルスプリング43sの付勢力によって常に操作アーム51の第2操作部51cに向けて下向きに押付けられている。
【0043】
ソレノイド49に給電されると、操作アーム51がリフト姿勢に操作され、操作アーム51の第2操作部51cが第2ガイドアーム43の被操作軸43dを装入口10a向きに揺動操作することによって、第2ガイドアーム43をコイルスプリング43sの付勢力に抗して前記第2姿勢に切り換え操作する。ソレノイド49への給電に応じてこの操作アーム51の第2操作部51cが示す上方向きに近い運動を、操作アーム51の第2操作部51cのより水平に近い運動に変換する目的で、操作アーム51の第2操作部51cは、第2操作部51cの摺動を許すスムースな面状に形成されている。ソレノイド49への給電が解除されると、操作アーム51は操作解除されて図12(イ)の状態に復帰するので、第2ガイドアーム43はコイルスプリング43sの付勢力に基づいて前記第1姿勢に復帰する。
【0044】
(保持アームの構造)
図8、図9および図12に示すように、保持アーム44の先端には、一対の遊転ローラ44a,44aが支持されている。そして、保持アーム44は、進入してきた写真フィルムの先端を遊転ローラ44a,44aが巻取りドラム41の周面に押付ける作用姿勢と、遊転ローラ44a,44aが巻取りドラム41から径方向外側に離間した非作用姿勢との間で、軸芯X5周りで揺動可能に支持されている。そして、保持アーム44を前記作用姿勢に付勢するコイルスプリング44sが設けられている。
【0045】
保持アーム44については、アクチュエータ機構と無関係に、常にコイルスプリング44sからの付勢力で巻取りドラム41の周面、または、巻取りドラム41の周面上に巻き回された写真フィルムFの最外周面に押付けられた状態に保持されている。図11に示すように、保持アーム44の下流側に面した内面には、軸芯X5付近から遊転ローラ44a,44a付近まで延びた案内面44bが形成されている。案内面44bは、下流側を向いた凹面状の断面形状を有し、写真フィルムFの先端を、巻取りドラム41の周面を形成している弾性ベルト41aと遊転ローラ44a,44aの境界部へとスムースに案内する働きを有する。
【0046】
以上の説明から理解されるように、アクチュエータ機構50の操作アーム51は、巻取りユニット40の通過モードへの切り換えに際して、第1ガイドアーム42をその第1姿勢から第2姿勢に切り換える操作と、第2ガイドアーム43をその第1姿勢から第2姿勢に切り換える操作とを同時に行う。同様に、アクチュエータ機構50の操作アーム51は、巻取りユニット40の巻き取りモードへの切り換えに際して、第1ガイドアーム42をその第2姿勢から第1姿勢に戻す操作と、第2ガイドアーム43をその第2姿勢から第1姿勢に切り換える操作とを同時に行うように構成されている。
【0047】
ところで、ツーパス方式におけるプレスキャンでは、写真フィルムFの種類と無関係に巻取りドラム41はモータM1の回転力に基づいて巻き取り方向に駆動操作されるが、ツーパス方式における本スキャンでは、巻取りドラム41はワンウェイクラッチ41dの作用によってフリー回転されるので、巻き取られていた写真フィルムは抵抗無く引き出され、本スキャンで得られる高解像度の画像データにスキャン速度の変化に基づくノイズが生じ難いように構成されている。
【0048】
他方、135写真フィルムF1の場合に、オペレータによってワンパス方式における唯一回のスキャン操作(本スキャン)が指示されると、巻取りユニット40は自動的に図12(ロ)に示す通過モードに切り換えられた上で、135写真フィルムF1のスキャニングが開始される。すなわち、通過モードでは、アクチュエータ機構50の操作アーム51の作用によって、第1ガイドアーム42と第2ガイドアーム43が同時に各第2姿勢に切り換えられている。したがって、スキャニングの進行に応じて下流側に送られて来る135写真フィルムF1の先端は、巻取りドラム41の周面に押付けられることなく、第1ガイドアーム42の遊転ローラ42a,42aと巻取りドラム41の間に形成された十分に大きな空隙部を、殆ど抵抗を受けること無く通過し、さらに、第2ガイドアーム43の第2案内面43c上をスムースに案内されて、主搬送機構と等しい搬送速度で回転駆動される補助排出ローラ対R1e,R1eに挟持され、排出口10bからフィルムキャリア9外へと送り出される。したがって、入力部41Bと巻取りドラム41の間に介装されたフリクションクラッチ41cの摩擦力が画像データに影響を与えない状態で、ワンパス方式による本スキャンが実施される。
【0049】
(カートリッジ操作機構)
フィルムキャリア9には、専用のカートリッジFC内に収納されている240フィルムF2をスキャニング処理するためのカートリッジ操作機構60が設けられている。図3と図4に示すように、カートリッジ操作機構60は、カートリッジFCを係止するためにデュアルレーンユニット30の第2搬送レーンFL2の上流側端部に設けられたポケット状のカートリッジホルダ61と、カートリッジホルダ61内に係止されたカートリッジFCのスプール軸FC1の端面内に係入するようにカートリッジホルダ61の対向する一対の壁面61a,61bから内側に突出した1対のスピンドル62a,62bと、カートリッジFCの開口部を開閉する遮光扉FC2の被走査軸の端面内に係入するように奥側の壁面61aから内側に突出した扉操作軸63と、手前側のスピンドル62bと扉操作軸63とを適宜のタイミングで必要な方向に回転駆動するためにデュアルレーンユニット30の手前側の端部に固定されたモータM2とを有する。
【0050】
カートリッジホルダ61の奥側の壁面61aは、カートリッジFCの軸芯方向に沿って移動可能なブロック状部材64に形成されている。ブロック状部材64は、図4の双方向を向いた矢印が示すように、1対のスピンドル62a,62b間の間隔がカートリッジFCの長さを超える開放位置と、1対のスピンドル62a,62bがカートリッジFCのスプール軸FC1の端面内に係入する係止位置との間で切り換え可能になっている。ブロック状部材64の位置の切り換えは、フィルムキャリア9外に突出した第2操作ハンドルH2を介してオペレータの手動操作によって行われる。
【0051】
デュアルレーンユニット30を前記第1位置に切り換え、ブロック状部材64を開放位置にした状態で240フィルムF2のカートリッジFCをカートリッジホルダ61内に投入し、第2操作ハンドルH2によってブロック状部材64を係止位置に切り換えると、自動的に、モータM2によって先ず扉操作軸63が駆動されて、カートリッジFCの遮光扉FC2が開放され、次に、スピンドル62aが駆動されて、カートリッジFCの開口部から240フィルムF2が、第2搬送レーンFL2に供給されるように構成されている。
尚、第2搬送レーンFL2には、240フィルムF2の磁気トラック上に記録された磁気記録の内容を読み取る磁気トラックリーダ66が配置されている。磁気記録の内容は、撮影に使用されたカメラから記録された撮影データや、前回のプリント処理を行ったプリント装置等から記録された露光条件に関しており、現在実施しようとしているプリント用の露光操作等に反映させることができる。
【0052】
尚、ツーパス方式におけるプレスキャン時に、万一、例えば写真フィルムFの先端が巻取りユニット40の巻取りドラム41の周面と保持アーム44の間に係止されなかった場合には、巻取り不良が生じ、写真フィルムFがドラム41に円滑に巻き取られないまま、写真フィルムFが上流側のフィルム搬送機構20によって、巻取りドラム41と第1ガイドアーム42との間の収納空間内に引き続き押し込まれる結果、ループ状の写真フィルム部位が形成され、このループが漸次長大化する場合がある。しかし、第1ガイドアーム42は、前述のように、軸芯X3周りで揺動可能に支持されているので、このループ状の写真フィルム部位によって、コイルスプリング42sの付勢力に抗して上方に開かれ、ループ状の写真フィルム部位を前記収納空間の外部に開放することで、写真フィルムのジャミングを抑制する開放手段を構成している。
【0053】
図16(ロ)に示すように、排出口10b付近には、ワンパスモードにおいて固定排出ローラ対R1e,R1eによって排出される写真フィルムの後端を検出可能なフィルムセンサ70が設けられている。フィルムセンサ70は、下側の固定排出ローラ対R1eの下流側に隣接したフィルムガイド面の部位上に上向きに配置された発光素子70aと、第2部位10G(カバー部材)の下面に下向きに設置された受光素子70bとからなる。フィルムセンサ70によって写真フィルムの後端が検出されると、すなわち写真フィルムの排出が検出されると、写真処理装置(不図示)のモニタなどに「ネガ排出完了」などと表示され、オペレータの次の写真フィルムの装入を促す構成となっている。
【0054】
また、図16(イ)に示すように、フィルムセンサ70は、ツーパスモードにて巻取りユニット40で巻取り不良が生じた場合に、開放手段から外部に開放されたループ状の写真フィルム部位を検出する巻取り不良検出センサを兼ねている。このために、発光素子70aから受光素子70bに向けて出射される光ビームが搬送レーンに対する垂線に対して大きく傾斜するように構成されている。すなわち、下方の発光素子70aは固定排出ローラ対R1e,R1eよりも下流側に配置されているのに対して、上方の受光素子70bは、固定排出ローラ対R1e,R1eよりも上流側の、固定排出ローラ対R1e,R1eと巻取りユニット40との間の位置に配置されている。より具体的には、この実施形態では、下方の発光素子70aから上方の受光素子70bに向けて出射される光ビームは、搬送レーンに対する垂線に対して約30°だけ搬送方向の上流側に倒れるように傾斜し、搬送レーンの幅方向に沿った側面視において上方の固定排出ローラ対R1eの最外周面を横断する形態を採っている。
【0055】
すなわち、図16(イ)に示すように、ツーパスモードにて巻取りユニット40の開放手段から外部に開放されたループ状の写真フィルム部位は、下方の発光素子70aから上方の受光素子70bに向けて出射される光ビームを光ビームの上方領域で遮断するが、図16(ロ)に示すように、ワンパスモードにおいて排出される写真フィルムの後端は光ビームの下方領域で遮断することになる。フィルムセンサ70によってループ状の写真フィルム部位が検出された場合、前記写真処理装置(不図示)のモニタなどに「巻取り不良」などと表示され、オペレータの適切な処置を促す構成となっている。勿論、上記の構成と逆に、第2部位10G(カバー部材)に発光素子70aを、下方に受光素子70bを配置しても良い。
【0056】
このように、単一のフィルムセンサ70が、第1モードにおいて写真フィルムの排出を検出する排出センサと、第2モードにおいて巻き取り不良を検出する巻き取り不良検出センサとを兼ねているが、その検出アルゴリズムはモード毎に異なっている。
すなわち、第1モードにおいてフィルムセンサ70を排出センサとして用いる場合は、受光素子70bが受ける光量の変化パターン、すなわち、写真フィルムの先端が光ビームを遮断した時に見られる光量の減少(写真フィルムを透過することによる光量損失)と、それに続く、写真フィルムの後端が光ビームを抜け出る時に見られる光量の増大とで特徴付けられる変化パターンを判別することによって、写真フィルムの後端の通過を検出し、「ネガ排出完了」である旨をモニタなどに表示する。
他方、第2モードにおいてフィルムセンサ70を巻き取り不良センサとして用いる場合は、受光素子70bが受ける光量の減少側への変化自体(写真フィルム不在時の光量から、ループ状に開放された写真フィルム部位が光ビームを遮断し始めた時の光量への変化)をジャミングとして即刻検出し「巻き取り不良」である旨をモニタなどに表示する。
【0057】
〔別実施形態〕
図17に示すように、第1モードにおけるフィルムセンサと、第2モードにおける巻き取り不良検出センサとを兼ねたフィルムセンサ170を、本体上に写真フィルムの搬送方向に沿って離間配置された発光素子170a及び受光素子170bと、光センサ対の一方から出射される光を他方に反射すべくカバー部材に配置されたミラーなどの反射手段171とで構成しても良い。このように構成すれば、光ビームの通過位置を自由に設定可能となり、例えば図17に示す例では、発光素子170aから反射手段171に向かう第1ビームの通過位置を、排出されるフィルムの搬送方向に関してより上流側に配置できるので、図12(ロ)の構成に比して、第2モードにおける巻き取り不良を更に早期に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のフィルムキャリアと共に用いられるスキャナ装置の外観斜視図
【図2】本発明の一実施形態としてのフィルムキャリアの外観斜視図
【図3】フィルムキャリアの内部を示す斜視図
【図4】フィルムキャリアの内部を示す平面図
【図5】フィルムキャリアの回転駆動系を主に示す平面図
【図6】フィルムキャリアのデュアルレーンユニットの動きを主に示す平面図
【図7】フィルムキャリアの巻取りユニットを示す斜視図
【図8】巻取りユニットの操作アームを含む要部を示す分解斜視図
【図9】巻取りユニットのコイルスプリングを含む分解斜視図
【図10】巻取りユニットをソレノイドと共に示す平面図
【図11】図10の巻取りユニットの側面図
【図12】巻取りユニットの2つのモードを写真フィルムと共に示す正面図
【図13】フィルムキャリアの補助排出ローラ対の付近を示す斜視図
【図14】135フィルムに実施される2つのスキャニング操作方法を示す正面図
【図15】240フィルムに実施されるスキャニング操作方法を示す正面図
【図16】フィルムセンサを示す概略側面図
【図17】フィルムセンサの別実施形態を示す概略側面図
【符号の説明】
【0059】
1 スキャナ装置
2 スキャナ本体
9 フィルムキャリア
10 フィルムキャリア本体
10a 装入口
10b 排出口
10U 上側本体
10F 第1部位
10G 第2部位(カバー部材)
10L 下側本体
30 デュアルレーンユニット
40 巻取りユニット
42 第1ガイドアーム(開放手段)
70 フィルムセンサ
70a 発光素子
70b 受光素子
F1 135フィルム
F2 240フィルム
FL1 第1搬送レーン
FL2 第2搬送レーン
SP 読取ポイント
R1e,R1e 補助排出ローラ対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真フィルムを走査スキャンするための読取ポイントと、前記読取ポイントを含む搬送レーン上で写真フィルムを搬送するためのフィルム搬送機構とを備え、
前記搬送レーンの途中には写真フィルムを巻き取って収納空間に収納する巻取り部が配置され、前記搬送レーンの端部には前記巻取り部を通過した写真フィルムを前記搬送レーン外に送り出す排出口が配置されており、さらに
前記巻取り部での巻取り不良によって形成されるループ状の写真フィルム部位を前記収納空間の外部に開放する開放手段が設けられており、
前記フィルム搬送機構によって搬送される写真フィルムを前記排出口から排出する第1モードと、写真フィルムを前記巻取り部にて巻き取る第2モードとのいずれかで選択的に操作可能に構成されているフィルムキャリアであって、
前記第1モードにおいて前記排出口から送り出される写真フィルムを検出可能なフィルムセンサが設けてあり、前記フィルムセンサは、前記第2モードにおいて前記開放手段から開放されるループ状の前記写真フィルム部位を検出可能に構成されているフィルムキャリア。
【請求項2】
前記搬送レーンを備えた本体の上面部位を閉鎖可能なカバー部材が設けられており、前記フィルムセンサは、前記本体と前記カバー部材とに分割配置された光センサ対からなる請求項1に記載のフィルムキャリア。
【請求項3】
前記搬送レーンを備えた本体の上面部位を閉鎖可能なカバー部材が設けられており、前記フィルムセンサは、前記本体上に写真フィルムの搬送方向に沿って離間配置された光センサ対と、前記光センサ対の一方から出射される光を他方に反射すべく前記カバー部材に配置された反射手段とからなる請求項1に記載のフィルムキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−52337(P2007−52337A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238626(P2005−238626)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】