説明

フィルムスキャナ及び画像処理方法

【課題】 保存状態がよくない動画フィルムのディジタル化を品質を低下させることなく、低コストで実現する。
【解決手段】 本発明はベルト上に載置された、ディジタル化対象の原フィルムAの両サイドの送り穴と同位置にマーカが付与され、該原フィルムと同幅の透明のフィルムBと該原フィルムAとを重ね合わせたものに、光を照射する照明手段と、フィルムAの送り穴とフィルムBのマーカの位置関係を保ちながらベルトを所定の方向にスライドさせるベルト送り手段と、フィルムを上方から撮影し、撮影された画像を画像記憶手段に格納する少なくとも1台の撮影手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムスキャナ及びフィルムスキャニング方法に係り、特に、動画フィルムのデータをディジタル化するためのフィルムスキャナ及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映画フィルム用の従来のスキャナは、フィルム送り機にフィルム装着し、1フレームをデジタルカメラで撮影し、フィルム送り機で1フレーム分フィルムを送る。当該フィルム送り機では、フィルムのパーフォレーション(フィルム送りの穴)をフィルムの位置を基準として用いている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】(株)IMAGICAテクノロジーズ製品 IMAGICA XE
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、保存状態の良くないフィルムや、映画の映写機で映写したフィルムはパーフォレーションが損傷している場合が多い。従来の映画フィルムスキャナでは、パーフォレーションを利用してフィルム送り機にフィルムを装着し、スキャンするときはパーフォレーションの位置を基準として使うため、パーフォレーションが損傷質得るフィルムをスキャンすると、フィルム送り機にフィルムが装着できなかったり、フレーム毎に位置がずれる問題が生じる。パーフォレーションが損傷しているフィルムを新しいフィルムにコピーすることも可能であるが、コピーすることによって品質低下が生じ、また、コピーにはコストがかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、保存状態がよくない動画フィルムのディジタル化を品質を低下させることなく、低コストで実現することが可能なフィルムスキャナ及びフィルムスキャニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1は、本発明の原理構成図である。
【0006】
本発明(請求項1)は、動画フィルムのデータをディジタル化するフィルムスキャナであって、
ディジタル化対象の原フィルムAの両サイドの送り穴と同位置にフレームの基準位置を示すマーカが付与され、該原フィルムと同幅の透明のフィルムBと該原フィルムAとを重ね合わせた撮影対象と、
撮影対象を所定の方向にスライドさせるベルト5と、
ベルト5上に載置された撮影対象を上方から撮影し、撮影された画像を画像記憶手段に格納する少なくとも1台の撮影手段2と、
撮影対象の撮影位置に光を照射する照明手段1と、
フィルムAの送り穴とフィルムBのマーカの位置関係を保ちながらベルトを所定の方向にスライドさせるベルト送り手段3と、を有する。
【0007】
また、本発明(請求項2)は、画像記憶手段6から撮影された画像を読み出して、該画像からマーカ列を抽出する手段と、
前記マーカ列に基づいて、該フィルムAのフレーム領域を抽出する手段と、
抽出された領域を画像記憶手段に格納する手段と、
からなる画像処理手段を更に有する。
【0008】
本発明(請求項3)は、撮影された画像を処理する画像処理方法であって、
ディジタル化対象の原フィルムAの両サイドの送り穴と同位置にフレームの基準位置を示すマーカが付与され、該原フィルムと同幅の透明のフィルムBを、該原フィルムAを合わせたフィルムを撮影した画像が格納されている画像記憶手段から該画像を読込み(ステップ1)、
画像からマーカ列を抽出し(ステップ2)、
マーカ列に基づいてフィルムAのフレーム領域を抽出し(ステップ3)、
抽出された領域を画像記憶手段に格納する(ステップ4)。
【発明の効果】
【0009】
上記のように本発明によれば、一般の所蔵フィルム、教育用フィルムなど上映用に何度も用いられたり、保存状態の良くないフィルムを、当該フィルムの送り穴位置に対応させたマーカが描かれたもう1つのフィルムを用意し、原フィルムと重ね合わせて撮影した画像から原フィルムを抽出し、マーカと対応付けることにより、原フィルムのディジタル化を低コストに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図3は、本発明の一実施の形態におけるスキャナの構成例を示す。
【0012】
同図に示すスキャナは、ライトボックス1、ディジタルカメラ2、ベルト送り部(ローラ)3、スキャン制御部4、フィルムポジショニングベルト5、画像記憶部6、画像処理部7から構成される。
【0013】
ライトボックス1は、フィルムポジショニングベルト5上に置かれたフィルムの撮影位置に対して光を照射する。
【0014】
ディジタルカメラ2は、フィルムポジショニングベルト5上に置かれたフィルムを上方向から撮影し、撮影した画像を画像記憶部6に格納する。
【0015】
ベルト送り部(ローラ)3は、回転することにより、フィルムポジショニングベルト5を所定の方向に移動させる。
【0016】
スキャン制御部4は、ディジタルカメラ2による撮影の速度と同期するようにローラ3の動きを制御する。
【0017】
フィルムポジショニングベルト5は、ローラ3が回転することにより所定の方向にスライドする。ディジタル化対象フィルムと同幅のフィルムのマーカと対応するパーフォレーションの位置関係を保ちながらスライドするものとする。
【0018】
画像記憶部6は、ディジタルカメラ2から取得した画像を記憶すると共に、画像処理部7により画像処理された画像を記憶する。
【0019】
画像処理部7は、画像記憶部6からディジタルカメラ2で撮影された画像を読み出して、ディジタル化対象のフィルムの画像を抽出し、パーフォレーションに対応付けられたマーカの位置に基づいて、ディジタル化対象のフィルムのフレーム領域を抽出して画像記憶部6に格納する。
【0020】
本発明では、まず、図4に示すようなディジタル化対象のフィルムA8とマーカの描かれた透明なフィルムB9を用いる。フィルムBは、フィルムAと同じ幅のものであり、パーフォレーションの代わりとなるマーカが描かれたものである。フィルムAとフィルムBとを重ねてライトボックス1の上におき、パーフォレーション部分aやマーカ部分bを含む全体をディジタルカメラ2で撮影する。このとき、マーカが描かれたフィルムBはライトボックス1側に置かれ、ディジタル化の対象とするフィルムAはディジタルカメラ2側に置かれる。
【0021】
これにより、ローラ3がスキャン制御部4の制御により回転し、フィルムAとフィルムBを、パーフォレーションとマーカとの位置関係を保ちながら所定の方向にスライドさせ、ディジタルカメラ2により撮影される。この結果として得られるディジタル画像データは、図5に示すように、映画フィルムAよりも大きい領域cを対象にし、そこには、マーカbがパーフォレーションaの代わりに基準位置eを示している。
【0022】
なお、フィルムには、8/16/35/70mmなど多様な種類があるが、本実施の形態では、マーカが描かれたフィルムをディジタル化するフィルムの種類によって変えるだけで、多様なフィルムに対応することが可能である。また、マーカが描かれたフィルムBをループ状にすることで、ライトボックス1上での撮影後、当該フィルムBとディジタル化対象のフィルムAとを分離し、ディジタル化対象のフィルムAを巻き取りリール(図示せず)に巻き取り、フィルムBをベルト5上を循環させて使用することができる。
【0023】
さらに、図3、図4では、1台のディジタルカメラ2のみを示しているが、この例に限定されることなく、多数のディジタルカメラを並列に配置し、複数のフィルムを並列に撮影することで、高速化を図ることができる。
【0024】
ディジタルカメラ2により図5に示す画像データ領域が撮影されると、当該撮影データが画像記憶部6に格納される。所定のフィルムの範囲が撮影されると、画像処理部7が、画像記憶部6から撮影された画像データを読み出して、マーカbを検出し、撮影された画像データの基準位置として用いて、既知の映画フィルムの画像部分領域だけを抜き出して、ディジタル画像データとする。
【0025】
以下に、画像処理部7の動作について説明する。
【0026】
図6は、本発明の一実施の形態におけるスキャナの画像処理のフローチャートである。
【0027】
ステップ101) 画像処理部7は、画像記憶部6から原フィルムAの両サイドのパーフォレーション列aとマーカ列bを同時撮影した連続画像を読み出す。
【0028】
ステップ102) 取得した連続画像のマーカを抽出する。マーカを検出する方法としては、マーカの画像データと出現する領域(左右の端)が既知であるので、出現刷る可能性のある領域に対して、マーカのデータと一致、あるいは、位置の近いものを位置をずらして検索する、パターンマッチング等の方法がある。
【0029】
ステップ103) 抽出されたマーカを基準位置として、原フィルムAのフレーム領域を抽出する。
【0030】
ステップ104) ステップ103で検出されたフレーム領域を画像記憶部6に格納する。
【0031】
なお、上記の画像処理部7の動作をプログラムとして構築し、画像処理部として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0032】
また、構築されたプログラムをハードディスクや、フレキシブルディスク・CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0033】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、動画フィルムをディジタル化するための技術に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の原理を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるスキャナ構成例である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるフィルムとスキャナを示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態における撮影領域とディジタル化する画像データ領域を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるスキャナの画像処理フローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 照明手段、ライトボックス
2 撮影手段、ディジタルカメラ
3 ベルト送り手段、ベルト送り部(ローラ)
4 スキャン制御部
5 ベルト
6 画像記憶手段、画像記憶部
7 画像処理部
8 ディジタル化対象フィルム(フィルムA)
9 マーカの描かれたフィルム(フィルムB)
a パーフォレーション
b マーカ
c 領域
d 使われる画像データ領域
e 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画フィルムのデータをディジタル化するフィルムスキャナであって、
ディジタル化対象の原フィルムAの両サイドの送り穴と同位置にフレームの基準位置を示すマーカが付与され、該原フィルムと同幅の透明のフィルムBと該原フィルムAとを重ね合わせた撮影対象と、
前記撮影対象を所定の方向にスライドさせるベルトと、
前記ベルト上に載置された前記撮影対象を上方から撮影し、撮影された画像を画像記憶手段に格納する少なくとも1台の撮影手段と、
前記撮影対象の撮影位置に光を照射する照明手段と、
前記フィルムAの送り穴と前記フィルムBのマーカの位置関係を保ちながら前記ベルトを所定の方向にスライドさせるベルト送り手段と、
を有することを特徴とするフィルムスキャナ。
【請求項2】
前記画像記憶手段から前記撮影された画像を読み出して、該画像から前記マーカ列を抽出する手段と、
前記マーカ列に基づいて該フィルムAのフレーム領域を抽出する手段と、
抽出された前記領域を前記画像記憶手段に格納する手段と、
からなる画像処理手段を更に有する
請求項1記載のフィルムスキャナ。
【請求項3】
撮影された画像を処理する画像処理方法であって、
ディジタル化対象の原フィルムAの両サイドの送り穴と同位置にフレームの基準位置を示すマーカが付与され、該原フィルムと同幅の透明のフィルムBと、該原フィルムAとを重ねあわせたフィルムを撮影した画像が格納されている画像記憶手段から該画像を読込み、
前記画像からマーカ列を抽出し、
前記マーカ列に基づいて、該フィルムAのフレーム領域を抽出し、
抽出された前記領域を前記画像記憶手段に格納する
ことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−28540(P2010−28540A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188752(P2008−188752)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】