説明

フィルム取扱い装置

【課題】フィルムの回転体への巻き込みによる各部への悪影響を防止して生産停止に至るのを未然に回避することができるフィルム取扱い装置を提供する。
【解決手段】回転可能に支持されてフィルムCを案内するゴム胴16を備えたフィルム取扱い装置において、ゴム胴の切欠部15を覆うギャップカバー42に設けられた反射板61と該反射板に投射された光を受光する回帰反射型の光電センサ65とを有してフィルムCのゴム胴への巻き込みを検出するフィルム巻き込み検出装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを切欠部を有した押圧胴と連携して取り扱うフィルム取扱い装置に係り、一層詳細にはフィルム転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉印刷機のコールド箔転写装置は、例えば特許文献1や特許文献2で開示されているように、ブランケットを巻き付けたゴム胴とシートを保持した圧胴との間を、巻出リールから巻き出されたコールド箔を前記両胴の回転下で走行させることにより、シートの予め接着剤が塗布された領域にコールド箔の箔(アルミ蒸着層)の転写を行うものである。転写し終わったコールド箔は、キャリヤと呼ばれるベース・フィルムと一緒に巻取リールに巻き取られ、廃棄物になる。巻出リールから巻取リールまでの間、コールド箔は適正な一定張力に保たれて、ゴム胴周面と同じ速度で送り出される。尚、コールド箔は、樹脂等からなるベース・フィルムに離型層等を介して金属等からなる箔が層状に設けられたものがロール状に巻かれたものである。また、例えば特許文献3で開示されているように、フィルム転写式透明ホログラム加工を行う装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-279769号公報([0060]〜[0063],[図4])
【特許文献2】特開2009-6702号公報([0034],[図2])
【特許文献3】WO2008/084191
【特許文献4】特開2009-029110号公報
【特許文献5】特開2008-296448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機械運転作業が不適切なために、例えば部分的に切れ掛かったフィルムとか、突発的に粘着テープ片が付いてしまったフィルムなど、異常が生じたフィルムがゴム胴に入り込んだり、巻取軸上で巻取りリール(紙管)が空回りしていたりすると、フィルムがゴム胴に巻き込まれる事故を起こすことがある。
【0005】
さらに具体的には、例えば、巻取りリール(紙管)に対してクラップするエアーシャフトに作業員がクランプさせるためのエアー圧充填作業をし忘れてしまった場合、機械が運転されても機械は巻取りリールを巻き取ることができなくなり、フィルムが弛み始める。また、別の例としては、フィルム転写装置を使用しないで枚葉印刷機を運転して単なる印刷だけをする場合には、ゴム胴と圧胴との間を通っているフィルムを取り除く作業が望ましく、基本作業として指導しているが、この作業を省いて両シリンダー間にフィルムを通したまま、ゴム胴を胴抜き状態にするだけで枚葉印刷機を運転することも可能であり、そのように運転してしまうことがある。このときフィルム転写装置のスイッチを切ってしまうと、フィルム転写装置は張力制御を起動できず、張力を一定に保てないフィルムはゴム胴の空回りにつられて次第に弛みはじめ、回転し続けるゴム胴に膨大な長さのフィルムが巻き付く。
【0006】
フィルムがゴム胴に巻き付くと、ゴム胴と圧胴の両シリンダーに過大な曲げ荷重が発生し、シリンダーを曲げたり、シリンダーが回転できなくなってギヤとの間で滑りはじめ、圧胴の爪がゴム胴と干渉してゴム胴が損傷したりする致命的な事故になり、たちまち生産を停止しなくてはならなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、フィルムの回転体への巻き込みによる各部への悪影響を防止して生産停止に至るのを未然に回避することができるフィルム取扱い装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明に係るフィルム取扱い装置は、
回転可能に支持されてフィルムを案内する回転体を備えたフィルム取扱い装置において、
前記回転体に設けられた反射部と該反射部に投射された光を受光する受光器とを有して前記フィルムの前記回転体への巻き込みを検出するフィルム巻き込み検出装置を備えた、
ことを特徴とする。
【0009】
また、
前記回転体は周面に切欠部が設けられた胴であり、
前記反射部は、前記胴の前記切欠部に設けられたカバーに設けられている、
ことを特徴とする。
【0010】
また、
前記胴は、シートを保持して搬送する搬送胴に対接し、フィルムを前記搬送胴により搬送されるシートに押し付ける押圧胴である、
ことを特徴とする。
【0011】
また、
前記フィルムは、シートに転写される箔を有するフィルムであり、前記押圧胴による前記フィルムのシートへの押し付けにより、シートに箔が転写される、
ことを特徴とする。
【0012】
また、
前記フィルムは、前記シートに、フィルムの模様を前記押圧胴によりシートに押し付けることにより転写する転写用フィルムであり、シートに模様が転写されることを特徴とする。
【0013】
また、
前記光電センサは、前記回転体のフィルム押圧位置よりも回転体回転方向下流側でかつフィルム搬送路の内側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明に係るフィルム取扱い装置によれば、回転体にフィルムが巻き込まれた場合は、これをフィルム巻き込み検出装置で検知するようにしたので、回転体の陥没事故等各部への悪影響を防げ、突発的な生産停止の危険を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示す枚葉印刷機のコールド箔転写装置の概略構成図である。
【図2】ゴム胴の断面を示す図5のD−D断面図である。
【図3】図2のA断面図である。
【図4】図2のB断面図である。
【図5】ゴム胴の側面図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】図5のE−E断面図である。
【図8】図5のF部詳細図である。
【図9】光電センサの取付構造を示す平面図である。
【図10】光電センサの取付構造を示す断面図である。
【図11】コールド箔巻込み検知の制御ブロック図である。
【図12】コールド箔巻込み検知の動作フロー図である。
【図13】切欠部通過時のフィルムスパン長のギャップカバーが有る場合と無い場合の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るフィルム取扱い装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1は本発明の一実施例を示す枚葉印刷機のコールド箔転写装置の概略構成図、図2はゴム胴の断面を示す図5のD−D断面図、図3は図2のA断面図、図4は図2のB断面図、図5はゴム胴の側面図、図6は図5のC−C断面図、図7は図5のE−E断面図、図8は図5のF部詳細図、図9は光電センサの取付構造を示す平面図、図10は光電センサの取付構造を示す断面図、図11はコールド箔巻込み検知の制御ブロック図、図12はコールド箔巻込み検知の動作フロー図、図13は切欠部通過時のフィルムスパン長のギャップカバーが有る場合と無い場合の比較を示すグラフである。
【0018】
図1に示すように、枚葉紙(シート)Pを外周面で支持するように当該枚葉紙Pの先端側を保持するくわえ爪装置(シート保持手段)10a,10bを、外周面の点対称位置に形成された二つの切欠部11a,11bにそれぞれ備えた圧胴(搬送胴)12の上流側には、給紙装置から接着剤転写装置を介して絵柄に対応した接着剤を予め転写された枚葉紙Pを当該圧胴12に受け渡す渡胴13が対向している。
【0019】
前記圧胴12の枚葉紙Pの搬送方向の前記渡胴13よりも下流側には、ブランケットBを外周面で支持するように当該ブランケットBの端部を保持する巻バー等からなる巻締め装置14を、外周面に形成された切欠部15に備えたゴム胴(押圧胴:回転体)16が対向している。前記圧胴12の枚葉紙Pの搬送方向の前記ゴム胴16よりも下流側には、当該圧胴12から排紙装置側へ枚葉紙Pを受け渡す渡胴17が対向している。
【0020】
また、樹脂等からなるベース・フィルムに離型層等を介して金属等からなる箔が層状に設けてロール状に巻き取られたコールド箔(フィルム)Cは、一本の巻出軸18上に一本巻又は軸方向へ所定間隔離間して複数巻に亘ってそれぞれ巻出しリール19を介して回転可能に支持されている。巻出しリール19の下方には、前記一本巻又は複数巻のコールド箔Cをそれぞれ巻取りリール20を介して巻き取る巻取軸21が配設されている。
【0021】
そして、前記巻出軸18から巻き出された一本巻又は複数巻のコールド箔Cは、ガイドローラ22を経由した後、複数巻の場合には二本のダンサーローラ23a,23bで分担して一本巻の場合には二本のダンサーローラ23a,23bのどちらかを経由して張力を調整する第1のダンサーローラ部24とその下流側に配されて一本のダンサーローラ25で一括して張力を調整する第2のダンサーローラ部26とからなるリール張力調整機構27により、各巻のコールド箔Cにおける固有の張力変動が吸収される。
【0022】
張力調整されたコールド箔Cは、一対のピンチローラ28で引かれ、後述する転写張力調整機構30の送給側を経た後、前記圧胴12と前記ゴム胴16との間を通過して、今度は転写張力調整機構30の回収側を経た後一対のピンチローラ31で引かれ、ガイドローラ32a,32bを経て前記巻取軸21に巻き取られるようになっている。尚、図中37〜40はガイドローラである。
【0023】
前述した転写張力調整機構30は、送給側において二つのガイドローラ33a,34a間に配されたダンサーローラ35aが、ダンサーアーム36aによって揺動可能になっていると共に、回収側においても二つのガイドローラ33b,34b間に配されたダンサーローラ35bが、同じくダンサーアーム36bによって揺動可能になっており、二つのダンサーローラ35a,35bが揺動することで、送給側と回収側とでコールド箔Cの張力変動を吸収しつつ転写張力を設定するようになっている。
【0024】
前記圧胴12に支持された枚葉紙Pに前記ゴム胴16のブランケットBがコールド箔Cを押圧して当該コールド箔Cの箔を当該枚葉紙Pに転写した後、当該ゴム胴16の切欠部15と当該圧胴12の切欠部11a,11bとが対向すると、前記ダンサーアーム36a,36bが揺動して、前記ガイドローラ33a,34a間及びガイドローラ33b,34b間のコールド箔Cの走行経路(長)を変化できるようにダンサーローラ35a,35bが移動可能になっている。
【0025】
これにより、切欠部で生じる張力変動を吸収しつつ張力を付与し、転写部のフィルムの張力を安定して設定させることができるようになっている。
【0026】
そして、前記ゴム胴16の切欠部15には、図2〜図7に示すように、巻締め装置14のブランケットBにおけるくわえ側の巻バー41aと尻側の巻バー41b等を遮蔽するようにギャップカバー42が配設される。
【0027】
前記ギャップカバー42は、ゴム胴16の押圧周面部(厳密にはブランケットBの外表面)とほぼ同じ曲率を有する案内用周面部42aと、圧胴12のくわえ爪装置10a,10bの同圧胴外表面から突出した爪(突出部)43(図2参照)との干渉を避けるべく前記案内用周面部42aより切欠部15の内方へ下げられた遮蔽用周面部42bとが連結板部42cを介して周方向に連接されてなる。
【0028】
また、ギャップカバー42は、その胴軸方向の両端部においてゴム胴16に対しピンを係脱することにより着脱可能になっている。即ち、ゴム胴16の両端部に設けたベアラ部44a,44bの内面には保持プレート45a,45bがボルト46a,46bで結合され、これらの保持プレート45a,45bにピン穴47a,47bが2個ずつ形成される。
【0029】
一方、ギャップカバー42の裏面には、一端側において、前記保持プレート45bのピン穴47bに対し係脱可能な固定ピン48a,48bがブラケット49a,49bを介して取り付けられている。ピン穴47bの一方に係脱可能な固定ピン48aとそのブラケット49aは案内用周面部42aに対応し、ピン穴47bの他方に係脱可能な固定ピン48bとそのブラケット49bは遮蔽用周面部42bに対応してそれぞれ取り付けられている。図示例では、各固定ピン48a,48bとして先細のテーパピンが用いられている。
【0030】
そして、他端側においては、前記保持プレート45aのピン穴47aに対し係脱可能な移動ピン50a,50bがブラケット52a,52bを介して取り付けられている。ピン穴47aの一方に係脱可能な移動ピン50aとそのブラケット52aは案内用周面部42aに対応し、ピン穴47aの他方に係脱可能な移動ピン50bとそのブラケット52bは遮蔽用周面部42bに対応してそれぞれ取り付けられている。
【0031】
図示例では、前記各ブラケット52a,52bは、前方支持部52a1,52b1と後方支持部52a2,52b2とそれらの連結部52a3,52b3とからなる断面コ字形に形成されてギャップカバー42の裏面に固着されている。そして、前記各移動ピン50a,50bは前記前方支持部52a1,52b1内をピン53a,53b(各移動ピン50a,50bの長穴51a,51bを貫通する)で回り止めされながら胴軸方向に、即ち、ピン穴47aに抜き差しする方向に摺動可能に貫通されると共、その後端面に付設されたガイドロッド部54a,54bが後方支持部52a2,52b2内を胴軸方向に摺動可能に貫通される。
【0032】
前記ガイドロッド部54a,54bには、一端側が前方支持部52a1,52b1に担持され後端側が後方支持部52a2,52b2に担持されて圧縮コイルばね55a,55bが巻装される。従って、ギャップカバー42の取付状態では、前記各移動ピン50a,50bは、常に、ピン穴47aに対し係合し得るように突出方向に付勢されている。また、各移動ピン50a,50bとして先細のテーパピンが用いられている。
【0033】
また、前記ギャップカバー42の裏面には、前記各ガイドロッド部54a,54bに対応した位置にて当該各ガイドロッド部54a,54bの後退を規制する板ばね56a,56bの基端部がブラケット57a,57bを介してボルト58a,58bで固定される。即ち、ギャップカバー42の取付状態において、板ばね56a,56bの先端が各ガイドロッド部54a,54bの後端面に当接又は近接することでその後退を規制し(図3及び図4中実線状態参照)、各移動ピン50a,50bがピン穴47aに係合した状態を保持してギャップカバー42の取外しを不能とする一方、板ばね56a,56bの先端側を強制的に撓ますことで、各ガイドロッド部54a,54bの後端面が板ばね56a,56bの先端に干渉せずにその後退を許容し(図3及び図4中二点鎖線状態参照)、各移動ピン50a,50bがピン穴47aから抜け出してギャップカバー42の取外しを可能とするのである。
【0034】
従って、前記ギャップカバー42を取り付ける際には、板ばね56a,56bの先端側を例えば押し下げつつ、移動ピン50a,50bを保持プレート45aのピン穴47aに差し込み、ギャップカバー42を図3及び図4中左方へ押し込みながらゴム胴16に嵌め込み、今度は、固定ピン48a,48bを保持プレート45bのピン穴47bに差し込むことで取り付けられる。一方、ギャップカバー42を取り外す際には、板ばね56a,56bの先端側を例えば押し下げつつ、ギャップカバー42を図3及び図4中左方へスライドさせ、固定ピン48a,48b側を引き上げることで取り外すことができる。
【0035】
また、前記ギャップカバー42はSUS304等のプレス加工品であるが、案内用周面部42aの表面に凹凸を有する表面加工を施すか又は凹凸を有する柔軟性の材料(フェルト布等)が貼着される。
【0036】
また、前記ギャップカバー42の遮蔽用周面部42bには、胴軸方向に所定間隔離間して窓孔60が複数個(図示例では10個)形成され、当該遮蔽用周面部42bの裏面側には、図8に示すように、各窓孔60を閉塞するように複数個(図示例では10個の窓孔60に対応して10個)の反射板(ミラー:反射部)61が、遮蔽用周面部42bに複数のボルト62で結合される一枚板の押え板63により支持されている。
【0037】
前記各反射板61は、投光器と受光器が一体になった回帰反射型の光電センサ65とセットでコールド箔Cの有無を検出するものである(フィルム巻き込み検出装置)。光電センサ65は、図9及び図10に示すように、本機の左右フレーム間に架設されたステー66上にプレート状のサポート部材67を介して取り付けられる。図示例では、10個の反射板61に対応して胴軸方向に10個の光電センサ65がそれぞれコ字形のブラケット68を介してボルト69で取り付けられている。尚、図中71はサポート部材67にボルト締めされた保護カバーである。
【0038】
前記各光電センサ65は、図11に示すように、ロータリ・エンコーダ等の本機位相検出器72と共に制御装置73にその検出信号が入力される。そして、制御装置73は、各光電センサ65と本機位相検出器72からの検出信号に基づいて、図12に示す動作フローによって本機モータ74を駆動制御するようになっている。
【0039】
即ち、ステップP1で本機位相が所定移送になったらステップP2で何れかの光電センサ65が0FFになっていないか否かを判断する。ここでは、コールド箔Cが無い場合(コールド箔を検出しない時)は反射光入力で光電センサ65は0Nとなり、コールド箔Cが有る場合(コールド箔Cを検出した時)は反射光が遮られ光電センサ65は0FFとなるようになっている。
【0040】
そして、前記ステップP2で可であれば、ステップP3で本機モータ74の駆動を停止する一方、否であればステップP1に戻り、以後これを繰り返すのである。
【0041】
このように構成されるため、巻出軸18から巻き出された複数巻のコールド箔Cは、ガイドローラ22を経由した後、第1のダンサーローラ部24とその下流側に配された第2のダンサーローラ部26とからなるリール張力調整機構27により、各巻のコールド箔Cにおける固有の張力変動が吸収される。
【0042】
張力調整された複数巻のコールド箔Cは、一対のピンチローラ28で引かれ、転写張力調整機構30の送給側を経た後、圧胴12とゴム胴16との間を通過して枚葉紙Pの予め接着剤が塗布された領域にコールド箔の箔(アルミ蒸着層)を転写し、転写し終わったコールド箔Cはベース・フィルムと一緒に今度は転写張力調整機構30の回収側を経た後一対のピンチローラ31で引かれ、ガイドローラ32を経て巻取軸21に巻き取られるのは前述したとおりである。
【0043】
そして、本実施例では、前記コールド箔Cがゴム胴16の切欠部15を通過する際には、ギャップカバー42の案内用周面部42aに案内される。この案内用周面部42aは、ゴム胴16におけるブランケットBに覆われた押圧周面部とほぼ同じ曲率を有すると共に切欠部15の幅(周方向の長さ)のほぼ半分の長さに亘っているので、コールド箔Cのスパン長の変化によるコールド箔Cの張力変動を大幅に減少させられる。
【0044】
図13は、本発明者等の実験結果に基づく、ギャップカバー42のある場合と無い場合のフィルムスパン長(ゴム胴中心に対するフィルムの最短距離)の変化を示すグラフである。尚、ここで言うフィルムスパン長とは本実施例のコールド箔Cのスパン長である。本グラフからも判るように、従来のようにギャップカバー42の無い場合に比べギャップカバー42のある場合はコールド箔Cのスパン長の変化を大幅に抑制できる。
【0045】
このようにして、コールド箔Cのスパン長の変化によるコールド箔Cの張力変動を大幅に減少させられる結果、コールド箔Cの損傷やゴム胴16への巻き込みを未然に防止することができる。一方、案内用周面部42aに連接する当該案内用周面部42aより切欠部15の内方へ下げられた遮蔽用周面部42bにより、従来通り圧胴12のくわえ爪装置10a,10bとの干渉は回避される。
【0046】
また、ギャップカバー42の案内用周面部42aの表面に凹凸を有する表面加工を施すか又は凹凸を有する柔軟性の材料が貼着されるので、凹凸を有する表面によりコールド箔Cの案内用周面部42aへの密着が防止されて滑りやすくなると共に、張力変動がさらに少なくなり、ゴム胴16への巻き込みも防止される。さらに、柔軟性が有れば、より一層コールド箔Cの損傷を防止することができる。また、これらの表面処理はコールド箔Cを停止させた状態のままゴム胴16を空回りさせる場合に有効である。
【0047】
また、本実施例では、万が一、ゴム胴16にコールド箔Cが巻き込まれた場合は、これを光電センサ65が検出して本機モータ74の駆動を停止する、即ち、枚葉印刷機の運転を停止するようになっているので、コールド箔Cの巻き込みによる各部への悪影響を未然に回避することができる。即ち、ゴム胴16の陥没事故等を防げ、突発的な生産停止の危険を無くすことができるのである。この際、本機モータ74の駆動を停止すると同時に警報装置や表示装置等を作動させ、オペレータにコールド箔Cの巻き込みを知らせるようにすると好適である。
【0048】
また、光電センサ65は、ゴム胴16の一側上方に架設されたステー66上に配置されているので、作業の邪魔にならず、埃がたまりづらいという利点がある。また、光電センサ65及び反射板61はゴム胴16の胴軸方向に所定間隔離間して10個配列されているので、幅の狭いコールド箔Cがどの位置に流れていても必ずどれか一つの光電センサ65がコールド箔Cの走行経路上にあれば、検出することができる。また、光電センサ65は回帰反射型であるので、金属光沢を有していたり、透明であったり、シワが生じている等いかなる状態のフィルムCでも正しく検知することができる。
【0049】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、ギャップカバーの構造及び形状変更や光電センサの構造および数量変更等各種変更が可能であることはいうまでもない。また、本発明は印刷面に樹脂ワニスを塗布して光沢を出し、その上から転写用フィルムを押し付けることにより、ホログラム模様を有する転写用フィルムの該模様を転写させて、印刷面を加工することができるフィルム取扱い装置にも適用できる(特許文献4)。更に、本発明は凸状に絵柄を形成された押し型を加熱できるように外周面に設けた押圧面を用いて、接着層を有する転写フォイルをシート状物に押圧することにより、転写フォイルの箔をシート状物に接着層を介して転写する、熱間箔転写(ホットフォイルスタンプ)にも適用可能である(特許文献5)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るフィルム取扱い装置は、押圧胴の切欠部内に効果的にカバーを配することでフィルムの張力変動を大幅に減少させてフィルムの損傷を未然に防ぐことができるので、枚葉印刷機のコールド箔転写装置に限らず、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10a,10b くわえ爪装置(シート保持手段)
11a,11b 切欠部
12 圧胴(搬送胴)
13 渡胴
14 巻締め装置
15 切欠部
16 ゴム胴(押圧胴:回転体)
17 渡胴
18 巻出軸
19 巻出しリール
20 巻取りリール
21 巻取軸
22 ガイドローラ
23a,23b ダンサーローラ
24 第1のダンサーローラ部
25 ダンサーローラ
26 ダンサーローラ部
27 リール張力調整機構
28 ピンチローラ
30 転写張力調整機構
31 ピンチローラ
32a,32b ガイドローラ
33a,33b ガイドローラ
34a,34b ガイドローラ
35a,35b ダンサーローラ
36a,36b ダンサーアーム
37〜40 ガイドローラ
41a くわえ側の巻バー
41b 尻側の巻バー
42 ギャップカバー
42a 案内用周面部
42b 遮蔽用周面部
42c 連結板部
43 爪(突出部)
44a,44b ベアラ部
45a,45b 保持プレート
46a,46b ボルト
47a,47b ピン穴
48a,48b 固定ピン
49a,49b ブラケット
50a,50b 移動ピン
51a,51b 長穴
52a,52b ブラケット
52a1,52b1 前方支持部
52a2,52b2 後方支持部
52a3,52b3 連結部
53a,53b ピン
54a,54b ガイドロッド部
55a,55b 圧縮コイルばね
56a,56b 板ばね
60 窓孔
61 反射板(ミラー:フィルム巻き込み検出装置)
62 ボルト
63 押え板
65 光電センサ(フィルム巻き込み検出装置)
66 ステー
67 サポート部材
68 ブラケット
69 ボルト
71 保護カバー
72 本機位相検出器
73 制御装置
74 本機モータ
B ブランケット
P 枚葉紙
C コールド箔(フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されてフィルムを案内する回転体を備えたフィルム取扱い装置において、
前記回転体に設けられた反射部と該反射部で反射された光を検出する光電センサとを有して前記フィルムの前記回転体への巻き込みを検出するフィルム巻き込み検出装置を備えた、
ことを特徴とするフィルム取扱い装置。
【請求項2】
前記回転体は周面に切欠部が設けられた胴であり、
前記反射部は、前記胴の前記切欠部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム取扱い装置。
【請求項3】
前記胴は、シートを保持して搬送する搬送胴に対接し、フィルムを前記搬送胴により搬送されるシートに押し付ける押圧胴である、
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム取扱い装置。
【請求項4】
前記フィルムはシートに転写される箔を有するフィルムであり、前記押圧胴による前記フィルムのシートへの押し付けにより、シートに箔が転写される、
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルム取扱い装置。
【請求項5】
前記フィルムは、前記シートに、フィルムの模様を前記押圧胴によりシートに押し付けることにより転写する転写用フィルムであり、シートに模様が転写されることを特徴とする請求項3に記載のフィルム取扱い装置。
【請求項6】
前記光電センサは、前記回転体のフィルム押圧位置よりも回転体回転方向下流側でかつフィルム搬送路の内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム取扱い装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−224454(P2012−224454A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94849(P2011−94849)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】