説明

フィルム巻取りコア及びロール状フィルムの乾燥方法

【課題】 ロール状フィルムをそのまま乾燥でき、フィルムに傷やゴミが付着せず、フィルム中の水分残量をロール内周側まで極めて低くすることができるロール状フィルムの乾燥方法、及びフィルム巻取りコアを提供する。
【解決手段】 フィルム巻取りコアはコア本体部1と1対のコア端部2とからなり、コア本体部1は複数の円弧状コア部材で構成され、フィルム3を巻取った後に複数の円弧状コア交換部材1bに付け替え、真空容器内で連続真空排気して乾燥する。付け替えた円弧状コア交換部材1bは、外径がコア端部2の外径よりも小さいためフィルム3との間に隙間5aを有し、且つ互いの間に隙間5bを有する。円弧状コア交換部材1bには、細孔、スリット、メッシュなどが形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板に用いるプラスチックフィルムなどのフィルムを、ロール状に巻取った状態で乾燥する場合に用いるフィルム巻取りコア、及びそれを用いたロール状フィルムの乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フレキシブル配線板を作製するために用いられる基板は、3層フレキシブル基板と2層フレキシブル基板とに大別される。即ち、3層フレキシブル基板は絶縁体フィルム上に接着剤を用いて導体層となる銅箔を貼り合わせたものであり、2層フレキシブル基板は絶縁体フィルム上に接着剤を用いることなしに、乾式めっき法または湿式めっき法により銅導体層を直接形成したものである。
【0003】
ここで、3層フレキシブル基板を用いる場合には、サブトラクティブ法によってフィルム上の導体層に所望の配線パターンを形成することにより、3層フレキシブル配線板を製造することができる。また、2層フレキシブル基板を用いる場合には、サブトラクティブ法またはアディティブ法によってフィルム上の導体層に所望の配線パターンを形成することにより、2層フレキシブル配線板を製造することができる。
【0004】
従来においては、製造方法が簡単で、低コストで製造することができる3層フレキシブル基板の使用が主流を占めていた。しかし、近年における電子機器の小型化や薄型化に伴って、フレキシブル配線板に対しても高密度化が要求され、その配線ピッチ(配線幅/スペース幅)は益々狭くなってきている。また、フレキシブル基板全体の厚みを薄くすることも求められている。
【0005】
そこで最近では、接着剤を施すことなく、絶縁体フィルム上に薄い金属被覆層を直接形成することができる2層フレキシブル基板を用いたフレキシブル配線板が注目されている。かかる2層フレキシブル基板は、基板自体の厚さを薄くすることができるうえ、絶縁体フィルム上に被着させる金属被覆層の厚さも任意の厚さに調整することができるという利点を有する。
【0006】
上記2層フレキシブル基板の製造は、絶縁体フィルムの片面または両面に、真空蒸着またはスパッタリング法などにより、クロム薄膜、ニッケルクロム合金薄膜、銅ニッケル合金薄膜などの金属蒸着膜を形成し、この金属蒸着膜上に電気めっき法などにより金属厚膜を形成する。この金属厚膜上には、更に厚膜の銅などからなる金属被覆層を積層して、2層フレキシブル基板とする。上記金属被覆層の形成方法としては、湿式めっき、乾式めっきなどがあり、湿式めっきには電気めっき、無電解めっきなどがある。また、乾式めっきには、真空蒸着法やスパッタリング法、及びそれらの改良方法などがある。中でも、数μmの厚さを持つ導電性金属層を効率よく積層できることから、電気めっき法が多く用いられている。
【0007】
しかしながら、上記した2層フレキシブル基板における絶縁体フィルムと金属被覆層の密着力は、初期こそ実用レベルにあるものの、耐熱環境下における密着力や高温高湿環境下における密着力など、信頼性に関わる密着性については従来の3層フレキシブル基板と比較して劣っているという問題がった。そのため、市場からは3層フレキシブル基板と同等の密着力(400N/m程度)の確保が求められている現状である。
【0008】
上記2層フレキシブル基板の密着力に関しては、特に、真空蒸着法やスパッタリング法で金属蒸着膜を形成する際に、ポリイミドフィルムなどの絶縁体フィルム中に残存する水分が影響を及ぼすことが知られている。真空蒸着法やスパッタリング法で金属蒸着膜を形成するには、ロール状に巻取ったフィルムを用い、ロール−ツウ−ロールの搬送機構を具備する真空蒸着装置やスパッタリング装置が用いられる。しかし、このロール状のフィルムは、そのまま真空乾燥しても、フィルムのロール内周部分からは脱水しにくいといった問題があった。
【0009】
そのため、ロール状のフィルムを巻取りながら真空乾燥することも行われている。例えば、特開2000−235940号公報(特許文献1)には、製品は異なるが、シート状のプラスチックフィルムが巻かれた複数の材料ロールと、電極箔が巻かれた複数の材料ロールから材料を巻取り、巻回形電気素子を形成する素子巻機において、材料を巻芯が巻き取る前に除湿する除湿手段を設け、その除湿手段として材料に除湿されたガスを吹き付ける除湿装置や、内側の雰囲気が除湿された空調ブース、巻芯に送る材料と接触して加熱する送りローラを設けることが提案されている。
【0010】
乾燥工程を短縮するためには、巻回素子に含まれる水分を事前に除去することが望ましいが、材料ロールあるいは巻回素子のいずれにおいても材料は巻かれた状態にあるため、水分の除去は困難である。そこで、上記公報記載の方法では、材料ロールから引き出され巻芯に巻き取られる間に、材料に除湿されたガスを吹き付けたり、材料を加熱・除湿された空調ブース内を通したり、送りローラを加熱したりするなどの手段により、材料ロールから巻芯へ向かう間の材料が巻かれていない状態で、水分除去を行うことが採用されている。
【0011】
しかし、上記のようにフィルムが巻かれていない状態で水分除去を行う方法では、ロール−ツウ−ロールのフィルム搬送機構を備え、除湿装置、加熱装置、真空排気装置などを具備する複雑で大型の装置を用いる必要がある。しかも、大気乾燥あるいは真空乾燥を行う場合、ロール状フィルムを全体にわたって数回は巻き出し且つ巻き取る操作を行わなければならず、このフィルム搬送時にフィルムに傷が付いたりゴミが付着したりするため、真空蒸着法やスパッタリング法で金属蒸着膜を形成する際に欠陥発生の原因となることがあった。
【特許文献1】特開2000−235940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した従来の事情に鑑みてなされたものであり、ロール状フィルムをそのまま乾燥することにより、巻き出し且つ巻き取る際にフィルムに傷やゴミが付着するのを防止して、金属蒸着膜を形成する時の欠陥発生を防止することができ、しかも、乾燥後のロール状フィルムの水分残量をロール内周側まで極めて低い値として、そのフィルム上に形成する金属蒸着膜の密着力低下を防止できるロール状フィルムの乾燥方法、及びその方法の実施に用いるフィルム巻取りコアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明が提供する第1の発明は、軸方向長さがフィルムの幅よりも短いコア本体部と、コア本体部の両端に接続された1対のコア端部とからなる円筒状のフィルム巻取りコアであって、コア本体部はコア端部と同じ外径を有し且つ軸方向に沿って分割された複数の円弧状コア部材からなり、コア端部の内周面側から着脱可能に接続されると共に、軸方向に沿って分割された複数の円弧状コア交換部材に付け替えることができ、該複数の円弧状コア部材と付け替えてコア端部に接続された該複数の円弧状コア交換部材は、全体の外径がコア端部の外径よりも小さく且つ内周側と外周側の間で通気性を有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明が提供する第2の発明は、上記第1の発明のフィルム巻取りコアにおいて、内周側と外周側の間で通気性を確保する手段として、前記円弧状コア交換部材の円弧長さが前記円弧状コア部材の円弧長さよりも短く、コア端部に接続された各円弧状コア交換部材の間に隙間が形成されていることを特徴とする。また、本発明が提供する第3の発明は、上記第1の発明のフィルム巻取りコアにおいて、別の手段として、前記円弧状コア交換部材が、その全体又は一部に、細孔、スリット、メッシュの少なくと1種が形成されているものでもよい。
【0015】
更に、本発明が提供する第4の発明は、上記第1〜第3の発明のフィルム巻取りコアにおいて、前記コア端部に接続された前記複数の円弧状コア交換部材の内周側中空部に、加熱ヒータを配置することを特徴とするものである。
【0016】
本発明が提供する第5の発明は、上記第1〜第4の発明におけるフィルム巻取りコアを用い、連続排気可能な真空容器内でフィルムに含まれる水分を除去するロール状フィルムの乾燥方法であって、複数の円弧状コア部材からなるコア本体部を備えたフィルム巻取りコアにフィルムをロール状に巻取った後、該複数の円弧状コア部材を複数の円弧状コア交換部材に付け替え、真空容器内において連続的に真空排気を行うことを特徴とするものである。
【0017】
本発明が提供する第6の発明は、上記第5の発明によるロール状フィルムの乾燥方法において、前記コア端部に接続された複数の円弧状コア交換部材の内周側中空部に加熱ヒータを配置し、該加熱ヒータでロール状フィルムを内周側から加熱することと特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フィルム巻取りコアにロール状に巻取ったフィルムを、ロール状のまま真空乾燥して、フィルムに含まれる水分をロールの内周側部分からも効率よく除去することができる。また、フィルムの搬送を行わずに乾燥できるため、傷の発生や埃の付着といった不良原因を低減することができ、フィルムの安定供給が可能となる。従って、本発明により乾燥した絶縁体フィルムは、その上に金属蒸着膜などを形成することによって、欠陥が少なく、金属被覆層との密着力に優れたフレキシブル配線板用の2層フレキシブル基板とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明によるフィルム巻取りコアの具体例を図1〜3に基づいて説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。図1に示すフィルム巻取りコアは、円筒状のコア本体部1と、その両端に接続された1対の円筒状のコア端部2とからなり、コア本体部1の軸方向長さは巻取られるフィルム3の幅よりも短くなっている。また、接続されて一体となったコア本体部1とコア端部2の外径は同一であって、フィルム3を巻取る際にフィルム3が接触する外周表面は滑らかに接続されている。
【0020】
図1のフィルム巻取りコアのコア本体部1は、軸方向に沿って分割された断面形状が円弧状の複数の円弧状コア部材1aから構成されていて、接続治具4によりコア端部2の内周面側から着脱可能に接続されている。コア本体部1の接続治具4としては、複数の円弧状コア部材1aを個々にコア端部2の内周面側に接続固定することができればよく、例えば図示したボルトが一般的であるが、金属の弾性を利用したC字型の薄いバネ板などを用い、コア端部2の内周面を押さ付けて固定することもできる。
【0021】
上記複数の円弧状コア部材1aから構成されるコア本体部1は、図2に示すように、軸方向に沿って分割された断面形状が円弧状の複数の円弧状コア交換部材1bに付け替えることができる。複数の円弧状コア交換部材1bの取り付けは、上記円弧状コア部材1aの場合と同様に、コア端部2の内周面側から接続治具4により着脱可能に接続する。この円弧状コア交換部材1bは、上記円弧状コア部材1aよりも肉厚を薄くすることにより、コア端部2に接続されたときの全体の外径がコア端部2の外径よりも小さくなっている。その結果、巻取ったロール状のフィルム3の内周面と、コア端部2に接続された複数の円弧状コア交換部材1bとの間に、隙間5aが形成される。
【0022】
また、コア端部2に接続された複数の円弧状コア交換部材1bは、その内周側と外周側の間で通気性を有することが必要である。そのため、図2の円弧状コア交換部材1bの円弧長さは、図1の円弧状コア部材1aの円弧長さよりも短く形成されている。従って、コア端部2に接続された各円弧状コア交換部材1bの間には、それぞれ隙間5bが形成される。尚、通気性を確保するための別の手段として、各円弧状コア交換部材自体に通気性を持たせるように、その全体又は一部に細孔、スリット、メッシュの少なくと1種を形成することもできる。
【0023】
次に、上記フィルム巻取りコアによるフィルムの乾燥方法を説明する。まず、図1に示すように、複数の円弧状コア部材1aからなるコア本体部1を備えたフィルム巻取りコアに、フィルム3をロール状に巻取る。その際、コア本体部1とコア端部2の外径は同一であるから、フィルム3をタワミなどによる変形なしに巻取ることができる。その後、複数の円弧状コア部材1aをコア端部2の内周面側から全て取り外し、代わりに複数の円弧状コア交換部材1bに付け替えて、図2に示す状態のフィルム巻取りコアとする。このとき、コア本体部1の軸方向長さはフィルム3の幅よりも短くなっているので、巻取ったフィルム3は一対のコア端部2の間でロール形状を崩すことなく保持される。
【0024】
このようにロール状にフィルム3を巻取ったフィルム巻取りコアは、図3に示すように、真空容器6内に受台7で支持し、真空容器6内を真空ポンプ8で連続的に真空排気することによって、フィルム3の巻き出し巻取りを行うことなく、ロール状のままフィルム3に含まれる水分を除去して乾燥する。その際、フィルム3内の水分の蒸発を促進させるため、コア端部2に接続された複数の円弧状コア交換部材1bの内周側中空部に、図3に示すように加熱ヒータ9を挿入配置して、ロール状のフィルム3を内周側から加熱することが好ましい。尚、円弧状コア交換部材1bとして、細孔、スリット、メッシュなどを形成して通気性を持たせた円弧状コア交換部材を用いてもよい。
【0025】
この乾燥方法によって、ロール状のフィルム3の外周側や側面側から水分が除去されると同時に、図2〜3に示すように、ロール状のフィルム3の内周面と複数の円弧状コア交換部材1bとの間に形成された隙間5a、及び各円弧状コア交換部材1bの間に形成された隙間5b、あるいは円弧状コア交換部材1bに形成した細孔、スリット、メッシュなどを通して、ロール状のフィルム3の内周側からも水分が除去される。そのため、ロール状フィルムの全体を短時間で真空乾燥することができると共に、フィルムの搬送を行わずに乾燥できるため、傷やゴミの付着といった不良原因を低減することができる。
【0026】
本発明により乾燥するフィルムとしては、特に制限はないが、フレキシブル配線板用の絶縁体フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリエチレン−α,β−ビス(2−クロルフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレート)などのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリパラジン酸、ポリオキサジアゾール、及びこれらのハロゲン基置換体あるいはメチル基置換体からなるフィルムを挙げることができる。また、これらの共重合体や、他の有機重合体を含有するものであっても良い。これらの絶縁体フィルムには、滑剤や可塑剤などの公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0027】
上記のフィルムの中でも、優れた耐熱性を有すると共に、機械的、電気的及び化学的な特性において他のプラスティック材料に比べ遜色のないことから、ポリイミドフィルムがフレキシブル配線板用として多用されている。しかし、ポリイミドフィルムは耐熱性には優れるものの、ポリマー及び製法などから薄いフィルムほど製造が困難であること、高コストによる経済性、及び弾性率が低いことによる腰の弱さなどが問題となっている。そのため最近では、ポリイミドフィルムに代えて、ポリイミドに次ぐ耐熱性を備え、高い機械的強度を有している芳香族ポリアミドフィルムを使用することも提案されている。
【0028】
上記のごとく本発明方法により乾燥したフィルムは、例えばフレキシブル配線板用の2層フレキシブル基板を作製するため、フィルムの片面または両面に、クロム薄膜、ニッケルクロム合金薄膜、銅ニッケル合金薄膜などの金属蒸着膜を形成し、この金属蒸着膜上に電気めっき法などにより金属厚膜を形成し、更に厚膜の導電性の金属被覆層を積層する。その際、フィルム乾燥時にコア本体部を構成していた複数の円弧状コア交換部材は、巻出されるフィルムがタワミなどを起こさないように、再び複数の円弧状コア部材に付け替えることが好ましい。上記した本発明の乾燥処理を行えば、フィルム中の水分残量を極めて少なくできるため、真空蒸着法やスパッタリング法で形成する金属蒸着膜の密着力を高めることができると共に、フィルムの搬送を行わずに乾燥するため傷やゴミの付着がなく、プラスチックフィルムの安定供給を図ることが可能となる。
【0029】
得られた2層フレキシブル基板は、エッチングによって不要な金属部分を化学反応で溶解除去し、所定のパターンを有する電気回路図形を形成する。エッチング液としては、塩化第二銅、塩化第二鉄、過硫酸塩類、過酸化水素/硫酸、アルカリエンチャントなどの水溶液などが使用できる。また、パターンとして残すべき金属部分には、写真法やスクリーン印刷法で有機化合物系レジストを被覆するか、または異種金属系レジストをめっきして被覆し、エッチングによる金属の溶解を防止する。得られた2層フレキシブル基板は欠陥が少なく、よりファインなパターンを形成でき、しかも製品の繰返し屈曲や各種環境試験に十分耐えるものである。
【0030】
かかる2層フレキシブル基板を用いて作製したフレキシブル配線板は、電子計算機、端末機器、電話機、通信機器、計測制御機器、カメラ、時計、自動車、事務機器、家電製品、航空機計器、医療機器などのあらゆるエレクトロニクスの分野に活用することができる。また、コネクター、フラット電極などへの適用も可能である。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
図1に示す円筒状のフィルム巻取りコアを用意した。このフィルム巻取りコアのコア本体部1の軸方向長さは640mmであり、その両端に1対のコア端部2が接続固定されている。また、コア本体部1は、軸方向に沿って分割された複数の円弧状コア部材1aで構成され、図2に示すように軸方向に沿って分割された複数の円弧状コア交換部材1bにコア端部2の内周側から付け替え可能になっている。
【0032】
上記円弧状コア交換部材1bの肉厚は3mm、円弧状コア部材1aの最も厚い中央部の肉厚は7.5mm、及びコア端部2の肉厚は4.5mmであり、コア端部2の外周面(巻取ったロール状のフィルム3の内周面)とコア端部2に接続された複数の円弧状コア交換部材1bとの間には4.5mmの隙間5aが形成されるようになっている。また、円弧状コア交換部材1bの円弧長さは円弧状コア部材1aの円弧長さよりも短く形成されていて、コア端部2に接続した各円弧状コア交換部材1bの間にはそれぞれ10mmの隙間5bが形成されるようになっている。
【0033】
図1に示す円筒状のフィルム巻取りコアに、長さ150mで幅540mmのポリイミドフィルムをロール状に巻取った後、コア本体部1を構成する複数の円弧状コア部材1aを分割して取り外し、図2に示すように複数の円弧状コア交換部材1bに付け替えた。次に、図3に示すように、ロール状に巻取ったフィルム3をフィルム巻取りコアごとペール缶型の真空容器6に入れ、1対のコア端部2を受台7に支持すると共に、フィルム巻取りコアの内周側中空部に液体用フランジ付きの加熱ヒータ9を挿入配置した。
【0034】
この状態で、真空ポンプ8(ファイパー社製、DryToolPump)により、真空容器6内を排気速度83m/h(23リットル/sec)で13.3Pa以下に排気した後、加熱ヒータ9の温度を300℃に設定して、6日間連続排気処理した。その後、約12時間冷却した後、真空容器6内を大気に解放し、取り出したロール状フィルムの残留水分の測定を行った。残留水分の測定は、上記乾燥後のプラスチックフィルムを真空装置内に配置し、ヒータ設定温度450℃、搬送速度3m/minにてロール−ツウ−ロールで搬送しながら、チャンバー内の圧力上昇を測定することで評価した。
【0035】
尚、フィルム中の残留水分量は、下記の計算式で求めることができる。
[計算式]
残留水分量(wt%)=100×18×S×(P2−P1)/(760×22.4×(単位時間当たりの搬送フィルムのフィルム重量))
ただし、式中の18は水の分子量、760はTorrから気圧への変換のための係数、22.4は理想気体の体積を示している。
S=排気速度=83m/h(=23リットル/sec)
P1=フィルム搬送前のチャンバー内圧力
P2=フィルム搬送時のチャンバー内圧力
【0036】
[比較例1]
比較のために、従来からフレキシブル配線板用のプラスチックフィルムの巻取りに使用されているアルミ製コアを用意した。このアルミ製コアは、全体がアルミニウムで一体に形成されている以外は、上記実施例1と同様である。このアルミ製コアに上記実施例1と同じポリイミドフィルムをロール状に巻取った後、上記実施例1と同様の手順で6日間の連続排気処理による乾燥と、フィルム中の残留水分の測定を行った。
【0037】
上記実施例1と比較例1について、真空装置内でフィルムを搬送しながら圧力上昇から求めたフィルム中の残留水分量と、フィルムの搬送距離との関係を図4に示す。比較例の場合、フィルム搬送距離110m以降、即ちロール内周側になるほど、残留水分量が上昇していることが分かる。一方、実施例1においては、全体的な残留水分量が比較例1よりも少ないうえ、フィルム搬送距離110m以降のロール内周側でも残留水分量が減少している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のフィルム巻取りコアの一具体例であり、複数の円弧状コア部材からなるコア本体部を備えた状態を示す概略の断面図である。
【図2】本発明のフィルム巻取りコアの一具体例であり、複数の円弧状コア交換部材からなるコア本体部を備えた状態を示す概略の断面図である。
【図3】本発明のフィルム巻取りコアを用いたロール状フィルムの乾燥方法を示す概略の断面図である。
【図4】実施例1と比較例1の乾燥後のフィルムについて、真空装置内でフィルムを搬送しながら圧力上昇から求めたフィルム中の残留水分量とフィルム搬送距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
1 コア本体部
1a 円弧状コア部材
1b 円弧状コア交換部材
2 コア端部
3 フィルム
4 接続治具
5a、5b 隙間
6 真空容器
7 受台
8 真空ポンプ
9 加熱ヒータ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向長さがフィルムの幅よりも短いコア本体部と、コア本体部の両端に接続された1対のコア端部とからなる円筒状のフィルム巻取りコアであって、コア本体部はコア端部と同じ外径を有し且つ軸方向に沿って分割された複数の円弧状コア部材からなり、コア端部の内周面側から着脱可能に接続されると共に、軸方向に沿って分割された複数の円弧状コア交換部材に付け替えることができ、該複数の円弧状コア部材と付け替えてコア端部に接続された該複数の円弧状コア交換部材は、全体の外径がコア端部の外径よりも小さく且つ内周側と外周側の間で通気性を有することを特徴とするフィルム巻取りコア。
【請求項2】
前記円弧状コア交換部材の円弧長さが前記円弧状コア部材の円弧長さよりも短く、コア端部に接続された各円弧状コア交換部材の間に隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム巻取りコア。
【請求項3】
前記円弧状コア交換部材は、その全体又は一部に、細孔、スリット、メッシュの少なくと1種が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム巻取りコア。
【請求項4】
前記コア端部に接続された前記複数の円弧状コア交換部材の内周側中空部に、加熱ヒータを配置することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム巻取りコア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム巻取りコアを用い、連続排気可能な真空容器内でフィルムに含まれる水分を除去するロール状フィルムの乾燥方法であって、複数の円弧状コア部材からなるコア本体部を備えたフィルム巻取りコアにフィルムをロール状に巻取った後、該複数の円弧状コア部材を複数の円弧状コア交換部材に付け替え、真空容器内において連続的に真空排気を行うことを特徴とするロール状フィルムの乾燥方法。
【請求項6】
前記コア端部に接続された複数の円弧状コア交換部材の内周側中空部に加熱ヒータを配置し、該加熱ヒータでロール状フィルムを内周側から加熱することを特徴とする、請求項5に記載のロール状フィルムの乾燥方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−131377(P2007−131377A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324328(P2005−324328)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】