説明

フィルム蓄積システム

【課題】フィルムに折れや皺が生じることを防止するフィルム蓄積システムを提案する。
【解決手段】アンワインダ装置18の巻出リール17aから供給されたフィルムにU字形部分を形成して蓄積するフィルム蓄積装置107は、フィルム供給側に配設された吸引式フィルム送給装置120と、フィルム排送側に配設された吸引式フィルム排送装置130とを含む。吸引式フィルム送給装置120は、フィルムのU字形部分の一側面の送給側ガイド面、当該一側面を吸引する送給側吸引部、前記一側面部分を搬送する搬送ベルト127を含み、吸引式フィルム排送装置130は、フィルムのU字形部分の他の側面の排送側ガイド面、当該他の側面を吸引する排送側吸引部131を含み、送給側吸引部は、排送側吸引部131と対向する下流側吸引部と、排送側吸引部131よりもフィルム搬送方向上流側に張り出す上流側吸引部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを使用してシートに加工を施すフィルム転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム転写装置には、Cast & Cure と呼ばれる成型硬化技術やコールド・フォイルと呼ばれる技術を用いたものがある。これらの技術はシートに対して美麗効果を付与する技術である。Cast & Cure 技術は、ホログラム・エンボス加工が施されているフィルムを、UV(ultraviolet)硬化性樹脂がコーティングされたシート上に圧接しながら硬化させて、ホログラム効果等を成型するものである。また、コールド・フォイル技術は、接着剤が印刷されたシート上に、箔が蒸着されたフィルムを圧接することにより、箔をシート上に転写する技術である。このような印刷物に対して美麗効果を付与するフィルム転写装置の性能改善が盛んに行われている。
【0003】
例えば、枚葉紙に対して印刷を行い、あわせてコールド・フォイル(冷間箔転写)およびエンボス加工を行うことができる装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、枚葉紙に対して印刷を行い、ニス面に対してフィルムの模様を転写する Cast & Cure 技術により例えばLCコートやトランスタバックと呼ばれるホログラム・エンボス加工を行うことができる装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
フィルム転写装置で用いられる巻出リールは、フィルムを巻いて巻出リールに仕上げる際に、さらに物流過程で保管および運送される際に、偏心が生じたり、真円と比較して歪んだりするので、非円形になってしまう。このため、フィルム転写装置のアンワインダ装置(巻出装置)にこのような巻出リールをセットしてシート搬送速度と一致するように巻出リールを回転させても、巻出リールから巻出されるフィルムの送給速度がばらつき、フィルムの送給速度がシートの搬送速度と必ずしも一致せず誤差が生じてしまう。
【0005】
慣性の小さな巻出リールを低速で回転させてフィルムを繰り出す場合には、フィルムの送給速度とシートの搬送速度との誤差を小さく制御することが可能である。しかし、巻出リールの巻径や幅がより大きい場合には、慣性が大きく影響し、アンワインダ装置による回転制御がフライホイール効果により緩慢になるため、その誤差を制御により減少させることが困難である。さらに、アンワインダ装置によりフィルムを繰り出す送給速度が高速になると、アンワインダ装置による緩慢な回転制御の性能限界が一段と大きく影響してしまう。
【0006】
フィルム転写装置のフィルム転写胴と圧胴との間で行われる転写の押圧作用点(ニップ)においては、圧胴上のシートとフィルムとが重ね合わされ、両者の速度が一致しなくてはならない。しかし、前述の通り、フィルムの送給速度とシートの搬送速度とを完全に一致させるために、アンワインダ装置による回転制御だけでは十分ではない。このため、フィルムの送給速度とシートの搬送速度とを完全に一致させるために、巻出リールから繰り出されるフィルムを一時蓄積し、そこからフィルムをシートの搬送速度と同速度でニップ部分へ供給するためのフィルム蓄積装置が必要になる。
【0007】
フィルム蓄積装置では、フィルム蓄積装置の中でフィルムにU字形部分を形成することによりフィルムを蓄積し、巻出リールから繰り出されるフィルムの長さと、ニップ部分を通過していくフィルムの長さとの差を緩和および吸収する方法が一般に実用化されている。U字形部分は、一側面をなす平面部分と、これと対向する他の側面をなす平面部分と、両側面の間の底面をなす半円形の円弧状部分とからなる。底面が折れ曲がることなく、一側面と底面と他の側面とが連続して、U字形部分が形成される。
【0008】
このようなU字形部分を形成する方式には、ダンサーローラーを用いる方式(特許文献1)や、空力装置を用いる方式がある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−296448号公報
【特許文献2】特開2006−315229号公報
【特許文献3】US6,230,616 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで上述したフィルム蓄積装置においては、フィルムの蓄積量が変動してU字形部分の長さも変動するため、特許文献3においては、当該フィルムのU字形部分のうち、円弧領域を成していない平面部を吸引してフィルムに折れや皺等の不具合を生じさせることなく、安定したU字形状を維持できるようにしたフィルム蓄積装置を備えている。
【0011】
フィルム蓄積装置においては、一段と高速、かつ安定したフィルムの繰り出しを実現するため、フィルム蓄積装置内へフィルムを確実に引き込むことが必要となり、そのためにはフィルムのU字形部分に対する安定した吸引力が必要になる。
【0012】
しかしながらフィルム蓄積装置においては、フィルムのU字形部分が長くなったり、短くなったりするため、当該フィルムのU字形部分の吸引面積が変動して吸引力も大きく変動し、U字形部分のU字形状が乱れ、フィルムに折れや皺が生じてしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、フィルムに折れや皺が生じることを防止するフィルム蓄積システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、本発明は、フィルムが巻かれた巻出リールを回転自在に支持し、前記巻出リールからフィルムを巻き出すアンワインダ装置と、前記アンワインダ装置から供給されたフィルムにU字形部分を形成してフィルムを蓄積するフィルム蓄積装置とを備え、前記フィルム蓄積装置は、前記アンワインダ装置からフィルムが供給される側に配設された吸引式フィルム送給装置と、フィルムが排送される側に配設された吸引式フィルム排送装置とを含み、前記吸引式フィルム送給装置は、フィルムのU字形部分の一側面に対向する送給側ガイド面を含み、当該一側面を吸引する送給側吸引部と、前記送給側吸引部とフィルムのU字形部分の一側面との間に配設され、フィルムのU字形部分の一側面部分を搬送する搬送ベルトとを含み、前記吸引式フィルム排送装置は、フィルムのU字形部分の他の側面に対向する排送側ガイド面を含み、当該他の側面を吸引する排送側吸引部を含み、前記送給側吸引部は、前記排送側吸引部と対向する下流側吸引部と、前記下流側吸引部のフィルム搬送方向上流側に設けられ、前記排送側吸引部よりもフィルム搬送方向上流側に張り出す上流側吸引部とを含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明においては、前記吸引式フィルム排送装置よりもフィルム排送方向下流側に設けられ、前記フィルム蓄積装置に蓄積されたフィルムを前記フィルム蓄積装置から引き出すインフィードローラとを備え、フィルムのU字形部分の他の側面部分は前記インフィードローラのみにより前記フィルム蓄積装置から引き出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルムのU字形部分のフィルム搬送方向上流側に張り出すように設けられた上流側吸引部により、フィルムのU字形部分が短くなった状態でも、フィルムを吸引している部分の面積を確保しながらU字形部分の供給側を確実に吸引しながら保持することによって、フィルムのU字形部分が長くなったり、短くなったりしたことに伴う吸引力変動による影響の度合いを少なくすることができると共に、上流側吸引部および下流側吸引部を含んだ送給側吸引部の全体を取り囲むように搬送ベルトが一体に取り付けられていることによりフィルムに対する吸引力及び引張力を付与し続けることができるので、フィルムに折れや皺のない綺麗な円弧状でなるU字形状を保持し得、かくして従来に比して一段と高速、かつ安定した状態でフィルムの折れや皺が生じることなくフィルムを繰り出すことができる。
【0017】
また本発明によれば、吸引式フィルム排送装置のフィルム搬送方向下流側に設けられたインフィードローラのみによってフィルムをフィルム蓄積装置から引き出すようにしたことにより、フィルムがフィルム蓄積装置から引き出される際、フィルムは搬送ベルトによる外乱が無くなるので、インフィードローラによる微細なスピード制御だけを直接的にフィルムの排送に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である箔転写ユニットを含む枚葉輪転印刷機の全体構成を示す側面図である。
【図2】箔転写ユニットの構造を示す側面図である。
【図3】空力式蓄積装置の構成を示す斜視図である。
【図4】空力式蓄積装置の構成を示す前面図である。
【図5】空力式蓄積装置の断面構成を示す断面図である。
【図6】空力式蓄積装置の構成を示す背面図である。
【図7】空力式蓄積装置、吸引式フィルム送給装置および吸引式フィルム排送装置の構成を示す側面図である。
【図8】空力式蓄積装置、吸引式フィルム送給装置および吸引式フィルム排送装置の構成を示す側面図である。
【図9】吸引力制御および巻出量制御を行うための装置構成(1)を示す略線図である。
【図10】吸引力制御および巻出量制御を行うための装置構成(2)を示す略線図である。
【図11】吸引力制御および巻出量制御を行うための回路構成を示すブロック図である。
【図12】フィルム蓄積状態検出装置の構成を示すブロック図である。
【図13】コンピュータの構成を示すブロック図である。
【図14】コンピュータによって実現される機能部を示すブロック図である。
【図15】巻出量制御処理手順を示すフローチャートである。
【図16】初期条件および運転後条件のパラメータに対応した吸引力制御パターンを示す図表である。
【図17】初期条件のパラメータの組み合わせを考慮した吸引力制御パターンを示す図表である。
【図18】運転後条件のパラメータの組み合わせを考慮した吸引力制御パターンを示す図表である。
【図19】吸引力制御処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明のフィルム転写装置が枚葉輪転印刷機に利用された場合の実施の形態について説明する。
【0020】
(1)枚葉輪転印刷機の全体構成
図1に示される枚葉輪転印刷機1は、紙などのシート2を供給するシート供給装置としての給紙装置3と、シート2に対して接着剤を転写する接着剤転写ユニット4と、シート2に対して箔を転写する箔転写ユニット(枚葉輪転式フィルム転写加工装置)5と、シート2に対して印刷を施す5組の印刷ユニット6a〜6eからなる印刷部6と、シート2に対してニスを塗布するニスコーティングユニット7と、乾燥ユニット8と、シート2に対してエンボス加工を施すエンボス加工ユニット9と、シート2を排出するシート排出装置としての排紙装置10とを備えている。
【0021】
給紙装置3には、シート2を渡し胴12へ一枚ずつ供給するフィーダボード11が設けられている。
【0022】
接着剤転写ユニット4は、周面に版が装着された版胴22と、版胴22に対接するゴム胴23と、版胴22の直径の2倍の直径を有し,ゴム胴23に対向して配設され,シート2を保持して搬送する圧胴27とを備えている。圧胴27のシート搬送方向上流側に渡し胴12が対接し、圧胴27のシート搬送方向下流側に渡し胴28が対接している。
【0023】
箔転写ユニット5は、接着剤転写ユニット4のシート搬送方向下流側に配設されている。箔転写ユニット5は、回転自在に支持され周面にブランケットが装着されたフィルム転写胴20と、フィルム転写胴20の直径の2倍の直径を有し,フィルム転写胴20に対向して配設され、シート2を保持して搬送する圧胴29と、後述するリールスタンド部5aおよびフィルム蓄積部5bとを備えている。圧胴29のシート搬送方向上流側に渡し胴28が対接し、圧胴29のシート搬送方向下流側に渡し胴30が対接している。箔転写ユニット5は、接着剤が印刷されたシート2上に、箔が蒸着されたフィルム17を圧接することにより、箔をシート2上に転写するコールド・フォイル・スタンプ加工を行う。この箔転写ユニット5が、本発明のフィルム転写装置の一実施の形態である。
【0024】
印刷部6は、箔転写ユニット5のシート搬送方向下流側に配設されている。5組の印刷ユニット6a〜6eは、それぞれ、周面に版が装着された版胴13a〜13eと、版胴13a〜13eにそれぞれ対接したゴム胴14a〜14eと、版胴13a〜13eの直径の2倍の直径を有し、ゴム胴14a〜14eに対向して配設され,シート2を保持して搬送する圧胴15a〜15eとを備えている。圧胴15a〜15eには渡し胴30、31、32、33、34、35が接続されている。最後段の印刷ユニット6eは、圧胴15eに対向して配設され、圧胴15eに保持されたシート2に対して紫外線を照射するUVランプ24を備えている。
【0025】
ニスコーティングユニット7は、印刷部6のシート搬送方向下流側に配設されている。ニスコーティングユニット7は、周面に版が装着されたニス供給胴25と、ニス供給胴25の直径の2倍の直径を有し、ニス供給胴25に対向して配設され、シート2を保持して搬送する圧胴36とを備えている。圧胴36のシート搬送方向上流側に渡し胴35が対接し、圧胴36のシート搬送方向下流側に渡し胴37が対接している。
【0026】
乾燥ユニット8は、ニスコーティングユニット7のシート搬送方向下流側に配設されている。乾燥ユニット8は、渡し胴38と、渡し胴38に対向して配設され、渡し胴38に保持されたシート2に対して紫外線を照射する三個のUVランプ26とを備えている。渡し胴38のシート搬送方向上流側に渡し胴37が対接し、渡し胴38のシート搬送方向下流側に渡し胴39が対接している。
【0027】
エンボス加工ユニット9は、乾燥ユニット8のシート搬送方向下流側に配設されている。エンボス加工ユニット9は、周面にエンボス版が装着されたエンボッシング胴92と、エンボッシング胴92の直径と同じ直径を有し、エンボッシング胴92に対向して配設され、シート2を保持して搬送するカウンタ胴91とを備えている。カウンタ胴91のシート搬送方向上流側に渡し胴39が対接し、カウンタ胴91のシート搬送方向下流側に渡し胴95が対接している。
【0028】
排紙装置10は、エンボス加工ユニット9のシート搬送方向下流側に配設されている。排紙装置10は、排紙胴97と、排紙胴97と同軸上に設けられたスプロケット(図示せず)と、排紙装置10の後端部に設けられたスプロケット98と、これら2つのスプロケットの間に張架され、シート2を保持する爪竿(図示せず)を備えた排紙チェーン99と、シート2が積載される排紙パイルとを備えている。排紙胴97のシート搬送方向上流側に渡し胴96が対接し、渡し胴96のシート搬送方向上流側に渡し胴95が対接している。
【0029】
(2)箔転写ユニットの構成
上述したとおり、箔転写ユニット5は、フィルム転写胴20と、圧胴29と、リールスタンド部5aと、フィルム蓄積部5bとを備えている。図2に示されるように、リールスタンド部5aは、フィルム転写胴20の鉛直方向上方に配置されている。フィルム蓄積部5bは、リールスタンド部5aとフィルム転写胴20との間、すなわち、フィルム転写胴20の鉛直方向上方かつリールスタンド部5aの鉛直方向下方に配置されている。換言すると、フィルム転写胴20の真上にフィルム蓄積部5bが設けられ、フィルム蓄積部5bの真上にリールスタンド部5aが設けられている。なお、本明細書では、「鉛直方向」を「水平面に対して垂直な方向」という意味で用いる。
【0030】
(2−1)リールスタンド部の構成
図2に示されるように、リールスタンド部5aは、アンワインダ装置18と、超音波センサ16と、リワインダ装置19とを備えている。
【0031】
アンワインダ装置18は、フィルム17がリール状に巻かれた巻出リール17aを回転自在に支持し、巻出リール17aからフィルム17を巻き出す。アンワインダ装置18は、巻出リール17aを回転駆動する巻出リール駆動モータ208を備えている(図11参照)。フィルム17には、シート2に転写される箔が蒸着されている。
超音波センサ16は、アンワインダ装置18の巻出リール17aに対向して配設され、巻出リール17aに巻き取られているフィルム17の最外周の表面までの距離を測定する。
【0032】
リワインダ装置19は、巻取リール17bを回転自在に支持し、アンワインダ装置18の巻出リール17aから巻き出されてフィルム転写胴20を経由したフィルム17を巻取リール17bに巻き取る。つまり、リワインダ装置19は、箔がシート2へ転写された後のフィルム17を巻き取る。
【0033】
(2−2)フィルム蓄積部の構成
図2に示されるように、フィルム蓄積部5bは、アンワインダ装置18のフィルム走行方向下流側かつフィルム転写胴20のフィルム走行方向上流側に配設されている。フィルム蓄積部5bは、フィルム蓄積装置107と、複数のガイドローラとを備えている。
【0034】
フィルム蓄積装置107は、リールスタンド部5aのアンワインダ装置18から供給されたフィルム17にU字形部分を形成して、フィルム17を蓄積するシステムである。フィルム蓄積装置107は、フィルム17が供給されてから排送されるまでの間の部分をU字状にして、内部に一時的に滞留させるバッファとして機能する。ここで「U字形」とは、フィルム蓄積装置107に蓄積されたフィルム17を、図2の正面から見た形状である。フィルム17は帯状のものであるから、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分は、一側面(供給側の側面)をなす平面部分と、これと対向する他の側面(排送側の側面)をなす平面部分と、両側面の間の底面をなす円弧状部分(底部)とからなる。
【0035】
フィルム蓄積装置107は、空力式蓄積装置100と、吸引式フィルム送給装置120と、吸引式フィルム排送装置130と、インフィードローラ110とを含む。
吸引式フィルム送給装置120は、アンワインダ装置18からフィルム蓄積装置107にフィルム17が供給される側に配設され、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の一側面を吸引保持して搬送する。
吸引式フィルム排送装置130は、インフィードローラ110によりフィルム蓄積装置107からフィルム17が排送される側に配設され、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の他の側面を吸引保持する。
フィルム17のU字形部分の一側面が他の側面と平行に対向するように、吸引式フィルム送給装置120が吸引式フィルム排送装置130と対向して配置される。
【0036】
空力式蓄積装置100は、吸引式フィルム送給装置120と吸引式フィルム排送装置130との間に配設され、フィルム蓄積装置107に蓄積されるフィルム17に円弧状部分を形成し維持する。
インフィードローラ110は、吸引式フィルム排送装置130の鉛直方向上方に配設され、回転駆動されることにより、フィルム蓄積装置107に蓄積されたフィルム17を引き出してフィルム転写胴20に送る。
吸引式フィルム送給装置120がフィルム17の走行方向上流側に配置され、吸引式フィルム排送装置130が吸引式フィルム送給装置120のフィルム走行方向下流側に配置され、インフィードローラ110が吸引式フィルム排送装置130のさらにフィルム走行方向下流側に配置される。
【0037】
(2−2−1)空力式蓄積装置の構成
図2乃至図8に示されるように、空力式蓄積装置100は、エアーブロー装置101と、引込装置102とを備えている。
エアーブロー装置101は、空力式蓄積装置100の上部に配設され、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の底部に向けて上方から鉛直方向下方へ送風する。
【0038】
図3および図4に示されるように、エアーブロー装置101には、機械の幅方向(すなわちフィルム17の幅方向)に沿って直列に、合計6個のエア流路であるダクトホース継手101a〜101fが設けられている。図3および図4の紙面に向かって左側のダクトホース継手101a〜101cの入口は左の外方へ向けられ、右側のダクトホース継手101d〜101fの入口は右の外方へ向けられ、それぞれ図示しないブロワに接続されている。
図5に示されるように、ダクトホース継手101a〜101fの出口の直下には、鉛直方向下方へ向けられたハニカム状の整流部103が設けられている。この整流部103により、ダクトホース継手101a〜101fから吹き出される空気が鉛直方向下方へ向かう層流になる。
【0039】
引込装置102は、空力式蓄積装置100の下部におけるエアーブロー装置101と対向する位置に配設され、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の底部を鉛直方向下方へ吸引する。
引込装置102は、図3〜図5に示されるような吸引箱である。フィルム17と対向する面は凹んだ円弧状に形成され、その面に複数の吸気孔が設けられている。引込装置102は、図示しない吸引源に接続されている。本実施例では、フィルム17の幅方向に2つの引込装置102が並設されている。
【0040】
図3および図5に示されるように、空力式蓄積装置100には、フィルム17の両端の位置に、2枚の仕切板105,106が対向するように配設されている。仕切板105、106は、フィルム17の幅方向に延設されたガイドレール145にそれぞれ脚部105a、106aを介してスライド自在に支持されている。したがって、仕切板105、106の間隔は、フィルム17の幅に合わせて変更し得る。
【0041】
なお、図7および図8に示されるように、エアーブロー装置101に、フィルム17の箔蒸着面である表(おもて)面に発生する静電気を除去する静電気除去装置142が配置されている。また、吸引式フィルム送給装置120のフィルム走行方向上流側に、フィルム17の裏面に発生する静電気を除去する静電気除去装置141が配置されている。
【0042】
(2−2−2)吸引式フィルム送給装置の構成
図7および図8に示されるように、吸引式フィルム送給装置120は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の一側面、すなわちアンワインダ装置18から供給される側の側面を吸引保持する送給側吸引部121を備えている。送給側吸引部121は、フィルム17のU字形部分の一側面に対向し、フィルム17を案内する送給側ガイド面121gを有する。
送給側吸引部121は、フィルム搬送方向下流側に配設された下流側吸引部としての送給側吸引部121Loと、送給側吸引部121Loのフィルム搬送方向上流側に配設された上流側吸引部としての送給側吸引部121Upとから構成される。すなわち、送給側吸引部121Loが下側に配置され、送給側吸引部121Upが上側に配置される。
【0043】
図7〜図9に示されるように、下側の送給側吸引部121Loは、フィルム17の走行方向に複数(本実施例においては3つ)に分割された送給側吸引室121a〜121cからなる。送給側吸引室121a〜121cのそれぞれは、フィルム17の幅方向にさらに2分割されている。送給側吸引室121a〜121cは、個別に吸引力の調整が可能である。
同じく、上側の送給側吸引部121Upは、フィルム17の走行方向に複数(本実施例においては3つ)に分割された送給側吸引室121d〜121fからなる。送給側吸引室121d〜121fのそれぞれは、フィルム17の幅方向にさらに2分割されている。
図7および図8に示されるように、送給側吸引室121d〜121fおよび送給側吸引室121a〜121cは、フィルム17の走行方向に連続して並べて配置され、送給側ガイド面121gとなる平面を形成する。
【0044】
図3乃至図6に示されるように、下側の送給側吸引部121Loの幅方向の両端部に、送給側吸引室121a〜121cと対応したダクトホース継手122a〜122cが設けられている。ダクトホース継手122a〜122cは図9に示す送給側可変風量弁V1P〜V3Pにそれぞれ接続され、送給側可変風量弁V1P〜V3Pは図9に示す吸引用ブロワB1〜B3にそれぞれ接続されている。したがって、送給側吸引部121Loは、ダクトホース継手122a〜122cおよび送給側可変風量弁V1P〜V3Pを介して、吸引用ブロワB1〜B3に接続されている。
【0045】
図3乃至図6に示されるように、上側の送給側吸引部121Upの幅方向の両端部にも、送給側吸引室121d〜121fと対応したダクトホース継手122d〜122fが設けられている。ダクトホース継手122d〜122fは図9に示す送給側可変風量弁V4P〜V6Pにそれぞれ接続され、送給側可変風量弁V4P〜V6Pはすべて図9に示す単一の吸引用ブロワB4に接続されている。したがって、送給側吸引部121Upは、ダクトホース継手122d〜122fおよび送給側可変風量弁V4P〜V6Pを介して、吸引用ブロワB4に接続されている。
そして、下側の送給側吸引部121Loおよび上側の送給側吸引部121Upの送給側ガイド面121gには、吸引用に多数の小孔120aが形成されている。
【0046】
図7および図8に示されるように、吸引式フィルム送給装置120は、下側の送給側吸引部121Loの下方に配置されたベルト駆動ローラ124、テンションローラ125、従動ローラ126と、上側の送給側吸引部121Upの上方に配置された従動ローラ123と、ローラ123〜126を介して送給側吸引部121Upおよび送給側吸引部121Loの周囲を取り囲むように取り付けられた搬送ベルト127とを更に備えている。搬送ベルト127は、通気性を有するベルトであり、送給側ガイド面121gに形成された多数の小孔120aを覆っている。
【0047】
(2−2−3)吸引式フィルム排送装置の構成
図7および図8に示されるように、吸引式フィルム排送装置130は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の他の側面、すなわちインフィードローラ110により排送される側の側面を吸引保持する排送側吸引部131を備えている。排送側吸引部131は、フィルム17のU字形部分の他の側面に対向し、フィルム17を案内する排送側ガイド面131gを有する。
【0048】
排送側吸引部131は、下側のフィルム搬送方向下流側の送給側吸引部121Loのみと対向する。つまり、上側の送給側吸引部121Upは排送側吸引部131と対向しない。したがって、上側の送給側吸引部121Upは、排送側吸引部131よりもフィルム搬送方向上流側に張り出している。言い換えると、吸引式フィルム送給装置120は、吸引式フィルム排送装置130よりもフィルム搬送方向上流側に張り出し、上方に突出するように、吸引式フィルム排送装置130と対向している。
排送側吸引部131の排送側ガイド面131gは、送給側吸引部121の送給側ガイド面121gとほぼ平行である。
【0049】
図7、図8および図10に示されるように、下側の送給側吸引部121Loと同様に、排送側吸引部131は、フィルム17の走行方向に複数(本実施例においては3つ)に分割された排送側吸引室131a〜131cからなる。排送側吸引室131a〜131cのそれぞれは、フィルム17の幅方向にさらに2分割されている。排送側吸引室131a〜131cは、フィルム17の走行方向に連続して並べて配置され、排送側ガイド面131gとなる平面を形成する。排送側吸引室131a〜131cは、個別に吸引力の調整が可能である。
【0050】
図3〜図6に示されるように、排送側吸引室131a〜131cには、ダクトホース継手132a〜132cが設けられている。ダクトホース継手132a〜132cは図10に示す排送側可変風量弁V1E〜V3Eにそれぞれ接続され、排送側可変風量弁V1E〜V3Eは図10に示す吸引用ブロワB5〜B7にそれぞれ接続されている。そして、排送側吸引部131の排送側ガイド面131gには、吸引用に多数の小孔(図示せず)が形成されている。
【0051】
なお、吸引式フィルム排送装置130には、吸引式フィルム送給装置120のような搬送ベルト127は存在せず、吸引式フィルム排送装置130はフィルム17の吸引のみを行う。アンワインダ装置18、吸引式フィルム送給装置120と吸引式フィルム排送装置130とを含むフィルム蓄積装置107によりフィルム蓄積システムが構成される。
【0052】
(2−2−4)吸引力制御機構および巻出量制御機構
図12に示されるように、箔転写ユニット5は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積状態を検出するフィルム蓄積状態検出装置300を備えている。フィルム蓄積状態検出装置300は、フィルム位置検出部310と、振れ速度検出部320と、振れ幅検出部330とを含む。
【0053】
フィルム位置検出部310は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の有無を検出して、フィルム17のU字形部分の底部の位置を検出し、その検出結果を出力する。フィルム位置検出部310は、図7および図8に示される複数の投受光式の光電センサPES1〜PES5と、複数のリフレクター(反射板)M1〜M5とを含む。
光電センサPES1〜PES4は、フィルム蓄積装置107の排送側吸引室131a〜131cに、フィルム17の走行方向に間隔を空けて配設されている。光電センサPES5は、最下段の光電センサPES4の更に下側、すなわち排送側吸引室131a〜131cよりも下側に配設されている。
リフレクターM1〜M4は、送給側吸引室121a〜121cに、光電センサPES1〜PES4と対向して配設されている。リフレクターM5は、光電センサPES5と対向する位置に配設されている。
【0054】
図7および図8を参照して、光電センサPES1〜PES4およびリフレクターM1〜M4の位置を具体的に説明する。光電センサPES1およびリフレクターM1は、排送側吸引室131aおよび送給側吸引室121aの上側部分に位置付けられている。光電センサPES2およびリフレクターM2は、排送側吸引室131aおよび送給側吸引室121aおよび下側部分に位置付けられている。光電センサPES3は排送側吸引室131bと131cとの境界部分、リフレクターM3は送給側吸引室121bと121cとの境界部分に位置付けられている。光電センサPES4およびリフレクターM4は、排送側吸引室131cおよび送給側吸引室121cの下側部分に位置付けられている。
【0055】
振れ速度検出部320は、所定時間内に巻出リール17aからフィルム17が巻き出される巻出量と上記所定時間内にフィルム蓄積装置107からフィルム17が排出される排出量とに基づいて、単位時間当たりのフィルム蓄積変化量を算出し、算出結果をフィルムの振れ速度として出力する。振れ速度検出部320は、振れ速度の算出に使用される検出器(図11の超音波センサ16、巻出リール駆動検出器205、インフィードローラ駆動検出器206およびロータリエンコーダ209)と、後述するコンピュータ40(図14)により実現される振れ速度算出部321とを含む。
【0056】
振れ幅検出部330は、光電センサPES1〜PES5の検出結果に基づいて、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の円弧状部分の最大移動量を算出し、算出結果を振れ幅として出力する。振れ幅検出部330は、振れ幅の算出に使用される検出器(タイマー207)と、コンピュータ40により実現される振れ幅算出部331とを含む。
【0057】
箔転写ユニット5は、図13に示されるコンピュータ40を備えている。コンピュータ40は、CPUなどの処理装置401と、メモリなどの記憶装置402と、I/Oインタフェース403とを具備している。処理装置401は、光ディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体404に記録されたプログラム405を読み出し、このプログラム405を実行することにより、図14に示される振れ速度算出部321、振れ幅算出部331、モータ制御部510および吸引力制御部520を実現する。このうち、モータ制御部510および吸引力制御部520により、制御装置50が構成される。
【0058】
モータ制御部510は、上述したフィルム位置検出部から出力される検出結果に基づいて、巻出リール17aを回転駆動する巻出リール駆動モータ208を制御する。
吸引力制御部520は、初期条件や運転中におけるフィルム17の蓄積状態に応じて、吸引式フィルム送給装置120の送給側吸引部121および吸引式フィルム排送装置130の排送側吸引部131の吸引力を制御する。
【0059】
図9に示されるように、制御装置50はインバータIV1を介して吸引用ブロワB1〜B3に接続され、インバータIV2を介して吸引用ブロワB4に接続されている。また、図10に示されるように、制御装置50はインバータIV3を介して吸引用ブロワB5〜B7に接続されている。制御装置50の吸引力制御部520は、吸引用ブロワB1〜B7の出力を個別に調整し得る。
【0060】
図11に示されるように、制御装置50には、設定値入力部201が接続されている。設定値入力部201には、枚葉輪転機1の運転速度(以下、これを機械回転速度という。)202、アンワインダ装置18に取り付けられたフィルム17のフィルム幅203、箔が転写されるシート2に対するフィルム17の幅方向の位置(以下、これをフィルム位置という。)204のそれぞれの設定値が入力される。なお、枚葉輪転機1の運転速度(機械回転速度)は、フィルム転写胴20の回転速度と読み替えることができる。
【0061】
また、制御装置50には、また、超音波センサ16、アンワインダ装置18に支持された巻出リール17aの回転数を検出する巻出リール駆動検出器205、インフィードローラ110の回転数を検出するインフィードローラ駆動検出器206、タイマー207、機械回転速度を検出する機械速度検出装置としてのロータリエンコーダ209、光電センサPES1〜PES5が接続されている。制御装置50には、さらに、巻出リール17aを回転させる巻出リール駆動モータ208、ベルト駆動ローラ124を回転させて搬送ベルト127を走行させる搬送ベルト駆動モータ210、インフィードローラ110を駆動するインフィード用モータ211が接続されている。
【0062】
(3)枚葉輪転印刷機の動作
給紙装置3からフィーダボード11上に一枚ずつ送給されたシート2は、渡し胴12を介して、接着剤転写ユニット4の圧胴27に受け渡される。ゴム胴23には版胴22上に形成された接着剤が転写されている。シート2がゴム胴23と圧胴27との間を通過するときに、シート2の表面にゴム胴23から接着剤が転写されることにより、シート2上に接着剤の絵柄が印刷される。
【0063】
接着剤の絵柄が印刷されたシート2は、渡し胴28を介して、箔転写ユニット5の圧胴29に受け渡される。シート2が箔転写ユニット5のフィルム転写胴20と圧胴29との間を通過するときに、フィルム転写胴20によりフィルム17がシート2の表面に押圧され、フィルム17上に蒸着された箔が、シート2上に接着剤が転写された部分に転写される。このようにして、シート2に対するコールド・フォイル・スタンプ加工が行なわれる。
【0064】
その後、シート2は渡し胴30を介して印刷部6の印刷ユニット6aの圧胴15aに受け渡される。ゴム胴14aには、版胴13a上に形成されたインキの絵柄が転写されている。シート2がゴム胴14aと圧胴15aとの間を通過するときに、シート2の表面にゴム胴15aからインキが転写され、シート2上にインキの絵柄が印刷される。シート2は、後続の印刷ユニット6b〜6eにおいても同様に印刷が施され、印刷部6において5色のインキで印刷される。
【0065】
印刷部6の最終の印刷ユニット6eで印刷されたシート2は、圧胴15e上でUVランプ24より紫外線が照射される。この紫外線により、シート2に印刷された紫外線硬化型の接着剤およびインキが硬化する。シート2上の接着剤が硬化することにより、この接着剤上に接着している箔もシート2に固着される。
【0066】
印刷部6で印刷されたシート2は、渡し胴35を介して、ニスコーティングユニット7の圧胴36に受け渡される。シート2がニス供給胴25と圧胴36との間を通過するときに、シート2の表面にニスが塗布される。
ニスコーティングユニット7でニスが塗布されたシート2は、渡し胴37を介して乾燥ユニット8の渡し胴38に受け渡され、この渡し胴38上で3つのUVランプ26により紫外線が照射される。この紫外線により、シート2に塗布された紫外線硬化型のニスが硬化する。
【0067】
乾燥ユニット8にて紫外線が照射されたシート2は、渡し胴39を介して、エンボス加工ユニット9のカウンタ胴91に受け渡される。シート2がエンボッシング胴92とカウンタ胴91との間を通過するときに、シート2にエンボス加工が施される。
エンボス加工ユニット9でエンボス加工されたシート2は、2つの渡し胴95,96を介して、排紙装置10の排紙胴97上で排紙チェーン99に設けられた爪竿(図示せず)に受け渡された後、排紙され、パイル状に積載される。
【0068】
(4)箔転写ユニットの動作
フィルム17は、リールスタンド部5aのアンワインダ装置18から所定の巻出速度で巻き出され、フィルム蓄積部5bの吸引式フィルム送給装置120、空力式蓄積装置100、吸引式フィルム排送装置130を経由して、インフィードローラ110によりフィルム転写胴20に送り出される。フィルム17がフィルム転写胴20と圧胴29との間を通過するときに、フィルム転写胴20によりフィルム17が押圧されることにより、フィルム17上に蒸着された箔がシート2の接着剤が印刷された箇所に転写される。箔が転写された後のフィルム17は、駆動ローラ111および複数のガイドローラを経由して、リワインダ装置19により巻き取られる。
【0069】
吸引式フィルム送給装置120においては、アンワインダ装置18から巻き出されたフィルム17が吸引式フィルム送給装置120の上側の送給側吸引部121Upに送られる。上側の送給側吸引部121Upでは、吸引用ブロワB4が小孔120aを介して空気を吸引することにより、送給側吸引室121d〜121fに吸引力が生じる。この吸引力が、通気性を有する搬送ベルト127の表面に作用するため、フィルム17が搬送ベルト127の表面に吸着される。そして、ベルト駆動ローラ124による搬送ベルト127の走行により、フィルム17が搬送ベルト127の表面に吸着された状態で、フィルム17が下側の送給側吸引部121Loに向けて搬送される。下側の送給側吸引部121Loにおいても同様に、吸引用ブロワB1〜B3により送給側吸引室121a〜121cに生じる吸引力が搬送ベルト127の表面に作用し、フィルム17が搬送ベルト127の表面に吸着されながら、空力式蓄積装置100の引込装置102に向けて搬送される。
【0070】
このように、吸引式フィルム送給装置120では、送給側吸引部121Up,121Loが搬送ベルト127を介してフィルム17のU字形部分の一側面を吸引した状態で、搬送ベルト127が走行することにより、フィルム17のU字形部分の一側面部分が保持されながら、空力式蓄積装置100へ搬送される。
【0071】
空力式蓄積装置100では、吸引式フィルム送給装置120から搬送されるフィルム17に対して、エアーブロー装置101が箔蒸着面であるフィルム表(おもて)面に向かって鉛直方向下方へ空気を吹き付けると同時に、引込装置102がフィルム裏面を鉛直方向下方へ吸引する。これにより、フィルム蓄積装置100内の空間で、フィルム17に対して非接触で、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が形成され維持される。
【0072】
フィルム蓄積装置107においてフィルム17がU字形にされる前に、静電気除去装置141が、フィルム17の裏面に発生する静電気を除去する。また、空力式蓄積装置100内の空間でフィルム17がU字形にされているときに、静電気除去装置142が、フィルム17の表(おもて)面に発生する静電気を除去する。これにより、フィルム17に静電気による折れや皺の発生が防止される。
【0073】
吸引式フィルム排送装置130では、吸引用ブロワB5〜B7が小孔を介して空気を吸引することにより、排送側吸引室131a〜131cに吸引力が生じ、フィルム17が排送側吸引室131a〜131cの排送側ガイド面131gに吸着される。フィルム17はインフィードローラ110の回転のみによって鉛直方向上方へ引っ張り上げられる。これにより、排送側吸引室131a〜131cがフィルム17のU字形部分の他の側面を保持しながら、フィルム17がフィルム蓄積装置107から排出され、フィルム転写胴20へ供給される。
【0074】
(5)制御装置による制御
フィルム蓄積装置107においては、フィルム17の走行速度がシート2の搬送速度と一致するように、インフィードローラ110のおよび駆動ローラ111の駆動が制御される。本実施例において、「シート2の搬送速度」とは、シート2への転写箇所におけるシート2の搬送速度、すなわちフィルム転写胴20と圧胴29との対接箇所におけるシート2の搬送速度のことである。したがって、制御装置50が、ロータリエンコーダ209で検出された機械回転速度に基づいて、インフィードローラ110のインフィード用モータ211および駆動ローラ111の駆動モータ(図示せず)を制御する。
【0075】
アンワインダ装置18においても、フィルム17の送給速度がシート2の搬送速度と等しくなるように、巻出リール駆動モータ208の駆動が制御される。しかし、巻出リール17a自体が偏心していたり真円ではなく歪んでいたりすることによるフィルム17の送給速度の誤差により、図7および図8に示されるように、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積量が変化する。図7には、フィルム蓄積量が多い状態が示されており、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が下側の送給側吸引部121Loおよび排送側吸引部131よりも下方にある。また、図8には、フィルム蓄積量が少ない状態が示されており、円弧状部分が下側の送給側吸引部121Loおよび排送側吸引部131の上部にある。このように、枚葉輪転印刷機1の運転中に、フィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置は時々刻々変化する。
【0076】
フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積量が時々刻々変化したとしても、フィルム17に折れや皺が発生しないように、特にフィルム17の円弧状部分の形状が維持されなければならない。このため、制御装置50は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積量すなわちフィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置に基づいて、巻出しリール駆動モータ208を制御して巻出リール17aからのフィルム17の巻出し量を調整してフィルム17の円弧状部分を所望の位置へ位置付けたり、下側の送給側吸引部121Loの送給側吸引室121a〜121cおよび吸引式フィルム排送装置130の排送側吸引室131a〜131cにおける吸引力を制御してフィルム17のU字形部分の両側面を確実に保持する。
【0077】
(5−1)巻出量の調整
次に、制御装置50によるアンワインダ装置18からのフィルム17の巻出量の調整について説明する。
制御装置50は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の底部である円弧状部分が、送給側吸引室121cと排送側吸引室131cとの間、より正確には光電センサPES3とPES4との間に位置付けられるように、アンワインダ装置18の巻出リール駆動モータ208を制御し、フィルム17の巻出量を調整する。この制御は、図15に示されるルーチンRT1にしたがって行われる。
【0078】
まず、ステップS11において制御装置50のモータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208を標準モータ回転数r0で駆動する。標準モータ回転数r0は、巻出リール駆動モータ208の基準回転数であり、超音波センサ16の検出結果に基づいて算出された巻出リール17aの直径(または半径)と、ロータリエンコーダ209で検出された枚葉輪転印刷機1の運転速度に基づいて算出される。したがって、標準モータ回転数r0は、巻出リール17aの直径と枚葉輪転印刷機1の運転速度によって変化する。巻出リール駆動モータ208を標準モータ回転数r0で駆動することにより、シート2の搬送速度と同じ速度で、フィルム17が巻出リール17aから巻き出される。
【0079】
ステップS12においてモータ制御部510は、光電センサPES3の出力に基づいて、光電センサPES3によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。光電センサPES3によりフィルム17が検出された場合(YES)は、フィルム17のU字形部分が少なくとも送給側吸引室121bと排送側吸引室131bの間に存在していることを表している。
【0080】
この場合、ステップS13においてモータ制御部510は、光電センサPES4の出力に基づいて、光電センサPES4によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。ここで、光電センサPES4によりフィルムが検出されない場合(NO)は、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が光電センサPES3とPES4との間の適正な位置に位置付けられ、フィルム17のU字形部分の一側面(供給側の側面)が送給側吸引室121a、121bの範囲でしっかりと吸着されると共に、フィルム17のU字形部分の他の側面(排送側の側面)が排送側吸引室131a、131bの範囲でしっかりと吸着されていることを表している。この場合には、再度ステップS11へ戻り、モータ制御部510は巻出リール駆動モータ208を基準回転数である標準モータ回転数r0で駆動し続ける。
【0081】
これに対し、ステップS13においてセンサPES4によりフィルム17が検出された場合(YES)は、図7に示されるように、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が送給側吸引室121cと排送側吸引室131cとの間よりも下方に位置している可能性があり、円弧状部分が不適切な位置にあることを表している。したがって、円弧状部分が不安定になっている或は不安定になる可能性がある。
このため、ステップS14においてモータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208の回転数を標準モータ回転数r0から所定回転数r1だけ下げる(ステップS14)。これにより、巻出リール駆動モータ208は回転数r0−r1で駆動され、アンワインダ装置18の巻出リール17aからのフィルム17の巻出量が少なくなる。
【0082】
続いて、ステップS15においてモータ制御部510は、光電センサPES5の出力に基づいて、光電センサPES5によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。その結果、光電センサPES5によりフィルム17が検出されない場合(NO)には、再度ステップS13へ戻る。
【0083】
これに対し、ステップS15において光電センサPES5によりフィルム17が検出された場合(YES)は、フィルム17のU字形部分が送給側吸引室121cと排送側吸引室131cとの間を更に超えて、引込装置102の近くまで到達している或いは引込装置102に接触している可能性があり、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が不適切な位置にあることを表している。したがって、円弧状部分が不安定になっている或は不安定になる可能性がある。
【0084】
このため、ステップS16においてモータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208の回転数を標準モータ回転数r0から所定回転数r2だけ下げる。これにより、巻出リール駆動モータ208は回転数r0−r2で駆動され、アンワインダ装置18の巻出リール17aからのフィルム17の巻出量がステップS14における巻出量よりも更に少なくなる。
その後、再度ステップS15へ戻る。つまり、モータ制御部510は、光電センサPES5によりフィルム17が検出されなくなるまで、巻出リール駆動モータ208を回転数r0−r2で駆動する。
【0085】
一方、ステップS12において光電センサPES3によりフィルム17が検出されない場合(NO)は、フィルム17のU字形部分が送給側吸引室121bと排送側吸引室131bとの間に存在していない可能性があり、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が不適切な位置にあることを表している。したがって、円弧状部分が不安定になっている或は不安定になる可能性がある。
【0086】
この場合、ステップS17においてモータ制御部510は、光電センサPES2の出力に基づいて、光電センサPES2によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。光電センサPES2によりフィルム17が検出された場合(YES)は、フィルム17のU字形部分が少なくとも送給側吸引室121aと排送側吸引室131aとの間に存在しており、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が不適切な位置にあることを表している。したがって、円弧状部分が不安定になっている或は不安定になる可能性がある。
このため、ステップS18においてモータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208の回転数を標準モータ回転数r0から所定回転数r1だけ上げる。これにより、巻出リール駆動モータ208は回転数r0+r1で駆動され、アンワインダ装置18の巻出リール17aからのフィルム17の巻出量が多くなる。その後、再度ステップS12へ戻る。
【0087】
これに対し、ステップS17において光電センサPES2によりフィルム17が検出されない場合(NO)は、フィルム17のU字形部分が送給側吸引室121aと排送側吸引室131aとの間に存在していない可能性があることを表している。
この場合、ステップS19においてモータ制御部510は、光電センサPES1の出力に基づいて、光電センサPES1によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。光電センサPES1によりフィルム17が検出された場合(YES)は、フィルム17のU字形部分が少なくとも送給側吸引室121aと排送側吸引室131aとの間に存在しており、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が不適切な位置にあることを表している。したがって、円弧状部分が不安定になっている或は不安定になる可能性がある。
【0088】
このため、ステップS20においてモータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208の回転数を標準モータ回転数r0から所定回転数r2だけ上げる。これにより、巻出リール駆動モータ208は回転数r0+r2で駆動され、アンワインダ装置18の巻出リール17aからのフィルム17の巻出量がステップS18における巻出量よりも更に多くなる。その後、再度ステップS17へ戻る。
【0089】
これに対し、ステップS19において光電センサPES1によりフィルム17が検出されない場合(NO)は、フィルム17のU字形部分が送給側吸引室121aと排送側吸引室131aとの間にも存在していないことを表している。
この場合、ステップS21においてモータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208の回転数を標準モータ回転数r0から所定回転数r3だけ上げる。これにより、巻出リール駆動モータ208は回転数r0+r3で駆動され、アンワインダ装置18の巻出リール17aからのフィルム17の巻出量がステップS18およびS20における巻出量よりも更に多くなる。
【0090】
その後、再度ステップS19へ戻る。つまり、モータ制御部510は、光電センサPES1によりフィルム17が検出されるまで、巻出リール駆動モータ208を回転数r0+r3で駆動する。なお、r1とr2とr3との関係は、r1<r2<r3である。
【0091】
このように、モータ制御部510は、巻出リール駆動モータ208を回転数r0、r0−r1、r0−r2、r0+r1、r0+r2、r0+r3の6段階で駆動して、フィルム蓄積部107におけるフィルム17のU字形部分の一側面および他の側面がそれぞれ送給側吸引室および排送側吸引室にしっかりと吸着される状態となるようにフィルム蓄積量を制御する。これにより、フィルム17のU字形部分の底部である円弧状部分が適正な位置すなわち光電センサPES3とPES4との間に位置付けられ、フィルム17のU字形部分の一側面が送給側吸引室121a、121bに吸着されるとともに、フィルム17のU字形部分の他の側面が排送側吸引室131a、131bに吸着された状態となる。
【0092】
なお、モータ制御部510は、搬送ベルト127の走行速度が巻出リール17aからのフィルム17の巻出速度を常に少しだけ上回るように、搬送ベルト駆動モータ124を制御している。これにより、巻出リール17aから吸引式フィルム送給装置120の間におけるフィルム17に対して適切な張力が作用し、フィルム17の皺や折れ、さらには過張力によるフィルム17の断裂やフィルム17上の箔のひびが防止される。
【0093】
(5−2)吸引力の調整
次に、制御装置50による、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cの吸引力の調整について説明する。
【0094】
(5−2−1)初期条件に基づく吸引力の調整
まず、初期条件に基づく吸引力の調整について説明する。
送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cの吸引力は、図16に示されるように、フィルム17の幅および枚葉輪転印刷機1の運転速度(機械回転速度)に基づいて調整される。
【0095】
フィルム幅が基準値よりも広い場合には、吸引力が高く設定される。これにより、幅が広くて重いフィルム17を搬送ベルト127および排送側吸引室131a〜131cの高い吸引力で確実に吸着保持することができる。
一方、フィルム幅が基準値よりも狭い場合には、吸引力が低く設定される。幅が狭くて軽いフィルム17は空力式蓄積装置100のエアーブロー装置101からの送風により送給側吸引室121a〜121cおよび排送側吸引室131a〜131cに押付けられる。このため、低い吸引力であっても、幅が狭くて軽いフィルム17は搬送ベルト127および排送側吸引室131a〜131cに確実に吸着保持される。
【0096】
機械回転速度については、印刷物に応じて作業者により設定された機械回転速度が、予め設定された速度よりも速い場合には、吸引力が高く設定される。これにより、機械回転速度が高速になってフィルム17の搬送速度が上昇しても、フィルム17のU字形部分の一側面および他の側面を高い吸引力で搬送ベルト127および排送側吸引室131a〜131cに確実に吸着保持することができる。
一方、作業者により設定された機械回転速度が、予め設定された速度よりも遅い場合には、吸引力が低く設定される。これにより、フィルム17のU字形部分の他の側面の排送側吸引室131a〜131cへの吸着が、フィルム17をインフィードローラ110で搬送する際の過剰な抵抗となることを防止することができる。
【0097】
なお、フィルム幅が狭い場合には、フィルム17の幅方向の位置が、それぞれ左右に2分割された送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cの左右いずれかに片寄っていることがある。このような場合には、制御装置50の吸引制御部512が、フィルム17の存在しない方の吸引室の吸引を停止して、無駄な電力の消費を抑える。このようなフィルム17の片寄りは、図11に示された設定値入力部201に入力されるフィルム位置204から知ることができる。
【0098】
制御装置50の吸引力制御部520は、図17に示されるように、フィルム幅に基づく吸引力と機械回転速度に基づく吸引力との組み合わせに基づいて、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cにおける初期の吸引力を決定する。図17における大、中、小は、吸引力の強さを示している。吸引力の強さの関係は、大>中>小である。
【0099】
フィルム幅が広く吸引力が「高」であり、かつ、機械回転速度が高速で吸引力が「高」のときには、最適な吸引力の強さは「大」である。同じくフィルム幅が広く吸引力が「高」であるが、機械回転速度が低速で吸引力が「低」のときには、最適な吸引力の強さは「中」である。
また、フィルム幅が狭く吸引力が「低」であり、かつ、機械回転速度が高速で吸引力が「高」のときには、最適な吸引力の強さは「中」である。同じくフィルム幅が狭く吸引力が「低」であるが、機械回転速度が低速で吸引力が「低」のときには、最適な吸引力の強さは「小」である。
【0100】
吸引力制御部520は、このようにしてフィルム幅および機械回転速度に基づいて決定された吸引力の強さとなるように、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cに対応する可変風量弁V1P〜V6P、V1E〜V3Eおよび/または吸引用ブロワB1〜B4、B5〜B7を制御する。これにより、フィルム蓄積部107におけるフィルム17のU字形部分の両側面を確実に吸着して、円弧状部分を安定化させることができる。
なお、本実施例ではフィルム幅および機械回転速度の両方に基づいて吸引力を制御する場合を説明したが、吸引力制御部520がフィルム幅および機械回転速度のいずれか一方のみに基づいて送給側吸引部121および排送側吸引部131の吸引力を制御することも勿論可能である。
【0101】
(5−2−2)機械運転中における吸引力の調整
次に、機械運転中における吸引力の調整について説明する。
枚葉輪転印刷機1の運転が開始されると、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積量は時々刻々変化していく。このため、制御装置50は、上述したように、フィルム17のU字形部分の円弧状部分を適正な位置に位置付けるように、アンワインダ装置18の巻出リール駆動モータ208の回転数を制御する。さらに、フィルム17の蓄積量の変動が大きく、フィルム17のU字形部分の状態が安定していない場合には、制御装置50は、吸引式フィルム送給装置120および吸引式フィルム排送装置130の吸引力を、初期条件に基づいて設定された値から変更する。
【0102】
フィルム17の蓄積量の変動、すなわち、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の位置の変動は、「振れ速度」および「振れ幅」で評価される。
「振れ速度」とは、単位時間当たりのフィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積変化量のことであり、換言すると、フィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置が上下方向に移動する速さのことである。
「振れ幅」とは、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積変化量のことであり、換言すると、フィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置の変位量のことである。
【0103】
フィルム17の蓄積量が急激に増減し振れ速度が速い場合や、フィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置が急激でなくても大きく変化し振れ幅が大きい場合には、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の状態が不安定になる可能性がある。このため、吸引式フィルム送給装置120および吸引式フィルム排送装置130の吸引力を制御する必要がある。
【0104】
(5−2−2−1)振れ速度に応じた吸引力の調整
まず、振れ速度に応じた吸引力の調整について説明する。
振れ速度検出部320は、フィルム転写胴20の1回転に要する時間内に、巻出リール17aからフィルム17が巻き出される巻出量とフィルム蓄積装置107からフィルム17が排出される排出量との差により、フィルム蓄積装置107に蓄積されたフィルム17の増減量を求め、この増減量をフィルム転写胴20の1回転に要する時間で割ることにより、単位時間当たりのフィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積変化量、すなわち振れ速度を算出する。
【0105】
振れ速度は、超音波センサ16、巻出リール駆動検出器205、インフィードローラ駆動検出器206およびロータリエンコーダ209の各出力に基づいて、振れ速度検出部320の振れ速度算出部321によって算出される。以下、振れ速度の算出方法を詳しく説明する。
まず、超音波センサ16の出力に基づいて、巻出リール17aの直径(または半径)が算出される。また、ロータリエンコーダ209により検出される枚葉輪転印刷機1の運転速度に基づいて、フィルム転写胴20の1回転に要する時間が算出される。この算出された時間と巻出リール17aの直径(または半径)と巻出リール駆動検出器205により検出された巻出リール17aの回転数とから、フィルム転写胴20の1回転に要する時間で巻き出されるフィルム17の巻出量が算出される。
【0106】
インフィードローラ駆動検出器206で検出されるインフィードローラ110の回転数とフィルム転写胴20の1回転に要する時間とインフィードローラ110の半径(または直径)とに基づいて、フィルム転写胴20の1回転に要する時間でフィルム蓄積装置107から排出されるフィルム17の排出量が算出される。
【0107】
フィルム転写胴20の1回転に要する時間で得られるフィルム17の巻出量とフィルム17の排出量との差を算出することにより、フィルム蓄積装置100におけるフィルム蓄積量の増加量または減少量が求まる。この増加量または減少量をフィルム転写胴20の1回転に要する時間で割ることにより、振れ速度が算出される。
【0108】
制御装置50の吸引力制御部520は、振れ速度算出部321により算出された振れ速度に基づき、図16にしたがって、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cの吸引力を決定する。吸引力制御部520は、まず、算出された振れ速度を予め定められた振れ速度の基準値と比較する。その結果、算出された振れ速度が基準値よりも大きい場合には、吸引力を「高」にする。これにより、フィルム17のU字形部分の一側面および他の側面が、高い吸引力で搬送ベルト127および排送側吸引室131a〜131cに確実に吸着保持される。これに対し、算出された振れ速度が基準値よりも小さければ、フィルム17のU字形部分の状態が安定していることを表しているため、吸引力を「低」にして、フィルム17のU字形部分を安定した状態に維持する。
【0109】
(5−2−2−2)振れ幅に応じた吸引力の調整
次に、振れ幅に応じた吸引力の調整について説明する。
振れ幅検出部330は、光電センサPES1〜PES5の検出結果に基づいて、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の円弧状部分の最大移動量、すなわち振れ幅を検出する。以下、より詳しく説明する。
【0110】
まず、振れ幅検出部330の振れ幅算出部331は、タイマー207により所定時間を計時したら、光電センサPES1〜PES5によるフィルム17の有無を検出し、この検出結果からフィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置を求める。例えば、図7の状態のときには、光電センサPES1〜PES4がフィルム17を検出しているが、光電センサPES5はフィルム17を検出していない。これにより、フィルム17のU字形部分の円弧状部分は、光電センサPES4とPES5との間にあることが分かる。さらにタイマー207が所定時間を計時したら、同様にフィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置を検出する。例えば、図8の状態のときには、フィルム17のU字形部分の円弧状部分は、光電センサPES1とPES2との間にあることが分かる。このように、タイマー207により計時される所定時間間隔で、フィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置を複数回検出する。
【0111】
振れ幅算出部331は、複数回検出された円弧状部分の位置のうち、最も高い位置と最も低い位置とから振れ幅を算出する。例えば、フィルム17のU字形部分の円弧状部分が、基準位置である光電センサPES3とPES4との間にあるときには点数0、光電センサPES4とPES5との間にあるときには点数−1、光電センサPES5よりも下方にあるときには点数−2、光電センサPES2とPES3との間にあるときには点数1、光電センサPES1とPES2との間にあるときには点数2、光電センサPES1よりも上方にあるときには点数3をつけるものとする。具体的には、図7の状態の点数は−1、図8の状態の点数は2となる。複数回検出されたフィルム17のU字形部分の円弧状部分の位置に基づく点数のうち、最大の点数から最小の点数を引いた値を振れ幅とする。
【0112】
制御装置50の吸引力制御部520は、振れ幅検出部330により検出された振れ幅に基づき、図16にしたがって、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cの吸引力を決定する。吸引力制御部520は、まず、検出された振れ幅を予め定められた振れ幅の基準値と比較する。上述の例で、基準値を3とすると、吸引力制御部520は、振れ幅が3以下のときには振れ幅が小さく、3を超えるときには振れ幅が大きいと判断する。具体的には、5回計測して求められた点数が、0、−1、0、1、2の場合には、最大の点数が2、最小の点数が−1であるから、(最大の点数)−(最小の点数)が3となり、振れ幅が小さいと判断される。
【0113】
吸引力制御部520は、振れ幅が大きい場合には、図16に示されるように、吸引力を「高」にする。これにより、フィルム17のU字形部分の一側面および他の側面が、高い吸引力で搬送ベルト127および排送側吸引室131a〜131cに確実に吸着保持される。これに対し、振れ幅が小さい場合には、フィルム17のU字形部分の状態が安定していることを表しているため、吸引力を「低」にして、フィルム17のU字形部分を安定した状態に維持する。
【0114】
(5−2−2−3)振れ速度と振れ幅との組み合わせに応じた吸引力の調整
さらに、制御装置50の吸引制御部520は、図18に示されるように、振れ速度に基づく吸引力と振れ幅に基づく吸引力との組み合わせに基づいて、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cの吸引力を決定する。図18における大、中、小は、吸引力の強さを示している。吸引力の強さの関係は、大>中>小である。
【0115】
振れ幅が大きく吸引力が「高」であり、かつ、振れ速度が大きく吸引力が「高」のときには、吸引力「大」が設定される。同じく振れ幅が大きく吸引力が「高」であるが、振れ速度が小さく吸引力が「低」のときには、吸引力「中」が設定される。
また、振れ幅が小さく吸引力が「低」であり、かつ、振れ速度が大きく吸引力が「高」のときには、吸引力「中」が設定される。同じく振れ幅が小さく吸引力が「低」であるが、振れ速度が小さく吸引力が「低」のときには、吸引力「小」が設定される。
【0116】
吸引力制御部520は、このようにして振れ速度および振れ幅に基づいて決定された吸引力の強さとなるように、送給側吸引室121a〜121fおよび排送側吸引室131a〜131cに対応する可変風量弁V1P〜V6P、V1E〜V3Eおよび/または吸引用ブロワB1〜B4、B5〜B7を制御する。これにより、フィルム蓄積部107におけるフィルム17の蓄積量の変動が大きい場合であっても、フィルム17のU字形部分の両側面を確実に吸着して、U字形部分の円弧状部分を安定化させることができる。
なお、吸引力制御部520は、振れ速度および振れ幅のいずれか一方のみに基づいて送給側吸引部121および排送側吸引部131の吸引力を制御することも勿論可能である。
制御装置50は、振れ速度および振れ幅のどちらか一方が予め設定された限界値を超えた場合には、枚葉輪転印刷機1を非常停止させる。
【0117】
(5−2−3)吸引力の個別制御
制御装置50の吸引力制御部520は、フィルム位置検出部310の検出結果に基づいて、送給側吸引室121a〜121cおよび排送側吸引室131a〜131cの吸引力を個別に制御することができる。すなわち、吸引力制御部520は、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17の蓄積量の変動が小さくて、フィルム17のU字形部分が安定している場合に、光電センサPES1〜PES5の検出結果から求められたU字形部分の円弧状部分の位置に応じて、送給側吸引室121a〜121cの送給側可変風量弁V1P〜V3Pおよび排送側吸引室131a〜131cの排送側可変風量弁V1E〜V3Eに対する開閉を個別に制御する。この制御は、図19に示されるルーチンRT2にしたがって行われる。なお、ルーチンRT2は、光電センサPES1によりフィルム17が検出されていることを条件として実行されるものである。
【0118】
まず、ステップS101において吸引力制御部520は、光電センサPES2によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。
【0119】
光電センサPES2によりフィルム17が検出されていない場合(NO)、ステップS102において吸引力制御部520は、送給側吸引室121aの送給側可変風量弁V1Pおよび排送側吸引室131aの排送側可変風量弁V1Eを全開にして吸引力を最大に作用させ、送給側吸引室121b、121cの送給側可変風量弁V2P、V3Pと、排送側吸引室131b、131cの排送側可変風量弁V2E、V3Eを絞って吸引力を低く保つよう制御する(ステップS102)。
【0120】
これにより、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の一側面および他の側面が、それぞれ送給側吸引室121aおよび排送側吸引室131aに確実に吸着されて、U字形部分の円弧状部分が安定する。一方、フィルム17が存在しない送給側吸引室121b、121cおよび排送側吸引室131b、131cには無駄な吸引を行わせず、必要なときに直ちに吸引力を強くできるように待機させておく。その後、再度ステップS101へ戻る。
【0121】
ステップS101で光電センサPES2によりフィルム17が検出された場合(YES)は、送給側吸引室121aと排送側吸引室131aとの間にフィルム17のU字形部分が存在し、かつ送給側吸引室121bと排送側吸引室131bとの間にフィルム17のU字形部分が差し掛かっている可能性があることを表している。
【0122】
このため、ステップS103において吸引力制御部520は、送給側吸引室121a、121bの送給側可変風量弁V1P、V2Pおよび排送側吸引室131a、131bの排送側可変風量弁V1E、V2Eを全開にして吸引力を最大に作用させ、送給側吸引室121cの送給側可変風量弁V3Pおよび排送側吸引室131cの排送側可変風量弁V3Eを絞って吸引力を低く保つよう制御する。
【0123】
これにより、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の一側面および他の側面が、それぞれ送給側吸引室121a、121bおよび排送側吸引室131a、131bに確実に吸着されて、U字形部分の円弧状部分が安定する。一方、送給側吸引室121cおよび排送側吸引室131cには無駄な吸引を行わせず、必要なときに直ちに吸引力を強くできるように待機させておく。
【0124】
続いて、ステップS104において吸引力制御部520は、光電センサPES3によりフィルム17が検出されたか否かを判定する。光電センサPES3によりフィルム17が検出されていない場合(NO)には、再度ステップS101へ戻って上述の処理を繰り返す。
【0125】
これに対し、ステップS104において光電センサPES3によりフィルム17が検出された場合(YES)は、送給側吸引室121a、121bと排送側吸引室131a、131bとの間にフィルム17のU字形部分が存在し、かつ送給側吸引室121cと排送側吸引室131cとの間にフィルム17のU字形部分が差し掛かっている可能性があることを表している。
【0126】
このため、ステップS105において吸引力制御部520は、送給側吸引室121a〜121cの送給側可変風量弁V1P〜V3Pおよび排送側吸引室131a〜131cの排送側可変風量弁V1E〜V3Eを全開にして全ての吸引力を最大に作用させる。
これにより、フィルム蓄積装置107におけるフィルム17のU字形部分の一側面および他の側面が、送給側吸引室121a〜121cおよび排送側吸引室131a〜131cに確実に吸着されて、U字形部分の円弧状部分が安定する。その後、再度ステップS104へ戻って処理を繰り返す。
【0127】
上述の通り、光電センサPES3によりフィルム17が検出されない場合(ステップS104、NO)にはステップS101に戻り、光電センサPES2によりフィルム17が検出されない場合(ステップS101、NO)にはステップS102へ戻り、再度上述の処理を繰り返す。このため、フィルム蓄積装置107におけるU字形部分の長さが変化して、U字形部分の底部が上下方向へ移動したときでも、不要な吸引を抑制して、フィルム17が存在する場所に確実に吸引力を付与し続けることができる。
【0128】
なお、吸引力制御部520は、送給側可変風量弁V1P〜V3Pおよび排送側可変風量弁V1E〜V3Eの開閉操作にあわせて、吸引用ブロワB1〜B3、B5〜B7の出力も調整するように制御することができる。また、吸引力制御部520は、吸引用ブロワB1〜B3、B5〜B7のみにより各吸引室の吸引力を調整するように制御してもよい。
【0129】
(6)本実施の形態の効果
本実施の形態では、フィルム転写胴20の鉛直方向上方にフィルム蓄積装置107が配設され、フィルム蓄積装置107の鉛直方向上方にアンワインダ装置18およびリワインダ装置19が配設されている。アンワインダ装置18およびリワインダ装置19は、互いに鉛直方向に並ぶように配設されている。このような配置にすることにより、大径の巻出リール17aおよび巻取リール17bを箔転写ユニット5の上方から搭載することが可能となる。これにより、アンワインダ装置18およびリワインダ装置19に対して、巻出リール17aおよび巻取リール17bの交換頻度を減らすことができる。また、大径の巻出リール17aおよび巻取リール17bを搭載しても、アンワインダ装置18およびリワインダ装置19の前後における作業スペースを確保することができる。その結果、調整作業の容易化、および装置に対する作業性を向上することができる。
【0130】
本実施の形態では、フィルム蓄積装置107において、吸引式フィルム送給装置120がアンワインダ装置18からフィルム17が供給される側に配設され、吸引式フィルム排送装置130がインフィードローラ110によりフィルム17が排送される側に配設されている。フィルム17のU字形部分の一側面部分は、吸引式フィルム送給装置120の搬送ベルト127に吸着保持されて搬送される。また、U字形部分の他の側面部分は、吸引式フィルム排送装置130の排送側吸引部131に吸引保持され、インフィードローラ110により確実に引き出される。したがって、フィルム17が高速に搬送されたり、フィルム17の蓄積量に変化が生じても、U字形部分の円弧状部分を維持して、フィルム17に折れや皺が生じることを防止することができる。
【0131】
本実施の形態例では、フィルム蓄積装置107において、フィルム17のU字形部分の一側面部分が吸引式フィルム送給装置120の搬送ベルト127により搬送されるのに対し、フィルム17のU字形部分の他の側面部分はインフィードローラ110のみにより引き出される。すなわち、吸引式フィルム排送装置130は、吸引式フィルム送給装置120の搬送ベルト127およびローラ123〜126に相当する構成を有しない。フィルム17のU字形部分の他の側面部分の搬送にも搬送ベルトを用いる場合には、インフィードローラ110の制御に加えて、搬送ベルトの速度制御が必要になる。インフィードローラ110の回転はフィルム17の走行速度がシート2の搬送速度と一致するように制御されるため、搬送ベルトの速度をインフィードローラ110の回転と整合させることは難しい。両者が整合しないと、フィルム17の張力が不安定になり、フィルム17の皺や折れ等の原因になる。この張力不安定性を排除するために、本実施例では吸引式フィルム排送装置130に搬送ベルトを設けず、インフィードローラ110のみでフィルム17を引き出すようにしている。
【0132】
本実施の形態では、制御装置50が、初期条件や運転中におけるフィルム17の蓄積状態に応じて、吸引式フィルム送給装置120の送給側吸引部121および吸引式フィルム排送装置130の排送側吸引部131の吸引力を最適に制御する。これにより、フィルム17のU字形部分が搬送ベルト127および排送側吸引部131に確実に吸着保持されるため、フィルム17に折れや皺が生じることを防止することができる。
【0133】
本実施の形態では、制御装置50が、フィルム17のU字形部分の底部の位置に応じて、巻出リール17aを回転駆動する巻出リール駆動モータ208を制御する。これにより、巻出リール17aからのフィルム17の巻出量を調整して、フィルム17のU字形部分を最適な位置に位置付けることができる。その結果、U字形部分の円弧状部分を維持して、フィルム17に折れや皺が生じることを防止することができる。
【0134】
例えば、フィルム17のU字形部分が図8に示されるように上方に位置して、フィルム17のU字形部分の両側面が送給側吸引室121aおよび排送側吸引部131aに吸着する部分が少ない場合に、これら吸引室121a、131aによる吸着力だけではフィルム17を安定したU字形状に維持できなくなるおそれがある。
【0135】
しかし、本実施の形態では、吸引式フィルム送給装置120の下側の送給側吸引部121Loのみと、吸引式フィルム排送装置130の排送側吸引部131とが、空力式蓄積装置100を間に挟んだ状態で対向するように配置されている。換言すれば、フィルム搬送方向上流側に設けられた上側の送給側吸引部121Upが、下側の送給側吸引部121Loおよび排送側吸引部131よりも、フィルム搬送方向上流側に突出している。このため、上述した場合でも、送給側吸引室121aだけでなく、そのフィルム搬送方向上流側に設けられた上側の送給側吸引部121Upの送給側吸引室121d〜121fにより、フィルム17が吸引保持される。したがって、下側の送給側吸引部121Loおよび排送側吸引部131による吸着力では十分にフィルム17を保持できなくても、上側の送給側吸引部121Upの範囲においてフィルム17が確実に搬送ベルト127に吸着保持されて、下側の送給側吸引部121Loへ確実に搬送される。また、位置が変動するフィルム17のU字形部分の円弧状部分が安定する。その結果、フィルム17に折れや皺が生じることを防止することができる。
【0136】
(7)他の実施の形態
上述した実施の形態では、本発明のフィルム転写装置を箔転写ユニット5に適用して、コールド・フォイル・スタンプと呼ばれる箔転写加工処理により美麗効果を付与する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、ホット・フォイル・スタンプと呼ばれる箔転写加工処理や、極めて平滑なニス面を得たり、半光沢マット状に仕上げたり、ニス面に対してフィルムの模様を転写するホログラム・エンボス加工処理を行えるフィルム転写装置に本発明を適用することもできる。
【0137】
上述した実施の形態では、アンワインダ装置18がリワインダ装置19の鉛直方向下方に配置されている。しかし、アンワインダ装置18とリワインダ装置19との上下関係を逆にして、アンワインダ装置18がリワインダ装置19の鉛直方向上方に配置されていてもよい。つまり、アンワインダ装置18およびリワインダ装置19が、互いに鉛直方向に並ぶように配置されていればよい。
【0138】
上述した実施の形態では、光電センサPES1〜PES4が排送側吸引室131a〜131cに一定の間隔で配置され、リフレクターM1〜M4が送給側吸引室121a〜121cに光電センサPES1〜PES4と対向して配置されている。しかし、本発明はこれに限らず、排送側吸引室131a〜131cの各々のほぼ中央または最下端部に光電センサPES1〜PES4が配置され、リフレクターM1〜M4が送給側吸引室121a〜121cに光電センサPES1〜PES4と対向して配置されるようにしてもよい。光電センサPES1〜PES4およびリフレクターM1〜M4の配置場所は、任意に設定されることができる。
【0139】
上述した実施の形態で用いられる光電センサPES1〜PES5の代わりに、レーザセンサ、近接センサ、超音波センサ等のその他種々のセンサを用いることもできる。
【0140】
上述した実施の形態では、3つ部屋に分割された送給側吸引室121a〜121cおよび3つの部屋に分割された排送側吸引室131a〜131cを個別に吸引制御する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、少なくとも2つ以上の部屋に分割された複数の送給側吸引室および少なくとも2つの部屋に分割された複数の排送側吸引室を個別に吸引制御するようにしてもよい。
【0141】
上述した実施の形態では、コンピュータ40により振れ速度算出部321、振れ幅算出部331、モータ制御部510および吸引力制御部520が実現される。しかし、フィルム蓄積状態検出装置300に含まれる振れ速度算出部321および振れ幅算出部331と、制御装置50に含まれるモータ制御部510および吸引力制御部520が、別々のコンピュータにより実現されるようにしてもよい。
【0142】
本発明のフィルム転写装置は、枚葉輪転式フィルム転写加工装置だけでなく、巻紙式フィルム転写加工装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0143】
1…枚葉輪転印刷機、2…シート、4…接着剤転写ユニット、5…箔転写ユニット、5a
…リールスタンド部、5b…フィルム蓄積部、6…印刷部、7…ニスコーティングユニット、8…乾燥ユニット、9…エンボス加工ユニット、10…排出装置、11…フィーダボード、12、28、30〜35、37〜39、95、96…渡し胴、16…超音波センサ、17…フィルム、17a…巻出リール、17b…巻取リール、18…アンワインダ装置、19…リワインダ装置、20…フィルム転写胴、22…版胴、14、23…ゴム胴、15、27、29、36…圧胴、24、26…UVランプ、25…ニス供給胴、40…コンピュータ、50…制御装置、91…カウンタ胴、92…エンボッシング胴、97…排紙胴、98…スプロケット、99…排紙チェーン、100…空力式蓄積装置、101…エアーブロー装置、101a〜101f、122a〜122f、132a〜132c…ダクトホース継手、102…引込装置、103…整流部、105、106…仕切板、107…フィルム蓄積装置、110…インフィードローラ、120…吸引式フィルム送給装置、121…送給側吸引部、121g…送給側ガイド面、121Lo、121Up…送給側吸引部、121a〜121f…送給側吸引室、124…ベルト駆動ローラ、125…テンションローラ、123、126…従動ローラ、127…搬送ベルト、130…吸引式フィルム排送装置、131…排送側吸引部、131a〜131c…排送側吸引室、131g…排送側ガイド面、141、142…静電気除去装置、145…ガイドレール、201…設定値入力部、205…巻出リール駆動検出器、206…インフィードローラ駆動検出器、207…タイマー、208…巻出リール駆動モータ、209…ロータリーエンコーダ、210…搬送ベルト駆動モータ、211…インフィード用モータ、300…フィルム蓄積状態検出装置、310…フィルム位置検出部、320…振れ速度検出部、321…速度算出部、330…振れ幅検出部、331…振れ幅算出部、410…処理装置、402…記憶装置、403…I/Oインタフェース、404…記録媒体、405…プログラム、510…モータ制御部、520…吸引力制御部、V1P〜V6P…送給側可変風量弁、V1E〜V3E…排送側可変風量弁、B1〜B7…吸引用ブロワ、PES1〜PES5…光電センサ、M1〜M5…リフレクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムが巻かれた巻出リールを回転自在に支持し、前記巻出リールからフィルムを巻き出すアンワインダ装置と、
前記アンワインダ装置から供給されたフィルムにU字形部分を形成してフィルムを蓄積するフィルム蓄積装置と
を備え、
前記フィルム蓄積装置は、
前記アンワインダ装置からフィルムが供給される側に配設された吸引式フィルム送給装置と、
フィルムが排送される側に配設された吸引式フィルム排送装置と
を含み、
前記吸引式フィルム送給装置は、
フィルムのU字形部分の一側面に対向する送給側ガイド面を含み、当該一側面を吸引する送給側吸引部と、
前記送給側吸引部とフィルムのU字形部分の一側面との間に配設され、フィルムのU字形部分の一側面部分を搬送する搬送ベルトと
を含み、
前記吸引式フィルム排送装置は、
フィルムのU字形部分の他の側面に対向する排送側ガイド面を含み、当該他の側面を吸引する排送側吸引部
を含み、
前記送給側吸引部は、
前記排送側吸引部と対向する下流側吸引部と、
前記下流側吸引部のフィルム搬送方向上流側に設けられ、前記排送側吸引部よりもフィルム搬送方向上流側に張り出す上流側吸引部と
を含むことを特徴とするフィム蓄積システム。
【請求項2】
前記吸引式フィルム排送装置よりもフィルム排送方向下流側に設けられ、前記フィルム蓄積装置に蓄積されたフィルムを前記フィルム蓄積装置から引き出すインフィードローラとを備え、
フィルムのU字形部分の他の側面部分は前記インフィードローラのみにより前記フィルム蓄積装置から引き出される
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム蓄積システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−91568(P2013−91568A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221097(P2012−221097)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】