説明

フィンガ状ヤーンガイド

【課題】塑性変形が生じないと同時に廉価に製造可能であるフィンガ状ヤーンガイドを提供する。
【解決手段】綾巻きパッケージ5を製造する繊維機械1の作業ユニット2に設けられた糸綾振り装置10に用いられるフィンガ状ヤーンガイド13が、複合構成部材として形成されていて、プラスチックから成るベースボディ17を有しており、プラスチックの射出成形によりベースボディ17内に、該ベースボディ17の長さを越えて延びる炭素繊維ロッド44,45と、固定・拘束エレメント19とが埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットに設けられた糸綾振り装置に用いられるフィンガ状ヤーンガイドであって、該フィンガ状ヤーンガイドが、細長いベースボディを有しており、該ベースボディが、取付け開口を介して可逆式の駆動装置に連結可能であって、前記ベースボディの自由端部に耐摩耗性のヤーンガイドエレメントを有しており、該ヤーンガイドエレメントが、巻取り運転の間、綾巻きパッケージの表面に向かって走行する糸を往復移動させているフィンガ状ヤーンガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットに設けられた糸綾振り装置に用いられるフィンガ状ヤーンガイドは公知であり、たとえば国際公開第00/24663号、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005059028号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第102008053261号明細書に比較的詳しく記載されている。
【0003】
国際公開第00/24663号には、たとえばフィンガ状に形成されたヤーンガイドが記載されている。このヤーンガイドは、全体的に比較的少ない厚さを有していて、これによって、可能な限り低質量で形成されている。ヤーンガイドはその自由端部に、供給された糸を受け取って案内するためのヤーンガイドフォークを有している。この公知例では、巻取りプロセスの間に糸とフィンガ状ヤーンガイドとの間に生じる摩擦を減少させるために、ヤーンガイドフォークに丸みと中断されたエッジとが追加的に加工されている。さらに、ヤーンガイドフォークは表面コーティングを有している。この表面コーティングのコーティング材料は、比較的少ない摩擦と同時に高い耐摩耗性の点で優れている。
【0004】
しかし、この公知のフィンガ状ヤーンガイドの場合、1つには、フィンガ状ヤーンガイドもしくは案内される糸に生じる摩耗を確実に阻止するために、ヤーンガイドフォークの複数の脚部に手間のかかる後加工が必要となり、もう1つには、フィンガ状ヤーンガイドの脚部の1つが、コップからの糸の繰出し時に生じたループによって捕捉される危険があることが不利である。これによって、通常、比較的損傷しやすいフィンガ状ヤーンガイドが即座に塑性変形してしまい、ひいては、使用できなくなってしまう。
【0005】
対応するフィンガ状ヤーンガイドは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005059028号明細書に基づいても公知である。同明細書に記載されているフィンガ状ヤーンガイドはその基体の自由端部に、セラミックスから成る円筒状の中空体として形成された2つのヤーンガイドエレメントを有している。両ヤーンガイドエレメントは基体に形状接続的にかつ/または摩擦接続的に嵌め込まれていて、ヤーンガイドフォークを形成している。このヤーンガイドフォークの間には、綾巻きパッケージに向かって走行する糸が巻取りプロセスの間に案内されている。ヤーンガイドエレメントをセラミックスから形成することは、この材料が極めて耐摩耗性であり、ひいては、ヤーンガイドエレメントに対する摩滅現象を最小限に抑えることができるという利点を有している。
【0006】
しかし、この公知のフィンガ状ヤーンガイドの場合には、ヤーンガイドの基体に直接結合されたセラミックス製の中空のガイドエレメントが、確かに、付勢された糸の場合でさえ、著しい摩耗を受けないものの、セラミックスの比較的低い破断伸びと同時に糸の高周波供給とに基づき、たとえばベースボディに生じた曲げモーメントの結果、常にヤーンガイドエレメントが容易に破折してしまう危険があるかもしくは、軽量で高強度の材料から成るロッドにセラミックスリーブが配置されたヤーンガイドエレメントの場合には、セラミックスがロッドから剥げ落ちてしてしまうことが不利であると判った。
【0007】
さらに、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008053261号明細書によって、フィンガ状ヤーンガイドが公知である。この公知のフィンガ状ヤーンガイドは、マグネシウムダイカスト部材によって形成された基体を有している。この基体の自由端部には、曲げ弾性的なロッドを介してセラミックス製のヤーンガイドエレメントが接続されている。すなわち、マグネシウム基体の対応する孔内に接着結合によって炭素繊維ロッドが固定されている。この炭素繊維ロッドには、有利には同じく接着結合によって、それぞれ1つのセラミックス製のヤーンガイドエレメントが固定されている。このセラミックス製のヤーンガイドエレメントを曲げ弾性的なロッドに支承することによって、糸の供給の間に生じる曲げモーメントが、曲げ弾性的なロッドによって吸収され、これによって、セラミックス製のヤーンガイドエレメントから回避されることが達成されるようになっている。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008053261号明細書により公知のフィンガ状ヤーンガイドの構成は、確かに、同明細書以前に公知のフィンガ状ヤーンガイドを著しく改善しているものの、同明細書のフィンガ状ヤーンガイドも種々異なる欠点を有している。炭素繊維ロッドの範囲における接着結合部が、たとえば機械的な弱化箇所を成している。さらに、この公知のフィンガ状ヤーンガイドの更なる欠点は、フィンガ状ヤーンガイドの運動方向に対して横方向でのマグネシウム基体の弾性的な強度が比較的少ないことである。すなわち、すでに僅かな横方向力によって、マグネシウム基体が任意に変形してしまう。
【0009】
種々異なる構成部材の接合に相俟って必要となるかもしくは組付け時に必要となる機械的な加工も比較的高価であると判った。このようなフィンガ状ヤーンガイドの整然とした組付けを保証するためには、たとえば、まず、各フィンガ状ヤーンガイドが個々にその駆動ユニットに適合されなければならない。その際には、マグネシウム基体が、場合により手による調整によって塑性変形させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第00/24663号
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005059028号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008053261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したフィンガ状ヤーンガイドを出発点として、本発明の課題は、公知のフィンガ状ヤーンガイドの前述した欠点を有していないと同時に廉価に製造可能であるフィンガ状ヤーンガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドによれば、該フィンガ状ヤーンガイドが、複数の構成要素から成る構成部材として形成されていて、プラスチックから成るベースボディを有しており、前記プラスチックの射出成形によりベースボディ内に、該ベースボディの長さを越えて延びる炭素繊維ロッドと、固定・拘束エレメントとが埋め込まれている。
【0013】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、炭素繊維ロッドが、中実ロッドとして形成されている。
【0014】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、炭素繊維ロッドが、中空ロッドとして形成されている。
【0015】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、炭素繊維ロッドが、円形の横断面を有している。
【0016】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、炭素繊維ロッドが、楕円形の横断面を有している。
【0017】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、炭素繊維ロッドが、ベースボディを越えて張り出した区分にそれぞれ耐摩耗性の保護手段を備えている。
【0018】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、耐摩耗性の保護手段が、酸化物セラミックス製の管であり、該管が、前記プラスチックの射出成形によりベースボディ内に部分的に一緒に埋め込まれている。
【0019】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、耐摩耗性の保護手段が、クロムめっきされた鋼管であり、該鋼管が、前記プラスチックの射出成形によりベースボディ内に部分的に一緒に埋め込まれている。
【0020】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、耐摩耗性の保護手段が、ベースボディの半円形に形成された当接支持部材によって付加的に位置決めされるようになっている。
【0021】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、固定・拘束エレメントが、駆動装置のモータシャフトに対する中央の支承スリーブと、固定手段を位置決めするための複数のスリーブ状の付設部と、複数の抜け止めおよび回り止めとを有している。
【0022】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、少なくとも1つのスリーブ状の付設部が、雌ねじ山を有しており、該雌ねじ山によって当接手段が位置決め可能である。
【0023】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、ベースボディが、滑りエレメントを具備しており、該滑りエレメントが、巻取りプロセスの間、たとえば駆動装置に配置された滑りガイドに対応している。
【0024】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの有利な態様によれば、滑りエレメントが、フィンガ状ヤーンガイドのベースボディに交換可能に位置固定されている。
【発明の効果】
【0025】
複合構成部材、つまり、複数の構成要素から成る構成部材として形成された本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドでは、有利には、それぞれ極めて固有の材料特性を有する種々異なる材料を互いに最適に組み合わせるために、製造法「プラスチック射出成形」が使用される。すなわち、本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドは、プラスチックから成るベースボディを有している。このベースボディ内には、プラスチックの射出成形により、ベースボディの長さを越えて延びる炭素繊維ロッドと、固定・拘束エレメントとが埋め込まれている、つまり、インサート成形されている。
【0026】
本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの製造時に形成されるプラスチック部材としてのベースボディの比重は、従来のフィンガ状ヤーンガイドにおいて使用されたマグネシウム基体の比重を著しく下回っているので、本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの製造時には、使用される炭素繊維ロッドの長さが比較的自由に選択される。すなわち、炭素繊維ロッドが、強度の理由から、フィンガ状ヤーンガイドのベースボディの範囲を越えて延長されている場合でさえ、公知のフィンガ状ヤーンガイドに比べて、全慣性モーメントの増加が決して生じないようになっている。このように形成されたフィンガ状ヤーンガイドは、プラスチックの射出成形により埋め込まれた炭素繊維ロッドに基づき、フィンガ状ヤーンガイドの運動方向にも、この運動方向に対して横方向にも、極めて曲げ剛性的であると同時に形状安定性を有している。すなわち、このようなフィンガ状ヤーンガイドでは、塑性変形が実際に生じないようになっている。
【0027】
さらに、本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドは廉価に製造可能である。なぜならば、製造に際して、接合面の機械的な加工も不要となるし、一般的に比較的手間をかけて製造しなければならない何らかの接着結合部も形成されないからである。
【0028】
請求項2もしくは請求項3に記載したように、本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドを安定化させる根幹を成す炭素繊維ロッドは、中実ロッドまたは中空ロッドとして形成されている。特に中空ロッドとして形成された炭素繊維ロッドによって、極端に剛性的であるにもかかわらず、極めて低質量のフィンガ状ヤーンガイドを製造することができるのに対して、中実ロッドとして形成された炭素繊維ロッドを備えたフィンガ状ヤーンガイドは、比較的廉価に製造可能となる。
【0029】
フィンガ状ヤーンガイドの炭素繊維ロッドの横断面に関しても、種々異なる可能性が提案されている。請求項4によれば、炭素繊維ロッドが、たとえば円形の横断面を有していてよい。これは、比較的廉価な1つの態様を成している。しかし、使用される炭素繊維ロッドが、たとえば楕円形の横断面を有しているフィンガ状ヤーンガイドも全く可能である(請求項5)。楕円形の横断面を備えた炭素繊維ロッドの使用によって、たとえばフィンガ状ヤーンガイドの曲げ剛性の更なる向上が簡単に可能となる。なお、その際、フィンガ状ヤーンガイドの質量ひいては全慣性モーメントが増加させられることはない。楕円の軸の位置決めに応じて、フィンガ状ヤーンガイドの運動方向における曲げ剛性の向上またはフィンガ状ヤーンガイドの運動方向に対して横方向における曲げ剛性の向上が可能となる。
【0030】
さらに、有利な態様では、請求項6に記載したように、プラスチックの射出成形によりベースボディ内に埋め込まれた炭素繊維ロッドが、ベースボディを越えて張り出した区分にそれぞれ耐摩耗性の保護手段を具備していることが提案されている。
【0031】
この耐摩耗性の保護手段として、請求項7に記載したように、たとえばフィンガ状ヤーンガイドの製造時にプラスチックベースボディ内に部分的に一緒に埋め込まれる酸化物セラミックス製の管を使用することができ、これによって、接着結合部が不要となる。
【0032】
しかし、このような高耐摩耗性の酸化物セラミックス製の管の代わりに、請求項8に記載したように、クロムめっきされた鋼管が使用されてもよい。衝撃に対して比較的損傷しにくいこのようなクロムめっきされた鋼管も、有利にはプラスチックの射出成形によりベースボディ内に少なくとも部分的に一緒に埋め込まれる。
【0033】
さらに、有利な態様において、請求項9によれば、耐摩耗性の保護手段が付加的に、半円形に形成されたプラスチック製の当接支持部材によって位置決めされることが提案されている。この当接支持部材はプラスチック射出成形プロセス時に一緒に形成される。すなわち、当接支持部材はベースボディの構成要素であり、炭素繊維ロッドに対する耐摩耗性の保護手段の付加的な固定手段を成している。
【0034】
請求項10および11に記載したように、プラスチックの射出成形によりベースボディ内に埋め込まれた固定・拘束エレメントは、駆動装置のモータシャフトに対する中央の支承スリーブと、固定手段を位置決めするための複数のスリーブ状の付設部と、複数の抜け止めおよび回り止めとを有している。スリーブ状の付設部の1つは雌ねじ山を有している。この雌ねじ山によって、当接手段が厳密に位置決め可能となる。この当接手段によって、モータシャフトに対するフィンガ状ヤーンガイドの正確な位置決めが簡単に可能となる一方、抜け止めおよび回り止めによって、固定・拘束エレメントがプラスチックの射出成形による埋込み時にフィンガ状ヤーンガイドのベースボディ内に確実に位置固定されることが確保される。
【0035】
さらに、請求項12に記載したように、フィンガ状ヤーンガイドのベースボディは滑りエレメントを具備している。この滑りエレメントは、巻取りプロセスの間、有利には駆動装置に配置された滑りガイドに対応している。すなわち、フィンガ状ヤーンガイドが巻取り工程の間に振動させられると、滑りエレメントが、対応する滑りガイドに当て付けられる。これによって、即座にフィンガ状ヤーンガイドが安定させられる。
【0036】
有利な態様では、請求項13に記載したように、滑りエレメントがフィンガ状ヤーンガイドのベースボディに交換可能に位置固定されている。すなわち、必要な場合には、滑りエレメントを新しい滑りエレメントに問題なく交換することができる。
【0037】
本発明の更なる詳細は、以下に図面につき説明する実施の形態から知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドを有する糸綾振り装置を備えた、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の1つの作業ユニットの側面図である。
【図2】本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドを具備した糸綾振り装置の斜視的な正面図である。
【図3】公知先行技術におけるフィンガ状ヤーンガイドの正面図である。
【図4】本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの正面図である。
【図5A】プラスチックの射出成形により本発明に係るフィンガ状ヤーンガイド内に固着された固定・拘束エレメントの平面図である。
【図5B】図5Aの断面V−Vを示す図である。
【図6】図4の断面VI−VIにおける本発明に係るフィンガ状ヤーンガイドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0040】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械1、本実施の形態では、いわゆる「自動綾巻きワインダ」の1つの作業ユニット2が概略的に側面図で示してある。自動綾巻きワインダ1は、公知のように、その両端部枠(図示せず)の間にそれぞれ同じ構造の多数の作業ユニット2を有している。これらの作業ユニット2では、同じく公知であるので詳しい説明を省くが、リング精紡機において製造された精紡コップ3が巻き返されて、大型の綾巻きパッケージ5が形成される。この綾巻きパッケージ5はその完成後にサービスユニット(図示せず)、たとえば綾巻きパッケージチェンジャによって機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置7に引き渡され、次いで、機械端部側に配置されたパッケージローディングステーションまたはこれに類するものに搬送される。
【0041】
さらに、自動綾巻きワインダ1は、しばしば、ボビン・巻管搬送システム6の形のロジスティック装置を有している。ボビン・巻管搬送システム6では、搬送ディスク11上で精紡コップ3もしくは空管が循環する。ボビン・巻管搬送システム6のうち、図1には、コップ供給区間24、逆転駆動可能な蓄え区間25、巻取りユニット2に通じる横方向搬送区間26ならびに巻管戻し区間27だけが示してある。
【0042】
さらに、個々の巻取りユニット2は、それぞれ種々異なる装置を有している。これらの装置は作業ユニット2の整然とした運転を保証する。種々異なる装置のうちの1つは、たとえば符号4で示した巻取り装置である。この巻取り装置4は、旋回軸12を中心として可動に支承されたパッケージフレーム8を有している。本実施の形態では、巻取りプロセスの間、綾巻きパッケージ5がその表面でパッケージ駆動ローラ9に載置していて、このパッケージ駆動ローラ9によって摩擦接続を介して連動させられる。
【0043】
しかし、択一的な実施の形態では、綾巻きパッケージ5の駆動が、パッケージフレーム8に直接配置されているかもしくはパッケージフレーム8内に組み込まれている回転数調整可能な駆動装置、有利には電子的に整流可能な直流モータを介して行われてもよい。
【0044】
巻取りプロセスの間に綾巻きパッケージ5に向かって走行する糸16の綾振りは、糸綾振り装置10によって行われる。図1には概略的にしか示していない糸綾振り装置10は、フィンガ状ヤーンガイド13を有している。このフィンガ状ヤーンガイド13は、特に図2から明らかであるように、電動モータ式の駆動装置14によって駆動されて、糸16を綾巻きパッケージ5の両端面の間で往復移動させる。さらに、図2に示したように、駆動装置14はモータシャフト33を有している。このモータシャフト33には、フィンガ状に形成されたヤーンガイド13が相対回動不能に配置されている。駆動装置14それ自体は、制御線路15を介して作業ユニット固有の制御装置28に接続されている。
【0045】
さらに、作業ユニット2は、それぞれ下側糸センサ40と、ヤーンクリアラ22と、このヤーンクリアラ22の範囲に配置された糸切断装置(ヤーンカッタ)23と、糸張力センサ20とを有している。これらの構成部材40,22,23,20は、信号線路もしくは制御線路41,29,30,21を介して作業ユニット固有の制御装置28に接続されている。各作業ユニット2は、通常のように、サクションノズル35と、いわゆる「グリッパ管37」と、ニューマチック式の糸継ぎ装置36とを有している。
【0046】
図2には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械1の作業ユニット2に配置された糸綾振り装置10が斜視的な正面図で示してある。図示のように、作業ユニット2は、入力装置32を具備した巻取りユニットハウジング31を有している。この巻取りユニットハウジング31は、特に作業ユニット固有の制御装置28を収容している。さらに、巻取りユニットハウジング31には、巻取り装置4が位置決めされている。この巻取り装置4は、主として、綾巻きパッケージ巻管18を保持するためのパッケージフレーム8と、パッケージ駆動ローラ9と、綾巻きパッケージ5に向かって走行する糸16を往復移動させるための糸綾振り装置10とから成っている。この糸綾振り装置10は、本発明に係るフィンガ状ヤーンガイド13を有している。このフィンガ状ヤーンガイド13の可逆式の駆動装置14は、すでに前述したように、制御線路15を介して作業ユニット固有の制御装置28に接続されている。フィンガ状ヤーンガイド13は制御装置28を介して厳密に制御可能であり、これによって、巻取りプロセスの間、特に給糸速度が正確に調整可能となる。
【0047】
図3には、公知先行技術に基づき公知であるようなヤーンガイドが示してある。この公知のヤーンガイド13は、フィンガ状にまたは指針状に形成されたベースボディ17を有している。このベースボディ17はマグネシウムダイカスト部材から成っている。明らかなように、ベースボディ17はその自由端部に向かって先細りにされている一方、フィンガ状ヤーンガイド13の広幅側の端部は1つの取付け孔を有している。この取付け孔を介して、フィンガ状ヤーンガイド13が、図3には示していない個別モータ式の駆動装置のモータシャフトに連結可能となる。ベースボディ17はその狭幅側の自由端部に2つの取付け孔を有している。両取付け孔内には、それぞれ1つの曲げ弾性的なロッド38;39が位置固定されている。このロッド38;39それ自体は、それぞれセラミックス製のヤーンガイドエレメント42;43を具備している。有利には炭素繊維複合材、たとえばカーボンから成る曲げ弾性的なロッド38,39と、セラミックスから成る円筒状の中空体として形成されたガイドエレメント42;43とは、接着結合部を介して固定されている。
【0048】
図4には、本発明に係るフィンガ状ヤーンガイド13、すなわち、プラスチックから成るベースボディ17を備えたヤーンガイドが示してある。このベースボディ17内には、その材料、つまり、プラスチックの射出成形により炭素繊維ロッド44,45と固定・拘束エレメント19とが埋め込まれている。炭素繊維ロッド44,45は、この炭素繊維ロッド44,45を収容するプラスチック製のベースボディ17よりも著しく長く形成されている。すなわち、炭素繊維ロッド44,45は、ベースボディ17の狭幅側の自由端部の範囲でも、モータシャフトを取り付ける範囲でも、ベースボディ17を越えて張り出している。炭素繊維ロッド44,45は、ベースボディ17を越えて張り出した(狭幅側の)範囲にそれぞれ耐摩耗性の保護手段、たとえば酸化物セラミックス製の管42,43またはクロムめっきされた鋼管を具備している。この保護手段は、同じくプラスチックの射出成形によりベースボディ17内に少なくとも部分的に一緒に埋め込まれていて、したがって、炭素繊維ロッド44,45に確実に位置固定されている。これに相俟って、半円形に形成された当付け支持部材46,47が特に有利である。この当付け支持部材46,47は、たとえば酸化物セラミックス製の管42,43をその下側の端部において位置決めしている。同じくプラスチックの射出成形によりベースボディ17内に埋め込まれた固定・拘束エレメント19は、特に図5Aから明らかであるように、駆動装置14のモータシャフト33に対する中央の支承スリーブ48と、固定手段(図示せず)を位置決めするための複数のスリーブ状の付設部49A,49B,49Cと、複数の抜け止めおよび回り止め50とから成っている。スリーブ状の付設部49Aは雌ねじ山54を有している。この雌ねじ山54によって、当接手段51が位置決め可能となる。この当接手段51を介して、モータシャフト33に対するフィンガ状ヤーンガイド13の正確な位置決めが実現可能となる。すなわち、ベースボディ17に配置された滑りエレメント52が、駆動装置14に固定された滑りガイド53の前方に僅かな間隔を置いて配置されて、この滑りガイド53と協働(相互作用)して、場合により生じる振動を減衰するように、当接手段51によってフィンガ状ヤーンガイド13を位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 自動綾巻きワインダ
2 巻取りユニット
3 精紡コップ
4 巻取り装置
5 綾巻きパッケージ
6 ボビン・巻管搬送システム
7 綾巻きパッケージ搬送装置
8 パッケージフレーム
9 パッケージ駆動ローラ
10 糸綾振り装置
11 搬送ディスク
12 旋回軸
13 フィンガ状ヤーンガイド
14 駆動装置
15 制御線路
16 糸
17 ベースボディ
18 綾巻きパッケージ巻管
19 固定・拘束エレメント
20 糸張力センサ
21 制御線路
22 ヤーンクリアラ
23 糸切断装置
24 コップ供給区間
25 蓄え区間
26 横方向搬送区間
27 巻管戻し区間
28 制御装置
29 制御線路
30 制御線路
31 巻取りユニットハウジング
32 入力装置
33 モータシャフト
35 サクションノズル
36 糸継ぎ装置
37 グリッパ管
38 ロッド
39 ロッド
40 下側糸センサ
41 制御線路
42 ヤーンガイドエレメント
43 ヤーンガイドエレメント
44 炭素繊維ロッド
45 炭素繊維ロッド
46 当付け支持部材
47 当付け支持部材
48 支承スリーブ
49A,49B,49C 付設部
50 抜け止めおよび回り止め
51 当接手段
52 滑りエレメント
53 滑りガイド
54 雌ねじ山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットに設けられた糸綾振り装置に用いられるフィンガ状ヤーンガイドであって、該フィンガ状ヤーンガイドが、細長いベースボディを有しており、該ベースボディが、取付け開口を介して可逆式の駆動装置に連結可能であって、前記ベースボディの自由端部に耐摩耗性のヤーンガイドエレメントを有しており、該ヤーンガイドエレメントが、巻取り運転の間、綾巻きパッケージの表面に向かって走行する糸を往復移動させているフィンガ状ヤーンガイドにおいて、該フィンガ状ヤーンガイド(13)が、複合構成部材として形成されていて、プラスチックから成るベースボディ(17)を有しており、前記プラスチックの射出成形によりベースボディ(17)内に、該ベースボディ(17)の長さを越えて延びる炭素繊維ロッド(44,45)と、固定・拘束エレメント(19)とが埋め込まれていることを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットに設けられた糸綾振り装置に用いられるフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項2】
炭素繊維ロッド(44,45)が、中実ロッドとして形成されている、請求項1記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項3】
炭素繊維ロッド(44,45)が、中空ロッドとして形成されている、請求項1記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項4】
炭素繊維ロッド(44,45)が、円形の横断面を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項5】
炭素繊維ロッド(44,45)が、楕円形の横断面を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項6】
炭素繊維ロッド(44,45)が、ベースボディ(17)を越えて張り出した区分にそれぞれ耐摩耗性の保護手段(42,43)を備えている、請求項1記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項7】
耐摩耗性の保護手段(42,43)が、酸化物セラミックス製の管であり、該管が、前記プラスチックの射出成形によりベースボディ(17)内に部分的に一緒に埋め込まれている、請求項6記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項8】
耐摩耗性の保護手段(42,43)が、クロムめっきされた鋼管であり、該鋼管が、前記プラスチックの射出成形によりベースボディ(17)内に部分的に一緒に埋め込まれている、請求項6記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項9】
耐摩耗性の保護手段(42,43)が、ベースボディ(17)の半円形に形成された当接支持部材(46,47)によって付加的に位置決めされるようになっている、請求項1から8までのいずれか1項記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項10】
固定・拘束エレメント(19)が、駆動装置(14)のモータシャフト(33)に対する中央の支承スリーブ(48)と、固定手段を位置決めするための複数のスリーブ状の付設部(49A,49B,49C)と、複数の抜け止めおよび回り止め(50)とを有している、請求項1記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項11】
少なくとも1つのスリーブ状の付設部(49A)が、雌ねじ山(54)を有しており、該雌ねじ山(54)によって当接手段(51)が位置決め可能である、請求項10記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項12】
ベースボディ(17)が、滑りエレメント(52)を具備しており、該滑りエレメントが、巻取りプロセスの間、たとえば駆動装置(14)に配置された滑りガイド(53)に対応している、請求項1記載のフィンガ状ヤーンガイド。
【請求項13】
滑りエレメント(52)が、フィンガ状ヤーンガイド(13)のベースボディ(17)に交換可能に位置固定されている、請求項12記載のフィンガ状ヤーンガイド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−6702(P2013−6702A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142426(P2012−142426)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】