説明

フィードバック感受性が変化した組み換え酵素

本発明は、メチオニン、その前駆体又はそれらの誘導体の製造のための、フィードバック感受性が変化した組み換えホモセリントランススクシニラーゼ酵素(MetA)及び、ひいては、活性が低下した組み換えS−アデノシルメチオニンシンターゼ酵素(MetK)の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチオニン、その前駆体又はそれらの誘導体の製造のための、フィードバック感受性が変化した組み換えホモセリントランススクシニラーゼ酵素(MetA)及び、ひいては、活性が減少した組み換えS−アデノシルメチオニンシンターゼ酵素(MetK)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
システイン、ホモシステイン、メチオニン又はS−アデノシルメチオニン等の硫黄含有化合物は細胞代謝に重要であり、食品又は飼料添加物、及び、医薬品として使用するために産業的に製造される。特に、必須アミノ酸であり、動物によっては合成することのできないメチオニンは、多くの身体機能において重要な役割を果たしている。その蛋白質生合成における役割とは別に、メチオニンはトランスメチレーション並びにセレン及び亜鉛のバイオアベイラビリティに関与している。メチオニンは、アレルギーやリウマチ熱のような疾患の治療としても直接用いられる。それにもかかわらず、製造されたメチオニンのほとんどは動物飼料に添加されている。
【0003】
BSE及びニワトリインフルエンザの結果として動物由来の蛋白質の使用が減少したことに伴い、純粋なメチオニンに対する需要が高まってきた。化学的には、D,L−メチオニンは通常アクロレイン、メチルメルカプタン及びシアン化水素から製造される。それにもかかわらず、例えば、ニワトリ飼料添加物におけるように、ラセミ混合物は純粋なL−メチオニンと同様には機能しない(Saunderson, C.L., (1985) British Journal of Nutrition 54, 621-633)。純粋なL−メチオニンはラセミメチオニンから、例えば、N−アセチル−D,L−メチオニンのアシラーゼ処理を通じて製造することができるが、製造コストは劇的に増大する。純粋なL−メチオニンに対する増大する需要は環境的な関心と結びついて、微生物によるメチオニンの製造を魅力的なものとしている。
【0004】
微生物は、細胞成分の生合成を微調整することで、最大限の増殖率を可能にする、高度に複雑な制御機構を発達させてきた。結果として、必要とされる量だけのアミノ酸等の代謝産物が合成され、普通は、野生型株の培養上清中には検出できない。細菌はアミノ酸生合成を主に酵素のフィードバック阻害、及び、遺伝子転写の抑制又は活性化によって制御している。それらの制御経路のエフェクターは、大抵の場合、当該経路の最終産物である。結果として、微生物においてアミノ酸を過剰生産する戦略は、それらの制御機構の調節解除を必要とする。
【0005】
L−メチオニン合成の経路は多くの微生物において周知である(図1A/B)。メチオニンはアミノ酸アスパラギン酸に由来するが、その合成は2つの付加的経路である、システイン生合成及びC1代謝(N−メチルテトラヒドロ葉酸)の収束を必要とする。アスパラギン酸は一連の3つの反応によってホモセリンへと変換される。その後、ホモセリンはスレオニン/イソロイシン又はメチオニン生合成経路に移行することができる。E.コリにおいては、メチオニン経路への移行はホモセリンをアシル化してスクシニルホモセリンにすることが必要とされる。この活性化ステップは、その後のシステインの濃縮を可能とし、チオエステル含有シスタチオニンに至り、加水分解されてホモシステインを与える。メチオニンへ至る最後のメチル移転はB12依存又はB12非依存メチルトランスフェラーゼにより行われる。
【0006】
E.コリにおけるメチオニン生合成は、それぞれMetJ及びMetR蛋白質を介してメチオニン生合成遺伝子の抑制及び活性化により制御される(Neidhardt, F.C. (編集長), R. Curtiss III, J.L.Ingraham, E.C.C.Lin, K.B.Low, B.Magasanik, W.S.Reznikoff, M.Riley, M.Schaechter及びH.E.Umbarger(編集者). 1996 Escherichia coli and Salmonella: Cellular and Molecular Biology. American Society for Microbioligy; Weissbach et al., 1991 Mol. Microbiol., 5, 1593-1597に概説される)。MetJは、必須遺伝子metKによりコードされる酵素S−アデノシルメチオニンシンテターゼ(EC2.5.1.6.)によってメチオニンから作られる、S−アデノシルメチオニンをコリプレッサーとして用いる。メチオニンの合成に特有の最初の酵素である、ホモセリントランススクシニラーゼ(E.C.2.3.1.46)をコードするmetAは、メチオニン生産の他の主要な制御点である。MetJ及びMetRによるmetAの転写制御に加えて、該酵素は、また、最終産物であるメチオニン及びS−アデノシルメチオニンによってフィードバック調節される(Lee, L.-W et al. (1996) Multimetabolite control of a biosynthetic pathway by sequential metabolites, JBC 241 (22), 5479-5780)。それら2つの産物によるフィードバック阻害は相乗的である。すなわち、低濃度のそれぞれの代謝産物単独ではわずかに阻害的であるのみであるが、組み合わせると強力な阻害が発揮される。
【0007】
アミノ酸アナログは、異常なポリペプチドの合成を通じて、及び、フィードバック阻害を妨害して細胞内部で有害なプロセスをもたらすことにより、細菌の増殖を阻害する。アナログを克服することができ、対応する代謝産物の過剰な合成をもたらす、変化し且つ調節解除された酵素を示すアナログ耐性変異体が得られている。いくつかのグループは、メチオニンを過剰生産する微生物株を生成するために、メチオニンアナログであるノルロイシン、エチオニン及びα−メチルメチオニンを用いている。α−メチルメチオニンは、ホモセリントランススクシニラーゼ酵素MetAの強力な阻害剤であることが示されている(Rowbury RJ, (1968) The inhibitory effect of α-methylmethionine on Escherichia coli, J gen. Microbiol., 52, 223-230)。metA遺伝子座にマップされるサルモネラ・チフィムリウムのフィードバック耐性変異体が単離された(Lawrence D.A., (1972) Regulation of the methionine feedback-sensitive enzyme in mutants of salmonella typhimurium; Lawrence D.A., Smith, D.A., Rowbury, R.J. (1967) Regulation of methionine synthesis in salmonella typhimurium: Mutants resistant to inhibition by analogues of methionine, Genetics 58, 473-492)。ノルロイシン耐性変異体はmetK遺伝子座にマップされることが示された(Chattopadhyay, M.K., Ghosh, A.K.及びSengupta, S.(1991), Control of methionine biosynthesis in Escherichia coli K12: a closer study with analogue resistant mutants, Journal of General Microbiology, 137, 685-691)。同著者らは、E.コリにおけるフィードバック耐性metA変異体及びノルロイシン耐性変異体の単離を報告しているが、metA及びmetKにおける実際の変異については記載されていない。
【0008】
発酵による細菌のメチオニン生産のためのホモセリントランススクシニラーゼの重要な役割が実証されている(Kumar, D. Garg, S.Bisaria V.S., Sreekrishnan, T.R.及びGomes, J. (2003) Production of methionine by a multi-analogue resistant mutant of Corynebacterium lilium, Process Biochemistry 38, 1165-1171)。特許出願特開2000−139471は、遺伝子metA及びmetKにおける変異体を用いたL−メチオニンの製造のためのプロセスを記載している。今回、変異の正確な位置が決定された。MetA変異酵素はメチオニン及びS−アデノシルメチオニンによるフィードバック阻害に対する感受性を部分的に消失していた。それにもかかわらず、それらの初期の活性は野生型酵素と比較して約25%に減少しており、ある変異体については1mMのメチオニン濃度又は他の変異体については1mMのSAM濃度において、さらに25−90%の酵素活性が消失した。metK変異体は酵素的に特徴付けられていないが、メチオニン生産量を増加させるために発酵において用いた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ホモセリントランススクシニラーゼによりL−ホモセリンがO−スクシニルホモセリンに変換される微生物を用いた発酵プロセス中で、メチオニン、その前駆体又はそれらに由来する生成物を調製するための方法であって、前記微生物を適切な培地で培養し、一旦生産されたメチオニン、その前駆体又はそれらに由来する生成物を回収する工程を含み、該ホモセリントランススクシニラーゼが、フィードバック阻害剤であるS−アデノシルメチオニン及びメチオニンに対して減少した感受性を有する変異ホモセリントランススクシニラーゼである、方法に関する。
【0010】
本発明は、また、S−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素活性が減少した微生物を用いた同様の方法に関する。
【0011】
本発明は、また、上記および下記に開示するような、減少した感受性又は活性を有する変異酵素、前記酵素をコードするヌクレオチド配列、及び、前記ヌクレオチド配列を含む微生物に関する。
【0012】
組み換え酵素は一緒に使用することもでき、また、対応する微生物における、遺伝子の過剰発現又はそれらの欠失等のいくつかの他の変化と組み合わせることもできる。好ましくは、アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(metL又はthrA)が過剰発現し、メチオニンリプレッサーをコードする遺伝子metJが欠失している。
【0013】
本発明の明細書において、遺伝子及び蛋白質は、E.コリにおける対応する遺伝子の命名を用いて特定される。しかしながら、他に明記しない限り、これらの命名の使用は本発明に係るより一般的な意味を有し、他の生物、とりわけ微生物における全ての対応する遺伝子及び蛋白質を包含する。
【0014】
PFAM(protein families database of alignments and hidden Markov models; http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)は、蛋白質配列アラインメントの膨大なコレクションを示す。各PFAMは複数のアラインメントを可視化し、蛋白質ドメインを参照し、生物間の分布を評価し、他のデータベースにアクセスし、そして既知の蛋白質構造を可視化することを可能にする。
【0015】
COGs(clusters of orthologous groups of proteins; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/COG/)は、30の主な系統ラインを示す43の完全に配列が決定されたゲノムと蛋白質配列を比較することにより得られる。各COGは少なくとも3つのラインから定義され、先に保存されたドメインの特定を可能にする。
【0016】
ホモログ配列及びそれらのホモロジーの百分率を特定する手段は当業者にとって周知であり、特にウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/からウェブサイト上で表示される初期パラメーターにて使用できるBLASTプログラムを包含する。次いで、得られた配列を、例えば、プログラムCLUSTALW(http://cbi.ac.uk/clustalw/)又はMULTALIN(http://prodes.toulouse.inra.fr/multalin/cgi-bin/multalin.pl)をそれらのウェブサイト上で表示される初期パラメーターにて使用して、利用(例えばアライン)することができる。
【0017】
既知の遺伝子についてGenBank上で与えられる引例を使用して、当業者は他の生物、細菌株、酵母、真菌、哺乳動物、植物等の同等の遺伝子を決定することができる。このルーチンワークは、他の微生物に由来する遺伝子と配列アラインメントを実行することにより決定できるコンセンサス配列を使用して、他の生物における対応する遺伝子をクローニングするための縮重プローブを設計することで有利に行われる。これらの分子生物学のルーチン方法は当業者に周知であり、例えば、Sambrook et al. (1989 Molecular Cloning: a Laboratory Manual. 2nd ed. Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York)に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
野生型酵素と比較して、メチオニン及びS−アデノシルメチオニンに対して減少したフィードバック感受性を示す、本発明に係る改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼは、野生型配列と比較した場合に少なくとも一つのアミノ酸変異を含む。変異は、好ましくは、ホルミルメチオニンの後の最初のアミノ酸プロリンをナンバー1として数えて、アミノ酸24−30をコードする保存された領域、又は、アミノ酸58−65をコードする領域、又は、アミノ酸292−298をコードする領域から選択される。
【0019】
アミノ酸部位についての全ての参照は、図2に示されるE.コリのmetA遺伝子によりコードされるホモセリンスクシニルトランスフェラーゼを基礎にして作成されている。異なる生物由来の他のホモセリンスクシニルトランスフェラーゼにおける対応する保存領域の相対的位置を、下記に羅列された酵素とともに、図3に示されるような簡単な配列アラインメントによって当業者は見出すことができる。
−gi|20138683|sp|Q97I29|META Clostridium acetobutylicum ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|12230304|sp|Q9PLV2|META Campylobacter jejuni ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|12230277|sp|Q9KAK7|META Bacillus halodurans ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138686|sp|Q97PM9|META Streptococcs pneumoniae ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138715|sp|Q9CEC5|META Lactococcus lactis ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138656|sp|Q92L99|META Sinorhizobium melioti ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138618|sp|Q8YBV5|META Brucella melitensis ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20141549|sp|P37413|META Salmonella typhmurium ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138601|sp|Q8X610|META Escherichia coli O157:H7 ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20231004|sp|P07623|META Escherichia coli ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|12230285|sp|Q9KRM5|META Vibrio cholerae ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|38258142|sp|Q8FWG9|META Brucella melitensis biovar suis ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138631|sp|Q8ZAR4|META Yersinia pestis ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|12231010|sp|P54167|META Bacillus subtilis ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|12230320|sp|Q9WZY3|META Thermotoga maritima ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|20138625|sp|Q8Z1W1|META Salmonella typhi ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−>gi|31340217|sp|Q8D937|META Vibrio vulnificus ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
−gi|31340213|sp|Q87NW7|META Vibrio parahaemolyticus ホモセリン−O−スクシニルトランスフェラーゼ
【0020】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼは、好ましくは、10mMのメチオニン及び1mMのS−アデノシルメチオニンの存在下において野生型酵素の活性の少なくとも10倍の、並びに、10mMのメチオニン及び0.1mMのS−アデノシルメチオニンの存在下において野生型酵素の活性の少なくとも80倍の特異的活性を示す。好ましい酵素は、100mMのメチオニン及び1mMのS−アデノシルメチオニンの存在下において少なくとも初期活性の2パーセントの活性を保持している。
【0021】
好ましくは、本発明による改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼの蛋白質配列は下記に特定される保存領域配列の少なくとも一つにアミノ酸変異を含む。
【0022】
好ましくは、少なくとも一つの変異が、野生型ホモセリントランススクシニラーゼのN末端部分中の、配列番号1に示されるE.コリMetAのアミノ酸配列におけるアミノ酸24−30に相当する、下記に定義されるアミノ酸配列を含む保存領域1中に存在する。この非変異保存領域1は以下の配列を有する:
X1−X2−X3−A−X4−X5−Q
ここで、
X1は、E、D、T、S、L、好ましくはTを表す
X2は、D、S、K、Q、E、A、R、好ましくはSを表す
X3は、R、E、D、好ましくはRを表す
X4は、Y、I、F、A、K、S、V、好ましくはSを表す
X5は、H、S、N、G、T、R、好ましくはGを表す。
【0023】
好ましい実施形態において、非改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ保存領域1は、以下のアミノ酸配列を有する:T−S−R−A−S−G−Q。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態において、少なくとも一つの変異が、野生型ホモセリントランススクシニラーゼのN末端部分中の、配列番号1に示されるE.コリMetAのアミノ酸配列におけるアミノ酸58−65に相当する、保存領域2中に存在する。非変異保存領域2は以下の式を有する:
X1−X2−X3−P−L−Q−X4−X5
ここで、
X1は、G、A、S、好ましくはSを表す
X2は、N、A、好ましくはNを表す
X3は、S、T、好ましくはSを表す
X4は、V、L、I、好ましくはVを表す
X5は、N、E、H、D、好ましくはDを表す。
【0025】
好ましい実施形態において、非改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ保存領域2は、以下のアミノ酸配列を有する:S−N−S−P−L−Q−V−D。
【0026】
本発明の第三の実施形態において、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼは、配列番号1に示されるE.コリMetAのアミノ酸配列におけるアミノ酸292−298に相当する、C末端部分における保存領域中に、少なくとも一つの変異を含む。非変異保存領域3は以下の式を有する:
X1−Y−Q−X2−T−P−X3
ここで、
X1は、V、I、M、好ましくはVを表す
X2は、E、K、G、I、Q、T、S、好ましくはIを表す
X3は、F、Y、好ましくはYを表す。
【0027】
好ましい実施形態において、非改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ保存領域3は、以下のアミノ酸配列を有する:V−Y−Q−I−T−P−Y。
【0028】
好ましい実施形態において、保存領域1中の保存的アラニンは別のアミノ酸、より好ましくはバリンに置換される。改変保存領域は、最も好ましくは次のアミノ酸配列を有する:T−S−R−V−S−G−Q。
【0029】
他の好ましい実施形態において、保存領域2中の保存的アミノ酸L及び/又はQは、他のアミノ酸により置換される。好ましくは、ロイシンはフェニルアラニンに、及び/又は、グルタミンはグルタミン酸又はアスパラギン酸に置換される。最も好ましくは、改変された保存領域2は以下のアミノ酸配列を有する:S−N−S−P−L−E−V−D。
【0030】
さらに好ましい実施形態において、保存領域3中の保存的アミノ酸L及び/又はQは他のアミノ酸に置換される。
【0031】
好ましい適用において、metA遺伝子は、配列番号1で表されるE.コリK12のホモセリントランススクシニラーゼ酵素、及び、ホモセリントランススクシニラーゼ活性を有し、かつ、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%のホモロジー、好ましくは90%のホモロジーを共有する該配列に相同的な配列である。
【0032】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼは、例えば、α−メチルメチオニン、ノルロイシン又はエチオニン等のメチオニンアナログの存在下で増殖する株を選択することによって得ることができる。好ましくは、これらの株は、α−メチルメチオニンの存在下で増殖する間に選択され得る。
【0033】
本発明は、さらに、上記に定義したような本発明による変異ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列、DNA又はRNA配列に関する。好ましい実施形態において、DNA配列は、配列番号1に示される野生型metA遺伝子の保存領域1から3のコード領域中に少なくとも一つの変異を含むという事実により特徴付けられる。前記変異はサイレント変異ではない。
【0034】
これらのDNA配列は、例えば、メチオニンアナログの存在下で増殖する株から調製することができる。改変metA遺伝子を包含する出発DNA断片は、組み換えDNAを調製するための標準的な公知の技術を用いてベクターにクローニングされる。
【0035】
これらのDNA配列は、例えば、野生型ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼをコードするDNA配列を内有する株から非特異的又は標的突然変異法によっても調製することができる。
【0036】
前記DNA領域内の非特異的変異は、例えば、化学物質(例えば、ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホン酸等)及び/又は物理的方法及び/又はPCR反応によって生成され得る。それらは特定の条件下で行われる。
【0037】
DNA断片内の特定の部位に変異を導入する方法は公知であり、Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 1989,. 2nd ed. Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New Yorkに記載されている。
【0038】
上述した方法を用いて、メチオニン及びS−アデノシルメチオニン非感受性を引き起こすアミノ酸配列を保有する改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼをもたらす一つ以上の変異を、任意のmetA遺伝子の前記DNA領域中に導入することができる。好ましくは、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼをコードするDNA配列中の一つ以上のヌクレオチドが、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列が少なくとも一つの変異を示すように変えられる。
【0039】
フィードバック耐性metA対立遺伝子を生産する他の方法は、フィードバック耐性をもたらす異なる点変異を組み合わせることにあり、それにより新たな特性を保有する複合的変異株を生じさせる。
【0040】
本発明に係る改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは野生型酵素と比較して減少した活性を有し、野生型配列と比較した場合にその蛋白質配列に少なくとも一つの変異を有する。
【0041】
変異は、好ましくは、下記に定義する保存領域の一つに存在する。
【0042】
アミノ酸部位についての全ての参照は、E.コリのmetK遺伝子によりコードされるS−アデノシルメチオニンシンテターゼを基礎にして作成されている。異なる生物由来の他のS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおける対応する保存領域の相対的位置は、下記に羅列された酵素とともに、図4に示されるような簡単な配列アラインメントによって当業者により見出すことができる:
>gi|39574954|emb|CAE78795.1| メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ Bdellovibrio bacteriovorus HD100]
>gi|45657232|ref|YP_001318.1| s−アデノシルメチオニンシンテターゼ蛋白質 Leptospira interrogans serovar Copenhageni str. Fiocruz L1-130
>gi|28378057|ref|NP_784949.1| メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ Lactobacillus plantarum WCFS1
>gi|26453553|dbj|BAC43885.1|s−アデノシルメチオニンシンテターゼ Mycoplasma penetrans
>gi|24212014|sp|Q9K5E4| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Corynebacterium glutamicum
>gi|18145842|dbj|BAB81883.1| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Clostridium perfringens str. 13
>gi|13363290|dbj|BAB37241.1| メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ1 Escherichia coli O157:H7
>gi|45443250|ref|NP_994789.1| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Yersinia pestis biovar Mediaevails str. 91001
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>gi|21219978|ref|NP_625757.1| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Streptomyces coelicolor A3(2)]
>gi|39937076|ref|NP_949352.1| メチオニンS−アデノシルトランスフェラーゼ Rhodopseudomonas palustris CGA009
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>gi|44888148|sp|Q7VRG5| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Candidatus Blochmannia floridanus
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>gi|44888146|sp|Q7VFY5| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Helicobacter hepaticus
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>gi|44888142|sp|Q7URU7| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Pirellula spec.
>gi|44888138|sp|Q7NHG0| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Gloeobacter violaceus
>gi|44888137|sp|Q7N119| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Photorhabdus luminescens subsp. laumondii
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>gi|448888136|sp|Q7MTQ0| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Porphyromonas palustris CGA009
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>gi|28378057|ref|NP_784949.1| メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ Lactobacills plantarum WCFS1
>gi|45600470|gb|AAS69955.1| s−アデノシルメチオニンシンテターゼ蛋白質 Leptospira interrogans serovar Copenhageni str. Fiocrus L1-130
>gi|26453553|dbj|BAC43885.1| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Mycoplasma penetrans
>gi|18145842|dbj|BAB81883.1| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Clostridium perfringens str.13
>gi|13363290|dbj|BAB37241.1| メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ1 Escherichia coli O157:H7
>gi|45443250|ref|NP_994789.1| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Yersinia pestis biovar. Mediaevails str. 91001
>gi|44888153|sp|Q8CXS7| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Leptospira interrogans
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>gi|44888149|sp|Q7VUL5| S−アデノシルメチオニンシンテターゼ Bordetella pertussis
【0043】
改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、好ましくは、野生型酵素の活性の少なくとも5倍未満の特異的活性を示す。
【0044】
好ましくは、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼの蛋白質配列は下記に特定する配列の少なくとも一つにアミノ酸変異を含む。
【0045】
本発明の一実施形態において、アミノ酸の変化は、双方ともにMetKの活性を減少させる89位のシステイン又は239位のシステインに関する(Reczkowski及びMarkham, 1995, JBC 270, 31, 18484-18490)。
【0046】
一つの好ましい実施形態において、少なくとも一つの変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸54−59に相当する、保存領域1中に存在する。この非変異保存領域1は下記のアミノ酸配列を含む:
G−E−X1−X2−X3−X4
ここで、
X1は、I、V、L、T、好ましくはIを表す
X2は、T、K、S、R、好ましくはTを表す
X3は、T、S、G、好ましくはTを表す
X4は、S、N、T、K、E、R、P、N、A、好ましくはSを表す。
【0047】
好ましくは、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域1は以下のアミノ酸配列を有する:G−E−I−T−T−S。
【0048】
別の好ましい実施形態において、少なくとも一つの変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸98−107に相当する、保存領域2中に存在する。非変異保存領域2は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
Q−S−X1−D−I−X2−X3−G−V−X4
ここで、
X1は、P、Q、A、S、好ましくはPを表す
X2は、A、N、Q、S、F、好ましくはNを表す
X3は、V、Q、Y、R、M、N、好ましくはQを表す
X4は、K、D、N、T、S、A、E、好ましくはDを表す。
【0049】
好ましくは、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域2は以下のアミノ酸配列を有する:Q−S−P−D−I−N−Q−G−V−D。
【0050】
別の好ましい実施形態において、少なくとも一つの変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸114−121に相当する、保存領域3中に存在する。非変異保存領域3は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−G−A−G−D−Q−G−X2
ここで、
X1は、Q、A、I、V、E、T、好ましくはQを表す
X2は、L、I、S、V、M、好ましくはLを表す。
【0051】
好ましくは、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域3は次のアミノ酸配列を有する:Q−G−A−G−D−Q−G−L。
【0052】
別の好ましい実施形態において、少なくとも一つの変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸137−144に相当する、保存領域4中に存在する。非変異保存領域4は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−I−X2−X3−X4−H−X5−X6
ここで、
X1は、S、P、T、A、好ましくはPを表す
X2は、A、T、W、Y、F、S、N、好ましくはTを表す
X3は、M、Y、L、V、好ましくはYを表す
X4は、S、A、好ましくはAを表す
X5は、K、R、E、D、好ましくはRを表す
X6は、L、I、好ましくはLを表す。
【0053】
好ましくは、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域4は以下のアミノ酸配列を有する:P−I−T−Y−A−H−R−L。
【0054】
別の好ましい実施形態において、少なくとも一つの変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸159−163に相当する、保存領域5中に存在する。非変異保存領域5は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−L−X2−X3−D
ここで、
X1は、W、F、Y、V、E、好ましくはWを表す
X2は、R、G、L、K、好ましくはRを表す
X3は、P、L、H、V、好ましくはPを表す。
【0055】
好ましくは、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域5は次のアミノ酸配列を有する:W−L−R−P−D。
【0056】
好ましくは、少なくとも一つの変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸183−189に相当する、保存領域6中に存在する。非変異保存領域6は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−X2−X3−S−X4−Q−H
ここで、
X1は、V、I、好ましくはVを表す
X2は、V、L、I、好ましくはVを表す
X3は、V、L、I、M、好ましくはLを表す
X4は、T、V、A、S、H、好ましくはTを表す。
【0057】
好ましい実施形態において、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域6は次のアミノ酸配列を有する:V−V−L−S−T−Q−H。
【0058】
好ましくは、変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸224−230に相当する、保存領域7中に導入される。非変異保存領域7は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−N−P−X2−G−X3−F
ここで、
X1は、I、V、好ましくはIを表す
X2は、T、G、S、好ましくはTを表す
X3は、R、T、Q、K、S、好ましくはRを表す。
【0059】
好ましい実施形態において、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域7は次のアミノ酸配列を有する:I−N−P−T−G−R−F。
【0060】
好ましくは、変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸231−237に相当する、保存領域8中に導入される。非変異保存領域8は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−X2−G−X3−P−X4−X5
ここで、
X1は、T、V、I、Y、E、好ましくはVを表す
X2は、V、I、L、N、好ましくはIを表す
X3は、G、S、好ましくはGを表す
X4は、M、I、Q、A、H、D、好ましくはMを表す
X5は、G、S、A、H、好ましくはGを表す。
【0061】
好ましい実施形態において、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域8は次のアミノ酸配列を有する:V−I−G−G−P−M−G。
【0062】
好ましくは、変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸246−253に相当する、保存領域9中に導入される。非変異保存領域9は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
X1−X2−D−T−Y−G−G
ここで、
X1は、M、I、好ましくはIを表す
X2は、V、I、好ましくはIを表す。
【0063】
好ましい実施形態において、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域9は次のアミノ酸配列を有する:I−V−D−T−Y−G−G。
【0064】
好ましくは、変異は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸269−275に相当する、保存領域10中に導入される。非変異保存領域10は下記に定義されるアミノ酸配列を含む:
K−V−D−R−S−X1−X2
ここで、
X1は、A、G、好ましくはAを表す
X2は、A、S、L、好ましくはAを表す。
【0065】
好ましい実施形態において、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域10は次のアミノ酸配列を有する:K−V−D−R−S−A−A。
【0066】
別の好ましい本発明の適用は、少なくとも一つの変異が保存領域11に存在する。非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼはそのC末端部分に次のアミノ酸配列を有する該保存領域を内有する:
X1−X2−Q−X3−X4−Y−A−I−G−X5−X6
ここで、
X1は、L、E、I、Q、T、好ましくはEを表す
X2は、V、I、L、好ましくはIを表す
X3は、V、L、I、好ましくはVを表す
X4は、A、S、好ましくはSを表す
X5は、V、I、R、K、A、好ましくはVを表す
X6は、A、V、T、S、好ましくはAを表す。
【0067】
この領域は、配列番号2に示されるE.コリMetKのアミノ酸配列におけるアミノ酸295−305に相当する。
【0068】
好ましい実施形態において、非改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼ保存領域11は次のアミノ酸配列を有する:E−I−Q−V−S−Y−A−I−G−V−A。
【0069】
本発明の別の好ましい適用において、変異は蛋白質のN末端に導入され、フレームシフト及び最後の6アミノ酸における変化をもたらす。
【0070】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域1中のセリンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該セリンはアスパラギンに置換される。
【0071】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域1において以下のアミノ酸配列を有する:G−E−I−T−T−N。
【0072】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域2中の保存的グリシンが別のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該保存的グリシンはセリンに置換される。
【0073】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域2において以下のアミノ酸配列を有する:Q−S−P−D−I−N−Q−S−V−D。
【0074】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域3中の保存的グリシンが別のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該保存的グリシンはセリンに置換される。
【0075】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域3において以下のアミノ酸配列を有する:Q−S−A−G−D−Q−G−L。
【0076】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域4中の保存的ヒスチジン及び/又は半保存的プロリンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、保存的ヒスチジンはチロシンに、及び/又は、該半保存的プロリンはロイシンに置換される。
【0077】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域4において次のアミノ酸配列のうちの一つを有する:
P−I−T−Y−A−Y−R−L、
L−I−T−Y−A−H−R−L、
L−I−T−Y−A−Y−R−L。
【0078】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域5中の半保存的アルギニンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該アルギニンはシステインに置換される。
【0079】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域5において以下のアミノ酸配列を有する:W−L−C−P−D。
【0080】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域6中の保存的ヒスチジン又は半保存的バリンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該保存的ヒスチジンはチロシンに、及び/又は、該バリンはアスパラギン酸に置換される。
【0081】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域6において以下の3つのアミノ酸配列のうちの一つを有する:
V−V−L−S−T−Q−Y
V−D−L−S−T−Q−H
V−D−L−S−T−Q−Y。
【0082】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域7中の半保存的スレオニンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該スレオニンはイソロイシンに置換される。
【0083】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域7において以下のアミノ酸配列を有する:I−N−P−I−G−R−F。
【0084】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域8中の保存的プロリンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該プロリンはセリンに置換される。
【0085】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域8において以下のアミノ酸配列を有する:V−I−G−G−S−M−G。
【0086】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域9中の二番目の保存的グリシンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該グリシンはアスパラギン酸に置換される。
【0087】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域9において他のアミノ酸配列を有する:I−V−D−T−Y−G−D。
【0088】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域10中の保存的セリンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該セリンはフェニルアラニンに置換される。
【0089】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域10において以下のアミノ酸配列を有する:K−V−D−R−F−A−A。
【0090】
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼにおいては、好ましくは、保存領域11中の保存的イソロイシンが他のアミノ酸に置換される。本発明の好ましい適用において、該イソロイシンはロイシンに置換される。
【0091】
好ましい実施形態において、改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼは、保存領域11において以下のアミノ酸配列を有する:E−I−Q−V−S−Y−A−L−G−V−A。
【0092】
本発明は、さらに、上記に定義したような本発明による変異S−アデノシルメチオニンシンテターゼをコードするヌクレオチド配列、DNA又はRNA配列に関する。好ましい実施形態において、これらのDNA配列は、配列番号2に野生型として示される野生型metK遺伝子の保存領域1から11のコードDNA配列領域に少なくとも一つの変異を含むという事実により特徴付けられる。前記変異はサイレント変異ではない。
【0093】
好ましい適用において、metK遺伝子は、配列番号2で表されるE.コリK12のS−アデノシルメチオニンシンテターゼ、及び、S−アデノシンメチルメチオニンシンテターゼ活性を有し、かつ、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%のホモロジー、好ましくは90%のホモロジーを共有する該配列に相同的な配列である。
【0094】
上述した変異S−アデノシルメチオニンシンテターゼ遺伝子は、上記又は下記に開示された、ランダムもしくは標的突然変異又は合成DNAの構築を含む、当業者に公知の通常の技術によって得ることができる。
【0095】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼをコードするmetA遺伝子及び/又は改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼをコードするmetK遺伝子は、染色体又は染色体外にコードされ得る。染色体内では、本分野の専門家にとって公知の組み換え法により導入された一つ又はいくつかのコピーがゲノム上に存在する。染色体外では、両遺伝子は、複製起点及びひいては細胞内のコピー数について異なった、異なるタイプのプラスミドにより保有され得る。それらは、厳密に複製する低コピー数のプラスミド(pSC101、RK2)、低コピー数プラスミド(pACYC、pRSF1010)又は高コピー数プラスミド(pSK bluescript II)に対応して、1−5コピー、約20又は最大で500コピー存在する。
【0096】
metA及び/又はmetK遺伝子は、誘導分子により誘導されることを必要とする又は必要としない異なる強さのプロモーターを使用して発現することができる。プロモーターPtrc、Ptac、Plac、ラムダプロモーターcI又はこの分野の専門家に公知の他のプロモーターが例示される。
【0097】
MetA及び/又はMetKの発現は、対応するメッセンジャーRNA(Carrier及びKeasling (1998) Biotechnol. Prog. 15, 58-64)又は蛋白質(例えば、GSTタグ、Amersham Biosciences)を安定化又は不安定化する要素により向上又は減少し得る。
【0098】
本発明は、また、本発明に係るフィードバック耐性metA対立遺伝子及び最終的には本発明に係る減少した活性を有するmetK対立遺伝子を含む微生物に関する。
【0099】
そのような株は、少なくとも一つのフィードバック耐性metA対立遺伝子により、及び/又は、減少した活性を有するMetK酵素により生ずるSAMの減少した生産により、それらの株が調節解除されたメチオニン代謝を有する事実により、特徴付けられる。
【0100】
新規株は、メチオニン代謝が同様の代謝経路により進行する任意の微生物から調製されうる。
【0101】
グラム陰性細菌、特にE.コリが、とりわけ好適である。
【0102】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ酵素及びS−アデノシルメチオニンシンテターゼを発現させるために、減少した活性を有するフィードバック耐性metA対立遺伝子及びmetK対立遺伝子は慣例の方法を用いて宿主株に形質転換される。改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ及びS−アデノシルメチオニンシンテターゼの特性を保持する株のスクリーニングは、例えば、酵素的試験を用いて実現される。
【0103】
例えば、ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ活性は、ホモセリン及びスクシニルCoAを基質として用いる酵素的試験にて決定することができる。反応はホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ酵素を含む蛋白質抽出物を加えることにより開始され、蛋白質沈殿及びシリル化剤による誘導体化後に、O−スクシニルホモセリンの形成がGC−MSによりモニタリングされる。フィードバック阻害は、反応混合物中のメチオニン及びS−アデノシルメチオニンの存在下で試験される。
【0104】
S−アデノシルメチオニンシンテターゼ活性はメチオニン及びATPを基質として用いる酵素的試験により決定することができる。反応はS−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素を含む蛋白質抽出物を加えることにより開始され、S−アデノシルメチオニンの形成がFIA−MS/MSによりモニタリングされる。
【0105】
好ましくは、使用は、内因性metA及びmetK遺伝子が不活性化され、新規組み換え遺伝子により補完されたE.コリ株によりなされる。
【0106】
減少した活性を有するフィードバック耐性metA対立遺伝子及びmetK対立遺伝子は、重要な生合成の制御点における制御を除去し、それにより、アスパラギン酸の下流に位置する多数の化合物の生産を増幅する。これらには、特に、ホモセリン、O−スクシニルホモセリン、シスタチオニン、ホモシステイン、メチオニン及びS−アデノシルメチオニンが含まれる。
【0107】
特に、本発明は、新規微生物を培養することによる、L−メチオニン、その前駆体又はそれらに由来する化合物の調製に関する。上述した生成物は下記のように化合物(I)として分類される。
【0108】
化合物(I)の生産の増加は、以下の、化合物(I)の前駆体であるアスパラギン酸の生産に関連する遺伝子の発現レベルを変化させることや、欠失させることにより達成することができる。
遺伝子 genebank登録名
ackA g1788633 酢酸キナーゼ
pta g1788635 ホスホトランスアセチラーゼ
acs g1790505 酢酸シンターゼ
aceA g1790445 イソクエン酸リアーゼ
aceB g1790444 リンゴ酸シンターゼ
aceE g1786304 ピルビン酸デヒドロゲナーゼE1
aceF g1786305 ピルビン酸デヒドロゲナーゼE2
lpd g1786307 ピルビン酸デヒドロゲナーゼE3
aceK g1790446 イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスファターゼ
sucC g1786948 スクシニルCoAシンテターゼ、ベータサブユニット
sucD g1786949 スクシニルCoAシンテターゼ、アルファサブユニット
ppc g1790393 ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
pck g1789807 ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ
pykA g1788160 ピルビン酸キナーゼII
pykF g1787965 ピルビン酸キナーゼI
poxB g1787096 ピルビン酸オキシダーゼ
pps g1787994 ホスホエノールピルビン酸シンターゼ
ilvB g1790104 アセトヒドロキシ酸シンターゼI、大サブユニット
ilvN g1790103 アセトヒドロキシ酸シンターゼI、小サブユニット
ilvG g1790202 アセトヒドロキシ酸シンターゼII、大サブユニット
g1790203
ilvM g1790204 アセトヒドロキシ酸シンターゼII、小サブユニット
ilvI g1786265 アセトヒドロキシ酸シンターゼIII、大サブユニット
ilvH g1786266 アセトヒドロキシ酸シンターゼIII、小サブユニット
aroF g1788953 DAHPシンテターゼ
aroG g1786969 DAHPシンテターゼ
aroH g1787996 DAHPシンテターゼ
aspC g1787159 アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
【0109】
加えて、Rhizobium etli由来のピルビン酸カルボキシラーゼ(アクセッション番号U51439)を、E.コリに遺伝子操作により導入し、過剰発現させてもよい。
【0110】
化合物(I)の生産の付加的な増加は、遺伝子thrA(ホモセリンデヒドロゲナーゼ/アスパルトキナーゼ、g1786183)又はmetL(ホモセリンデヒドロゲナーゼ/アスパルトキナーゼ、g1790376)又はlysC(アスパルトキナーゼ、g1790455)又はasd(アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、g1789841)又はそれらの組み合わせによりコードされるホモセリンを合成する酵素等の、リジン/メチオニン/経路の遺伝子を過剰発現させることにより達成できる。
【0111】
(I)の生産のさらなる増加は、硫酸同化及びシステイン生産に関与する遺伝子の過剰発現により可能となる。これは以下の遺伝子(下記参照)を過剰発現させること、又は、Colyer及びKredich(1994 Mol Microbiol 13 797-805)により記載されたように構成的cysB対立遺伝子の導入を通じた経路を調節解除すること、及びその阻害剤であるL−システインに対して減少した感受性を有するセリンセチルトランスフェラーゼをコードするcysE対立遺伝子を導入することによって達成することができる(米国特許出願 US 6,218,168,、Denk & Bock 1987 J Gen Microbiol 133 515-25)。次の遺伝子を過剰発現させる必要がある。
CysA g1788761 硫酸ペルメアーゼ
CysU g1788764 システイン輸送系
CysW g1788762 膜結合硫酸輸送系
CysZ g1788753 cysKのORF上流
cysN g1789108 ATPスルフリラーゼ
cysD g1789109 硫酸アデニルトランスフェラーゼ
cysC g1789107 アデニリル硫酸キナーゼ
cysH g1789121 アデニリル硫酸リダクターゼ
cysI g1789122 亜硫酸リダクターゼ、アルファサブユニット
cysJ g1789123 亜硫酸リダクターゼ、ベータサブユニット
cysE g1790035 セリンアセチルトランスフェラーゼ
cysK g1788754 システインシンターゼ
cysM g2367138 O−アセチル−スルフヒドロラーゼ
【0112】
加えて、C1(メチル)基の生産に関与する遺伝子が、以下の遺伝子を過剰発現させることにより上昇し得る。
serA g1789279 ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ
serB g1790849 ホスホセリンホスファターゼ
serC g1787136 ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ
glyA g1788902 セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ
metF g1790377 5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ
【0113】
加えて、メチオニンの生産に直接関与する遺伝子を過剰発現させてもよい。
metB g1790375 シスタチオニンガンマ−シンターゼ
metC g1789383 シスタチオニンベータ−リアーゼ
metH g1790450 B12依存性ホモシステイン−N5−メチルテトラヒドロ葉酸トランスメチラーゼ
metE g2367304 テトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸メチルトランスフェラーゼ
metF g1790377 5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸レダクターゼ
metR g1790262 metE及びmetH並びに自己制御のための正の制御遺伝子
【0114】
さらに、メチオニンを分解する経路又はメチオニン生産経路から逸脱させる経路における遺伝子の発現を減少させてもよく、あるいは該遺伝子を欠失させてもよい。
speD g1786311 S−アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ
spec g1789337 オルニチンデカルボキシラーゼ
thrB g1786184 ホモセリンキナーゼ
astA g1788043 アルギニンスクシニルトランスフェラーゼ
dapA g1788823 ジヒドロキシジピコリネートシンターゼ
【0115】
(I)の生産のさらなる増加は、特開2000−157267(A/3)(GenBank g1790373も参照)に示唆されるように、メチオニンレギュロンのダウンレギュレーションに責を負うリプレッサー蛋白質MetJの遺伝子を欠失させる手段により可能となる。
【0116】
PCT特許出願NPCT/FR04/00354(その内容は参照することにより本明細書に援用される)に記載されているように、(I)の生産は、優先的に又は専らHSを使用してOスクシニルホモセリンからホモセリンを生産する、変化したmetB対立遺伝子を用いることにより、さらに増加し得る。
【0117】
別の好ましい実施形態において、本発明の微生物において、及び、本発明に係る方法において用いられる微生物において、アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を過剰発現させ、及び/又は、メチオニンリプレッサーmetJをコードする遺伝子を欠失させる。
【0118】
好ましくは、アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼは、フィードバックが調節解除されたThrA対立遺伝子によりコードされる。そのようなフィードバック調節解除は、ThrA酵素中に変異Phe318Serを導入することにより得られる。酵素の位置は、本明細書中では、genbankアクセッション番号V00361.1(g1786183)に開示されるThrA配列を参照することにより与えられる。
【0119】
上述したmetA及びmetK対立遺伝子は、真核生物又は原核生物において用いられ得る。好ましくは、用いられる生物は原核生物である。好ましい適用において、該生物はE.コリ又はC.グルタミカムのいずれかである。
【0120】
本発明は、化合物(I)の生産のための工程に関する。化合物(I)は、通常、設計された細菌株の発酵によって調製される。
【0121】
本発明によれば、用語「培養」及び「発酵」は区別せずに、単純な炭素源を含む適切な培養培地における微生物の増殖を意味するのに用いられる。
【0122】
本発明によれば、単純な炭素源とは、当業者が微生物、特に細菌の通常の増殖を得るのに用いることのできる炭素源をいう。例えば、それは、グルコース、ガラクトース、スクロース、ラクトースもしくは糖液、又はそれらの糖の副生成物等の同化糖であり得る。特に好ましい単純な炭素源はグルコースである。別の好ましい単純炭素源はスクロースである。
【0123】
当業者は本発明に係る微生物のための培養条件を決定することができる。特に、細菌は、C.グルタミカムについては20℃から55℃の間、好ましくは25℃から40℃の間、またより具体的には約30℃で、E.コリについては約37℃で発酵される。
【0124】
発酵は、通常、少なくとも一つの単純炭素源、及び必要であれば代謝物の生産に必要な補基質を含む、用いられる細菌に適合した既知の規定組成の無機培養培地とともに発酵槽中で行われる。
【0125】
特に、E.コリのための無機培養培地は、M9培地(Anderson, 1946, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 32:120-128)、M63培地(Miller, 1992, A Short Course in Bacterial Genetics: A Laboratory Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)又はSchaefer et al.により規定されたような培地(1999, Anal. Biochem. 270:88-96)と同一又は類似の組成であり得る。
【0126】
同様に、C.グルタミカムのための無機培養培地は、BMCG培地(Liebl et al., 1989, Appl. Microbiol. Biotechnol. 32: 205-210)又はRiedel et al.により記載されたような培地(2001, J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 3: 573-583)と同一又は類似の組成であり得る。培地は、変異により導入された栄養要求性を補うために、補充されていてもよい。
【0127】
発酵後、化合物(I)を回収し、必要であれば精製する。培養培地中のメチオニン等の化合物(I)の回収及び精製のための方法は、当業者にとって周知である。
【実施例】
【0128】
実施例1
メチオニン及びS−アデノシルメチオニンに対して減少したフィードバック感受性を示すホモセリントランススクシニラーゼを含有するE.コリ変異体の単離
【0129】
α−メチルメチオニン上で増殖するE.コリ株の単離
α−メチルメチオニンは、メチオニンの増殖阻害アナログであり、非常に低濃度でE.コリの増殖率に即効性の効果を生じる(最小阻害濃度は1μg/mlで、最大限の阻害のための最小濃度は5μg/mlである。Rowbury et al., 1968)。アナログは、ホモセリントランススクシニラーゼのフィードバック阻害においてメチオニンを擬態し、代謝されないことで蛋白質合成を妨害することができる。変異株のみがアナログを含む培地中で増殖することができる。
【0130】
E.コリをルーチンに、必要であれば適切な抗生物質を添加したLB中で、37℃にて、好気的に増殖した。α−メチルメチオニンアナログ耐性のために使用された培地は、KHPO 8g、NaHPO 2g、(NHSO 0.75g、(NHHPO 8g、NHCl 0.13g、クエン酸 6.55g、MgSO 2.05g、CaCl 40mg、FeSO 40mg、MnSO 20mg、CoCl 8mg、ZnSO 4mg、(NHMo 2.8mg、CuCl 2mg、HBO 1mgを含む(1リットルあたり)最小培地であった。pHを6.7に調整し、培地を安定させた。使用前に、グルコース10g/l及びチアミン10mg/lを加えた。
【0131】
Sigmaにより市販されたα−メチルメチオニン粉末は微量のメチオニンを含む。メチオニン添加なしでは増殖できないE.コリ株(MG1655 ΔmetE)の終夜液体培養が、最小培地からメチオニン(α−メチルメチオニンに由来する)を除去するために行われた。培養液を7000rpmで10分間遠心し、上清を濾過した(Sartorius 0.2μm)。寒天15g/lをこの最小培地に加えた。
【0132】
最小培地中の終夜培養物から110cell/mlの野生型株(MG1655)を、滅菌水で4回洗浄の工程後、最小培地及びα−メチルメチオニンを有するプレート上に塗布した。プレートをコロニーが出現するまで37℃でインキュベートした。
【0133】
ホモセリントランススクシニラーゼ酵素をコードするmetA遺伝子のコード配列における変異の証拠
LB培地中での培養後、4mg/mlのα−メチルメチオニン上で増殖した4つのコロニーからゲノムDNAを調製した。細胞ペレットを滅菌水で1回洗浄し、30μlの滅菌水で再懸濁した。細胞を95℃で5分間加熱することで破壊し、細片をペレットにした。metA遺伝子を、Taqポリメラーゼ及び以下のプライマーを使用して、PCR増幅した:
【0134】
【化1】

【0135】
3つのコロニーにおいて、アミノ酸置換をもたらす点変異が検出された。クローンmetA11では、CAGがGAGに交換され、QのEによる置換をもたらした。metA*13では、TTGがTTTに交換され、LのFによる置換をもたらした。metA*14では、GCGがGTGに交換され、AのVによる置換をもたらした(図2参照)。
【0136】
図3に示されるアラインメントから見て取れるように、置換された全ての3つのアミノ酸は、多様な種由来のMetA蛋白質において高度に保存されている。
【0137】
変異型ホモセリントランススクシニラーゼ酵素は、メチオニン及びS−アデノシルメチオニンに対して減少したフィードバック感受性を示す
ホモセリントランススクシニラーゼの活性がin vitroで決定された。野生型又は変異体酵素を保有するE.コリ株を、2.5g/lのグルコースを含む富栄養培地で培養し、後期対数増殖期にて回収した。細胞を冷たいリン酸カリウム緩衝液で懸濁し、氷上でソニケートした(Branson sonifier, 70W)。遠心後、上清中に含まれる蛋白質を定量した(Bradford, 1976)。
【0138】
10μlの抽出物を、30mMホモセリン及び4mMスクシニルCoAとともに、25℃で30分間インキュベートした。メチオニン及び/又はS−アデノシルメチオニンを表示したように添加した。ホモセリントランススクシニラーゼ酵素により生産されたスクシニルホモセリンを、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロアセタミド(TBDMSTFA)で誘導体化した後、GC−MSにより定量した。L−セリン[1−13C]を内部標準として含めた。
【0139】
ホモセリントランススクシニラーゼ活性の結果を下記の表1に報告する:
【0140】
【表1】

【0141】
変異ホモセリントランススクシニラーゼ酵素は、このように、メチオニン及びS−アデノシルメチオニンに対して減少したフィードバック感受性を示す。
【0142】
実施例2
減少した活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素を含有するE.コリ変異体の単離
【0143】
ノルロイシン上で増殖するE.コリ株の単離
ノルロイシンはメチオニンの増殖阻害アナログである。より高濃度(50mg/l)では、変異体のみがアナログを含む培地で増殖することができる。このような変異の大部分は、metK及びmetJ遺伝子座に位置する。
【0144】
E.コリをルーチンに、必要であれば適切な抗生物質を添加したLB中で、37℃にて、好気的に増殖した。ノルロイシンアナログ耐性のために使用された培地は、KHPO 8g、NaHPO 2g、(NHSO 0.75g、(NHHPO 8g、NHCl 0.13g、クエン酸 6.55g、MgSO 2.05g、CaCl 40mg、FeSO 40mg、MnSO 20mg、CoCl 8mg、ZnSO 4mg、(NHMo 2.8mg、CuCl 2mg、HBO 1mgを含む(1リットルあたり)最小培地であった。pHを6.7に調整し、培地を安定させた。使用前に、グルコース10g/l及びチアミン10mg/lを加えた。
【0145】
最小培地中の終夜培養物からの110cell/mlの野生型株(MG1655)を、滅菌水で4回洗浄の工程後、最小培地及びノルロイシン(50−200g/l)を有するプレート上に塗布した。プレートをコロニーが出現するまで37℃でインキュベートした。
【0146】
S−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素をコードするmetK遺伝子のコード配列における変異の証拠
ゲノムDNAを、LB液体培地中で増殖した培養物から調製した。細胞ペレットを滅菌水で1回洗浄し、30μlの滅菌水で再懸濁した。細胞を95℃で5分間加熱することで破壊し、細片を抽出した。
【0147】
DNAを、Taqポリメラーゼにより、以下のプライマーを使用して、PCRで増殖した:
【0148】
【化2】

【0149】
metK遺伝子をシークエンスした。10のクローンにおいて、アミノ酸置換をもたらす点変異が検出された。クローンmetK*59/105では、AGCがAACに交換され、SのNによる置換をもたらし(59位)、かつ、GGCがAGCに交換され、GのSによる置換をもたらした(105位)。クローンmetK*105では、GGCがAGCに交換され、GのSによる置換をもたらした。クローンmetK*115では、GGCがAGCに交換され、GのSによる置換をもたらした。metK*137では、CCTがCTTに置換され、PのLによる置換をもたらした。metK*142では、CACがTACに置換され、HのYによる置換をもたらした。metK*161/235では、CGCがTGCに置換され、RのCによる置換をもたらし、かつ、CCAがTCAに置換され、PのSによる置換をもたらした。metK*189では、CACがTACに置換され、HのYによる置換をもたらした。metK*227では、ACCがATCに置換され、TのIによる置換をもたらした。metK*253では、GGCがGACに置換され、GのDによる置換をもたらした。metK*273では、TCCがTTCに置換され、SのFによる置換をもたらした(図5参照)。
【0150】
図4に示されるアラインメントから見て取れるように、置換された全てのアミノ酸は、多様な種由来のMetK蛋白質において保存されている。
【0151】
減少した活性を有する組み換えS−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素
S−アデノシルメチオニンシンテターゼ活性がin vitroで決定された。野生型又は変異体酵素を保有するE.コリ株を、5g/lのグルコースを含む最小培地中で培養し、後期対数増殖期にて回収した。細胞を冷たいリン酸カリウム緩衝液で再懸濁し、氷上でソニケーションした(Branson sonifier, 70W)。遠心後、上清中に含まれる蛋白質を定量した(Bradford, 1976)。
【0152】
100μlの抽出物を、10mMメチオニン及び10mMATPとともに、37℃で30分間培養した。塩化カリウムを、酵素を活性化させるために含めた。メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ酵素により生産されたアデノシルメチオニンを、FIA−MS/MSにより定量した。
【0153】
S−アデノシルメチオニンシンテターゼ活性の結果を下記の表2に報告する。
【0154】
【表2】

【0155】
実施例3
変化したホモセリントランススクシニラーゼ及びメチオニン生合成経路の他の酵素の過剰発現によるO−スクシニルホモセリン又はメチオニンの生産のためのE.コリ株の構築
【0156】
O−スクシニルホモセリンの生産を可能にするE.コリ株の構築のために、ホモセリンデヒドロゲナーゼ及びアスパルトキナーゼをコードするmetL遺伝子を過剰発現するプラスミドを、metAの異なる対立遺伝子を内有する株に導入した。metLを過剰発現するプラスミドは次のように構築した:
次の2つのオリゴヌクレオチドを用いた:
−32塩基のMetLF(配列番号7):
【0157】
【化3】

【0158】
ここで
−遺伝子metLの配列(4127415-4127441)に相同的な領域(小文字)(配列4127415-4129847、ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/上の配列を参照)
−酵素BspHI(下線)のための制限部位を形成するmetLに関連した配列とともにある領域(大文字)、
−38塩基のMetBLAR(配列番号8):
【0159】
【化4】

【0160】
ここで
−遺伝子metLの配列(4129894-4129866)に相同的な領域(小文字)
−HindIII制限部位を内有する領域(大文字)
【0161】
遺伝子metLを、オリコヌクレオチドMetLF及びMetBLARを用いてPCRにより増幅し、metL遺伝子のN及びC末端に、それぞれ、BspHI及びHindIII制限部位を導入した。生じたPCR断片をBspHI及びHindIIIにより切断し、前もってNcoI及びHindIIIにより切断されたベクターpTRC99A(Stratagene)にクローニングした。
【0162】
プラスミド調製を、適正なサイズのインサートの存在について行った。metLのDNA配列を確認し、生じたプラスミドpTRCmetLを対立遺伝子metA*11及びmetA*13を内有する株に導入した。
【0163】
ホモセリンデヒドロゲナーゼII(HDH)活性がin vitroで決定された。E.コリ株を10g.l-1グルコースを有する最小培地中で培養し、後期対数増殖期に回収した。細胞を冷たいリン酸カリウム緩衝液で再懸濁し、氷上でソニケートした(Branson sonifier, 70W)。遠心後、上清中に含まれる蛋白質を定量した(Bradford, 1976)。
【0164】
30μlの抽出物を、25mMホモセリン及び1mMNADPとともに、分光光度計にて30℃でインキュベートした。リン酸カルシウムを酵素を活性化させるために含めた。E.コリはホモセリンデヒドロゲナーゼ活性をコードする第二の遺伝子(thrA)を内有しているので、この活性を阻害するスレオニンを加えた。NADPHの出現を340nmで30分間モニターした。
【0165】
PtrcプロモーターからのmetLの発現は、プラスミドを有する同様の株と比較してHDH活性を劇的に増大させる。
【0166】
【表3】

【0167】
別の適用において、メチオニン制御遺伝子metJを、metA*11、 metA*13及びmetA*14対立遺伝子を内有する株において欠失させた。metJ遺伝子を不活性化するために、Datsenko & Wanner (2000)に記載の相同的組み換え戦略を用いた。この戦略は、クロラムフェニコール耐性カセットの挿入を可能にする一方、関心のある遺伝子の大部分を欠失させる。この目的のため、2つのオリゴヌクレオチドが使用された:
100塩基のDmetJF(配列番号9):
【0168】
【化5】

【0169】
ここで
−遺伝子metJの配列(4126216-4126137)に相同的な領域(小文字)(配列4125658-4125975、ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/上の配列を参照),
−クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L., 2000. PNAS, 97: 6640-6645の配列を参照)、
−100塩基のDmetJR(配列番号10):
【0170】
【化6】

【0171】
ここで
−遺伝子metJの配列(4125596-4125675)と相同的な領域(小文字)
−クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(大文字)
【0172】
オリゴヌクレオチドDmetJR及びDmetJFを、プラスミドpKD3からクロラムフェニコール耐性カセットを増幅するために用いた。得られたPCR産物を、その後、Redリコンビナーゼ酵素が発現しており、相同的組み換えを可能にする株MG1655(pKD46)にエレクトロポレーションにより導入した。次いで、クロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、下記に定義するオリゴヌクレオチドMetJR及びMetJFを用いて、PCR解析により確認した。保持している株をMG1655(ΔmetJ::Cm)metA*と命名した。
【0173】
【化7】

【0174】
次いで、クロラムフェニコール耐性カセットを除去した。クロラムフェニコール耐性カセットのFRT部位で作用するリコンビナーゼFLPを有するプラスミドpCP20を、エレクトロポレーションにより組み換え株に導入した。42℃における一連の培養後、クロラムフェニコール耐性カセットの消失を、先ほど用いたのと同じオリゴヌクレオチドを用いてPCR解析により確認した。保持している株をMG1655(ΔmetJ)metA*と命名した。
【0175】
続いて、metL遺伝子を内有するプラスミドpTRCmetLをこれらの株に導入すると、ΔmetJ metA*11 pTRCmetL、ΔmetJ metA*13 pTRCmetL及びΔmetJ metA*14 pTRCmetLが生じた。
【0176】
実施例4
さらに減少したフィードバック感受性を有する酵素を発現するホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ対立遺伝子の構築
【0177】
フィードバック阻害剤であるメチオニン及びSAMに対するホモセリントランススクシニラーゼの感受性をさらに減少させるために、他のmetA変異体が部位特異的突然変異により構築された。
【0178】
まず、metA及びmetA*11対立遺伝子が、ベクターpTRC99A(Stratagene)にクローニングされた。以下の2つのオリゴヌクレオチドが使用された:
−49塩基のMetA-Ncol(配列番号13):
【0179】
【化8】

【0180】
ここで
−遺伝子metAの配列(4211862-4211892)に相同的な領域(小文字)(配列4211859-4212788、ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/上の配列を参照)、
−酵素NcoIのための制限部位(下線)を形成するmetAに関連した配列とともにある領域(大文字)
−47塩基のMetA-EcoRI(配列番号14):
【0181】
【化9】

【0182】
ここで
−遺伝子metAの配列(4212804-42127774)に相同的な領域(小文字)
−制限部位EcoRIを内有する領域(大文字)
【0183】
対立遺伝子metA及びmetA*11を、オリコヌクレオチドMetAF及びMetARを用いてPCRにより増幅し、metA遺伝子のN及びC末端に、それぞれ、NcoI及びEcoRI制限部位を導入した。生じたPCR断片をNcoI及びEcoRIにより切断し、前もってNcoI及びEcoRIにより切断されたベクターpTRC99A(Stratagene)にクローニングした。
【0184】
プラスミド調製を、適正なサイズのインサートの存在について行い、metA及びmetA*11のDNA配列をシークエンスにより確認した。
【0185】
metA及びmetA*11を発現するクローンの酵素的解析は、非常に低いMetA活性を与えた。我々は、ベクターpTRC99AにmetAをクローニングするのに必要なアミノ酸1Mと2Pの間にアラニンを導入したことが、この活性の消失を生じさせたと推測した。そこで、部位特異的突然変異(Stratagene)を用いて、オリゴヌクレオチドを用いてアラニンを除去した:
【0186】
【化10】

【0187】
続いて、変異体metA*15(A27V+Q64E)、metA*16(Q64D)及びmetA*17(A27V+Q64D)を、正確なmetA配列を基質として用いて部位特異的突然変異(Stragagene)により構築した。pTRCmetA*15(A27V+Q64E)の構築のために、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:
【0188】
【化11】

【0189】
及び基質としてpTRCmetA*11。
【0190】
pTRCmetA*16(Q64D)の構築のために、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:
【0191】
【化12】

【0192】
及び基質としてpTRCmetA。
【0193】
pTRCmetA*17(A27V+Q64D)の構築にために、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:MetAA28VF(XbaI)(配列番号17)及びMetAA28VR(XbaI)(配列番号18);並びに基質としてpTRCmetA*16。
【0194】
プラスミドをシークエンスにより確認した。
【0195】
染色体上のmetA遺伝子座に対立遺伝子metA*15、metA*16及びmetA*17を移入するために、metJ欠失のために用いたのと同じ戦略を適用して、ΔmetJバックグラウンド中にmetA欠失を構築した。以下のオリゴヌクレオチドが、metAを欠失させるために用いられた:
【0196】
【化13】

【0197】
小文字で示された領域は、metA及びyjaBの間の配列に相当する。大文字の領域は、カナマイシン耐性カセットを増幅するために用いられた(Datsenko & Wanner, 2000)。(括弧内の数字は、ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/上の参照配列に対応する)。
【0198】
生じた欠失を、以下のオリゴヌクレオチドを用いて確認した。(括弧内の数字は、ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/上の参照配列に対応する)。
MetAF(配列番号3)及びMetAR(配列番号4)
【0199】
生じた株DmetJ DmetAは、対立遺伝子metA*15、metA*16及びmetA*17を染色体上に導入するのに用いられた。この目的のために、プラスミドpKD46が株DmetJ DmetAに導入された(Datsenko及びWanner, 2000)。対立遺伝子は、次のオリゴヌクレオチドを用いて、ベクターpTRCmetA*15、pTRCmetA*16及びpTRCmetA*17から増幅された:
【0200】
【化14】

【0201】
太字の配列は遺伝子metAの配列に相同的である;残りの配列はmetAに隣接している。
【0202】
PCRによる確認のために、以下の配列が用いられた:MetAF(配列番号3)及びMetAR(配列番号4)。
【0203】
上述したように、生じた株を最小培地中で培養し、粗抽出物を調製し、MetAの活性を決定した。表4から見て取れるように、新規に構築した対立遺伝子はメチオニン及びSAMによる阻害に対して、上述した対立遺伝子よりもより感受性が低い。特に興味深いのは、対立遺伝子metA*15は、SAM及びメチオニンにより阻害されない高い内在性の活性を有することである。
【0204】
【表4】

【0205】
実施例5
フィードバック耐性MetA対立遺伝子を減少した活性を有するMetK対立遺伝子と組み合わせることによるO−スクシニルホモセリン又はメチオニンの生産のためのE.コリ株の構築
【0206】
フィードバック耐性metA対立遺伝子を内有する株に、組み換えmetK対立遺伝子を移入するために、metKとgalP遺伝子の間にカナマイシン耐性カセットを導入した。
【0207】
カセットを導入するために、Datsenko & Wanner (2000)により記載された相同的組み換え戦略を用いた。この戦略はカナマイシン耐性カセットの挿入を可能にする一方、関心のある遺伝子の大部分を欠失させる。この目的のために、2つのオリゴヌクレオチドを用いた:
−100塩基のDMetKFscr(配列番号25):
【0208】
【化15】

【0209】
ここで
−metKとgalPの間の領域の配列に相同的な領域(小文字)(配列3085964-3086043、ウェブサイトhttp://genolist.pasteur.fr/Colibri/上の配列を参照)、
−カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, K,A. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645の配列を参照)、
−100塩基のDmetKRscr(配列番号26):
【0210】
【化16】

【0211】
ここで
−遺伝子metKとgalPの間の領域に相同的な領域(小文字)(配列3086162-3086083)、
−カナマイシン耐性カセットの増幅のための領域(大文字)、
【0212】
オリゴヌクレオチドDMetKFscr及びDmetKRscrは、プラスミドpKD4からカナマイシン耐性カセットを増幅するために用いられる。次いで、得られたPCR産物は、相同的組み換えを可能にするRedリコンビナーゼ酵素を発現する株MG1655(pKD46)にエレクトロポレーションにより導入される。次いで、カナマイシン耐性形質変換体を選択し、耐性カセットの挿入を下記に定義するオリゴヌクレオチドMetKFscr及びMetKRscrを用いて、PCR解析により確認する。保持している株をMG1655(metK, Km)と命名する。
【0213】
【化17】

【0214】
metK対立遺伝子を移入するために、ファージP1形質導入法が用いられる。以下のプロトコールは、株MG1655(metK, Km)のファージライセートの調製、次いで株MG1655ΔmetJ metA*11 pTRCmetLへの形質導入という、2つの工程で実行される。
【0215】
株(metK, Km)の構築は上述した。
【0216】
ファージライセートP1の調製
−10mlのLB+Km 50μg/ml+グルコース 0.2%+CaCl 5mMへの株MG1655(metK, Km)終夜培養物100μlの植菌
−振盪しながら37℃で30分間培養
−野生株MG1655で調製されたファージライセートP1 100μlの添加(約1.10ファージ/ml)
−全ての細胞が溶解するまで3時間37℃で振盪
−200μlのクロロホルムの添加及び攪拌
−細胞細片を除去するために、4500gで10分間遠心
−滅菌チューブへ上清を移し、200μlのクロロホルムを添加
−ライセートを4℃で保存
【0217】
形質導入
−LB培地中の株MG1655 ΔmetJ metA*11 pTRCmetLの終夜培養物5mlを1500gで10分間遠心
−2.5mlの10mM MgSO、5mM CaClに細胞ペレットを懸濁
−対照チューブ:100μl細胞
株MG1655(ΔmetK, Km)のファージP1100μl
−試験チューブ:100μl 細胞+株MG1655(ΔmetK, Km)のファージP1 100μl
−振盪せずに30℃で30分間インキュベーション
−各チューブに1Mクエン酸ナトリウム100μl添加及び攪拌
−LB1mlの添加
−振盪しながら37℃で1時間培養
−7000rpmで3分間チューブを遠心した後、ディッシュLB+Km50μg/ml上に塗布
−37℃で終夜培養
【0218】
株の確認
次いで、カナマイシン耐性変異体を選択し、(metK, Km)を含む領域の挿入をオリゴヌクレオチドMetKFscr及びMetKRscrを用いてPCR解析により確認する。保持している株をMG1655ΔmetJ metA*11 pTRCmetL metK*と命名する。
【0219】
次いで、カナマイシン耐性カセットは除去され得る。次いで、カナマイシン耐性カセットのFRT部位で作動するFLPリコンビナーゼを含有するプラスミドpCP20を、エレクトロポレーションにより組み換え部位に導入する。42℃での一連の培養の後、カナマイシン耐性カセットの消失を前に用いたのと同じオリゴヌクレオチド(MetKFscr及びMetKRscr)を用いてPCR解析により確認する。
【0220】
実施例6
E.コリ生産株の発酵及び産生の解析
【0221】
生産株は、まず、5g/lMOPS及び5g/lグルコースを添加した改変M9培地(Anderson, 1946, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 32:120-128)を用いて、小さなエルレンマイヤーフラスコ培養で解析した。必要であれば、100mg/lの濃度でカルベニシリンを加えた。終夜培養を0.2のOD600まで、30ml培養物を植菌するために行った。培養物のOD600が4.5−5に達した後、1.25mlの50%グルコース溶液及び0.75mlの2M MOPS(pH 6.9)を加え、培養液を1時間攪拌した。続いて、必要であればIPTGを加えた。
【0222】
細胞外代謝物を、バッチ期の間に解析した。アミノ酸をOPA/Fmoc誘導体化後にHPLCにより定量し、他の関連する代謝物はシリル化後にGC−MSを用いて解析した。
【0223】
次の結果は、株MG1655、MG1655 pTRCmetL、MG1655 metA*11 pTRCmetL、MG1655 metA*13 pTRCmetL、MG1655 metA*11 ΔmetJ pTRCmetL、MG1655metA*11ΔmetJ pTRCmetL metK*H142Yから得られた。
【0224】
【表5】

【0225】
ホモセリンの生産をさらに向上させるため、スレオニンに対して減少したフィードバック耐性を有するアスパルトキナーゼ/ホモセリンthrA対立遺伝子をプロモーターPtrcを用いてプラスミドpCL1920(Lerner & Inouye, 1990, NAR 18, 15 p4631)から発現させた。プラスミドpME107を構築するために、以下のヌクレオチドを用いてゲノムDNAからthrAをPCRで増幅した:
【0226】
【化18】

【0227】
PCR増幅断片を制限酵素BspHI及びSmaIで切断し、ベクターpTRC99A(Stratagene)のNcoI/SmaI部位にクローニングする。低コピーベクターからの発現のために、プラスミドpME101を以下のように構築する。プラスミドpCL1920をオリゴヌクレオチドPME101F及びPME101Rを用いてPCR増幅し、lacI遺伝子及びPtrcプロモーターを内有するベクターpTRC99AからのBstZ171-XmnI断片を、増幅したベクターに挿入する。生じたベクター及びthrA遺伝子を内有するベクターをApaI及びSmaIで切断し、thrAを含む断片をベクターpME101にクローニングする。フィードバック阻害からThrAを解放するために、変異F318Sを、オリゴヌクレオチドThrAF F318S 及びThrAR F318Sを用いて部位特異的突然変異(Stratagene)により導入し、ベクターpME107を得る。ベクターpME107を、異なるmetK*対立遺伝子を有するΔmetJ metA*11株に導入した。
【0228】
【化19】

【0229】
関心のある代謝物を大量に生産する株を、ひき続き、流加プロトコールを用いて300ml発酵槽(DASGIP)中で生産条件下で試験した。
【0230】
この目的のために、発酵槽を145mlの改変最小培地で満たし、光学濃度(OD600nm)0.5から1.2の間まで5mlの前培養物で植菌した。
【0231】
培養温度を37℃で一定に維持し、pHをNHOH溶液を用いて恒久的に6.5から8の間の値に調節した。攪拌速度を、バッチ期の間は200から300rpmの間に維持し、流加期の最後では1000rpmまで上昇させた。溶解酸素濃度を、ガス制御機を用いて30から40%飽和の間の値に維持した。光学濃度が3から5の値に達したら、流加を最初の流速0.3から0.5ml/hの間で開始し、段階的に流速値2.5から3.5ml/hにまで上昇させた。この時点で、流速を24から48時間の間、一定に維持した。流加培養の培地は、300と500g/lの間の濃度でグルコースを含む最小培地を基礎にした。
【0232】
表6は、約75時間操作後の、参照株ΔmetJ metA*11 pME107と比較したΔmetJ metA*11 pME107metK*H142Y及びΔmetJ metA*11 pME107 metK*T227I株のメチオニン濃度を示す。metK*対立遺伝子を内有する両方の株が、参照株と比較した場合に、メチオニン濃度の増加を達成した。このように、metK変異は、株の生産性を上昇させることにより、メチオニン生産について産業上の優位性を与える。
【0233】
【表6】

バッチ及び流加を含む操作から表示された時間後の、参照株ΔmetJ metA*11 pME107及びmetK*変異を内有する2つの株のメチオニン生産
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1A】エスケリキア・コリにおけるメチオニンの代謝。
【図1B】エスケリキア・コリにおけるメチオニンの代謝。
【図2】野生型及びα−メチルメチオニン上の選択で得られた組み換えmetA遺伝子のアラインメント。保存的残基は薄い灰色の囲みで表され、変異した残基は白の囲みで示される。
【図3a】異なる微生物由来のMetA配列のアラインメント。
【図3b】図3(おわり)
【図4a】異なる微生物由来のMetK配列のアラインメント。
【図4b】図4(つづき)
【図4c】図4(つづき)
【図4d】図4(おわり)
【図5】E.コリMetK蛋白質におけるアミノ酸置換。一続きの行の上にあるアミノ酸は位置及び置換したアミノ酸を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモセリントランススクシニラーゼによりL−ホモセリンがO−スクシニルホモセリンに変換される微生物を用いた発酵プロセス中で、メチオニン、その前駆体又はそれらに由来する生成物を調製するための方法であって、前記微生物を適切な培地で培養し、一旦生産されたメチオニン、その前駆体又はそれらに由来する生成物を回収する工程を含み、該ホモセリントランススクシニラーゼが、フィードバック阻害剤であるS−アデノシルメチオニン及びメチオニンに対して減少した感受性を有する変異ホモセリントランススクシニラーゼである、方法。
【請求項2】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼが、10mMのメチオニン及び1mMのS−アデノシルメチオニンの存在下において野生型酵素の活性の少なくとも10倍の特異的活性を示し、且つ、10mMのメチオニン及び0.1mMのS−アデノシルメチオニンの存在下において野生型酵素の活性の少なくとも80倍の特異的活性を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼが、以下の非変異保存領域の1つ及びその組み合わせの中の野生型配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、請求項1又は2記載の方法:
次の配列を含む保存領域1:
X1−X2−X3−A−X4−X5−Q
ここで、
X1は、E、D、T、S、L、好ましくはTを表す
X2は、D、S、K、Q、E、A、R、好ましくはSを表す
X3は、R、E、D、好ましくはRを表す
X4は、Y、I、F、A、K、S、V、好ましくはSを表す
X5は、H、S、N、G、T、R、好ましくはGを表す
以下の配列を含む保存領域2:
X1−X2−X3−P−L−Q−X4−X5
ここで、
X1は、G、A、S、好ましくはSを表す
X2は、N、A、好ましくはNを表す
X3は、S、T、好ましくはSを表す
X4は、V、L、I、好ましくはVを表す
X5は、N、E、H、D、好ましくはDを表す
以下の配列を含む保存領域3:
X1−Y−Q−X2−T−P−X3
ここで、
X1は、V、I、M、好ましくはVを表す
X2は、E、K、G、I、Q、T、S、好ましくはIを表す
X3は、F、Y、好ましくはYを表す。
【請求項4】
改変ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼが、少なくとも1つの以下の変異及びその組み合わせを含む、請求項3記載の方法:
保存領域1における保存的アラニンがバリンに置換されている、
保存領域2における保存的アミノ酸L及び/又はQが他のアミノ酸に置換されており、好ましくは、ロイシンがフェニルアラニンに置換され、及び/又は、グルタミンがグルタミン酸もしくはアスパラギン酸に置換されている、並びに
保存領域3における保存的アミノ酸L及び/又はQが他のアミノ酸に置換されている。
【請求項5】
改変保存領域1がアミノ酸配列T−S−R−V−S−G−Qを含み、及び/又は、改変保存領域2がS−N−S−P−F−Q−V−D、S−N−S−P−F−E−V−D、S−N−S−P−F−D−V−DD、S−N−S−P−L−E−V−D及びS−N−S−P−L−D−V−Dの中から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
微生物が、減少したS−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素活性を有するS−アデノシルメチオニンシンテターゼ酵素を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼが、下記に特定された少なくとも1つの配列の少なくとも1つのアミノ酸変異を含有する、請求項6記載の方法:
89位のシステイン及び/又は239位のシステイン
保存領域1、以下の配列を含む非変異領域1:
G−E−X1−X2−X3−X4
ここで、
X1は、I、V、L、T、好ましくはIを表す
X2は、T、K、S、R、好ましくはTを表す
X3は、T、S、G、好ましくはTを表す
X4は、S、N、T、K、E、R、P、N、A、好ましくはSを表す
保存領域2、以下の配列を含む非変異保存領域2:
Q−S−X1−D−I−X2−X3−G−V−X4
ここで、
X1は、P、Q、A、S、好ましくはPを表す
X2は、A、N、Q、S、F、好ましくはNを表す
X3は、V、Q、Y、R、M、N、好ましくはQを表す
X4は、K、D、A、N、T、S、E、好ましくはDを表す
保存領域3、以下の配列を含む非変異保存領域3:
X1−G−A−G−D−Q−G−X2
ここで、
X1は、Q、A、I、V、E、T、好ましくはQを表す
X2は、L、I、S、V、M、好ましくはLを表す
保存領域4、以下の配列を含む非変異保存領域4:
X1−I−X2−X3−X4−H−X5−X6
ここで、
X1は、S、P、T、A、好ましくはPを表す
X2は、A、T、W、Y、F、S、N、好ましくはTを表す
X3は、M、Y、L、V、好ましくはYを表す
X4は、S、A、好ましくはAを表す
X5は、K、R、E、D、好ましくはRを表す
X6は、L、I、好ましくはLを表す
保存領域5、以下の配列を含む非変異保存領域5:
X1−L−X2−X3−D
ここで、
X1は、W、F、Y、V、E、好ましくはWを表す
X2は、R、G、L、K、好ましくはRを表す
X3は、P、L、H、V、好ましくはPを表す
保存領域6、以下の配列を含む非変異保存領域6:
X1−X2−X3−S−X4−Q−H
ここで、
X1は、V、I、好ましくはVを表す
X2は、V、L、I、好ましくはVを表す
X3は、V、L、I、M、好ましくはLを表す
X4は、T、V、A、S、H、好ましくはTを表す
保存領域7、以下の配列を含む非変異保存領域7:
X1−N−P−X2−G−X3−F
ここで、
X1は、V、I、好ましくはIを表す
X2は、T、G、S、好ましくはTを表す
X3は、R、T、Q、K、S、好ましくはRを表す
保存領域8、以下の配列を含む非変異保存領域8:
X1−X2−G−X3−P−X4−X5
ここで、
X1は、T、V、I、Y、E、好ましくはVを表す
X2は、V、I、L、N、好ましくはIを表す
X3は、G、S、好ましくはGを表す
X4は、M、I、Q、A、H、D、好ましくはMを表す
X5は、G、S、A、H、好ましくはGを表す
保存領域9、以下の配列を含む非変異保存領域9:
X1−X2−D−T−Y−G−G
ここで、
X1は、M、I、好ましくはIを表す
X2は、V、I、好ましくはIを表す
保存領域10、以下の配列を含む非変異保存領域10:
K−V−D−R−S−X1−X2
ここで、
X1は、A、G、好ましくはAを表す
X2は、A、S、L、好ましくはAを表す
保存領域11、以下の配列を含む非変異保存領域11:
X1−X2−Q−X3−X4−Y−A−I−G−X5−X6
ここで、
X1は、L、E、I、Q、T、好ましくはEを表す
X2は、V、I、L、好ましくはIを表す
X3は、V、L、I、好ましくはVを表す
X4は、A、S、好ましくはSを表す
X5は、V、I、R、K、A、好ましくはVを表す
X6は、A、V、T、S、好ましくはAを表す。
【請求項8】
減少した活性を有する改変S−アデノシルメチオニンシンテターゼが、少なくとも1つの以下の変異及びそれらの組み合わせを含む、請求項7記載の方法:
保存領域1における保存的セリンが他のアミノ酸、好ましくはアスパラギンに置換されている、
保存領域2における保存的グリシンが他のアミノ酸、好ましくはセリンに置換されている、
保存領域3における保存的グリシンが他のアミノ酸、好ましくはセリンに置換されている、
保存領域4における保存的ヒスチジン及び/又は半保存的プロリンが他のアミノ酸、好ましくは保存的ヒスチジンがチロシンに、及び/又は、保存的プロリンがロイシンに置換されている、
保存領域5における半保存的アルギニンが他のアミノ酸、好ましくはシステインに置換されている、
保存領域6における保存的ヒスチジン及び/又は半保存的バリンが他のアミノ酸、好ましくは保存的ヒスチジンがチロシンに、及び/又は、バリンがアスパラギン酸に置換されている、
保存領域7における半保存的スレオニンが他のアミノ酸、好ましくはイソロイシンに置換されている、
保存領域8における保存的プロリンが他のアミノ酸、好ましくはセリンに置換されている、
保存領域9における2番目の保存的グリシンが他のアミノ酸、好ましくはアスパラギン酸に置換されている、
保存領域10における保存的セリンが他のアミノ酸、好ましくはフェニルアラニンに置換されている、及び
保存領域11における保存的イソロイシンが他のアミノ酸、好ましくはロイシンに置換されている。
【請求項9】
改変領域1がアミノ酸配列G−E−I−T−T−Nを含み、及び/又は、改変保存領域2がアミノ酸配列Q−S−P−D−I−N−Q−S−V−Dを含み、及び/又は、改変保存領域3がアミノ酸配列Q−S−A−G−D−Q−G−Lを含み、及び/又は、改変保存領域4がP−I−T−Y−A−Y−R−L、L−I−T−Y−A−H−R−L及びL−I−T−Y−A−Y−R−Lの中から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は、改変保存領域5がアミノ酸配列W−L−C−P−Dを含み、及び/又は、改変保存領域6がV−V−L−S−T−Q−Y、V−D−L−S−T−Q−H及びV−D−L−S−T−Q−Yの中から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は、改変保存領域7がアミノ酸配列I−N−P−I−G−R−Fを含み、及び/又は、改変保存領域8がアミノ酸配列V−I−G−G−S−M−Gを含み、及び/又は、改変保存領域9がアミノ酸配列I−V−D−T−Y−G−Dを含み、及び/又は、改変保存領域10がアミノ酸配列K−V−D−R−F−A−Aを含み、及び/又は、改変保存領域11がアミノ酸配列E−I−Q−V−S−Y−A−L−G−V−Aを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
改変微生物が、原核生物及び真核生物、好ましくは原核生物下であり、より具体的にはエスケリキア・コリ又はコリネバクテリウム・グルタミカムの中から選ばれる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
請求項2〜5のいずれか1つに定義された、フィードバック阻害剤であるS−アデノシルメチオニン及びメチオニンに対して減少した感受性を有する変異型ホモセリントランススクシニラーゼ。
【請求項12】
請求項11に定義された、フィードバック阻害剤であるS−アデノシルメチオニン及びメチオニンに対して減少した感受性を有する変異型ホモセリントランススクシニラーゼをコードするヌクレオチド配列。
【請求項13】
請求項6〜9のいずれか1つに定義された、変異型S−アデノシルメチオニンシンテターゼ。
【請求項14】
請求項13に定義された、変異型S−アデノシルメチオニンシンテターゼをコードするヌクレオチド配列。
【請求項15】
請求項12のヌクレオチド配列を含む微生物。
【請求項16】
さらに請求項14のヌクレオチド配列を含む、請求項15記載の微生物。
【請求項17】
微生物が、原核生物及び真核生物、好ましくは原核生物下であり、より具体的にはエスケリキア・コリ又はコリネバクテリウム・グルタミカムの中から選ばれる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が過剰発現しており、且つ/又は、メチオニンリプレッサーmetJをコードする遺伝子が欠失している、請求項15〜17の1つに記載の微生物。
【請求項19】
アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼがフィードバックを調節解除されたthrA対立遺伝子によりコードされている、請求項15〜17のいずれか1つに記載の微生物。
【請求項20】
ThrA酵素が変異Phe318Serによってフィードバック調節解除されている、請求項19記載の微生物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−536921(P2007−536921A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512216(P2007−512216)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052180
【国際公開番号】WO2005/108561
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506153376)
【Fターム(参考)】