説明

フィールド機器およびフィールド機器システム

【課題】フィールド機器のハードウェアリソースが無駄とならないように各種機能を動的
に設定可能とする。
【解決手段】フィールド機器20Cは、ハードウェア構成情報に基づいたシステムの構築
に必要な、メモリやアクセラレータ等の機能回路をプログラム可能なプログラマブルデバ
イス206を備えている。フィールド機器20Cの通信部200は、制御線30を介して
制御装置からハードウェア構成情報Hcをダウンロードする。CPU202は、ダウンロ
ードしたハードウェア構成情報Hcをメモリ部204に蓄積すると共に、ダウンロードし
たハードウェア構成情報Hcをプログラマブルデバイス206に設定する。プログラマブ
ルデバイス206は、ハードウェア構成情報Hcに基づいて、機能を動作させるソフトウ
ェアSoを保有するためのメモリを構成したり、機能の動作を補佐するためのアクセラレ
ータを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やプラントの制御および監視を行うフィールド機器およびフィールド機
器システムに関する。詳しくは、フィールド機器にプログラム可能な回路部を搭載するこ
とにより、システムの構築に必要なメモリやアクセラレータ等の機能回路を最小限、かつ
、最適に構成するものである。
【背景技術】
【0002】
工場やプラントの制御および監視を行うシステムとしてフィールド機器システムが利用
されている。フィールド機器システムは、図11に示すように、制御装置50とフィール
ド機器60A,60B,60C(以下、フィールド機器60A,60B,60Cを総称し
てフィールド機器60と呼ぶ場合もある)とから構成されており、制御装置50とフィー
ルド機器60A,60B,60Cとは互いに制御線70を介して電気的に接続されている

【0003】
制御装置50は、フィールド機器60を制御するためのホストコンピュータであり、フ
ィールド機器60が実行する機能同士を接続した制御ループを構成し、制御ループの接続
方法を各フィールド機器60に反映することによりフィールド機器60の操業を開始する
ものである。図11では、フィールド機器60Aに機能A−1,A−2を割り当て、フィ
ールド機器60Bに機能B−1を割り当て、フィールド機器60Cに機能C−1,C−2,
C−3を割り当てている。そして、所定の機能同士を接続することにより制御ループを構
成している。このとき、工場出荷時において、システムの構築に必要な機能として機能A
−1,B−1,C−1,C−3が設定され、予想される変更可能な機能として機能A−2,
機能C−2(点線)が設定されているものとする。
【0004】
フィールド機器60A,60B,60Cは、制御装置50により設定された機能を動作
させることにより、工場やプラント内の物量をセンサやバルブ等により自動制御する。フ
ィールド機器60A,60B,60Cには、工場出荷時に、各機能を動作させるソフトウ
ェアを蓄積するためのメモリが搭載されている。例えば、フィールド機器60Aには、機
能A−1用のメモリ600aと機能A−2用のメモリ602aが搭載されている。フィー
ルド機器60Bには、機能B−1用のメモリ600bが搭載されている。フィールド機器
60Cには、機能C−1用のメモリ600cと機能C−2用のメモリ602cと機能C−
3用のメモリ604cが搭載されている。
【0005】
このように工場やプラントを制御するシステムとしては、例えば、システム構築支援ツ
ールを備え、機能別にモジュール化、パッケージ化された標準ソフトウェア・プログラム
を、モジュール別、パッケージ別に、画面上等でカット、ペースト、追加等の処理によっ
て改変することが可能なフィールド機器システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−94457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、現在のフィールド機器を使用したシステムでは、フィールド機器を一度所定
の場所に取り付けてしまうと、取り付けたフィールド機器の構成を変更することは困難で
ある。そのため、フィールド機器の工場出荷時には、上述したように、システムの構築に
必要な機能だけでなく、予想される変更に対応可能な機能を選定することによりフィール
ド機器の機能を設定している。
【0008】
しかしながら、システムの構築の結果、使用されない機能が発生すると、その機能を動
作させるのに必要であったハードウェアリソース(主にメモリ)が使用されなくなってし
まうため、フィールド機器に搭載しているハードウェアリソースが無駄になってしまうと
いう問題が発生する。例えば、図11において、機能A−1,B−1,C−1,C−3を使
用し、機能A−2,機能C−2を使用しない場合には、機能A−2および機能C−2(点
線囲部)を動作させるソフトウェアを保有するためのメモリ602a,602cが無駄な
ハードウェアリソースとなってしまう。その上、必要以上の機能を動作させるハードウェ
アリソースがフィールド機器に搭載されることになるので、その分フィールド機器のコス
トが高くなってしまうという問題も発生する。また、フィールド機器を製造する側では、
多種多様な製品を生産/管理する必要がありコスト高となる。
【0009】
パフォーマンスに関しては、制御ループの制御サイクルを短くするための方法として、
フィールド機器内のCPUを高速化するか、専用ハードウェア(アクセラレータ)を搭載
することでフィールド機器の高速化を図ることができる。しかし、CPUの高速化は、動
作に必要な電力が多くなるため、電力制限のあるフィールド機器の現場では、容易に対応
することが困難である。専用ハードウェア(アクセラレータ)の搭載については、アクセ
ラレータを必要とする機能が使用されない場合に無駄となるハードウェアリソースが多く
なってしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィールド機
器のハードウェアリソースが無駄とならないように各種機能を動的に設定可能としたフィ
ールド機器およびフィールド機器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィールド機器は、システムの構築に必要な
機能を動作させる機能回路の構成を示すハードウェア構成情報を設定するための制御装置
に接続され、制御対象を自動制御するフィールド機器であって、ハードウェア構成情報に
基づいたシステムの構築に必要な機能回路をプログラム可能な回路部と、制御装置から送
信されるハードウェア構成情報を受信する通信部と、通信部により受信されたハードウェ
ア構成情報に基づいて回路部を特定の機能を有する機能回路として構成する制御部とを備
えるものである。
【0012】
また、本発明に係るフィールド機器システムは、システムの構築に必要な機能を動作さ
せる機能回路の構成を示すハードウェア構成情報を設定するための制御装置と、当該制御
装置に接続されて制御対象を自動制御するフィールド機器とを備えるフィールド機器シス
テムであって、制御装置は、システムの構築に必要な機能を動作させる機能回路の構成を
示すハードウェア構成情報を取得する制御部と、制御部により取得されたハードウェア構
成情報をフィールド機器に送信する通信部とを有し、フィールド機器は、ハードウェア構
成情報に基づいたシステムの構築に必要な機能回路をプログラム可能な回路部と、制御装
置から送信されるハードウェア構成情報を受信する通信部と、通信部により受信されたハ
ードウェア構成情報に基づいて回路部を特定の機能を有する機能回路として構成する制御
部とを有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明においては、フィールド機器には、プログラム可能な回路部が搭載されており、
従来のように、予め各機能に対応したメモリ等は搭載されていない。フィールド機器の制
御部では、制御装置から通信部を介して送信されたハードウェア構成情報に基づいて、プ
ログラム可能な回路部のハードウェアリソースを特定の機能を有する機能回路に動的に変
更する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プログラム可能な回路部をハードウェア構成情報に基づいて特定の機
能を有する機能回路に変更するので、システム構築に必要な機能を最小限、かつ、最適に
配置することができ、低コストでフィールド機器の性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るフィールド機器システムの構成例を示す図である。
【図2】制御装置のブロック構成例を示す図である。
【図3】フィールド機器のブロック構成例を示す図である。
【図4】ハードウェア構成情報の一例を示す図である。
【図5】プログラマブルデバイスの構成例を示す図である。
【図6】フィールド機器システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】制御ループの構成の一例を示す図である。
【図8】本発明と従来のフィールド機器システムにおける機能の実行時間の比較例を示す図である。
【図9】プログラマブルデバイスの一部をアクセラレータとして構成した場合のプログラマブルデバイスのブロック構成を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るフィールド機器におけるプログラマブルデバイスの構成例を示す図である。
【図11】従来のフィールド機器システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明する。
<1.第1の実施の形態>
[フィールド機器システムの構成例]
まず、本発明に係るフィールド機器システムFSの構成例について説明する。本発明に
係るフィールド機器システムFSは、後述するフィールド機器20にプログラマブルデバ
イス206を搭載することにより、必要とされる機能に応じてプログラマブルデバイス2
06のハードウェアリソースの構成を変更可能としたものである。フィールド機器システ
ムFSは、図1に示すように、制御装置10と、制御装置10に制御線30を介して電気
的に接続されるフィールド機器20A,20B,20C(以下、フィールド機器20A,
20B,20Cを総称してフィールド機器20と呼ぶ場合もある)とを備えている。制御
装置10およびフィールド機器20は、FOUNDATION Fieldbus通信プロトコル等のフィー
ルド機器専用の通信プロトコルによって通信制御される。
【0017】
[制御装置の構成例]
制御装置10は、フィールド機器20を制御・監視するためのホストコンピュータであ
り、図2に示すように、制御部100とメモリ部102と通信部104とを有している。
制御部100は、ユーザの操作画面の操作により入力された、ハードウェア構成情報Hc
や、機能同士を接続した制御ループ等の情報を取得し、これらのハードウェア構成情報H
c等をフィールド機器20A,20B,20Cのそれぞれに設定する。この制御部100
は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRA
M(Random Access Memory)を有している。
【0018】
メモリ部102には、システムの構築に必要な機能を動作させるためのハードウェアリ
ソース(機能回路)の構成を示すハードウェア構成情報Hcと、プログラマブルデバイス
206上において機能を動作させるためのソフトウェアSoとが蓄積されている。ハード
ウェア構成情報Hcは、VHDL(Very High Speed Integrated Circuit Hardware Descri
ption Language)等で記述されたプログラムを予めコンパイルした情報であり、プログラ
マブルデバイス206のハードウェアリソースを、各機能を動作させるソフトウェアSo
を保有するためのメモリとして構成したり、各機能を動作させるソフトウェアSoによる
処理を補佐するためのアクセラレータとして構成するためのプログラムである。また、ハ
ードウェア構成情報Hcには、機能Aだけを使用するパターンや、機能A,Bを使用する
パターン、機能A,Cを使用し機能Cにアクセラレータを必要とするパターン等、用途に
応じたプログラムも含まれている。
【0019】
ソフトウェアSoは、ハードウェア設計者により設計された制御ループを構成する各機
能を、プログラマブルデバイス206上で動作させるためのソフトウェアである。本例で
は、図2に示すように、メモリ部102に機能A−1,A−2,B−1,C−1,C−3
を動作させるためのプログラムや、これらの機能同士を接続する制御ループ(図7参照)
が蓄積されている。
【0020】
通信部104は、制御線30を介して各フィールド機器20A,20B,20Cに接続
される入出力インターフェースであり、制御部100からの指示に基づいてハードウェア
構成情報HcやソフトウェアSoを各フィールド機器20A,20B,20Cに送信する。
【0021】
[フィールド機器の構成例]
フィールド機器20は、工場やプラント内の物量をセンサやバルブ等で自動制御可能な
機器であり、図3に示すように、通信部200とCPU202とメモリ部204と回路部
の一例であるプログラマブルデバイス206とを有している。通信部200は、制御線3
0を介して制御装置10に接続された入出力インターフェースであり、制御装置10から
ハードウェア構成情報HcやソフトウェアSoを受信する。
【0022】
CPU202は、制御装置10から通信部200を介してダウンロード(受信)したハ
ードウェア設定情報やソフトウェアSo等をメモリ部204のハードウェア構成データ部
204aに蓄積する。また、CPU202は、プログラマブルデバイス206の図示しな
いコンフィギュレーション端子に接続されており、ハードウェア構成データ部204aに
蓄積したハードウェア構成情報HcやソフトウェアSoを読み出し、読み出したハードウェ
ア構成情報Hc等をGPIO(General Purpose Input/Output)やシリアル通信等により
プログラマブルデバイス206に供給して設定する。
【0023】
メモリ部204は、例えば、ROMやRAM等から構成され、ハードウェア構成情報H
cやソフトウェアSoを蓄積するハードウェア構成データ部204aと、メインプログラム
等を記憶するメイン動作プログラム部204bとを有している。例えば、図4に示すよう
に、フィールド機器20Cのハードウェア構成データ部204aには、機能C−1のソフ
トウェアSoを保有するメモリを構成するためのハードウェア構成情報Hcと、機能C−3
のソフトウェアSoを保有するメモリを構成するためのハードウェア構成情報Hcと、機能
C−3のソフトウェアSoの動作を補佐するアクセラレータを構成するためのハードウェ
ア構成情報Hcとが蓄積される。
【0024】
プログラマブルデバイス206は、製造後にユーザの手許で内部論理回路を定義・変更
できるプログラム可能な集積回路であり、例えばFPGA(Field Programmable Gate Arr
ay)やCPLD(Complex Programmable Logic Device)等から構成されている。このプログ
ラマブルデバイス206は、CPU202とバス208を介して接続されており、CPU
202から供給されたハードウェア構成情報Hcに基づいてハードウェアリソースをメモ
リやアクセラレータ等の機能回路に動的に変更する。例えば、図5に示すように、フィー
ルド機器20Cのプログラマブルデバイス206は、ハードウェア構成情報Hcが図4に
示した内容である場合、機能C−1を動作させるソフトウェアSoを保有するためのメモ
リ206aを構成し、機能C−3を動作させるソフトウェアSoを保有するためのメモリ
206bを構成し、機能C−3の動作を補佐するためのアクセラレータ206cを構成す
る。
【0025】
[フィールド機器システムの動作例]
次に、本発明に係るフィールド機器システムFSにおけるシステム構築の動作の一例に
ついて図1〜図6を参照して説明する。図6に示すように、ステップS10において、制
御装置10とフィールド機器20A,20B,20Cを工場やプラントの所定の位置に設
置し、制御装置10とフィールド機器20A,20B,20Cとを制御線30を用いて物
理的に接続する(図1参照)。
【0026】
ステップS20において、工場やプラントの操業に必要なセンシング機能や演算機能等
の各種機能を設定すると共に、設定した機能同士を接続(結線)した制御ループを構成す
る。これらの設定は、制御装置10に設けられた表示部の操作画面においてユーザにより
行われる。例えば、プラントの操業に必要な機能として機能A−1,B−1,C−1,C
−3を設定したとき、図7に示すように、機能A−1,B−1の出力を機能C−3の入力
として接続し、機能C−3の出力を機能C−1の入力として接続を行う。制御ループの最
適化は、制御部100が行う。
【0027】
ステップS30において、制御ループを構成する各機能を実行するフィールド機器20
A,20B,20Cの特定(対応付け)を行う。例えば、フィールド機器20Aに機能A
−1を割り当て、フィールド機器20Bに機能B−1を割り当て、フィールド機器20C
に機能C−1,C−3を割り当てる。
【0028】
続けて、各フィールド機器20A,20B,20Cで動作させたい機能が明確になった
ら、ステップS40でフィールド機器20A,20B,20Cは、制御装置10からハー
ドウェア構成情報Hcを制御線30を介してダウンロードする。フィールド機器20A,
20B,20Cのそれぞれには固有のアドレスが割り当てられ、ハードウェア構成情報H
cを構成するパケットにはヘッダ情報(各フィールド機器のアドレス)が付加されている
ので、各ハードウェア構成情報Hcは特定されたフィールド機器20A,20B,20C
のそれぞれにダウンロードされる。
【0029】
ステップS50でフィールド機器20A,20B,20Cは、制御装置10からダウン
ロードしたハードウェア構成情報Hcをメモリ部204に蓄積し、ダウンロード完了後に
プログラマブルデバイス206にGPIOやシリアル通信を用いてハードウェア構成情報
Hcを設定する。これにより、例えば、フィールド機器20Cのプログラマブルデバイス
206は、図5に示したように、機能C−1,C−3に対応したソフトウェアSoを保有
するためのメモリ206a,206bを構成すると共にメモリ206bに保有された各機
能のソフトウェアSoの動作を補佐するためのアクセラレータ206cを構成する。
【0030】
プログラマブルデバイス206へのハードウェア構成情報Hcの設定が完了したら、ス
テップS60でフィールド機器20A,20B,20Cは、制御ループを構成する機能を
実現するためのソフトウェアSoを制御装置10からダウンロードする。例えば、フィー
ルド機器20Cは、機能C−1,C−3を動作させるソフトウェアSoをダウンロードす
る。
【0031】
ステップS70でフィールド機器20A,20B,20Cは、制御装置10からダウン
ロードしたソフトウェアSoを、上述したハードウェア構成情報Hcに基づいてプログラマ
ブルデバイス206に構築されたメモリ上に蓄積する。例えば、図5に示したように、フ
ィールド機器20Cでは、機能C−1を動作させるソフトウェアSoをプログラマブルデ
バイス206上のメモリ206aに蓄積し、アクセラレータ206cにより機能C−3を
補佐して動作させるソフトウェアSoをプログラマブルデバイス206上のメモリ206
bに蓄積する。
【0032】
ステップS80でフィールド機器20A,20B,20Cは、ソフトウェアSoのダウ
ンロード完了後、ダウンロードしたソフトウェアSoを実行し、ソフトウェアSoに対応し
た機能を動作させる。例えば、フィールド機器20Cのプログラマブルデバイス206で
は、ダウンロードしたソフトウェアSoを実行することにより機能C−1,C−3を動作
させる。さらに、プログラマブルデバイス206では、機能C−3を補佐するアクセラレ
ータ206cが構成されているので、アクセラレータ206cを動作させるソフトウェア
Soの実行により機能C−3の処理が補佐される。
【0033】
各フィールド機器20A,20B,20Cに制御ループを構成する機能を動作させるた
めのソフトウェアSoのダウンロードが完了したら、工場やプラントの操業に必要な設定
を各フィールド機器20A,20B,20Cに開始する(ステップS90)。そして、操
業に必要なフィールド機器20A,20B,20Cの設定を完了することで、工場やプラ
ントの操業を開始する(ステップS100)。システムが動作し始めると、上述した制御
ループで構成された機能の順番で実行を繰り返し、プロセス制御を開始する。
【0034】
[本発明と従来のフィールド機器システムにおけるハードウェアリソースの実行時間の比
較例]
次に、上述した本発明に係るフィールド機器システムFSと従来のフィールド機器シス
テムにおける機能の実行時間について説明する。以下では、フィールド機器としてフィー
ルド機器20Cを用いた場合について説明し、従来のフィールド機器システムとしては図
11に示したフィールド機器システムを用いて説明する。
【0035】
図11に示したように、従来のフィールド機器システムでは、フィールド機器の工場出
荷時において、予め各フィールド機器20Cに、システムの構築に必要な機能C−1,C
−3を蓄積するためのメモリ600c,604cに加えて、今後予想される変更に対応可
能な機能C−2を蓄積するためのメモリ602cについても実装している。ここで、機能
C−3は、機能C−1の実行時間よりも長い時間かかるものとする。
【0036】
そのため、例えば、システムの構築において、機能C−1,C−3を動作させ、機能C
−2を動作させないような設計とした場合、機能C−2を動作させるためのメモリ602
cが使用されないことになる。また、機能C−1,C−3のメモリ600c,604cの
容量は同等なものであるため、図8に示すように、機能C−3を動作させた場合の実行時
間は、機能C−1を動作させた場合の実行時間よりも長くなってしまう。
【0037】
これに対し、本発明に係るフィールド機器システムFSは、工場出荷時においてフィー
ルド機器20にメモリ等の必要な機能を保有せずに、プログラム可能なプログラマブルデ
バイス206を搭載している。上述した従来のフィールド機器システムと同様に、システ
ム構築において、機能C−1,C−3を動作させ、機能C−2を動作させないような設計
とした場合、フィールド機器20Cのプログラマブルデバイス206では、図9に示すよ
うに、機能C−1,C−3を動作させるためのメモリ206a,206bを動的に構成し
、機能C−2に使用される予定だったハードウェアリソース(点線囲部)を、実行時間を
要する機能C−3を補佐するためのアクセラレータ206cとして動的に構成している。
これにより、機能C−3をCPU202とアクセラレータ206cとにより動作させるの
で、図8に示すように、従来のフィールド機器と比べて実行時間を大幅に短縮することが
可能となり、機能C−3における処理動作の速度アップを図ることができる。
【0038】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、各フィールド機器20には、プログ
ラマブルデバイス206が搭載されているので、システムを構築する設計者は、多種多様
な機能を予め保有しているフィールド機器を使用する必要がなく、システム構築に必要な
最小限の機能のみを制御装置10からダウンロードして動作させることが可能なフィール
ド機器20を使用してシステム構築を行えるようになる。
【0039】
また、必要な機能を動作させるためのハードウェアリソース(メモリやアクセラレータ
)も変更可能であるため、コストに見合った処理能力のカスタマイズも可能となり、シス
テム設計者はより柔軟で最適なシステムを構築できるようになる。さらに、プログラマブ
ルデバイス206のハードウェアリソースを必要に応じた構成に動的に変更できるので、
システム構築に必要な機能を最小限、かつ、最適に配置することができる。その結果、低
コストで性能(速度)の向上を図ったフィールド機器システムFSを提供することができ
る。
【0040】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、プログラマブルデバイス216の一部をサブCPU216cと
して構成する点において、プログラマブルデバイス206の一部をアクセラレータ206
cとして構成する上記第1の実施の形態と相違している。なお、その他のフィールド機器
システムFSの構成は、上記第1の実施の形態と同様であるため、共通の構成要素には同
一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】
[フィールド機器の構成例]
フィールド機器20Dは、通信部210とメインCPU212とメモリ部214とプロ
グラマブルデバイス216とを有している。通信部210は、制御装置10からハードウ
ェア構成情報Hcをダウンロードし、メインCPU212を介してダウンロードしたハー
ドウェア構成情報Hcをメモリ部204に蓄積する。メインCPU212は、メモリ部2
04に蓄積されたハードウェア構成情報Hcを読み出してGPIOやシリアル通信等を用
いて、プログラマブルデバイス216に供給する。
【0042】
プログラマブルデバイス216は、メインCPU212から供給されたハードウェア構
成情報Hcに基づいて、メモリや後述するCPU等の機能回路を構成する。例えば、プロ
グラマブルデバイス216は、図10に示すように、機能D−1を動作させるソフトウェ
アSoを保有するためのメモリ216aを構成し、機能D−3を動作させるソフトウェア
Soを保有するためのメモリ216bと機能D−3を処理するためのサブCPU216c
とを構成する。
【0043】
サブCPU216cは、使用されていない機能D−2のメモリ(ハードウェアリソース
)を用いて、制御ループを構成する機能に対して独立して動作可能に構成されたものであ
り、メインCPU212と平行して高度な機能を実行する。例えば、機能D−3がスクリ
プト言語を記載できる機能では、機能を実現するためのスクリプトエンジンをプログラマ
ブルデバイス216上に構築したサブCPU216cで動作させることで、メインCPU
212の動作に影響を及ぼすことなく機能D−3を実行する。
【0044】
以上説明したように、上述した第1の実施の形態のようにアクセラレータ206cを構
成した場合には、機能に特化したハードウェアを用意することになり、カスタム可能な機
能(スクリプト処理等)に対して対応が難しい側面もあった。これに対し、第2の実施の
形態によれば、アクセラレータ206cの代わりにメインCPU212と独立して動作可
能なサブCPU216cを構成することにより、アクセラレータ206cではできなかっ
た、より高度な機能についても速度アップを図ることができる。これにより、スクリプト
等の機能の処理時間を短縮し、結果としてフィールド機器システムFSの全体のパフォー
マンスの向上も図ることができる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣
旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。上述
した第1および第2の実施の形態では、プログラマブルデバイス206に機能の処理を補
助するアクセラレータ206cや独立して処理を実行するサブCPU216cを構成した
が、これら以外の機能を有する機能回路を構成することもできる。
【符号の説明】
【0046】
10・・・制御装置、20,20A,20B,20C・・・フィールド機器、30・・・
制御線、100・・・制御部、102・・・メモリ部、104・・・通信部、200・・
・通信部、202・・・CPU、204・・・メモリ部、206・・・プログラマブルデ
バイス、206a,206b・・・メモリ、206c・・・アクセラレータ、212・・
・メインCPU、216c・・・サブCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの構築に必要な機能を動作させる機能回路の構成を示すハードウェア構成情報
を設定するための制御装置に接続され、制御対象を自動制御するフィールド機器であって

前記ハードウェア構成情報に基づいたシステムの構築に必要な前記機能回路をプログラ
ム可能な回路部と、
前記制御装置から送信される前記ハードウェア構成情報を受信する通信部と、
前記通信部により受信された前記ハードウェア構成情報に基づいて前記回路部を特定の
機能を有する前記機能回路として構成する制御部と
を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記通信部は、前記制御装置から前記回路部上において前記機能を動作させるためのソ
フトウェアを受信し、
前記制御部は、前記通信部により受信された前記ソフトウェアを前記回路部において構
成された前記機能回路に供給し、
前記回路部は、前記制御部により供給された前記ソフトウェアに基づいて前記機能を実
行する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記回路部はプログラマブルデバイスであり、
前記制御部は、前記制御装置から送信される前記ハードウェア構成情報に基づいて、前
記プログラマブルデバイスを、前記機能を蓄積するためのメモリと当該メモリに蓄積され
た前記機能の動作を補佐するためのアクセラレータとして構成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記回路部はプログラマブルデバイスであり、
前記制御部は、メインCPUを有し、前記制御装置から送信される前記ハードウェア構
成情報に基づいて、前記プログラマブルデバイスを前記機能を蓄積するためのメモリと当
該メモリに蓄積された前記機能を前記メインCPUとは独立に実行するサブCPUとして
構成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィールド機器。
【請求項5】
システムの構築に必要な機能を動作させる機能回路の構成を示すハードウェア構成情報
を設定するための制御装置と、当該制御装置に接続されて制御対象を自動制御するフィー
ルド機器とを備えるフィールド機器システムであって、
前記制御装置は、
システムの構築に必要な機能を動作させる前記機能回路の構成を示すハードウェア構成
情報を取得する制御部と、
前記制御部により取得された前記ハードウェア構成情報を前記フィールド機器に送信す
る通信部とを有し、
前記フィールド機器は、
前記ハードウェア構成情報に基づいたシステムの構築に必要な前記機能回路をプログラ
ム可能な回路部と、
前記制御装置から送信される前記ハードウェア構成情報を受信する通信部と、
前記通信部により受信された前記ハードウェア構成情報に基づいて前記回路部を特定の
機能を有する前記機能回路として構成する制御部とを有する
ことを特徴とするフィールド機器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−138433(P2011−138433A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299174(P2009−299174)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】