説明

フィールド機器及び通信システム

【課題】保守・点検に係る作業を効率的且つ正確に行うことができるフィールド機器及び通信システムを提供する。
【解決手段】無線フィールド機器1aは、無線通信ネットワークを介した通信を行う無線通信部11と、外部機器と赤外線通信を行う赤外線通信部12と、外部機器から送信されて赤外線通信部12で受信されたメッセージを、無線通信ネットワークに送信可能なデータ(具体的には、無線通信ネットワークを介して異常を通知するためのデータであるアラートデータ)に変換するメッセージ変換部17aと、メッセージ変換部17aで変換されたデータを、無線通信部11を制御して無線通信ネットワークに送信する無線送信制御部17bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや工場等に設置されるフィールド機器及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等においては、高度な自動操業を実現すべく、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)と、これらを制御する制御装置とが通信手段を介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されている。このような分散制御システムの基礎をなす通信システムは、有線によって通信を行うものが殆どであったが、近年においては、ISA100.11a等の無線通信規格に準拠した無線によって通信を行うものも実現されている。
【0003】
上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した通信システムは、大別すると、無線通信が可能なフィールド機器(無線フィールド機器)、無線ゲートウェイ、及びホスト装置から構成される。無線ゲートウェイは、無線フィールド機器との間で無線通信ネットワークを形成し、無線通信ネットワークに参入している無線フィールド機器の動作を制御するとともに無線フィールド機器で得られる各種データの収集等を行う。また、ホスト装置は、通信線によって無線ゲートウェイに接続されて、無線ゲートウェイを介して無線フィールド機器の管理を行う。
【0004】
ここで、上記の無線フィールド機器を無線通信ネットワークに参入させるには、参入する側の無線フィールド機器に対して「プロビジョニング(Provisioning)」と呼ばれる機器情報の設定作業を行うとともに、参入される側の無線ゲートウェイに対して「プロビジョニング」を行った無線フィールド機器を特定する機器情報の登録作業を行う必要がある。無線フィールド機器に対する「プロビジョニング」は、例えば無線フィールド機器との間で赤外線通信が可能なプロビジョニングデバイスと呼ばれる機器を用いて作業者により行われ、無線ゲートウェイに対する登録作業は、例えば上記のホスト装置を用いて管理者により行われる。
【0005】
無線ゲートウェイに登録された機器情報と一致する機器情報が設定された無線フィールド機器は無線ゲートウェイによって無線通信ネットワークへの参入が許可され、それ以外の機器情報が設定された無線フィールド機器は無線ゲートウェイによって無線通信ネットワークへの参入が拒否される。尚、技術分野は異なるが、以下の特許文献1には、移動可能な通信端末間において、所定の処理の実行を要求する意味を持つテンポラリメッセージの送受信を通信端末の位置に応じて制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−66999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した通信システムの一部をなすホスト装置は、プラント等の一角に設けられた制御室に設置されることが殆どであり、フィールド機器が設置される現場の建物とは異なる建物に設置されることもある。このため、作業員がフィールド機器の保守・点検(例えば、定期点検)のための作業を行う場合には、携帯電話機等を用いて制御室の管理者と連絡を取りつつ作業をしているのが現状である。プラント等の規模が小さければプラントの全域の殆どに電波が届くため作業に支障は生じないが、プラント等の規模が大きくなると電波が届きにくくなって管理者と連絡を取るのが困難になり、作業に支障が生ずる可能性があるという問題がある。
【0008】
また、フィールド機器の保守・点検は、作業漏れを防止するために、作業を行うべき項目の一覧が示されているチェックリストに従って作業が行われることが多い。このチェックリストに従って作業が行われる場合には、各々の項目の作業が終了した時点で作業結果がチェックリストに記入される。しかしながら、フィールド機器の保守・点検のための作業は単調な作業であり、プラント等の規模によっては点検すべきフィールド機器の数が膨大になり、しかもフィールド機器の外観は似通っているため、チェックリストに対する記入ミスや記入漏れが誘発しやすいという問題がある。
【0009】
また、フィールド機器の保守・点検のための作業を終えると、その作業結果をまとめる必要があることから、作業者は、チェックリストの内容をコンピュータに入力し、表計算ソフト等を用いて作業結果を集計する作業を行う必要がある。しかしながら、かかる作業は、作業者の手作業によって行われるため、入力ミスや集計ミスが生じやすいという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、保守・点検に係る作業を効率的且つ正確に行うことができるフィールド機器及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のフィールド機器は、通信ネットワーク(N1)を介した通信を行う第1通信部(11)と、外部機器(2)と赤外線通信を行う第2通信部(12)とを備えるフィールド機器(1a、1b)において、前記外部機器から送信されて前記第2通信部で受信されたメッセージを、前記通信ネットワークに送信可能なデータに変換する変換部(17a)と、前記変換部で変換されたデータを、前記第1通信部を制御して前記通信ネットワークに送信する第1制御部(17b)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、外部機器から送信されて第2通信部で受信されたメッセージが変換部によって通信ネットワークに送信可能なデータに変換され、第1制御部によって第1通信部が制御されることにより、変換部で変換されたデータが通信ネットワークに送信される。
また、本発明のフィールド機器は、前記変換部が、前記第2通信部で受信されたメッセージを、前記通信ネットワークを介して異常を通知するためのデータであるアラートデータに変換することを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記通信ネットワークを介して送信されてきて前記第1通信部で受信されるメッセージのうち、前記外部機器に送信すべき旨を示すメッセージを、前記第2通信部を制御して前記外部機器に向けて送信する第2制御部(17c)を備えることを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記通信ネットワークを介して送信されてきて前記第1通信部で受信されるメッセージのうち、表示部(14)に表示すべき旨を示すメッセージを、前記表示部に表示する制御を行う表示制御部(17d)を備えることを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記第1,第2通信部で受信されるメッセージを、該メッセージの種類に応じて、種類毎に互いに異なる識別子が割り当てられたパラメータとして記憶する記憶部(16)を備えることを特徴としている。
本発明の通信システムは、通信ネットワーク(N1、N2)を介した通信が行われる通信システム(CS)において、上記の何れかに記載のフィールド機器(1a,1b)と、前記フィールド機器に対して赤外線通信により前記メッセージを送信する外部機器(2)と、前記通信ネットワークを介して前記フィールド機器から送信されてくる前記データを受信するホスト装置(4)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部機器から送信されて第2通信部で受信されたメッセージを変換部で通信ネットワークに送信可能なデータに変換し、第1制御部によって第1通信部を制御することにより変換部で変換したデータを通信ネットワークに送信している。これにより、外部機器を操作する作業者の意図をメッセージとして通信ネットワークに送信することができるため、保守・点検に係る作業を効率的且つ正確に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるフィールド機器で用いられるパラメータを説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態による通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態によるフィールド機器及び通信システムについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による通信システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す通り、通信システムCSは、無線フィールド機器1a,1b(フィールド機器)、プロビジョニングデバイス2(外部機器)、無線ゲートウェイ3、及びホスト装置4を備えており、無線通信ネットワークN1及びバックボーンネットワークN2を介した通信が可能である。
【0015】
尚、図1において、符号A1を付した矩形の領域は、無線フィールド機器1a,1b及び無線ゲートウェイ3が設置されるプラント等の現場を表しており、符号A2を付した矩形の領域は、ホスト装置4が設置されるプラント等の一角に設けられた制御室を表している。図1に示す例では、制御室A2が現場A1から離間して設けられているため、現場A1と制御室A2とがバックボーンネットワークN2によって接続されている。また、図1では2つの無線フィールド機器1a,1bを示しているが、無線フィールド機器の数は任意である。
【0016】
無線フィールド機器1a,1bは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これら無線フィールド機器1a,1bの動作は、ホスト装置4から無線ゲートウェイ3を介して送信されてくる制御データに基づいて制御される。また、無線フィールド機器1a,1bで得られた測定データは無線ゲートウェイ3に収集される。
【0017】
また、無線フィールド機器1a,1bは、赤外線通信機能を有しており、外部の赤外線通信機器との間で各種情報の送受信が可能である。具体的に、無線フィールド機器1a,1bは、プロビジョニングデバイス2との間で赤外線通信を行って、各種の設定情報(例えば、無線ゲートウェイ3によって形成される無線通信ネットワークN1に参入するために必要な情報)を取得し、或いは、プロビジョニングデバイス2との間でメッセージの送受信を行う。これら無線フィールド機器1a,1bには、プロビジョニングを行う作業者に対する各種メッセージや機器の状態が表示される液晶表示装置等の表示装置Dが設けられている。尚、無線フィールド機器1a,1bの内部構成の詳細については後述する。
【0018】
プロビジョニングデバイス2は、無線フィールド機器1a,1bとの間で赤外線通信が可能な端末装置であり、無線フィールド機器1a,1bの設置やメンテナンス(保守・管理)を行う作業者によって操作され、無線フィールド機器1a,1bに対する各種情報の設定や変更に加えてメッセージの送受信を行う。ここで、プロビジョニングデバイス2を用いて無線フィールド機器1a,1bに設定される設定情報としては、無線フィールド機器1a,1bを特定する機器情報(例えば、名称や型番を示す情報)、無線通信ネットワークN1を介した無線通信を実現するための通信設定情報(無線ゲートウェイ3のアドレス等を示す情報)等がある。
【0019】
無線ゲートウェイ3は、無線フィールド機器1a,1bが接続される無線通信ネットワークN1と、ホスト装置4が接続されるバックボーンネットワークN2とを接続し、無線フィールド機器1a,1bとホスト装置4との間で送受信される各種データの中継を行う。この、無線ゲートウェイ3は、上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信が可能であり、無線通信ネットワークN1を介して行われる無線通信の制御や、無線フィールド機器を無線通信ネットワークN1に参入させるか否かの参入処理等も行う。
【0020】
ホスト装置4は、有線ネットワークであるバックボーンネットワークN2に接続されており、例えば通信システムCSの管理者に操作される装置である。このホスト装置4は、管理者の操作に応じて、例えば無線ゲートウェイ3との間で通信を行って、無線フィールド機器1a,1bに関する情報(測定データ、異常を示す情報(アラーム)等)を取得して無線フィールド機器1a,1bの管理に用いる。
【0021】
次に、無線フィールド機器1a,1bの内部構成について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、無線フィールド機器1a,1bは同様の構成であるため、以下では無線フィールド機器1aのみについて説明し、無線フィールド機器1bについての説明は省略する。また、図2では、無線フィールド機器1aに設けられた構成のうち、本発明の説明を行う上で必要な構成のみを図示している。
【0022】
図2に示す通り、無線フィールド機器1aは、無線通信部11(第1通信部)、赤外線通信部12(第2通信部)、機器固有処理部13、表示部14、フラッシュメモリ15、強誘電体メモリ16(記憶部)、及び制御部17を備える。無線通信部11は、制御部17の制御の下で、無線通信ネットワークN1を介した無線ゲートウェイ3との無線通信を行う。尚、無線通信部11で行われる無線通信は、無線通信規格ISA100.11aに準拠したものである。赤外線通信部12は、制御部17の制御の下で、プロビジョニングデバイス2との間で赤外線通信を行って各種の設定情報の取得やメッセージの送受信を行う。
【0023】
機器固有処理部13は、制御部17の制御の下で、無線フィールド機器1aに固有の処理を行う。ここで、無線フィールド機器1aに固有の処理とは、例えば温度の測定処理、バルブの開閉処理、アクチュエータの操作処理等である。本実施形態では、機器固有処理部13には温度センサが設けられており、上記の固有の処理として温度の測定処理が行われるものとする。表示部14は、図1に示した表示装置Dを備えており、制御部17の制御の下で、プロビジョニングを行う作業者に対する各種メッセージや機器の状態等を表示装置Dに表示する。
【0024】
フラッシュメモリ15は、不揮発性の半導体メモリであって、無線フィールド機器1aの動作を規定するプログラム(図示省略)を格納する。強誘電体メモリ16は、強誘電体の履歴現象(ヒステリシス)を利用した不揮発性の半導体メモリであって、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)とも呼ばれる。この強誘電体メモリ15は、無線フィールド機器1aで用いられる各種のパラメータPMを格納する。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態によるフィールド機器で用いられるパラメータを説明するための図である。パラメータPMは、無線フィールド機器1aの制御に係る情報、測定に係る情報、その他の無線フィールド機器1aで用いられる各種情報が格納されるものである。このパラメータPMには、図3に示す通り、格納される情報の種類(内容)毎に互いに異なるパラメータ番号(識別子)が割り当てられている。
【0026】
図3に示す例において、パラメータ番号「0010」が割り当てられたパラメータは、機器固有処理部13における温度の測定値が格納されるパラメータである。また、パラメータ番号「5001」が割り当てられたパラメータは、赤外線通信部12で受信されたメッセージが格納されるパラメータであり、パラメータ番号「5002」が割り当てられたパラメータは、赤外線通信部12から送信すべきメッセージが格納されるパラメータである。また、パラメータ番号「5010」が割り当てられたパラメータは、表示部14に表示させるべきメッセージが格納されるパラメータである。
【0027】
制御部17は、メッセージ変換部17a(変換部)、無線送信制御部17b(第1制御部)、赤外線送信制御部17c(第2制御部)、及び表示制御部17dを備えており、無線フィールド機器1aの動作を統括して制御する。メッセージ変換部17aは、プロビジョニングデバイス2から送信されて赤外線通信部12で受信されたメッセージ(パラメータPMに格納されているメッセージのうち、図3に示すパラメータ番号「5001」が割り当てられたパラメータに格納されたメッセージ)を、無線通信ネットワークN1に送信可能なデータに変換する。具体的には、赤外線通信部12で受信されたメッセージを、無線通信ネットワークN1を介してホスト装置4に異常を通知するためのデータであるアラートデータに変換する。
【0028】
かかる変換を行うのは、無線フィールド機器1aからホスト装置4に対し、プロビジョニングデバイス2からのメッセージを送信可能にするためである。ここで、無線フィールド機器1aは、ホスト装置4によって制御されているため、プロビジョニングデバイス2からのメッセージを自発的にホスト装置4に送信することは基本的にはできない。但し、無線フィールド機器1aは、異常が生じた旨を示すアラートについては、ホスト装置4に対して自発的に送信することができるため、本実施形態では、プロビジョニングデバイス2からのメッセージをアラートデータに変換することでホスト装置4に対するメッセージの送信を可能にしている。
【0029】
無線送信制御部17bは、メッセージ変換部17aで変換されたアラートデータを、無線通信部11を制御して無線通信ネットワークN1に送信する。赤外線送信制御部17cは、ホスト装置4から無線通信ネットワークN1を介して送信されてきて無線通信部11で受信されたメッセージのうち、プロビジョニングデバイス2に送信すべき旨を示すメッセージを、赤外線通信部12を制御してプロビジョニングデバイス2に送信する。ここで、プロビジョニングデバイス2に送信すべき旨を示すメッセージとは、パラメータPMに格納されているメッセージのうち、図3に示すパラメータ番号「5002」が割り当てられたパラメータに格納されたメッセージである。
【0030】
表示制御部17dは、ホスト装置4から無線通信ネットワークN1を介して送信されてきて無線通信部11で受信されたメッセージのうち、表示部14に表示すべき旨を示すメッセージを、表示部14に表示する制御を行う。ここで、表示部14に表示すべき旨を示すメッセージとは、パラメータPMに格納されているメッセージのうち、図3に示すパラメータ番号「5010」が割り当てられたパラメータに格納されたメッセージである。
【0031】
ここで、上述した制御部17の機能(メッセージ変換部17a〜表示制御部17d)はハードウェアにより実現することもできるが、ソフトウェアにより実現することもできる。つまり、メッセージ変換部17a〜表示制御部17dの機能を実現するプログラムをコンピュータに実行させることにより実現しても良い。例えば、メッセージ変換部17a〜表示制御部17dの機能を実現するプログラムを記録媒体に記録しておき、記録媒体に記録されたデータの読み出しが可能なドライブ装置を用いて記録媒体に記録されたプログムをコンピュータにインストールすることにより、メッセージ変換部17a〜表示制御部17dの機能をソフトウェアにより実現することが可能である。
【0032】
或いは、インターネット等のネットワークにコンピュータを接続し、記録媒体に記録されたプログラムと同様のプログラムをネットワークからコンピュータにダウンロード可能にしても良い。コンピュータにダウンロードされたプログラムは、上記のドライブ装置を用いてコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み取る場合と同様にコンピュータにインストールすることができる。
【0033】
次に、上記構成における通信システムで行われる動作について説明する。図4〜図6は、本発明の一実施形態による通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。ここで、本実施形態における通信システムCSの動作は、プロビジョニングデバイス2からホスト装置4に対してメッセージが送信される動作(以下、「メッセージ送信動作」という)と、ホスト装置4が無線フィールド機器1a,1b又はプロビジョニングデバイス2にメッセージを表示させる動作(以下、「メッセージ表示動作」という)とに大別される。
【0034】
図4に示すフローチャートは、上記のメッセージ送信動作を説明するものである。これに対し、図5に示すフローチャートは、上記のメッセージ表示動作のうち、ホスト装置4がプロビジョニングデバイス2にメッセージを表示させる動作を説明するものである。また、図6に示すフローチャートは、上記のメッセージ表示動作のうち、ホスト装置4が無線フィールド機器1a,1bにメッセージを表示させる動作を説明するものである。以下、これら図4〜図6を参照して各々の動作について順に説明する。
【0035】
〈メッセージ送信動作〉
図4に示すフローチャートの処理は、例えばチェックリストに従った無線フィールド機器1aのメンテナンス作業が終了した時点で、作業者がプロビジョニングデバイス2を操作することにより開始される。尚、図4中のステップS10,S20,S30は、メッセージ送信動作において、プロビジョニングデバイス2で行われる動作、無線フィールド機器1aで行われる動作、及びホスト装置4で行われる動作をそれぞれ示している。
【0036】
まず、作業者がプロビジョニングデバイス2を操作して、ホスト装置4に送信すべきメッセージを入力する処理が行われる(ステップS11)。次に、入力されたメッセージの送信指示がなされたか否かがプロビジョニングデバイス2で判断される(ステップS12)。送信指示がなされていないと判断された場合(ステップS12の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS11の処理が継続される。これに対し、入力されたメッセージの送信指示がなされたと判断された場合(ステップS12の判断結果が「YES」の場合)には、入力されたメッセージを赤外線通信により無線フィールド機器1aに送信する処理が行われる(ステップS13)。
【0037】
プロビジョニングデバイス2からメッセージが送信されてくると、無線フィールド機器1aの赤外線通信部12でメッセージの受信処理が行われる(ステップS21)。赤外線通信部12で受信されたメッセージは、制御部17の制御によって、強誘電体メモリ16のパラメータPM(具体的には、図3に示すパラメータ番号「5001」が割り当てられたパラメータ)に格納される。
【0038】
パラメータPMに格納されたメッセージは、制御部17のメッセージ変換部17aによって読み出されて無線通信ネットワークN1に送信可能なデータ(具体的には、ホスト装置4に異常を通知するためのデータであるアラートデータ)に変換される(ステップS22)。そして、制御部17の無線送信制御部17bによって無線通信部11が制御され、メッセージ変換部17aで変換されたアラートデータがホスト装置4に向けて送信される(ステップS23)。
【0039】
無線フィールド機器1aから送信されたアラートデータは、無線通信ネットワークN1、無線ゲートウェイ3、バックボーンネットワークN2を順に介してホスト装置4で受信される(ステップS31)。無線フィールド機器1aからのアラートデータを受信すると、ホスト装置4は受信したアラートデータを解析し(ステップS32)、その解析結果に応じた処理を実行する(ステップS33)。例えば、上記の解析によってアラートデータが単なるメッセージである場合には、そのメッセージをホスト装置4に設けられた表示装置に表示する。或いは、ホスト装置4がログ記録機能を備えている場合には、そのメッセージをログとして記録する。作業者が作業結果をメッセージとしてプロビジョニングデバイス2に入力すれば、作業結果がホスト装置4にログとして記録されることになる。
【0040】
〈メッセージ表示動作〉
図5に示すフローチャートの処理は、例えば以上説明したメッセージ送信動作によってホスト装置4の表示装置に表示された内容を参照した管理者が、ホスト装置4を操作することにより開始される。尚、図5中のステップS40,S50,S60は、メッセージ表示動作(ホスト装置4がプロビジョニングデバイス2にメッセージを表示させる動作)において、ホスト装置4で行われる動作、無線フィールド機器1aで行われる動作、及びプロビジョニングデバイス2で行われる動作をそれぞれ示している。
【0041】
まず、管理者がホスト装置4を操作して、プロビジョニングデバイス2に表示すべきメッセージを入力する処理が行われる(ステップS41)。次に、入力されたメッセージの送信指示がなされたか否かがホスト装置4で判断される(ステップS42)。送信指示がなされていないと判断された場合(ステップS42の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS41の処理が継続される。これに対し、入力されたメッセージの送信指示がなされたと判断された場合(ステップS42の判断結果が「YES」の場合)には、入力されたメッセージを無線フィールド機器1aに送信する処理が行われる(ステップS43)。
【0042】
ホスト装置4からメッセージが送信されてくると、無線フィールド機器1aの無線通信部11でメッセージの受信処理が行われる(ステップS51)。無線通信部11で受信されたメッセージは、制御部17の制御によって、強誘電体メモリ16のパラメータPM(具体的には、図3に示すパラメータ番号「5002」が割り当てられたパラメータ)に格納される(ステップS52)。
【0043】
パラメータPMに格納されたメッセージは、制御部17の赤外線送信制御部17cによって読み出される。そして、制御部17の赤外線送信制御部17cによって赤外線通信部12が制御され、読み出されたメッセージが赤外線通信によりプロビジョニングデバイス2に向けて送信される(ステップS53)。無線フィールド機器1aから赤外線通信により送信されたメッセージは、プロビジョニングデバイス2で受信され(ステップS61)、プロビジョニングデバイス2の表示装置に表示される(ステップS62)。
【0044】
図6に示すフローチャートの処理は、例えば以上説明したメッセージ送信動作によってホスト装置4に送信されたメッセージの内容が、全ての無線フィールド機器1a,1bに警報を送信しなければならないものであると解析された場合に開始される。尚、図5中のステップS70,S80は、メッセージ表示動作(ホスト装置4が無線フィールド機器1a,1bにメッセージを表示させる動作)において、ホスト装置4で行われる動作及び無線フィールド機器1aで行われる動作をそれぞれ示している。
【0045】
処理が開始されると、まず全ての無線フィールド機器1a,1bに対して警報を送信する処理がホスト装置4で行われる(ステップS71)。ホスト装置4から送信された警報は、バックボーンネットワークN2、無線ゲートウェイ3、及び無線通信ネットワークN1を順に介して無線フィールド機器1a,1bでそれぞれ受信される(ステップS81)。
【0046】
無線フィールド機器1a,1bで受信された警報は、無線フィールド機器1a,1bの各々が備える制御部17の制御によって、強誘電体メモリ16のパラメータPM(具体的には、図3に示すパラメータ番号「5010」が割り当てられたパラメータ)にそれぞれ格納される(ステップS82)。パラメータPMに格納されたメッセージは、無線フィールド機器1a,1bの各々が備える制御部17の表示制御部17dによって読み出されて表示部14にそれぞれ表示される(ステップS83)。このようにして、ホスト装置4から送信された警報は、無線フィールド機器1a,1bが備える表示部14にそれぞれ表示され、表示部14の表示を参照した作業員は表示内容に応じて避難等の然るべき対応を取ることができる。
【0047】
以上の通り、本実施形態では、プロビジョニングデバイス2から赤外線通信によって無線フィールド機器1aに送信されたメッセージを、無線フィールド機器1aが無線通信ネットワークN1に送信可能なデータ(アラートデータ)に変換してホスト装置4に向けて無線通信ネットワークN1へ送信している。また、ホスト装置4から無線フィールド機器1aに送信されたメッセージを赤外線通信によってプロビジョニングデバイス2に送信してプロビジョニングデバイス2に表示している。
【0048】
これにより、無線フィールド機器1a,1bの保守・点検を行っている作業者と管理者とのプロビジョニングデバイス2を介した意思疎通が可能になり、携帯電話機等を用いて意思疎通を行っていた従来のような電波が届かずに意思疎通することができないという状況を解消することができる。また、作業者がプロビジョニングデバイス2に入力した内容を、例えばログとしてホスト装置4に記録することができるため、作業結果をチェックリストに記入していた従来よりも記入ミス、入力ミス、集計ミス等を低減することができる。このように、本実施形態では、保守・点検に係る作業を、従来よりも効率的且つ正確に行うことができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態によるフィールド機器及び通信システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、現場A1の作業者が、プロビジョニングデバイス2を用いてメッセージをホスト装置4に送信することにより、制御室A2の管理者との間で意思疎通を図る例について説明した。しかしながら、メッセージの送信先を無線フィールド機器に指定することで、現場A1の作業員同士がプロビジョニングデバイス2を介して意思疎通を図ることができる。
【0050】
ここで、現場A1の作業員同士のメッセージの授受は、必ず無線ゲートウェイ3を介して行われるため、管理者はホスト装置4を用いて作業員の間で授受されるメッセージをモニタすることができる。これにより、セキュリティを確保することができるとともに、作業員によって誤った作業が行われていないか等を管理者が監視することが可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信が可能な無線フィールド機器1a,1bを例に挙げて説明したが、本発明は、有線ネットワーク介して通信を行うフィールド機器にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b 無線フィールド機器
2 プロビジョニングデバイス
4 ホスト装置
11 無線通信部
12 赤外線通信部
14 表示部
16 強誘電体メモリ
17a メッセージ変換部
17b 無線送信制御部
17c 赤外線送信制御部
17d 表示制御部
CS 通信システム
N1 無線通信ネットワーク
N2 バックボーンネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介した通信を行う第1通信部と、外部機器と赤外線通信を行う第2通信部とを備えるフィールド機器において、
前記外部機器から送信されて前記第2通信部で受信されたメッセージを、前記通信ネットワークに送信可能なデータに変換する変換部と、
前記変換部で変換されたデータを、前記第1通信部を制御して前記通信ネットワークに送信する第1制御部と
を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記変換部は、前記第2通信部で受信されたメッセージを、前記通信ネットワークを介して異常を通知するためのデータであるアラートデータに変換することを特徴とする請求項1記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記通信ネットワークを介して送信されてきて前記第1通信部で受信されるメッセージのうち、前記外部機器に送信すべき旨を示すメッセージを、前記第2通信部を制御して前記外部機器に向けて送信する第2制御部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記通信ネットワークを介して送信されてきて前記第1通信部で受信されるメッセージのうち、表示部に表示すべき旨を示すメッセージを、前記表示部に表示する制御を行う表示制御部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記第1,第2通信部で受信されるメッセージを、該メッセージの種類に応じて、種類毎に互いに異なる識別子が割り当てられたパラメータとして記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のフィールド機器。
【請求項6】
通信ネットワークを介した通信が行われる通信システムにおいて、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載のフィールド機器と、
前記フィールド機器に対して赤外線通信により前記メッセージを送信する外部機器と、
前記通信ネットワークを介して前記フィールド機器から送信されてくる前記データを受信するホスト装置と
を備えることを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−62590(P2013−62590A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198317(P2011−198317)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】