説明

フェナンスリジン誘導体の凍結乾燥製剤

【課題】優れた保存安定性と保存後の良好な再溶解性を有し、抗腫瘍剤として臨床上有用なフェナンスリジン誘導体を含有する注射用医薬製剤となる凍結乾燥製剤が求められていた。
【解決手段】フェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選ばれる1種類以上の糖類を含有する凍結乾燥製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗腫瘍剤として有用な一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体を含有してなる凍結乾燥製剤、特に、該フェナンスリジン誘導体と特定の糖類を含有してなる凍結乾燥製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体は各種腫瘍細胞株に対して優れた抗腫瘍効果を示すことが特許文献1に記載されている。しかしながら、糖類を用いた凍結乾燥製剤について具体的な記載はない。
【0003】
【特許文献1】国際公開第1998/23614号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体は水溶液中で不安定であり、そのまま注射用医薬製剤として用いるのは困難であった。また、一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体を単に水に溶解し、凍結乾燥することは可能であったが、該凍結乾燥製剤は保存安定性が低く、また、再溶解性が悪く、それを注射用医薬製剤として用いるのは困難であった。そのため、一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体の注射用医薬製剤として使用可能な凍結乾燥製剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、特定の糖類を添加して得られる凍結乾燥製剤が安定で再溶解性に優れた注射用医薬製剤となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は以下の(1)〜(6)に関する。
(1)一般式(A)
【化1】

[式中、Rは低級アルキル基を示し、Rは炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖を示し、Xは酸残基または水素酸残基を示す。]
で表されるフェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選ばれる1種類以上の糖類を含有する凍結乾燥製剤。
【0007】
(2)一般式(B)
【化2】

[式中、Rは低級アルキル基を示し、Rは炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖を示す。]
で表されるフェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選ばれる1種類以上の糖類を含有する凍結乾燥製剤。
【0008】
(3)一般式(A)のRがメチル基、Rがトリメチレン基、Xが塩化物イオンである上記(1)記載の凍結乾燥製剤。
(4)一般式(B)のRがメチル基、Rがトリメチレン基である上記(2)記載の凍結乾燥製剤。
(5)糖類がソルビトール、ブドウ糖またはトレハロースである上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤。
(6)糖類がブドウ糖である上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体と特定の糖類を含有する凍結乾燥製剤は、優れた保存安定性、再溶解性を有し、抗腫瘍剤として臨床的にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明の凍結乾燥製剤は、一般式(A)[式中、Rは低級アルキル基を示し、Rは炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖を示し、Xは酸残基または水素酸残基を示す。]で表されるフェナンスリジン誘導体、または一般式(B)[式中、Rは低級アルキル基を示し、Rは炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖を示す。]で表されるフェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選ばれる1種類以上の糖類を含有する。
【0011】
本発明の凍結乾燥製剤に含有される一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体における低級アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
【0012】
本発明の凍結乾燥製剤に含有される一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体における炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖としては、例えば、炭素数2から6のポリメチレン鎖が好ましい。
【0013】
炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖としては、例えば、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHC(CHCH−、−CHCHCHCH−、−CHCHCHCHCH−、−CHCHCHCHCHCH−等が挙げられる。特に、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−等の炭素数3から4のポリメチレン鎖が好ましい。
【0014】
本発明の凍結乾燥製剤に含有される一般式(A)で表されるフェナンスリジン誘導体におけるXの酸残基とは、正塩をつくる酸残基、例えば、Xとして塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオンや、硫酸イオン、硝酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。また、水素酸残基とは水素塩をつくる酸残基であり、1または2個の水素原子をもち、例えば、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン等が挙げられる。中でも、特に塩化物イオンが好ましい。
【0015】
本発明の凍結乾燥製剤に使用する一般式(A)で表されるフェナンスリジン誘導体において、Rがメチル基、Rがトリメチレン基、Xが塩化物イオンである化合物が好ましく、また、一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体において、Rがメチル基、Rがトリメチレン基である化合物が好ましい。
本発明の凍結乾燥製剤に使用する一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体は特許文献1に記載の方法により製造することができるが、該製造方法に限定されない。
【0016】
一般式(A)で表されるフェナンスリジン誘導体は、塩基処理により容易に分子内から酸1等量を放出し一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体の構造をとることが可能であり、逆に、一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体を酸処理することにより容易に一般式(A)で表されるフェナンスリジン誘導体とすることが可能である。また、条件によっては一般式(A)で表されるフェナンスリジン誘導体と一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体が混合した状態で存在することもある。
【0017】
本発明の凍結乾燥製剤に含有される糖類としては、一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体を含有する凍結乾燥製剤の安定性と再溶解性を向上させれば特に限定されないが、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロースまたはソルビトール等から選ばれる1種以上の糖類が挙げられ、中でもブドウ糖、トレハロースまたはソルビトールが好ましく、一般式(A)のRがメチル基、Rがトリメチレン基、Xが塩化物イオンであるフェナンスリジン誘導体または一般式(B)のRがメチル基、Rがトリメチレン基であるフェナンスリジン誘導体の凍結乾燥製剤の場合、医薬製剤の添加物として使用実績のあるブドウ糖が特に好ましい。本発明において糖類にはその水和物も含む。
該糖類の使用量としては、凍結乾燥製剤に含有されるフェナンスリジン誘導体1重量部に対して、凡そ0.8〜4重量部の範囲が好ましく、凡そ1〜2重量部の範囲が特に好ましい。
【0018】
一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロースまたはソルビトール等からなる群から選ばれる1種以上の糖類を含有する凍結乾燥製剤におけるそれぞれの含有割合としては、フェナンスリジン誘導体15〜55重量%、糖類45〜80重量%が好ましく、フェナンスリジン誘導体25〜50重量%、糖類50〜67重量%が特に好ましい。
【0019】
本発明の凍結乾燥製剤は、例えば、一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体と糖類とを注射用水等に溶解し、無菌ろ過後、バイアル瓶等に充填し、凍結させて減圧下で水を昇華させる真空凍結乾燥に付し,次いでバイアル中を窒素置換後、ゴム栓封栓し、アルミキャップにて巻き締めて得られる。
必要に応じて、通常の医薬品に用いられる種々の補助剤、即ち、防腐剤、無痛化剤、乳化剤等の助剤や担体を添加してもよい。
【0020】
このようにして得られる凍結乾燥製剤は、室温でもこのまま長期保存することができ、用時に注射用水や5%ブドウ糖液等を溶解液として再溶解して用いる。なお、溶解液には必要に応じて、製薬上許容され得る溶剤(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、溶解補助剤(エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等)、緩衝剤(クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム等)等を加えてもよい。
本発明の凍結乾燥製剤の溶液1mL中における一般式(A)または一般式(B)で表されるフェナンスリジン誘導体の含有量としては特に限定されないが、0.1mg〜50mg程度が好ましく、1mg〜30mg程度が特に好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
【0022】
実施例1
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物(一般式(A)のRがメチル基、Rがトリメチレン基、Xが塩化物イオンであるフェナンスリジン誘導体)200mg及び200mgのキシリトールを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0023】
実施例2
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgのブドウ糖を加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0024】
実施例3
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgの乳糖を加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0025】
実施例4
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgのマルトースを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0026】
実施例5
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgのトレハロースを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0027】
実施例6
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgのソルビトールを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0028】
比較例1
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物400mgを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を20mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0029】
比較例2
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgのマンニトールを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0030】
比較例3
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物200mg及び200mgのイノシトールを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を10mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0031】
試験例1
実施例1〜5と比較例1〜3で得られた凍結乾燥製剤を40℃で6ヶ月保存し、保存後の再構成時の溶解性とHPLC測定による不純物の量(ピーク面積比)を測定した。溶解性は、注射用水2mLを加えて振り混ぜた時の溶解に要する時間(秒)である。60秒振っても溶けないものは不溶とした。結果を以下の表1に示す。
【0032】
【表1】

上記結果から明らかなように、本発明の凍結乾燥製剤は比較製剤と比べて保存後の溶解性も良好で、不純物の増加も抑制することができた。
【0033】
試験例2
実施例2、5、6と比較例1〜3で得られた凍結乾燥製剤を60℃で4週間保存し、保存後の再構成時の溶解性とHPLC測定による不純物の量(ピーク面積比)を測定した。結果を以下の表2に示す。
【0034】
【表2】

上記結果から明らかなように、本発明の凍結乾燥製剤は比較製剤と比べて保存後の溶解性も良好で、不純物の増加も抑制することができた。
【0035】
実施例7
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物400mg及び400mgのブドウ糖を加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を20mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2.5mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0036】
実施例8
実施例7の400mgのブドウ糖の替わりに800mgのブドウ糖を添加し、同様にして2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0037】
実施例9
実施例7の400mgのブドウ糖の替わりに2000mgのブドウ糖を添加し、同様にして2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0038】
比較例4
注射用水に2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物400mgを加えて加熱溶解させる。注射用水を加えて全量を20mLとし、この溶液を無菌ろ過後ガラスバイアルに2.5mLずつ充填し、常法に従い凍結乾燥し、得られた試料バイアル中を窒素置換してゴム栓封栓をし、アルミキャップにて巻き締め、2,3−メチレンジオキシ−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5,6−プロパノベンゾ[c]フェナンスリジニウム塩化物の凍結乾燥製剤を得る。
【0039】
試験例3
実施例7〜9と比較例4で得られた凍結乾燥製剤を60℃で2ヶ月保存し、保存後の再構成時の溶解性とHPLC測定による不純物の量(ピーク面積比)を測定し、保存前後の色差を比較した。色差は色彩色差計CR−321(ミノルタ(株)製)を用いてJIS Z 8730で規定されたLab表色系で側色を行い、保存前後での色の変化ΔEを算出した。ΔEが小さい程色の変化が小さいことを示す。結果を以下の表3に示す。
【0040】
【表3】

上記結果から、ブドウ糖をフェナンスリジニウム塩化物の1〜2重量部添加した実施例7及び8では保存後の溶解性も良好であり、不純物の増加も見られない。ブドウ糖を5重量部添加した実施例9では溶解性が若干低下し、変色が見られた。ブドウ糖を添加していない比較例4では溶解性も悪く、不純物の増加も大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)
【化1】

[式中、Rは低級アルキル基を示し、Rは炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖を示し、Xは酸残基または水素酸残基を示す。]
で表されるフェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選ばれる1種類以上の糖類を含有する凍結乾燥製剤。
【請求項2】
一般式(B)
【化2】

[式中、Rは低級アルキル基を示し、Rは炭素数2から6の脂肪族炭化水素鎖を示す。]
で表されるフェナンスリジン誘導体、並びに、キシリトール、ブドウ糖、乳糖、マルトース、トレハロース及びソルビトールからなる群から選ばれる1種類以上の糖類を含有する凍結乾燥製剤。
【請求項3】
一般式(A)のRがメチル基、Rがトリメチレン基、Xが塩化物イオンである請求項1記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
一般式(B)のRがメチル基、Rがトリメチレン基である請求項2記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
糖類がソルビトール、ブドウ糖またはトレハロースである請求項1〜4のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項6】
糖類がブドウ糖である請求項1〜5のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤。

【公開番号】特開2010−6704(P2010−6704A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301774(P2006−301774)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】