説明

フェニルピリド[1,2−A]インドリウム誘導チオール/ジスルフィド染料、この染料を含む染料組成物、この染料を使用するケラチン物質の明色化方法

本発明は、フェニルピリド[1,2-a]インドリウム誘導チオール及びジスルフィド蛍光染料を使用する、ケラチン繊維の染色に関する。本発明は、フェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団チオールもしくはジスルフィド染料を含む染料組成物、並びに、前記組成物を使用する、ケラチン物質、特にケラチン繊維、特にヒトのケラチン繊維、例えば髪に対する明色化効果を有する、染色方法に関する。これは、同様に、新規なフェニルピリド[1,2-a]インドリウム誘導発色団チオール染料及び、ケラチン物質の明色化におけるその使用に関する。この組成物により、濃色のケラチン繊維に対して、特に耐性且つ顕著な明色化効果を有する着色を得ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルピリド[1,2-a]インドリウム誘導チオール及びジスルフィド蛍光染料を使用する、ケラチン繊維の染色に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン繊維、特にヒトのケラチン繊維を、直接染色によって染色することが、一般に行われている。直接染色において従来使用されている方法は、ケラチン繊維に、この繊維に親和性を有する、有色のもしくは着色性の分子である直接染料を適用する工程、これを拡散させる工程、その後前記繊維を濯ぐ工程を含む。
【0003】
従来使用されている直接染料は、例えば、ニトロベンゼンタイプの染料、アントラキノン染料、ニトロピリジン染料、または、アゾ、キサンテン、アクリジン、アジン、もしくはトリアリールメタンタイプの染料である。これらの染料は、様々な色を得るために混合することもできる。例えば、光沢のある濃色の、更には黒色の髪を得るために、赤色もしくは青色の直接染料と組み合わせた、フェニルピリド[1,2-a]インドリニウム-誘導染料を使用することも行われている(EP1133975)。
【0004】
濃色のケラチン繊維の色の、任意にその色合いを変更することによる、より明るい色合いへの明色化が、重要な需要を構成する。
【0005】
通常、より明るい色を得るためには、化学漂白方法が使用される。この方法は、ケラチン繊維、例えば髪を、一般的に過酸化水素を含み、場合によってこれに過酸基塩を組み合わせた、一般的にはアルカリ媒質中の強酸化系で処理する工程を含む。
【0006】
この漂白系は、ケラチン繊維に損傷を与え、その美容特性を損なうという欠点を有する。こうした繊維は、実際に、粗く、より櫛通りが悪く、且つより脆くなる傾向を有する。最後に、酸化剤を用いるケラチン繊維の明色化または漂白は、前記繊維の形状を変更する処理、特にストレートパーマ処理とは不適合である。
【0007】
別の明色化技術には、濃色の髪に蛍光直接染料を適用する工程を含む。この技術は、特にWO03/028685及びWO2004/091473に記載されており、処理の間のケラチン繊維の品質の保持を可能にする。しかしながら、これらの蛍光直接染料は、外部要因に関して十分な堅牢度を示さない。
【0008】
直接着色の堅牢度を増大させるためには、ジスルフィド染料、特に、特許出願WO2005/097051またはEP1647580のアゾ-イミダゾリウム発色団染料、並びに、特許出願WO2006/134043及びWO2006/136617のピリジニウム/インドリニウムスチリル発色団染料を使用することが知られている。これらいずれの文献にも、化学的酸化剤を使用しない、ケラチン繊維の明色化の問題は言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP1133975
【特許文献2】WO03/028685
【特許文献3】WO2004/091473
【特許文献4】WO2005/097051
【特許文献5】EP1647580
【特許文献6】WO2006/134043
【特許文献7】WO2006/136617
【特許文献8】FR2586913
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】”Science des traitements capillaires [Hair Treatment Sciences]”, by Charles Zviak 1988, published by Masson, pp. 215 and 278
【非特許文献2】”Protective groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, John Wiley & Sons Ed., NY, 1981, pp. 193-217
【非特許文献3】“Protecting groups”, P. Kocienski, Thieme, 3rd Ed., 2005, Chap. 5
【非特許文献4】”thiols and organic sulfides”, “thiocyanates and isothiocyanates, organic”, Ullmann’ s Encyclopedia, Wiley-VCH, Weinheim, 2005
【非特許文献5】Advanced Organic Chemistry, “Reactions, Mechanisms and Structures”, J. March, 4th Ed., John Willey & Sons, 1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、既存の漂白方法の欠点を有しない、ケラチン物質、とりわけヒトのケラチン繊維、特に髪の染色のための新規なシステムを提供することである。
【0012】
特に、本発明の1つの目的は、明色化効果、特に自然のまたは人工的な濃色のケラチン繊維に対する効果であって、その後のシャンプー操作に対して耐性である効果を得るための、ケラチン繊維を損傷せず、その美容特性を損なわない、染色システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の別の目的は、彩色的、非選択的、且つ均一であり、外部要因に対して持続的な方式で、染料組成物中で安定な染料を用いてケラチン物質を染色することである。
【0014】
この目的は、その主題が、適切な化粧品媒質中に、下式(I):
【化1】

[式中、
- mは、0または1を表し;
- nは、1または2を表し;
- pは、0乃至4の整数を表し;
- R1は、ハロゲン原子、任意に置換された(C1-C6)アルキル基、または(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)アルキルチオ、ジ(C1-C6)(アルキル)アミノ、(C1-C6)ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C1-C6)ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C1-C6)アルコキシ、シアノ、R-G-C(G’)-、R-C(G’)-G-、R’S(O)2-N(R)-、またはRR’N-S(O)2-基を表し(ここで、GまたはG’は、同一であっても相違しても良く、酸素原子または硫黄原子またはNR’基を表し、さらに、R及びR’は、同一であっても相違しても良く、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表す);
- R2及びR3は、同一であっても相違しても良く、(C1-C6)アルキル基を表し、とりわけR2及びR3は、メチルなどの(C1-C6)アルキル基を表し、;
- Bは、任意に置換されたアリール基、または任意に置換されたヘテロアリール基、例えば任意に置換されたフェニル、ナフチル、またはインドリルを表し;
- Lは、i)-N(Ra)-;-N+(Ra)(Rb)-, An-;-O-;-S-;-CO-、及び-SO2-(ここで、Ra及びRbは、同一であっても相違しても良く、水素、及び、(C1-C6)アルキル、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、または(ジ)(C1-C6)(アルキル)アミノ(C1-C6)アルキル基から選択され、An-は、アニオン性カウンターイオンを表す)から選択される1つもしくは複数の二価の基、またはこれらの組み合わせで、あるいは、ii)カチオン性複素環またはカチオン性ヘテロアリールHet+, An-(ここで、An-は、以上に定義される通りであり、Het+は、5員乃至10員の飽和もしくは不飽和の複素環、または5員乃至10員のヘテロアリール、例えば、イミダゾリウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、またはベンゾイミダゾリウムを表す)で、その一端または他端において、任意に置換、任意に中断、及び/または任意に終端された、二価のC1-C20炭化水素ベースの鎖であって、とりわけ、Lは、結合基NR、-NRC(O)-、または-C(O)NR-を介して当該分子の残りの部分と結合した(C1-C6)アルキレン鎖を表し;
- Yは、i)水素原子;ii)アルカリ金属;iii)アルカリ土類金属;iv)アンモニウム基:NR+RαRβRγRδ, An’’-、またはホスホニウム基:P+RαRβRγRδ, An’’ -(ここで、Rα、Rβ、Rγ、及びRδは、同一であっても相違しても良く、水素原子、または(C1-C4)アルキル基を表し、An’’ -はアニオン性カウンターイオンである);あるいはv)チオール官能保護基を表し、
- An-は、アニオン性カウンターイオンを表し;
・nが2である場合はmがゼロであり、nが1である場合はmが1であり、
・pが2乃至4である場合は、R1が同一または相違し、
・-L-S-(Y)m鎖は、特にAまたはBによりフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団に結合していることが理解される]
の染料から選択される少なくとも1つのフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム-誘導ジスルフィドもしくはチオール蛍光染料を含む染料組成物を、ケラチン物質に適用する工程を含む、ケラチン物質、特にケラチン繊維、特にヒトのケラチン繊維、例えば髪、とりわけ濃色の髪の染色方法である、本発明によって達成される。
【0015】
本発明の別の主題は、化粧品媒質中に、以上に定義される式(I)の、少なくとも1つのフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィド、チオールもしくは保護チオール蛍光染料を含む、明色化作用を有するケラチン繊維の染色のための染料組成物である。
【0016】
本発明の主題はまた、以上に定義される式(I)の、新規なフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィドもしくはチオール蛍光染料である。
【0017】
本発明による染色方法は、濃色のケラチン物質、特に、濃色のヒトのケラチン繊維、とりわけ濃色の髪を、明白に着色することを可能にする。さらにまた、本発明の方法は、髪を損傷することなくその着色を得ることを可能にし、その着色は、シャンプー操作、一般的な攻撃(日光、発汗)、及び髪の処理に関して持続性である。本発明の方法は、更に、ケラチン物質、例えば、ケラチン繊維、特に濃色のケラチン繊維、とりわけ濃色の髪の明色化を得ることを可能にする。
【0018】
更にまた、これらの染料は、黄色及び橙色にまで着色範囲を拡張する。この方法は、強力な彩色の方式で、漂白されたケラチン繊維を染色することも可能にする。
【0019】
本発明の目的のためには、「濃色のケラチン物質」なる語は、C.I.E.のL*a*b*系で測定した明度L*が、45以下、好ましくは40以下であることを意味し、更に、L*=0は黒色と同等であり、且つ、L*=100は白色と同等であることを考慮して使用される。
【0020】
本発明の目的のためには、「自然のまたは人工的な濃色の髪」なる表現は、そのトーン高(tone height)が6以下のもの(ダークブロンド)、好ましくは4以下のもの(栗茶色)を意味して使用される。
【0021】
髪の明色化は、式(I)の化合物の適用前後での「トーン高」の変化によって評価される。「トーン」の概念は、1トーンがその直前または直後の色合いから各色合いを分離する、自然な色合い分類に基づく。この定義及び自然な色合いの分類は、ヘアスタイリングの専門家には周知であり、書籍、”Science des traitements capillaires [Hair Treatment Sciences], by Charles Zviak 1988, published by Masson, pp. 215 and 278”として出版されている。
【0022】
トーン高は、1(黒色)から10(非常に明るいブロンド)の範囲に亘り、1単位が1トーンに相当する。値が大きいほど、色合いは明るい。
【0023】
人工的に着色された髪は、染色処理、例えば直接染料または酸化染料によってその色が変更された髪である。
【0024】
本発明の目的のためには、「漂白された髪」なる語は、そのトーン高が6より高く、好ましくは7より高い髪を意味するものとする。
【0025】
本発明の蛍光染料の適用後に、髪に与えられた明色化効果を測定する手段の一つは、髪の反射現象を利用することである。
【0026】
好ましくは、この組成物は、濃色の髪への適用後に、以下の結果をもたらすはずである。
・髪を400乃至700ナノメートルの波長範囲の可視光で照射した際の、前記髪の反射性能レベルに興味が向けられる。
・本発明の組成物で処理した髪と未処理の髪との、波長の関数としての反射の曲線を比較する。
・処理した髪に相当する曲線は、未処理の髪に相当する曲線よりも高い、500乃至700ナノメートルの波長範囲で反射を示すはずである。
・このことは、540乃至700ナノメートルの波長範囲に、処理した髪に相当する反射曲線が未処理の髪に相当する反射曲線より高い、少なくとも一つの範囲があることを意味する。「より高い」とは、反射において少なくとも0.05%、好ましくは少なくとも0.1%の差異を意味することとする。同様に、540乃至700ナノメートルの波長範囲に、処理した髪に相当する反射曲線が、未処理の髪に相当する反射曲線に重なるか、またはこれより低い、少なくとも一つの範囲があることを意味する。
【0027】
好ましくは、処理した髪の反射曲線と未処理の髪の反射曲線との差異が最大になる波長は、500乃至650ナノメートルの波長範囲内、好ましくは550乃至620ナノメートルの波長範囲内にある。
【0028】
本発明の目的のためには、特記のない限り、下記の通りとする。
-「アリール」もしくは「ヘテロアリール」基、あるいは、所定の基のアリールもしくはヘテロアリール部分は、
・以下の基:ヒドロキシル、C1-C2アルコキシ、C2-C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、アシルアミノ、及び、同一であっても相違しても良く、任意に少なくとも一つのヒドロキシル基を担持する二つのC1-C4アルキル基で置換されたアミノ(または前記二つの基が、その結合する窒素原子と共に、飽和もしくは不飽和の、任意に置換され、且つ、窒素と同一であっても相違しても良い別のヘテロ原子を任意に含む、5員乃至7員、好ましくは5員または6員の複素環を形成していてよい)から選択される1つもしくは複数の基で任意に置換された、C1-C16、好ましくはC1-C8のアルキル基;
・ハロゲン原子、例えば、塩素、フッ素、または臭素;
・ヒドロキシル基;
・C1-C2アルコキシ基;
・C1-C2アルキルチオ基;
・C2-C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基;
・アミノ基;
・5員もしくは6員のヘテロシクロアルキル基;
・任意にカチオン性の5員もしくは6員のヘテロアリール基、好ましくは、イミダゾリウム、C1-C4アルキル基で、好ましくはメチルで任意に置換されたもの;
・同一であっても相違しても良く、以下:
i)ヒドロキシル基、
ii)1つもしくは2つの任意に置換されたC1-C3アルキル基で任意に置換されたアミノ基(前記アルキル基は、その結合する窒素原子と共に、飽和もしくは不飽和の、任意に置換され、且つ、窒素と相違してもまたは同一でも良い少なくとも1つの別のヘテロ原子を任意に含む、5員乃至7員の複素環を形成してよい)
の少なくとも一つを任意に担持する1つもしくは2つのC1-C6アルキルで置換されたアミノ基、
・N(R)-C(O)R’(式中、R基は、水素原子、または、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意に担持するC1-C4アルキル基であり、R’基は、C1-C2アルキル基である);
・(R)2N-C(O)-(式中、R基は、同一であっても相違しても良く、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を任意に担持するC1-C4アルキル基を表す);
・R’S(O)2-N(R)-(式中、R基は、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を任意に担持するC1-C4アルキル基を表し、R’基は、C1-C4アルキル基またはフェニル基を表す);
・(R)2N-S(O)2-(式中、R基は、同一であっても相違しても良く、水素原子、または少なくとも1つのヒドロキシル基を任意に担持するC1-C4アルキル基を表す);
・酸または塩化形態(好ましくは、アルカリ金属またはアンモニウムとの塩であって、置換または未置換のもの)のカルボキシル基;
・シアノ基;
・同一であっても相違しても良い、1乃至6の炭素原子及び1乃至6のハロゲン原子を含むポリハロアルキル基(ポリハロアルキル基は、例えば、トリフルオロメチルである);
から選択される少なくとも一つの置換基で置換されていてよく;
-非芳香族基の環または複素環の部分は、以下の基:
・ヒドロキシル;
・C1-C4アルコキシ;
・C2-C4(ポリ)ヒドロキシアルコキシ;
・C1-C2アルキルチオ基;
・RC(O)-N(R’)-(式中、R’基は、水素原子、または、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意に担持するC1-C4アルキル基を表し、R基は、C1-C2アルキル基、または、同一であっても相違しても良く、任意に少なくとも1つのヒドロキシル基を担持する、二つのC1-C4アルキル基で置換されたアミノ基である);
・RC(O)-O-(式中、R基は、C1-C4アルキル基、または、同一であっても相違しても良く、任意に少なくとも1つのヒドロキシル基を担持する、1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で置換されたアミノ基(前記アルキル基は、その結合する窒素原子と共に、飽和もしくは不飽和の、任意に置換され、且つ、窒素と相違してもまたは同一でも良い少なくとも1つの別のヘテロ原子を任意に含む、5員乃至7員の複素環を形成してよい)である);
・RO-C(O)-(式中、R基は、少なくとも1つのヒドロキシル基を任意に担持するC1-C4アルキル基である);
から選択される少なくとも一つの置換基で置換されていてよく;
-環もしくは複素環の基、またはアリールもしくはヘテロアリール基の非芳香族部分もまた、1つもしくは複数のオキソまたはチオオキソ基で置換されていてよく;
-「アリール」基は、縮合もしくは非縮合の、単環式もしくは多環式の、6乃至22の炭素原子を含む炭素ベースの基であり、その少なくとも1つの環が芳香族であるものを表し、好ましくは、前記アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル、またはテトラヒドロナフチルであり;
-「ジアリールアルキル」基は、アルキル基の同じ炭素原子上に、同一であっても相違しても良い二つのアリール基含む基、例えばジフェニルメチルまたは1,1-ジフェニルエチルをを表し;
-「ヘテロアリール基」は、任意にカチオン性の、縮合もしくは非縮合の、単環式もしくは多環式の、5員乃至22員であって、窒素、酸素、硫黄、及びセレン原子から選択される1乃至6のヘテロ原子を含む基であり、その少なくとも1つの環は芳香族であるものを表し、好ましくは、ヘテロアリール基は、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾビストリアゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾピリダジニル、ベンゾキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾキサゾリル、ピリジニル、テトラゾリル、ジヒドロチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、ナフトイミダゾリル、ナフトオキサゾリル、ナフトピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾロピリジル、フェナジニル、フェノキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリリル、ピラゾイルトリアジル、ピリジル、ピリジノイミダゾリル、ピロリル、キノリル、テトラゾリル、チアゾリル、チアゾロピリジニル、チアゾイルイミダゾリル、チオピリリル、トリアゾリル、キサンチリル、及びそのアンモニウム塩から選択され;
-「ジヘテロアリールアルキル」基は、アルキル基の同一炭素原子上に、同一であっても相違しても良い二つのヘテロアリール基を含む基、例えば、ジフリルメチル、1,1-ジフリルエチル、ジピロリルメチル、またはジチエニルメチルを表し;
-「環基」は、縮合もしくは非縮合の、単環式もしくは多環式の、5乃至22の炭素原子を含む非芳香族シクロアルキル基であって、1つもしくは複数の不飽和を含んでよいもの、特に、前記環基はシクロヘキシルであり;
-「立体障害をもつ環」基は、置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の、立体効果もしくは障害によって遮蔽された、6員乃至14員の環基であって、架橋していてよいものであり、立体障害をもつ基の例としては、ビシクロ[1.1.0]ブタン、メシチル類、例えば、1,3,5-トリメチルフェニル、1,3,5-トリ-tert-ブチルフェニル、1,3,5-イソブチルフェニル、1,3,5-トリメチルシリルフェニル、及びアダマンチルを挙げてよく;
-「ヘテロ環基もしくはヘテロ環」は、縮合もしくは非縮合の、単環式もしくは多環式の、窒素、酸素、硫黄、及びセレンから選択される1乃至6のヘテロ原子を含む、5員乃至22員の非芳香族基であり;
-「アルキル基」は、直鎖状または分枝状の、C1-C16、好ましくはC1-C8の炭化水素ベースの基であり;
-アルキル基に付された「任意に置換された」なる表現は、前記アルキル基が、
i)ヒドロキシル;ii)C1-C4アルコキシ;iii)アシルアミノ;iv) 同一であっても相違しても良い1つもしくは2つのC1-C4アルキル基で任意に置換されたアミノ(前記アルキル基は、これを担持する窒素原子と共に、窒素と相違してもまたは同一でも良い別のヘテロ原子を任意に含む、5員から7員の複素環を形成してよい);または、v)第四級アンモニウム基、-N+R’R’’R’’’、M-(式中、R’、R’’、R’’’は、同一であっても相違しても良く、水素原子、またはC1-C4アルキル基を表すか、あるいは、-N+R’R’’R’’’は、ヘテロアリール、例えばC1-C4アルキル基で任意に置換されたイミダゾリウムを形成し、M-は、対応する有機酸、鉱酸酸、またはハロゲン化物のカウンターイオンを表す);
から選択される1つもしくは複数の基で置換されていてよいことを意味し;
-「アルコキシ基」は、そのアルキル基が、直鎖状または分枝状の、C1-C16、好ましくはC1-C8の炭化水素ベースの基である、アルキルオキシもしくはアルキル-O-基であり;
-「アルキルチオ基」は、そのアルキル基が、直鎖状または分枝状の、C1-C16、好ましくはC1-C8の炭化水素ベースの基である、アルキル-S-基であり、このアルキルチオ基が任意に置換されている場合とは、このアルキル基が以上に定義される通り任意に置換されていることを意味し;
-「アルキレン鎖」は、二価のC1-C18鎖、特にC1-C6、とりわけこの鎖が直鎖である場合にはC1-C2を表し、1つもしくは複数の、同一もしくは相違する、ハロゲン原子または、ヒドロキシル、アルコキシ、(ジ)(アルキル)アミノ、及びRa-Za-C(Zb)-(ここで、Za、Zbは、同一であっても相違しても良く、酸素もしくは硫黄原子またはNRa’基を表し、Raは、アルカリ金属、水素原子、またはアルキル基を表し、Ra’は、水素原子またはアルキル基を表す)から選択される基で任意に置換され;
-「飽和もしくは不飽和の、任意に置換されたC1-C30炭化水素ベースの鎖」は、炭化水素ベースの、特にC1-C8の、任意に1つもしくは複数のπ二重結合を含む鎖であって、共役していても非共役でもよく、特に炭化水素ベースの鎖が飽和しているものを表し;前記鎖は、任意に、ヒドロキシル、アルコキシ、(ジ)(アルキル)アミノ、及びRb-Zb-C(Zc)-(ここで、Zb、Zcは、同一であっても相違しても良く、酸素もしくは硫黄原子またはNRb’基を表し、Rbは、アルカリ金属、水素原子、またはアルキル基を表し、Rb’は、水素原子またはアルキル基を表す)から選択される基で任意に置換され;
-値の範囲を限定する境界は、この値の範囲内に含まれ;
-「有機もしくは鉱酸の酸塩」は、特に、i)塩化水素酸HCl;ii)臭化水素酸HBr;iii)硫酸H2SO4;iv)アルキルスルホン酸:Alk-S(O)2OH、例えば、メチルスルホン酸及びエチルスルホン酸;v)アリールスルホン酸:Ar-S(O)2OH、例えば、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸;vi)クエン酸;vii)コハク酸;viii)酒石酸;ix)乳酸;x)アルコキシスルフィン酸:Alk-O-S(O)OH、例えば、メトキシスルフィン酸及びエトキシスルフィン酸;xi)アリールオキシスルフィン酸、例えば、トルエンオキシスルフィン酸及びフェノキシスルフィン酸;xii)リン酸H3PO4;xiii)酢酸CH3C(O)OH;xiv)トリフルオロメタンスルホン酸CF3SO3H、及びxv)テトラフルオロホウ酸HBF4から誘導される塩から選択され;
-「アニオン性カウンターイオン」とは、染料のカチオン電荷と会合したアニオンもしくはアニオン性基であり、特に、アニオン性カウンターイオンは、i)ハロゲン化物、例えば、塩化物または臭化物;ii)ニトレート;iii)スルホネート、その中でも、C1-C6アルキルスルホネート:Alk-S(O)2O-、例えば、メチルスルホネートもしくはメシレート、及びエチルスルホネート;iv) アリールスルホネート:Ar-S(O)2O-、例えば、ベンゼンスルホネート及びトルエンスルホンネートもしくはトシレート;v)シトレート;vi)コハク酸塩;vii)タルトレート;viii)ラクテート;ix)アルキルスルフェート:Alk-O-S(O)O-、例えば、メチルスルフェート及びエチルスルフェート;x)アリールスルフェート:Ar-O-S(O)O-、例えば、ベンゼンスルフェート及びトルエンスルフェート;xi)アルコキシスルフェート:Alk-O-S(O)2O-、例えば、メトキシスルフェート及びエトキシスルフェート;xii)アリールオキシスルフェート:Ar-O-S(O)2O-;xiii)ホスフェート;xiv)アセテート;xv)トリフレート;並びにxvi)ボレート、例えば、テトラフルオロボレートから選択され;
-「溶媒和物」は、水和物を表し、また、直鎖状もしくは分枝状のC1-C4アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、または、n-プロパノールとの会合を表す。
【0029】
以上の通り定義される、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィドもしくはチオール蛍光染料は、蛍光染料であり、すなわち、UV光または可視領域においては250乃至800nmの波長γabsで吸収することができ、且つ、可視領域においては400乃至800nmの波長γemで再放出することができる。
【0030】
好ましくは、本発明の式(I)の蛍光化合物は、400乃至800nmの可視領域γabsで吸収することができ、且つ、400乃至800nmの可視領域γemで再放出することができる染料である。更に好ましくは、式(I)の染料は、420乃至550nmのγabsで吸収することができ、且つ、470乃至600nmの可視領域γemで再放出することができる染料である。
【0031】
式(I)の本発明の化合物は、n及びmが1である場合には、SY官能を含み、これはYの性質及び媒質のpHによって、共有結合形態-S-Yまたはイオン形態-S-Y+であってよい。
【0032】
特定の実施態様は、式(I)においてn及びmが1であり、Yが水素原子またはアルカリ金属を表す、フェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィドもしくはチオール蛍光染料に関する。有利には、Yは水素原子を表す。
【0033】
本発明の別の特定の実施態様によれば、式(I)において、Yは、当業者には既知の保護基、例えば、文献、”Protective groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, John Wiley & Sons Ed., NY, 1981, pp. 193-217; “Protecting groups”, P. Kocienski, Thieme, 3rd Ed., 2005, Chap. 5に記載のものである。保護基としてのYは、その結合する硫黄原子と共にジスルフィド染料を構成することはできず、すなわち、式(I)において、n=m=lであるものを構成することはできない。保護基としてのYは、式(I)の硫黄原子に、別の非酸化硫黄原子を介して直接結合した基を表すことはできない。
【0034】
特に、Yは、チオール-官能-保護基であり、Yは、以下の保護基:
- (C1-C4)アルキルカルボニル;
- (C1-C4)アルキルチオカルボニル;
- (C1-C4)アルコキシカルボニル;
- (C1-C4)アルコキシチオカルボニル;
- (C1-C4)アルキルチオチオカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノチオカルボニル;
- アリールカルボニル、例えば、フェニルカルボニル;
- アリールオキシカルボニル;
- アリール(C1-C4)アルコキシカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル、例えば、ジメチルアミノカルボニル;
- (C1-C4)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
- SO3-、M+(ここで、M+は、カチオン性カウンターイオン、例えば、アルカリ金属、例えば、ナトリウムまたはカリウムを表すか、あるいは、式(I)のAn-またはAn’-及びM+が存在しないもの;
- 任意に置換されたアリール、例えば、フェニル、ジベンゾスベリル、または1,3,5-シクロヘプタトリエニル;
- 任意に置換されたヘテロアリール;特に、カチオン性もしくは非カチオン性の、1乃至4のヘテロ原子を含む、以下:
i) 5、6、または7員の単環、例えば、フラニルまたはフリル、ピロリルまたはピリル、チオフェニルまたはチエニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサゾリウム、イソキサゾリル、イソキサゾリウム、チアゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリル、イソチアゾリウム、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリウム、1,2,3-トリアゾリル、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-オキサゾリル、1,2,4-オキサゾリウム、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリウム、ピリリウム、チオピリジル、ピリジニウム、ピリミジニル、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニル、ピリダジニウム、トリアジニル、トリアジニウム、テトラジニル、テトラジニウム、アゼピン、アゼピニウム、オキサゼピニル、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウム、イミダゾリル、イミダゾリウム;
ii) 8乃至11員の二環、例えば、インドリル、インドリニウム、ベンゾイミダゾリル、 ベンゾイミダゾリウム、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサゾリウム、ジヒドロベンゾキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリウム、ピリドイミダゾリル、ピリドイミダゾリウム、チエノシクロヘプタジエニル、これらの単環式もしくは二環式基は、1つもしくは複数の基、例えば、(C1-C4)アルキル、例えば、メチル、あるいはポリハロ(C1-C4)アルキル、例えば、トリフルオロメチルで任意に置換されており;あるいは
iii) 以下:
【化2】

[式中、二つの環、A、Cは、任意にヘテロ原子を含み、環Bは、5-、6-、もしくは7-員の、特に6-員の環であり、少なくとも一つのヘテロ原子を含み、例えば、ピペリジルまたはピラニルである]
の三環ABC;
のヘテロアリール;
- 任意にカチオン性であり、任意に置換された、複素環アルキル、複素環アルキル基は、特に、飽和もしくは部分飽和の、酸素、硫黄、及び窒素から選択される1乃至4のヘテロ原子を含む、5-、6-、もしくは7-員の単環式基であって、例えば、ジ/テトラヒドロフラニル、ジ/テトラヒドロチオフェニル、ジ/テトラヒドロピロリル、ジ/テトラヒドロピラニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロチオピラニル、ジヒドロピリジル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラメチルピペリジニル、モルホリニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロアゼピニル、またはジ/テトラヒドロピリミジニルから選択されるもの、これらの基は、1つもしくは複数の基、例えば、(C1-C4)アルキル、オキソ、もしくはチオキソで任意に置換されている;あるいは、複素環が、以下の基:
【化3】

[式中、
R’c、R’d、R’e、R’f、R’g、及びR’hは、 同一であっても相違しても良く、水素原子、または(C1-C4)アルキル基を表すか、あるいは、二つの基R’gとR’hとが、及び/またはR’eとR’fとが、オキソ基またはチオキソ基を形成するか、あるいは、R’gとR’eとが共にシクロアルキルを形成し;vは、1乃至3の整数を表し;好ましくは、R’c乃至R’hは、水素原子を表し;An’’’-は、カウンターイオンを表す]
を表すもの;
- -C(NR’cR’d)=N+R’eR’f;An’’’-(ここで、R’c、R’d、R’e、及びR’fは、同一であっても相違しても良く、水素原子、または(C1-C4)アルキル基を表し;好ましくは、R’c乃至R’fは、水素原子を表し;An’’’ -はカウンターイオンを表す);
- -C(NR’cR’d)=NR’e(ここで、R’c、R’d、及びR’e は、以上に定義される通りである);
- 任意に置換された(ジ)アリール(C1-C4)アルキル、例えば、特に、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、例えば、メトキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニル、並びに、(ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノ、例えば、ジメチルアミノから選択される1つもしくは複数の基で任意に置換された、9-アントラセニルメチル、フェニルメチル、またはジフェニルメチル;
- 任意に置換された(ジ)ヘテロアリール(C1-C4)アルキルであって、前記ヘテロアリール基は、特に、カチオン性もしくは非カチオン性の、5員もしくは6員の、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1乃至4のヘテロ原子を含む単環式基、例えば、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピリジル、ピリジルN-オキシド、例えば、4-ピリジルもしくは2-ピリジルN-オキシド、ピリリウム、ピリジニウム、または、トリアジニルであって、1つまたは複数の基、例えば、アルキル、特に、メチルで任意に置換されたもの、有利には、(ジ)ヘテロアリール(C1-C4)アルキルは、(ジ)ヘテロアリールメチルまたは(ジ)ヘテロアリールエチルであり;
- CR1R2R3であって、R1、R2、及びR3は、同一であっても相違しても良く、ハロゲン原子または以下:
・ (C1-C4)アルキル;
・ (C1-C4)アルコキシ;
・ 任意に置換されたアリール、例えば、1つもしくは複数の基、例えば、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、またはヒドロキシルで任意に置換されたフェニル;
・ 任意に置換されたヘテロアリール、例えば、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラニル、またはピリジルであって、(C1-C4)アルキル基で任意に置換されたもの;
・ P(Z1)R’1R’2R’3であって、R’1及びR’2は、同一であっても相違しても良く、ヒドロキシル、(C1-C4)アルコキシ、またはアルキル基を表し、R’3は、ヒドロキシルまたは(C1-C4)アルコキシ基を表し、Z1は、酸素または硫黄原子を表す;
より選択される基を表し:
- 立体障害をもつ環;及び
- 任意に置換されたアルコキシアルキル、例えば、メトキシメチル(MOM)、エトキシエチル(EOM)、またはイソブトキシメチル;
から選択される。
【0035】
特定の実施態様によれば、式(I)の保護チオール染料において、m及びnが1であるものは、i)カチオン性の、酸素、硫黄、または窒素から選択される1乃至4のヘテロ原子を含む、5員もしくは6員の単環式芳香族ヘテロアリール基、例えば、オキサゾリウム、イソキサゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-オキサゾリウム、1,2,4-チアジアゾリウム、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウム、テトラジニウム、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウム、または、イミダゾリウム;ii)カチオン性の、8員乃至11員の二環式ヘテロアリール基、例えば、インドリニウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾキサゾリウム、または、ベンゾチアゾリウムであって、これらの単環式もしくは二環式ヘテロアリール基は、1つもしくは複数の基、例えば、アルキル、例えば、メチル、あるいはポリハロ(C1-C4)アルキル、例えば、トリフルオロメチルで任意に置換されており;iii)以下:
【化4】

[式中、
R’c及びR’dは、同一であっても相違しても良く、水素原子または(C1-C4)アルキル基を表し;好ましくは、R’c乃至R’dは、(C1-C4)アルキル基、例えば、メチルを表し;更に、An’’’-は、アニオン性カウンターイオンを表す]
のヘテロ環基;であるY基を含む。
【0036】
特に、Yは、オキサゾリウム、イソキサゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリウム、1,2,4-トリアゾリウム、1,2,3-トリアゾリウム、1,2,4-オキサゾリウム、1,2,4-チアジアゾリウム、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウム、及びイミダゾリウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾキサゾリウム、ベンゾチアゾリウムから選択される基を表し、これらの基は、1つもしくは複数の(C1-C4)アルキル基、特にメチル基で任意に置換されている。
【0037】
特に、Yは、アルカリ金属または保護基、例えば、
- (C1-C4)アルキルカルボニル、例えば、メチルカルボニルまたはエチルカルボニル;
- アリールカルボニル、例えば、フェニルカルボニル;
- (C1-C4)アルコキシカルボニル;
- アリールオキシカルボニル;
- アリール(C1-C4)アルコキシカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル、例えば、ジメチルアミノカルボニル;
- (C1-C4)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
- 任意に置換されたアリール、例えばフェニル;
- 5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール、例えば、イミダゾリルまたはピリジル;
- 5員もしくは6員のカチオン性単環式ヘテロアリール、例えば、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウム、またはイミダゾリウムであって、これらの基は、1つもしくは複数の、同一または相違する、(C1-C4)アルキル基、例えば、メチル基で、任意に置換されており;
- 8員乃至11員のカチオン性二環式ヘテロアリール、例えば、ベンゾイミダゾリウムまたはベンゾキサゾリウムであって、これらの基は、1つもしくは複数の、同一または相違する、(C1-C4)アルキル基、例えば、メチル基で任意に置換されており;
- 下式:
【化5】

のカチオン性複素環;
- イソチオウロニウム-C(NH2)=N+H2;An’’’ -
- イソチオウレア-C(NH2)=NH;及び
- SO3-;M+(ここで、M+は、カチオン性カウンターイオン、例えば、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、カリウムを表すか、または、式(I)のAn-またはAn’-及びM+は存在しない);
を表す。
【0038】
本発明の特定の実施態様によれば、式(I)の蛍光染料は、n=2及びm=0である、ジスルフィド染料である。
【0039】
特に、本発明の蛍光染料は、下式(Ia):
【化6】

[式中、
- m、n、p、R1、B、及びYは、以上に定義される通りであり;
- Xは、-G-、-G’-C(G)-、及び-C(G)-G’-より選択される基(ここで、G及びG’は、同一であっても相違しても良く、酸素原子または硫黄原子またはNRを表し、Rは、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表す)を表し、有利には、Xは、-NR-、-NR-CO-、または-C(O)-NR-基を表し;Xは、AまたはBによって当該分子の残りの部分と、好ましくは、A上の5位にて、またはBがフェニル基を表す場合にはBに対してパラ位にて結合しており;Bがインドリル基を表す場合には、Xはσ結合を表し、L’は、インドール環の窒素に直接結合しており;
- L’は、-N(R’a)-;-N+(R’a)(R’b)-, An-;-C(O)-N(R’a)-、及び-N(R’a)-C(O)-、または5員乃至7員の二価のカチオン性ヘテロアリールから選択される基(ここで、R’a及びR’bは、同一であっても相違しても良く、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表し、An-は、アニオン性カウンターイオンを表す)によって任意に中断された、飽和した炭化水素ベースのC2-C8アルキレン鎖を表し、特に、L’は、中断されていないC2-C6アルキレン鎖、例えば、エチレンであり;
- R2及びR3は、同一であっても相違しても良く、C1-C3アルキル基を表し、特に、R2及びR3は、同一であって、メチル基を表す]
のものである。
【0040】
例として、以下の式(I)の蛍光染料を挙げてよい。
【化7A】

【化7B】

【化7C】

[ここで、An-は、同一であっても相違しても良く、アニオン性カウンターイオンを表す]
【0041】
式(I)の新規なフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィドもしくはチオール蛍光染料の調製の、以下の全ての例示的実施態様について、当業者は、保護/脱保護の既知の通常の方法、例えば、T. W Greene John Willey & Sons ed., NY, 1981またはP. Kocienski "Protecting groups", P. Kocienski, Thieme, 3rd ed., 2005と以上に挙げた文献に記載されているもの等により、反応性官能基、例えば、発色団のケトン官能基を予め保護し、その後これらを合成反応の必要に応じて脱保護させる方法を認識している。
【0042】
式(I-Y)の、保護チオール蛍光染料であって、m及びnが1であるものは、二工程で合成することができる。第一工程は、当業者には既知の方法、例えば、”thiols and organic sulfides”、“thiocyanates and isothiocyanates, organic”、Ullmann’s Encyclopedia, Wiley-VCH, Weinheim, 2005によって、非保護チオール染料(I-H)を調製する工程である。更に、第二工程は、式(I-Y)の、保護チオール染料を製造するために、当業者には既知の通常の方法によって、チオール官能基を保護する工程である。例として、チオール染料のチオール官能基-SHを保護するためには、文献”Protective groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, John Willey & Sons Ed., NY, 1981, pp. 193-217;”Protecting groups”, P. Kocienski, Thieme, 3rd Ed., 2005, Chap. 5の方法を利用して良い。この方法は、i) ジスルフィド官能-S-S-を担持するフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料、例えば(I-S)の二つの発色団の還元により、式(I-H)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導チオール蛍光染料を発生させる工程、及び、ii) 通常の方法により、(I-H)の前記チオール官能基を、反応物質7Y’Rで保護して、式(I-Y)の保護チオール染料を得る工程である方法を利用して詳説することができる。チオール化合物(I-H)を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属Met*で金属化して、式(I-Met)または(II-Met)のチオレート蛍光染料を製造してもよい。
【0043】
【化8】

ここで、Y’は、チオール官能保護基を表し;Met*は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特に、ナトリウムまたはカリウムを表し、前記金属がアルカリ土類金属である場合には、チオレート-S-官能基を含む2つの発色団は、1つの金属2+を伴うことができ;p、q、R1乃至R3、B、An-、及びLは、以上に定義した通りであり;Y’は、チオール官能保護基を表し;Rは、ヌクレオフュージ脱離基、例えば、メシレート、トシレート、トリフレート、またはハロゲン化物を表す。
【0044】
別の可能性として、上述の文献に記載された操作の1つにしたがって調製される、以上に定義される保護基Y’で保護された、保護チオール化合物(b)は、少なくとも1つの求核官能を含むものであって、求電子官能を含む、十分な、好ましくはモル等量の、フェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団(a)と反応して、Σ共有結合を形成することができる。下記の式(I’-Y):
【化9】

[ここで、p、R1乃至R3、B、An-、及びXは、以上に定義される通りであり;m’及びn’は、1乃至6の整数であり、m’+n’は、2乃至6の整数であり;Nuは、求核基を表し;Eは、求電子基を表し;結合基Σは、求電子試薬への求核試薬による攻撃後に発生した]
の染料の調製を参照のこと。
【0045】
例として、発生しうるΣ共有結合を、求電子試薬と求核試薬との縮合に基づいて、下記の表に列挙する。
【0046】
【表1】

*一般式-CO-Partの活性化エステル(ここで、Partは、脱離基、例えば、任意に置換された、オキシスクシンイミジル、オキシベンゾトリアゾリル、アリールオキシを表す);
**窒化アシルは、イソシアネートをもたらすように再配置しても良い。
【0047】
この方法の変形は、電子求引性アクリレート官能基(-OCO-C=C-)を有するフェニルピリド[1,2-a]インドリウム発色団を使用し、これに対してΣ結合を発生する付加反応を実行することである。
【0048】
以上に定義される式(I-Y)の保護チオール染料を得るために、チオール反応試薬(α)[その求核性SH官能が、(a’)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団によって担持されるハロゲン原子に対してα位にある基の炭素原子と反応しうる、以上の通り定義されるY’基を含むY’-SH]を使用することもできる。
【化10】

ここで、p、R1乃至R3’、B、An-、及び (I-Y)は、以上に定義される通りであり、Halは、ヌクレオフュージハロゲン原子、例えば、臭素、ヨウ素、または塩素を表す。
【0049】
特に、ヌクレオフュージ脱離基は、イソチオウロニウムを発生させるために、チオウレア(S=C(NRR)NRR)の誘導体で置き換えてもよい。例えば、チオウレア基がチオイミダゾリウム(β)である場合には、以上に定義される発色団(a’)に基づいて、イミダゾリウム基(I’’-Y)でS-保護された染料がもたらされる。
【化11】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、(a’)、R’c及びR’dは、以上に定義される通りである。
【0050】
別の変形は、イミダゾールタイプ(b’)の環状チオウレアを使用し、次いで、R’d-Lg(ここで、Lgは、脱離基、例えば、塩素、臭素、トシレート、またはメシレートである)を使用する前記イミダゾールのアルキル化により、化合物(II’’-Y)を得ることを可能にしうる。
【化12】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、(a’)、R’c及びR’d、及びLgは、以上に定義される通りである。
【0051】
変形としては、蛍光発色団(a’)を含むハロゲン化物に代えて、別のタイプのヌクレオフュージを含む発色団、例えば、トシレートまたはメシレートを使用することである。
【0052】
別の可能性によれば、所定の保護チオール染料(I’-Y)は、保護チオール化合物と、定法(例えば、カルボジイミドと、または塩化チオニルとの反応)によって活性化された二つのカルボン酸官能基を担持する化合物とを反応させることにより、得ることができる。得られる生成物(d)を、次いで、求核官能基、例えば、第一級もしくは第二級のアミンタイプ、あるいは脂肪族アルコールタイプのものを担持するフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団(c)と反応させる。
【化13】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、X、E、Nu、(I’-Y)は、以上に定義される通りである。
【0053】
別の変形は、下記のスキームによって表される、アミド官能基で中断された結合基L’を含む誘導体(I’-H)をもたらすために、特定の求核発色団(c’)に基づくチオラクトン誘導体を使用することである。
【化14】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、X、m’、及びn’は、以上に定義される通りであり、G’は、酸素もしくは硫黄原子、またはNR’基を表し、R’は、水素原子またはアルキル基を表し、Rは、水素原子、C1-C4アルキル基、C1-C4ヒドロキシアルキル基、またはアリール(C1-C4)アルキルを表す。チオラクトン誘導体は、好ましくは、n’=3をもって選択され、G’は、酸素原子を表す。
【0054】
遊離のSH官能基を含む誘導体(I’-H)は、その後、前述の通り、保護または金属化することができる。
【0055】
別の可能性によれば、式(1’’-Y)の保護チオール染料は、Y’基で保護されたチオール基及びヌクレオフュージ脱離基Lg、例えば、メシレート、トシレート、トリフレート、またはハロゲン化物を含む化合物(d’)と、フェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団(c’)との反応によって得ることができる。
【化15】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、X、L’、及びY’は、以上に定義される通りであり、Z’は、水素原子、またはXの求核性を活性化する基を表す。
【0056】
例として、保護チオール基(I’’’-Y)を含む化合物は、ヌクレオフュージ脱離基R、例えば、メシレート、トシレート、またはトリフレートを含み、これは下式:
【化16】

に示される通り、ヘミシアニンスチリル発色団(c’)によって担持されるアミンからの求核攻撃を受けることができる。
【0057】
上述の方法のために使用される操作条件についての更なる詳細は、文献、Advanced Organic Chemistry, “Reactions, Mechanisms and Structures”, J. March, 4th Ed., John Willey & Sons, 1992またはT. W. Greene “Protective groups in Organic Synthesis”を参照して良い。
【0058】
生成した、式(I)においてn=1及びm=1であるフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導チオール蛍光染料は、従来の保護基を用いる-SHチオールの保護により、-SY’保護チオール蛍光染料に転換することができる。このチオール染料は、当業者には既知の定法、例えば、Advanced Organic Chemistry, ”Reactions, Mechanisms and Structures”, J. March, 4th Ed., John Willey & Sons, NY, 1992に記載のものを更に使用して金属化される。
【0059】
式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導保護チオール蛍光染料は、従来の経路、例えば、文献、”Protective groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, John Willey & Sons Ed., NY, 1981;”Protecting groups”, P. Kocienski, Thieme, 3rd Ed., 2005に記載のものにより、脱保護することができる。
【0060】
出発反応試薬は、市販されているか、または当業者には既知である、定法によって入手可能である。
【0061】
式(I-S)のジスルフィド蛍光染料は、二つの工程で合成することができる。第一の工程は、当業者には既知であり、また上述されている方法によって、非保護チオール染料(I-H)を調製する工程である。更に、第二工程は、当業者には既知の定法により、チオール官能基を酸化してジスルフィド染料(I-S)をもたらす工程である。チオール染料のチオール官能基-SHを酸化する工程の例として、文献、”Protective groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, John Willey & Sons ed., NY, 1981, pp.193-217;”Protecting groups”, P. Kocienski, Thieme, 3rd ed., 2005に記載の方法を利用して良い。
【化17】

【0062】
酸化剤は、オキシダーゼから選択され、その中では、ペルオキシダーゼ、2-電子オキシドレダクターゼ、例えば、ウリカーゼ、及び、4-電子オキシゲナーゼ、例えば、ラッカーゼ、O2、Na2O、KMnO4、K3Fe(CN)6、MnO2、H2O2、Ag2O、AgO、NiO2、NaBO3、Na2S2O8、CH3CO3H、C6H5CO3H、CuX(X=Br、Cl)、CuSO4、(NH4)2Ce(NO3)6、PbO2、Pb(OCOCH3)4、SeO2、CrO3・2C5H4N、及びNaOClを挙げてよい。好ましい酸化剤は、KMnO4、K3Fe(CN)6、MnO2、H2O2、CuX(X=Br、Cl)、CuSO4、Pb(OCOCH3)4、及びNaOClから選択される。更に、好ましくは、好ましい酸化剤は、K3Fe(CN)6、MnO2、H2O2、CuBr、及びNaOClから選択される。反応は、好ましくは、0℃乃至40℃の温度にて、好ましくは極性の、水、特に、上限4つの炭素原子を含む脂肪族、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-オキソヘキサヒドロピリミジン(DMPU)から選択される溶媒中、5乃至5.9のpHで行われる。
【0063】
別の可能性によれば、式(I’-S)のジスルフィド染料は、ケイヒアルデヒド基を含むジスルフィド化合物(e)と2,3,3-トリメチル-3H-インドリニウム化合物(f)との反応によって得られる。
【化18】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、及びLは、以上に定義される通りである。反応条件については、文献、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii (1987), 4, 481-3、及びYouj i Huaxue (1991), 11(2), 214-218を挙げてよい。
【0064】
別の可能性によれば、以上に引用した文献中に記載された操作の1つによって調製される、以上に定義される二つの求核官能を含むジスルフィド化合物(g)と、求電子官能を含むフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団(a)の十分量とを反応させて、Σ共有結合を生成させる。式(I’’-S)の染料の調製については、以下を参照のこと。
【化19】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、m’、n’、Nu、Σ、E、及びXは、以上に定義される通りである。
【0065】
別の可能性によれば、ジスルフィド染料(I’’-S)には、二つの求核官能を担持するジスルフィド化合物(h)と、求核官能、例えば、第一級もしくは第二級のアミンタイプのものまたは脂肪族アルコールタイプのものを担持するフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導発色団(a)とを反応させることにより得られるものがある。
【化20】

ここで、p、R1乃至R3、B、An-、X、E、Nu、及び(I’’-S)は、以上に定義される通りである。
【0066】
別の可能性によれば、インドール単位を含むジスルフィド染料(I’’’-S)(Bは、インドリル基である)は、Z’基を含む化合物(a’)と二つの電子吸引官能を担持するジスルフィド化合物(h)とを反応させることによって得られる。
【化21】

ここで、p、R1乃至R3、An-、Lg、Z’、L’、及びY’は、以上に定義される通りである。
【0067】
上述の方法に使用される操作条件のさらなる詳細については、文献、Advanced Organic Chemistry, ”Reactions, Mechanisms and Structures”, J. March, 4th Ed., John Willey & Sons, 1992、またはT. W. Greene “Protective groups in Organic Synthesis”を参照して良い。
【0068】
式(I)においてn=1及びm=1であるフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導チオール蛍光染料は、従来の保護基を用いる-SHチオールの保護により、-SY’保護チオール染料に転換することができる。このチオール染料は、当業者には既知の定法、例えば、Advanced Organic Chemistry, ”Reactions, Mechanisms and Structures”, J. March, 4th Ed., John Willey & Sons, NY, 1992に記載のものを更に使用して金属化される。
【0069】
式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導保護チオール染料は、従来の経路、例えば、文献、”Protective groups in Organic Synthesis”, T. W. Greene, John Willey & Sons Publisher, NY, 1981;”Protecting groups”, P. Kocienski, Thieme, 3rd Ed., 2005に記載のものにより、脱保護することができる。
【0070】
出発反応試薬は、市販されているか、または当業者には既知である、定法によって入手可能である。
【0071】
本発明の別の主題は、少なくとも1つのフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィド、式(I)のチオールもしくは保護チオール蛍光染料を含む組成物である。少なくとも1つの、式(I)の蛍光染料の存在に加えて、本発明の組成物は、還元剤を更に含んで良い。
【0072】
この還元剤は、チオール類、例えば、システイン、ホモシステイン、もしくはチオ乳酸、これらチオール類の塩、ホスフィン類、ビスルファイト、スルファイト、チオグリコール酸、及びそのエステル類、特に、グリセリルモノチオグリコレート、及びチオグリセロールから選択して良い。この還元剤は、更に、ボロハイドライド類及びその誘導体、例えば、ボロハイドライドの、シアノボロハイドライドの、トリアセトキシボロハイドライドの、またはトリメトキシボロハイドライドの塩類:ナトリウム塩類、リチウム塩類、カリウム塩類、カルシウム塩類、第四級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、またはベンジルトリエチルアンモニウム)塩;及びカテコールボランから選択して良い。
【0073】
本発明で使用可能な染料組成物は、一般的に、組成物全重量に対して0.001%乃至50%の量の式(I)の染料を含む。好ましくは、この量は、組成物全重量に対して、0.005重量%乃至20重量%、更に好ましくは、0.01重量%乃至5重量%である。
【0074】
染料組成物は、更なる直接染料を更に含んで良い。これらの直接染料は、例えば、中性、酸性、もしくはカチオン性のニトロベンゼン直接染料、中性、酸性、もしくはカチオン性のアゾ直接染料、テトラアザペンタメチン染料、中性、酸性、もしくはカチオン性キノン、特に、アントラキノン染料、アジン直接染料、トリアリールメタン直接染料、インドアミン直接染料、及び天然直接染料から選択される。
【0075】
天然直接染料の中では、ローソン、ジュグロン、アリザリン、プルプリン、カルミン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテクアルデヒド、インディゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、及びアピゲニニジンに言及して良い。これらの天然染料を含む抽出物またはエキス、特に、湿布またはヘナベースの抽出物もまた使用して良い。
【0076】
染料組成物は、ケラチン繊維の染色に従来使用されている、1つもしくは複数の酸化ベース及び/または、1つもしくは複数のカップラーを更に含んで良い。
【0077】
酸化ベースの中では、パラ-フェニレンジアミン類、ビスフェニルアルキレンジアミン類、パラ-アミノフェノール類、ビス-パラ-アミノフェノール類、オルト-アミノフェノール類、複素環ベース類、及びこれらの塩を挙げてよい。
【0078】
これらのカップラーの中では、特に、メタ-フェニレンジアミン類、メタ-アミノフェノール類、メタ-ジフェノール類、ナフタレンカップラー、複素環カップラー、及びこれらの塩を挙げてよい。
【0079】
カップラーは、それぞれ、染料組成物全重量に対して、0.001重量%乃至10重量%の量で、好ましくは、0.005重量%乃至6重量%の量で存在する。
【0080】
染料組成物中に存在する酸化ベースは、一般的に、染料組成物全重量に対して、0.001重量%乃至10重量%の量で、好ましくは、0.005重量%乃至6重量%の量で存在する。
【0081】
一般的に、本発明の主旨において使用可能な、酸化ベースとカップラーとの付加塩は、酸との付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸類、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩、並びに塩基との付加塩、例えば、アルカリ金属、例えば、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物、水性アンモニア、アミン類、またはアルカノールアミン類から選択される。
【0082】
染色支持体とも呼称される、染色に適した化粧品媒質は、一般的に、水、または、水と少なくとも1つの有機溶媒との混合物から構成される化粧品媒質である。有機溶媒としては、例えば、C1-C4低級アルカノール類、例えば、エタノール及びイソプロパノール;ポリオール類及びポリオールエーテル類、例えば、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノメチルエーテル、及び芳香族アルコール類、例えば、ベンジルアルコールまたはフェノキシエタノール、並びにこれらの混合物を挙げてよい。
【0083】
溶媒が存在する場合、溶媒は、好ましくは、染色組成物全重量に対して、およそ1重量%乃至40重量%の、更に好ましくは、およそ5重量%乃至30重量%の割合で存在する。水を含む溶媒は、好ましくは、染色組成物全重量に対して、およそ1重量%乃至99重量%の、更に好ましくは、およそ5重量%乃至99重量%の割合で存在する。
【0084】
染色組成物は、髪用染色組成物中に従来使用されていた様々な補助剤、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、もしくは、双性イオン性の界面活性剤、あるいはこれらの混合物、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、もしくは、双性イオン性のポリマー、あるいはこれらのブレンド、鉱物もしくは有機の増粘剤、特に、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性の会合ポリマー増粘剤、抗酸化剤、浸透剤、コンディショニング剤、例えば、変性もしくは未変性の、揮発性もしくは不揮発性のシリコーン類、例えば、アミノシリコーン類、フィルム形成性剤、セラミド類、保存料、乳白剤、または導電性ポリマー類を更に含んで良い。
【0085】
上記補助剤は、一般的に、それぞれが、組成物の重量に対して0.01重量%乃至20重量%の量で存在する。
【0086】
むろん、当業者であれば、使用可能なこうした付加的化合物を、行おうとするその付加によって、本発明による染色組成物に本質的に付随する有利な特性を損なわないように、または実質的に損なわないように注意して、選択を行うであろう。
【0087】
染色組成物のpHは、一般的に、およそ3乃至14、好ましくは、およそ5乃至11である。これは、ケラチン繊維の染色において通常使用される酸性化剤または塩基性化剤を利用して、あるいは従来のバッファシステムを利用して、所望の値に調整してよい。
【0088】
酸性化剤の中では、例えば、鉱物もしくは有機の酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸、または乳酸、あるいはスルホン酸を挙げてよい。
【0089】
塩基性化剤の中では、例えば、水性アンモニア、アルカリカーボネート類、アルカノールアミン類、例えば、モノ-、ジ-、及びトリ-エタノールアミン類、並びにこれらの誘導体、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム、及び下式(γ):
【化22】

[式中、
Waは、ヒドロキシル基またはC1-C4アルキル基で任意に置換された、プロピレン残基であり;Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4は、同一であっても相違しても良く、水素原子、C1-C4アルキル基、またはC1-C4ヒドロキシアルキル基を表す]
の化合物を挙げてよい。
【0090】
染色組成物は、様々な形態であってよく、例えば、液体、クリーム、またはゲル、あるいはケラチン繊維、特に髪の染色に適した別のあらゆる形態であってよい。
【0091】
本発明の別の主題は、化粧品媒質中に上記式(I)の少なくとも1つのフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィドもしくはチオール蛍光染料を含む組成物を、ケラチン物質に適用することである、ケラチン物質、特にケラチン繊維、例えば濃色の髪の、染色方法である。
【0092】
特定の実施態様によれば、本発明の方法において、還元剤を、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む組成物の適用の前に、予備処理として適用しても良い。
【0093】
この予備処理は、上述の還元剤を用いる短期間のもの、特に1秒間乃至30分間のもの、好ましくは1分間乃至15分間のものであってよい。
【0094】
別の方法によれば、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む組成物は、以上に定義される少なくとも1つの還元剤を更に含む。この組成物は、その後、髪に適用される。
【0095】
式(I)においてm及びnが1である、少なくとも1つのフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導チオール蛍光染料が、チオール官能保護基Yを含む場合には、本発明の方法、原位置で、SH官能基を回復させることを目的とする脱保護工程によって進行させても良い。
【0096】
例としては、本発明の染料のS-Y官能は、下記のようにpHを調整することによって、保護基Yを用いて脱保護させることができる。
【表2】

【0097】
脱保護工程は、髪の予備処理工程、例えば髪の還元予備処理の間にも行うことができる。
【0098】
1つの変形によれば、還元剤は、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む染料組成物に、使用時に添加される。
【0099】
別の方法によれば、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む組成物は、以上に定義される少なくとも1つの還元剤を更に含む。この組成物は、その後、髪に適用される。
【0100】
別の変形によれば、還元剤は、後処理として、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む組成物の適用後に適用される。還元剤を用いる後処理の期間は、上述の還元剤を用いる短いものであって良く、例えば、0.1秒間乃至30分間、好ましくは、1分間乃至15分間であってよい。
特定の実施態様によれば、還元剤は、上述の通り、チオールもしくはボロハイドライドタイプの作用剤である。
【0101】
本発明の特定の実施態様は、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を、還元剤を使用せず、還元性予備処理または還元性後処理を行わずに、髪に直接適用することができる方法に関する。
【0102】
酸性化剤での処理は、組み合わせであってもよい。本発明の実施態様において、本発明の方法は、酸性化剤をケラチン繊維に適用することである付加的工程を含む。この分野で通常の、あらゆるタイプの酸性化剤を使用して良い。然るに、これは、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭素酸化物類、過酸基塩類、例えば、過ホウ素酸塩類及び過硫酸塩、更には、酵素から選択してよく、その中では、ペルオキシダーゼ、2-電子オキシドレダクターゼ、例えば、ウリカーゼ、及び、4-電子オキシゲナーゼ、例えば、ラッカーゼを挙げてよい。過酸化水素を使用することが特に好ましい。
【0103】
酸性化剤を用いる、可能な後処理の期間は、1秒間乃至10分間である。
【0104】
本発明による染料組成物の適用は、一般に常温で行われる。これは、しかしながら、20乃至180℃の範囲の温度で行っても良い。
【0105】
本発明の主題はまた、第一区画に、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む染料組成物を収容し、第二区画に、ケラチン物質の、及び/または式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィド蛍光染料の、ジスルフィド官能を還元しうる、還元剤を収容する、多区画デバイスもしくは染色「キット」である。
【0106】
これらの区画の1つは、直接染料または酸化直接染料タイプの、1つまたは複数の別の染料を更に収容して良い。
【0107】
本発明はまた、第一区画に、少なくとも1つの、式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導蛍光染料を含む染料組成物を収容し、第二区画に、ケラチン物質の、及び/または式(I)のフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導ジスルフィド蛍光染料の、ジスルフィド結合を還元しうる、還元剤を収容し、更に第三区画に、酸性化剤を収容する、多区画デバイスにも関する。
【0108】
あるいはまた、染色装置は、式(I)においてm及びnが1である、少なくとも1つのフェニルピリド[1,2-a]インドリニウム誘導保護チオール蛍光染料を含む染料組成物を収容する第一区画、保護チオールを脱保護させてチオールを遊離させることができる作用剤を収容する第二区画、及び、任意の、酸性化剤を収容する第三区画を含む。
【0109】
上述の各装置は、例えば、特許FR2586913に記載の装置のように、髪に所望の混合物を送達するための手段を備えていて良い。
【0110】
以下の実施例は、本発明を、その性質を制限することなく詳説する役割を果たす。以下の実施例の染料は、従来の分光法によって完全に特徴付けされている。
【実施例】
【0111】
(実施例1:2,2’-[ジスルファンジイルビス(エタン-2,1-ジイルカルバモイル)]ビス[10,10-ジメチル-8-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-10H-ピリド[1,2-a]インドリウム]ジクロライドの合成)
【化23】

反応スキーム
【化24】

【0112】
工程1:3-(l-メチル-lH-インドール-3-イル)プロプ-2-エナールの合成
無水THF中の3-(l-メチル-lH-インドール-3-イル)プロプ-2-エンニトリル(2.883g, 15.8mmol)の0℃の溶液に、19ml(19mmol)の、シクロヘキサン中1NのDIBALHをアルゴン雰囲気下で加えた。混合物を室温にまで加温し、6時間に亘って撹拌しておいた。反応を、飽和酒石酸カリウムナトリウム四水和物で注意深くクエンチした後、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出物を、蒸発乾燥させた。得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=4/1乃至1/1)にかけて、2.37gの化合物を得た。分析結果は、予期された構造に合致した。
【0113】
工程2:10,10-ジメチル-8-(1-メチル-lH-インドール-3-イル)-10H-ピリド[1,2-a]インドリウム2-カルボキシレートの合成
3-(l-メチル-lH-インドール-3-イル)プロプ-2-エナール(2.37g, 12.8mmol)と、20mlのDMF中の5-カルボキシ-2,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロライド(3.06g, 12.8mmol)との混合物を、17時間に亘って120℃で加熱した。冷却後、エーテルを加えたところ、固形物が沈降した。生成した固形物を回収し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール=10/1乃至2/1)により更に精製して、0.83gの黄色粉末を得た。分析結果は、予期された構造に合致した。
【0114】
工程3:2,2’-[ジスルファンジイルビス(エタン-2,1-ジイルカルバモイル)ビス[10,10-ジメチル-8-(1-メチル-lH-インドール-3-イル)-10H-ピリド[1,2-a]インドリウム]ジクロライドの合成 0.37gの10,10-ジメチル-8-(l-メチル-lH-インドール-3-イル)-10H-ピリド-[1,2-a]インドリウム2-カルボキシレートを、5mLのN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、無水ジオキサンとジエチルエーテル中のHClの溶液(1mL;IN;1:3)を加え、1.1’-カルボニルジイミダゾール(320mg)を徐々に加えた。3時間後、1mLのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)中の、200mgのシステアミンジヒドロクロライドをこの混合物に加えた。24時間後、反応混合物を、100mLのアセトン中に注いだ。生じた固形物を濾過し、アセトンで洗い、真空下で乾燥させた(340mg、黄色粉末)。分析結果は、予期された構造に合致した。LCMS m/z = 427.5 (ジカチオン)λmax:424nm
【0115】
(実施例2:2,2’-[ジスルファンジイル-ビス(エタン-2,1-ジイルカルバモイル)]ビス{8-[4-(ジメチルアミノ)-フェニル]-10,10-ジメチル-10H-ピリド[1,2-a]インドリウム}-ジクロライドの合成
【化25】

【0116】
工程1:8-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-10,10-ジメチル-10H-ピリド[1,2-a]インドリウム2-カルボキシレートの合成
200mlのアセトニトリル中の5-カルボキシ-2,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロライド(14.5g, 60.5mmol)と4-ジメチルアミノシンナムアルデヒド(10.6g, 60.5mmol)との懸濁液を、60℃で24時間に亘り加熱した。溶媒を、真空下で除去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに2回かけた。その後、メタノール及びエーテルで再結晶して、10gの標的化合物を得た。分析結果は、予期された構造に合致した。
【0117】
工程2:2,2’-[ジスルファンジイルビス(エタン-2,1-ジイルカルバモイル)]ビス[10,10-ジメチル-8-(1-メチル-lH-インドール-3-イル)-10H-ピリド[1,2-a]インドリウム]ジクロライドの合成
1gの8-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-10,10-ジメチル-10H-ピリド-[1,2-a]インドリウム2-カルボキシレートを、15mLのN-メチルピロリジノン(NMP)に溶解させ、無水ジエチルエーテル中のHClの溶液(3mL;1N)を加え、1.1’-カルボニルジイミダゾール(1g)を徐々に加えた。3時間後、1gのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)中、285mgのシスタミンジヒドロクロライドをこの混合物に加えた。24時間後、反応混合物を、100mLのアセトン中に注いだ。得られた固形物を、濾過し、アセトンで洗い、真空下で乾燥させた(912mg、暗黄色粉末)。分析結果は、予期された構造に合致した。LCMS m/z = 417.5 (ジカチオン)λmax:470 nm.
【0118】
染色方法−化合物[1]及び[2]
組成物Aの調製
【表3】

【0119】
ジスルフィド染料[1]
【化26】

ジスルフィド染料[2]
【化27】

【0120】
組成物Bの調製
【表4】

【0121】
使用時に、組成物A(9ml)及びB(1ml)を混合した後、これらの製剤を、90%の白髪を含む自然な白髪(NW)、パーマでウェーブさせた白髪(PW)、またはトーン高が4である栗茶色の髪(TH4)の毛房に適用する。静置時間は、常温(AT)にて20分間である。
【0122】
流水で濯いだ後、水で10倍に希釈した固定剤(Dulcia Vital II(登録商標)を、常温にて5分間適用する。流水で濯ぎ、シャンプーした後、毛房を空気乾燥させる。シャンプー操作の間、目に見える色にじみはなく、シャンプー泡沫及び濯ぎ水は未着色である。
【0123】
(i)染色:
TH4ケラチン繊維の明色化:
かくして染料1または2で処理した髪の明色化を観察する。トーン高が4である毛房は、未処理のコントロール毛房よりも目に見えてより明色になる。
ケラチン繊維NW及びPWの染色:
自然な白髪及びパーマでウェーブさせた白髪は、鮮やかな橙色に着色される。
反射結果:
本発明による組成物の明色化効果を、髪の反射の関数として表した。これらの反射を、トーン高THが4である未処理の髪の毛房(参照)の反射と比較する。
【0124】
反射を、KONIKA-MINOLTA(登録商標), CM 3600d 分光光色彩計(spectrophotocolorimeter)装置を用い、400乃至700ナノメートルの波長範囲の可視光で髪を照射した後に測定する。
【化28】

ここで、スペクトルの実施例3は、合成した実施例1に相当する。
【0125】
第一に、本発明による組成物で処理した髪の毛房の反射が、未処理の髪(参照)のものよりも大きいことが注目される。とりわけ、染料[1](スペクトル上の実施例3)及び染料[2](スペクトル上の実施例2)で処理した毛房の反射は、460nmを超える波長範囲において、参照の毛房の反射よりも格段に大きい。したがって、これら二つの化合物で処理された髪は、より明色に見える。
【0126】
ii) 連続するシャンプー操作に対する堅牢度:
処理された毛房を二つに分け、その半分を、毛房を水で濡らすこと、従来のシャンプーで洗浄すること、水で濯ぐこと、次いで乾燥させることを含むサイクルによる、5回の連続シャンプー操作に処する。
シャンプー操作の間、目に見える色にじみはない。シャンプー泡沫及び濯ぎ水は未着色である。
観察される色及び明色化効果は、かくして処理されたトーン高が4である髪において依然として顕著である。
【0127】
iii) 光に対する堅牢度:
染色方法で処理された、自然な白髪NW及びパーマでウェーブさせた白髪PWの毛房について、光堅牢度の研究を、Xenotestへの暴露によって3時間に亘って行った。暴露条件は、90W/m2、相対湿度60%、及び35℃のチャンバー温度である。
3時間の光への暴露後、本発明の染料1及び2で染色された、着色された自然な白髪及び着色されたパーマでウェーブさせた白髪には、目に見える変化がない。
本発明の染料は、とりわけ、より光安定性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
- mは、0または1を表し;
- nは、1または2を表し;
- pは、0乃至4の整数を表し;
- R1は、ハロゲン原子、任意に置換された(C1-C6)アルキル基、または(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)アルキルチオ、ジ(C1-C6)(アルキル)アミノ、(C1-C6)ポリハロアルキル、ヒドロキシル、(C1-C6)ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシ(C1-C6)アルコキシ、ニトロ、シアノ、R-G-C(G’)-、R-C(G’)-G-、R’S(O)2-N(R)-、またはRR’N-S(O)2-基を表し(ここで、GまたはG’は、同一であっても相違しても良く、酸素原子または硫黄原子またはNR’基を表し、さらに、R及びR’は、同一であっても相違しても良く、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表す);
- R2及びR3は、同一であっても相違しても良く、任意に置換された(C1-C6)アルキル基を表し;
- Bは、任意に置換されたアリール基、または任意に置換されたヘテロアリール基を表し;
- Lは、i)-N(Ra)-;-N+(Ra)(Rb)-, An-;-O-;-S-;-CO-、及び-SO2-(ここで、Ra及びRbは、同一であっても相違しても良く、水素、及び、(C1-C6)アルキル、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、または(ジ)(C1-C6)(アルキル)アミノ(C1-C6)アルキル基から選択され、An-は、アニオン性カウンターイオンを表す)から選択される1つもしくは複数の二価の基、またはこれらの組み合わせで、あるいは、ii)カチオン性複素環またはカチオン性ヘテロアリールHet+, An-(ここで、An-は、以上に定義される通りであり、Het+は、5員乃至10員の飽和もしくは不飽和の複素環、または5員乃至10員のヘテロアリールを表す)で、その一端または他端において、任意に置換、任意に中断、及び/または任意に終端された、二価のC1-C20炭化水素ベースの鎖であって;
- Yは、i)水素原子;ii)アルカリ金属;iii)アルカリ土類金属;iv)アンモニウム基:NR+RαRβRγRδ, An’’-、またはホスホニウム基:P+RαRβRγRδ, An’’-(ここで、Rα、Rβ、Rγ、及びRδは、同一であっても相違しても良く、水素原子、または(C1-C4)アルキル基を表し、An’’ -はアニオン性カウンターイオンである);あるいはv)チオール官能保護基を表し、
- An-は、アニオン性カウンターイオンを表し;
nが2である場合はmがゼロであり、nが1である場合はmが1であり、
pが2乃至4である場合は、R1基が同一または相違することが理解される]
の蛍光染料、その有機もしくは鉱酸の塩、光学異性体、及び幾何異性体、並びに水和物等の溶媒和物。
【請求項2】
m及びnが、1であり、Yが、水素原子またはアルカリ金属を表す、請求項1に記載の式(I)の蛍光染料。
【請求項3】
m及びnが、1であり、Yが、保護基を表す、請求項1に記載の式(I)の蛍光染料。
【請求項4】
Yが、以下の基:
- (C1-C4)アルキルカルボニル;
- (C1-C4)アルキルチオカルボニル;
- (C1-C4)アルコキシカルボニル;
- (C1-C4)アルコキシチオカルボニル;
- (C1-C4)アルキルチオチオカルボニル;
- (ジ)(C1-C4) (アルキル)アミノカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノチオカルボニル;
- アリールカルボニル;
- アリールオキシカルボニル ;
- アリール(C1-C4)アルコキシカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル;
- (C1-C4)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
- カルボキシル;
- SO3-;M+(ここで、M+は、アルカリ金属を表すか、または、式(I)のAn-またはAn’-及びM+は存在しない);
- 任意に置換されたアリール;
- 任意に置換されたヘテロアリール;
- 任意にカチオン性の、任意に置換された複素環アルキル、
- 下記の基:
【化2】

[式中、
R’c、R’d、R’e、R’f、R’g、及びR’hは、 同一であっても相違しても良く、水素原子、または(C1-C4)アルキル基を表すか、あるいは、二つの基R’gとR’hとが、及び/またはR’eとR’fとが、オキソ基またはチオキソ基を形成するか、あるいは、R’gとR’eとが共にシクロアルキルを形成し;vは、1乃至3の整数を表し;好ましくは、R’c乃至R’hは、水素原子を表し;An’’’-は、カウンターイオンを表し;
- イソチオウロニウム;
- -C(NR’cR’d)=N+R’eR’f;An’’’-(ここで、R’c、R’d、R’e、及びR’fは、同一であっても相違しても良く、水素原子、または(C1-C4)アルキル基を表し、An’’’ -は以上の定義通りである);
- イソチオウレア;
- -C(NR’cR’d)=NR’e(ここで、R’c、R’d、及びR’e は、以上に定義される通りである);
- 任意に置換された(ジ)アリール(C1-C4)アルキル;
- 任意に置換された(ジ)ヘテロアリール(C1-C4)アルキル;
- -CR1R2R3(ここで、R1、R2、及びR3は、同一であっても相違しても良く、ハロゲン原子または以下:
- (C1-C4)アルキル;
- (C1-C4)アルコキシ;
- 任意に置換されたアリール;
- 任意に置換されたヘテロアリール;
- P(Z1)R’1R’2R’3(ここで、R’1及びR’2は、同一であっても相違しても良く、ヒドロキシル、(C1-C4)アルコキシ、またはアルキル基を表し、R’3は、ヒドロキシルまたは(C1-C4)アルコキシ基を表し、Z1は、酸素原子または硫黄原子を表す);
- 立体障害をもつ環基;並びに
- 任意に置換されたアルコキシアルキル
から選択される基を表す]
から選択される保護基を表す、請求項3に記載の式(I)の蛍光染料。
【請求項5】
Yが、アルカリ金属または以下の基:
- (C1-C4)アルキルカルボニル;
- アリールカルボニル;
- (C1-C4)アルコキシカルボニル;
- アリールオキシカルボニル;
- アリール(C1-C4)アルコキシカルボニル;
- (ジ)(C1-C4)(アルキル)アミノカルボニル;
- (C1-C4)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
- 任意のアリール;
- 同一であっても相違しても良い、1つもしくは複数の(C1-C4)アルキル基で任意に置換された、5員もしくは6員のカチオン性単環式ヘテロアリール;
- 同一であっても相違しても良い、1つもしくは複数の(C1-C4)アルキル基で任意に置換された、8員乃至11員のカチオン性二環式ヘテロアリール;
- 下式:
【化3】

のカチオン性複素環;
- イソチオウロニウム-C(NH2)=N+H2;An’’’ -(ここで、An’’’ -は、アニオン性カウンターイオンを表す);
- イソチオウレア-C(NH2)=NH;及び
- SO3-;M+(ここで、M+は、アルカリ金属を表すか、または、式(I)のAn-またはAn’-及びM+は存在しない);
から選択される保護基を表す、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の式(I)の蛍光染料。
【請求項6】
n=2及びm=0である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の式(I)のジスルフィド蛍光染料。
【請求項7】
下式(Ia):
【化4】

において、
- m、n、p、R1、B、及びYは、請求項1乃至6のいずれか一項に定義される通りであり;
- Xは、-G-、-G’-C(G)-、及び-C(G)-G’-より選択される基(ここで、G及びG’は、同一であっても相違しても良く、酸素原子または硫黄原子またはNRであり、Rは、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表す)を表し;Xは、AまたはBによって当該分子の残りの部分と結合しており;
- L’は、-N(R’a)-;-N+(R’a)(R’b)-, An-;-C(O)-N(R’a)-、及び-N(R’a)-C(O)-、または5員乃至7員の二価のカチオン性ヘテロアリールから選択される基(ここで、R’a及びR’bは、同一であっても相違しても良く、水素原子または(C1-C6)アルキル基を表し、An-は、アニオン性カウンターイオンを表す)によって任意に中断された、飽和した炭化水素ベースのC2-C8アルキレン鎖を表し;
- R2及びR3は、同一であっても相違しても良く、C1-C3アルキル基を表す、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の式(Ia)の染料。
【請求項8】
下記の染料:
【化5A】

【化5B】

【化5C】

[ここで、An-は、同一であっても相違しても良く、アニオン性カウンターイオンを表す]
より選択される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の式(I)の蛍光染料。
【請求項9】
適切な化粧品媒質中に、請求項1乃至8のいずれか一項に定義される式(I)の蛍光染料を含む、染料組成物。
【請求項10】
適当な化粧品媒質中に、
- 請求項1乃至8のいずれか一項に定義される式(I)の少なくとも1つの蛍光染料;及び
- 少なくとも1つの還元剤
を含む、請求項9に記載の染料組成物。
【請求項11】
請求項9または10に定義される式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む適切な染料組成物が、ケラチン物質に適用される、前記物質の染色方法。
【請求項12】
ケラチン物質が、6以下のトーンを有する濃色ケラチン物質である、請求項11に記載のケラチン物質の染色方法。
【請求項13】
第一区画に、請求項1乃至8のいずれか一項に定義される式(I)の蛍光染料を含む染料組成物を収容し、第二区画に還元剤を収容する、多区画デバイス。
【請求項14】
特に6以下のトーンを有する、濃色のヒトのケラチン繊維を染色するための、請求項1乃至8に定義される、式(I)の蛍光染料の使用。
【請求項15】
特に6以下のトーンを有する、濃色のヒトのケラチン繊維を明色化するための、請求項14に定義される、式(I)の蛍光染料の使用。

【公表番号】特表2010−539315(P2010−539315A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525357(P2010−525357)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062478
【国際公開番号】WO2009/037324
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】