説明

フェノキシ酪酸アミド誘導体および除草剤

【課題】 低薬量で優れた除草活性を示し、作物と雑草との選択的殺草活性にも優れ、作物や人畜に対する安全性も高く、しかも水稲および畑作物の雑草などの幅広い対象に使用することのできる、新規なフェノキシ酪酸アミド誘導体およびそれを含有する除草剤を提供する。
【解決手段】 一般式(I)
【化10】


[一般式(I)中、Xは、ハロゲン原子またはC1〜C6アルキル基を示し、Hetは、非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたイソオキサゾリル基;非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたチアゾリル基;非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたイソチアゾリル基;または、非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたピリジル基を示し、nは、0〜5の整数を示し、nが2以上のとき、それぞれのXは同一でも相異なっていてもよい。]で表されるフェノキシ酪酸アミド誘導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフェノキシ酪酸アミド誘導体およびそれを除草活性成分とする除草剤に関する。
【背景技術】
【0002】
除草剤は、主として農地に生育する雑草を防除し、作物の栽培に適した環境を作るために用いられ、これまでにフェノキシ系、安息香酸またはフェニル酢酸系、ハロゲン化カルボン酸系、カルバメート系、尿素系、酸アミド系、ヘテロ環系、フェノール系、ジフェニルエーテル系、ピリジニウム系など種々の構造の除草剤が提案され、実用に供されているものも多数ある。
【0003】
上記の例のうちの、酸アミド系除草剤に含まれるものとしては、フェノキシアルカン酸アミド誘導体などが挙げられ、これまでにフェノキシアルカン酸アミド誘導体に属する化合物としては、下記に記載の化合物などが知られている。
(1)一般式(A)
【化2】

[式(A)中、R1およびR2はハロゲン原子またはC1〜C4アルキル基であり、R3はC1〜C4アルキル基である。]で表わされるフェノキシアルカン酸アミド誘導体が記載され、この誘導体は除草活性を有することが記載されている(特許文献1参照)。
(2)一般式(B)
【化3】

[式(B)中、R1およびR2は、ハロゲン原子またはC1〜C4アルキル基であり、R3はC1〜C4アルキル基であり、R4およびR5は水素原子またはC1〜C3アルキル基である。]で表わされるフェノキシアルカン酸アミド誘導体が記載され、この誘導体は除草活性を有することが記載されている(特許文献2参照)。
また、フェノキシアルカン酸アミド誘導体には、次の(3)のように殺ダニ活性を示すものも知られている。
(3)一般式(C)
【化4】

[式(C)中、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子または塩素原子であり、R1はメチル基またはエチル基であり、Xがフッ素原子の場合、R2は水素原子、R3はメチル基であり、Xがトリフルオロメチル基の場合、R2およびR3は水素原子またはメチル基である。]で表わされるフェノキシアルカン酸アミド誘導体が記載され、この誘導体は殺ダニ活性を有することが記載されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】米国特許第3,953,507号明細書
【特許文献2】米国特許第4,051,184号明細書
【特許文献3】米国特許第3,971,850号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、除草剤の開発にあたっては、低薬量であっても高い除草効果を示し、幅広く種々の雑草に対して除草活性を有し、安全性に優れた除草剤の開発が求められる。しかしながら、上記のようなフェノキシアルカン酸アミド誘導体を除草活性成分として用いた場合には、低薬量では除草効果が不充分であったり、また、除草活性を示しても、作物と雑草の選択的殺草活性に劣るので、作物に対する薬害も大きいなど、除草剤としては必ずしも満足に使用できるものではない。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであって、低薬量でも優れた除草活性を示し、作物と雑草との選択的殺草活性にも優れ、しかも水稲および畑作物の雑草などの幅広い対象に使用することのできる、新規なフェノキシ酪酸アミド誘導体およびそれを含有する除草剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に係る化合物が作物に薬害を与えることなく、水稲および畑作物の雑草に対して低薬量で優れた除草効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係るフェノキシ酪酸アミド誘導体は、一般式(I)
【化5】

[一般式(I)中、Xは、ハロゲン原子またはC1〜C6アルキル基を示し、Hetは、非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたイソオキサゾリル基;非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたチアゾリル基;非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたイソチアゾリル基;または、非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたピリジル基を示し、nは、0〜5の整数を示し、nが2以上のとき、それぞれのXは同一でも相異なっていてもよい。nが0のとき、フェノキシ基のベンゼン環は非置換である。nは好ましくは、0〜3である。]
で表される。
また、本発明に係る除草剤は、上記一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体を除草活性成分として含有することを特徴としている。
【0007】
上記一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体において、Xで示される各置換基は、具体的には以下のものを挙げることができる。
【0008】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を挙げることができる。
【0009】
「C1〜C6アルキル基」とは、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味し、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、2−メチル−1−エチルプロピル基および2−メチル−2−エチルプロピル基などを挙げることができる。
【0010】
また、一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体には光学異性体が存在するが、これらの光学異性体も本発明の範囲のものである。
【0011】
本発明に係る一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体の具体例を表1に例示する。ただし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0012】
なお、表1中の化合物番号は、以下の表2、実施例、製剤例および試験例でも参照される。
【化6】

【表1】

なお、上記表において、例えば、3,5−Cl2とは、フェノキシ基の3位と5位にそれぞれClが結合していることを意味し、3,4−(CH32−isoxazol−5−ylは、イソオキサゾリル基の3位と4位にそれぞれメチル基が結合しており、5位のアミノ基がアミド結合を形成していることを意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体は、後述する試験例にも示すとおり、低薬量で優れた除草活性を示し、また、以下に示す雑草と作物との間で優れた選択的殺草活性を示すので、水稲作および畑作の雑草などの幅広い対象に使用することのできる新規な除草活性成分として有用である。
また、本発明の一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体を有効成分として含む本発明の除草剤によれば、作物に薬害を与えることなく、水稲および畑作物の雑草に対して低薬量で優れた除草効果を示すので、安全性が高く、品質の良い作物が得られる。本発明の除草剤は、たとえば、禾本科雑草または広葉雑草などに有効である。
禾本科雑草としては、たとえば、スズメノテッポウ(Alopecurus)、カラスムギ(Avena)、イヌムギ(Bromus)、カヤツリグサ(Cyperus)、メヒシバ(Digitaria)、ヒエ(Echinochloa)、クログワイ(Eleocharis)、オヒシバ(Eleusine)、コナギ(Monochoria)、オオクサキビ(Panicum)、スズメノヒエ(Paspalum)、オオアワガエリ(Phleum)、スズメノカタビラ(Poa)、オモダカ(Sagittaria)、ホタルイ(Scirpus)、エノコログサ(Setaria)、ジョンソングラス(Sorghum)などが挙げられる。
広葉雑草としては、たとえば、イチビ(Abutilon)、イヌビユ (Amaranthus)、ブタクサ(Ambrosia)、コセンダングサ(Bidens)、アカザ(Chenopodium)、ヤエムグラ(Galium)、ヒルガオ(Ipomoea)、アゼナ(Lindernia)、イヌタデ(Persicaria)、スベリヒユ(Portulaca)、キカシグサ(Rotala)、ハコベ(Stellaria)、スミレ(Viola)、オナモミ(Xanthium)などが挙げられる。
【0014】
本発明の除草剤を施用できる圃場における禾本科の作物(有用な栽培植物)としては、たとえば、オオムギ(Hordeum)、イネ(Oryza)、サトウキビ(Saccharum)、コムギ(Triticum)、トウモロコシ(Zea)などが挙げられる。本発明の除草剤を施用できる広葉の作物としては、たとえば、ピーナツ(Arachis)、テンサイ(Beta)、アブラナ(Brassica)、ダイズ(Glycine)、ワタ(Gossypium)、トマト(Lycopersicon)などが挙げられる。
なお、本発明の除草剤の施用は、上記に例示した雑草および作物に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体は、例えば、下記の製造法によって製造できる。
【化7】

上記反応式中、X、Hetおよびnは前記一般式(I)に述べたのと同義であり、R1およびR2は低級アルキルを示し、Halはハロゲン原子を示す。
【0016】
上記反応式において、フェノール類(II)と、α−ハロ酪酸エステル(III)とを、アルカリ金属水酸化物在下に反応させることにより、フェノキシ酪酸誘導体(IV)を製造できる。この反応において使用するアルカリ金属水酸化物としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。この反応は溶媒の存在下で行うのがよく、使用される溶媒としては、たとえば、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。上記反応に際しては、フェノール類(II)1モルに対して、α−ハロ酪酸エステル(III)は、1〜2モル、好ましくは1〜1.2モル用いられ、アルカリ金属水酸化物は2〜3モル、好ましくは2〜2.3モル用いられる。反応は、通常0〜120℃、好ましくは10〜90℃の温度で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結する。反応終了後、フェノキシ酪酸誘導体(IV)は、常法に従って反応混合物から単離することができる。
【0017】
次に、得られたフェノキシ酪酸誘導体(IV)を、ハロゲン化剤を用いてフェノキシ酪酸ハライド(V)としたのちに、塩基の存在下にアミノイソ酪酸エステル(VI)と反応させることにより、フェノキシ酪酸アミド誘導体(VII)を製造できる。このハロゲン化反応は溶媒中で行うのがよく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、ハロゲン化剤としてはオキザリルクロライド、チオニルクロライド、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。フェノキシ酪酸誘導体(IV)1モルに対して、ハロゲン化剤は1〜2モル、好ましくは1〜1.5モル用いられる。この反応は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結する。得られたフェノキシ酪酸ハライド(V)とアミノイソ酪酸エステル(VI)とを反応させる際に用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、場合によっては水との混合溶媒として用いることもできる。用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。アミノイソ酪酸エステル(VI)の使用量は、フェノキシ酪酸ハライド(V)1モルに対して、1〜2モル、好ましくは1〜1.1モルであり、塩基は1〜2モル、好ましくは1〜1.1モル用いられる。この反応は、通常0〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結する。反応終了後、フェノキシ酪酸アミド誘導体(VII)は、たとえば該誘導体を含む反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーまたは再結晶などの操作によって精製することもできる。
【0018】
つづいて上記反応式のフェノキシ酪酸アミド誘導体(VII)のフェノキシ酪酸アミド誘導体(VIII)への加水分解は、塩基存在下により容易に進行する。使用される塩基としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。この加水分解反応は、溶媒の存在下で行うのがよく、使用される溶媒としては、たとえば、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。また、エステル部分を加水分解する際には、フェノキシ酪酸アミド誘導体(VII)1モルに対して、水酸化ナトリウムなどの塩基は1〜2モル、好ましくは1〜1.5モル用いられる。反応は、通常10〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結する。反応終了後、フェノキシ酪酸アミド誘導体(VIII)は、たとえば該誘導体(VIII)を含む反応溶液に水を加えたのち、塩酸、硫酸などを加えて酸性とし、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチルなどの抽出用溶媒により抽出後、水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去すること等により得られる。
【0019】
次に、得られたフェノキシ酪酸アミド誘導体(VIII)を、ハロゲン化剤を用いて酸ハライド誘導体(IX)としたのちに、塩基の存在下にヘテロ環アミン(X)と反応させることにより、本発明のフェノキシ酪酸アミド誘導体(I)を製造できる。このハロゲン化反応は溶媒中で行うのがよく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、ハロゲン化剤としてはオキザリルクロライド、チオニルクロライド、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。フェノキシ酪酸アミド誘導体(VIII)1モルに対して、ハロゲン化剤は1〜2モル、好ましくは1〜1.5モル用いられる。この反応は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結する。得られた酸ハライド誘導体(IX)とヘテロ環アミン(X)とを反応させる際に用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、場合によっては水との混合溶媒として用いることもできる。用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。ヘテロ環アミン(X)の使用量は、酸ハライド誘導体(IX)1モルに対して、1〜2モル、好ましくは1〜1.1モルであり、塩基は1〜2モル、好ましくは1〜1.1モル用いられる。この反応は、通常0〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結する。反応終了後、本発明のフェノキシ酪酸アミド誘導体(I)は、たとえば該誘導体を含む反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーまたは再結晶などの操作によって精製することもできる。
【0020】
次に本発明による一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体の一般的な製剤化の方法について詳しく説明する。
本発明の除草剤は、種々の剤型で使用でき、製剤化する場合には、その有効成分、すなわち除草活性成分である一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体を、担体もしくは希釈剤、必要に応じて、添加剤(例:界面活性剤など)および補助剤などの少なくとも一つと、公知の手法で混合するなどの方法が採用でき、このようにして得られた除草剤は、通常農薬として用いられる製剤形態、たとえば、粒剤、微粒剤、水和剤、顆粒水和剤、乳剤、水溶剤、フロアブル剤、錠剤、粉剤、マイクロカプセル剤、ペースト剤などの形態として使用できる。
【0021】
また本発明の除草剤は、他の農薬、たとえば、殺菌剤、殺虫剤、除草剤、殺ダニ剤、薬害軽減剤(セイフナー)、植物生長調節剤、肥料、または土壌改良剤などと、混合して使用してもよく、また併用してもよい。特に、他の農薬と混合使用することにより、使用する除草剤の薬量を軽減させ、省力化を図ることができ、しかも、両薬剤の協力作用により、除草剤の施用対象(除草スペクトラム)が拡大し、さらに、両薬剤の相乗作用による一層強力な効果を得ることも期待できる。この際、同時に複数の公知除草剤や薬害軽減剤(セイフナー)を組み合わせて配合することもできる。
【0022】
製剤化に際して、用いられる担体としては、一般に農薬製剤用に常用される担体ならば、固体または液体のいずれでも使用することができる。このような担体は特定のものに限定されるものではないが、具体的には以下のものが挙げられる。固体担体としては、たとえば、鉱物質粉末(カオリン、ベントナイト、クレー、モンモリロナイト、タルク、珪藻土、雲母、バーミキュライト、石英、炭酸カルシウム、リン灰石、ホワイトカーボン、消石灰、珪砂など)、植物質粉末(大豆粉、小麦粉、木粉、タバコ粉、デンプン、結晶セルロースなど)、高分子化合物(石油樹脂、ポリ塩化ビニル、ケトン樹脂など)、アルミナ、ケイ酸塩、糖重合体、硫安、尿素、高分散性ケイ酸、ワックス類などが挙げられる。
【0023】
液体担体としては、たとえば、水、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレンなど)、エーテル類(エチルエーテル、エチレンオキシド、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセテート、酢酸アミルなど)、酸アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、脂肪族または脂環式炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサンなど)、工業用ガソリン(石油エーテル、ソルベントナフサなど)、石油留分(パラフィン類、灯油、軽油など)などが挙げられる。
【0024】
また、除草剤を、乳剤、水和剤、フロアブル剤などに製剤化する場合には、乳化、分散、可溶化、湿潤、発泡、潤滑、拡展などの目的で、各種の界面活性剤が配合される。このような界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどの非イオン型界面活性剤、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルアルキルサルフェート、アリールスルホネートなどの陰イオン型界面活性剤、アルキルアミン類(ラウリルアミン、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなど)、ポリオキシエチレンアルキルアミン類などの陽イオン型界面活性剤、カルボン酸(ベタイン型)、硫酸エステル塩などの両性型界面活性剤などが挙げられるが、これらの例示に限定されるものでない。
【0025】
また、これらの他に、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビアゴム、ポリビニルアセテート、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、トラガカントゴムなどの各種補助剤、添加剤などを使用することができる。本発明の除草剤には、その剤型によらず、一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体を、0.001〜95質量%、好ましくは0.01〜75質量%の範囲で含有することが望ましい。より具体的には、一般に、除草剤が粒剤の場合は、上記誘導体(I)は、0.01〜10質量%の量で、また、除草剤が水和剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、液剤または乳剤の場合には、上記誘導体(I)は、1〜75質量%の量で、また、本発明の除草剤が粉剤、ドリフトレス粉剤または微粉剤の場合には、上記誘導体(I)は、0.01〜5質量%の量で含有できる。
【0026】
上記の方法により得られる本発明の除草剤の製剤は、たとえば、粒剤およびフロアブル剤の場合には、そのまま土壌表面、土壌中または水中に、有効成分の換算量として10アール当たり0.3g〜300g程度の範囲の量で散布すればよい。また、水和剤、および乳剤などの場合は、水または適当な溶剤に希釈し得られた希釈薬液を、有効成分の換算量として10アール当たり0.3g〜300g程度の範囲で散布すればよい。
【0027】
次に、実施例1〜2を挙げて本発明による一般式(I)の化合物の製造例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(5−メチルイソオキサゾール−3−イル)プロピオン酸アミドの製造(表1の化合物No.34)
【0029】
攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した300mlの四つ口フラスコ中、3,5−ジメチル−4−クロロフェノール15.7g(0.1mol)および2‐ブロモ−n−酪酸メチル19.0g(0.105mol)をメタノール40mlに溶解し、続いて水酸化ナトリウム8.4g(0.21mol)を加えた後、70℃で3時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物に氷水100mlを加え、10%塩酸を用いて酸性にすることにより析出した結晶を濾過によって取り、その結晶をn−ヘキサンで洗浄後、乾燥することにより2−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)−n−酪酸21.9gを得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、上記で得た2−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)−n−酪酸21.9gをジクロロメタン200mlに溶解し、オキザリルクロライド13.8g(0.108mol)および触媒量のN,N‐ジメチルホルムアミドを室温で順次加え、同温度で3時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧下に室温で留去することにより油状の2−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)−n−酪酸クロライド23.6gを粗生成物として得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、2−アミノイソ酪酸メチル11.0g(0.095mol)およびトリエチルアミン9.6g(0.095mol)をクロロホルム150mlに溶解し、この溶液を3℃に冷却し、激しく攪拌しながら、先に得られた2−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)−n−酪酸クロライド23.6gをクロロホルム50mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150mlにて洗浄し、次にその有機層を1N−塩酸100mlにて洗浄し、続いて5%炭酸ナトリウム水溶液100mlにて洗浄、さらに飽和食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸メチル29.2gを得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した300mlの四つ口フラスコ中、水酸化ナトリウム5.1g(0.128mol)を水20mlおよびメタノール120mlに溶かし、先に得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸メチル29.2gを加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物からメタノールを減圧下に留去し、氷水150mlを加え、10%塩酸を用いて酸性にすることにより析出した析出物を酢酸エチル250mlで抽出し、有機層を飽和食塩水50mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより、2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸28gを得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、上記で得た2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸28gをジクロロメタン250mlに溶解し、オキザリルクロライド13.0g(0.103mol)および触媒量のN,N‐ジメチルホルムアミドを室温で順次加え、同温度で3時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧下に室温で留去することにより油状の2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸クロライド29.5gを得た。
続いて、攪拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、3−アミノ−5−メチルイソオキサゾール9.2g(0.094mol)およびトリエチルアミン9.5g(0.094mol)をクロロホルム150mlに溶解し、この溶液を3℃に冷却し、先に得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸クロライド29.5gをクロロホルム60mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150mlにて洗浄し、次にその有機層を1N−塩酸100mlにて洗浄し、続いて5%炭酸ナトリウム水溶液100mlにて洗浄、さらに飽和食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。そしてその溶媒を減圧下に留去することにより得られた粗生成物をシリカゲル(ワコーゲルB−10)を用いたクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル 2:1)により精製し、標記の2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチル−4−クロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(5−メチルイソオキサゾール−3−イル)プロピオン酸アミド30.7g(融点154〜155℃、収率88%)を得た。
【実施例2】
【0030】
2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)プロピオン酸アミドの製造(表1の化合物No.16)
攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した300mlの四つ口フラスコ中、3,5−ジクロロフェノール16.3g(0.1mol)および2‐ブロモ−n−酪酸メチル19.0g(0.105mol)をメタノール40mlに溶解し、続いて水酸化ナトリウム8.4g(0.21mol)を加えた後、70℃で3時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物に氷水100mlを加え、10%塩酸を用いて酸性にすることにより析出した結晶を濾過によって取り、その結晶をn−ヘキサンで洗浄後、乾燥することにより2−(3,5−ジクロロフェノキシ)−n−酪酸22.4gを得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、上記で得た2−(3,5−ジクロロフェノキシ)−n−酪酸22.4gをジクロロメタン200mlに溶解し、オキザリルクロライド13.8g(0.108mol)および触媒量のN,N‐ジメチルホルムアミドを室温で順次加え、同温度で3時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧下に室温で留去することにより油状の2−(3,5−ジクロロフェノキシ)−n−酪酸クロライド24.0gを粗生成物として得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、2−アミノイソ酪酸メチル11.0g(0.095mol)およびトリエチルアミン9.6g(0.095mol)をクロロホルム150mlに溶解し、この溶液を3℃に冷却し、激しく攪拌しながら、先に得られた2−(3,5−ジクロロフェノキシ)−n−酪酸クロライド24.0gをクロロホルム50mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150mlにて洗浄し、次にその有機層を1N−塩酸100mlにて洗浄し、続いて5%炭酸ナトリウム水溶液100mlにて洗浄、さらに飽和食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸メチル28.8gを得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した300mlの四つ口フラスコ中、水酸化ナトリウム5.0g(0.125mol)を水20mlおよびメタノール120mlに溶かし、先に得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸メチル28.8gを加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応混合物からメタノールを減圧下に留去し、氷水150mlを加え、10%塩酸を用いて酸性にすることにより析出した析出物を酢酸エチル250mlで抽出し、有機層を飽和食塩水50mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより、2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸27.7gを得た。
次に、攪拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、上記で得た2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸27.7gをジクロロメタン250mlに溶解し、オキザリルクロライド12.6g(0.10mol)および触媒量のN,N‐ジメチルホルムアミドを室温で順次加え、同温度で3時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧下に室温で留去することにより油状の2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸クロライド29.2gを得た。
続いて、攪拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、5−アミノ−3−メチルイソチアゾール10.4g(0.091mol)およびトリエチルアミン9.2g(0.091mol)をクロロホルム150mlに溶解し、この溶液を3℃に冷却し、先に得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸クロライド29.2gをクロロホルム60mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150mlにて洗浄し、次にその有機層を1N−塩酸100mlにて洗浄し、続いて5%炭酸ナトリウム水溶液100mlにて洗浄、さらに飽和食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。そしてその溶媒を減圧下に留去することにより得られた粗生成物をジイソプロピルエーテルで洗浄することにより精製し、標記の2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(3−メチルイソチアゾール−5−イル)プロピオン酸アミド32.5g(融点209〜210℃、収率91%)を得た。
【実施例3】
【0031】
2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ−N−(4−メチルチアゾール−2−イル)プロピオン酸アミドの製造(表1の化合物No.14)
撹拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、2−アミノ−4−メチルチアゾール10.7g(0.094mo1)およびトリエチルアミン9.5g(0.094mol)をクロロホルム150mlに溶解し、この溶液を3℃に冷却し、前記の実施例2と同様にして得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ〕プロピオン酸クロライド30gをクロロホルム60m1に溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150m1にて洗浄し、次にその有機層を1N−塩酸100m1にて洗浄し、続いて5%炭酸ナトリウム水溶液100mlにて洗浄、さらに飽知食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した、そしてその溶媒を減圧下に留去することにより得られた粗生成物をシリカゲル(ワコーゲルB−10)を用いたクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン:酢酸エチル 2:1)により精製し、標記の2−メチル−2−[1−(3,5−ジクロロフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(4−メチルチアゾール−2−イル)プロピオン酸アミド33.6g(融点138〜139℃、収率92%)を得た。
【実施例4】
【0032】
2−メチル−2−〔1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(ピリジン−3−イル)プロピオン酸アミドの製造(表1の化合物No.29)
撹拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した300mlの四つ口フラスコ中、3,5−ジメチルフェノール12.2g(0.1mo1)および2−ブロモ−n−酪酸メチル19.0g(0.105mol)をメタノール40mlに溶解し、続いて水酸化ナトリウム8.4g(0.21mol)を加えた後、70℃で3時問撹拌した。反応終了後、その反応混合物に氷水100m1を加え、10%塩酸を用いて酸性にすることにより析出した結晶を濾過によって取り、その結晶をn−ヘキサンで洗浄後、乾燥することにより2−(3,5−ジメチルフェノキシ)−n−酪酸17.7gを得た。
次に、撹拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、上記で得た2−(3,5−ジメチルフェノキシ)−n−酪酸17.7gをジクロロメタン180mlに溶解し、オキザリルクロライド13.0g(0.102mol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを室温で順次加え、同温度で3時間攪拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧下に室温で留去することにより油状の2−(3,5−ジメチルフェノキシ)−n−酪酸クロライド19.3gを粗生成物として得た。
次に、撹拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、2−アミノイソ酪酸メチル10.5g(0.089mol)およびトリエチルアミン9.0g(0.089mol)をクロロホルム150mlに溶解し、この溶液を3℃に冷却し、激しく攪拌しながら、先に得られた2−(3,5−ジメチルフェノキシ)−n−酪酸クロライド19.3gをクロロホルム40m1に溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150mlにて洗浄し、次にその有機層を1N−塩酸100mlにて洗浄し、続いて5%炭酸ナトリウム水溶液100mlにて洗浄、さらに飽和食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸メチル23.7gを得た。
次に、撹拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した300mlの四つ口フラスコ中、水酸化ナトリウム4.7g(0.116mol)を水20m1およびメタノール100mlに溶かし、先に得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルポニルアミノ]プロピオン酸メチル23.7gを加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物からメタノールを減圧下に留去し、氷水150m1を加え、10%塩酸を用いて酸性にすることにより析出した析出物を酢酸エチル250m1で抽出し、有機層を飽和食塩水50mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去することにより、2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸22.6gを得た。
次に、撹拌装置、還流冷却器および0〜100℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、上記で得た2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ〕プロピオン酸22.6gをジクロロメタン230mlに溶解し、オキザリルクロライド11.7g(0.092mol)および触媒量のN、N−ジメチルホルムアミドを室温で順次加え、同温度で3時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタンを減圧下に室温で留去することにより油状の2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸クロライド24gを得た。続いて、撹拌装置、還流冷却器および−50〜50℃まで測定できる温度計を装備した500mlの四つ口フラスコ中、3−アミノ−ピリジン8.0g(0.085mo1)およびトリエチルアミン8.6g(0.085mol)をクロロホルム150m1に溶解し、この溶液を3℃に冷却し、先に得られた2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]プロピオン酸クロライド24gをクロロホルム50mlに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌した。反応終了後、その反応混合物を氷水150mlにて洗浄し、次にその有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液100m1にて洗浄、さらに飽和食塩水100mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。そしてその溶媒を減圧下に留去することにより得られた粗生成物をシリカゲル(ワコーゲルB−10)を用いたクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン:酢酸エチル 1:1)により精製し、標記の2−メチル−2−[1−(3,5−ジメチルフェノキシ)プロピルカルボニルアミノ]−N−(ビリジン−3−イル)プロピオン酸アミド25.6g(油状物、収率90%)を得た。
また、本発明化合物の1H−NMRスペクトルデータを表2に示す。
なお、各化合物の1H−NMRスペクトルデータは、標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を用い、日本電子データム(株)製JNM−LA300型核磁気共鳴装置により測定した。
【0033】
【表2】

【0034】
次に、本発明のフェノキシ酪酸アミド誘導体(I)を除草剤として製剤化する方法を、以下の製剤例1〜6により具体的に説明する。ただし、本発明の除草剤はこれらの製剤例1〜6のみに限定されるものではなく、他の種々の添加物と任意の割合で混合し、製剤化することができることはいうまでもない。
なお、化合物番号は前記表1に示したものであり、また以下の実施例中、「部」とは、すべて質量部を示すものとする。
製剤例1(粒剤)
No.34の化合物1部、リグニンスルホン酸カルシウム1部、ラウリルサルフェート1部、ベントナイト30部およびタルク67部に水15部を加えて、混練機で混練した後、押出式造粒機で造粒した。これを流動乾燥機で乾燥して、除草活性成分(化合物No.34)1%を含む粒剤を得た。
製剤例2(フロアブル剤)
No.12の化合物20.0部、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩2.0部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル2.0部、プロピレングリコール5.0部、消泡剤0.5部および水70.5部を、湿式ボールミルで均一に混合粉砕し、除草活性成分(化合物No.12)20%を含むフロアブル剤を得た。
製剤例3(ドライフロアブル剤)
No.10の化合物75部、イソバンNo.1〔アニオン性界面活性剤:クラレイソプレンケミカル(株)製、商品名〕10部、バニレックスN〔アニオン性界面活性剤:山陽国策パルプ(株)製、商品名〕5部、ホワイトカーボン5部およびクレー5部を均一に混合微粉砕して、除草活性成分(化合物No.10)75%を含むドライフロアブル(顆粒水和)剤を得た。
製剤例4(水和剤)
No.11の化合物15部、ホワイトカーボン15部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル2部、珪藻土5部およびクレー60部を、粉砕混合機により均一に混合して、除草活性成分(化合物No.11)15%を含む水和剤を得る。
製剤例5(乳剤)
No.16の化合物20部、ソルポール700H〔乳化剤:東邦化学株式会社製、商品名〕20部およびキシレン60部を混合して、除草活性成分(化合物No.16)20%を含む乳剤を得た。
製剤例6(粉剤)
No.14の化合物0.5部、ホワイトカーボン0.5部、ステアリン酸カルシウム0.5部、クレー50.0部およびタルク48.5部を均一に混合粉砕して、除草活性成分(化合物No.14)0.5%を含む粉剤を得た。
なお、一般式(I)で示されるフェノキシ酪酸アミド誘導体はすべて、上述の製剤例1〜6に示した製剤例に準じて、各種剤型に製剤することができる。
【0035】
次に、本発明のフェノキシ酪酸アミド誘導体(I)の除草効果を例証するため、以下に試験例1〜4を示す。
<試験例1>水稲作発生前処理による除草効果試験および移植水稲に対する薬害試験
1/5,000アールの広さのワグネルポットに水田土壌を充填し、水を加え化成肥料(N:P:K=17:17:17)を混入し、代かきを行った。その後、タイヌビエ、広葉雑草(アゼナ、コナギ)、ホタルイの種子を0〜1cmの深さにそれぞれ30粒ずつを播種した。播種直後に、2葉期の水稲を移植した。水稲移植後ただちに湛水し、水深を約3cmに保った。その後の管理はガラス温室内で行った。水稲移植1日後に、下記の表3に示した化合物を用いて製剤例4に準じて調製した水和剤を水希釈し、その水希釈薬液の所定量を滴下した。活性成分の施用量を換算すると10アール当たり120gまたは30gに相当した。
本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行い、薬剤処理21日後に、下記数式(1)により抑草率(%)を求めた。
【数1】

その結果を下記表3に示す。なお表3中の化合物番号は、前記表1に示したものと同じものである。また、比較薬剤として、下記式で示される比較化合物Dおよび比較化合物Eを含む水和剤を製剤例4に準じ調製して用いた。比較薬剤として用いた比較化合物Dおよび比較化合物Eは、次式(D)および(E)で示される化合物である。
【化8】

米国特許第3,953,507号明細書(特許文献1)に記載の化合物
【化9】

米国特許第4,051,184号明細書(特許文献2)に記載の化合物
【表3】

【0036】
<試験例2>水稲作生育期処理による除草効果試験
1/5,000アールの広さのワグネルポットに水田土壌を充填し、水を加え化成肥料(N:P:K=17:17:17)を混入し、代かきを行った。その後、タイヌビエ、広葉雑草(アゼナ、コナギ)、ホタルイの種子を0〜1cmの深さにそれぞれ30粒ずつを播種した。播種後ただちに湛水し、水深を約3cmに保った。その後の管理はガラス温室内で行った。播種7日後に、下記表4に示した化合物を用いて製剤例4に準じて調製した水和剤を水希釈し、その水希釈薬液の所定量を滴下した。活性成分の施用量を換算すると10アール当たり120gまたは30gに相当した。試験は1薬液濃度区当たり2連制で行い、薬剤処理21日後に、前記数式(1)により抑草率(%)を求めた。その結果を表4に示す。
なお表中の化合物番号は、前記表1に示したものと同じものである。また、比較薬剤として、試験例1で示される比較化合物Dおよび比較化合物Eを含む水和剤を製剤例4に準じて調製して用いた。
【表4】

【0037】
<試験例3>畑作土壌処理による除草効果試験および薬害試験
1)畑作雑草に対する除草効果試験:1/5,000アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、表層1cmの土壌とメヒシバ、エノコログサ、シロザ、イヌタデの各雑草種子それぞれ50粒を均一に混合し、表層を軽く押圧した。播種1日後に、下記表5に示した化合物を用い、製剤例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、その水希釈薬液を10アール当たり100リットルの割合で土壌表面に噴霧した。活性成分の施用量を換算すると10アール当たり120gまたは30gに相当した。薬剤処理21日後に除草効果を試験例1と同じ基準で評価した。その結果を、表5に示す。
2)作物に対する薬害試験:1/10,000アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、各作物の種子(ダイズ5粒、コムギ10粒)をそれぞれ別のポットに播種し、表層を軽く押圧した。播種1日後に、下記表5に示した化合物を用い、製剤例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、その水希釈薬液を10アール当たり100リットルの割合で土壌表面に噴霧した。活性成分の施用量を換算すると10アール当たり120gまたは30gに相当した。試験は1薬液濃度区当たり2連制で行い、薬剤処理21日後に、前記数式(1)により抑草率(%)を求めた。その結果を表5に示す。
なお表中の化合物番号は、前記表1に示したものと同じものである。また、比較薬剤として、試験例1で示される比較化合物Dおよび比較化合物Eを含む乳剤を製剤例5に準じて調製して用いた。
【表5】

【0038】
<試験例4>畑作茎葉処理による除草効果試験および薬害試験
1)畑作雑草に対する除草効果試験:1/5,000アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、表層1cmの土壌とメヒシバ、エノコログサ、シロザ、イヌタデの各雑草種子それぞれ50粒を均一に混合し、表層を軽く押圧した。播種7日後に、下記表6に示した化合物を用い、製剤例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、その水希釈薬液を10アール当たり100リットルの割合で土壌表面に噴霧した。活性成分の施用量を換算すると10アール当たり120gまたは30gに相当した。薬剤処理21日後に除草効果を試験例1と同じ基準で評価した。その結果を、以下の表6に示す。
2)作物に対する薬害試験:1/10,000アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、各作物の種子(ダイズ5粒、コムギ10粒)をそれぞれ別のポットに播種し、表層を軽く押圧した。播種7日後に、下記表6に示した化合物を用い、製剤例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、その水希釈薬液を10アール当たり100リットルの割合で植物体に噴霧した。活性成分の施用量を換算すると10アール当たり120gまたは30gに相当した。試験は1薬液濃度区当たり2連制で行い、薬剤処理21日後に、前記数式(1)により抑草率(%)を求めた。その結果を以下の表6に示す。
なお表中の化合物番号は、前記表1に示したものと同じものである。また、比較薬剤として、試験例1で示される比較化合物Dおよび比較化合物Eを含む乳剤を製剤例5に準じて調製して用いた。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】


[一般式(I)中、Xは、ハロゲン原子またはC1〜C6アルキル基を示し、Hetは、非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたイソオキサゾリル基;非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたチアゾリル基;非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたイソチアゾリル基;または、非置換もしくはC1〜C6アルキル基で置換されたピリジル基を示し、nは、0〜5の整数を示し、nが2以上のとき、それぞれのXは同一でも相異なっていてもよい。]
で表されるフェノキシ酪酸アミド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載のフェノキシ酪酸アミド誘導体を除草活性成分として含有することを特徴とする除草剤。

【公開番号】特開2008−133218(P2008−133218A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320358(P2006−320358)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】