説明

フェノールアラルキル樹脂及びその製造方法

【課題】 耐熱性と流動性のバランスに優れたフェノールアラルキル樹脂を提供する。
【解決手段】 ゲル濾過クロマトグラフの面積法による測定で、3量体成分と4量体成分の合計含有量が35%以上であるフェノールアラルキル樹脂。メチレン基のオルソ/パラ結合比が0.46以下であること、また、上記測定で、2量体含有量が35%以下であることが好ましい。更に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との分散比(Mw/Mn)が1.7以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールアラルキル樹脂及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性、耐クラック性、耐湿性、作業性、電気特性において優れており、積層板、成型材料、鋳型材料、接着材料、注型材料など、広く利用されている。特にIC封止用成型材料には好適に用いられている。
【0003】
近年、封止材、成型材料分野において高耐熱性が求められる傾向があり、無機フィラーの配合量を増やし、有機バインダーを減らすことで耐熱性を上げる方法がとられているが、この場合に接着性を確保するためには、有機バインダーに、無機フィラーの隙間に流れ込むような流動性が要求される。
【0004】
この様な有機バインダーとして、通常のフェノール樹脂に比べ耐熱性に優れると共に、フェノール樹脂と同様に、エポキシ樹脂等と反応し、熱硬化性樹脂組成物を与ることができ、エポキシ樹脂用ベースレジンとしても利用することができるフェノールアラルキル樹脂が注目されている(特許文献1,2)。
【0005】
しかし、特許文献1,2に記載されたフェノールアラルキル樹脂は、3量体および4量体の含有量が低いため、耐熱性と流動性のバランスが充分ではないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−116369号公報
【特許文献2】特開2002−80567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性と流動性のバランスに優れたフェノールアラルキル樹脂、及びその様なフェノールアラルキル樹脂を高収率で製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明のフェノールアラルキル樹脂は、ゲル濾過クロマトグラフの面積法による測定で、3量体成分と4量体成分の合計含有量が35%以上であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のフェノールアラルキル樹脂の製造方法は、フェノール類と、フェノール類1モルに対して0.5〜0.85モルの下記一般式(1)で示されるアラルキル化合物とを、りん酸類の存在下で不均一系反応させる工程を有することを特徴とする。
【0010】
【化1】

(式中、R、R’は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。)
【発明の効果】
【0011】
本発明のフェノールアラルキル樹脂は、3量体及び4量体の含有量が高く、耐熱性と流動性のバランスに優れる。
【0012】
また、本発明の製造方法は、3量体及び4量体の含有量が高く、しかも、揮発性が高く作業環境を悪化させる未反応モノマー、耐熱性向上に寄与しにくい2量体及び流動性向上に寄与しにくい高次縮合物の含有量が低く、耐熱性と流動性のバランスに優れたフェノールアラルキル樹脂を高収率で製造することができる。しかも、本発明の製造方法は、反応選択率が高く、パラ結合率の高いフェノールアラルキル樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のフェノールアラルキル樹脂は、ゲル濾過クロマトグラフの面積法による測定で、3量体成分と4量体成分の合計含有量が35%以上、好ましくは40%以上である。3量体成分と4量体成分の合計含有量が35%以上であれば、硬化の際に3次元架橋をしやすいため耐熱性に優れると共に、流動性も良い。
【0014】
本発明のフェノールアラルキル樹脂は、メチレン基のオルソ/パラ結合比が0.46以下であることが好ましく、より好ましくは0.44以下、さらに好ましくは0.43以下である。ここで、オルソ/パラ結合比とは、メチレン基のフェノール水酸基に対する結合位置を示す、オルソ結合メチレン基数とパラ結合メチレン基数との比(オルソ結合/パラ結合)であり、13C−NMRにより測定された値である。オルソ/パラ結合比が0.46を超えると、メチレン基のオルソ結合の比率が高くなるため、嵩高いアラルキル基によってブロックされる立体障害が発生し、エポキシ樹脂の原料として用いた場合にエポキシ化反応を阻害する可能性、及びエポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合にエポキシ基との反応を阻害する可能性がある。
【0015】
また、ゲル濾過クロマトグラフの面積法による測定で、2量体成分の含有量が35%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。2量体は反応点が2箇所しかなく、硬化の際に3次元架橋をすることができないため、この様な2量体成分の含有量が35%を超えると、耐熱性が充分でない可能性がある。
【0016】
さらには、ゲル濾過クロマトグラフ測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との分散比(Mw/Mn)が1.7以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.3以下である。分散比(Mw/Mn)が1.7を超えると、耐熱性と流動性との両立ができなくなる可能性がある。
【0017】
この様なフェノールアラルキル樹脂を高収率で製造できる本発明の製造方法は、原料としてフェノール類及びアラルキル化合物、酸触媒としてリン酸類を必須とし、これらから形成される二相分離状態を機械的攪拌、超音波等によりかき混ぜ混合して、二相(有機相と水相)が交じり合った白濁状の不均一反応系において、フェノール類とアラルキル化合物との反応を進めて縮合物(樹脂)を合成する。
【0018】
反応原料として用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノールなどのキシレノール類、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、6−tert−ブチル−3−メチルフェノールなどのアルキルフェノール類、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−プロポキシフェノール、m−プロポキシフェノールなどのアルコキシフェノール類、o−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノールなどのイソプロペニルフェノール類、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロールなどのポリヒドロキシフェノール類などを挙げることができる。
【0019】
フェノール類は、上記の例示に限定はされず、またそれぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。尚、オルソ/パラ結合比が0.46以下であるフェノールアラルキル樹脂を製造する場合には、水酸基に対してパラ位に置換基を有するフェノール類の全フェノール類に占める割合を15質量%以下とするのが好ましい。
【0020】
フェノール類の添加方法は、原料と共に一括して仕込む方法、あるいは反応の進行と共に分割して加えていく方法など、目的に適した方法を採用してよい。
【0021】
反応原料として用いるアラルキル化合物は、下記一般式(1)で示される。
【0022】
【化2】

(式中、R、R’は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。)
【0023】
具体的には、例えば、α,α’−ジヒドロキシ−p−キシレン、α,α’−ジヒドロキシ−m−キシレン、α,α’−ジヒドロキシ−o−キシレン等のアラルキルアルコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン(PXDM)、α,α’−ジメトキシ−m−キシレン、α,α’−ジメトキシ−o−キシレン、α,α’−ジエトキシ−p−キシレン、α,α’−ジエトキシ−m−キシレン、α,α’−ジエトキシ−o−キシレン、α−ヒドロキシ−α’−メトキシ−p−キシレン、α−ヒドロキシ−α’−メトキシ−m−キシレン、α−ヒドロキシ−α’−メトキシ−o−キシレン、α−エトキシ−α’−ヒドロキシ−p−キシレン、α−エトキシ−α’−ヒドロキシ−m−キシレン、α−エトキシ−α’−ヒドロキシ−o−キシレン、α−エトキシ−α’−メトキシ−p−キシレン、α−エトキシ−α’−メトキシ−m−キシレン、α−エトキシ−α’−メトキシ−o−キシレン等のアラルキルエーテルが挙げられ、これらのうちでも、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン(PXDM)が好ましい。
【0024】
アラルキル化合物は、上記の例に限定はされず、また、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
アラルキル化合物の添加方法は、原料と共に一括して仕込む方法、反応の進行と共に分割して加えていく方法など、目的に適した方法を採用してよい。
【0026】
フェノール類とアラルキル化合物との配合比(フェノール類/アラルキル化合物)はモル基準で0.5〜0.85、好ましくは0.55〜0.7である。配合比が0.5未満では、2量体以下の成分の含有量を減少させることが難しくなり、逆に0.85を超えると3量体、4量体の含有量が減少する。
【0027】
反応触媒として用いられるリン酸類は、フェノール類とアラルキル化合物との相分離反応(不均一系反応)の場を形成する重要な役割を果すものであり、このようなリン酸類の例としては、例えばメタリン酸、ピロリン酸、オルトリン酸、三リン酸、四リン酸等のポリリン酸、無水リン酸及びこれらの混合物などが挙げられるが、低コストで入手し易いオルトリン酸水溶液、例えば75質量%リン酸、89質量%リン酸等が一般的に用いられる。
【0028】
リン酸類の配合量は、フェノール類100質量部に対して40質量部以上が好ましく、その上限量は特に制限されるものではないが、反応容積効率、安全性、相分離効果などを勘案すると、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは60〜200質量部である。配合量が40質量部未満では、高分子量成分の生成が促進される一方で、低分子量成分とりわけ2量体成分が低減しない傾向がある。
【0029】
リン酸類の添加方法は、原料と共に一括して仕込む方法、反応の進行と共に分割して加えていく方法など、目的に適した方法を採用してよい。
【0030】
相分離反応の促進という観点から、反応補助溶媒としての非反応性含酸素有機溶媒を用いることが好ましい。反応補助溶媒としては、アルコール類、多価アルコール系エーテル、環状エーテル類、多価アルコール系エステル、ケトン類、スルホキシド類からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0031】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の一価アルコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコール等が挙げられる。
【0032】
多価アルコール系エーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。
【0033】
環状エーテル類としては、例えば、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等が挙げられ、多価アルコール系エステルとしては、例えばエチレングリコールアセテート等のグリコールエステル類等が挙げられ、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、スルホキシド類としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、メタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシドなどが特に好ましい。
【0035】
反応補助溶媒は、これらに限定されず、上記の特質を有しかつ反応時に液状を呈するものであれば固体でも使用することができるし、またそれぞれを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
反応補助溶媒の配合量としては、フェノール類100質量部に対して、好ましくは5〜1000質量部であり、より好ましくは20〜500質量部である。配合量が5質量部未満では溶媒添加効果が認められない可能性があり、また1000質量部を超えると反応速度及び容積効率の点から生産性が低下する可能性がある。
【0037】
反応補助溶媒の添加方法は、原料と共に一括して仕込む方法、反応の進行と共に分割して加えていく方法など、目的に適した方法を採用してよい。
【0038】
本発明の製造方法においては、相分離効果の観点から、反応を始める前にあらかじめ系内の水分量を30質量%以下、好ましくは20質量%以下にしておくことが好ましい。反応温度は、反応効率及び相分離効果の観点から、一般に70℃以上の温度が採用されるが、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは還流温度である。反応時間は、反応温度、リン酸類の配合量、反応系の含水量、生成物の縮合状況などを考慮しながら決定されるが一般的には1〜50時間程度である。
【0039】
反応終了後には、洗浄工程を有することが好ましい。具体的には、非水溶性有機溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)を添加混合して縮合物(フェノールアラルキル樹脂)を溶解したのち、静置して有機層(非水溶性有機溶媒、縮合物を含む)と水層(反応補助溶媒、リン酸類を含む)に分離させる。次に、水層は系外に除去した後、リン酸類及び反応補助溶媒を回収し、一方、有機層は湯水洗及び/又は中和した後、減圧蒸留により非水溶性有機溶媒を除去する。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定される物ではない。なお、実施例に記載の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0041】
また得られたフェノールアラルキル樹脂については下記の試験法により測定した。なお、フェノールアラルキル樹脂の収率は、フェノールアラルキル樹脂の理論収量に対する百分率(質量基準)で表示した。
【0042】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)
東ソー株式会社製GPC(ゲル濾過クロマトグラフSC−8020、カラム(TSKgel):G2000HXL+G4000HXL、検出器UV‐8011(λ:254nm)、キャリヤー:テトラヒドロフラン1ml/min、カラム温度:38℃)の測定により標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めて分散度(Mw/Mn)を算出し、数値の小さく1.00に近いことは分子量分布が狭い樹脂であると評価した。
【0043】
(2)分子量分布
GPC測定で得られた分子量分布の全面積に対する2量体、3量体、4量体、高次縮合体(5量体以上)の面積を百分率で表示する面積法によって算出しそれぞれの成分含有量とした。
【0044】
(3)軟化点(℃)
JIS−K6910に記載された環球法に準拠し、株式会社メイテック製環球式自動軟化点測定装置ASP−MGK2を使用して測定した。
【0045】
(4)コーンプレート溶融粘度(Pa・s/150℃)
コーンプレート溶融粘度計(東亜工業株式会社製CONE PLATE VISCOMETER MODEL CV−1)により測定した。
【0046】
(5)オルソ/パラ結合比
核磁気共鳴装置(バリアン社製:INOVA 400)を用い、13C−NMR(100MHz、溶媒:重メタノール−d4)を測定し、次式により算出した。
オルソ/パラ結合比=(a+1/2×b)/(c+1/2×b)
a:オルソ−オルソ結合メチレン吸収帯(29.6〜33.2ppm)の積分値
b:オルソ−パラ結合メチレン吸収帯(34.3〜38.5ppm)の積分値
c:パラ−パラ結合メチレン吸収帯(39.5〜42.9ppm)の積分値
【0047】
<実施例1>
温度計、攪拌装置、還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノール(P)を94部、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン(PXDM)を116部(モル基準:PXDM/P=0.70)、89%リン酸を94部(100%/P)仕込んだ後、攪拌混合により形成される白濁状態(二相混合物)のもとで、120℃まで昇温し、さらに同温度で10時間縮合反応を行ってから反応を停止した。
【0048】
次いで攪拌混合しながらメチルイソブチルケトンを添加して縮合物を溶解させた後、攪拌を停止して内容物を分液フラスコ内に移して静置し、メチルイソブチルケトン溶液相(上相)とリン酸水溶液相(下相)に分離させた。次いで、リン酸水溶液相を除去し、メチルイソブチルケトン溶液相を5回水洗してリン酸を除去した後、再び内容物を反応容器内に戻し、減圧蒸留によりメチルイソブチルケトンを完全に除去してフェノールアラルキル樹脂157部(理論収率95%)を得た。
【0049】
得られたフェノールアラルキル樹脂については冒頭記述の試験法により、樹脂特性を測定した。それらの結果を表1に示す。また、得られたフェノールアラルキル樹脂のGPCチヤートを図1に示す。
【0050】
<実施例2〜3>
反応条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフェノールアラルキル樹脂を得、測定した。結果を表1に示す。
<比較例1>
【0051】
実施例1と同様の反応容器内に、フェノール(P)を94部、PXDMを116部(モル基準:PXDM/P=0.70)、硫酸ジエチルを0.1部(0.5%/P)を仕込んだ後、徐々に140℃まで昇温して同温度で6時間縮合反応を行った。次いで常圧脱水、引き続き減圧脱水してフェノールアラルキル樹脂131部(理論収率79%)を得た。
【0052】
得られたフェノールアラルキル樹脂については冒頭記述の試験法により、樹脂特性を測定した。それらの結果を表1に示す。また、得られたフェノールアラルキル樹脂のGPCチヤートを図2に示す。
【0053】
<比較例2>
実施例1と同様の反応容器内に、フェノール(P)を94部、PXDMを116部(モル基準:PXDM/P=0.70)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸を70部(60%/P)仕込んだ後、攪拌混合により形成される白濁状態(二相混合物)のもとで、170℃まで昇温し、さらに同温度で9時間縮合反応を行った。次いで常圧脱水、引き続き減圧脱水してフェノールアラルキル樹脂152部(理論収率92%)を得た。
【0054】
得られたフェノールアラルキル樹脂については冒頭記述の試験法により、樹脂特性を測定した。それらの結果を表1に示す。また、得られたフェノールアラルキル樹脂のGPCチヤートを図3に示す。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1で得られたフェノールアラルキル樹脂のGPCチヤートである。
【図2】比較例1で得られたフェノールアラルキル樹脂のGPCチヤートである。
【図3】比較例2で得られたフェノールアラルキル樹脂のGPCチヤートである。
【符号の説明】
【0057】
1 2量体成分(フェノール類2分子を、一般式(1)で示されるアラルキル化合物1分子で架橋した構造と思われるピーク)
2 3量体成分(フェノール類3分子を、一般式(1)で示されるアラルキル化合物2分子で架橋した構造と思われるピーク)
3 4量体成分(フェノール類4分子を、一般式(1)で示されるアラルキル化合物3分子で架橋した構造と思われるピーク)
4 高次縮合体(フェノール類5分子以上を、一般式(1)で示されるアラルキル化合物4分子以上で架橋した構造と思われるピーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル濾過クロマトグラフの面積法による測定で、3量体成分と4量体成分の合計含有量が35%以上であることを特徴とするフェノールアラルキル樹脂。
【請求項2】
メチレン基のオルソ/パラ結合比が0.46以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェノールアラルキル樹脂。
【請求項3】
ゲル濾過クロマトグラフの面積法による測定で、2量体成分の含有量が35%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のフェノールアラルキル樹脂。
【請求項4】
ゲル濾過クロマトグラフ測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との分散比(Mw/Mn)が1.7以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェノールアラルキル樹脂。
【請求項5】
フェノール類と、フェノール類1モルに対して0.5〜0.85モルの下記一般式(1)で示されるアラルキル化合物とを、りん酸類の存在下で不均一系反応させる工程を有することを特徴とするフェノールアラルキル樹脂の製造方法。
【化1】

(式中、R、R’は、Hまたは炭素数が1〜6のアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良く、同一であっても良い。)
【請求項6】
前記アラルキル化合物がα,α’−ジメトキシ−p−キシレンであることを特徴とする請求項5に記載のフェノールアラルキル樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記工程において、反応補助溶媒として非反応性含酸素有機溶媒を存在させることを特徴とする請求項5または6に記載のフェノールアラルキル樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記反応補助溶媒が、アルコール類、多価アルコール系エーテル、環状エーテル類、多価アルコール系エステル、ケトン類、スルホキシド類からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項7に記載のフェノールアラルキル樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−56970(P2006−56970A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239321(P2004−239321)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】