説明

フェノール性水酸基およびメチロール基を有する新規なフルオレン化合物およびその製造方法

【課題】耐熱性や耐エッチング性において優れたフルオレン化合物を提供する。
【解決手段】フェノール性水酸基を有するフルオレン類と、フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、ビスヒドロキシフェニルインデン類化合物を得る。


(式中、環Z、環Zおよび環Zは芳香族炭化水素環、R1a、R1b、R2a、R2bおよびR2cは同一又は異なって置換基を示し、k1、k2、m1、m2、m3、n1、n2、n3は整数示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール性水酸基およびメチロール基を有する新規なフルオレン化合物、その製造方法および前記フルオレン化合物が硬化した硬化物に関する。また、本発明は、耐エッチング性などにおいて優れたフルオレン化合物、その樹脂組成物(例えば、感光性樹脂組成物)および前記感光性樹脂組成物で形成されたパターンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にノボラック型フェノール樹脂は、成形品、積層品、シェルモールド、摩擦材、砥石、感光剤、感熱紙、感圧紙、半導体封止材用エポキシ樹脂の硬化剤などに使用されている。そして、近年のIT分野の急速な発展に伴い、高い耐熱性を有するノボラック型フェノール樹脂が渇望されている。
【0003】
ノボラック型フェノール樹脂の耐熱性を向上させるため、ノボラック型フェノール樹脂に、フルオレン骨格などの剛直な骨格を導入することが知られている。例えば、特開2003−226727号公報(特許文献1)には、フェノール類(A)(フェノール、ナフトール類、ビスフェノールフルオレン型フェノール、クレゾールなどのアルキルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコールなどの多価フェノール類、フェニルフェノール、アミノフェノールなど)及びフェノール類を除く芳香族類(B)を反応して得られる多芳香族類と、ヘテロ原子として窒素を含む複素環式化合物(C)とが、アルデヒド類(D)を介して縮合したフェノール系縮合体を含み、該芳香族類(B)が、下記式で表される化合物である難燃性フェノール系樹脂材料が開示されている。
【0004】
XCH−R−CH
(式中、Rはビフェニル誘導体、フェニレン誘導体、ナフタレン誘導体、ビフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、ビスフェノールフルオレン誘導体のいずれかを表し、Xはハロゲン原子、水酸基、炭素数10以下のアルコキシル基のいずれかを表す。)
この文献には、前記フェノール系樹脂材料を得る代表的な製造方法において、まず、フェノール類(A)と芳香族類(B)を、酸触媒の存在下で縮合反応させて縮合体を得ること、縮合反応を行う場合、フェノール類(A)の使用量は、芳香族類(B)で表される化合物1モルに対して、通常0.3〜20モル、好ましくは0.4〜15モルであることが記載されている。
【0005】
特に、フルオレン骨格を導入した例として、特開2004−339499号公報(特許文献2)には、フルオレン骨格を有する樹脂と、添加剤とを含有する組成物が開示されている。この文献には、フルオレン骨格を有する樹脂として、フェノール系樹脂が記載されており、フェノール系樹脂の製造において、ビスフェノールフルオレン類と共に、共縮合成分、例えば、フェノール類(フェノール、クレゾールなどのC1−4アルキル−フェノール、レゾルシンなどのジヒドロキシベンゼンなど)、尿素、グアナミン類、メラミン類などを併用してもよいこと、ビスフェノールフルオレン類と共縮合成分との割合は、前者/後者(モル比)=100/0〜5/95、好ましくは100/0〜10/90、さらに好ましくは100/0〜20/80程度であってもよいことが記載されている。
【0006】
これらの文献の記載のフェノール樹脂では、フルオレン骨格が導入されているものの、耐熱性やプラズマ耐性などの特性において未だ十分ではないため、これらの特性のさらなる向上が望まれている。また、前記のようなフルオレン骨格を有するビスフェノール類を慣用の方法を用いて縮合させると、得られるノボラック型フェノール樹脂の分子量を十分に大きくすることができない(例えば、重量平均分子量でせいぜい1000程度)ためか、フルオレン骨格を導入できても、分子量が小さく、実用的ではなかった。
【特許文献1】特開2003−226727号公報(特許請求の範囲、段落番号[0022]、段落番号[0045])
【特許文献2】特開2004−339499号公報(特許請求の範囲、段落番号[0068]〜[0071])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、耐熱性やプラズマ耐性又は耐エッチング性に優れた新規なフルオレン化合物、この化合物が硬化した硬化物、前記化合物を含む樹脂組成物(感光性樹脂組成物など)、および前記感光性樹脂組成物で形成されたパターンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フェノール性水酸基を有するフルオレン類と、フェノール類と、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド類)とを反応させると、フェノール性水酸基およびメチロール基とを有する新規なフルオレン化合物が得られること、このような新規なフルオレン化合物(又はその硬化物)は、耐熱性や耐エッチング性に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の化合物(フルオレン化合物)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、環Z、環Zおよび環Zは芳香族炭化水素環、R1a、R1b、R2a、R2bおよびR2cは同一又は異なって置換基を示し、R3a、R3b、R3cおよびR3dは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示し、k1およびk2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示し、m1、m2およびm3はそれぞれ0又は1以上の整数を示し、n1、n2およびn3はそれぞれ0又は1以上の整数を示し、p1は1以上の整数を示し、p2およびp3は0又は1以上の整数を示す。)
前記式(1)において、環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環又はナフタレン環であり、R2a、R2bおよびR2cが炭化水素基であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1又は2であってもよい。また、前記式(1)において、p1およびp3がそれぞれ1又は2であり、p2が0又は1であってもよい。
【0012】
代表的には、前記式(1)において、下記(i)又は(ii)を充足してもよい。
【0013】
(i)前記式(1)において、環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環であり、R2a、R2bおよびR2cがアルキル基又はアリール基であり、R3a、R3b、R3cおよびR3dが水素原子であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1であり、p1が1であり、p2が0であり、p3が0又は1である。
【0014】
(ii)式(1)において、環Zおよび環Zがナフタレン環であり、環Zがベンゼン環であり、R3a、R3b、R3cおよびR3dが水素原子であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1であり、p1が1であり、p2が0であり、p3が0又は1である。
【0015】
本発明には、下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、および下記式(C)で表される化合物を反応させ、前記化合物を製造する方法も含まれる。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、Z、Z、Z、R1a、R1b、R2a、R2b、R2c、k1、k2、m1、m2、m3、n1、n2、およびn3は前記と同じ。)
前記方法では、通常、酸触媒の存在下で反応させてもよい。
【0018】
本発明には、前記化合物が硬化した硬化物も含まれる。
【0019】
さらに、本発明には、少なくとも前記化合物を含む樹脂組成物も含まれる。このような樹脂組成物は、前記化合物および感光剤を含む感光性樹脂組成物であってもよい。代表的な感光性樹脂組成物には、前記化合物と、酸の作用により硬化可能な熱硬化性樹脂と、光酸発生剤とで構成されたネガ型感光性樹脂組成物などが含まれる。さらに、本発明には、前記樹脂組成物(感光性樹脂組成物)で形成されたパターンも含まれる。このようなパターンは、例えば、前記感光性樹脂組成物を基板に塗布して感光層を形成し、この感光層を露光した後、加熱処理し、さらに現像して形成してもよい。
【0020】
なお、本明細書において、化合物名などの「類」とは、「置換基を有さない」場合と「置換基を有する」場合とを含み、「置換基を有していてもよい」ことを意味する場合がある。また、本明細書において、「メチロール体」とは、メチロール基(又はヒドロキシメチル基)の置換体(メチロール基を置換基として有する置換体)を意味し、「メチロール基」とは、メチロール基(又はヒドロキシメチル基)のみならず、アルキル基などで置換された置換メチロール基(例えば、1−ヒドロキシエチル基などのアルキル置換メチロール基など)を含む意味に用いる場合がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の新規なフルオレン化合物は、フェノール性水酸基およびメチロール基を有しており、耐熱性やプラズマ耐性又は耐エッチング性に優れている。そのため、前記フルオレン化合物およびその樹脂組成物(例えば、感光性樹脂組成物)は、レジストのハードマスクなどに好適に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[フルオレン化合物]
本発明の化合物(フルオレン化合物などということがある)は、下記式(1)で表される。
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、環Z、環Zおよび環Zは芳香族炭化水素環、R1a、R1b、R2a、R2bおよびR2cは同一又は異なって置換基を示し、R3a、R3b、R3cおよびR3dは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示し、k1およびk2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示し、m1、m2およびm3はそれぞれ0又は1以上の整数を示し、n1、n2およびn3はそれぞれ0又は1以上の整数を示し、p1は1以上の整数を示し、p2およびp3は0又は1以上の整数を示す。)
上記式(1)において、環Z、環Zおよび環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式炭化水素環に対応する縮合多環式炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合2乃至4環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式炭化水素としては、縮合多環式芳香族炭化水素(ナフタレン、アントラセンなど)が挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、環Z、環Zおよび環Zはそれぞれ同一の又は異なる環であってもよい。通常、環Zおよび環Zは同一の環であってもよい。
【0025】
好ましい環Z、環Zおよび環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれ、特にナフタレン環が好ましい。環Z、環Zおよび環Zの代表的な組み合わせとしては、(1)環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環である組み合わせ、(2)環Zおよび環Zがナフタレン環であり、環Zがベンゼン環である組み合わせなどが含まれる。
【0026】
基R1aおよびR1bで表される置換基としては、特に限定されず、シアノ基、炭化水素基(例えば、アルキル基など)などであってもよく、通常、アルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。基R1aおよびR1bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、k1(又はk2)が2以上である場合、基R1a(又はR1b)は、同一のベンゼン環において、それぞれ、異なっていてもよく、同一であってもよい。なお、フルオレン骨格を構成するベンゼン環に対する基R1a(又はR1b)の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数k1およびk2は、0又は1、特に0である。なお、置換数k1及びk2は、異なっていてもよいが、通常、同一である。
【0027】
ヒドロキシル基の置換数n1、n2およびn3は、それぞれ1以上であればよく、例えば、それぞれ1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。特に、環Zおよび環Zがベンゼン環である場合、n1およびn2は、それぞれ、1〜2、特に1であってもよい。なお、ヒドロキシル基の置換数n1、n2およびn3は、それぞれの環Z、環Zおよび環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。通常、環Zおよび環Zにおいて、同一である場合が多い。
【0028】
なお、ヒドロキシル基の置換位置は、特に限定されず、環Z、環Zおよび環Zの適当な置換位置に置換していればよい。特に、環Zおよび環Zがベンゼン環である場合、ヒドロキシル基は、ベンゼン環がフルオレンに結合した位置に対して3位(又はメタ位)又は4位(又はパラ位)、特に4位(パラ位)に少なくとも置換している場合が多い。
【0029】
環Z、環Z及び環Z(以下、これらをまとめて環Zということがある)に置換する置換基R2a、R2bおよびR2cとしては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−4アルコキシ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0030】
好ましい置換基R2a、R2bおよびR2cは、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)などの炭化水素基であり、特に、C1−4アルキル基(特にメチル基)、C1−4アルコキシ基、C6−8アリール基が好ましい。m1又はm2又はm3が2以上の場合、置換基R2aおよびR2bおよびR2cは、同一の環(環Z又は環Z又は環Z)において、単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい。また、異なる環Zおよび環Zおよび環Zに置換する置換基R2aおよびR2bおよびR2cは互いに同一又は異なっていてもよい。通常、置換基R2aおよびR2bは同一であってもよい。
【0031】
置換数m1、m2およびm3は、それぞれ、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、特に限定されず、例えば、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4程度であってもよい。特に、環Z、環Zおよび環Zが、ベンゼン環である場合には、置換数m1、m2およびm3は、ヒドロキシル基の置換数n1、n2およびn3にもよるが、それぞれ、0〜3、好ましくは1〜2、特に1である。なお、置換数m1、m2およびm3は、それぞれの環Z、環Zおよび環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。通常、m1およびm2は、同一である場合が多い。
【0032】
なお、置換基R2a、R2bおよびR2cの置換位置は、特に限定されず、ヒドロキシル基の置換位置に応じて、適当な置換位置に置換していてもよいが、通常、ヒドロキシル基(すなわち、フェノール性水酸基、フェノール性ヒドロキシル基)に対してオルト位およびパラ位に位置する3つの炭素原子(すなわち、メチロールを置換しやすい炭素原子)のうち、少なくとも1つが無置換(すなわち、置換基が水素原子)である。
【0033】
そして、特に、オルト位およびパラ位に位置する3つの炭素原子が、無置換の炭素原子とアルデヒド類(ホルムアルデヒドなど)が置換不可能な炭素原子(例えば、置換基(R2a又はR2b又はR2c)などにより置換された炭素原子、フルオレンの9位と結合した炭素原子など)とで構成されていてもよい。代表的には、前記式(1)において、n1およびn2がそれぞれ1以上(例えば、1)であり、環Zおよび環Zのそれぞれにおいて、ヒドロキシル基に対してオルト位およびパラ位に位置する3つの炭素原子が、無置換の炭素原子とR2aおよびR2bにより置換された炭素原子とで構成されていてもよい。例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のうち、ヒドロキシル基を4位に有する場合には、3位に置換基を有し、かつ5位が無置換であるフルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−アルキルフェニル)フルオレンなど]が好ましい。
【0034】
このような構成のフルオレン類を使用すると、メチロールによる架橋を効率よく抑制できるようである。
【0035】
また、基R3a、R3b、R3cおよびR3dで表される炭化水素基としては、前記基R2a、R2bおよびR2cの項で例示の炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基など)など]が挙げられる。基R3a、R3b、R3cおよびR3dは、通常、水素原子又はアルキル基(メチル基など)であってもよく、好ましくは水素原子であってもよい。また、環Zに置換するメチロール基[すなわち、式(1)において、基−(CHR3aOH)]の置換数p1は、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、p1は、1〜2、特に1であってもよい。また、環Zに置換するメチロール基[すなわち、式(1)において、基−(CHR3bOH)]の置換数p2は、0以上であればよく、例えば、0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、特に0であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、p2は、0〜1、特に0であってもよい。さらに、環Zに置換するメチロール基[すなわち、式(1)において、基−(CHR3dOH)]の置換数p3は、0又は1以上の整数であればよく、例えば、0〜4、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2(例えば、0〜1)、特に1であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、p3は、0〜2、特に1であってもよい。
【0036】
なお、置換数p1、p2およびp3は、それぞれの環Z、環Zおよび環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。また、前記メチロール基は、同様に、ヒドロキシル基や置換基R2a(又はR2b又はR2c)の置換数及びその置換位置に応じて、置換しており、例えば、環Zおよび環Zがベンゼン環であり、ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)がフェニル基の4位(詳細には、フルオレンの9位に置換したベンゼン環の4位)に置換している場合、2位(フェノール性水酸基のオルト位)及び/又は3位(フェノール性水酸基のメタ位)、2位及び/又は3位と5位及び/又は6位とを組み合わせた置換位置などに置換していてもよく、好ましくは少なくとも3位に置換していてもよい。
【0037】
前記式(1)において、代表的には、環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環又はナフタレン環であり、R2a、R2bおよびR2cが炭化水素基(アルキル基、アリール基など)であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1又は2であってもよい。また、前記式(1)において、代表的には、p1およびp3は、それぞれ1又は2であってもよく、p2は0又は1であってもよい。
【0038】
前記式(1)で表される好ましい化合物には、以下の化合物(i)又は化合物(ii)などが含まれる。
【0039】
(i)前記式(1)において、環Zおよび環Zがベンゼン環、環Zがベンゼン環又はナフタレン環(特に、環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環)であり、R2a、R2bおよびR2cが炭化水素基[例えば、アルキル基(特に、メチル基などのC1−4アルキル基)又はアリール基(特に、フェニル基などのC6−10アリール基)]であり、R3a、R3b、R3cおよびR3dが水素原子であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2(特に0又は1)であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1又は2(特に1)であり、p1が1であり、p2が0であり、p3が0又は1(特に、1)である化合物。
【0040】
(ii)前記式(1)において、環Zおよび環Zがナフタレン環であり、環Zがベンゼン環又はナフタレン環(特に、ベンゼン環)であり、R3a、R3b、R3cおよびR3dが水素原子であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2(特に0)であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1又は2(特に1)であり、p1が1であり、p2が0であり、p3が0又は1(特に1)である化合物。
【0041】
なお、これらの化合物(i)および(ii)において、k1およびk2は0又は1であるのが好ましく、特に0であるのが好ましい。
【0042】
これらの化合物のうち、m1およびm2が1又は2である化合物(i)や、化合物(ii)(すなわち、式(1)において環Zおよび環Zがナフタレン環である化合物)は、耐エッチング性において特に優れている。
【0043】
[フルオレン化合物の製造方法]
前記式(1)で表される化合物は、特に限定されないが、通常、下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、および下記式(C)で表される化合物を反応させることにより製造できる。なお、これらの化合物(A)、(B)および(C)の使用割合や反応条件などを適宜選択することにより、前記式(1)で表される化合物を効率よく得ることができる。
【0044】
【化4】

【0045】
(式中、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、Z、Z、Z、R1a、R1b、R2a、R2b、R2c、k1、k2、m1、m2、m3、n1、n2、およびn3は前記と同じ。)
(式(A)で表される化合物)
前記式(A)で表される代表的な化合物(フェノール性水酸基を有するフルオレン類)には、例えば、(1)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、(2)9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0046】
(1)9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類には、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4,5−トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレンなど]が含まれ、通常、9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類又は9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類、特に9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類を好適に使用できる。
【0047】
9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスフェノールフルオレン)など]、置換基を有する9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(シクロアルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C5−8シクロアルキル−モノヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アラルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリールC1−2アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]など}などが挙げられる。
【0048】
9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、上記9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレン)、9,9−ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジC1−4アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリール−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]など}などが例示できる。
【0049】
なお、ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類は、種々の合成方法、例えば、(a)塩化水素ガス及びメルカプトカルボン酸の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(文献[J. Appl. Polym. Sci., 27(9), 3289, 1982]、特開平6−145087号公報、特開平8−217713号公報)、(b)酸触媒(及びアルキルメルカプタン)の存在下、9−フルオレノンとアルキルフェノール類とを反応させる方法(特開2000−26349号公報)、(c)塩酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(特開2002−47227号公報)、(d)硫酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒で晶析させてビスフェノールフルオレンを製造する方法(特開2003−221352号公報)などを利用して製造できる。
【0050】
また、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類は、上記9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類の代わりに、対応する多価アルコール類(ジヒドロキシフェノール類、トリヒドロキシフェノール類)を使用することにより製造できる。これらの方法のうち、特に、塩酸を使用する方法(c)、又は特定の晶析溶媒を使用する方法(d)を応用すると、より高収率でかつ高純度で生成物が得られる場合が多い。
【0051】
(2)9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類
9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシナフチル)]フルオレン(又は6,6−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−ナフトール))、9,9−ビス[1−(6−ヒドロキシナフチル)]フルオレン(又は5,5−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−ナフトール))、9,9−ビス[1−(5−ヒドロキシナフチル)]フルオレン(又は5,5−(9-フルオレニリデン)−ジ(1−ナフトール))など]などの置換基を有していてもよい9,9−ビス(モノヒドロキシナフチル)フルオレン}、これらの9,9−ビス(モノヒドロキシナフチル)フルオレン類に対応する9,9−ビス(ポリヒドロキシナフチル)フルオレン類(例えば、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシナフチル)フルオレン類)などが挙げられる。
【0052】
なお、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類は、前記9,9−ビス(モノヒドロキシフェニル)フルオレン類の製造方法において、フェノール類の代わりに、ヒドロキシナフタレン類(例えば、ナフトール(1−ナフトール、2−ナフトール)などのナフトール類、ジヒドロキシナフタレンなどのポリヒドロキシナフタレン類)を使用することにより製造できる。
【0053】
これらのフェノール性水酸基を有するフルオレン類は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0054】
好ましいフェノール性水酸基を有するフルオレン類には、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−置換フェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロアルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−アリールフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどが含まれ、特に、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−アルキルフェニル)フルオレン[特に、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン)などの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−C1−4アルキルフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンが好ましい。
【0055】
特に、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの環Zおよび環Zに炭化水素基を有するフルオレンは、環Zおよび環Zに無置換のフルオレン骨格を有するフルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン]を使用する場合に比べて、耐熱性や耐エッチング性を向上する点で有利である。また、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどの環Zおよび環Zがナフタレン環などの縮合芳香族炭化水素環であるフルオレン類は、耐熱性の向上や耐エッチング性の向上においてより一層有利であることに加えて、さらに熱膨張性の低減を実現でき、寸法精度の向上に有利である。
【0056】
(式(B)で表される化合物)
前記式(B)で表される化合物(すなわち、フェノール類)としては、前記式(A)で表される化合物(すなわち、フェノール性水酸基を有するフルオレン)以外のフェノール類(又はフルオレン骨格を有しないフェノール類)が挙げられる。なお、式(B)で表される化合物(フェノール類)は、市販品を用いてもよく、当該分野で知られている公知の方法により調製することもできる。
【0057】
代表的な式(B)で表される化合物(フェノール類)には、例えば、モノフェノール類{例えば、フェノール、アルキルフェノール[クレゾール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール)、エチルフェノール(2−エチルフェノールなど)、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのモノC1−20アルキルフェノール(例えば、モノC1−10アルキルフェノールなど);キシレノール(2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノールなど)などのジC1−10アルキルフェノールなど]、シクロアルキルフェノール(2−シクロヘキシルフェノールなど)、アリールフェノール(o−フェニルフェノールなど)、アルコキシフェノール(o−メトキシフェノールなどのアニソール類など)、アミノフェノールなどの置換基を有するフェノール;ナフトール類[例えば、ナフトール(α−ナフトール、β−ナフトールなど)、アルキルナフトール(メチルナフトール、エチルナフトール、ジメチルナフトール、プロピルナフトールなどのC1−4アルキルナフトールなど)など]など}、複数のフェノール性水酸基を有するフェノール類[例えば、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン)、アルキル−ジヒドロキシベンゼン(ジヒドロキシトルエン、ジヒドロキシキシレンなどのモノ又はジC1−6アルキル−ジヒドロキシベンゼンなど)、アリール−ジヒドロキシベンゼン(2,3−ジヒドロキシビフェニル、3,4−ジヒドロキシビフェニルなどのC6−8アリール−ジヒドロキシベンゼンなど)、アルコキシ−ジヒドロキシベンゼン(3−メトキシカテコールなどのモノ又はジC1−6アルコキシ−ジヒドロキシベンゼンなど)、トリヒドロキシベンゼン類(ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノールなど)などの多価フェノール類;ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)など]などが挙げられる。
【0058】
これらのフェノール類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0059】
これらのフェノール類の中でも、フェノール、アルキルフェノールなどのモノフェノール類が好ましく、特にクレゾールなどの置換フェノール類が好ましい。
【0060】
反応において、式(B)で表される化合物(フェノール類)の割合は、式(A)で表される化合物(フェノール性水酸基を有するフルオレン類)1重量部に対して、0.01〜30重量部(例えば、0.05〜20重量部)の範囲から選択でき、例えば、0.05〜15重量部(例えば、0.1〜10重量部)、好ましくは0.15〜5重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部(例えば、0.25〜2重量部)程度であり、通常0.1〜1.5重量部(例えば、0.2〜1重量部)程度であってもよい。
【0061】
(式(C)で表される化合物)
前記式(C)で表される化合物(すなわち、アルデヒド類)としては、特に制限されず、アルカナール(例えば、アセトアルデヒドなど)、芳香族アルデヒドなどを使用してもよいが、通常、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド類(又はホルムアルデヒド源)を好適に使用できる。アルデヒド類は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、アルデヒド類は、溶液(例えば、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリンなど))として使用してもよい。また、アルデヒド類は、当該分野で知られている公知の方法により調製することもできる。
【0062】
反応において、前記式(C)で表される化合物の割合は、前記式(A)で表される化合物および前記式(B)で表される化合物の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度であってもよく、通常1〜50重量部であってもよい。
【0063】
なお、反応は、通常、酸触媒の存在下(酸性条件下)で行うことができる。酸触媒としては、特に限定されず、無機酸[例えば、プロトン酸(硫酸、塩化水素(又は塩酸)、リン酸など)、ルイス酸(三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛など)など]、有機酸{例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)、脂肪族カルボン酸[例えば、アルカン酸(例えば、酢酸、シュウ酸などのアルカンモノ又はジカルボン酸)など]などのカルボン酸}などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0064】
酸触媒の使用量は、例えば、前記式(A)で表される化合物および前記式(B)で表される化合物の総量1重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜8重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部程度であってもよい。
【0065】
反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、特に限定されず、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルキルアルコール、シクロヘキサノールなど)、ケトン類(アセトン、ジイソプロピルケトンなどのアルキルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテルなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類(メチルセロソルブアセテートなど)、エステル類(酢酸エチルなど)、ニトリル類、セロソルブ類、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類、炭化水素類[脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタンなど)、脂環族炭化水素(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)など]などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0066】
溶媒の使用量は、特に限定されず、前記式(A)で表される化合物、前記式(B)で表される化合物および前記式(C)で表される化合物の総量1重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度であってもよい。
【0067】
反応において、反応温度は、例えば、0〜250℃、好ましくは40〜200℃、さらに好ましくは70〜180℃(例えば、80〜150℃)程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜72時間、好ましくは1〜48時間程度であってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下でおこなってもよい。
【0068】
上記のような反応により前記式(1)で表される化合物が得られる。
【0069】
なお、反応終了後の反応混合物には、前記化合物以外に、溶媒、触媒(酸触媒など)、未反応成分などが含まれている。そのため、前記フェノール樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により縮合反応後の反応物から分離精製してもよい。
【0070】
また、反応後の反応混合物には、前記式(1)で表される化合物に加えて、副生成物(前記式(A)で表される化合物と前記式(B)で表される化合物とがモル比1/1ではない化合物など)が含まれている場合がある。このような副生成物の割合は、反応混合物(又は精製物)全体に対して、30モル%以下、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であってもよい。
【0071】
[フルオレン化合物の用途]
本発明のフルオレン化合物(式(1)で表される化合物)は、種々の用途に使用でき、通常、熱硬化性樹脂(又は熱硬化性化合物)として利用することができる。すなわち、本発明のフルオレン化合物は、自己架橋性を有しており、単独で硬化可能である。そして、このようなフルオレン化合物の硬化物は、耐熱性やプラズマ耐性(又は耐ドライエッチング性)に優れている。そのため、本発明には、前記フルオレン化合物の硬化物(前記フルオレン化合物が硬化した硬化物)も含まれる。
【0072】
(フルオレン化合物の硬化物)
前記フルオレン化合物の硬化物は、樹脂成分として、前記フルオレン化合物が単独で硬化(又は架橋)した硬化物(架橋物、自己架橋物)であればよい。このような硬化物は、前記フルオレン化合物を加熱することにより得ることができる。このような硬化物は、慣用の成形方法(圧縮成形法、トランスファー成形法など)を利用して成形でき、例えば、前記フルオレン化合物を含む塗膜を加熱することにより得られる硬化膜(硬化塗膜)の形態であってもよい。前記塗膜は、例えば、前記フルオレン化合物および溶媒を含むコーティング液(塗布液)を基板に塗布することにより形成してもよい。
【0073】
溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、エーテル類(テトラヒドロフランなど)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類(メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなど)、エステル類(2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
前記コーティング液において、溶媒の割合は、例えば、前記フルオレン化合物1重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよい。
【0075】
なお、前記コーティング液(又は硬化物)は、樹脂成分として前記フルオレン化合物のみを含んでいればよく、添加剤などを含んでいてもよい。添加剤としては、用途に応じて、例えば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、充填剤(又は補強剤)、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、滑剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0076】
前記基板としては、特に限定されず、金属、セラミック、ガラス、プラスチックなどで形成された基板であってもよく、半導体基板(シリコンウェハーなど)であってもよい。
【0077】
なお、塗布後の塗膜には、必要に応じて乾燥処理を施してもよい。乾燥は、自然乾燥であってもよく、塗膜の加熱(例えば、加熱温度40〜120℃、好ましくは60〜110℃程度)などにより行ってもよい。
【0078】
前記フルオレン化合物(又は塗膜)の加熱において、加熱温度(又はポストベーク温度)としては、例えば、120〜300℃、好ましくは140〜250℃、さらに好ましくは160〜220℃程度であってもよい。また、加熱時間は、硬化物の形態又は形状によるが、例えば、30秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間、さらに好ましくは2分〜3時間程度であってもよい。
【0079】
このような硬化物(又は硬化塗膜)は、耐熱性や耐ドライエッチング性において優れている。なお、硬化膜の平均厚みは、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.01〜1000μm、好ましくは0.05〜500μm、さらに好ましくは0.1〜100μm程度であってもよい。
【0080】
(フルオレン化合物を含む樹脂組成物)
本発明のフルオレン化合物は、樹脂組成物(特に熱硬化性樹脂組成物)を構成することもできる。このような樹脂組成物は、前記フルオレン化合物を少なくとも含んでいればよく、通常、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。また、後述するように、感光性樹脂組成物であってもよい。特に、本発明のフルオレン化合物を熱硬化性樹脂又は硬化剤とする熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性や耐エッチング性に優れた硬化物(特に硬化膜)を得るのに有用である。
【0081】
(熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物)
熱硬化性樹脂組成物は、前記フルオレン化合物を熱硬化性樹脂成分とする場合、硬化剤成分とする場合などに応じて適宜選択でき、例えば、(i)前記フルオレン化合物と硬化剤(又は硬化促進剤)とで構成された熱硬化性樹脂組成物、(ii)前記フルオレン化合物と硬化性樹脂(又は硬化性化合物)とで構成された熱硬化性樹脂組成物などが含まれる。なお、前記フルオレン化合物は、前記のように、単独(硬化剤の非存在下)でも硬化可能である。
【0082】
熱硬化性樹脂組成物(i)において、硬化剤(硬化促進剤又は硬化助剤を含む)としては、例えば、アミン類{例えば、鎖状脂肪族アミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの鎖状脂肪族ポリアミン)、環状脂肪族アミン[メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロへキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン、ノルボルナンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどの縮合環式又は架橋環式ポリアミンなど]、芳香族又は芳香脂肪族アミン(キシリレンジアミンメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など}、ホスフィン類[例えば、エチルホスフィン、プロピレンホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリアルキルホスフィンなどの有機ホスフィン類(第1、第2、および第3ホスフィン類)など]、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミドなど)、エポキシ化合物[例えば、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、ポリオールポリグリシジルエーテル(ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルなど)、ジグリシジルアニリン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどのポリグリシジルエーテル類、エポキシ樹脂(エピ・ビス型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリコール型エポキシ樹脂など)など]、プトロン酸(例えば、硫酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸など)、酸無水物(無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸など)などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0083】
熱硬化性樹脂組成物(i)において、硬化剤(又は架橋剤)の割合は、前記フルオレン化合物100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよい。
【0084】
また、熱硬化性樹脂組成物(ii)において、硬化性樹脂(詳細には、前記フルオレン化合物以外の硬化性樹脂)としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂(ノボラックフェノール樹脂など)、フラン樹脂、尿素樹脂[又は尿素樹脂の前駆体、例えば、モノ又はジメチロール尿素又はその縮合物(部分縮合物)など]、メチロール基含有化合物{例えば、メラミン樹脂[又はメラミン樹脂の前駆体(メラミンのホルムアルデヒド付加物又は縮合物)、例えば、メチロールメラミン(モノ乃至トリメチロールメラミン)又はその縮合物(部分縮合物)など]など}、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(エピ・ビス型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂など)、ウレタン系樹脂(ポリイソシアネートの多量体など)、シリコーン樹脂、ポリイミド、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂(又は光硬化性樹脂)が挙げられる。
【0085】
また、硬化性樹脂には、複数の官能基(又は架橋性基)を有するフルオレン骨格含有化合物も含まれる。このようなフルオレン骨格を有する化合物としては、例えば、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物などが含まれる。フルオレン骨格を有するエポキシ化合物としては、下記式(3)で表される化合物などが挙げられる。
【0086】
【化5】

【0087】
(式中、R4aおよびR4bは同一又は異なってアルキレン基、q1およびq2は同一又は異なって0又は1以上の整数を示し、Z、Z、R1a、R1b、R2a、R2b、k1、k2、m1、m2、n1、n2は前記と同じ。)
前記式(3)において、R4aおよびR4bで表されるアルキレン基としては、限定されないが、例えば、C2−4アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)などが例示でき、特に、C2−3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。なお、R4aおよびR4bは互いに同一の又は異なるアルキレン基であってもよいが、通常、同一のアルキレン基である。また、q1およびq2は、特に限定されないが、同一又は異なって、0〜15程度の範囲から選択でき、例えば、0〜12(例えば、1〜12)、好ましくは0〜8、さらに好ましくは0〜6、特に0〜4程度であってもよい。なお、q1(又はq2)が2以上の場合、ポリアルキレンオキシ基は、同一又は異種のアルコキシ基(例えば、エトキシ基とプロピレンオキシ基)が混在して構成されていてもよい。
【0088】
代表的なフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂)としては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリールグリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(6−グリシジルオキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−グリシジルオキシナフチル)]フルオレンなど]などの9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類}、9,9−ビス(ポリグリシジルオキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリグリシジルオキシアリール)フルオレン}、これらの化合物に対応し、前記式(3)においてq1およびq2が1以上である化合物{例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキルグリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリールグリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリールグリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]、9,9−ビス[ジ又はトリ(グリシジルオキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリ(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ又はトリ(グリシジルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン]などの前記式(3)においてq1およびq2が1である化合物;これらの化合物に対応し、前記式(3)においてq1およびq2が2以上である化合物[例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{[2−(2−グリシジルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシ]フェニル}フルオレンなど]など}などが挙げられる。これらのフルオレン骨格を有するエポキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0089】
これらのフルオレン骨格を有するエポキシ化合物のうち、特に、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレンなど]、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン類のC2−4アルキレンオキシド付加体[例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]などが好ましい。
【0090】
これらの硬化性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
なお、熱硬化性樹脂組成物(ii)において、前記フルオレン化合物は、前記硬化性樹脂に対して非反応性であってもよく、反応性であってもよい。例えば、前記フルオレン化合物および硬化性樹脂のうち、一方の成分が他方の成分の硬化剤として作用してもよく(又は一方の成分と他方の成分とが反応により結合可能であってもよく)、一方の成分と他方の成分とは互いに非反応性であってもよい。
【0092】
好ましい硬化性樹脂には、フルオレン化合物の硬化剤として作用する樹脂、例えば、エポキシ樹脂が含まれる。特に、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物は、前記フルオレン化合物の硬化剤として作用して互いに強固に結合し、フルオレン骨格を多く硬化物に導入できるためか、前記フルオレン化合物とフルオレン骨格を有するエポキシ化合物とで構成された熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性や耐エッチング性に極めて優れた硬化物を得るのに有用である。
【0093】
熱硬化性樹脂組成物(ii)において、硬化性樹脂の割合は、用途などにもよるが、前記フルオレン化合物100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは2〜500重量部、さらに好ましくは5〜300重量部(例えば、10〜200重量部)、特に30〜150重量部程度であってもよい。
【0094】
なお、熱硬化性樹脂組成物(ii)は、さらに、硬化剤(又は硬化促進剤)を含んでいてもよい。このような硬化剤は、前記フルオレン化合物又は前記熱硬化性樹脂に対する硬化剤であってもよく、前記フルオレン化合物および前記熱硬化性樹脂双方に対する硬化剤であってもよい。硬化剤としては、前記熱硬化性樹脂組成物(i)の項で例示の硬化剤(又は硬化促進剤又は硬化助剤、例えば、ホスフィン類など)などが挙げられる。硬化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0095】
代表的な硬化剤(又は硬化促進剤)には、アミン類、ホスフィン類などが挙げられる。
【0096】
熱硬化性樹脂組成物(ii)において、硬化剤の割合は、前記フルオレン化合物および前記熱硬化性樹脂の総量100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよく、通常0.1〜20重量部(例えば、0.1〜10重量部)程度であってもよい。
【0097】
好ましい熱硬化性樹脂組成物(ii)には、前記フルオレン化合物と、エポキシ樹脂(特に、前記フルオレン骨格を有するエポキシ化合物)などの前記フルオレン化合物に対する硬化剤又は架橋剤として作用しうる熱硬化性樹脂とで構成された熱硬化性樹脂組成物、この熱硬化性樹脂組成物にさらに硬化剤又は硬化促進剤(ホスフィン類など)を含む熱硬化性樹脂組成物などが含まれる。
【0098】
なお、熱硬化性樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物(i)および熱硬化性樹脂組成物(ii))は、後述するように、溶媒を含む組成物(コーティング組成物)であってもよい。
【0099】
また、熱硬化性樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物(i)および熱硬化性樹脂組成物(ii))は、添加剤などを含んでいてもよい。添加剤としては、前記例示の添加剤が挙げられる。添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0100】
前記熱硬化性樹脂組成物は、前記のように、耐熱性や耐エッチング性に優れた硬化物を得るのに有用である。このような硬化物は、前記熱硬化性樹脂組成物を加熱することにより得ることができる。このような硬化物は、慣用の成形方法(圧縮成形法、トランスファー成形法など)を利用して成形でき、例えば、前記熱硬化性樹脂組成物を含む塗膜を加熱することにより得られる硬化膜(硬化塗膜)の形態であってもよい。前記塗膜は、例えば、前記熱硬化性樹脂組成物および溶媒を含むコーティング液(塗布液)を基板に塗布することにより形成してもよい。溶媒や基板は、前記と同様のものが使用できる。
【0101】
前記コーティング液(又はコーティング組成物)において、溶媒の割合は、例えば、前記フェノール樹脂および熱硬化性樹脂の総量1重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよい。なお、塗布後の塗膜には、必要に応じて乾燥処理を施してもよい。乾燥は、自然乾燥であってもよく、塗膜の加熱(例えば、加熱温度40〜120℃、好ましくは60〜110℃程度)などにより行ってもよい。
【0102】
前記熱硬化性樹脂組成物(又は塗膜)の加熱において、加熱温度(又はポストベーク温度)としては、例えば、120〜300℃、好ましくは140〜250℃、さらに好ましくは160〜220℃程度であってもよい。また、加熱時間は、硬化物の形態又は形状によるが、例えば、30秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間、さらに好ましくは2分〜3時間程度であってもよい。このような硬化物(又は硬化塗膜)は、耐熱性や耐ドライエッチング性において優れている。なお、硬化膜の平均厚みは、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.01〜1000μm、好ましくは0.05〜500μm、さらに好ましくは0.1〜100μm程度であってもよい。
【0103】
(感光性樹脂組成物およびパターン)
前記樹脂組成物は、感光性樹脂組成物であってもよい。すなわち、本発明のフルオレン化合物は、好適に感光性樹脂組成物を構成する樹脂(特に、ベース樹脂)として用いることもできる。前記フルオレン化合物で構成された感光性樹脂組成物は、耐エッチング性(特に耐ドライエッチング性)の高いパターンを形成するのに極めて有用である。なお、感光性樹脂組成物は、組み合わせる感光剤や後述の他の樹脂を適宜選択することにより、ネガ型又はポジ型感光性樹脂組成物とすることができる。
【0104】
前記感光性樹脂組成物の樹脂成分は、少なくとも前記フルオレン化合物で構成すればよく、前記フルオレン化合物単独で構成されていてもよく、前記フルオレン化合物とそれ以外の樹脂(以下、「他の樹脂」などと称する場合がある。)とで構成されていてもよい。
【0105】
他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂{例えば、ヒドロキシル基含有ポリマー[ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ヒドロキシル基含有セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロースなど)、ポリビニルフェノール系樹脂、ノボラック樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)など]、カルボキシル基含有ポリマー[重合性不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸など)の単独又は共重合体、カルボキシル基含有セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース又はその塩など)など]、エステル基含有ポリマー[カルボン酸ビニルエステル(酢酸ビニルなど)、(メタ)アクリル酸エステル(メタクリル酸メチルなど)などの単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル系樹脂など)、ポリエステルなど]、エーテル基を有するポリマー(ポリビニルエーテル系樹脂など)、アミド基又は置換アミド基を有するポリマー(ポリビニルピロリドン、ポリウレタン系重合体、ポリ尿素、ポリアミド系重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド系重合体、ポリアミノ酸、タンパク質など)、ニトリル基を有するポリマー(アクリロニトリル系重合体など)、グリシジル基を有するポリマー(グリシジル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体など)、非芳香族性環基を有するポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのC5−8シクロアルキル基を有するモノマーのポリマー;(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルなどの架橋環式C7−20脂肪族炭化水素環基を有するモノマーのポリマーなど)など}、硬化性樹脂(熱又は光硬化性樹脂)[前記例示の硬化性樹脂(メラミン樹脂など)、光重合性オリゴマー又はポリマー((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、シンナモイル基などの重合性基を有するオリゴマーなど)など]などが例示できる。
【0106】
また、他の樹脂には、これらの樹脂(ヒドロキシル基含有ポリマー、カルボキシル基含有ポリマーなど)の親水性基(ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基など)が脱離可能な保護基(特に、酸の作用により脱離可能な保護基)で保護された樹脂なども含まれる。脱離可能な保護基[例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)など)など]で保護された親水性基を有する樹脂において、対応する親水性基を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルフェノール系樹脂[ビニルフェノール系単量体(ビニルフェノールなど)の単独又は共重合体(例えば、ポリビニルフェノールなど)、ビニルフェノール系単量体と共重合性単量体との共重合体など]、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基含有(メタ)アクリル系樹脂[例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体、又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと共重合性単量体との共重合体など]などが挙げられる。
【0107】
これらの他の樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0108】
なお、他の樹脂が熱可塑性樹脂である場合、他の樹脂の重量平均分子量は、例えば、800〜30000、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは1500〜7000程度であってもよい。また、他の樹脂が硬化性樹脂である場合、他の樹脂の重量平均分子量は、例えば、120〜3000、好ましくは130〜2000、さらに好ましくは150〜1000程度であってもよい。
【0109】
他の樹脂を使用する場合、他の樹脂の割合は、例えば、前記フルオレン化合物100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部程度であってもよい。
【0110】
感光性樹脂組成物は、前記フルオレン化合物(および必要に応じて他の樹脂)で構成でき、通常、前記フルオレン化合物(および必要に応じて他の樹脂)と感光剤とで構成されている。
【0111】
感光剤としては、ポジ型、ネガ型の種類などに応じて、慣用の感光剤又は光増感剤、例えば、ジアゾニウム塩類(ジアゾニウム塩、テトラゾニウム塩、ポリアゾニウム塩など)、キノンジアジド類(ジアゾベンゾキノン誘導体、ジアゾナフトキノン誘導体など)、光酸発生剤、溶解抑制剤などが選択できる。
【0112】
光酸発生剤としては、スルホニウム塩誘導体[スルホン酸エステル(1,2,3−トリ(メチルスルホニルオキシ)ベンゼンなどのアリールアルカンスルホネート(特にC6−10アリール−C1−2アルカンスルホネート);2,6−ジニトロベンジルトルエンスルホネート、ベンゾイントシレートなどのアリールベンゼンスルホネート(特にベンゾイル基を有していてもよいC6−10アリールトルエンスルホネート);2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルトルエンスルホネートなどのアラルキルベンゼンスルホネート類(特にベンゾイル基を有していてもよいC6−10アリール−C1−4アルキルトルエンスルホネート);ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類;ルイス酸塩(トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム メタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム ノナフルオロブタンスルホネートなどのトリアリールスルホニウム塩(特にトリフェニルスルホニウム塩)など)など]、ホスホニウム塩誘導体、ジアリールハロニウム塩誘導体[ジアリールヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、4,4’−ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、4,4’−ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム カンファスルホネート、ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニル フェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネートなど)などのルイス酸塩など]、ジアゾニウム塩誘導体(p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのルイス酸塩など)、ジアゾメタン誘導体、トリアジン誘導体[1−メトキシ−4−(3,5−ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ベンゼン、1,2−メチレンジオキシ−4−(3,5−ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(3,5−ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ナフタレンなどのハロアルキルトリアジニルアレーン、1−メトキシ−4−[2−(3,5−ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、1,2−ジメトキシ−4−[2−(3,5−ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、1−メトキシ−2−[2−(3,5−ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼンなどのハロアルキルトリアジニルアルケニルアレーンなど]、イミジルスルホネ−ト誘導体[スクシンイミジル カンファスルホネート、スクシンイミジル フェニルスルホネート、スクシンイミジル トルイルスルホネート、スクシンイミジル トリフルオロメチルスルホネート、フタルイミジル トリフルオロスルホネート、ナフタルイミジル カンファスルホネート、ナフタルイミジル メタンスルホネート、ナフタルイミジル トリフルオロメタンスルホネート、ナフタルイミジル トルイルスルホネート、ノルボルネンイミジル トリフルオロメタンスルホネートなど]などが例示できる。
【0113】
これらの感光剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0114】
感光剤の割合は、感光性樹脂組成物の樹脂成分(前記フェノール樹脂、又は前記フェノール樹脂及び他の樹脂の総量)100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。
【0115】
前記感光性樹脂組成物は、組み合わせる他の樹脂や感光剤の種類などに応じて、ポジ型感光性樹脂組成物であってもよく、ネガ型感光性樹脂組成物であってもよい。例えば、他の樹脂として、酸の作用により親水性基を生成可能な樹脂(例えば、酸の作用により脱離可能な保護基で保護された親水性基を有する樹脂)を使用することにより、前記フルオレン化合物と、酸の作用により親水性基を生成可能な樹脂と、光酸発生剤とでポジ型感光性樹脂組成物を構成することができる。また、感光剤として光酸発生剤を使用する(さらには、必要に応じて、他の樹脂として、酸により硬化可能な熱硬化性樹脂又は前記フルオレン化合物の硬化剤として作用する熱硬化性樹脂を使用する)ことにより、ネガ型感光性樹脂組成物を構成することができる。
【0116】
具体的な感光性樹脂組成物には、例えば、(1)前記フルオレン化合物と、酸の作用により架橋又は硬化可能な樹脂(メラミン樹脂など)と、光酸発生剤とで構成された感光性樹脂組成物(ポジ型又はネガ型感光性樹脂組成物、特にネガ型感光性樹脂組成物)、(2)前記フルオレン化合物と、酸の作用により親水性基を生成可能な樹脂(例えば、ヒドロキシル基が酸の作用により脱離可能な保護基(例えば、アルキル基など)により保護されたポリビニルフェノール系樹脂など)と、光酸発生剤とで構成された感光性樹脂組成物(ポジ型感光性樹脂組成物)などが含まれる。
【0117】
これらの感光性樹脂組成物のうち、特に、前記フルオレン化合物と、酸の作用により架橋又は硬化可能な樹脂(例えば、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂)と、光酸発生剤とで構成された感光性樹脂組成物が好ましい。
【0118】
なお、感光性樹脂組成物は、硬化剤又は硬化促進剤(例えば、前記例示の硬化剤など)を含んでいてもよい。また、感光性樹脂組成物は、前記例示の添加剤を含んでいてもよい。
【0119】
さらに、感光性樹脂組成物は、塗布性などの作業性を改善するため、溶媒を含む組成物(コーティング組成物)であってもよい。溶媒としては、前記例示の溶媒を使用できる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。溶媒の使用量は、特に制限されず、例えば、感光性樹脂組成物の固形分1重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
【0120】
前記感光性樹脂組成物は、高感度、高解像度であり、また、前記のように、耐熱性や耐エッチング性に優れたパターンを得るのに有用である。そのため、本発明には、前記感光性樹脂組成物で形成されたパターンも含まれる。このような前記感光性樹脂組成物で形成されたパターンは、前記感光性樹脂組成物で形成された感光層に、慣用のリソグラフィー技術を適用して形成できる。
【0121】
感光層は、前記感光性樹脂組成物を基板(又は基体)に適用(塗布又は被覆)することにより形成できる。基板としては、パターンの特性や用途に応じて、金属(アルミニウムなど)、ガラス、セラミックス(アルミナ、銅ドープアルミナ、タングステンシリケートなど)、プラスチックなどで形成された基板、シリコンウェハーなどの半導体基板などが挙げられる。
【0122】
基体(基板)は、用途に応じて、感光層との密着性を向上させるため、予め、表面処理してもよい。表面処理には、例えば、シランカップリング剤(重合性基を有する加水分解重合性シランカップリング剤など)などによる表面処理、アンカーコート剤又は下地剤(ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂など)、又はこれらの下地剤と無機微粒子との混合物によるコーティング処理などが含まれる。
【0123】
感光層は、レジスト層の少なくとも表面に形成してもよい。感光層の構造は、パターン形成プロセスや回路構造などに応じて選択でき、単層構造や多層構造(又は積層、複合構造)であってもよい。
【0124】
感光層の厚みは、特に制限されず、例えば、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.08〜2μm程度の範囲から選択でき、通常、0.09〜1μm(例えば、0.1〜0.7μm)程度であってもよい。
【0125】
前記感光層は、慣用のコーティング方法、例えば、スピンコーティング法、ディッピング法、キャスト法などにより行うことができる。なお、感光性樹脂組成物を基板に塗布した後、乾燥により溶媒を蒸発させてもよい。溶媒の除去は、例えば、ホットプレートなどの加熱手段を利用して、ソフトベーク(プリベーク)などにより行ってもよい。
【0126】
前記パターン(特に微細なパターン)は、露光、現像やエッチングなどを組み合わせた慣用のリソグラフィー技術を利用して行うことができる。例えば、前記感光性樹脂組成物を基板に塗布して感光層を形成し、この感光層を露光し、必要に応じて加熱処理し、さらに現像することによりパターンを形成できる。特に、光酸発生剤を含む感光性樹脂組成物では、露光により発生した酸を効率よく拡散させるため、露光後、加熱処理(露光後ベーク(ポストベーク又はポストエクスポージャーベーク,PEB)など)するのが好ましい。また、現像によりパターンニングした後、プラズマ処理(酸素プラズマなど)によりエッチング処理をしてもよい。
【0127】
感光層に対する露光は、慣用の方法、例えば、所定のマスクを介して光線をパターン照射又は露光することにより行うことができる。光線としては、感光性樹脂組成物の感光特性、パターンの微細度、アルカリ可溶性樹脂の種類などに応じて種々の光線(活性光線)、例えば、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、UVランプなどの光線;g線(436nm)、i線(365nm)、エキシマーレーザー(例えば、XeCl(308nm)、KrF(248nm)、KrCl(222nm)、ArF(193nm)、ArCl(172nm)、F(157nm)など),電子線(EB)、EUV(13nm)、X線などの放射線などが利用でき、単一波長であっても、複合波長であってもよい。特に、KrF(248nm)、ArF(193nm)、F(157nm)などのエキシマーレーザーが有利に利用できる。
【0128】
なお、露光エネルギーは感光性樹脂組成物の感光特性(溶解性など)などに応じて選択でき、露光時間は、通常、0.005秒〜10分、好ましくは0.01秒〜5分、さらに好ましくは0.1秒〜3分程度の範囲から選択できる。
【0129】
加熱(プリベーク及びPEB)の温度は、50〜150℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜130℃程度であってもよく、加熱時間は、30秒〜5分、好ましくは1〜2分程度である。
【0130】
パターン露光の後、慣用の方法で現像することにより解像度の高いパターンを形成できる。現像には、感光性樹脂組成物の種類に応じて種々の現像液(水、アルカリ水溶液など)が使用できる。好ましい現像液は水又はアルカリ現像液であり、必要であれば、少量の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類などの親水性又は水溶性溶媒)や界面活性剤などを含んでいてもよい。現像法も特に制限されず、例えば、パドル(メニスカス)法、ディップ法、スプレー法などが採用できる。
【0131】
なお、前記プリベーク及びPEBのみに限らず、感光性樹脂組成物の塗布から現像に至る工程のうち適当な工程で、塗膜(感光層)を適当な温度で加熱又は硬化処理してもよい。例えば、現像後などにおいて、必要により加熱処理してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明では、フェノール性水酸基を有するフルオレン類(前記式(A)で表される化合物)に[詳細には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンのアリール基に]メチロール基が置換した新規な化合物が得られる。このような化合物は、反応性が高く、しかも、フルオレン骨格を有しているため、樹脂原料などとして使用すると、効率よく優れた特性を有するフルオレン骨格を導入できる。すなわち、前記新規なフルオレン化合物は、フェノール性水酸基およびメチロール基を有しており、反応性にも優れているため、種々の用途に適用可能である。例えば、フルオレン骨格を有するビスフェノール類(例えば、前記式(A)で表される化合物など)および慣用のフェノール類を酸触媒の存在下で反応させて得られる従来のノボラック型フェノール樹脂は、比較的低分子量(例えば、重量平均分子量1000程度)であり、実用性が低かったのに対して、前記フルオレン化合物と慣用のフェノール類(フェノール、クレゾールなどのモノC1−20アルキルフェノール)とをフェノール成分として、酸触媒の存在下で重合(縮合)させて得られるフェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂)は、前記フルオレン化合物の高い反応に起因してか、高分子量である。そのため、フェノール樹脂中に多くのフルオレン骨格を導入することができるとともに、実用性が高い。
【0133】
また、本発明のフルオレン化合物(又は前記式(1)で表される化合物)は、フェノール樹脂の他、フェノール性水酸基を有する化合物及び/又はメチロール基を有する化合物を重合成分とする各種樹脂原料(例えば、エポキシ樹脂原料、アクリル樹脂原料(例えば、多官能性(メタ)アクリレートなどの光硬化性アクリル樹脂など)、ポリエステル樹脂原料などの樹脂原料)などに好適に利用できる。
【0134】
さらに、本発明の化合物は、自己架橋性(又は硬化性)を有しており、しかも、その硬化物(硬化塗膜)は、プラズマ耐性や耐エッチング性において優れている。さらに、本発明のフルオレン化合物は、感光性樹脂組成物を構成する樹脂成分としても有用であり、このような感光性樹脂組成物は、高感度および高解像度であり、しかも、耐エッチング性に優れている。
【0135】
このため、本発明のフルオレン化合物およびその樹脂組成物[又はその(予備)硬化物]は、樹脂原料(フェノール樹脂原料など)、硬化剤[例えば、エポキシ樹脂用硬化剤(半導体封止用エポキシ樹脂用硬化剤など)など]、接着剤、塗料(下塗塗料など)、ゴム配合剤、結合剤(砥石用、研磨紙用、摩擦材用などの結合剤)、積層材料(又は積層品、例えば、銅張積層板、積層管、積層棒など)、感熱材料(感熱紙用材料など)、カーボン材料、絶縁材料、発泡体、感圧材料(感圧紙用材料など)、シェルモールド、各種樹脂材料(ノボラック型エポキシ樹脂の原料、樹脂バインダーなど)、成形体(電気・電子部品用成形体、薄膜など)、回路形成材料(半導体製造用レジスト、プリント配線板など)、画像形成材料(印刷版材,レリーフ像など)、レジスト(半導体製造用レジストなど)の下層膜(ハードマスク)などの種々の用途に適用可能である。
【実施例】
【0136】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0137】
なお、実施例において、分子量などは以下のようにして測定した。
【0138】
(分子量の測定)
試料(フェノール樹脂)を含むテトラヒドロフラン溶液(約5重量%溶液)を作製し、ゲル透過型クロマトグラフ(TOSOH製、「HLC−8020」)により、40℃の測定条件下、ポリスチレン換算で、重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0139】
(耐ドライエッチング性の評価方法)
リアクティブイオンエッチング装置(サムコ(株)製、ロードロック式RIE装置)を用いて、以下の条件でエッチングを行った。
【0140】
装置:SAMCO ロードロック式RIE装置
Model RIE 200−L
気体:O:SF=5:30(sccm)
圧力:6Pa
出力:150W/24cmφ
時間:3min
そして、エッチングにより消失した膜の厚み(nm)をエッチング時間(分)で除した値を、耐ドライエッチング性[又はエッチング速度(nm/分)]として表示した。この値が小さいほど耐ドライエッチング性が高いことを示す。
【0141】
(NMR)
H−NMRスペクトルは、基準物質としてテトラメチルシランを用い、溶媒としてCDClを用いて測定、JEOL GTX−400分光計によって記録した。
【0142】
(実施例1)
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製)378重量部と、37%ホルムアルデヒド水溶液63重量部と、オルトクレゾール270重量部と、シュウ酸10.8重量部とを混合し、100℃にて攪拌しながら24時間反応させた。得られた反応混合物に、メチルイソブチルケトン1500重量部を添加し、中和および抽出により不純物を除去し、濾過することにより、目的とする反応生成物(反応生成物1)407重量部を得た。得られた反応生成物の重量平均分子量は558であった。
【0143】
また、得られた反応生成物をH−NMRにより分析したところ、前記式(1)において、p1およびp3が1であり、p2が0である化合物であることを確認した。以下に、得られた反応物のH−NMRスペクトルデータを示す。
【0144】
H−NMR(CDCl,δ):6.5〜7.9ppm(12H)、3.5〜3.8ppm(2.0H)、1.9〜2.1ppm(9.9H)、0.8〜0.9ppm(2.8H)。
【0145】
(実施例2)
実施例1において、オルトクレゾールに代えてメタクレゾールを使用した以外は、実施例1と同様にして反応生成物2を得た。以下に、得られた反応物のH−NMRスペクトルデータを示す。
【0146】
H−NMR(CDCl,δ):7.8ppm(2.0H)、7.2〜7.6ppm(5.9H)、6.7〜6.9ppm(3.8H)、6.5〜6.6ppm(2.0H)、2.1ppm(2.7H)、2.0ppm(10.8H)、0.8〜0.9ppm(8.3H)。
【0147】
(実施例3)
実施例1において、オルトクレゾールに代えてパラクレゾールを使用した以外は、実施例1と同様にして反応生成物3を得た。
【0148】
(実施例4)
実施例1において、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン378重量部に代えて、6,6’−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−ナフトール)(又は6,6’−(9−フルオレニリデン)−ビス(2−ナフトール)、大阪ガスケミカル株式会社製、「ビスナフトールフルオレン」)540重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして反応生成物4を得た。得られた反応生成物の重量平均分子量は643であった。
【0149】
(比較例1)
メタクレゾール(MCR)70重量部、パラクレゾール(PCR)30重量部、p−ホルムアルデヒド77重量部、水300重量部およびメタノール60重量部と、アルカリとしての水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)51重量部とを混合し、50℃にて攪拌しながら6時間反応させ、汎用のノボラック型フェノール樹脂(Mw=4899)を調製した。そして、得られた汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(東京化成製)1000重量部に溶解し、コーティング組成物を得た。洗浄したシリコンウェハーをヘキサメチルジシラザンで処理した後、スピンコーターを用いて調製したコーティング組成物を乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布し、ホットプレートにて100℃で5分間加熱した。次いで、180℃で20分間加熱し、膜を得た。このようにして得られた膜のエッチング速度を測定した結果、36.3nm/分であった。
【0150】
(実施例5)
汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて実施例1で得られた反応生成物1を100重量部用いた以外は比較例3と同様に膜を作製し、耐エッチング性能を測定した結果、エッチング速度は30.2nm/分であった。比較例1で得られた膜のエッチング速度を100としたときのエッチング速度(以下、エッチングレートという)は、83(30.2÷36.3×100)であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してエッチング耐性に優れることがわかった。
【0151】
(実施例6)
汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて実施例2で得られた反応生成物2を100重量部用いた以外は比較例1と同様に膜を作製し、耐エッチング性能を測定した結果、エッチング速度は30.9nm/分であった。エッチングレートは85であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してエッチング耐性に優れることがわかった。
【0152】
(実施例7)
汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて実施例3で得られた反応生成物3を100重量部使用した以外は比較例1と同様に膜を作製し、耐エッチング性能を測定した結果、エッチング速度は31.9nm/分であった。エッチングレートは88であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してエッチング耐性に優れることがわかった。
【0153】
(実施例8)
汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて実施例4で得られた反応生成物4を100重量部使用した以外は比較例1と同様に膜を作製し、耐エッチング性能を測定した結果、エッチング速度は27.9nm/分であった。エッチングレートは77であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較して極めてエッチング耐性に優れることがわかった。
【0154】
エッチング速度およびエッチングレートの結果をまとめた表を以下の表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
(比較例2)
比較例1で得られた汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部、架橋剤としての下記式(a)で表される化合物(メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、アメリカン・シアナミド社製、商品名cymel303)25重量部、および光酸発生剤としての下記式(b)で表される化合物(トリアジン系光酸発生剤、みどり化学製、TAZ−107)3重量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(東京化成製)1000重量部に溶解させ、感光性樹脂組成物を得た。
【0157】
【化6】

【0158】
洗浄したシリコンウェハーをヘキサメチルジシラザンで処理した後、スピンコーターを用いて調製した感光性樹脂組成物を乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布し、ホットプレートにて100℃で1分間加熱した。次いで、248nm(KrFエキシマーレーザー)の露光波長を有する縮小投影露光機(キヤノン(株)製、FPA−3000EX5,NA=0.63)を用いて、線幅の異なるラインアンドスペースパターンを有するテストマスクを介して、露光量を段階的に変化させて露光した。このウェハーをホットプレートにて120℃で2分間加熱した後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で1分間パドル現像してネガ型パターンを得た。このようにして得られた膜のエッチング速度を測定した結果、露光部のエッチング速度は44.8nm/分であり、未露光部のエッチング速度は46.3nm/分であった。
【0159】
(実施例9)
比較例2において、汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて、実施例1で得られた反応生成物1を100重量部使用した以外は比較例2と同様に膜を作製し、エッチング速度を測定した結果、露光部のエッチング速度は36.1nm/分であり、未露光部のエッチング速度は37.1nm/分であった。比較例2で得られた膜のエッチング速度(露光部又は未露光部)を100としたときのエッチング速度(以下、エッチングレートという)は、露光部で81、未露光部で80であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してエッチング耐性に優れることがわかった。
【0160】
(実施例10)
比較例2において、汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて、実施例2で得られた反応生成物2を100重量部使用した以外は比較例2と同様に膜を作製し、エッチング速度を測定した結果、露光部のエッチング速度は40.6nm/分であり、未露光部のエッチング速度は41.7nm/分であった。エッチングレートは、露光部で91、未露光部で90であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してエッチング耐性に優れることがわかった。
【0161】
(実施例11)
比較例2において、汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて、実施例3で得られた反応生成物3を100重量部使用した以外は比較例2と同様に膜を作製し、エッチング速度を測定した結果、露光部のエッチング速度は39.5nm/分であり、未露光部のエッチング速度は42.0nm/分であった。エッチングレートは、露光部で88、未露光部で91であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してエッチング耐性に優れることがわかった。
【0162】
(実施例12)
比較例2において、汎用ノボラック型フェノール樹脂100重量部に代えて、実施例4で得られた反応生成物4を100重量部使用した以外は比較例2と同様に膜を作製し、エッチング速度を測定した結果、露光部のエッチング速度は32.8nm/分であり、未露光部のエッチング速度は34.2nm/分であった。エッチングレートは、露光部で73、未露光部で74であり、汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較して極めてエッチング耐性に優れることがわかった。
【0163】
エッチング速度およびエッチングレートの結果をまとめた表を以下の表2に示す。
【0164】
【表2】

【0165】
(レジスト性能(溶解速度)評価)
実施例および比較例で得られた膜についてレジスト性能を評価した。なお、溶解速度は、リソテックジャパン社製のレジスト現像解析装置RDA−805を用いて測定した。光源はLED950nmの単色光とした。
【0166】
(比較例3)
比較例2と同様にして得られた膜について、未露光部の溶解速度を測定した結果、70nm/秒であり、露光部は溶解しなかった。
【0167】
(実施例13)
実施例10と同様にして得られた膜について、未露光部の溶解速度を測定した結果、653nm/秒であり、露光部は溶解しなかった。ゆえに汎用ノボラック型フェノール樹脂と比較してレジスト性能において優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】


(式中、環Z、環Zおよび環Zは芳香族炭化水素環、R1a、R1b、R2a、R2bおよびR2cは同一又は異なって置換基を示し、R3a、R3b、R3cおよびR3dは同一又は異なって水素原子又は炭化水素基を示し、k1およびk2は同一又は異なって0又は1〜4の整数を示し、m1、m2およびm3はそれぞれ0又は1以上の整数を示し、n1、n2およびn3はそれぞれ0又は1以上の整数を示し、p1は1以上の整数を示し、p2およびp3は0又は1以上の整数を示す。)
【請求項2】
式(1)において、環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環又はナフタレン環であり、R2a、R2bおよびR2cが炭化水素基であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1又は2である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、p1およびp3がそれぞれ1又は2であり、p2が0又は1である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式(1)において、環Z、環Zおよび環Zがベンゼン環であり、R2a、R2bおよびR2cがアルキル基又はアリール基であり、R3a、R3b、R3cおよびR3dが水素原子であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1であり、p1が1であり、p2が0であり、p3が0又は1である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
式(1)において、環Zおよび環Zがナフタレン環であり、環Zがベンゼン環であり、R3a、R3b、R3cおよびR3dが水素原子であり、m1、m2およびm3がそれぞれ0〜2であり、n1、n2およびn3がそれぞれ1であり、p1が1であり、p2が0であり、p3が0又は1である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、および下記式(C)で表される化合物を反応させ、請求項1記載の化合物を製造する方法。
【化2】


(式中、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、Z、Z、Z、R1a、R1b、R2a、R2b、R2c、k1、k2、m1、m2、m3、n1、n2、およびn3は前記と同じ。)
【請求項7】
酸触媒の存在下で反応させる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の化合物が硬化した硬化物。
【請求項9】
少なくとも請求項1記載の化合物を含む樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1記載の化合物および感光剤を含む感光性樹脂組成物である請求項9記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物と、酸の作用により硬化可能な熱硬化性樹脂と、光酸発生剤とで構成されたネガ型感光性樹脂組成物である請求項10記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11記載の樹脂組成物で形成されたパターン。

【公開番号】特開2008−285470(P2008−285470A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86897(P2008−86897)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】