説明

フェルールプローブ

【課題】光ファイバにおけるスリーブの端部近傍部に応力が集中するのを抑制し、折れやクラックが発生するのを防止したフェルールプローブを提供する。
【解決手段】筒状のスリーブと、前記スリーブ内に挿通され、該スリーブから一端側が引き出されてなる光ファイバと、を備えてなるフェルールプローブである。前記スリーブの前記光ファイバが引き出された側の端部と、該端部から引き出された前記光ファイバとの間に、該光ファイバが前記端部に対して曲がるのに追従して弾性変形する弾性部材が設けられていることを特徴とするフェルールプローブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射温度計等に好適に用いられるフェルールプローブに関する。
【0002】
従来、計測対象から発せられる光の波長や強度を検出し、検出した光を受光素子等によって電気信号に変換することにより、計測対象の温度を計測する放射温度計(パイロメータ、赤外放射温度計等)が知られている。
このような放射温度計では、計測対象の温度が高く受光素子等を計測対象の近傍に設置できない場合、計測対象から発せられた光を受光素子まで伝送するフェルールプローブが用いられている。
【0003】
このフェルールプローブには、光ファイバが用いられている(例えば、非特許文献1及び2参照)。光ファイバは、円筒状のスリーブ内に挿通され、さらに該スリーブから一端側が引き出されており、引き出された部位はコンジット(外装材)で覆われている。コンジットは、屈曲自在な管状の部材であって、光ファイバを保護するためのものである。
【0004】
また、スリーブの外側には、コネクタなどのインターフェイスやフェルール等からなる外筒部材が設けられている。すなわち、スリーブには外筒部材が外挿されている。そして、前記コンジットはこの外筒部材に接続されている。
さらに、光ファイバはスリーブに対してセラミック接着剤等の無機質系接着剤で固定されており、同様にスリーブは外筒部材に対して無機質系接着剤で固定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一ノ瀬昇、小林哲二、「センサとその応用」、総合電子出版社、1980年、P47
【非特許文献2】高橋清、「センサ技術入門」、工業調査会、1978年、P39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のフェルールプローブには以下に述べる改善すべき課題がある。
フェルールプローブの取り扱い時など、フェルールプローブに対して力が加えられ、外筒部材側(スリーブ側)に対してコンジット側に相対的に曲げや引っ張り、圧縮、ねじり等の力が働くと、光ファイバにはスリーブに接着剤で固定された部位と、スリーブから引き出されてコンジットで覆われた部位との間に応力が集中する。すなわち、光ファイバにおけるスリーブの端部近傍部に応力が集中する。すると、この応力が集中した部位で光ファイバに折れやクラックが発生するおそれが生じる。
また、特に光ファイバに対して軸方向の圧縮の力が働くと、接着剤のはがれ等が生じて光ファイバの先端がスリーブから突出してしまい、例えば集光レンズの焦点と光ファイバの入射端面とがずれてしまうことで、光ファイバに入射される光の強度が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、光ファイバにおけるスリーブの端部近傍部に応力が集中するのを抑制し、折れやクラックが発生するのを防止したフェルールプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1のフェルールプローブは、筒状のスリーブと、前記スリーブ内に挿通され、該スリーブから一端側が引き出されてなる光ファイバと、を備えてなるフェルールプローブであって、
前記スリーブの前記光ファイバが引き出された側の端部と、該端部から引き出された前記光ファイバとの間に、該光ファイバが前記端部に対して曲がるのに追従して弾性変形する弾性部材が設けられていることを特徴としている。
【0009】
このフェルールプローブによれば、スリーブ側に対して引き出された光ファイバ側に相対的に曲げ力が働き、スリーブに対して前記光ファイバが相対的に曲がると、この曲がりに追従する弾性部材が、その弾性復帰力によって光ファイバの曲がりを抑制するように働く。したがって、前記曲げ力に起因して光ファイバにおけるスリーブの端部近傍部に応力が集中するのが抑制される。
【0010】
また、前記第1のフェルールプローブにおいて、前記弾性部材は、一端側が前記スリーブの前記端部に固定され、他端側が前記光ファイバに保持されるコイルスプリングからなり、該コイルスプリングは前記光ファイバを外挿して配設されているのが好ましい。
このようにすれば、光ファイバを外挿してコイルスプリングを配設していることにより、光ファイバに対する曲げ力が半径方向のどの方向に働いても、コイルスプリングはこの曲げ力に抗して曲がりを抑制するように弾性復帰力を発揮する。
【0011】
また、本発明に係る第2のフェルールプローブは、筒状のスリーブと、前記スリーブ内に挿通され、該スリーブから一端側が引き出されてなる光ファイバと、を備えてなるフェルールプローブであって、
前記スリーブに外筒部材が外挿され、該外筒部材の一方の端部に、前記スリーブから引き出された光ファイバの一端側を覆う外装材が接続され、
前記スリーブと前記外筒部材との間には、前記外筒部材を前記スリーブに対してその軸方向及び周方向に変位可能にする、可動機構が設けられていることを特徴としている。
【0012】
この第2のフェルールプローブによれば、スリーブと外筒部材との間に可動機構を設け、外筒部材をスリーブに対してその軸方向及び周方向に変位可能にしたので、例えばスリーブ側に対して外装材側に相対的に引っ張りや圧縮、ねじり等の力が働いても、外装材に接続する外筒部材がスリーブに対して変位することにより、前記力が吸収される。したがって、前記引っ張りや圧縮、ねじり等の力に起因して光ファイバにおけるスリーブの端部近傍部に応力が集中するのが抑制される。
【0013】
また、前記第2のフェルールプローブにおいて、前記可動機構は、回転可能に配置された複数の球を備えてなるのが好ましい。
このようにすれば、球の全方向に対する転がり作用により、外筒部材はスリーブに対してその軸方向及び周方向に容易に変位可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフェルールプローブによれば、前記曲げや引っ張り、圧縮、ねじり等の力に起因して光ファイバにおけるスリーブの端部近傍部に応力が集中するのが抑制されているので、応力集中によって光ファイバに折れやクラックが発生するのを防止することができる。
また、特に第2のフェルールプローブによれば、スリーブ側に対して外装材側に相対的に圧縮の力が働いても、外装材に接続する外筒部材がスリーブに対して変位するようにしたので、光ファイバに直接圧縮の力が伝わることがなく、したがってその先端がスリーブから突出することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るフェルールプローブの概略構成図である。
【図2】(a)はフェルールプローブの第1実施形態を示す図であって、入射部とケーブル部の一部の概略構成を示す側断面図、(b)はフェルールプローブの作用を説明するための図である。
【図3】フェルールプローブの第2実施形態を示す図であって、入射部とケーブル部との要部の概略構成を示す側断面図である。
【図4】フェルールプローブの第3実施形態を示す図であって、入射部とケーブル部との要部の概略構成を示す側断面図である。
【図5】本発明に係るフェルールプローブの第4実施形態を示す図であって、(a)は入射部とケーブル部との要部の概略構成を示す側断面図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図、(c)は(a)の要部拡大図である。
【図6】(a)〜(c)は、図5に示したフェルールプローブの作用を説明するための図である。
【図7】(a)、(b)は、図5に示したフェルールプローブの使用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るフェルールプローブを、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本発明に係るフェルールプローブの概略構成を示す図であり、図1中符号1はフェルールプローブである。このフェルールプローブ1は、放射温度計の一種であるパイロメータ(図示せず)において用いられるものである。パイロメータは、不図示の計測対象から発せられる光の波長を測定して、計測対象の温度を計測する計測機器である。前記計測対象は、赤熱・白熱して可視光線を発する程度の高温(例えば750℃〜1000℃程度)となっているため、光を電気信号に変換する受光素子を計測対象から離れた位置に設置する必要がある。そこで、計測対象からの光を受光素子まで伝送するフェルールプローブ1が用いられる。
【0018】
フェルールプローブ1は、可撓性を有するケーブル状のもので、入射部2と、ケーブル部3と、コネクタ部4とを有している。
入射部2は、フェルールプローブ1の一端部に設けられ、計測対象から発せられる光が入射される部分である。
【0019】
図2(a)は、本発明に係るフェルールプローブの第1実施形態を示す図であって、入射部2とケーブル部3の一部の概略構成を示す側断面図である。図2(a)に示すように入射部2は、光ファイバ5と、円筒状のスリーブ6と、該スリーブ6に外挿された円筒状の外筒部材7とを有したものである。
【0020】
光ファイバ5は、スリーブ6の内部孔内に挿通されたもので、計測対象から発せられた光をコネクタ部4のフォトダイオードまで伝送するためのものである。すなわち、光ファイバ5は、スリーブ6から一端側が引き出され、この引き出された側がケーブル部3におけるコンジット31の内部に配設され、さらにコネクタ部4のフォトダイオードの近傍まで延在して設置されている。
【0021】
光ファイバ5は、石英によって形成されたもので、約700℃の耐熱性を有し、そのコア径が例えば400μmに形成されたものである。ただし、光ファイバ5の材料は石英に限定されることなく、計測対象近傍の温度に耐え得る耐熱性を有したものであればよく、例えば耐熱性の高いガラスによって形成されたガラスファイバであってもよい。なお、光ファイバ体5の入射側の端面となるファイバ端面5a、すなわちスリーブ6から引き出された一端側と反対の側の端面は、光ファイバ5の延在方向と直交する平面状に形成されている。
【0022】
また、光ファイバ5には、その表面に被覆材(図示せず)が被覆されている。この被覆材は、光ファイバ5の屈曲等による破損を防ぐためのもので、延性が高く、所定の耐熱性(計測対象近傍の温度に耐えうるもの)を有する材料からなっている。このような材料としては例えば金が好ましく、したがって本実施形態では金が用いられている。
【0023】
スリーブ6は、ステンレス系の金属材料からなる円筒状のもので、その内部孔内にセラミック接着剤Cを介して光ファイバ5を挿通したものである。このような構成によって光ファイバ5は、スリーブ6の中心軸に沿って該スリーブ6内に挿通され、その状態でセラミック接着剤Cによって固定されたものとなっている。セラミック接着剤Cは、粒径が1μm程度の無機系粒子からなるものである。
【0024】
また、このスリーブ6には、その一端部、すなわち光ファイバ5がスリーブ6から引き出された側の端部6aに、鋼製のコイルスプリング(弾性部材)8が接続されている。このコイルスプリング8は、スリーブ6から引き出された光ファイバ5の一端側を外挿した状態に設けられたものである。また、このコイルスプリング8は、そのスリーブ6側(一端側)の端部が、スリーブ6の端部6aに対してセラミック接着剤Cによる接着やロウ付け等によって固定されている。一方、スリーブ6と反対の側(他端側)の端部は、連結板9を介して光ファイバ5に保持されている。
【0025】
連結板9は、コイルスプリング8と略同径の円板状のもので、コイルスプリング8に対してセラミック接着剤Cによる接着やロウ付け等によって固定されたものである。また、この連結板9には、光ファイバ5を挿通するための貫通孔(図示せず)が形成されており、これによって連結板9は、光ファイバ5に保持されたものとなっている。
【0026】
ここで、この連結板9は、その貫通孔が光ファイバ5の外径より僅かに大径に形成されており、したがって光ファイバ5に曲げ力が働き、図2(b)に示すように光ファイバ5が側方に曲がった際、該光ファイバ5に押圧されてその曲げ力をコイルスプリング8に伝えるようになっている。すると、コイルスプリング8は、その半径方向に弾性変形可能になっているため、前記曲げ力を受けると光ファイバ5の曲げに追従して弾性変形するものの、この曲げ力に抗する弾性復帰力を発揮することにより、光ファイバ5の曲がりを抑制するように働く。
【0027】
なお、前記連結板9は、その貫通孔が光ファイバ5の外径にほぼ一致することで、この光ファイバ5に実質的に固定されていてもよく、また、貫通孔が光ファイバ5の外径よりある程度大径に形成されていることで、光ファイバ5に対して非固定となっていてもよい。ただし、貫通孔が光ファイバ5の外径よりある程度大径に形成されている場合でも、光ファイバ5がある程度曲がると、これに押圧されてその曲げ力をコイルスプリング8に伝えるように構成されている。したがって、この場合にも、コイルスプリング8は連結板9を介して光ファイバ5に保持されたものとなって。
【0028】
外筒部材7は、ステンレス系の金属材料からなる円筒状のもので、コネクタなどのインターフェイスやフェルール等からなるものである。この外筒部材7は、例えば入射部2を計測対象の近傍に取り付けるのに用いられ、また、入射部2の前方に配置される集光レンズ(図示せず)を光ファイバ5のファイバ端面5aに対して適宜な位置となるように位置決めするのに用いられるものである。なお、本実施形態では、この外筒部材7もその内部孔内にセラミック接着剤Cを介してスリーブ6を挿通しており、したがって外筒部材7は、スリーブ6に対して固定されたものとなっている。
【0029】
図1、図2(a)、(b)に示すようにケーブル部3は、入射部2とコネクタ部4とを連結するケーブル部分であって、コンジット(外装材)31の内部に、スリーブ6から引き出された光ファイバ5、及び前記コイルスプリング8を配した構成のものである。
コンジット31は、光ファイバ5を覆ってこれを保護するために設けられたもので、耐熱性(例えば200℃程度)及び可撓性を有する管状のものであり、図2(a)、(b)に示すように外筒部材7の一方の端部(光ファイバ5がスリーブ6から引き出された側の端部)に接続されたものである。なお、このコンジット31内の、前記コイルスプリング8に干渉しない位置には、例えばチューブ状に形成されたセラミックス繊維からなる充填物(図示せず)が配置されており、これによって光ファイバ5は二重に保護されている。
【0030】
図1に示すようにコネクタ部4は、フェルールプローブ1の他端部に設けられ、計測対象からの光を電気信号に変換し外部に出力する部分である。コネクタ部4の内部には、計測対象からの光を電気信号に変換する受光素子として、フォトダイオード(図示せず)が設けられている。光ファイバ5によって伝送された光は、フォトダイオードに入射され、電気信号に変換されるようになっている。変換により得られた電気信号は、コネクタ部4に設けられた出力用電極を介して、外部に出力されるようになっている。パイロメータは、この電気信号を用いて、計測対象の温度を計測するようになっている。
【0031】
このような構成からなるフェルールプローブ1は、使用に際して、例えば図2中二点鎖線で示すように光ファイバ5のファイバ端面5aの前方に集光レンズ10が配置される。集光レンズ10は、光ファイバ5のファイバ端面5aとの間隔Dが、集光レンズ10の焦点距離となるように設定されている。したがって、集光レンズ10から光ファイバ5に入射される光Lの強度が、最も高い状態に維持されるようになっている。
よって、計測対象から発せられ、さらに集光レンズ10で集光されて光ファイバ5に入射された光は、前述したように光ファイバ5を伝ってフォトダイオードに入射し、電気信号に変換された後、コネクタ部4から外部に出力される。したがって、この出力をパイロメータで読み取ることにより、計測対象の温度を計測することができる。
【0032】
その際、フェルールプローブ1の設置や位置決めなどの取り扱い時などに、例えばフェルールプローブ1のケーブル部3に力が加えられ、外筒部材7側(スリーブ6側)に対してコンジット31側に相対的に曲げ力が働くと、光ファイバ5にはスリーブ6にセラミック接着剤Cで固定された部位と、スリーブ6から引き出されてコンジット31で覆われた部位との間に応力が集中してしまうおそれがある。すなわち、光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中してしまうおそれがある。
【0033】
しかしながら、本実施形態のフェルールプローブ1にあっては、図2(b)に示したように光ファイバ5に曲げ力が働いて該光ファイバ5が側方に曲がった際に、コイルスプリング8が連結板9を介して前記曲げ力を受け、光ファイバ5の曲げに追従しつつこの曲げ力に抗する弾性復帰力を発揮し、光ファイバ5の曲がりを抑制するように働く。
したがって、前記曲げ力に起因して光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中するのを抑制し、応力集中によって光ファイバ5に折れやクラックが発生するのを防止することができる。
【0034】
また、光ファイバ5を外挿してコイルスプリング8を配設しているので、光ファイバ5に対する曲げ力が該光ファイバ5の半径方向のどの方向に働いても、コイルスプリング8はこの曲げ力に抗して曲がりを抑制するように弾性復帰力を発揮する。したがって、光ファイバ5に対する応力集中を確実に抑制し、応力集中によって光ファイバ5に折れやクラックが発生するのをより確実に防止することができる。
また、コイルスプリング8として鋼製のものを用いているので、高温環境下においても支障なく機能させることができる。
【0035】
図3は、本発明に係るフェルールプローブの第2実施形態を示す図であって、入射部2とケーブル部3との要部の概略構成を示す側断面図である。図3に示すフェルールプローブが図2に示したフェルールプローブ1と異なるところは、コイルスプリングの形状が異なる点である。
【0036】
すなわち、この第2実施形態のフェルールプローブにおいてコイルスプリング11は、スリーブ6の端部6aに固定された側(一端側)と反対の側(他端側)が、スリーブ6側に比べて漸次縮径した形状となっている。そして、図2に示した連結板9を介することなく、図3に示すようにその他端側(縮径した側)11aが直接光ファイバ5を巻装し、これによって光ファイバ5に直接保持されたものとなっている。
【0037】
ここで、コイルスプリング11の他端側11aは、その内径が光ファイバ5の外径より僅かに大径に形成されており、したがって光ファイバ5に曲げ力が働き、光ファイバ5が側方に曲がった際、コイルスプリング11は該光ファイバ5に直接押圧されるようになっている。
なお、この他端側11aの内径は、前記連結板9の貫通孔と同様、光ファイバ5の外径にほぼ一致することで、この光ファイバ5に実質的に固定されていてもよく、また、光ファイバ5の外径よりある程度大径に形成されていることで、光ファイバ5に対して非固定となっていてもよい。ただし、他端側11aの内径が光ファイバ5の外径よりある程度大径に形成されている場合でも、光ファイバ5がある程度曲がると、これに押圧されてその曲げ力がコイルスプリング11に伝えられるようになっている。したがって、この場合にも、コイルスプリング11は光ファイバ5に保持されたものとなって。
【0038】
このような構成からなるフェルールプローブにあっても、図2に示したフェルールプローブ1と同様にして用いられる。その際、フェルールプローブの設置や位置決めなどの取り扱い時などに、例えばフェルールプローブのケーブル部3に力が加えられ、外筒部材7側(スリーブ6側)に対してコンジット31側に相対的に曲げ力が働くと、光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中してしまうおそれがある。
【0039】
しかしながら、本実施形態のフェルールプローブにあっても、前記したように光ファイバ5に曲げ力が働いて該光ファイバ5が側方に曲がった際に、コイルスプリング11が前記曲げ力を受け、光ファイバ5の曲げに追従しつつこの曲げ力に抗する弾性復帰力を発揮し、光ファイバ5の曲がりを抑制するように働く。
したがって、前記曲げ力に起因して光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中するのを抑制し、応力集中によって光ファイバ5に折れやクラックが発生するのを防止することができる。
【0040】
また、光ファイバ5を外挿してコイルスプリング11を配設しているので、光ファイバ5に対する曲げ力が該光ファイバ5の半径方向のどの方向に働いても、コイルスプリング11はこの曲げ力に抗して曲がりを抑制するように弾性復帰力を発揮する。したがって、光ファイバ5に対する応力集中を確実に抑制し、応力集中によって光ファイバ5に折れやクラックが発生するのをより確実に防止することができる。
【0041】
さらに、コイルスプリング11の他端側11aを漸次縮径させているので、このコイルスプリング11はその軸方向でばね定数が変化し、他端側11aで曲がり易く、一端側(スルーブ6側)で曲がり難くなっている。よって、このコイルスプリング11は、スリーブ6から離れた側での光ファイバ5の曲げに対しては比較的容易に追従して曲がるものの、スリーブ6に近い位置での光ファイバ5の曲げに対してこれに抗する力が大きくなっている。これにより、コイルスプリング11は、前記曲げ力に起因して光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中するのを、より確実に抑制することができる。
【0042】
図4は、本発明に係るフェルールプローブの第3実施形態を示す図であって、入射部2とケーブル部3との要部の概略構成を示す側断面図である。図4に示すフェルールプローブが図2に示したフェルールプローブ1と異なるところは、コイルスプリングの形状が異なる点である。
【0043】
すなわち、この第3実施形態のフェルールプローブにおいてコイルスプリング12は、スリーブ6の端部6aに固定された側(一端側)から反対の側(他端側)に行くに連れて、その巻きピッチが漸次粗になっている(大きくなっている)。したがって、このコイルスプリング12にあっても、図3に示したコイルスプリング11と同様に、その軸方向でばね定数が変化し、他端側12aで曲がり易く、一端側(スルーブ6側)で曲がり難くなっている。
【0044】
よって、この第3実施形態のフェルールプローブのコイルスプリング12は、スリーブ6から離れた側での光ファイバ5の曲げに対しては比較的容易に追従して曲がるものの、スリーブ6に近い位置での光ファイバ5の曲げに対してこれに抗する力が大きくなっている。これにより、コイルスプリング12は、前記曲げ力に起因して光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中するのを、より確実に抑制することができる。
【0045】
なお、図3に示したコイルスプリング11や図4に示したコイルスプリング12については、さらにこれら図3に示した形状と図4に示した形状とを組み合わせた形状としてもよい。すなわち、図3に示したようにコイルスプリングの他端側(スリーブ6と反対の側)に行くに連れて漸次縮径するとともに、その巻きピッチを漸次粗にしても(大きくしても)よい。このように形成すれば、軸方向でのばね定数をより大きく変化させ、他端側12aでより曲がり易く、一端側(スルーブ6側)でより曲がり難く形成することができる。よって、前記曲げ力に起因して光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中するのを、さらに確実に抑制することができる。
【0046】
図2に示した構造のフェルールプローブ1について、構造解析を行った。また、比較のため、コイルスプリング8を備えない従来の構造のフェルールプローブについても構造解析を行った。すなわち、それぞれのフェルールプローブに対して同じ曲げ力を与え、構造解析を行った。その結果、図2に示した本発明に係るフェルールプローブ1は、従来のフェルールプローブに比べてスリーブ6の端部近傍部での応力集中が大幅に軽減していることが確認された。
【0047】
図5(a)〜(c)は、本発明に係るフェルールプローブの第4実施形態を示す図であって、(a)は入射部2とケーブル部3との要部の概略構成を示す側断面図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図、(c)は(a)の要部拡大図である。図5(a)〜(c)に示すフェルールプローブ20が図2に示したフェルールプローブ1と異なるところは、コイルスプリングを備えず、代わりに前記外筒部材7を前記スリーブ6に対してその軸方向及び周方向に変位可能にする、可動機構21を備えた点である。
【0048】
すなわち、図2に示したフェルールプローブ1ではスリーブ6と外筒部材7との間がセラミック接着剤Cによって固定されているのに対し、本実施形態ではスリーブ6と外筒部材7との間にセラミック接着剤Cを用いず、これらの間を可動機構21によって相対的に変位可能にしている。
【0049】
可動機構21は、本実施形態では複数(例えば8個)の鋼球22を有して構成されたもので、図5(a)、(b)に示すようにこれら鋼球22がスリーブ6と外筒部材7との間に回動(転動)可能に配置されて構成されたものである。すなわち、本実施形態では、図5(c)に示すように外筒部材7の内面に鋼球22を回動可能に保持する凹部23が形成されており、スリーブ6の外面に鋼球22の相対移動を所定範囲内で可能にする溝24が、スリーブ6の中心軸方向に沿って形成されている。なお、本実施形態では、スリーブ6及び外筒部材7の先端側に4つの鋼球22が、これらスリーブ6及び外筒部材7の周方向において等間隔で配置され、同じく後端側に4つの鋼球22が周方向において等間隔で配置され、これによって可動機構21が構成されている。
【0050】
このような構成のもとに可動機構21は、スリーブ6側に対してコンジット(外装材)31側に相対的に引っ張りや圧縮、ねじり等の力が働き、したがってコンジット31に接続する外筒部材7に引っ張りや圧縮、ねじり等の力が働いても、この外筒部材7をスリーブに対して変位させるようになっている。
【0051】
例えば、図6(a)に示すようにスリーブ6に対して外筒部材7に引っ張り力P1が作用しても、可動機構21が動作し、鋼球22が回転(転動)することにより、外筒部材7はスリーブ6に対して変位する。換言すれば、スリーブ6は図6(a)中に矢印R1で示すように、外筒部材7に対して引っ張り力P1と反対の方向に相対的に変位する。
同様に、図6(b)に示すようにスリーブ6に対して外筒部材7に圧縮力P2が作用しても、可動機構21が動作し、鋼球22が回転(転動)することにより、外筒部材7はスリーブ6に対して変位する。換言すれば、スリーブ6は図6(b)中に矢印R2で示すように、外筒部材7に対して圧縮力P2と反対の方向に相対的に変位する。
【0052】
また、図6(c)に示すようにスリーブ6に対してその周方向に外筒部材7をねじる、ねじり力P3が作用しても、可動機構21が動作し、鋼球22が回転(転動)することにより、外筒部材7はスリーブ6に対してその周方向に変位する。換言すれば、スリーブ6は外筒部材7に対して前記ねじり力と反対の方向に相対的に変位する。
【0053】
したがって、本実施形態のフェルールプローブ20にあっては、スリーブ6と外筒部材7との間に可動機構21を設け、外筒部材7をスリーブ6に対してその軸方向及び周方向に変位可能にしたので、例えばスリーブ6側に対してコンジット31側に相対的に引っ張りや圧縮、ねじり等の力が働いても、コンジット31に接続する外筒部材7がスリーブ6に対して変位することにより、前記力を吸収することができる。
よって、前記引っ張りや圧縮、ねじり等の力に起因して光ファイバ5におけるスリーブ6の端部近傍部に応力が集中するのを抑制し、応力集中によって光ファイバ5に折れやクラックが発生するのを防止することができる。
また、スリーブ6側に対してコンジット31側に相対的に圧縮の力が働いても、コンジット31に接続する外筒部材7がスリーブ6に対して変位するようにしたので、光ファイバ5に直接圧縮の力が伝わることがなく、したがってその先端(ファイバ端面)がスリーブ6から突出することを防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、スリーブ6に対して外筒部材7を変位可能に構成したので、図2に示したフェルールプローブ1のように、図2中二点鎖線で示した集光レンズ10を外筒部材7に取り付けることが難しくなる。そこで、本実施形態では、例えば図7(a)に示すように、スリーブ6の前端面(ファイバ端面5a側の端面)にレンズホルダ24を介して集光レンズ25を取り付けるようにする。このように構成することで、スリーブ6に対して外筒部材7を変位させても、集光レンズ25で集光した光を光ファイバ5のファイバ端面6aに良好に集光させることができる。
また、図7(b)に示すように、図7(a)における集光レンズ25に代えて、フォトダイオード26を配設するようにしてもよい。
【0055】
なお、前記実施形態では、図5(c)に示したように外筒部材7の内面に凹部23を形成し、スリーブ6の外面に溝24を形成したが、逆に、外筒部材7の内面に溝24を形成し、スリーブ6の外面に凹部23を形成してもよい。
また、このように鋼球22と凹部23及び溝24とによって可動機構21を形成するのに代えて、従来、軸受などとして一般に用いられるボールベアリングを、スリーブ6に外挿した状態で該スリーブ6の外面と外筒部材7の内面との間に配置し、スリーブ6に対して外筒部材7を変位可能に構成してもよい。その場合には、前記ボールベアリングが本発明における可動機構を構成するものとなる。
【0056】
以上、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0057】
例えば、前記実施形態では、フェルールプローブ1はパイロメータに設けられているが、これに限定されるものではなく、放射温度計の一種である赤外放射温度計に設けられていてもよい。
また、可動機構21を構成する球の数についても任意であり、さらにその材質についても、鋼以外の金属やセラミックス、樹脂等を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…フェルールプローブ、5…光ファイバ、5a…ファイバ端面、6…スリーブ、7…外筒部材、8、11、12…コイルスプリング、11a…他端側、20…フェルールプローブ、21…可動機構、22…鋼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のスリーブと、前記スリーブ内に挿通され、該スリーブから一端側が引き出されてなる光ファイバと、を備えてなるフェルールプローブであって、
前記スリーブの前記光ファイバが引き出された側の端部と、該端部から引き出された前記光ファイバとの間に、該光ファイバが前記端部に対して曲がるのに追従して弾性変形する弾性部材が設けられていることを特徴とするフェルールプローブ。
【請求項2】
前記弾性部材は、一端側が前記スリーブの前記端部に固定され、他端側が前記光ファイバに保持されるコイルスプリングからなり、該コイルスプリングは前記光ファイバを外挿して配設されていることを特徴とする請求項1記載のフェルールプローブ。
【請求項3】
筒状のスリーブと、前記スリーブ内に挿通され、該スリーブから一端側が引き出されてなる光ファイバと、を備えてなるフェルールプローブであって、
前記スリーブに外筒部材が外挿され、該外筒部材の一方の端部に、前記スリーブから引き出された光ファイバの一端側を覆う外装材が接続され、
前記スリーブと前記外筒部材との間には、前記外筒部材を前記スリーブに対してその軸方向及び周方向に変位可能にする、可動機構が設けられていることを特徴とするフェルールプローブ。
【請求項4】
前記可動機構は、回転可能に配置された複数の球を備えてなることを特徴とする請求項3記載のフェルールプローブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−47524(P2012−47524A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188207(P2010−188207)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】