説明

フェロニッケルの脱硫方法

【課題】 生産効率や保温性に影響を与えない条件下で、熔湯と脱硫剤の接触頻度を増加させて、効率的な脱硫処理を行うことができるフェロニッケルの脱硫方法を提供する。
【解決手段】 撹拌羽根12を用いる撹拌装置を備えたレードル11内で還元炉から出銑された粗フェロニッケル熔湯14に脱硫剤を投入し、撹拌羽根12で撹拌して粗フェロニッケル熔湯14中の硫黄を除去するフェロニッケルの脱硫方法において、レードル11の水平方向における撹拌羽根の回転軸13の位置を偏心させて撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロニッケルの脱硫方法に関し、より詳しくは、粗フェロニッケル熔湯と脱硫剤の接触頻度を増加させて、効率的な脱硫処理を行うことが可能なフェロニッケルの脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェロニッケルは、鉄とニッケルとの合金であり、ステンレス鋼及び特殊鋼の原料として使用されている。その一般的な製造方法としては、酸化ニッケル鉱石を原料鉱石として、予備乾燥工程、焼成及び予備還元工程、還元熔解工程、精製(脱硫)工程、鋳造工程からなる乾式製錬方法が用いられている。
【0003】
まず、予備乾燥工程では、所定の調合組成となるよう原料鉱石を配合した後、付着水分の一部が除去される。その後、次工程の焼成及び予備還元工程において、原料鉱石に炭素質還元剤(石炭)と必要に応じて熔剤が添加され、ロータリーキルンに投入された後、残りの付着水及び結晶水分が完全に除かれ、焼成及び予備還元された焼鉱(800〜900℃)が生成されて、残りの還元剤と共に排出される。
【0004】
還元熔解工程では、焼成及び予備還元工程において生成された焼鉱が電気炉又は熔鉱炉等の還元炉で還元熔解されて、粗フェロニッケルとスラグが形成される。還元炉から産出される粗フェロニッケルは、炭素質還元剤の設定量によって15〜25重量%のニッケル品位に調整されており、原料鉱石中のニッケル及びコバルトと一部の鉄を含むと共に、硫黄等の不純物も含有する。また、粗フェロニッケルと別に産出されるスラグは、原料鉱石中の酸化鉄の大部分と二酸化ケイ素及び酸化マグネシウムを含んでおり、鉄鋼の焼結工程における成分調整用マグネシア熔剤、コンクリート用細骨材や土木工事用資材等として利用される。
【0005】
還元熔解工程後の粗フェロニッケルは、製品スペックにより脱硫処理を必要とする場合には脱硫工程に移され、レードルを用いた機械式撹拌又は電気誘導式撹拌装置による脱硫処理が行われる。脱硫工程における脱硫処理は、所望の硫黄含有量となるようにカルシウムカーバイド等の脱硫剤を添加して粗フェロニッケル中の硫黄を硫化カルシウム(CaS)として精製スラグ中に固定及び除去し、精製フェロニッケル熔湯を製造する。
【0006】
脱硫工程で得られた精製フェロニッケル熔湯は、次に鋳造工程において回転する円盤状媒体を介して粗粒化され、水中で冷却されることによって、フレーク状粒体であるショット形状の製品となる。
【0007】
ところで、近年、フェロニッケル製錬方法の経済性の向上が望まれており、特に粗フェロニッケルの脱硫工程においては、高脱硫効率を達成することが重要な課題となっている。
【0008】
例えば、粗フェロニッケル熔湯からの脱硫処理の代表的な方法として、上述したように機械式撹拌装置によるレードル内脱硫を用いる方法がある。このレードル内脱硫方法としては、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術は、図4に示すように、撹拌羽根102の設定位置を撹拌羽根102の上端部102’が粗フェロニッケル熔湯104表面より上部に出るように調整することで高効率化を実現する方法が提案されている。なお、撹拌羽根102の回転軸103のレードル101の水平方向における位置は、中心軸105となっている。
【0009】
脱硫効率は、粗フェロニッケル熔湯と上部から投入される脱硫剤の接触頻度によって支配される。そのため、特許文献1に記載の技術のように、撹拌羽根102の熔湯104内での高さ方向(鉛直方向)の位置を熔湯104の表面より上部に出るように調整して、熔湯104の均一な流れを実現することで、脱硫する際に生成するスラグを撹拌によりレードル101内壁側に移動させることができる。そして、これにより新たに現れた熔湯104の表面と脱硫剤とが接触し、高効率化を図ることが可能となる。
【0010】
しかしながら、この特許文献1の技術では、撹拌羽根102を熔湯104の表面より上部に出るように調整することで熔湯104表面での脱硫剤との接触頻度は高まっているが、レードル101内の底部における熔湯104の流れは不活性となってしまう。そのため、添加した脱硫剤とレードル101内の底部における熔湯104との接触は不十分となっている。
【0011】
したがって、さらなる経済性の向上を実現するために、より効率的な脱硫処理の方法が求められている。
【0012】
ここで、脱硫効率の向上策として、例えば、脱硫剤の接触頻度を増加させるために、レードルの開口部を広くとり、粗フェロニッケル熔湯の表面面積を大きくする方法が考えられる。しかしながら、設備的な制約により小容量のレードルを用いた場合には、保温性が低下することを防止するためにレードル高さを高くしてレードル開口部を小さくすることが必要となるため、開口部を広くとる方法は採用し得ない。また、脱硫剤の接触効率を高めるために、脱硫剤の投入速度を緩めることも有効であると考えられるが、生産効率及び保温性の観点から困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−265645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、生産効率や保温性に影響を与えない条件下で、粗フェロニッケル熔湯と脱硫剤の接触頻度を増加させて、効率的な脱硫処理を行うことができるフェロニッケルの脱硫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本件発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、撹拌羽根を用いる撹拌装置を備えたレードル内におけるフェロニッケルの脱硫方法に関し、レードルの水平方向における撹拌羽根の設定位置を所定の条件に調整して撹拌することによって、生産効率や保温性に影響を与えない条件下で、熔湯の均一な流れを確保して、効率的な脱硫処理が実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明に係るフェロニッケルの脱硫方法は、撹拌羽根を用いる撹拌装置を備えたレードル内で還元炉から出銑された粗フェロニッケル熔湯に脱硫剤を投入し、該撹拌羽根で撹拌して該粗フェロニッケル熔湯中の硫黄を除去するフェロニッケルの脱硫方法において、前記レードルの水平方向における前記撹拌羽根の回転軸の位置を偏心させて撹拌することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レードルの水平方向における撹拌羽根の回転軸を偏心させて撹拌するようにしているので、底部を含めたレードル内全体における粗フェロニッケル熔湯の流れを活性化することができ、生産効率や保温性に影響を与えない条件下で熔湯の均一な流れを確保して、効率的な脱硫処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】レードルと撹拌装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】従来技術によるレードル内における熔湯の流れのシミュレーション結果を示す図である。
【図3】本発明によるレードル内における熔湯の流れのシミュレーション結果を示す図である。
【図4】比較例において用いたレードルと撹拌装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態に係るフェロニッケルの脱硫方法は、撹拌羽根を用いる撹拌装置を備えたレードル内で還元炉から出銑された粗フェロニッケル熔湯に脱硫剤を投入し、撹拌羽根で撹拌して粗フェロニッケル熔湯中の硫黄を除去するものであり、レードル内の熔湯の流れを均一にして、効率的な脱硫処理を可能とするものである。具体的に、本実施の形態に係るフェロニッケルの脱硫方法は、レードルの水平方向における撹拌羽根の回転軸の位置を偏心させて撹拌する。
【0021】
図1は、本実施の形態において用いられるレードル11と撹拌装置の構成の一例を示す概略模式図である。図1に示すように、撹拌装置は、撹拌羽根12を逆T字型に回転軸13に取付けた構造を有し、撹拌羽根12の回転軸13のレードル11内における設置位置が、レードル11の水平方向における中心軸15から偏心するよう設けられている。本実施の形態に係るフェロニッケルの脱硫方法は、このように、撹拌羽根12の回転軸13が偏心するようにして撹拌装置が備えられたレードル11内に粗フェロニッケル熔湯(以下、熔湯ともいう。)14を装入し、撹拌羽根12を回転させて脱硫剤を投入して熔湯14を撹拌する。
【0022】
ここで、図2に、従来のように撹拌羽根の回転軸をレードルの水平方向における中心軸105から偏心させずに撹拌した場合の熔湯の流れをシミュレーションした結果を示す。図2に示されるように、撹拌羽根の回転軸をレードルの中心軸に設置して撹拌した場合には、レードル内上部における熔湯は均一な流れが生じているものの、レードル内底部における熔湯の流れが不活性となっていることが分かる。このような場合、底部における熔湯と脱硫剤との接触は不十分となり、十分な脱硫処理が行われない。
【0023】
一方で、図3は、図1に示したように撹拌羽根12の回転軸13を偏心させた場合の熔湯14の流れをシミュレーションした結果である。図3に示されるように、撹拌羽根12の回転軸13をレードルの中心軸から偏心させて撹拌した場合には、レードル11内の底部の熔湯14の流れも活性化されており均一な流れを形成していることが分かる。
【0024】
このように、撹拌羽根12の回転軸13をレードルの中心軸15から偏心させて撹拌することによって、レードル11内の底部も含めた熔湯14全体の流れを活性化することができ、熔湯14の均一な流れを確保することができる。そしてこれにより、レードル11の上部から投入した脱硫剤と熔湯14との接触効率を効果的に高めることができ、熔湯14の脱硫効率を向上させることができる。
【0025】
レードル11内の水平方向における回転軸13の偏心位置としては、特に限定されず、撹拌羽根12の高さ方向の位置におけるレードル11の内径と撹拌羽根12の大きさとにより、撹拌羽根12がレードル11の内壁に接触しない位置に偏心させるとよい。
【0026】
また、撹拌羽根12のレードル11の鉛直方向における位置(撹拌羽根12の高さ位置)は、撹拌羽根12の上端部12’が熔湯14の表面(界面)より上部に出るように調整することが好ましい。これにより、撹拌羽根12の回転に伴う熔湯14の流れをより均一にすることができ、脱硫剤との接触効率が向上し、より効率的な脱硫処理を行うことができる。また、撹拌羽根12の回転軸13に対して、脱硫処理に際して生成されるスラグが付着することを抑制することができ、付着したスラグの除去作業も不要となる。
【0027】
なお、撹拌羽根12の形状としては、特に限定されず、種々の形状のものを用いることができるが、その形状は所望の撹拌力に応じて決定するとともに、レードル11の大きさに応じて回転軸13を偏心させた撹拌羽根12がレードル11内壁に接触しない大きさの形状とする。また、撹拌羽根12の材質についても、特に限定されないが、高温の粗フェロニッケル熔湯14中での寿命が長いものが好ましい。
【0028】
ここで、脱硫処理は、脱硫剤を添加することにより粗フェロニッケル熔湯14中の硫黄を精製炉スラグ中に硫化カルシウム(CaS)として固定除去することによって行われる。添加される脱硫剤としては、特に限定されるものではなく、カルシウムカーバイド、石灰窒素及びそれらの混合物が挙げられる。その中でも、特に、高脱硫効率を実現できるカルシウムカーバイドを主体とする脱硫剤を用いることが好ましい。脱硫剤の形状及び純度は、特に限定されるものではなく、粒状又は顆粒状等の市販の工業用薬品が用いられる。
【0029】
また、脱硫剤の添加量としては、出銑された粗フェロニッケル熔湯14中のイオウ品位と使用する脱硫剤の脱硫効率から経験的に得られるものであり特に限定されないが、例えば、粗フェロニッケル中のイオウ品位が0.4〜0.5重量%の場合には、粗フェロニッケル1トン当たり10〜20kgとする。
【0030】
脱硫剤の投入は、脱硫する際に生成するスラグを撹拌によりレードル11内壁に移動させて新たに現れた熔湯14の表面に接触するように行うことが好ましい。すなわち、脱硫反応の進行とともに生成するスラグは、熔湯14との比重差から熔湯14面に浮上するが、撹拌によりレードル11内壁側へ移動されるので、新たな熔湯14面が現れる。この新たに現れた熔湯14面に脱硫剤を投入することにより、脱硫剤と熔湯14は継続して接触でき、高脱硫効率を維持することができる。また、同時に、撹拌羽根12へのスラグの付着も軽減される。特に、本実施の形態においては、回転軸13を偏心させた撹拌羽根12で撹拌するようにしているので、より効果的に生成したスラグをレードル11内壁側に移動させることができ、新たな熔湯14面が現れ易くなり、脱硫剤と熔湯14との接触効率を向上させることができる。
【0031】
ただし、レードル11内壁側での熔湯14内への巻き込みが弱い場合に、レードル11内壁側へ移動されたスラグがレードル11内壁に付着し易くなることも考えられる。しかし、付着したスラグは、レードル11内から熔湯14を排出した後にレードル11を傾転させて固形物をスラグポットへ掻き出す作業の際に同時にかつ容易に除去することが可能である。
【0032】
なお、本実施の形態における粗フェロニッケル熔湯14としては、特に限定されるものではなく、電気炉、熔鉱炉等の還元炉から出銑された粗フェロニッケル熔湯が用いられる。その中で、ガーニエライト鉱等の酸化ニッケル鉱石を原料とする熔湯が好ましく用いられる。
【0033】
例えば、そのガーニエライト鉱等の酸化ニッケル鉱石を原料とする熔湯の代表的な組成としては、乾燥鉱換算でNi品位が15.0〜25.0重量%、S品位が0.3〜0.6重量%、C品位が1.5〜2.5重量%、SiO品位が0.5〜2.0重量%である。
【0034】
また、脱硫処理に際して、還元炉から出銑される熔湯14の温度としては、1300〜1500℃である。すなわち、熔湯14の温度が1300℃未満では、粗フェロニッケル熔湯14と脱硫剤の撹拌による接触が不十分であるため脱硫が十分に進まない。一方、熔湯14の温度が1500℃を超えると、スラグの熔融が過度に進むため生成したスラグの全体がレードル11内壁で熔着を起こして排出が困難になる。
【0035】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るフェロニッケルの脱硫方法は、レードル11の水平方向における撹拌羽根12の回転軸13の位置を中心軸15から偏心させるようにして撹拌する。このような方法によれば、レードル11内の底部も含めた熔湯14全体の流れを活性化させることができ、熔湯14の均一な流れを確保することができる。そしてこれにより、投入する脱硫剤と熔湯14との接触効率を高めて脱硫効率を向上させることができ、より経済性の高い脱硫処理を行うことができる。
【0036】
また、本実施の形態に係るフェロニッケルの脱硫方法によれば、脱硫剤との接触効率を高めるために開口部を広げることや脱硫剤の投入量及び投入速度を速めること等の措置を行うことなく、脱硫効率を向上させることができる。したがって、熔湯の保温性や生産効率を低下させることなく、またレードル11の開口部の大きさに関わらずに、効果的かつ効率的に脱硫処理を行うことができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0038】
例えば、上述のようにレードル11の水平方向において中心軸15から偏心した回転軸13を、その中心軸15の周囲に回動させるようにしてもよい。すなわち、図1に示したように側面からレードル11を見た場合に、撹拌羽根12の回転軸13をレードル11の片側一方にのみ偏心させた状態で撹拌羽根12を回転させて撹拌するだけでなく、その回転軸13をレードル11の水平方向における中心軸15の周囲を回動させるようにする。これにより、回転する撹拌羽根12がさらに中心軸15の周囲を回動するので、より効果的にレードル11の底部の熔湯14の流れを活性化させることができ、脱硫剤と熔湯14との接触効率を高めて脱硫効率を向上させることができる。
【0039】
また、撹拌羽根12の回転軸13を中心軸15の周囲に回動させることに代えて、レードル11を回転軸13の周囲に回動させるようにしてもよい。すなわち、レードル11の水平方向における中心軸15から偏心した回転軸13を中心として、レードル11自身を回動させるようにする。これによっても、同様に、より効果的にレードル11の底部の熔湯14の流れを活性化させることができ、脱硫剤と熔湯14との接触効率を高めて脱硫効率を向上させることができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
電気炉から産出された粗フェロニッケル熔湯(硫黄品位:0.4重量%)30トンを、撹拌羽根を用いる機械式撹拌装置を備えたレードル内に装入し、これに脱硫剤としてカルシウムカーバイドを投入して、脱硫処理を行った。
【0042】
カルシウムカーバイド投入量は、粗フェロニッケル熔湯の硫黄品位、及び、製品スペックを満足する実操業での脱硫管理目標値(硫黄品位0.020重量%以下)を勘案した上で決定した。
【0043】
ここで、レードル内部の粗フェロニッケル熔湯面の直径は1,950mmであり、また熔湯高さは2,000mmであった。また、機械式撹拌装置は、撹拌羽根が長さ700mm、幅250mm及び高さ450mmのサイズの直方体(板状)材であり、その撹拌羽根に逆T字型に回転軸に取り付けた構造のものを使用した。
【0044】
この撹拌装置のレードル内における設置位置は、図1に示したように、その回転軸13がレードル11の水平方向における中心軸15から300mm偏心させた位置とした。なお、撹拌装置の鉛直方向における設置位置は、撹拌羽根12の上端部が粗フェロニッケル熔湯面より200mm上になるように調整した。
【0045】
(比較例1)
撹拌装置のレードルの水平方向における設置位置を、図4に示すように、その回転軸がレードルの水平方向における中心軸となるように、すなわち回転軸を偏心させないようにしたことを以外は、実施例1と同様の条件で脱硫処理を行った。なお、カルシウムカーバイドの投入位置は、撹拌羽根とレードル内壁の間の中間位置に投入した。
【0046】
(評価)
実施例1及び比較例1の操業条件において、粗フェロニッケル熔湯を脱硫し、脱硫に関与した硫黄量と投入カーバイド量から脱硫効率を評価した。表1に評価結果を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示されるように、撹拌羽根12の回転軸13をレードル11の水平方向における中心軸15よりも偏心させて撹拌することによって、偏心させない場合よりも、脱硫効率を約5%向上させることができた。これは、回転軸を偏心させて撹拌することによって、レードル11の底部の熔湯14を含めた熔湯14全体の流れを活性化することができたため、脱硫剤と熔湯14との接触効率が高まり脱硫効率が向上したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のフェロニッケルの脱硫方法は、フェロニッケル製錬分野で利用される粗フェロニッケル熔湯の脱硫方法として好適であり、特に、レードルの開口部の大きさにかかわらず高脱硫効率を達成することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 レードル、12 撹拌羽根、13 回転軸、14 粗フェロニッケル熔湯(熔湯)、15 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌羽根を用いる撹拌装置を備えたレードル内で還元炉から出銑された粗フェロニッケル熔湯に脱硫剤を投入し、該撹拌羽根で撹拌して該粗フェロニッケル熔湯中の硫黄を除去するフェロニッケルの脱硫方法において、
前記レードルの水平方向における前記撹拌羽根の回転軸の位置を偏心させて撹拌することを特徴とするフェロニッケルの脱硫方法。
【請求項2】
前記レードルの鉛直方向における前記撹拌羽根の位置を、該撹拌羽根の上端部が前記粗フェロニッケル熔湯の表面より上部に出るように調整することを特徴とする請求項1記載のフェロニッケルの脱硫方法。
【請求項3】
前記脱硫剤は、脱硫する際に生成するスラグを撹拌により前記レードル内壁側に移動させて新たに現れた粗フェロニッケル熔湯の表面に接触するように投入されることを特徴とする請求項1又は2記載のフェロニッケルの脱硫方法。
【請求項4】
前記偏心させた回転軸を、前記レードルの水平方向における中心軸の周囲に回動させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載のフェロニッケルの脱硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241246(P2012−241246A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113713(P2011−113713)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(593213342)株式会社日向製錬所 (18)
【Fターム(参考)】