説明

フォトクロミック化合物

【課題】 紫外線照射により迅速に着色し、紫外線照射を止めた後、熱を加えることによって、迅速に消色するフォトクロミック化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物。R、R及びRは、それぞれ、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。R及びR並びにR及びRは、それぞれ、互いに結合して、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成していてもよい。Zは、ポリアマンチリデン基である。Wは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素芳香環又は複素芳香環を形成する2価の有機基である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフォトクロミック化合物に関する。更に詳しくは、嵩高いポリアマンチリデン構造を有し、紫外光に対する応答速度及び熱消色速度に優れたフォトクロミック化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物は、紫外線の照射によって可逆的に無色状態と着色状態の間を変化する化合物であり、光発色材料、調光材料等として用いられており、光記録材料等としての応用が考えられている。
これらのうち、光による着色が熱的に無色状態に戻る化合物は、特にフォトクロミック眼鏡用レンズ、調光窓ガラス等の調光材料や光発色意匠材料に適している。
中でも、特許文献1には、一般式(R−I)で表される、アダマンチリデン基を有するフルギド化合物及びフルギミド化合物が、太陽光の照射でも容易に着色することが報告されている。
【0003】
【化1】

また、その改良も種々検討されており、例えば、特許文献2には、アダマンチリデン基に代えてノルボルニリデン基を用いたフォトクロミック化合物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、上記一般式(R−I)における酸無水物基に代えて、種々の酸イミド基を導入することによって、着色と退色とを繰り返す可逆的な耐久性が改良されることが報告されている。
しかしながら、これらの改良によっても、光反応性や熱反応性の点で、十分満足すべきものは得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−155179号公報
【特許文献2】特開昭64−40593号公報
【特許文献3】特開平2−28154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、紫外線照射により迅速に着色し、紫外線照射を止めた後、熱を加えることによって、迅速に消色するフォトクロミック化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、フルギド化合物の構造について鋭意検討を重ねた結果、フルギド化合物に特定の置換基を導入することによって、上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて更に研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物が提供される。
【化2】

(一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
及びR並びにR及びRは、それぞれ、互いに結合して、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成していてもよい。
Zは、ポリアマンチリデン基である。
Wは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素芳香環又は複素芳香環を形成する2価の有機基である。)
【0009】
一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物は、好適には、一般式(II)で表される。
【化3】

【0010】
{一般式(II)において、Rは、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
Yは、酸素原子、硫黄原子又は>NRである。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。
及びXは、いずれか一方が単結合であり、他方が、酸素原子、硫黄原子、>NR又は置換基を有していてもよいビニレン基(−CR=CR−)である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。R及びRは、それぞれ、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。なお、X及びXは、それらが結合している2組の炭素−炭素二重結合と共に炭素芳香環又は複素芳香環を形成する。
及びRは、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基であるか;或いは、互いに結合してそれらが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環若しくは複素環を形成する。
Zは、ポリアマンチリデン基である。}
【0011】
上記一般式(II)で表される化合物の好適な例として、下記一般式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【化4】

(一般式(III)中、Zは、ポリアマンチリデン基である。)
【0012】
一般式(III)で表される化合物中、下記一般式(IVa及びIVb)で表される7−スピロジアマンタン−6,7−ジヒドロベンゾチオフェン−5,6−ジカルボン酸無水物が好適である。
【化5】

【0013】
一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物の他の好適な例として、一般式(V)で表される化合物を示すことができる。
【化6】

【0014】
{一般式(V)において、Rは、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
及びXは、いずれか一方が単結合であり、他方が、酸素原子、硫黄原子、>NR又は置換基を有していてもよいビニレン基(−CR=CR−)である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。R及びRは、それぞれ、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。なお、X及びXは、それらが結合している2組の炭素−炭素二重結合と共に炭素芳香環又は複素芳香環を形成する。
及びRは、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基であるか;或いは、互いに結合してそれらが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環若しくは複素環を形成する。
Zは、ポリアマンチリデン基である。
Qは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成する2価の有機基である。}
【発明の効果】
【0015】
本発明のフォトクロミック化合物は、合成が容易であり、化学的に安定で、従来のフォトクロミック化合物に比べて、光着色反応性及び熱消色反応性に優れている。
従って、本発明のフォトクロミック化合物は、光応答材料として優れており、自動調光サングラス、自動調光ガラス、光応答性自動変色プラスチック材料や、光記録材料への応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物〕
本発明のフォトクロミック化合物は、一般式(I)で表される。
【化7】

【0017】
一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
及びR並びにR及びRは、それぞれ、互いに結合して、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成していてもよい。
【0018】
Zは、ポリアマンチリデン基である。本発明において、「ポリアマンチリデン」基は、対応する「ポリアマンタン」の二級炭素原子(>CH)の一個から2個の水素を除去することによって得られる構造の二価の基をいうものとする。
ここで、本発明において、「ポリアマンタン」とは、一般式C4n+104n+16で(nは、1〜9の整数である)表される高次のダイヤモンドイド(「ダイアモンドイド」、「ダイヤモノイド」ともいう。)構造の化合物をいうものとする。n=1のものがジアマンタン(C1420)であり、以下、トリアマンタン、テトラマンタン、・・・・と続き、n=11のものは、ドデカマンタン(C5460)である。このような化合物は、石油の中に存在することが知られている。ジアマンタン及びテトラマンタンについては、既に合成法が確立されている(特表2005−503352号公報)。
従って、例えば、ジアマンチリデン基は、ジアマンタン(C1420)の二級炭素原子(>CH)の一個から2個の水素を除去することによって得られる一般式(VI)で、表される二価の基である。トリアマンタンには、区別可能な二級炭素原子が存在するので、これから誘導されるトリアマンチリデン基には、3種類がある。
本発明において、ポリアマンチリデン基は、置換基を有していてもよい。
Wは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素芳香環又は複素芳香環を形成する2価の有機基である。
【化8】

【0019】
以下、一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物について、詳細に説明する。
一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基であることができる。
周期表第15〜16族の原子は、特に限定されないが、好ましくは、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子である。
これらの原子を含有する官能基の具体例としては、アミノ基、シアノ基、炭化水素基で置換されていてもよいカルバモイル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリールオキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホルミル基、アシル基、アシルオキシ基、アロイルオキシ基等を挙げることができる。
これらの官能基は、それに含まれる水素が炭化水素基で置換されていてもよい。
この炭化水素置換基は、アルキル基でもアリール基でもよく、アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも環状でもよい。
【0020】
一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ、ハロゲン原子であることができる。
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができる。
【0021】
一般式(I)において、R、R及びRは、炭化水素基であってもよい。
炭化水素基は、脂肪族基でも芳香族基でもよく、脂肪族基は飽和基でも不飽和基でもよく、また、直鎖状でも、分岐状でも環状でもよく、環状の場合、単環基でも縮合環基でもよい。また、芳香族基は、単環基であっても縮合環基であってもよい。
炭化水素基の炭素数は、好ましくは、1〜20である。炭化水素基が環状である場合、環を構成する炭素原子の数は、好ましくは、3〜8である。
脂肪族基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基等を挙げることができる。
芳香族基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等を挙げることができる。
これらの炭化水素基は、上記官能基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0022】
一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ、複素環基であることができる。
複素環基は、周期表第15〜16族の原子を含有する環基である。複素環基におけるヘテロ原子の位置は、特に限定されない。複素環基は、単環基であっても縮合環基であっても、飽和環であっても不飽和環であってもよい。複素環を構成する原子の数は、3〜8であることが好ましい。また、複素環に含まれるヘテロ原子の数は限定されない。
複素環基の具体例としては、オキソラニル基、ジオキソラニル基、チオラニル基、ピロリジニル基等の飽和複素環基;フリル基、チエニル基、ピリジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基等の不飽和単環の複素環基;ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基等の不飽和縮合複素環基等を挙げることができる。
複素環基は、上述の炭化水素基、上述の官能基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0023】
一般式(I)において、R及びR並びにR及びRは、それぞれ、互いに結合して炭素環又は複素環を形成していてもよい。
これら炭素環又は複素環は、飽和環であっても不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。
これら炭素環又は複素環を構成する原子の数は、特に限定されないが、好ましくは、4〜8である。また、複素環に含まれるヘテロ原子の数も限定されない。
炭素環の具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環、ノルボルネン環、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等を挙げることができる。
複素環の具体例としては、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロリジン環、ジオキソラン環、チオラン環、ピペリジン環等の飽和複素環;ピロリン環、フラン環、ジヒドロフラン環、ジオキソレン環、チオフェン環、チオレン環、ピリジン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、イミダゾリン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環等の不飽和単環の複素環基;ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環等の不飽和縮合複素環;等を挙げることができる。
【0024】
上記R及びR又はR及びRが、それぞれ、互いに結合して形成される炭素環又は複素環は、その環を構成する原子上に置換基を有していてもよい。
置換基としては、上述の官能基、ハロゲン原子、炭化水素基及び複素環基のように水素原子1個を置換するもののほか、カルボニル基、イミノ基(=NH、=NR)、メチレン基(=CH)、アルキリデン基(=CR、=CHR)のように、水素原子2個を置換する構造の置換基であってもよい。但し、Rは、炭化水素基である。
上記炭素環又は複素環を形成するR及びR又はR及びRの具体例としては、パーフルオロプロパノ基(−(CF−)、パーフルオロブタノ基(−(CF−)、環状酸無水物基(−CO−O−CO−)、環状酸イミド基(−CO−NH−CO−、−CO−NR−CO−)等を挙げることができる。但し、Rは、炭化水素基である。
【0025】
Zは、ポリアマンチリデン基である。
Wは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素芳香環又は複素芳香環を形成する2価の有機基である。
炭素芳香環及び複素芳香環は、単環であっても縮合環であってもよく、また、環を構成する原子が置換基を有していてもよい。
炭素芳香環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等を挙げることができる。
複素芳香環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環等の不飽和単環の複素環基;ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環等の不飽和縮合複素環;等を挙げることができる。
置換基としては、上述の官能基、ハロゲン原子、炭化水素基及び複素環基を例示することができる。
【0026】
一般式(I)で表される化合物は、一般式(I−5)で表される化合物の分子内環化及び引き続く1,5−プロトトロピーによって得ることができる。
【化9】

(式中、各記号は、一般式(I)における定義に同じである。)
【0027】
一般式(I−5)で表される化合物の分子内環化は、この化合物に紫外線を照射するか、加熱するか、又はルイス酸触媒と接触させることにより行なうことができる。
一般式(I−5)で表される化合物に紫外線を照射すると、一般式(I−6)で表される化合物に変化し、この化合物は、熱により瞬時に1,5−プロトトロピーを起こして、一般式(I−7)で表される化合物となる。この化合物が本発明の、一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物である。(なお、一般式(I)と一般式(I−7)とは同一であるが、説明の便宜上、別個の番号を付したものである。)
一般式(I)で表される化合物は、室温において、溶液中又はポリマー等に混合して形成されたフィルム等のマトリクス中では、一般式(I−7)の形をしていて無色であるが、紫外線照射によって、一般式(I−8)で表される有色の化合物となる。
この有色の一般式(I−8)で表される化合物は、熱により、一般式(I−7)で表される化合物に戻って、無色となる。
これらの反応を反応経路1に示す。
【0028】
【化10】

(反応経路 1)
【0029】
紫外線照射の条件は特に限定されないが、室温下、溶媒中で行なうことが好ましい。
溶媒は、特に限定されないが、トルエン、キシレン等の芳香族化合物溶媒;ヘキサン等の脂肪族アルカン溶媒;シクロヘキサン等の脂環族アルカン溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル溶媒;等を使用できる。
これらの中でも、芳香族化合物溶媒、脂環族アルカン溶媒及びエステル溶媒が好ましい。
光源としては、高圧水銀灯、キセノンランプ等の、通常、光化学反応に用いるものを使用することができる。勿論、太陽光でもよく、これらの光源と適切な波長フィルターとを組み合わせることが好ましい。
【0030】
一般式(I−5)で表される化合物の分子内環化反応を行なうための加熱は、目的とする化合物の熱安定性にもよるが、220℃程度以下であることが好ましい。
また、一般式(I−5)で表される化合物の分子内環化反応を行なうためのルイス酸触媒は、特に限定されず、アルミニウム、鉄、スズ、チタニウム、アルミニウム等の塩化物、臭化物等を使用することができる。
ルイス酸触媒の量は、特に限定されないが、一般式(I−5)で表される化合物1モルに対して、0.001〜1モルの範囲で使用するのが好ましい。
【0031】
環化反応終了後、必要に応じて、濾過等の分離操作、水洗等の後処理を行い、最終的にカラムクロマトグラフィーや再結晶により精製することにより、目的化合物(I)を単離することができる。
【0032】
一般式(I−5)で表される化合物の合成は、公知の方法に従えばよいが、例えば、RとRとが互いに結合して酸無水物基を形成している場合、一般式(I−s)で表されるカルボニル化合物と、ポリアマンタンの酸化によって得られるポリアマンタノンから誘導される一般式(I−2)で表されるポリアマンチリデンコハク酸ジエステルとの縮合反応によって得ることができる(合成経路1参照)。なお、本発明において、「ポリアマンタノン」は、ポリアマンチリデン基のメチレン基が酸素と結合した構造のケトン化合物をいうものとする。例えば、ジアマンタノンは、式(I−1a)に示す構造を有している。
【化11】

(式中、各記号は、一般式(I)における定義に同じである。)
【化12】

Zは、ポリアマンチリデン基である。
【0033】
【化13】

【0034】
【化14】

(合成経路 1:一般式(I−5)で表される化合物の合成例)
【0035】
カルボニル化合物(I−s)とポリアマンチリデンコハク酸ジエステル(I−2)との縮合反応において、カルボニル化合物とポリアマンチリデンコハク酸ジエステルとの比率は、モル比で、1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1である。
反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは10〜100℃である。
反応は、溶液中で行なうのが好ましく、溶媒としては、非プロトン性溶媒が好ましい。その具体例としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒や、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒を挙げることができる。
この縮合反応は、水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムジイソプロピルアミド等の縮合剤の存在下に行なうのが好ましい。縮合剤の使用量は、カルボニル化合物1モル当り、通常、0.1〜10モルである。
【0036】
縮合反応で得られた一般式(I−3)で表される化合物を、遊離のジカルボン酸(I−4)に変換する。
この反応は、塩基の存在下に加水分解することによって行なうことができる。その反応条件は、特に限定されないが、例えば、水酸化カリウムの10%エタノール溶液を用いて、0〜80℃で行なうことができる。
【0037】
加水分解によって得られたジカルボン酸(I−4)を、無水酢酸、塩化アセチル、N−トリフルオロアセチルイミダゾール等の脱水試薬で処理して、酸無水物に変換して、一般式(I−5)で表される化合物を得る。
【0038】
一般式(I−2)で表されるポリアマンチリデンコハク酸ジエステルの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ジアマンチリデンコハク酸ジエステルの場合は、以下の方法によることができる。
即ち、ジアマンタンの酸化によりジアマンタノンを得、このジアマンタノンとコハク酸ジエチルとを水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシド等の縮合剤の存在下に縮合させてジアマンチリデンコハク酸モノエステルとし、次いで、エタノール/濃硫酸を用いて、これをジエステル化する。ジアマンタンに代えて、例えば、トリアマンタン又はテトラマンタンを使用すれば、それぞれ、対応するトリアマンチリデンコハク酸ジエステル又はテトラマンチリデンコハク酸ジエステルを得ることができる。
【0039】
〔一般式(II)で表されるフォトクロミック化合物〕
一般式(I)で表される化合物の好適な例として、下記一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
【化15】

【0040】
一般式(II)において、Rは、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
Yは、酸素原子、硫黄原子又は>NRである。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。
及びXは、いずれか一方が単結合であり、他方が、酸素原子、硫黄原子、>NR又は置換基を有していてもよいビニレン基(−CR=CR−)である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。R及びRは、それぞれ、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。なお、X及びXは、それらが結合している2組の炭素−炭素二重結合と共に炭素芳香環又は複素芳香環を形成する。
及びRは、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基であるか;或いは、互いに結合してそれらが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環若しくは複素環を形成する。
Zは、ポリアマンチリデン基である。
【0041】
一般式(II)において、X及びXをその構成要素とする芳香環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、N−アルキルピロール環、チアゾール環、チアゾリン環等の単独の5員複素環;ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、N−アルキルインドール環等の縮合複素環;ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等の炭素環を挙げることができる。
【0042】
〔一般式(II)で表されるフォトクロミック化合物の製法〕
一般式(II)で表されるフォトクロミック化合物は、一般式(II−5)で表される化合物の分子内環化及び引き続く1,5−プロトトロピーにより得ることができる(反応経路2参照)。なお、一般式(II)と一般式(II−7)とは同一であるが、説明の便宜上、別個の番号を付したものである。
【化16】

【0043】
【化17】

(反応経路 2)
【0044】
一般式(II−5)で表される化合物は、例えば、Y=Oの場合、一般式(II−s)で表されるカルボニル化合物と一般式(I−2)で表されるポリアマンチリデンコハク酸ジエステルとを縮合させることによって得ることができる(合成経路2参照)。
反応条件等は、上記一般式(I−5)で表される化合物を得る場合と同様である。
一般式(II−s)で表されるカルボニル化合物は、公知の方法によって合成することができる。
また、一般式(II−5)においてY=NRで表される化合物は、一般式(II−5)においてY=Oで表される化合物に、アミン化合物RNHを反応させた後、脱水環化することによって得ることができる。
【0045】
【化18】

(合成経路 2)
【0046】
〔一般式(III)で表されるフォトクロミック化合物〕
一般式(II)で表されるフォトクロミック化合物の好適な具体例として、一般式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【化19】

一般式(III)において、Zは、ポリアマンチリデン基である。
【0047】
一般式(III)で表される化合物は、下記一般式(IVa)及び(IVb)で表される2つのジアステレオマーのいずれであってもよい。
一般式(III)で表される化合物が、一般式(IVa)及び(IVb)で表される2つのジアステレオマーの混合物であるとき、その比率は特に限定されない。
【0048】
【化20】

【0049】
一般式(III)で表されるフォトクロミック化合物は、一般式(III−5)で表される化合物の分子内環化及び引き続く1,5−プロトトロピーにより得ることができる(反応経路3参照)。
一般式(III−5)で表される化合物の分子内環化は、この化合物に紫外線を照射するか、加熱するか、又はルイス酸触媒と接触させることにより行なうことができる。
一般式(III−5)で表される化合物に紫外線を照射すると、一般式(III−6)で表される化合物に変化し、この化合物は、熱により瞬時に1,5−プロトトロピーを起こして、一般式(III−7)で表される化合物となる。この化合物が本発明の、一般式(III)で表されるフォトクロミック化合物である。(なお、一般式(III)と一般式(III−7)とは同一であるが、説明の便宜上、別個の番号を付したものである。)
【0050】
一般式(III)で表される化合物は、室温において、溶液中又はポリマー等に混合して形成されたフィルム等のマトリクス中では、一般式(III−7)の形をしていて無色であるが、紫外線照射によって、一般式(III−8)で表される有色の化合物となる。
この有色の一般式(III−8)で表される化合物は、熱により、一般式(III−7)で表される化合物に戻って、無色となる。
これらの反応を反応経路3に示す。
【化21】

【0051】
【化22】

(反応経路 3)
【0052】
一般式(III−5)で表されるフォトクロミック化合物は、その製造方法によって限定されないが、好適には、ポリアマンタノンと3−アセチルチオフェンとから、下記合成経路3によって得ることができる。
以下に、ジアマンタノンを例にとって説明する。
即ち、ジアマンタンを酸化して、ジアマンタノンを得る。
ジアマンタノンとコハク酸ジエステルとを縮合させて、2−ジアマンチリデンコハク酸モノエステルを得る。
次にこれらのカルボキシル基をジエチルエステル化して、2−ジアマンチリデンコハク酸ジエチル(III−2)を得る。
この2−ジアマンチリデンコハク酸ジエチルを、テトラヒドロフラン(THF)中、縮合剤リチウムジイソプロピルアミド(LDA)の存在下に、3−アセチルチオフェンと縮合反応させて、得られた生成物からハーフエステル(III−3)を経て、2−[1−(3−チエニル)−エチリデン]−3−ジアマンチリデンコハク酸(III−4)を得る。
この2−[1−(3−チエニル)−エチリデン]−3−ジアマンチリデンコハク酸(III−4)を脱水環化させて酸無水物:4−ジアマンチリデン−3−[1−(3−チエニル)−エチリデン]ジヒドロ−2,5−フランジオン(III−5)とする。
これらの各反応の条件等は、一般式(II−5)の化合物の合成について、述べたとおりである。
ジアマンタンに代えて、例えば、トリアマンタン又はテトラマンタンを使用すれば、それぞれ、対応する4−トリアマンチリデン−3−[1−(3−チエニル)−エチリデン]ジヒドロ−2,5−フランジオン又は4−テトラマンチリデン−3−[1−(3−チエニル)−エチリデン]ジヒドロ−2,5−フランジオンを得ることができる。
【0053】
【化23】

(合成経路 3)
【0054】
〔一般式(V)で表されるフォトクロミック化合物〕
一般式(I)で表される化合物の他の好適な例として、下記一般式(V)で表される化合物を挙げることができる。
【化24】

【0055】
一般式(V)において、Rは、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
及びXは、いずれか一方が単結合であり、他方が、酸素原子、硫黄原子、>NR又は置換基を有していてもよいビニレン基(−CR=CR−)である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。R及びRは、それぞれ、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。なお、X及びXは、それらが結合している2組の炭素−炭素二重結合と共に炭素芳香環又は複素芳香環を形成する。
及びRは、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基であるか;或いは、互いに結合してそれらが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環若しくは複素環を形成する。
Zは、ポリアマンチリデン基である。
Qは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成する2価の有機基である。
【0056】
一般式(V)で表されるフォトクロミック化合物は、一般式(V−5)で表される化合物の分子内環化及び引き続く1,5−プロトトロピーにより得ることができる。
反応経路及び反応条件は、一般式(I)で表される化合物についてと同様である。
【0057】
一般式(V−5)で表される化合物は、例えば、以下の合成経路5で合成することができる。なお、式中、Mは、金属原子である。
【0058】
【化25】

(合成経路 5)
【0059】
本発明のフォトクロミック化合物は、紫外線安定剤又は紫外線吸収剤と組み合わせることによって、そのフォトクロミック作用の耐久性を更に向上させることができる。従って、本発明のフォトクロミック化合物は実用に供する場合、公知の紫外線安定剤もしくは紫外線吸収剤と混合して併用することができる。
【0060】
かかる高分子固体マトリックスを形成する高分子重合体としては、本発明の化合物を均一に分散するものであればよく、光学的に好ましい熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリ(アリルジグリコールカーボネート)、アモルファスポリオレフィン等のポリマー、又はこれらのポリマーの原料となるモノマー相互若しくは該モノマーと他のモノマーとを共重合してなるポリマー等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の分子量は特に制限されるものではないが、通常、500〜500,000の範囲から選択される。
【0061】
また、熱硬化性樹脂としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシコハク酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドキシプロピルアクリレート等のメタクリレート化合物又はアクリレート化合物;ジビニルベンゼン等のラジカル重合性多官能単量体の重合体を挙げることができる。
【0062】
また、これらの単量体のアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物のラジカル重合性単量体との共重合体が挙げられる。
【0063】
更には、エタンジチオール、プロパントリオール、ヘキサンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、キシレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物とエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA等の多価アルコール化合物又は前記した多価チオール化合物との付加重合体が挙げられる。これらの原料モノマーは1種又は2種以上混合して使用できる。
【0064】
本発明の化合物を上記高分子重合体へ分散させる方法としては、高分子重合体が熱可塑性樹脂である場合には、熱可塑性樹脂の合成、即ち重合を本発明の化合物の存在下に行う方法、又は熱可塑性樹脂と本発明の化合物とを熱可塑性樹脂の溶融温度以上で溶融混練する方法が挙げられる。
【0065】
また、高分子重合体が熱硬化性樹脂である場合には、熱可塑性樹脂の原料のモノマーと本発明の化合物を混合した後に重合する方法が一般的に採用される。
【0066】
前記高分子重合体中に本発明の化合物を分散させる場合、本発明の化合物の添加量は、一般には高分子重合体100重量部に対して0.001〜70重量部、好ましくは0.005〜30重量部、特に好ましくは0.1〜15重量部の範囲である。また前記した紫外線安定剤又は紫外線吸収剤を高分子重合体中へ混合して使用する場合、その量は、前記した本発明の化合物と紫外線安定剤又は紫外線吸収剤との配合割合を維持するのが望ましい。
【実施例】
【0067】
以下に合成例及び実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は特に断りのない限り、質量基準である。
なお、各特性は、以下の方法により評価した。
【0068】
〔化合物の構造の確認〕
重クロロホルム(CDCl)溶媒中、テトラメチルシラン(TMS)を標準物質として用いたH−NMRによる。
【0069】
〔実施例1〕
(7−スピロジアマンタン−6,7−ジヒドロベンゾチオフェン−5,6−ジカルボン酸無水物(IV−7a及び7b)の合成)
(2−ジアマンチリデンコハク酸モノエステル(IV−1a及び1b)の合成)
50mlナシフラスコに、スピナー及びジアマンタノン(1.1715g,5.79mmol,1.00当量)を加え窒素置換した後、コハク酸ジエチル(2.392g,2.39当量)とテトラヒドロフラン(THF)(13ml)とを、この順に加え攪拌した。なお、ジアマンタノンは、シェブロン社から入手したものを使用した。
別に100ml二ッ口ナスフラスコにスピナー及びカリウムt−ブトキシド(t−BuOK)(0.724g,6.41mmol,1.11当量)を入れ、窒素置換し、t−ブタノール(t−BuOH)(12ml)を加え、オイルバスで熱を加えた。t−BuOKが溶解し還流し始めたところで、ここに50mlナシフラスコに用意したジアマンタノンとコハク酸ジエチルとのTHF溶液をカヌーラでゆっくり滴下した。滴下終了後、約5時間還流し、その後、室温まで冷却し、水を加えた。ここに5M塩酸を加えpHを1にした。このとき白色の沈殿が生じた。ジエチルエーテルで3回抽出し、集めた有機層を水で洗浄した後、10%炭酸ナトリウム水溶液で5回抽出した。集めた水層に5M塩酸を加え、pHを1にした。これをジエチルエーテルで3回抽出し、集めた有機層を水で、次いで飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、ハーフエステル(IV−1a及び1bの混合物)を1.06g得た。
【0070】
(2−ジアマンチリデンコハク酸ジエチル(IV−2a及び2b)の合成)
100ml二つ口ナスフラスコにスピナー、及び、不純物を含む2−ジアマンチリデンコハク酸モノエステル(1.0552g)を加え窒素置換した。これにエタノール15ml及び濃硫酸0.7mlを加え、約4時間還流した。室温まで放冷した後、ジエチルエーテルを加えた。10%炭酸ナトリウム水溶液をpHが8以上になるまで加え、ジエチルエーテルで3回抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、溶媒を減圧下留去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:2%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、ジアマンチリデンコハク酸ジエチル(IV−2a及び2b)とコハク酸ジエチルとの混合物を836mg得た。NMRからアダマンチリデンコハク酸ジエチルとコハク酸ジエチルとの存在比は2:1と推測され、収率は27%であった。
H−NMRデータは、下記のとおりである。
H−NMR(270MHz)δ(ppm):
1.24(3H,t,J/Hz=7.2),1.28(3H,t,J/Hz=6.3),1.99−1.70(17H,m),2.66(1H,s,異性体の一方),2.72(1H,s,異性体の一方),3.36(1H,s),3.37(1H,s),3.53(1H,s,異性体の一方),3.59(1H,s,異性体の一方),4.2(4H,q,J/Hz=7.2)
【0071】
(2−[1−(3−チエニル)−エチリデン]−3−ジアマンチリデンコハク酸(IV−4a及び4b)の合成)
30mlナシフラスコに、上記で得られたアダマンチリデンコハク酸ジエチル及びコハク酸ジエチルの混合物770mgとスピナーとを入れ、系内を窒素置換した。THF10mlを加え攪拌し、氷浴にて0℃に冷却した。
別に30mlナシフラスコに3−アセチルチオフェン274mg(2.17mmol)とスピナーとをいれ、系内を窒素置換した。THFを10ml加え攪拌し、氷浴にて0℃に冷却した。
100ml2つ口ナスフラスコにスピナーを入れ、系内を窒素置換した。2,2’−ビピリジルを少量入れ、ジイソプロピルアミン0.45ml(3.2mmol)及びTHF20mlを加え、寒剤浴(ドライアイス/イソプロパノール;−78℃)を用いて冷却した。n−ブチルリチウム(ヘキサン溶液、1.6mol/dm)2.1ml(3.2mmol)をシリンジで滴下し(1滴/秒)、続けてジアマンチリデンコハク酸ジエチルのTHF溶液をカヌーラでゆっくり滴下した。
1時間攪拌後、3−アセチルチオフェンのTHF溶液をゆっくり滴下し、その後、寒剤浴を取り除き、室温で放置して昇温させ、16時間攪拌した。その後、8時間還流し、放冷した後、4M塩酸を加えて反応系を酸性にした後、ジエチルエーテルで4回抽出した。集めた有機層を10%炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水でそれぞれ洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、溶媒を減圧下留去して、ハーフエステル(IV−3a及び3b)915mgを得た。
【0072】
100ml二つ口ナスフラスコに上記の反応で得られたハーフエステル(IV−3a及び3b)とスピナーとを入れ、水酸化カリウム1.25g(21.7mmol),エタノール15ml及び水20mlを加え,100〜110℃で約13時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、ジエチルエーテルを加え、10%水酸化ナトリウム水溶液で4回抽出し、集めた水層に4M塩酸を加えpHを1にした。この時、白色沈殿が生成した。これをジエチルエーテルで4回抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、溶媒を減圧下留去して、3−ジアマンチリデン−2−[1−(3−チエニル)−エチリデン]コハク酸(IV−4a及び4b)を774mg得た。
【0073】
(4−ジアマンチリデン−3−[1−(3−チエニル)−エチリデン]ジヒドロ−2,5−フランジオン(IV−5a及び5b)の合成)
100ml2つ口ナスフラスコに、上記の反応で得た3−ジアマンチリデン−2−[1−(3−チエニル)−エチリデン]コハク酸(IV−4a及び4b)とスピナーとを加え、系内を窒素置換した。THFを15ml加え、攪拌した後、室温でN−トリフロロアセチルイミダゾール0.5mlを加え、一晩攪拌した。反応溶液に水を加え、これをジエチルエーテルで4回抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、溶媒を減圧下留去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;3%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、4−ジアマンチリデン−3−[1−(3−チエニル)−エチリデン]ジヒドロ−2,5−フランジオン(IV−5a及び5b)107mgを(0.27mmol,収率13%(アセチルチオフェン基準))得た。
H−NMRデータは、下記のとおりである。
H−NMR(400MHz)δ(ppm):
1.52−1.88(17H,m),2.29(1H,s),2.32(1H,s),2.62(3H,s,異性体の一方),2.53(3H,s,異性体の一方),4.02(1H,s,異性体の一方),4.04(1H,s,異性体の一方),7.11(1H,m),7.32(1H,m),7.40(1H,m)
IRはKBrペレットとして測定した。そのデータ(ν/cm)は以下のとおりである。3103,2916,2887,2867,2847,1804,1755,1753,1616,1608,1226,1212,944,926。
【0074】
(7−スピロジアマンタン−6,7−ジヒドロベンゾチオフェン−5,6−ジカルボン酸無水物(IV−7a及び7b)の合成)
5cm大型円筒セルに4−ジアマンチリデン−3−[1−(3−チエニル)−エチリデン]ジヒドロ−2,5−フランジオン46.0mg(0.12mmol)とスピナーを加え、これを脱気した酢酸エチルで満たした。約10分間窒素バブリングを行った後、366nm光を10時間照射した後、溶媒を留去して、(IV−7a及び7b)を定量的に得た。H−NMR測定の結果、二種類のジアステレオマー(IV−7a及び7b)が約2:1の比で生成していることが分かった。ジアステレオマー(IV−7a及び7b)のどちらが多く生成しているかは不明である。
ジアステレオマー(IV−7a及び7b)の混合物の融点は、127−137℃であった。
H−NMRデータは、下記のとおりである。
H−NMR(400MHz)δ(ppm):
多量成分:1.52−2.00(16H,m),2.27(1H,s),2.46(1H,s),2.66(3H,d,J/Hz=2.2),3.98(1H,q,J/Hz=2.2),7.15(1H,d,J/Hz=5.4),7.23(1H,d,J/Hz=5.4)
少量成分:1.52−2.00(16H,m),2.32(1H,s),2.53(1H,s),2.65(3H,d,J/Hz=2.2),3.71(1H,q,J/Hz=2.2),7.13(1H,d,J/Hz=5.4),7.21(1H,d,J/Hz=5.6)
IRはKBrペレットとして測定した。そのデータ(ν/cm)は以下のとおりである。3106,2915,2900,2886,2849,2360,2342,1813,1811,1757,1646,1253,1204,963,934,926。
【0075】
上記の結果から、生成物は上記7−スピロジアマンタン−6,7−ジヒドロベンゾチオフェン−5,6−ジカルボン酸無水物(IV−7a及び7b)であることを確認した。
上記一連の反応を合成経路4に示す。
【0076】
【化26】

(合成経路 4)
【0077】
本発明のフォトクロミック化合物(IV)は、上記一般式(IV−5a)及び(IV−5b)で示される化合物の分子内環化及び引き続く1,5−プロトトロピーにより得ることができる(反応経路4参照)。
【0078】
[フォトクロミズム]
一般式(IV−5a)及び(IV−5b)で表される化合物は、室温において、溶液中又はポリマー等に混合して形成されたフィルム等のマトリクス中では、無色であるが、これに紫外線を照射することによって環化して、一般式(IV−6a)及び(IV−6b)で表される化合物となり、これが熱により瞬時に水素移動を起こして、一般式(IV−7a)及び(IV−7b)で表される化合物となる。一般式(IV−7a)及び(IV−7b)で表される化合物は、無色であるが、紫外線照射によって、赤紫色の一般式(IV−8a)及び(IV−8b)で表される化合物となる。
この有色の一般式(IV−8a)及び(IV−8b)で表される化合物は、熱により、一般式(IV−7a)及び(IV−7b)で表される化合物に戻って、無色となる。
これらの反応を反応経路4に示す。
【0079】
【化27】

(反応経路 4)
【0080】
〔紫外光による着色反応及び熱消色反応による化合物(IV−7)の吸収スペクトル変化の測定〕
化合物(IV−7a及び7b)の約2:1の混合物のトルエン溶液(1.01×10−4mol/dm)を調製し、光路長1cmの石英セルに入れ、吸収スペクトルを測定した。化合物(IV−7)から(IV−8)への光反応には、光強度:2.24mW/cmの超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製,商品名「USH−500D」)を使用し、図1の方法で取り出した366nm光を照射し、直ちに、0、1、2、4及び8分間照射した。照射時間ごとの吸収スペクトルを、紫外/可視光分光光度計(島津製作所社製、商品名「Multispec 1500フォトダイオードアレイ分光光度計」)を用いて室温で測定した。(IV−8)から(IV−7)への熱反応においては、分光器にセルをセットしたまま室温で放置し、0、1、3、5及び10分後の吸収スペクトルの測定を行った。
その変化の様子を図2(化合物(IV−7)から(IV−8)への変化)及び図3(化合物(IV−8)から(IV−7)への変化)に示す。なお、吸収極大波長は、553.0nmであった。
図2において、各曲線は、下から順に、照射0、1、2、4及び8分後の吸収スペクトルを示す。
また、図3において、各曲線は、上から順に、放置0、1、3、5及び10分後の吸収スペクトルを示す。
【0081】
〔比較例1〕
特開昭60−155179号公報(第(6)頁、例2)に記載の方法により、下記一般式(R−5)で表される化合物(以下、「R5化合物」ということがある。)を、3−アセチルチオフェンに対する収率12%で得た。
パイレックス(登録商標)ガラス製のセル中で、脱気した酢酸エチル約50ミリリットルにR5化合物50.1mgを溶解した。波長366nmの紫外光を18時間照射した。その後、溶媒を蒸発させ、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーによって分離精製して、33.0mgのR7化合物を柔らかい結晶として得た。
H−NMRデータは、下記のとおりである。
H−NMR(400MHz)δ(ppm):
1.60−2.00(10H,m),2.28(1H,s),2.54(1H,s),2.64(3H,d,J/Hz=2.8),3.05(1H,d,J/Hz=10.5),3.41(1H,d,J/Hz=14.5),3.99(1H,s),7.14(1H,d,J/Hz=5.3),7.23(1H,d,J/Hz=4.6).
【0082】
【化28】

【0083】
R7化合物をトルエンに溶解して、1×10−4モル/dm濃度の溶液を調製した。
この溶液について、実施例1の化合物(IV−7)の溶液についてと同様に、紫外光による着色反応及び熱消色反応による吸収スペクトル変化を測定した。
結果を、図4及び5に示す。なお、吸収極大波長は、552.0nmであった。
図4において、各曲線は、下から順に、照射0、1、2、4及び8分後の吸収スペクトルを示す。
また、図5において、各曲線は、上から順に、放置0、1、3、5及び10分後の吸収スペクトルを示す。
【0084】
図2〜5から、化合物(IV−7)は、トルエン中では、紫外光照射開始後1分で最大着色の77%まで着色するのに対し、R7化合物では、紫外光照射開始後1分で70%に達するに過ぎないことが分かる。
一方、紫外線照射を停止した後の消色速度を見ると、化合物(IV−7)では、1分後に吸光度が49%、3分後に12%まで減少し、約5分で消色するのに対して、R7化合物では、1分後に67%、3分後に33%までしか減少せず、消色に約10分を要することが分かる。
この結果は、R7化合物のアダマンチリデン基に比べて、嵩高のポリアマンチリデンの存在により、紫外線照射下では、化合物(IV−7)の励起状態がより不安定であるので、より速やかに化合物(IV−8)に移行して着色が強くなり、他方、紫外線非照射下では、化合物(IV−8)がより不安定で、より早く化合物(IV−7)に戻るものと考えられる。
【0085】
これから、本発明のフォトクロミック化合物は、公知のフォトクロミック化合物(R7)に比べて、紫外線照射による着色の速度が大きく、より早く光−熱−定常状態に達し、しかも消色速度がより速いことが分かる。
従って、本発明のフォトクロミック化合物は、フォトクロミック材料用途に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の化合物は大変良好なフォトクロミック特性を示すので、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレー材料、光量計、装飾等の材料として利用できる。
【0087】
例えば、本発明のフォトクロミック化合物をフォトクロミックレンズに使用する方法としては、本発明のフォトクロミック化合物を均一に分散してなるポリマーフィルムをレンズ中にサンドウィッチする方法、又は、本発明のフォトクロミック化合物を、例えばシリコーンオイルに溶解して150〜200℃で10〜60分掛けてレンズ表面に含浸させ、更にその表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法等がある。
更に、上記フォトクロミック化合物を含むポリマーをレンズ表面に塗布し、その表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法等もある。また、本発明の化合物を予め有機レンズを形成しうるモノマー中へ分散させ、次いで重合硬化させてフォトクロミックレンズにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】フォトクロミック化合物の紫外光照射に用いた装置の概略である。
【図2】本発明のフォトクロミック化合物(IV−7)の紫外光による着色反応による吸収スペクトル変化を示す図(横軸:波長(nm)、縦軸:吸光度)である。
【図3】本発明のフォトクロミック化合物(IV−7)の熱消色反応による吸収スペクトル変化を示す図(横軸:波長(nm)、縦軸:吸光度)である。
【図4】公知のフォトクロミック化合物(R7)の紫外光による着色反応による吸収スペクトル変化を示す図(横軸:波長(nm)、縦軸:吸光度)である。
【図5】公知のフォトクロミック化合物(R7)の熱消色反応吸収スペクトル変化を示す図(横軸:波長(nm)、縦軸:吸光度)である。
【符号の説明】
【0089】
A:500W超高圧水銀ランプ
B:水(パイレックス(登録商標)セル:光路長 5cm)
C:硫酸銅水溶液(パイレックス(登録商標)セル:光路長 5cm)
D:色ガラスフィルター(UV−35)
E:色ガラスフィルター(UV−D35)
F:試料セル(石英セル:光路長 1cm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物。
【化1】

(一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
及びR並びにR及びRは、それぞれ、互いに結合して、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成していてもよい。
Zは、ポリアマンチリデン基である。
Wは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素芳香環又は複素芳香環を形成する2価の有機基である。)
【請求項2】
一般式(II)で表される請求項1に記載のフォトクロミック化合物。
【化2】

{一般式(II)において、Rは、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
Yは、酸素原子、硫黄原子又は>NRである。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。
及びXは、いずれか一方が単結合であり、他方が、酸素原子、硫黄原子、>NR又は置換基を有していてもよいビニレン基(−CR=CR−)である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。R及びRは、それぞれ、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。なお、X及びXは、それらが結合している2組の炭素−炭素二重結合と共に炭素芳香環又は複素芳香環を形成する。
及びRは、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基であるか;或いは、互いに結合してそれらが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環若しくは複素環を形成する。
Zは、ポリアマンチリデン基である。}
【請求項3】
一般式(III)で表される請求項2に記載のフォトクロミック化合物。
【化3】

(一般式(III)において、Zは、ポリアマンチリデン基である。)
【請求項4】
一般式(IVa)又は一般式(IVb)で表される請求項3に記載のフォトクロミック化合物。
【化4】

【請求項5】
一般式(V)で表される請求項1に記載のフォトクロミック化合物。
【化5】

{一般式(V)において、Rは、水素原子、周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。
及びXは、いずれか一方が単結合であり、他方が、酸素原子、硫黄原子、>NR又は置換基を有していてもよいビニレン基(−CR=CR−)である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭化水素基若しくは複素環基である。R及びRは、それぞれ、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基である。なお、X及びXは、それらが結合している2組の炭素−炭素二重結合と共に炭素芳香環又は複素芳香環を形成する。
及びRは、水素原子;周期表第15〜16族の原子を含有する官能基;ハロゲン原子;前記官能基若しくはハロゲン原子を置換基として有していてもよい炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基であるか;或いは、互いに結合してそれらが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環若しくは複素環を形成する。
Zは、ポリアマンチリデン基である。
Qは、それが結合している炭素−炭素二重結合と共に、置換基を有していてもよい、炭素環又は複素環を形成する2価の有機基である。}

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−46393(P2009−46393A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63829(P2006−63829)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】