説明

フォトクロミック組成物、その調製およびそれから製造されたまたはそれにより被覆された製品

本発明は、新規の架橋性または架橋したフォトクロミック組成物、その組成物から製造されたか被覆された製品およびその組成物の製造方法に関する。組成物は、(i)少なくとも一つの不飽和基を含む少なくとも一つの非末端部分を持つ少なくとも一種類のセグメント化または非セグメント化ポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー、および(ii)都合よくは、スピロキサジン、クロメン、スピロピラン、フルギドおよびフルギミドから選択された、効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
架橋性フォトクロミック組成物と、
新規の架橋性フォトクロミック組成物から得られる架橋したフォトクロミック組成物と、
前記フォトクロミック組成物から製造されたかそれにより被覆された製品、特に、これらの新規の架橋した組成物に基づくフォトクロミックレンズと、
これらの新規の架橋性フォトクロミック組成物を調製する方法と
に関する。
【背景技術】
【0002】
ホストの有機材料中に受け入れられる様々なタイプのフォトクロミック有機分子が示すフォトクロミズムは、文献に広く記載されている公知の現象である。
【0003】
ポリマー基質内において、分子の色の可逆的変化が環の開裂および異性化の可逆プロセスに基づく限りは、フォトクロミック分子の近傍にあるポリマー鎖の移動度により、分子のフォトクロミック特性が表される速度が定義される。それゆえ、フォトクロミック分子のホストであるポリマー基質の暗化および退色のプロセスは、基質内の、分子に残された自由体積、したがって、基質のポリマー鎖の柔軟性に依存する。
【0004】
この観点から、ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレア基質は特に興味深い。基質内の自由体積は、実際に、合成中に組み立てられるブロックの注意深い選択により調節することができる。それゆえ、ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレア基質の色合いおよび初期色への戻りは、その基質の合成中に組み込まれるブロックを適切に選択することにより最適化できる。
【0005】
さらに、塊全体がフォトクロミックにされた基質の代わりに、非フォトクロミック基質上にフォトクロミックコーティングを使用することは、非フォトクロミック基質が、それらの内部に許容される分子のフォトクロミズムを表すための、十分な柔軟性、および十分な自由体積を提供しない場合に、適切である。それゆえ、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネートなどの熱可塑性材料は、それらの中の自由体積およびそれを構成する鎖の柔軟性が不十分である限りは、フォトクロミック分子のホストポリマーに適していない。
【0006】
特許文献1には、フォトクロミックポリウレタンの調製が記載されている。そのポリウレタンは、典型的に、ジイソシアネート試薬およびポリオール試薬から調製される。フォトクロミック化合物は、反応前に、一方の試薬または試薬の混合物中に加えられる。イソシアネート基は非常に反応性の高い基であるので、調製された試薬の混合物は保存できない。その混合物は、調製後直ちに反応させなければらない。このことは、プロセスの実施に関して重大な制約となる。
【0007】
さらに、イソシアネート基が、調製されたポリウレタン基質内に存在する場合、それらの基は、水分の存在下で、(基質を後で使用するときに)、アミンを生成するかもしれない。そのようなアミンは、基質中に存在する特定のフォトクロミック化合物(特に、クロメン)を不安定化する、さらには破壊することができる。
【0008】
特許文献2には、上述した制約のない合成プロセスにより得られるフォトクロミックポリウレタンコーティングが記載されている。試薬の混合物(−イソシアネート/ポリオール−)の反応性は、実際に、ブロックトイソシアネートが使用される限り、調節される。それらのNCO基は、典型的に、適切な有機化合物の補助によりブロックされる。このブロックトイソシアネートは、十分な温度(一般に、90から200度)にされたときに、ブロッキング化合物を解放し、それゆえ、求められているポリウレタンを生成するために、存在するポリオールと自由に反応するイソシアネートである。
【0009】
残念ながら、この特許文献に述べられているように、一般に、ブロッキング化合物の全てを除去することは不可能である。それゆえ、所定量の遊離した(ブロックされていない)イソシアネートが確実に存在するようにするために、過剰のブロックトイソシアネートを常に提供しなければならない。そのような過剰なイソシアネートは、フォトクロミック化合物を含有する材料中では特に不適切である。イソシアネートはアミンに加水分解され得、これらのアミンは、そのようなフォトクロミック化合物(より具体的には、クロメンタイプの化合物)を不安定化させ、破壊できることが前記から分かっている。
【0010】
さらに、そのようなコーティング、特に、厚みのあるコーティングの合成中に、ブロッキング化合物を捕捉することは避けられない。ある場合には、コーティングの表面に気泡が形成されたことを観察することさえあり得る。
【0011】
特許文献3にも、フォトクロミックポリウレタンコーティングが記載されている。
【0012】
典型的なポリウレタンの欠点の一つは、ポリウレタンが規則正しい構造による擬似二相性であることである。そのようなポリウレタンは、完全に移動性であり、ボールの形態で存在する軟質セグメント、および硬質セグメントとして知られている剛性オリゴウレタンユニットを実際に含有する。これらのポリウレタンの凝集性は主に、硬質セグメント中に存在する、高い極性のウレタン基の間に存在する水素結合によるものである。そのため、その硬質セグメント内に局部的に集中するフォトクロミック化合物は、移動性が欠如し、したがって、問題の材料の暗化および退色の速度が遅くなることが懸念されるであろう。
【0013】
今日まで、非常に効率的であり、容易に得られるフォトクロミックウレタンは知られていない。
【0014】
特許文献4には、フォトクロミック分子を含有する(メタ)アクリルモノマーの混合物の共重合により得られる、ポリ(メタ)アクリルタイプのフォトクロミックコーティングが記載されている。それほど粘性ではないこのモノマーの混合物は、適度な費用で、良好なフォトクロミック特性を示すために、十分な厚さのコーティングを形成することができない。実際に、コーティングの薄い厚さを補うために、フォトクロミック化合物を高濃度で含ませることが必要であり、このことは、コーティング中の化合物の溶解度の観点から、問題を引き起こすことがある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第294056号明細書
【特許文献2】米国特許第6187444号明細書
【特許文献3】国際公開第01/55269号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/02449号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そのような脈絡において、本発明によれば、
アミンの潜在的な存在の問題、
規則正しい構造の問題、および
求められているコーティングの十分な厚さの問題、
などの上述した従来技術において遭遇した問題に関して、特に興味深いポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアフォトクロミックコーティングの前駆体である、新規の架橋性フォトクロミック組成物が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の新規の架橋性フォトクロミック組成物は、
少なくとも一つの不飽和基を含む少なくとも一つの非末端部分を持つ少なくとも一種類のセグメント化または非セグメント化ポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー、および
効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物、
を含有する。
【0017】
本発明の組成物は、特徴的に、不飽和基を持ち、予め構成され、フォトクロミック化合物が存在しない状況で典型的な反応により予め合成された、特定のタイプの線状ポリウレタンまたは線状ポリウレタン−ウレアを含有する。このフォトクロミック化合物は、ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアの合成後に、後になって含まれる。それゆえ、前もって、全てのイソシアネート基を反応させることができ、フォトクロミック化合物を不安定化したり破壊できるアミン基がさらに形成されるのを防ぐことができる。
【0018】
しかしながら、使用される線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアは、分子中に少なくとも一つの不飽和基を有する限りは、存在するフォトクロミック化合物が中に捕捉される適切な基質を生成するために、それ自体で、または適切なパートナー(これより先を参照のこと)とさらに架橋され易い。少なくとも一つの非末端部分内のそのような不飽和基は、末端部分に不飽和基が存在することを排除するものでは決してない。
【0019】
ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレア鎖の不飽和基を含む架橋は、炭素炭素結合を生成するために、徹底的に行われる。これは、存在するフォトクロミック化合物に不利なことでは決してない。
【0020】
問題の不飽和基は、(メタ)アクリルタイプ(すなわち、アクリルまたはメタクリル)のものであることが都合よい。
【0021】
問題の不飽和基は側基内に存在することが都合よい。それらの不飽和基が前記鎖の骨格に含まれることは避けられないが、骨格に結合した側基内に含まれることが都合よい。
【0022】
単独でまたは混合物として含まれるフォトクロミック有機化合物は、スピロキサジン、クロメン、スピロピラン、フルギドおよびフルギミドから選択されることが都合よい。そのような化合物が一緒に含まれることが特に好ましく、そのような化合物は、グレーまたはブラウンの色合いを呈することができる。
【0023】
前記化合物は、組成物の架橋により得られる基質に所望の色合いを与えることのできる効果的な量で含まれる。効果的な量は、一般に、0.1から20重量%である。
【0024】
本発明はまた、本発明の架橋性または架橋されたフォトクロミック組成物から製造されたかそれにより被覆された製品を提供する。
【0025】
本発明はさらに、前記架橋性のまたは架橋したフォトクロミック組成物を調製する方法を提供する。そのような方法は、
少なくとも一つの不飽和基を含む少なくとも一つの非末端部分を有する少なくとも一種類のポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー、
効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物、
必要に応じての、少なくとも一種類の追加の不飽和モノマー、
必要に応じての、効果的な量の少なくとも一種類のラジカル重合開始剤、および
必要に応じての、効果的な量の不活性溶媒、
を混合する工程を有してなる。
【0026】
ここで、全く制限するような様式ではなく、本発明の架橋性フォトクロミック組成物の基本要素を構成する不飽和のポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマーの性質、並びにそのポリマーを得る手段を規定することを提案する。
【0027】
本発明のポリマーは、少なくとも一つの不飽和基を持つ少なくとも一種類のジオールと、少なくとも一種類のジイソシアネートとの反応から(ポリウレタンポリマー)、または少なくとも一つの不飽和基を持つ少なくとも一種類のジオールと、少なくとも一種類のジイソシアネートと、少なくとも一種類のジアミンとの反応から(ポリウレタン−ウレアポリマー)得ることが都合よい。
【0028】
ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアの合成のためにそれ自体典型的な問題の試薬は、そのような線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアを調製するために、二官能性であるように選択される。
【0029】
上述した都合よい変種の脈絡の中で、求められている不飽和基は、使用されるジオールにより生成される。それゆえ、使用されるジオールが、その構造に少なくとも一つの(メタ)アクリル基を含有することが都合よい。そのようなジオールは市販されている。
【0030】
求められている不飽和基は、含まれるジイソシアネートにより、さらには含まれるジイソシアネートおよびジオールにより、生成されることは排除されていない。
【0031】
不飽和であり、線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアの事前の合成に用いられるそのようなジオールの性質は、どのようにも制限されるものではない様式で以下に規定される。これらは、短鎖を有し、以下の一般化学式(I):
【化1】

【0032】
ここで、
Rは、
2−C14アルキレン基と、
17までの炭素原子を含むことのできるポリアルキレンオキシド基と、
置換されていないまたはC1−C9アルキルにより置換されたフェニレン基と、
化学式
【化2】

【0033】
ここで、Xはフェニレンまたはシクロヘキシル基であり、
Aは、O、S、SO2、−CH2−、−C(CH32−または−C(CH3)(C65)であり、R3およびR4は独立して、C1−C4アルキル基、ハロゲン、都合よくは、塩素または臭素を表し、mおよびnは独立して、0から4までの整数である、
の基と、
から選択される二価の結合基であり、
1およびR2は独立して、水素またはメチル基であり、
xおよびyは独立して、0から2までの整数であり、x+yの合計が2に等しい、
の基である不飽和ジオールであることが都合よい。
【0034】
化学式(I)の好ましいジオールは、以下の化学式(Ia)および(Ib)のものである:
【化3】

【化4】

【0035】
化学式(Ib)のジオールが特に好ましい。これらの中で、以下の化学式(Ib1)のジオールが特により好ましい:
【化5】

【0036】
1=R2=Hである化学式(Ib1)のジオールは、その使用が特に推奨されるものである。これは、BAGDA(Bisphenol A Glycerolate DiAcrylate:ビスフェノールAグリセロレートジアクリレート)の名称で知られている。
【0037】
当業者は、従来のポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアの構造内で、軟質セグメント/硬質セグメントの比がフォトクロミック特性を決定することを知らない訳がない。
【0038】
上述したタイプの不飽和の短鎖ジオールを前記構造に使用することにより、フォトクロミック特性に影響を与えるために、推測的に、追加のパラメータを自由に持つ。不飽和基を互いにまたは架橋パートナーと反応させる上で、網状構造は推測的に壊れるであろうし、典型的に硬質セグメントにより与えられる硬度は減少させられる。
【0039】
本出願の発明者は、実際に、硬質セグメントの不飽和基に生じる(架橋性組成物の架橋中に)架橋によって、異質性が生じ、典型的に規則正しい構造が壊れるであろう。
【0040】
以下、不飽和の線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアの事前の合成のために用いられるジイソシアネートに関して規定する。それらのイソシアネートは、(シクロ)脂肪族ジイソシアネート(脂肪族および脂環式)から選択されることが都合よい。芳香族ジイソシアネートの使用は排除されるものではないが、(シクロ)脂肪族ジイソシアネートに関して、この(シクロ)脂肪族ジイソシアネートから調製される不飽和の線状ポリウレタンの架橋により得られる組成物の黄変は、より信頼できる様式で避ける。不飽和の線状ポリウレタンの調製のために、以下のジイソシアネートの単独または混合物の使用が特に推奨される:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート。
【0041】
上記に、不飽和イソシアネートの最終的な混合を述べた。そのような不飽和ジイソシアネートは、特に、「Chemistry and technology of isocyanates, Henry lrich, John Wiley & Sons, p.149-151」に記載されている。本発明の脈絡の中で、バイエル社によりROSKYDALUAVPLS2337の名称で市販されているものなどの、アクリレート官能基を持つ不飽和ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0042】
ポリウレタン−ウレアの事前の合成に使用できるジアミンは、短鎖ジアミン(モル質量<500)または長鎖ジアミン(モル質量≧500)であって差し支えない。それらの性質は、求められているポリウレタン−ウレアに望ましい機械的性質の関数として選択される。少なくとも一種類の短鎖ジアミンと少なくとも一種類の長鎖ジアミンとを組み合わせて使用することは排除されるものではない。
【0043】
Jeffamine(登録商標)ポリオキシアルキレンジアミンの名称でハンツマン社(Huntsman Corp.)から市販されているものなどのポリエーテルジアミンは、特に長鎖ジアミンとして含めることができる。これらのジアミンは、ポリエーテル鎖の端部に第一アミン基を含む。ポリエーテル鎖は、プロピレンオキシド(PO)部分、またはエチレンオキシド(EO)部分、もしくはプロピレンオキシドとエチレンオキシドの部分(PO/EO)のいずれかに基づく。以下に、そのようなポリエーテルジアミンの例を挙げる:
+ 3−アミノプロピル基で二つの端部が終わっているポリエチレングリコール、
+ 2−アミノプロピルエーテル基で二つの端部が終わっているポリプロピレングリコール、
+ 2−アミノプロピルエーテル基で二つの端部が終わっているポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー。
【0044】
そのような長鎖ジアミンとして、600から2,000のモル質量を有するジアミンが特に好ましい。
【0045】
短鎖ジアミンとして、脂肪族ジアミン、低モル質量(<500)のポリエーテルジアミンおよび芳香族ジアミンを特に含んで差し支えない。
【0046】
以下に、決して制限するものではない様式で例を挙げる:
脂肪族ジアミンとして:エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ビス(アミノシクロヘキシルメタン)、
ポリエーテルジアミンとして:モル質量が230から400である、2−アミノプロピルエーテル基で二つの端部が終わっているポリプロピレングリコール、
芳香族ジアミンとして:ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミンから誘導されたもの。ジエチルトルエンジアミンを用いても差し支えない。この分子は、ポリウレタン−ウレアの鎖延長部分としてよく知られている。
【0047】
第一の変更例によれば、問題の不飽和の線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアは、非セグメント化ポリマーである。それらは、少なくとも一種類のジイソシアネート、少なくとも一種類のジオールおよび最終的には少なくとも一種類のジアミンの典型的な反応から得られる。ジオールは、鎖長に関して、同じタイプのいくつかのものでも、唯一のものでもよく、ジアミンは、鎖長に関して、同じタイプのいくつかのものでも、唯一のものでもよい。
【0048】
この第一の変更例の脈絡の中で、含まれるジオールは短鎖ジオールであることが都合よい。不飽和の短鎖ジオールは、上述した化学式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ib1)のものであることが非常に都合よい。
【0049】
そのような短鎖の不飽和ジオールは、不飽和基を全く持たない他の短鎖ジオールおよび/または不飽和基を全く持たないジアミンとの混合物中に完全に含ませることができる(ポリウレタン−ウレアの調製のために)。
【0050】
使用できるジアミンの性質は先に規定されている。この脈絡において(非セグメント化ポリマーの脈絡)、短鎖ジアミンが用いられる。
【0051】
以下に、不飽和基を全く持たない他の短鎖ジオールに関して規定する。特に、短鎖ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、モル質量が500未満のポリエチレングリコール、エトキシル化ジヒドロキシビスフェノールA、ビス(ヒドロキシエチル)ヒドロキノンであってよい。このリストは、明らかに網羅的ではない。
【0052】
そのような短鎖ジオール(およびジアミン)から得られる非セグメント化ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアは、それらに効率的なフォトクロミックコーティングを構成できるようにする適切な機械的性質を有する(特に、機械強度に関して)。
【0053】
しかしながら、長鎖の不飽和ジオール(必要に応じて、長鎖ジアミンと組み合わせて)の包含は、この第一の変更例の脈絡から排除されるものではない。そのような長鎖ジオールにより得られる非セグメント化ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアは、それ自体、適切な機械的性質を有していないが、適切な保護コーティングで被覆して使用することが、本発明の内容の一部を構成する。アルドリッチ(Aldrich)社のヒドロキシ官能化(鎖の端部で)ポリブタジエンが、そのような長鎖不飽和ジオールの例として挙げられる。
【0054】
この明細書において、短鎖ジオールおよび長鎖ジオールという表現は、ポリウレタンの合成の内容において当業者に一般に知られた意味である。
【0055】
長鎖ジオールとみなされるジオールは、一般に500から10,000のモル質量を有する。そのような不飽和長鎖ジオールの非セグメント化ポリマーに関しては、先に述べられている。そのようなポリエステル型またはポリエーテル型の長鎖ジオールのセグメント化ポリマーについては、以下に述べる。
【0056】
第二の変更例によれば、問題の線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアはセグメント化ポリマーである。それらは、
少なくとも一種類のジイソシアネートと、鎖長に関して異なるタイプの少なくとも二種類のジオール:少なくとも一種類の短鎖ジオールおよび少なくとも一種類の長鎖ジオールとの典型的な反応(ポリウレタン)、または
少なくとも一種類のジイソシアネートと、少なくとも一種類のジオールと、少なくとも一種類のジアミンとの典型的な反応であって、少なくとも二種類のジオールおよびジアミンは、鎖長に関して異なるタイプのものである反応(ポリウレタン−ウレア)、
から得られる。
【0057】
本発明の架橋性フォトクロミック組成物中のそのようなセグメント化線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアの存在が特に推奨される。
【0058】
短鎖ジオール(含むことのできる短鎖ジアミンさえも)は最終基質(架橋性組成物の架橋により得られる架橋した組成物)に硬度(短鎖ジアミンおよびジオールは、硬質ジアミンおよび硬質ジオールとみなすことができる)を与え、一方で、長鎖ジオールおよび/または長鎖ジアミンは、最終基質(長鎖ジアミンおよびジオールは、軟質ジアミンおよび軟質ジオールとみなすことができる)に柔軟性を与える。したがって、機械的性質に関する非常に興味深い譲歩を得ることができる。
【0059】
二つのタイプのジオールまたは一つのタイプのジオールと一つのタイプのジアミンを含むそのような内容において、求められている不飽和基は短鎖ジオールにより生じることが都合よい。
【0060】
短鎖ジオールは、上述した化学式(I)、(Ia)、(Ib)または(Ib1)のものであることが非常に都合よい。
【0061】
長鎖ジオール、すなわち、一般にモル質量が500から10,000のジオールは、セグメント化ポリウレタンを合成するために、そのような短鎖ジオールと組み合わされる。そのよにうなジオールは、600から6,000のモル質量を有することが都合よい。
【0062】
そのような長鎖ジオールの例としては、ポリエーテルジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルジオールおよびポリカーボネートジオールが挙げられる。これらのタイプの長鎖ジオールは、"Polyurethane Handbook-2nd Edition-Gunter Oertel Section 2.2, page 21 and Section 3.1, pages 55-71: Raw materials/Polyols"に記載されており、当業者にすっかり知られている。
【0063】
それでも、以下は、それらの主題にある間に想起してもよい。
【0064】
ポリエステルジオールは、ジカルボン酸と低モル質量のジオールとの間の重縮合反応により典型的に得られる。以下をジカルボン酸として用いてもよい:三種類のフタル酸(異性体)、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、コハク酸。そのような酸の無水物を用いても差し支えない。以下を低モル質量のジオールとして用いてもよい:エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化ジヒドロキシビスフェノールA、ビス(ヒドロキシエチル)ヒドロキノン。上記リストは明らかに網羅的ではない。
【0065】
前記ポリエステルジオールは、開始剤、すなわち、ジオールの存在下で、ラクトンの開環後のラクトンの重合により得ることができる。ラクトンの例としては、カプロラクトン、プロピオラクトンおよびブチロラクトンが挙げられる。ヒドロキシカプロン酸およびジメチロールプロピオン酸などのヒドロキシ酸も、そのようなポリエステルジオールを調製するための出発化合物として用いることができる。そのような好ましいポリエステルジオールはポリカプロラクトンジオールである。それらのジオールは特に、ソルベイ(SOLVAY)社によりInterox CAPA(登録商標)ポリカプロラクトンポリオールの名称で市販されている。そのモル質量は550から4,000であることが都合よい。そのモル質量は約1,000であることが非常に都合よい。
【0066】
ポリカーボネートジオールタイプの特定のポリエステルジオールについて述べてきた。それらは、ジオールとホスゲンとの重縮合により、またはジオールの、ジフェニルカーボネートなどのカーボネートとのエステル交換により得られる。
【0067】
ポリエーテルジオールは特に、多数のポリオキシアルキレンポリオールを含む。これらの後者の化合物は、アルキレンオキシドおよび多価開始剤またはエチレングリコール、プロピレングリコールなどの開始剤の混合物の縮合により調製できる。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドからなる。プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドは、最も用いられるオキシドである。あるいは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの使用して、鎖に様々なブロックを持つポリエーテルが調製される。
【0068】
ポリオキシアルキレンポリオールの例としては、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0069】
本発明の目的のために用いることのできる別のポリエーテルジオールは、アクゾ(AKZO)社によりDianol(登録商標)の名称で市販されている、ポリエトキシル化ポリオールビスフェノールAである。
【0070】
特別なポリエーテルジオールのポリテトラメチレングリコールが上述されている。それらは、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる。それらは特に、500から10,000のモル質量を持つものとして、デュポン(DuPont)社によりTerathane(登録商標)の名称で市販されている。本発明の脈絡の中で、それらのジオールは、都合よくは1,000から2,000のモル質量、非常に都合よくは1,000のモル質量を有するものが用いられる。
【0071】
セグメント化ポリウレタン−ウレアを合成するために、上述した長鎖ジオールおよび/または長鎖ジアミンをそのような短鎖ジオールと組み合わせることが都合よい。本明細書において、そのジアミンは、特に、ポリエーテルジアミンであって差し支えないことが上記から分かる。
【0072】
本発明の好ましい変更例によれば、セグメント化ポリマー(PU、PU−ウレア)が、
化学式(I)の少なくとも一種類の短鎖ジオール、
少なくとも一種類のポリエステルタイプまたはポリエーテルタイプの長鎖ジオール、
必要に応じての、少なくとも一種類のジアミン(長鎖または短鎖)、および
少なくとも一種類のジイソシアネート、
の反応により、もしくは、
化学式(I)の少なくとも一種類の短鎖ジオール、
少なくとも一種類の長鎖ジアミン、および
少なくとも一種類のジイソシアネート、
の反応により、
得られる。
【0073】
不飽和の線状ポリウレタンおよびポリウレタン−ウレアの合成は典型的な様式で行われる。
【0074】
非セグメント化ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアについて、問題の二つまたは三つのタイプの試薬が反応せしめられる:ジオール+ジイソシアネート+必要に応じて、ジアミン。セグメント化ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアについて、問題の様々なタイプの試薬が反応せしめられる:短鎖ジオール+必要に応じて、長鎖ジオール+必要に応じて、ジアミン+ジイソシアネート。反応は、一つの工程(様々なタイプの試薬が混合され、反応せしめられる)で、または予備重合として知られる技法により、すなわち、二工程で行っても差し支えない。
【0075】
ポリウレタンおよびポリウレタン−ウレアを合成するこの第二の技法は、特に、"Polyurethane Handbook, second edition, Gunter Oertel, p.26-27"に記載されている。
【0076】
この合成の第二の技法は、連続的であり、試薬の(タイプの)一つを過剰に必要とする:ジイソシアネート、ジオール、必要に応じて、ジアミン。この技法では、試薬:アルコール、アミン、イソシアネートのモル比を注意深く選択することにより、最初に、イソシアネート基、もしくはアルコール基またはアミン基のいずれかで終わっているプレポリマーを調製することができる。二番目に、そのプレポリマーを反応させる。
【0077】
この合成の第二の技法は、実施するのが特に興味深い。これにより、
分子量の分布が狭い、出発試薬のないポリマーを得ることができ、
変換プロセス中にイソシアネートモノマーとの接触を防ぐことができ、
触媒の存在しない状況下でさえ、低い反応性のポリオールを完全に反応させることができ、したがって、求められているセグメント化構造を得ることができ、
同様に、非常に反応性の異なるジオールおよびジアミンを組み合わせて使用する場合でさえ、求められているセグメント化構造を得ることができる。
【0078】
不飽和の線状ポリウレタンおよびポリウレタン−ウレアの合成は、NCO基の数/不安定水素基(OHおよびNH2)の数の比が1に近いような量で含まれている試薬により実施することが都合よい。この比は、都合よくは、0.9から1.2の間になければならない。
【0079】
本発明の架橋性フォトクロミック組成物の組成に入る不飽和の線状ポリウレタンおよびポリウレタン−ウレアは、架橋すべき混合物が適度であって過剰ではない粘度を有するような、過剰ではない適度な分子量を有することが都合よい。
【0080】
必要であれば、この不飽和の線状ポリウレタンおよびポリウレタン−ウレアの分子量は、その合成中に制御または制限される。この目的のために、制御された量で、モノアルコールタイプまたはモノイソシアネートタイプの少なくとも一種類の単官能試薬を含むことが適している。そのような単官能試薬は連鎖停止剤として働く。そのような単官能試薬は、不飽和であっても、非不飽和であっても差し支えない。含むことのできる単官能アルコールは、モノヒドロキシアルキル、シクロアルキルまたはアリール化合物からなる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのモノ(メタ)アクリルジオールのエステルを使用しても差し支えない。そのような単官能試薬は、合成のすぐ最初からまたは合成中に含んでも差し支えない。実際に、合成を二工程(予備重合として知られる技法により)で行う場合、その試薬は、第二工程中に必ず含まれる。
【0081】
使用できる単官能イソシアネートとしては、エチルイソシアナトメタクリレート、イソプロペニルジメチルベンジルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートおよびフェニルイソシアネートが挙げられる。
【0082】
不飽和ポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマーの性質および形成が先に規定されており、そのポリマーが、本発明の架橋性フォトクロミック組成物の基本要素を構成し、その組成物は、非常に効率的なフォトクロミックコーティングの前駆体として現れる。
【0083】
そのポリマーは、架橋から形成される基質中にフォトクロミック化合物を捕捉するために、それ自体と架橋できる。
【0084】
第一の変更例によれば、本発明の架橋性フォトクロミック組成物は、前記ポリマーとの「架橋するパートナー」は全く含まない。
【0085】
好ましい第二の変更例によれば、本発明のフォトクロミック組成物はそのような「架橋するパートナー」を少なくとも一種類含む。「架橋するパートナー」は、不飽和モノマーからなることが都合よく、これは、そのような(メタ)アクリルタイプの不飽和モノマーからなることが都合よい。そのような(メタ)アクリレートは、単官能、二官能、三官能、四官能、五官能または六官能であって差し支えない。これは、メチル、エチル、ブチル、エチル−ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、イソボルニル、ラウリル(メタ)アクリレート;エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジ−、トリ−、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエトキシル化プロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ−またはテトラ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;およびそれらの混合物からなることが都合よい。
【0086】
スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルトルエン、tertブチルスチレン、ジビニルベンゼンおよびジイソプロペニルベンゼンなどのビニル芳香族モノマーを、架橋するパートナーとして、本発明の架橋性フォトクロミック組成物中に含んでも差し支えない。
【0087】
ジ(メタ)アクリレートモノマーおよび特に、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートタイプのものは、そのようなパートナーとして群を抜いて好ましい。これらのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、以下の化学式:
【化6】

【0088】
ここで、
各R1は、独立して、水素またはメチル基であり、
x、yおよびzは、独立して、0から15未満の数であり、3<x+y+z<15である、
のものであることが都合よい。
【0089】
それゆえ、フォトクロミックコーティングとして特に興味深い基質前駆体(前記架橋した組成物)である、本発明の架橋性フォトクロミック組成物は、
少なくとも一種類のポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー、
効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物、
必要に応じての、少なくとも一種類の不飽和モノマー、
を含有する。
【0090】
この不飽和モノマーは一般に、使用されるときに、90:10から10:90の間の不飽和の線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレア/不飽和モノマーの重量比で存在する。
【0091】
本発明の架橋性フォトクロミック組成物は、さらに、不活性溶媒および/またはラジカル重合開始剤および/または様々な添加剤を含むことができる。
【0092】
これらの異なるタイプの化合物を含有することは、強制的ではない。
【0093】
以下は、溶媒について規定するものである。
【0094】
組成物を粉末の形態で取り扱う場合(粉末の不飽和の線状PUまたはPU−ウレアポリマー+粉末フォトクロミック化合物)、溶媒を含むことは排除される。この粉末は、例えば、本発明のオリジナルのフォトクロミックコーティングで被覆することが望ましい基体上に溶融される。
【0095】
組成物自体が適度な粘度を有する場合、溶媒を含むことは(問題の組成物の粘度に関して)不必要であり得る。実際に、不飽和の線状ポリウレタンまたはポリウレタン−ウレアは適度な粘度を有することができる、または含まれる不飽和モノマーが溶媒の役割を果たすことができる。
【0096】
溶媒を含むことは、特定の脈絡において、適しており、欠くことのできないこともある。以下が、可能性のある溶媒として非網羅的な様式で挙げられる:トルエン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、石油蒸留物。
【0097】
以下は、ラジカル重合開始剤に関して規定するものである。
【0098】
架橋が電子ビームにより行われる場合には、その開始剤を含む必要はない。
【0099】
架橋が、熱重合タイプ、光重合タイプ、または熱重合と光重合の混合タイプのものである場合、少なくとも一つのタイプのラジカル重合開始剤を本発明の重合性組成物中に含ませる必要がある。この開始剤は、効果的であるが過剰ではない量で含まれることが都合よい。そのような量は、一般に、架橋すべきポリマー+必要に応じてのモノマーの重量に対して0.01重量%から10重量%(より一般的には、0.01重量%から5重量%)である。
【0100】
存在するフォトクロミック化合物に有害な影響を全く与えない開始剤を使用することが優先される。
【0101】
特許文献4に引用されている過酸化物およびアゾビス(有機ニトリル)化合物が、全く制限するものではない様式で、本発明の組成物中に含むことのできる熱重合開始剤としてあげられる。より具体的には、アゾビス(有機ニトリル)が好ましく、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−カルボニトリル、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)およびアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。
【0102】
特許文献4に列記された光開始剤が、全く制限するものではない様式で、本発明の組成物中に含むことのできる光重合開始剤としてあげられる。より具体的には、アシルオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドが好ましい。特に、チバ・ガイギー(CIBA-GEIGY)社より市販されている光開始剤IRGACURE 819が好ましい。
【0103】
熱および/または光の作用の元で行われるラジカル重合は、存在するポリマー/モノマーの性質に適合されるように一般的な条件下で行われる。
【0104】
最後に、本発明の架橋性組成物中に含んでもよい様々な添加剤について、以下に規定する。それら添加剤は様々な性質のものであって差し支えない。添加剤は、特に、酸化防止剤、光安定剤、接着促進剤、表面均染剤であって差し支えない。
【0105】
上記に定義した本発明の新規の架橋性フォトクロミック組成物は、架橋後に、架橋されたフォトクロミック組成物を生成することができ、この組成物は、本発明の別の目的を構成し、これは、上述したように、基体の特に効率的なフォトクロミックコーティング、またはそれら自体特に効率的であるフォトクロミックレンズを構成できる。そのようなレンズを得るために、溶媒を含まない、本発明の新規の架橋性フォトクロミック組成物は、典型的に、適切な成形型中に注型または射出される。
【0106】
それゆえ、本発明はまた、架橋したフォトクロミック組成物、架橋性フォトクロミック組成物により被覆され、架橋される基体、および架橋したフォトクロミック組成物に基づくフォトクロミックレンズにも関する。
【0107】
そのような基体は、様々なタイプのもの、特に、ガラス、木、コンクリート、プラスチックのものであって差し支えない。基体は、特に、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリウレタン−ウレア、ポリチオウレタン−ウレア、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジエチレングリコールビス−アリルカーボネートの基体などの、光学品質の有機ポリマーのものであることが好ましい。
【0108】
本発明の架橋性フォトクロミック組成物は、基体上にあるときは、効率的であり、様々な厚さ、特に、20μmより大きい、厚い厚さのものである架橋したフォトクロミックコーティングを生成できる。
【0109】
本発明の架橋性組成物について、そのようなコーティングは、厚さおよびフォトクロミック化合物の濃度について、容易に最適化される。
【0110】
これらのコーティング、およびこれらの被覆された基体は、特に問題なく得ることができる。一般に、基体は、コーティングのその表面への付着性を促進するように表面処理されている。このタイプの処理は、当業者には馴染みのあるものである。それゆえ、ポリマーレンズの表面は、化学処理(アルカリ処理)しても、超音波洗浄しても、またはプラズマ処理を施しても差し支えない。また、接着プライマとして知られる接着アンダーコートを処理済み表面に施しても差し支えない。
【0111】
次いで、都合よく処理された基体は、従来のコーティング技法、スピンコーティング、噴霧コーティング、浸漬コーティング、およびカーテン・コーティングを実施することにより、本発明の架橋性フォトクロミック組成物により被覆される。
【0112】
次いで、被覆された基体を、架橋性コーティングを架橋させるように、熱的および/または照射により、処理する。このように、架橋したフォトクロミックコーティングにより被覆された基体が得られる。
【0113】
オリジナルの架橋性フォトクロミック組成物(本発明の第一の目的)から得られたそのようなフォトクロミックコーティングの耐磨耗性は、コーティングに、硬質の透明保護層を塗布することにより改善できる。これは、特に、米国特許第3971872号明細書に記載されているような、保護層であって差し支えない。そのような保護層は、着色剤および/または紫外線吸収剤を含有することができる。それゆえ、保護層は、コーティングを機械的攻撃および光の両方から保護する。
【0114】
最後の目的によれば、本発明は、本発明の第一の目的を構成する新規の架橋性フォトクロミック組成物を調製する方法に関する。この方法は、
(メタ)アクリルタイプであることが都合よい、少なくとも一つの不飽和基を含む、末端部分ではない、鎖を構成する少なくとも一つの部分を有する少なくとも一種類のポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマーを、
スピロキサジン、クロメン、スピロピラン、フルギドおよびフルギミドから選択されることが都合よい、効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物と、
必要に応じて、単官能、二官能、三官能、四官能、五官能または六官能(メタ)アクリレートタイプであることが都合よい、少なくとも一種類の不飽和モノマーと、
必要に応じて、効果的な量の少なくとも一種類のラジカル重合開始剤と、
必要に応じて、効果的な量の不活性溶媒と、
混合する工程を有してなる。
【0115】
列記した試薬のそれぞれが、本明細書に先に詳細に記載されている。
【実施例】
【0116】
本発明を、以下の実施例により、様々な態様(架橋性および架橋したフォトクロミック組成物、その形成および使用)について説明する。
【0117】
使用した略語:
HQME:ヒドロキノンモノメチルエーテル
CR173:以下の化学式のフォトクロミック化合物:
【化7】

【0118】
NMP:N−メチルピロリジノン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BAGDA:ビスフェノールAグリセロレート(1グリセロール/フェノール)ジアクリレート
Terathane(登録商標)1000:約1000の重量平均分子量を持つポリテトラヒドロフラン直鎖ポリマー
PEG(550)DMA:約550の数平均分子量を持つポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート
PEG(875)DMA:約875の数平均分子量を持つポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート
BPA(4OE)DMA:エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(4OE/フェノール)
DBTL:ジブチルスズジラウレート
Desmodur W:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(バイエル)
Vazo 52またはADVN:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)(アクゾ)
VPLS236:重量平均分子量が1000の線状ポリカーボネートジオール(バイエル)
DPEPHA:ジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサアクリレート
Tinuvin 765(登録商標):ビス(1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびメチル−1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物(チバ)

実施例1
本発明の架橋性フォトクロミック組成物(架橋パートナーを含む、非セグメント化不飽和PUベース)の調製、およびその架橋
組成物A:
0.2gのHQME、151.28gのBAGDAおよび441.62gのPEG(875)DMAを、撹拌機、温度計、滴下漏斗および乾燥空気パージを備えた1リットルのガラス製温度調節反応器中に導入した。均質な溶液が得られるまで、混合物を窒素条件下の60℃で撹拌した。次いで、10滴のDBTLを加えた。
【0119】
完全に均質になった後、81.8gのDesmodur Wを加え、この樹脂混合物を4時間に亘り60℃で撹拌状態に維持した。最後に、得られた樹脂混合物を周囲温度まで冷却した。
【0120】
組成物B:
1.52gのCR173および0.28gのADVNを、8gのN−メチルピロリドンNMP中に溶解させた。
【0121】
組成物C:
20gの組成物Aを4.9gのPEG(875)DMAおよび組成物Bと混合した。
【0122】
得られた混合物を周囲温度で静置して気泡を除去した。CR39レンズブランク(ポリジエチレングリコールビス−アリルカーボネート)を、20℃で15分間に亘り15質量%の水酸化ナトリウム溶液により事前に加水分解させた。
【0123】
レンズを本発明の組成物Cで被覆した(1,000rpm/秒の加速度による7秒間に亘る2,500rpmでの「スピンコーティング」)。
【0124】
次いで、被覆したレンズを、透明窓を備えたチャンバ中に直ちに導入し、3分間に亘り乾燥窒素(20リットル/分)で清掃し、次いで、6分間に亘り赤外線(500W)を照射した。コーティングは40μmの厚さを有した。
【0125】
実施例2
本発明の架橋性フォトクロミック組成物(架橋パートナーを含まない、セグメント化不飽和PUベース)の調製、およびその架橋
組成物A:
0.25gのHQME、61.7gのTerathane 1000、61.7gのBAGDAおよび166.5gのシクロペンタノンを、撹拌機、温度計、滴下漏斗および乾燥空気パージを備えた1リットルのガラス製温度調節反応器中に導入した。均質な溶液が得られるまで、混合物を窒素条件下の60℃で撹拌した。次いで、10滴のDBTLを加えた。
【0126】
完全に均質になった後、49.44gのDesmodur Wを加え、この樹脂混合物を4時間に亘り60℃で撹拌状態に維持した。次いで、6.63gのCR173を撹拌しながら混合物中に溶解させた。最後に、得られた樹脂混合物を周囲温度まで冷却した。
【0127】
組成物B:
100gの組成物Aを0.72gのシクロペンタノンおよび0.36gのADVNと混合した。
【0128】
得られた混合物を周囲温度に静置して、気泡を除去した。CR39レンズブランク(ポリジエチレングリコールビス−アリルカーボネート)を、20℃で15分間に亘り15質量%の水酸化ナトリウム溶液により事前に加水分解させた。
【0129】
レンズを本発明の組成物Bで被覆した(1,000rpm/秒の加速度による99秒間に亘る1,000rpmでの「スピンコーティング」)。
【0130】
次いで、被覆したレンズを、赤外線に対して透明な窓を備えたチャンバ中に直ちに導入し、3分間に亘り乾燥窒素(20リットル/分)で清掃し、次いで、6分間に亘り赤外線(500W)を照射した。コーティングは40μmの厚さを有した。
【0131】
実施例3
本発明の架橋性フォトクロミック組成物(架橋パートナーを含む、セグメント化不飽和PUベース)の調製、およびその架橋
組成物A:
0.216gのHQMEおよび76.7gのNMPを、撹拌機、温度計、滴下漏斗および乾燥空気パージを備えた1リットルのガラス製温度調節反応器中に導入した。化合物が完全に溶解するまで、混合物を撹拌状態に維持した。
【0132】
完全な溶解後、13.28gのHEMA、105.9gのBAGDA、109.32gのTetrathane 1000、90gのPEG(550)DMA、および10滴のDBTLを加えた。均質な溶液が得られるまで、混合物を窒素条件下の60℃で撹拌した。
【0133】
完全に均質になった後、98.46gのDesmodur Wを1時間に亘って加え、この樹脂混合物を1時間に亘り70℃で撹拌状態に維持した。次いで、7.66gのCR173を撹拌しながら混合物中に溶解させた。撹拌は、固体がなくなるまで続けた。最後に、得られた樹脂混合物を周囲温度まで冷却した。
【0134】
組成物B:
0.45gのADVNを10.54gのNMP中に溶解させた。
【0135】
組成物C:
以下の材料を、1時間に亘り周囲温度で一緒に混合した。
【表1】

【0136】
混合物を、気泡を除去するように、周囲温度に静置した。
【0137】
CR39レンズブランク(ポリジエチレングリコールビス−アリルカーボネート)を、20℃で15分間に亘り15質量%の水酸化ナトリウム溶液により事前に加水分解させた。次いで、コーティング前に、レンズを脱塩水で完全に洗浄した。最後に、表面処理済みレンズを、1,000rpm/秒の加速度による7秒間に亘る1,500rpmでのスピンコーティング技法を行うことにより、本発明の組成物Cで被覆した。
【0138】
次いで、被覆したレンズを、赤外線に対して透明な窓を備えたチャンバ中に導入し、3分間に亘り乾燥窒素(20リットル/分)で清掃し、次いで、5分間に亘り赤外線(500W)を照射した。コーティングは40μmの厚さを有し、エチルアルコール、酢酸エチル、およびアセトンなどの通常の溶媒に対して反応しなかった。
【0139】
実施例4
Terathane(登録商標)1000を等量のVPLS236と置き換えたことを除いて、実施例3に記載した操作と同じ操作を行った。
【0140】
実施例5
PEG(550)DMAを等量のPEG(875)DMAと置き換えたことを除いて、実施例4に記載した操作と同じ操作を行った。
【0141】
実施例6
本発明の架橋性フォトクロミック組成物(架橋パートナーを含む、セグメント化不飽和PUベース)の調製、およびその架橋
組成物A:
0.18gのHQMEおよび80gのNMPを、撹拌機、温度計、滴下漏斗および乾燥空気パージを備えた1リットルのガラス製温度調節反応器中に導入した。化合物が完全に溶解するまで、混合物を撹拌状態に維持した。完全な溶解後、88.25gののBAGDA、91.1gのTetrathane 1000、75gのPEG(875)DMA、10.85gのHEMAおよび10滴のDBTLを加えた。均質な溶液が得られるまで、混合物を乾燥窒素条件下の60℃で撹拌した。
【0142】
完全に均質になった後、82.05gのDesmodur Wを20〜30分間に亘って加え、この樹脂混合物を4時間に亘り60℃で撹拌状態に維持した。次いで、5mlのMeOHを三回加えた。このとき、各MeOHの添加の間に15分間に亘り混合物を撹拌した。NCOのないことを、赤外線(FTIR)分析により調べた。最後に、得られた樹脂混合物を周囲温度まで冷却し、貯蔵した。
【0143】
組成物B:
1gのADVNを2.1gのNMP中に溶解させた。
【0144】
組成物C:
以下の材料を、以下に挙げた順番で加え、固体がなくなるまで、周囲温度で混合した。
【表2】

【0145】
組成物D:
42.74gの組成物Aを上記組成物Dに加え、完全に均質になるまで、完全に混合した。
【0146】
完全に均質になった後、1.01gの組成物Bを加えた。次いで、得られた混合物を気泡を除去するように、周囲温度に静置した。
【0147】
レンズの調製:
ゾルゲルタイプの保護コーティングで被覆されたポリカーボネートレンズ(SOLA)を、45秒間に亘り45℃で水酸化ナトリウムの水溶液中に浸漬し、次いで、脱イオン水で濯いだ。このように得られたレンズブランクを、表面に適量の接着促進溶液(以下の組成物E)を付着させることにより前処理した。この付着は、スピンコーティング技法により行った。
【0148】
組成物E(接着促進溶液):
96gの2−ブタノンを、2−プロパノール中のN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ポリエチレンイミンヒドロクロライドの50%溶液4gと混合した。
【0149】
前処理したレンズを本発明の組成物Dで被覆した(1,000rpm/秒の加速度による7秒間に亘る2,500rpmでのスピンコーティング)。
【0150】
次いで、被覆したレンズを、赤外線に対して透明な窓を備えたチャンバ中に直ちに導入し、3分間に亘り乾燥窒素(20リットル/分)で清掃し、次いで、6分間に亘り赤外線(500W)を照射した。コーティングは100μmの厚さを有した。
【0151】
付着試験
レンズ上の本発明のコーティングの付着を、ASTM基準のD3359−97による、接着テープ試験法としいて知られている試験法にしたがって試験した。この付着は、その基準によれば、0%の除去で58である。
【0152】
比較例1
以下の製品を混合することにより、メタクリルコーティング樹脂組成物(したがって、ポリウレタンではない)を調製した。同じフォトクロミック化合物を同量含ませた。実施したプロセスは同じであった。
【表3】

【0153】
この樹脂を、本発明の実施例1から3において調製したCR39レンズ上に7秒間に亘り1,500rpmでのスピンコーティングにより塗布した。
【0154】
被覆したレンズを、特許文献4の第37頁のパートDに述べられている方法で硬化させた。
【0155】
得られたコーティングは15μmの厚さであった。
【0156】
上述した実施例により得た、本発明のコーティングの性質が、以下の表Iに示されている。
【表4】

【0157】
コーティングのフォトクロミック特性が以下に示される。
【0158】
フォトクロミック特性の測定
190から900nmの光透過率を、各々の試料について、22℃において、明るい状態(T0)で測定し、次いで、フィルタを通してのキセノン光源(60%のAM2に近い分布)に15分間露出した後の暗い状態(TD15)で測定した。明かりを消し、透過率を退色の1分後、5分後および60分後に測定した。これらの透過率は、それぞれ、TF1、TF5、およびTF60と下記に示されている。1分後と5分後の百分率の退色は、それぞれ、以下の式:TD15−TF1およびTD15−TF5により、それぞれ、%recF1および%recF5と以下に示されている。
【0159】
これらのデータにより、フォトクロミック製品の退色速度を評価することができる。
【0160】
ASTM E308−90法にしたがって、透過スペクトルから、色座標X、Y、Zを計算した。ASTM D1925−70により、明るい状態の黄色度指数をこれらX、Y、Z座標から計算した。
【0161】
これにより得られた結果が以下の表IIに列記されている。
【表5】

【0162】
これらのデータは、フォトクロミック化合物の濃度が本発明(1.8%)よりも比較例(3.8%)のほうが高い場合でさえも、比較例の暗化状態に対する透過率は、本発明により得られたものよりも大きいことを示している。反応速度データは、本発明の新規の組成物はフォトクロミック用途に特に適していることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性フォトクロミック組成物であって、
少なくとも一つの不飽和基を含む少なくとも一つの非末端部分を有する少なくとも一種類のセグメント化または非セグメント化ポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー、および
効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物、
を有してなることを特徴とするフォトクロミック組成物。
【請求項2】
前記線状ポリマーの非末端部分の少なくとも一つの不飽和基が(メタ)アクリルタイプのものであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項3】
前記線状ポリマーの非末端部分の少なくとも一つの不飽和基が側鎖に含まれていることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項4】
前記ポリウレタンタイプの線状ポリマーが、少なくとも一つの不飽和基を持つ少なくとも一種類のジオールと、少なくとも一種類のジイソシアネートとの間の反応から生じるものであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマーが、少なくとも一つの不飽和基を持つ少なくとも一種類のジオールと、少なくとも一種類のジイソシアネートと、少なくとも一種類のジアミンとの間の反応から生じるものであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項6】
前記ジオールの少なくとも一つの不飽和基が(メタ)アクリル基であることを特徴とする請求項4または5記載のフォトクロミック組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一種類の不飽和基を有する少なくとも一種類のジオールが、化学式(I):
【化1】

ここで、
Rは、
2−C14アルキレン基と、
17までの炭素原子を含むポリアルキレンオキシド基と、
置換されていないまたはC1−C9アルキルにより置換されたフェニレン基と、
化学式
【化2】

ここで、Xはフェニレンまたはシクロヘキシル基であり、
Aは、O、S、SO2、−CH2−、−C(CH32−または−C(CH3)(C65)であり、R3およびR4は独立して、C1−C4アルキル基、ハロゲン、都合よくは、塩素または臭素を表し、mおよびnは独立して、0から4までの整数である、
の基である基と、
から選択される二価の結合基であり、
1およびR2は独立して、水素またはメチル基であり、
xおよびyは独立して、0から2までの整数であり、x+yの合計が2に等しい、
を有することを特徴とする請求項4または5記載のフォトクロミック組成物。
【請求項8】
1が、
【化3】

ここで、R3およびR4が独立して、塩素または臭素である、
を表すことを特徴とする請求項7記載のフォトクロミック組成物。
【請求項9】
前記線状ポリマーが、セグメント化されており、
(i) 前記化学式(I)の少なくとも一種類のジオールと、
少なくとも一種類の長鎖ポリエステルまたはポリエーテルジオールと、
必要に応じて、少なくとも一種類のジアミンと、
少なくとも一種類のジイソシアネートと、
の反応、または
(ii) 前記化学式(I)の少なくとも一種類のジオールと、
少なくとも一種類の長鎖ジアミンと、
少なくとも一種類のジイソシアネートと、
の反応、
から得られるものであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項10】
前記反応が、少なくとも一種類の単官能アルコールまたはイソシアネートを添加することにより停止されることを特徴とする請求項4または5記載のフォトクロミック組成物。
【請求項11】
少なくとも一種類の追加の不飽和モノマーをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項12】
前記不飽和ポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー対前記不飽和モノマーの重量比が、90/10から10/90に及ぶことを特徴とする請求項11記載のフォトクロミック組成物。
【請求項13】
請求項1記載の組成物を架橋させることにより得られる架橋したフォトクロミック組成物。
【請求項14】
請求項1記載の架橋性フォトクロミック組成物により被覆された製品。
【請求項15】
請求項13記載の架橋したフォトクロミック組成物により被覆された製品。
【請求項16】
請求項13記載の架橋したフォトクロミック組成物に基づくフォトクロミックレンズ。
【請求項17】
フォトクロミック組成物を調製する方法であって、
少なくとも一つの不飽和基を含む少なくとも一つの非末端部分を有する少なくとも一種類のポリウレタンタイプまたはポリウレタン−ウレアタイプの線状ポリマー、
効果的な量の少なくとも一種類のフォトクロミック有機化合物、
必要に応じて、少なくとも一種類の追加の不飽和モノマー、
必要に応じて、効果的な量の少なくとも一種類のラジカル重合開始剤、および
必要に応じて、効果的な量の不活性溶媒、
を混合する工程を有してなることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−513276(P2006−513276A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−586207(P2003−586207)
【出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/011892
【国際公開番号】WO2003/089489
【国際公開日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】