説明

フォトサーモグラフィ用の化学増感法

ハロゲン化銀粒子上又は粒子の周りのジフェニルホスフィンスルフィド化合物の酸化分解によりハロゲン化銀粒子を化学増感することによってフォトサーモグラフィ乳剤を調製する。この手順は独特の工程順を用い、写真スピードおよび製造再現性の向上を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトサーモグラフィ乳剤および材料に使用するためのハロゲン化銀粒子の化学増感法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学線で画像形成され、その後、熱を用い、液体処理を伴わずに現像される銀含有フォトサーモグラフィ画像形成材料(すなわち、感光性で熱現像可能な画像形成材料)は、当分野において長年にわたり知られている。このような材料は、特定の電磁線(例えば、X線、紫外線、可視光または赤外線)へのフォトサーモグラフィ材料の画像様露光により画像が形成され、熱エネルギーの使用により現像される記録プロセスにおいて使用される。「ドライシルバー」材料としても知られているこれらの材料は、一般に、下記(a)〜(d)が塗布されている支持体を含む。(a)そのような露光により、露光された粒子(これらは、現像段階における後続の銀画像形成のための触媒として作用することができる)に潜像を生じさせる光触媒(すなわち、ハロゲン化銀などの感光性化合物)、(b)相対的または完全に非感光性の被還元性銀イオン源、(c)前記被還元性銀イオンのための還元性組成物(通常は現像剤を含む)、および(d)親水性または疎水性バインダー。その後、その潜像は、熱エネルギーの適用により現像される。
【0003】
フォトサーモグラフィ材料において、写真用ハロゲン化銀の露光は、銀原子(Ag0nを含有する小さなクラスタを生じる。当分野において潜像として知られているこれらのクラスタの画像分布は、一般に、通常の手段では見ることができない。したがって、感光性材料をさらに現像して可視像を生じさせなければならない。これは、その潜像の銀含有クラスタを有するハロゲン化銀粒子と触媒的近接状態にある銀イオンを還元することにより達成される。これにより、白黒画像が生じる。非感光性銀源は、触媒作用で還元されて、可視白黒ネガ画像を形成するが、一般に、ハロゲン化銀の多くはハロゲン化銀として残り、還元されない。
【0004】
フォトサーモグラフィ材料において、多くの場合「現像剤」と呼ばれる被還元性銀イオン用の還元剤は、潜像存在下で銀イオンを金属銀に還元することができ、好ましくは、反応を生じさせるために充分な温度に加熱されるまでは比較的活性が低い、いずれの化合物であってもよい。フォトサーモグラフィ材料用の現像剤として機能する多種多様な類の化合物が、文献に開示されている。高温で、被還元性銀イオンは、還元剤により還元される。フォトサーモグラフィ材料では、加熱すると、この反応が潜像を取り巻く領域において優先的に発生する。この反応により、画像形成層(複数を含む)中の色調剤および他の成分の存在に依存して黄色から濃黒色の範囲の色を有する金属銀のネガ画像が生じる。
【0005】
フォトサーモグラフィと写真の違い
画像形成分野では、ずっと以前から、サーモグラフィー分野は写真の分野と明確に区別されると認識されている。フォトサーモグラフィ材料は、水性処理溶液での処理を必要とする従来のハロゲン化銀写真材料とは有意に異なる。
【0006】
上述のように、フォトサーモグラフィ画像形成材料において、可視像は、熱によりその材料内に組み込まれた現像剤の反応の結果として作られる。50℃以上での加熱がこの乾式現像には不可欠である。対照的に、従来の写真画像形成材料は、可視像を生じさせるために、より穏やかな温度(30℃から50℃)での水性処理槽における処理を必要とする。
【0007】
フォトサーモグラフィ材料では、ほんの少量のハロゲン化銀を使用して光を捕捉し、非感光性の被還元性銀イオン(例えば、カルボン酸銀または銀ベンゾトリアゾール)源を使用して、熱現像を用いて可視像を生成する。したがって、画像形成済み感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源および組み込まれた還元剤を伴う物理的な現像プロセスのための触媒としての役割を果たす。対照的に、従来の湿式処理白黒写真材料は、一つの形態の銀(すなわち、ハロゲン化銀)しか使用せず、これは、化学現像すると少なくとも一部はそれ自体が銀画像に変換され、または物理的現像時には外部銀源(もしくは対応する金属への還元により黒色画像を形成する他の被還元性金属イオン)の追加を必要とする。従って、フォトサーモグラフィ材料に必要な単位面積当たりのハロゲン化銀量は、従来の湿式処理写真材料において使用される量のほんの数分の一である。
【0008】
フォトサーモグラフィ材料では、画像形成のための「化学」の全てが、材料それ自体に組み込まれている。例えば、このような材料は、現像剤(すなわち、被還元性銀イオン用の還元剤)を含むが、従来の写真材料は、通常、含まない。フォトサーモグラフィ材料への現像剤の組み込みは、様々なタイプの「カブリ」形成の増加または他の望ましくないセンシトメトリー的副作用を導き得る。従って、これらの問題を最少にするようなフォトサーモグラフィ材料の調製および製造に多くの努力が成されてきた。
【0009】
さらに、フォトサーモグラフィ材料において、未露光のハロゲン化銀は、現像後、一般には無傷のままであり、その材料はさらなる画像形成および現像に対して安定しているはずである。対照的に、ハロゲン化銀は、(水性定着段階における)さらなる画像形成を防止するために、溶液現像後に従来の写真材料から除去される。
【0010】
フォトサーモグラフィ材料は乾式熱処理を必要とするため、製造および使用の際、従来の湿式処理ハロゲン化銀写真材料と比較して明確に異なる問題を呈し、異なる材料を必要とする。従来のハロゲン化銀写真材料において一つの効果を有する添加剤は、基礎を成す化学が著しく複雑であるフォトサーモグラフィ材料に組み込まれたとき、全く異なる挙動をとることもある。例えば安定剤、カブリ防止剤、スピード増加剤、超増感剤ならびに分光および化学増感剤などの添加剤の従来の写真材料への組み込みにより、そのような添加剤がフォトサーモグラフィ材料において有益と証明されるか、有害であるかと証明されるかを予測することはできない。例えば、従来の写真材料では有用な写真カブリ防止剤が、フォトサーモグラフィ材料に組み込まれたときに様々なタイプのカブリを生じさせること、写真材料では有効である超増感剤が、フォトサーモグラフィ材料では不活性であることは、珍しいことではない。
【0011】
フォトサーモグラフィ材料と写真材料の間のこれらおよび他の相違は、Imaging Processes and Materials(Neblette’s Eighth Edition),上述,Unconventional Imaging Processes,E.Brinckman et al.(Eds.),The Focal Press,London and New York,1978,pp.74−75;Zou et al.,J.Imaging Sci.Technol.1996,40,pp.94−103;およびM.R.V.Sahyun,J.Imaging Sci.Technol.1998,42,23に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
フォトサーモグラフィ材料の使用における一つの努力目標は、利用可能な画像形成源と適合性も有するそのような材料において充分なフォトサーモグラフィスピードを達成することである。
【0013】
純粋な写真用ハロゲン化銀(塩化銀、臭化銀およびヨウ化銀)および混合型ハロゲン化銀(例えば、塩臭ヨウ化銀)の各々が、電磁スペクトルのUV、近UVおよび青色領域の内の放射線に対して、波長(分光感度)および効率(スピード)、両方に関するそれ独自の固有のレスポンスを有する。従って、ハロゲン化銀粒子は、銀原子およびハロゲン原子のみからなる場合、具体的なハロゲンのレベル、結晶形態(結晶または粒子の形および構造)、結晶欠陥、応力および転位ならびにそのハロゲン化銀の結晶格子内または上に組み込まれたドーパントに依存して被定義感光レベルを有する。
【0014】
化学増感(一般には硫黄増感)は、増感中心[例えば、(Ag2S)nなどの硫化銀クラスタ]が個々のハロゲン化銀粒子上に導入される、ハロゲン化銀結晶形成中または後のプロセスである。例えば、硫化銀核は、ハロゲン化銀粒子成長の様々な段階中、または完了後にそのハロゲン化銀と硫黄付与化合物の直接反応により導入することができる。これらの核は、優先的な潜像中心形成のために浅い電子トラップとして通常は機能する。他のカルコゲン(SeおよびTe)も同様に機能し得る。これらの核の存在が、得られるハロゲン化銀粒子のスピードおよび放射線に対する感光度を増大させる。このために有用な硫黄付与化合物には、例えば、Sheppard et al.,J.Franklin Inst.,1923,pp.196,653,and 673,C.E.K.Mees and T.H.James,The Theory of the Photographic Process,4th Edition,1977,pp.152−3、およびTani,T.,Photographic Sensitivity:Theory and Mechanisms,Oxford University Press,NY,1995,pp.167−176により記載されているような、チオ硫酸塩(例えば、チオ硫酸ナトリウム)および様々なチオ尿素(例えば、アリルチオ尿素、チオ尿素、トリエチルチオ尿素および1,1’−ジフェニル−2−チオ尿素)が挙げられる。
【0015】
フォトサーモグラフィ乳剤において、感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源と触媒的近接(または、反応的に組み合わさる)状態になければならない。フォトサーモグラフィ乳剤では乳剤製造手順および化学的環境が異なるため、従来の写真乳剤における化合物(例えば、化学増感剤)によって達成された効果は、フォトサーモグラフィ乳剤において必ずしも可能でない。
【0016】
例えば、フォトサーモグラフィ乳剤では、二つのタイプの化学増感段階を用いて、スピードを増加させている。(a)何らかの手法で後に被還元性銀イオン含有溶液に混入される予め形成されたハロゲン化銀粒子の化学増感、および(b)被還元性銀イオンと既に密着している予め形成されたハロゲン化銀粒子の化学増感。
【0017】
第一のアプローチ(a)では、多数の伝統的な方法(写真乳剤のために用いられているもの)を用いることができるが、第二のアプローチ(b)には、全く特異的な方法および独特な化合物が必要とされることが多い。いずれのアプローチを用いるにせよ、低カブリ(Dmin)を維持しながらスピードの追加を達成することは、相当難しい。
【0018】
化学増感のもう一つの方法は、米国特許第5,891,615号(Winslowら)に記載されているようなフォトサーモグラフィ乳剤中の硫黄含有分光増感色素の酸化分解により達成される。一般に、この方法は、ハロゲン化銀粒子と非感光性の銀イオン源の両方を含有する乳剤中の予め形成されたハロゲン化銀粒子上または周囲に硫黄含有色素(例えば、硫黄含有メロシアニン色素)を供給する段階を含む。その後、その乳剤に臭化水素酸ピリジニウム過臭化物(PHP)などの強い酸化剤を添加することにより、そのハロゲン化銀粒子上または周囲の硫黄含有化合物を分解する。この分解後、その非感光性銀塩の一部を、無機ハロゲン化物化合物の添加により、ハロゲン化銀にインサイチュー(in-situ)で変換する。
【0019】
フォトサーモグラフィ材料は、顧客、監督官庁および製造業者により発せられる、絶え間なく向上する性能、保管および製造の要求に見合うように、絶えず設計し直されている。これらの要求の一つは、有意なカブリ(Dmin)の有意な増加またはDmaxの減少を伴わない写真フォトスピード増加である。したがって、米国特許第5,891,615号(上述)に記載されている現行化学増感法は、フォトサーモグラフィ乳剤に望ましいスピードをもたらしたが、このような乳剤によりいっそう速いフォトスピードをもたらす改善された方法が、必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、下記構造PS:
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Ph1およびPh2は、同じまたは異なるフェニル基であり;R1およびR2は、各々、独立して、水素またはアルキルまたはフェニル基であり;Lは、直接結合または二価の連結基であり;mは、1または2であり;mが、1であるときには、R3は、一価の基であり;mが、2であるときには、R3は、その鎖内に1〜20個の炭素、窒素、酸素または硫黄原子を有する二価脂肪族連結基である)
によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物一つまたは二つ以上を用意する段階;
(C)前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の上記構造(PS)によって表される一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下で分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;ならびに
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の前記被還元性銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子に変換する段階
を含む、フォトサーモグラフィ乳剤の調製方法を提供する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、白黒フォトサーモグラフィ乳剤の調製方法は、
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および前記非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、下記化合物PS−1からPS−19の少なくとも一つから選択される一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を用意する段階;
(C)臭化水素酸ピリジニウム過臭化物を、20℃から30℃で60分間以下、一つまたは二つ以上の段階で前記ハロゲン化銀粒子に付加させることによって前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の前記一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、ベヘン酸銀を含む前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性臭化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;ならびに
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の0.1から10モル%の被還元性銀イオンを臭化物塩の添加により感光性臭化銀粒子に変換する段階
を含む。
【0024】
本発明は、
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、上述の構造(PS)によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物一つまたは二つ以上を用意する段階;
(C)前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の前記一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下で分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の被還元性銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子に変換する段階;
(E)段階(A)から(D)のいずれかと同時に、または段階(D)の後に、バインダーを添加して、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を形成する段階;ならびに
(F)段階(E)の後、前記フォトサーモグラフィ乳剤配合物を支持体上に塗布し、乾燥させて、フォトサーモグラフィ材料を生じさせる段階
を含むフォトサーモグラフィ材料の調製方法を提供する。
【0025】
本発明は、フォトスピード(「スピード」)が増加した、銀被覆量が改善された、そしてDmin(カブリ)またはDmaxの有意な低下を伴わない良好な製造再現性を有するフォトサーモグラフィ乳剤および材料を提供する。
【0026】
予め形成されたハロゲン化銀のエクスサイチュー(ex-situ)での調製中ならびにカルボン酸銀石鹸分散物の形成中に、不純物が形成される。これらの不純物は、カブリ中心として作用し得、老化および加工に基づき、Dminの増大を生じさせる。これらの不純物は、従来的には酸化剤の添加により除去される。一つの不純物は、銀原子、クラスタまたは銀(0)の粒子であると考えられる。酸化剤の添加は、銀(0)化学種を銀(I)に変換することによりこれらのカブリ中心を除去すると考えられる。多くの場合、臭素含有酸化剤が、これらの銀(0)化学種を臭化銀に変換するために使用される。
【0027】
米国特許第5,891,615号(Winslowら、上述)には、硫黄含有分光増感色素の酸化分解によりフォトサーモグラフィ乳剤を化学増感する方法が記載されている。この方法は、一部のカブリ中心も同時に除去すると考えられる。硫黄含有分光増感色素の分解後、非感光性の被還元性銀イオン源中の一部の銀イオンが、ハロゲン化銀に変換される。
【0028】
本発明者らは、当分野において知られている硫黄含有分光増感色素の使用と比較して改善されたフォトサーモグラフィ乳剤化学増感法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、白黒またはカラーフォトサーモグラフィおよび電子的に生成される白黒またはカラーハードコピー記録に使用することができる。これらは、マイクロフィルム用途、ラジオグラフィ画像形成(例えば、医療用デジタル画像形成)、X線ラジオグラフィ、および工業用ラジオグラフィにおいて使用することができる。さらに、グラフィックアート分野(例えば、イメージセッティングおよび写真植字)、印刷版の製造、密着印画、複製(「デューピング」)および校正刷りにおける使用を可能ならしめるために、これらのフォトサーモグラフィ材料の350nm〜450nmの間の吸光度は低い(0.5未満)ことが望ましい。
【0030】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、診断の際に使用するための可視光またはX線に応じてのヒトまたは動物被験者の医用撮像に特に有用である。このような用途には、胸部撮像、乳房撮影、歯科撮像、整形外科撮像、一般医療用ラジオグラフィ、治療用ラジオグラフィ、獣医用ラジオグラフィ、およびオートラジオグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。X線で使用する場合、本発明のフォトサーモグラフィ材料は、一つまたは二つ以上の蛍光増感スクリーンと、そのフォトサーモグラフィ乳剤中に組み込まれた燐光体と、またはこれらの組み合わせと併用することができる。このような材料は、歯科用ラジオグラフィに特に有用である。
【0031】
本発明の方法により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、いずれかの適する波長の放射線に感光するようにすることができる。従って、一部の実施形態において、これらの材料は、電磁スペクトルの紫外波長、可視波長、赤外波長または近赤外波長で感光する。好ましい実施形態において、これらの材料は、350nmより大きい放射線に感光する(例えば、250から1100nmに感光する)。特定のスペクトル領域に対する感光度増大は、様々な増感色素の使用によりもたらされる。他の実施形態では、これらがまさにX線に感光する。X線に対する感光度増大は、燐光体の使用によりもたらされる。
【0032】
本発明の方法により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、医療以外の可視光またはX線の使用(例えば、X線リソグラフィーおよび工業用ラジオグラフィ)にも有用である。このような画像形成用途では、フォトサーモグラフィ材料が「両面を有する」ことが、多くの場合、望ましい。
【0033】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料において、画像形成に必要な成分は、支持体の片面(「おもて面」)の一つまたは二つ以上のフォトサーモグラフィ画像形成層の中にあり得る。感光性光触媒(例えば、感光性ハロゲン化銀)もしくは非感光性の被還元性銀イオン源またはこれら両方を含有するその(それらの)層を本明細書ではフォトサーモグラフィ乳剤層(複数を含む)と呼ぶ。光触媒および非感光性の被還元性銀イオン源は、触媒的近接(すなわち、相互に反応的に組み合わさる)状態にあり、好ましくは同じ乳剤層中にある。
【0034】
これらの材料が、支持体の片面のみに画像形成層を含有する場合、通常、これらの材料の「裏面」(非乳剤または非画像形成面)には、導電層、ハレーション防止層、保護層、および輸送可能層を含む様々な非画像形成層が配置される。
【0035】
このような場合、その支持体の「おもて面」または画像形成もしくは乳剤面には、保護トップコート層、プライマー層、中間層、不透明化層、静電防止層、ハレーション防止層、アキュータンス層、補助層、および当業者には容易にわかる他の層を含む様々な非画像形成層も配置することができる。
【0036】
一部の用途については、フォトサーモグラフィ材料が、「両面を有する」ものであり、その支持体の両面に同じまたは異なるフォトサーモグラフィコーティング(または画像形成層)を有することが有用な場合がある。このような構造では、各面が、一つまたは二つ以上の、保護トップコート層、プライマー層、中間層、静電防止層、アキュータンス層、補助層、クロスオーバー防止層、および当業者には容易にわかる他の層を含むこともある。
【0037】
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料を、画像様露光後または画像様露光と同時に、実質的に無水状態で、下記で説明するように熱現像すると、銀画像(好ましくは白黒の銀画像)が得られる。
【0038】
定義
本明細書において用いる場合:
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料の説明において、「一つ(「a」または「an」)」の成分は、「少なくとも一つ」のその成分(例えば、化学増感に使用される特定の硫化ジフェニルホスフィン化合物)を指す。
【0039】
本明細書で用いる場合、実質的に無水状態での加熱は、周囲水蒸気の存在にも満たない状態で、50℃から250℃の温度で加熱することを意味する。用語「実質的に無水状態」は、その反応系が、空気中で水とほぼ平衡状態であり、その反応を誘発または促進するための水が、その材料の外側から特にまたは積極的に供給されないことを意味する。このような状態は、T.H.James,The Theory of the Photographic Process,Fourth Edition,Eastman Kodak Company,Rochester,NY,1977,p.374に記載されている。
【0040】
「フォトサーモグラフィ材料(複数を含む)」は、感光性ハロゲン化銀および被還元性銀イオン源が一つの層内にあり、他の必須成分または望ましい添加剤が、所望どおりに同じ層内または隣接コーティング層内に分散されている少なくとも一つのフォトサーモグラフィ乳剤層またはフォトサーモグラフィ乳剤層セット、ならびにいずれかの支持体、トップコート層、画像受容層、ブロッキング層、ハレーション防止層、下引きまたは下塗り層を含む構造体を意味する。これらの材料は、一つまたは二つ以上の画像形成成分が異なる層内にあるが、「反応的に組み合わさる」状態にあり、そのため画像形成および/または現像中にそれらの成分が互いに容易に接触することができる多層構造体も含む。例えば、一つの層は、非感光性の被還元性銀イオン源を含むことができ、もう一つの層は、還元性組成物を含むことができるが、これら二つの反応性成分は、相互に反応的に組み合わさる状態にある。
【0041】
フォトサーモグラフィに関して用いる場合、用語「画像様露光すること」または「画像様露光」は、電磁線を使用して潜像を生じさせるいずれかの露光手段を使用して、その材料に画像形成することを意味する。これには、例えば、感光性材料への投影により画像が形成されるアナログ露光によるもの、ならびに走査レーザー光の調節などにより一度に一画素の画像が形成されるデジタル露光によるものが挙げられる。
【0042】
「触媒的近接」または「反応的に組み合わさる」は、材料が同じ層内または隣接層内にあり、そのためこれらの材料が、熱的画像形成および現像中に相互に容易に接触することを意味する。
【0043】
「乳剤層」、「画像形成層」、または「フォトサーモグラフィ乳剤層」は、感光性ハロゲン化銀(使用される場合)および/または非感光性の被還元性銀イオン源を含有するフォトサーモグラフィ材料の層を意味する。これは、感光性ハロゲン化銀(使用される場合)および/または非感光性の被還元性銀イオン源に加えて、追加の必須成分および/または望ましい添加剤を含有する、フォトサーモグラフィ材料の層も意味する。これらの層は、支持体の「おもて面」として知られているものの上に通常はある。
【0044】
「光触媒」は、後続の画像形成材料現像のための触媒として作用することができる化合物を放射線への露光により生じさせる、ハロゲン化銀などの感光性化合物を意味する。
【0045】
本明細書において使用される材料の多くは、溶液として提供される。用語「活性成分」は、サンプル中に含まれる所望の材料の量または百分率を意味する。本明細書において列挙する全ての量は、添加される活性成分の量である。
【0046】
「スペクトルの紫外線領域」は、410nm以下、好ましくは100nmから410nmのスペクトル領域を指すが、これらの領域の一部は、ヒトの裸眼で見ることができる。さらに好ましくは、スペクトルの紫外領域は、190から405nmの領域である。
【0047】
「スペクトルの可視領域」は、400nmから700nmのスペクトル領域を指す。
【0048】
「スペクトルの短波長可視領域」は、400nmから450nmのスペクトル領域を指す。
【0049】
「スペクトルの赤領域」は、600nmから700nmのスペクトル領域を指す。
【0050】
「スペクトルの赤外領域」は、700nmから1400nmのスペクトル領域を指す。
【0051】
「非感光性」は、意図的な感光性でないことを意味する。
【0052】
センシトメトリーの用語「フォトスピード」、「スピード」または「写真スピード」(感度としても知られている)、吸光度、コントラスト、DminおよびDmaxは、画像形成分野において知られている従来どおりの定義を有する。
【0053】
本明細書では、フォトサーモグラフィ材料に関するDminは、そのフォトサーモグラフィ材料が、放射線への露光前に、放射線への露光を伴わずに熱により現像される場合に達成される画像濃度と考える。これは、基準マークの露光面上の8つの最低濃度値の平均である。
【0054】
maxは、画像形成領域内のフィルムの最大濃度である。
【0055】
センシトメトリー用語吸光度は、光学濃度(OD)のもう一つの用語である。
【0056】
「SP−2」(スピード−2)は、Dminより1.00高い濃度値に相当する、Log1/E+4であり、この式中のEは、露光量(単位:エルグ/cm2)である。
【0057】
「SP−3」(スピード−3)は、Dminより2.9高い濃度値に相当する、Log1/E+4であり、この式中のEは、露光量(単位:エルグ/cm2)である。
【0058】
「AC−1」(平均コントラスト−1)は、Dminより0.60および2.00高い濃度点をつないだ線の勾配の絶対値である。
【0059】
「AC−2」(平均コントラスト−2)は、Dminより1.00および2.40高い濃度点をつないだ線の勾配の絶対値である。
【0060】
max/Agコート重量は、銀コーティングの重量で割った最大濃度(単位:g/cm2)である。これは、現像効率を表す。
【0061】
「透明」は、感知できる散乱または吸収を伴わずに可視光または画像形成用放射線を透過することができることを意味する。
【0062】
本明細書で用いる場合、フレーズ「有機銀配位性配位子」は、銀原子と結合を形成することができる有機分子を指す。そのように形成された化合物は、専門的には銀配位化合物であるが、これらは、多くの場合、銀塩とも呼ばれる。
【0063】
用語「両面を有する」および「両面コーティング」は、熱で現像することができる一つまたは二つ以上の同じまたは異なる乳剤層が支持体の両面(おもておよび裏)に配置されているフォトサーモグラフィ材料を定義するために用いる。「両面を有する」のもう一つの用語は、「両面利用(duplitized)」である。
【0064】
本明細書に記載の化合物では、描かれている構造により特定の二重結合構造(例えば、シスまたはトランス)が指定されていない。同様に、単結合と二重結合が交互に並んでおり、局在電荷を有する化合物が、論理的形式として描かれている。実際、両方の電子および電荷の非局在化が、共役鎖全体にわたって存在する。
【0065】
当分野においてよく理解されているように、別様に述べられていないかぎり、本明細書に記載の化学的化合物の代用が許容されるばかりでなく、多くの場合、本発明に使用する化合物上には望ましい様々な置換基が予想される。従って、ある化合物が、所与の式の「構造を有する」と言う場合、その式の結合構造またはその構造の中に示されている原子を変化させないあらゆる置換がその式内には含まれるが、但し、そのような置換が、(「カルボキシ置換アルキルのない」などの)言葉により特に除外されていない場合に限る。例えば、ベンゼン環構造(縮合環構造を含む)が示されている場合、置換基は、ベンゼン環上に位置することができるが、そのベンゼン環構造を構成する原子を置換することはできない。
【0066】
一定の置換基の論議および詳説を簡単にする手段として、用語「基」は、置換されていてもよい化学種、ならびに置換されていない化学種を指す。従って、「アルキル基」などの用語「基」は、メチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、イソオクチルおよびオクタデシルなどの純粋な炭化水素アルキル鎖ばかりでなく、ヒドロキシル、アルコキシ、フェニル、ハロゲン原子(F、Cl、BrおよびI)、シアノ、ニトロ、アミノおよびカルボキシなどの当分野において知られている置換基を有するアルキル鎖も含むと意図される。例えば、アルキル基には、エーテルおよびチオエーテル基(例えば、CH3−CH2−CH2−O−CH2−およびCH3−CH2−CH2−S−CH2−)、ハロアルキル、ニトロアルキル、アルキルカルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキサミド、ヒドロキシアルキル、スルホアルキル、および当業者には容易にわかる他の基が含まれる。非常に強い求電子性または酸化性置換基などの他の活性成分と有害反応する置換基は、不活性または無害ではないので、勿論、当業者により除外される。
【0067】
リサーチディスクロージャ(Research Disclosure)は、Kenneth Mason Publications Ltd.,Dudley House,12 North Street,Emsworth,Hampshire PO107DQ Englandの出版物である。これは、Emsworth Design Inc.,147 West 24th Street,New York,N.Y.10011から入手することもできる。
【0068】
本発明の他の態様、利点および恩典は、本出願において提供する詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかである。
【0069】
光触媒
上述のように、本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料は、フォトサーモグラフィ乳剤層(複数を含む)中に一つまたは二つ以上の光触媒を含む。有用な光触媒は、典型的には感光性ハロゲン化銀、例えば、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、臭ヨウ化銀、塩臭ヨウ化銀、塩臭化銀、および当業者には容易にわかる他のものである。あらゆる適する比率でのハロゲン化銀の混合物も使用することができる。臭化銀および臭ヨウ化銀がさらに好ましく、後者のハロゲン化銀は、一般に、10モル%のヨウ化銀を有する。
【0070】
本発明において使用される感光性ハロゲン化銀粒子の形は、決して限定されない。ハロゲン化銀粒子は、立方、八面体、四面体、斜方晶系(orthorombicおよびrhombic)、十二面体、他の多面体、平面、層状、双晶または小板形態を含む(しかし、これらに限定されない)いずれの晶癖を有してもよく、それらに関する結晶のエピタキシャル成長を有してもよい。所望される場合には、これらの結晶の混合物を利用することができる。立方および平面形態を有するハロゲン化銀粒子が好ましく、立方粒子と平面粒子、両方の混合物を本発明では使用することができる。
【0071】
ハロゲン化銀粒子は、全体を通して均一なハロゲン化物比を有し得る。それらは、例えば臭化銀とヨウ化銀の比が継続的に変化する漸変ハロゲン化物含有率を有するものであってもよいし、または一つもしくはそれ以上のハロゲン化銀の個別のコアおよび一つもしくはそれ以上の別のハロゲン化銀の個別のシェルを有する、コア−シェル型のものであってもよい。フォトサーモグラフィ材料およびこれらの材料の調製方法において有用なコア−シェル型ハロゲン化銀粒子は、例えば米国特許第5,382,504号(Shorら)に記載されている。イリジウムおよび/または銅がドープされたコア−シェル型および非コア−シェル型粒子は、米国特許第5,434,043号(Zouら)および同第5,939,249号(Zou)に記載されている。
【0072】
場合によっては、フォトスピード増加を生じさせるために、ヒドロキシテトラアザインデン(4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンなど)、または少なくとも一つのメルカプト基を含むN−複素環式化合物(1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなど)の存在下で感光性ハロゲン化銀粒子を調製することが有用な場合もある。この手順の詳細は、米国特許第6,413,710号(Shorら)に提供されている。
【0073】
感光性ハロゲン化銀は、非感光性の被還元性銀イオン源と触媒的近接状態にあるのであれば、いかなるやり方で乳剤層(複数を含む)に添加(または、内で形成)してもよい。
【0074】
ハロゲン化銀は、エクスサイチュープロセスにより予め形成または調製されることが好ましい。これらのエクスサイチューで調製されたハロゲン化銀粒子は、その後、非感光性の被還元性銀イオン源に添加し、物理的に混合することができる。
【0075】
エクスサイチューで調製されたハロゲン化銀の存在下での非感光性の被還元性銀イオン源の形成は、さらに好ましい。このプロセスでは、予め形成されたハロゲン化銀粒子の存在下で、長鎖脂肪酸カルボン酸銀(一般に、銀「石鹸」と呼ばれている)などの被還元性銀イオン源が形成される。ハロゲン化銀の存在下での被還元性銀イオン源の共沈により、二つの材料のより均質な混合物が生じる[例えば、米国特許第3,839,049号(Simons)参照]。このタイプの材料は、多くの場合、「予め形成された石鹸」と呼ばれる。
【0076】
本発明の材料に使用される予め形成されたハロゲン化銀乳剤は、水性または有機プロセスにより調製することができ、未洗浄であってもよいし、または洗浄して可溶性の塩を除去してもよい。後者の場合、可溶性の塩は、限外濾過により、冷却固化および浸出により、またはその凝塊を洗浄することにより除去することができる[例えば、米国特許第2,618,556号(Hewitsonら)、同第2,614,928号(Yutzyら)、同第2,565,418号(Yackelら)、同第3,241,969号(Hartら)、および同第2,489,341号(Wallerら)に記載されている手順による]。
【0077】
ハロゲン化物含有化合物またはハロゲン含有化合物を有機銀塩に添加して、その有機銀塩の銀を部分的にハロゲン化銀に変換するインサイチュープロセスの使用も有効である。この化合物は、一つまたは二つ以上の無機ハロゲン化物(臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムもしくはこれらの混合物など)または有機ハロゲン含有化合物(N−ブロモスクシンイミドもしくは臭化水素酸ピリジニウム過臭化物など)であり得る。上述のように、本発明に使用されるハロゲン化銀粒子の一部は、インサイチュープロセスを用いて調製される。ハロゲン化銀のこのようなインサイチュー生成の詳細は周知であり、例えば米国特許第3,457,075号(Morganら)に記載されている。この手順のさらなる詳細は下で提供する。本発明の実施の際には、好ましくは臭化亜鉛が添加される。
【0078】
予め形成されたハロゲン化銀とインサイチューで生成されたハロゲン化銀の両方の混合物の使用が特に有効である。
【0079】
ハロゲン化銀および有機銀塩のさらなる調製方法ならびにそれらのブレンド手法は、リサーチディスクロージャ,1978年6月,第17029項;米国特許第3,700,458号(Lindholm)、同第4,076,539号(Ikenoueら);特開昭49−013224(富士写真フィルム株式会社(Fuji))、特開昭50−017216(富士写真フィルム株式会社)、および特開昭51−042529(富士写真フィルム株式会社)に記載されている。
【0080】
画像形成配合物に使用されるハロゲン化銀粒子は、所望の用途に依存して数マイクロメートル(μm)まで平均直径が変化し得る。好ましいハロゲン化銀粒子は、0.01から1.5μmの平均粒径を有するものであり、0.03から1.0μmの平均粒径を有するものはさらに好ましく、0.05から0.8μmの平均粒径を有するものが最も好ましい。ハロゲン化銀粒子には、それらの粒子が分光増感される波長に一部依存する有限の実行下限があることは、当業者には理解される。例えば、このような下限は、典型的には0.01から0.005μmである。
【0081】
感光性ハロゲン化銀粒子の平均寸法は、それらの粒子が球形である場合には平均直径により表され、それらの粒子が立方形、または他の球形ではない形である場合には、それらの投影の円相当径の平均により表される。
【0082】
粒子の寸法は、当分野において粒径の測定に一般に利用されているあらゆる方法によって決定することができる。代表的な方法は、「Particle Size Analysis」,ASTM Symposium on Light Microscopy,R.P.Loveland,1955,pp.94−122、およびC.E.K.Mees and T.H.James,The Theory of the Photographic Process,Third Edition,Macmillan,New York,1966,Chapter 2に記載されている。粒径測定値は、粒子の投影面積またはそれらの直径の近似値で表される。これらは、対象となる粒子の形が実質的に均一である場合には相当正確な結果をもたらす。
【0083】
本発明のフォトサーモグラフィ材料に供給される一つまたは二つ以上の感光性ハロゲン化銀は、好ましくは、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当たり0.005から0.5モル、さらに好ましくは0.01から0.25モル、最も好ましくは0.03から0.15モルの量で存在する。
【0084】
化学増感
本発明において有用なフォトサーモグラフィ乳剤は、
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、下記構造(PS):
【0085】
【化2】

【0086】
(式中、Ph1およびPh2は、同じまたは異なるフェニル基であり;R1およびR2は、各々、独立して、水素またはアルキルまたはフェニル基であり;Lは、直接結合または二価の連結基であり;mは、1または2であり;mが、1であるときには、R3は、一価の基であり;mが、2であるときには、R3は、その鎖内に1〜20個の炭素、窒素、酸素または硫黄原子を有する二価脂肪族連結基である)
によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物一つまたは二つ以上を、(例えば、前記フォトサーモグラフィ分散物に有機硫黄含有化合物を混合することにより)用意する段階;
(C)前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の前記硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下で分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;ならびに
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の前記被還元性銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子に変換する段階
により調製することができる。
【0087】
本発明は、
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、本明細書において定義する構造(PS)によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物一つまたは二つ以上を用意する段階;
(C)前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の前記硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下で分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の被還元性銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子に変換する段階;
(E)段階(A)から(D)のいずれかと同時に、または段階(D)の後に、バインダーを添加して、乳剤配合物を作る段階;ならびに
(F)段階(E)の後、前記乳剤配合物を支持体上に塗布し、乾燥させて、フォトサーモグラフィ材料を生じさせる段階
を含む、フォトサーモグラフィ材料の調製方法を提供する。
【0088】
前記感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物は、従来どおりのやり方で生じさせることができる。このような分散物およびそれらの調製方法の代表例は、米国特許第5,434,043号(Zouら)および同第5,939,249号(Zou)ならびに下で提供する実施例に詳細に記載されている。
【0089】
一般に、このような分散物は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK、2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物などの適する溶剤中の感光性ハロゲン化銀および非感光性有機銀塩を含む。
【0090】
一つの実施形態では、その後、一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物をそのフォトサーモグラフィ分散物に添加し、適切に混合する。本発明者らは、この段階で、硫化ジフェニルホスフィン化合物がハロゲン化銀粒子表面の上または周囲に位置するようになると考える。
【0091】
その後、酸性環境下でハロゲン化銀粒子上または周囲の硫化ジフェニルホスフィン化合物を分解することによりそれらのハロゲン化銀粒子を化学増感して、非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を生じさせる。
【0092】
硫化ジフェニルホスフィン化合物の酸化分解によりハロゲン化銀粒子を化学増感した後、被還元性銀源中の銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子にインサイチューで変換する。これは、一般に、そのフォトサーモグラフィ分散物への一つまたは二つ以上のハロゲン化物含有化合物の添加により達成される。このようなハロゲン化物含有化合物には、臭化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムまたはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。被還元性銀イオンの変換は、ハロゲン化物含有化合物の一回の添加により、またはフォトサーモグラフィ乳剤の調製における様々な時点での複数回の添加により行うことができる。例えば、ハロゲン化物含有化合物の一部分を有機硫黄含有化合物の前に添加し、第二の部分を有機硫黄含有化合物の添加後に添加してもよい。必要な場合には、異なるハロゲン化物含有化合物をこれら複数回の添加に使用してもよい。
【0093】
有用な硫黄含有化学増感化合物は、下記一般構造(PS):
【0094】
【化3】

【0095】
(式中、Ph1およびPh2は、同じまたは異なる置換または非置換フェニル基である)
を用いて定義することができる硫化ジフェニルホスフィンである。これらのフェニル基上の置換基には、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、シアノおよびニトロを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0096】
また、構造(PS)において、R1およびR2は、各々、独立して、水素;炭素原子数1から10の置換もしくは非置換アルキル基(メチル、エチル、イソプロピルまたはシクロヘキシルなど)または置換もしくは非置換フェニル基(フェニル、4−メチルフェニルおよび3−クロロフェニルなど)である。好ましくは、R1およびR2は、両方とも水素であるか、R1およびR2のうちの少なくとも一方は、水素である。さらに好ましくは、R1およびR2は、両方とも水素である。
【0097】
さらに、mは、1または2であり、好ましくはmは、1である。
【0098】
Lは、直接結合;またはその鎖内に1から3個の原子を有する有機連結基である。好ましい連結基は、スルホニル[−SO2−]、カルボニル[−(C=O)−]、およびスルホキシド[−SO−]である。最も好ましくは、連結基は、カルボニル[−(C=O)−]である。
【0099】
mが、1であるとき、R3は、一価の基、例えば、炭素原子数1から16個、好ましくは炭素原子数1から7個の置換または非置換アルキル基(メチル、ベンジルおよびメチルカルボフェニル基など)、置換または非置換アリール基(フェニル、ナフチルおよびフラニル基など)、二置換アミノ基(メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、モルホリノおよびピペリジノ基など)である。mが、2であるとき、R3は、その鎖内に1〜20個の炭素、窒素、酸素または硫黄原子を有する置換または非置換二価脂肪族連結基である(メチレン、エチレン、プロピレン、ポリエーテルおよびポリチオエーテル基など)である。好ましくは、mは、1であり、R3は、ジエチルアミノまたはベンジル基である。
【0100】
構造(PS)の代表化合物には、次の化合物PS−1からPS−19が挙げられる。
【0101】
【化4】

【0102】
【化5】

【0103】
【化6】

【0104】
【化7】

【0105】
【化8】

【0106】
所望される場合には、このような硫黄含有化合物の混合物を使用してもよい。化合物PS−1およびPS−2が最も好ましい。
【0107】
本発明の実施の際に有用な硫化ジフェニルホスフィンは、粉末水酸化カリウムの存在下、0℃から室温の温度で30分から約24時間、塩化メチレン中で硫化ジフェニルホスフィンをアルキル化することにより、一般に、調製することができる。これらは、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願番号10/10/731,251(Simpson、BurlevaおよびSakizadehにより2003年12月9日に出願されたもの)に記載されている教示を用いて調製することもできる。
【0108】
下記スキームIは、Lがカルボニル基である場合の本発明の硫化ジフェニルホスフィン化合物の調製を図示するものである。
スキームI
【0109】
【化9】

【0110】
硫化ジフェニルホスフィン化合物は、本発明の実施の際、フォトサーモグラフィ分散物中の非感光性の被還元性銀イオン源からの全銀1モル当たり1.5×10-6から4×10-3モルの量で使用される。好ましい量は、フォトサーモグラフィ分散物中の非感光性の被還元性銀イオン源からの全銀1モル当たり4×10-4から1×10-3モルである。
【0111】
上述のように、硫化ジフェニルホスフィン化合物を添加し、その後、その硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下、ハロゲン化銀粒子上または周囲で分解すると、インサイチューでハロゲン化銀粒子が生成される。一般に、分解は、化学増感剤として作用する前記粒子上に化学種を形成することができる一つまたは二つ以上の酸化剤、好ましくは「強」酸化剤を使用して、10℃から30℃までの温度で60分間以下、行われる。好ましくは、この反応は、周囲温度(一般には20℃)から30℃までで行われる。
【0112】
分解の効率は、酸化剤(複数を含む)の機能および効率、分解される硫化ジフェニルホスフィン化合物、分解時間の長さ、ならびに分解温度による影響を受ける。反応性が高い酸化剤ほど、低い温度および/または短い時間で使用でき、より反応性が低い酸化剤については逆もまた真である。
【0113】
分解は、単一の反応でまたは段階的に行うことができ、この場合、同じまたは異なる酸化剤を添加する前に反応は中断されるまたは完了する。従って、一部の実施形態では、単一の酸化剤を、その全量が複数の部分に分割され、段階的に添加される「分割」添加により供給することができる。
【0114】
添加してフォトサーモグラフィ石鹸分散物中の一切の不純物を除去することができる好ましい酸化剤には、対の臭素原子とさらに組み合わさる窒素含有複素環化合物の臭化水素酸塩が挙げられる。これらの化合物は、臭化水素酸過臭化物と組み合わさる第四級窒素原子含有5、6または7員単環式または多環式の環としても知られている。このような化合物の例は、本明細書に引用する米国特許第5,028,523号(Skoug)にカブリ防止剤として記載されており、置換または非置換ピリジン、ピロリドン、ピロリジノン、ピロリジン、フタラジノンおよびフタラジン環を有する化合物を含む。ピリジン環を有する化合物が、より好ましく、特に有用な酸化剤は、臭化水素酸ピリジニウム過臭化物(PHP)である。
【0115】
好ましい実施形態において、PHPは、20℃から30℃の温度で60分間以下、酸化剤として使用される。
【0116】
感光性ハロゲン化銀粒子への被還元性銀イオン源の銀イオンの一部の変換は、一般に、一つまたは二つ以上のハロゲン含有化合物をフォトサーモグラフィ分散物に添加することにより達成される。このような化合物は、無機ハロゲン化物(臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、およびこれらの混合物など)であってもよいし、または有機ハロゲン含有化合物(N−ブロモスクシンイミドなど)であってもよい。ハロゲン化銀のこのようなインサイチューでの生成の詳細は周知であり、例えば、米国特許第3,457,075号(Morganら)に記載されている。本発明の実施の際、好ましくは臭化亜鉛が添加される。
【0117】
予め形成されたハロゲン化銀とインサイチューで生成されたハロゲン化銀の両方の混合物の使用が、特に有効である。
【0118】
ハロゲン含有化合物(複数を含む)は、0.1から10モル%の被還元性銀イオンの感光性ハロゲン化銀への変換に充分な量で添加される。好ましくは、0.5から5モル%の被還元性銀イオンが、感光性ハロゲン化銀に変換される。さらに好ましくは、1から3モル%の被還元性銀イオンが変換される。ハロゲン含有化合物(複数を含む)は、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当たり10-4から10-1モルのハロゲン原子の量で添加される。
【0119】
一般に、被還元性銀イオンの変換は、適温で、30分以内で行われる。しかし、一部の実施形態では、ハロゲン含有化合物(複数を含む)を段階的に添加して、ハロゲン化銀の構成および組成を制御することができる。例えば、臭化物塩をヨウ化物塩とともに添加し、その後、臭化物塩を単独で添加してもよい。ハロゲン化物の混合物を添加する場合、それらは、得られるハロゲン化銀粒子に所望のハロゲン化物組成をもたらすような比率で添加される。
【0120】
被還元性銀源中の銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子のハロゲン化銀にインサイチューで変換した後、得られたフォトサーモグラフィ乳剤は、酸化を必要としない追加の化学増感剤、バインダー、トナー、カブリ防止剤、分光増感色素、艶消剤、燐光体、硬調化剤、およびこのような乳剤中に一般に含まれる他の添加物の添加により、さらに変性することができる。これらの化合物のさらなる詳細は下で提供し、ならびに多数の出版文献に提供されている。
【0121】
有用な追加の化学増感剤を感光性ハロゲン化銀の調製の際に使用してもよい。このような化合物は、硫黄、テルルもしくはセレンを含有し得、あるいは金、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウムもしくはこれらの組合せを含有する化合物、ハロゲン化スズなどの還元剤、またはこれらのうちのいずれかの組合せを含み得る。これらの材料の詳細は、例えば、T.H.James,The Theory of the Photographic Process,Fourth Edition,Eastman Kodak Company,Rochester,NY,1977,Chapter 5,pp.149−169に提供されている。適する従来の化学増感手順も、米国特許第1,623,499号(Sheppardら)、同第2,399,083号(Wallerら)、同第3,297,447号(McVeigh)、同第3,297,446号(Dunn)、同第5,049,485号(Deaton)、同第5,252,455号(Deaton)、同第5,391,727号(Deaton)、同第5,912,111号(Lokら)、同第5,759,761号(Lushingtonら)および欧州特許第0 915 371号A1(Lokら)に記載されている。
【0122】
一定の置換および非置換チオ尿素化合物を化学増感剤として使用することができる。特に有用な四置換チオ尿素が、米国特許第6,368,779号(Lynchら)に記載されている。
【0123】
さらに他の追加の化学増感剤には、米国特許出願公開第2002−0164549号(Lynchら)に記載されている一定のテルル含有化合物、および米国特許第6,620,577号(Lynchら)に記載されている一定のセレン含有化合物が挙げられる。
【0124】
米国特許第6,423,481号(Simpsonら)に記載されているような、金(3+)含有化合物と硫黄含有化合物またはテルル含有化合物のいずれかとの併用物も化学増感剤として有用である。
【0125】
これらの追加の化学増感剤は、一般にはハロゲン化銀粒子の平均寸法に依存する従来どおりの量で存在し得る。一般に、その全量は、0.01から2μmの平均寸法を有するハロゲン化銀粒子については、全銀1モル当たり少なくとも10-10モル、好ましくは全銀1モル当たり10-8から10-12モルである。上限は、使用される化合物(複数を含む)、ハロゲン化銀のレベル、および平均粒度に依存して変化し得、通常の当業者により容易に決定される。
【0126】
分光増感剤
本発明のフォトサーモグラフィの機能に使用される感光性ハロゲン化銀は、紫外線、可視光および/または赤外線に対するハロゲン化銀の感光性を強化することが知られている様々な分光増感色素で分光増感することができる。利用することができる増感色素の非限定的な例には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポラー・シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキサノール色素が挙げられる。シアニン色素、メロシアニン色素および複合メロシアニン色素が特に有用である。分光増感色素は、最適な感光性、安定性および合成の容易さについて選択される。これらは、フォトサーモグラフィ乳剤の化学加工のいずれの段階において添加してもよい。分光増感は、一般に、化学増感達成後に一つまたは二つ以上の分光増感色素をそのフォトサーモグラフィ乳剤に添加することによって行われる。それらは、フォトサーモグラフィ乳剤の化学加工のいずれの段階において添加してもよい。分光増感は、一般に、化学増感達成後に一つまたは二つ以上の分光増感色素をそのフォトサーモグラフィ乳剤に添加することによって行われる。一つまたは二つ以上の分光増感色素を使用して、600から1100nmでの分光増感をもたらすことが特に望ましい。
【0127】
米国特許第3,719,495号(Lea)、同第4,396,712号(Kinoshitaら)、同第4,439,520号(Kofrondら)、同第4,690,883号(Kuboderaら)、同第4,840,882号(Iwagakiら)、同第5,064,753号(Kohnoら)、同第5,281,515号(Delpratoら)、同第5,393,654号(Burrowsら)、同第5,441,866号(Millerら)、同第5,508,162号(Dankosh)、同第5,510,236号(Dankosh)、同第5,541,054号(Millerら)、特開2000−063690(Tanakaら)、特開2000−112054(Fukusakaら)、特開2000−273329(Tanakaら)、特開2001−005145(Arai)、特開2001−064527(Oshiyamaら)、および特開2001−154305(Kitaら)に記載されているものなどの適する増感色素を本発明の実施の際に使用することができる。一般に有用な分光増感色素の概要は、リサーチディスクロージャ,1989年12月,第308119項,セクションIVに掲載されている。他の波長での増感を含めて分光増感に有用なさらなる類の色素は、リサーチディスクロージャ,1994年,第36544項,セクションVに記載されている。
【0128】
分光増感色素の具体的な併用に関する教示も、米国特許第4,581,329号(Sugimotoら)、同第4,582,786号(Ikedaら)、同第4,609,621号(Sugimotoら)、同第4,675,279号(Shutoら)、同第4,678,741号(Yamadaら)、同第4,720,451号(Shutoら)、同第4,818,675号(Miyasakaら)、同第4,945,036号(Araiら)、同第4,952,491号(Nishikawaら)に含まれている。
【0129】
光または熱の作用により脱色する分光増感色素も有用である。このような色素は、米国特許第4,524,128号(Edwardsdら)、特開2001−109101(Adachi)、特開2001−154305(Kitadら)、および特開2001−183770(Hanyuら)に記載されている。
【0130】
分光増感色素は、単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの色素は、分光感光度の波長分布を調整することを目的として、および超増感を目的として選択される。超増感効果を有する色素を併用すると、各々の色素の単独使用で達成することができる感光度の合計よりずっと高い感光度を達成することができる。それ自体では分光増感作用を有さない色素または可視光を実質的に吸収しない化合物の使用により、このような超増感作用を達成することもできる。多くの場合、ジアミノスチルベン化合物が超増感剤として使用される。
【0131】
添加される分光増感色素の適量は、一般に、ハロゲン化銀1モル当たり10-10から10-1モル、好ましくは10-7から10-2モルである。
【0132】
非感光性の被還元性銀イオン源
本発明により調製されるフォトサーモグラフィ材料において使用される非感光性の被還元性銀イオン源は、被還元性銀(1+)イオンを含有するいずれの金属−有機化合物であってもよい。このような化合物は、一般に、銀配位性配位子の銀塩である。好ましくは、これは、光に対して比較的安定であり、露光済み光触媒(フォトサーモグラフィ材料において使用される場合にはハロゲン化銀など)および還元性組成物の存在下で50℃以上に加熱されたときに銀画像を形成する、有機銀塩である。
【0133】
長鎖カルボン酸の銀塩を含む有機酸の銀塩が好ましい。前記鎖は、典型的には10から30個、好ましくは15から28個の炭素原子を含有する。適する有機銀塩には、カルボン酸基を有する有機化合物の銀塩が挙げられる。それらの例には、脂肪族カルボン酸の銀塩または芳香族カルボン酸の銀塩が挙げられる。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例には、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロ酸銀、リノール酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、少なくともベヘン酸銀を単独でまたは他のカルボン酸銀との混合物で使用する。
【0134】
芳香族カルボン酸および他のカルボン酸基含有化合物の代表的な銀塩には、安息香酸銀、置換安息香酸銀(3,5−ジヒドロキシ−安息香酸銀、o−メチル安息香酸銀、m−メチル安息香酸銀、p−メチル安息香酸銀、2,4−ジクロロ安息香酸銀、アセトアミド安息香酸銀、p−フェニル安息香酸銀など)、タンニン酸銀、フタル酸銀、テレフタル酸銀、サリチル酸銀、フェニル酢酸銀およびピロメリット酸銀が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
米国特許第3,330,663号(Weydeら)に記載されているようなチオエーテル基を含有する脂肪族カルボン酸の銀塩も有用である。エーテルもしくはチオエーテル結合が組み込まれている、またはα位(炭化水素基上)もしくはオルト位(芳香族上)に立体障害性置換が組み込まれている炭化水素鎖を含み、コーティング溶剤への溶解度増大を示し、光の散乱がより少ないコーティングを生じさせる可溶性カルボン酸銀も使用することができる。このようなカルボン酸銀は、米国特許第5,491,059号(Whitcomb)に記載されている。所望される場合には、本明細書に記載のあらゆる銀塩の混合物も使用することができる。
【0136】
ジカルボン酸の銀塩も有用である。このような酸は、脂肪族であってもよいし、芳香族であってもよいし、または複素環式であってもよい。このような酸には、例えば、フタル酸、グルタミン酸またはホモ−フタル酸が挙げられる。
【0137】
スルホネートの銀塩も本発明の実施の際に有用である。このような材料は、例えば、米国特許第4,504,575号(Lee)に記載されている。例えば欧州特許第0 227 141号A1(Leendersら)に記載されているようなスルホスクシネートの銀塩も有用である。
【0138】
メルカプト基またはチオン基を含有する化合物およびそれらの誘導体の銀塩も使用することができる。これらの化合物の好ましい例には、環内に5または6個の原子を含有し、それらのうちの少なくとも1個が窒素原子であり、他の原子が炭素、酸素または硫黄原子である複素環核が挙げられるが、これらに限定されない。このような複素環核には、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、チアゾリン、イミダゾール、ジアゾール、ピリジンおよびトリアジンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの銀塩の代表例には、3−メルカプト−4−フェニル−1,2,4−トリアゾールの銀塩、5−カルボキシリック−1−メチル−2−フェニル−4−チオピリジンの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、2−メルカプトベンズオキサゾールの銀塩、米国特許第4,123,274号(Knightら)に記載の銀塩(例えば、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−チアゾールなどの1,2,4−メルカプトチアゾール誘導体の銀塩)、およびチオン化合物の銀塩[米国特許第3,785,830号(Sullivandら)に記載されているような3−(2−カルボキシエチル)−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオンの銀塩など]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
複素環核を含有しないメルカプトまたはチオン置換化合物の他の有用な銀塩の例には、S−アルキル−チオグリコール酸(この場合のアルキル基は、12から22個の炭素原子を有する)の銀塩などのチオグリコール酸の銀塩;ジチオ酢酸の銀塩などのジチオカルボン酸の銀塩;およびチオアミドの銀塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
一部の実施形態では、イミノ基を含有する化合物の銀塩、特に水系画像形成配合物中のものが好ましい。これらの化合物の好ましい例には、ベンゾトリアゾールおよびその置換誘導体の銀塩(例えば、銀メチルベンゾトリアゾールおよび銀5−クロロベンゾトリアゾール);米国特許第4,220,709号(deMauriac)に記載されているようなフェニルメルカプトテトラゾールなどの1,2,4−トリアゾールまたは1−H−テトラゾールの銀塩;ならびに米国特許第4,260,677号(Winslowら)に記載されているようなイミダゾールおよびイミダゾール誘導体の銀塩が挙げられるが、これらに限定されない。このタイプの特に有用な銀塩は、ベンゾトリアゾールおよびその置換誘導体の銀塩である。水系フォトサーモグラフィ配合物ではベンゾトリアゾールの銀塩が好ましい。
【0141】
さらに、例えば、米国特許第4,761,361号(Ozakiら)および同第4,775,613号(Hiraiら)に記載されているようなアセチレンの銀塩も使用することができる。
【0142】
有機溶剤系フォトサーモグラフィ材料において特に有用な有機銀塩には、カルボン酸銀(脂肪族カルボン酸塩と芳香族カルボン酸塩の両方)、トリアゾール酸銀、スルホン酸銀、スルホコハク酸銀、および銀アセチリドが挙げられる。炭素原子数15から28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩(ベヘン酸銀を含む)が特に好ましい。
【0143】
銀半石鹸の使用も適便である。銀半石鹸の好ましい例は、カルボン酸銀とカルボン酸の等モルブレンドであり、これは、そのブレンド中の銀固体の分析値が14.5重量%であり、ならびに市販の脂肪カルボン酸のアンモニウムもしくはアルカリ金属塩の水溶液からの沈降により、または銀石鹸への遊離脂肪酸の添加により調製される。透明フィルムには、15%より多くの遊離脂肪カルボン酸を含有せず、銀の分析値が22%である、カルボン酸銀完全石鹸を使用することができる。不透明フォトサーモグラフィ材料には、別の量を使用することができる。
【0144】
銀石鹸乳剤を製造するために使用される方法は、当分野において周知であり、リサーチディスクロージャ,1983年4月,第22812項、リサーチディスクロージャ,1983年10月,第23419項、米国特許第3,985,565号(Gabrielsenら)および上で引用した参考文献に開示されている。
【0145】
非感光性の被還元性銀イオン源は、米国特許第6,355,408号(Whitcombら)に記載されているものなどのコア−シェル型銀塩として提供することもできる。これらの銀塩は、一つまたは二つ以上の銀塩からなるコアおよび一つまたは二つ以上の別の銀塩を有するシェルを含む。
【0146】
本発明の実施の際に有用なもう一つの非感光性の被還元性銀イオン源は、米国特許第6,472,131号(Whitcomb)に記載されているような二つの異なる銀塩を含む銀二量体化合物である。このような非感光性銀二量体化合物は二つの異なる銀塩を含むが、但し、これら二つの異なる銀塩が、直鎖飽和炭化水素基を銀配位性配位子として含み、これらのリガンドの炭素原子数が少なくとも6違うことを条件とする。
【0147】
本発明の実施の際に有用なさらに他の非感光性の被還元性銀イオン源は、一つもしくはそれ以上の感光性ハロゲン化銀、または一つもしくはそれ以上の非感光性の無機金属塩もしくは銀を含有しない有機塩を含む主コアとその主コアを少なくとも部分的に被覆しているシェルとを含む銀コア−シェル化合物であり、この場合、前記シェルは、一つまたは二つ以上の非感光性銀塩を含み、それらの銀塩の各々が、有機銀配位性配位子を含む。このような化合物は、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願番号10/208,603(Bokhonov、Burleva、Whitcomb、HowladerおよびLeichterにより2002年7月30日に出願されたもの)に記載されている。
【0148】
当業者には理解されるように、この非感光性の被還元性銀イオン源は、あらゆる望ましい比率での本明細書に記載の様々な銀塩化合物の様々な混合物を含むことができる。
【0149】
ハロゲン化銀と非感光性の被還元性銀イオン源は、触媒的近接(すなわち、反応的に組み合わさる)状態になければならない。これらの反応性成分は同じ乳剤層中に存在することが好ましい。
【0150】
一つまたは二つ以上の非感光性の被還元性銀イオン源は、乳剤層の全乾燥重量を基準にして、好ましくは5重量%から70重量%、さらに好ましくは10重量%から50重量%の量で存在する。別の言い方をすると、前記被還元性銀イオン源の量は、一般に、乾燥フォトサーモグラフィ材料1m2当たり0.001から0.02モル、好ましくは前記材料1m2当たり0.01から0.05モルの量で存在する。
【0151】
フォトサーモグラフィ材料中の(全ての銀源からの)銀の全量は、一般に、少なくとも0.002モル/m2、好ましくは0.01から0.05モル/m2である。
【0152】
還元剤
被還元性銀イオン源のための還元剤(または二つ以上の成分を含む還元剤組成物)は、銀(1+)イオンを金属銀に還元することができるあらゆる材料、好ましくは有機材料であり得る。
【0153】
芳香族ジおよびトリヒドロキシ化合物(例えば、ヒドロキノン、没食子酸および没食子酸誘導体、カテコール、ならびにピロガロール);アミノフェノール(例えば、N−メチルアミノフェノール);p−フェニレンジアミン;アルコキシナフトール(例えば、4−メトキシ−1−ナフトール);ピラゾリジン−3−オン型還元剤(例えば、PHENIDONE(商標));ピラゾリン−5−オン;ポリヒドロキシスピロ−ビス−インダン;インダン−1,3−ジオン誘導体;ヒドロキシテトロン酸;ヒドロキシテトロンイミド;例えば米国特許第4,082,901号(Laridonら)に記載されているものなどのヒドロキシルアミン誘導体;ヒドラジン誘導体;ヒンダードフェノール;アミドキシム;アジン;レダクトン(例えば、アスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体);ロイコ色素;ならびに当業者には容易にわかる他の材料を含む従来の写真現像剤を還元剤として使用することができる。
【0154】
銀ベンゾトリアゾール銀源を使用する場合には、アスコルビン酸還元剤が好ましい。「アルコルビン酸」還元剤(現像剤または現像主薬とも呼ばれる)は、アルコルビン酸、それらの複合体および誘導体を意味する。アスコルビン酸現像主薬は、米国特許第5,236,816号(Purolら)およびそこに引用されている参考文献を含む、写真プロセスに関する相当数の出版物に記載されている。有用なアスコルビン酸現像主薬には、アスコルビン酸およびその類似体、それらの異性体および誘導体が挙げられる。このような化合物には、例えば、米国特許第5,498,511号(Yamashitaら)、欧州特許第0 585 792号A1(Passarelladら)、同第0 573 700号A1(Lingierdら)および同第0 588 408号A1(Hieronymusら)、米国特許第5,089,819号(Knapp)、同第5,278,035号(Knapp)、同第5,384,232号(Bishopdら)、同第5,376,510号(Parkerら)、特開平7−56286(Toyoda)、米国特許第2,688,549号(Jamesら)、ならびにリサーチディスクロージャ,第37152項,1995年3月に記載されているような、D−またはL−アスコルビン酸、それらの糖型誘導体(例えば、ソルボアルコルビン酸、γ−ラクトアスコルビン酸、6−デスオキシ−L−アスコルビン酸、L−ラムノアスコルビン酸、イミノ−6−デスオキシ−L−アスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸、L−アラボースアスコルビン酸)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、イソアスコルビン酸(またはL−エリトロアスコルビン酸)、およびそれらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩または当分野において知られている他の塩)、エンジオール型アスコルビン酸、エナミノール型アスコルビン酸、チオエノール型アスコルビン酸ならびにエナミン−チオール型アスコルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。D−、L−またはD,L−アスコルビン酸(およびそのアルカリ金属塩)またはイソアスコルビン酸(もしくはそのアルカリ金属塩)が好ましい。所望される場合には、これらの現像主薬の混合物を使用することができる。
【0155】
カルボン酸銀銀源を使用する場合には、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。場合によっては、この還元剤組成物は、ヒンダードフェノール現像剤、および下に記載する様々な類の補助現像剤および還元剤から選択することができる補助現像剤などの、二以上の成分を含む。コントラスト増強剤のさらなる添加を伴う三元性現像剤混合物も有用である。このようなコントラスト増強剤は、下に記載する様々な類の還元剤から選択することができる。(単独、または一つまたは二つ以上の硬調化現像補助薬および補助現像剤コントラスト増強剤と併用での)ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。
【0156】
「ヒンダードフェノール還元剤」は、所与のフェノール環上にヒドロキシ基を一つだけ含有し、そのヒドロキシ基のオルトに位置する追加の置換基を少なくとも一つ有する化合物である。ヒンダードフェノール還元剤は、各ヒドロキシ基が異なるフェノール環上に位置するのであれば、一つより多くのヒドロキシ基を含有することができる。ヒンダードフェノール還元剤には、例えば、ビナフトール(すなわち、ジヒドロキシビナフチル)、ビフェノール(すなわち、ジヒドロキシビフェニル)、ビス(ヒドロキシナフチル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン(すなわち、ビスフェノール)、ヒンダードフェノール、およびヒンダードナフトールが挙げられ、これらは、各々、様々に置換されていてもよい。
【0157】
代表的なビナフトールには、1,1’−ビス−2−ナフトール、1,1’−ビ−4−メチル−2−ナフトールおよび6,6’−ジブロモ−ビ−2−ナフトールが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる化合物については、米国特許第3,094,417号(Workman)および同第5,262,295号(Tanakaら)を参照のこと。
【0158】
代表的なビフェノールには、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5−ジクロロビフェニル、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4−メチル−6−n−ヘキシルフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルビフェニル、および4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−メチルビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる化合物については、米国特許第5,262,295号(上述)を参照のこと。
【0159】
代表的なビス(ヒドロキシナフチル)メタンには、4,4’−メチレンビス(2−メチル−1−ナフトール)が挙げられるが、これに限定されない。さらなる化合物については、米国特許第5,262,295号(上述)を参照のこと。
【0160】
代表的なビス(ヒドロキシフェニル)メタンには、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン(CAO−5)、1,1’−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン(NONOX(商標)またはPERMANAX(商標)WSO)、1,1’−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4’−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)(LOWINOX(商標)221B46)および2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる化合物については、米国特許第5,262,295号(上述)を参照のこと。
【0161】
代表的なヒンダードフェノールには、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジクロロフェノール、2,6−ジメチルフェノールおよび2−t−ブチル−6−メチルフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
代表的なヒンダードナフトールには、1−ナフトール、4−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、4−クロロ−1−ナフトールおよび2−メチル−1−ナフトールが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる化合物については、米国特許第5,262,295号(上述)を参照のこと。
【0163】
所望される場合には、ヒンダードフェノール還元剤の混合物を使用することができる。
【0164】
さらにもう一つの有用な類の還元剤は、米国特許第3,440,049号(Moede)に写真タンニング剤として記載されているポリヒドロキシスピロ−ビス−インダン化合物である。例には、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,6,5’,6’−テトラヒドロキシ−1’,1−スピロ−ビス−インダン(インダンIと呼ばれている)および3,3,3’,3’−テトラメチル−4,6,7,4’,6’,7’−ヘキサヒドロキシ−1’,1−スピロ−ビス−インダン(インダンIIと呼ばれている)が挙げられる。
【0165】
現像剤として使用することができるさらなる類の還元剤は、米国特許第5,464,738号(Lynchら)に記載されているスルホニルヒドラジンを含む置換ヒドラジンである。さらに他の有用な還元剤は、例えば、米国特許第3,074,809(Owen)、同第3,094,417号(Workman)、同第3,080,254号(Grant,Jr.)、および同第3,887,417号(Kleinら)に記載されている。米国特許第5,981,151号(Leendersdら)に記載されている補助還元剤は、有用であり得る。
【0166】
開示されているさらに具体的な代替還元剤は、アミドオキシム、例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシム;アジン(例えば、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドヒドラジン);脂肪族カルボン酸アリールヒドラジンとアスコルビン酸の併用物[例えば、アスコルビン酸と併用での2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)−プロピオニル−β−フェニルヒドラジン];ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンとの併用物[例えば、ヒドロキノンとビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミンの併用物];ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジン;ヒドロキサム酸(例えば、フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびo−アラニンヒドロキサム酸);アジンとスルホンアミドフェノールの併用物(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール);α−シアノフェニル酢酸誘導体(例えば、α−シアノ−2−メチルフェニル酢酸エチルおよびα−シアノフェニル酢酸エチル);ビス−o−ナフトール[例えば、2,2’−ジヒドロキシル−1−ビナフチル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、およびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)−メタン];ビス−o−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の併用物(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2,4−ジヒドロキシアセトフェノン);3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;レダクトン(例えば、ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロ−アミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロ−ピペリドン−ヘキソースレダクトン);スルホンアミドフェノール還元剤(例えば、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミド−フェノール、およびp−ベンゼンスルホンアミドフェノール);インダン−1,3−ジオン(例えば、2−フェニルインダン−1,3−ジオン);クロマン(例えば、2,2−ジメチル−7−t−ブチル−6−ヒドロキシクロマン);1,4−ジヒドロピリジン(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルベトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);アスコルビン酸誘導体(例えば、1−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよび不飽和アルデヒドおよびケトン);ならびに3−ピラゾリドンを含むドライシルバー系である。
【0167】
例えば米国特許第6,387,605号(Lynchら)に記載されているような有用な補助現像剤還元剤を用いることもできる。これらの化合物の例には、2,5−ジオキソ−シクロペンタンカルボキシアルデヒド、5−(ヒドロキシメチレン)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、5−(ヒドロキシメチレン)−1,3−ジアルキルバルビツール酸、および2−(エトキシメチレン)−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
補助現像剤として使用することができるさらなる類の還元剤は、米国特許第5,496,695号(Simpsonら)に記載されているようなトリチルヒドラジンおよびホルミルフェニルヒドラジン;米国特許第5,654,130号(Murray)に記載されているような2−置換マロンジアルデヒド化合物;ならびに米国特許第5,705,324号(Murray)に記載されているような4−置換イソオキサゾール化合物である。さらなる現像剤が米国特許第6,100,022号(Inoueら)に記載されている。
【0169】
さらにもう一つの類の補助現像剤には、米国特許第5,635,339号(Murray)および同第5,545,515号(Murrayら)に記載されている置換アクリロニトリル化合物が挙げられる。このような化合物の例には、米国特許第5,635,339号(上述)においてHET−01およびHET−02として、ならびに米国特許第5,545,515号(上述)においてCN−01からCN−13として識別されている化合物が挙げられるが、これらに限定されない。このタイプの特に有用な化合物は、(ヒドロキシメチレン)シアノアセテートおよびそれらの金属塩である。
【0170】
一部のフォトサーモグラフィ材料では、様々なコントラスト増強剤を特定の補助現像剤とともに使用することができる。有用なコントラスト増強剤の例には、例えば、米国特許第5,545,505号(Simpson)に記載されているようなヒドロキシルアミン化合物(ヒドロキシルアミンならびにそのアルキル置換およびアリール置換誘導体を含む)、アルカノールアミン化合物およびフタラミン酸アンモニウム化合物;例えば米国特許第5,545,507号(Simpsonら)に記載されているようなヒドロキサム酸化合物;例えば米国特許第5,558,983号(Simpsonら)に記載されているようなN−アシルヒドラジン化合物;ならびに米国特許第5,637,449号(Harringら)に記載されているような水素原子供与化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
芳香族ジおよびトリヒドロキシ還元剤も、一つまたは二つ以上の硬調化補助現像剤および補助現像剤コントラスト増強剤を伴う、またはそれらの中の、またはそれらと併用でのヒンダードフェノール還元剤と、併用することができる。
【0172】
本明細書に記載の還元剤(またはそれらの混合物)は、一般に、乳剤層の1から10%(乾燥重量)として存在する。多層構造において還元剤が乳剤層以外の層に添加される場合、2から15重量%のやや高めの比率のほうが望ましいことがある。補助現像剤は、一般に、乳剤層コーティングの0.001%から1.5%(乾燥重量)で存在し得る。
【0173】
カラー画像形成材料(例えば、単色、二色またはフルカラー画像)には、直接または間接的に酸化されて一つまたは二つ以上の色素を形成または放出することができる、一つまたは二つ以上の還元剤を使用することができる。
【0174】
この色素形成性または放出性化合物は、加熱されると、好ましくは80℃から250℃の温度に少なくとも1秒間加熱されると、有色形に酸化され得るか、酸化されて予形成色素を放出することができる、あらゆる有色、無色または淡色の化合物であり得る。色素受容層または画像受容層で使用される場合、この色素は、フォトサーモグラフィ材料の画像形成層および中間層を通って画像受容層へと拡散することができる。
【0175】
ロイコ色素または「ブロックされた」ロイコ色素は、本発明の実施の際、酸化すると銀イオンが色素を生成および放出して可視カラー画像を形成する色素形成性化合物(または「ブロックされた」色素形成性化合物)の一類である。ロイコ色素は、一般に、無色であるか、可視領域内の非常の淡い色(0.2未満の光学濃度)を有する還元形色素である。従って、酸化が、無色から有色への色の変化、少なくとも0.2単位の光学濃度の増加、または実質的な色相の変化をもたらす。
【0176】
有用なロイコ色素の代表的な類には、色素生産性ロイコ色素(インドアニリン、インドフェノールまたはアゾメチン色素など);例えば米国特許第3,985,565号(Gabrielsonら)に記載されているような2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−4,5−ジフェニルイミダゾールなどのイミダゾールロイコ色素;例えば米国特許第4,563,415号(Brownら)、同第4,622,395号(Bellusら)、同第4,710,570号(Thien)および同第4,782,010号(Maderら)に記載されているようなものなどの、アジン、ジアジン、オキサジンまたはチアジン核を有する色素;ならびに例えば米国特許第4,932,792号(Grieveら)に記載されているようなベンジリデンロイコ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。上述の色素生産性ロイコ色素に関するさらなる詳細は、米国特許第5,491,059号(上述、カラム13)およびそこに示されている参考文献から得ることができる。
【0177】
もう一つの有用な類のロイコ色素には、例えば米国特許第4,587,211号(Ishidaら)および同第4,795,679号(Vogelら)に記載されている、「アルダジン」および「ケタジン」ロイコ色素として知られているものが挙げられる。
【0178】
さらにもう一つの有用な類の色素放出性化合物には、酸化すると拡散性色素を放出するものが挙げられる。これらは、予形成色素放出(PDR)または酸化還元色素放出(RDR)化合物として知られている。このような化合物では、酸化すると還元剤が可動性予形成色素を放出する。このような化合物の例は、米国特許第4,981,775号(Swain)に記載されている。
【0179】
なお、さらに、この還元剤は、写真分野において知られているような酸化すると発色剤または現像剤を形成する、従来の写真色素を放出する化合物であってもよい。
【0180】
形成または放出される色素は、同じまたは異なる画像形成層中、同じものであり得る。少なくとも60nmの反射最大吸光度の差が好ましい。さらに好ましくは、この差は、80から100nmである。様々な色素の吸光度についてのさらなる詳細は、米国特許第5,491,059号(上述、Col.14)に提供されている。
【0181】
本発明のフォトサーモグラフィ材料に組み込むことができる一つまたは二つ以上の色素形成性または放出性化合物の全量は、一般に、それらが局在する各画像形成層の全重量の0.5から25重量%である。好ましくは、前記各画像形成層中での量は、その全乾燥層重量を基準にして1から10重量%である。ロイコ色素の有用な相対比は、当業者には容易にわかる。
【0182】
他の添加物
本発明により作製されるフォトサーモグラフィ材料は、他の添加剤、例えば保存寿命安定剤、カブリ防止剤、コントラスト増強剤、現像促進剤、アキュータンス色素、加工後安定剤または安定剤前駆物質、熱溶剤(メルトフォーマーとしても知られている)および当業者には容易にわかる他の画像改質剤、も含有することができる。
【0183】
フォトサーモグラフィ材料の特性(例えばコントラスト、Dmin、スピードまたはカブリ)をさらに制御するために、式Ar−S−M1及びAr−S−S−Ar(式中、M1は、水素原子またはアルカリ金属原子を表わし、Arは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子またはテルル原子の一つまたは二つ以上を含有するヘテロ芳香族環または縮合ヘテロ芳香族環を表わす)のヘテロ芳香族メルカプト化合物またはヘテロ芳香族ジスルフィド化合物を一つまたは二つ以上添加することが好ましいことがある。好ましくは、前記ヘテロ芳香族環は、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンを含む。他の波長での強化増感をもたらす他のヘテロ芳香族環および化合物を有する化合物も適すると思われる。例えば、ヘテロ芳香族メルカプト化合物は、欧州特許第0 559 228号B1(Philip Jr.ら)に赤外フォトサーモグラフィ材料用の超増感剤として記載されている。
【0184】
前記ヘテロ芳香族環が置換基を有することもある。好ましい置換基の例は、ハロ基(ブロモおよびクロロなど)、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、アルキル基(例えば、炭素原子数1以上、好ましくは炭素原子数1から4のもの)、およびアルコキシ基(例えば、炭素原子数1以上、好ましくは炭素原子数1から4のもの)である。
【0185】
ヘテロ芳香族メルカプト化合物が最も好ましい。好ましいヘテロ芳香族メルカプト化合物の例は、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールおよび2−メルカプトベンズオキサゾールならびにこれらの混合物である。
【0186】
使用される場合、ヘテロ芳香族メルカプト化合物は、一般に、乳剤層中の全銀1モル当たり少なくとも0.0001モルの量の乳剤層中で存在する。さらに好ましくは、ヘテロ芳香族メルカプト化合物は、全銀1モル当たり0.001モルから1.0モル、最も好ましくは0.005モルから0.2モルの範囲内で存在する。
【0187】
フォトサーモグラフィ材料は、さらにカブリの生成から保護することができ、保管中の感光度の損失に対して安定させることができる。本発明の実施に不可欠でなはいが、乳剤層(複数を含む)に水銀(2+)をカブリ防止剤として添加すると有利である。この目的に好ましい水銀(2+)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。他の有用な水銀塩には、米国特許第2,728,663号(Allen)に記載されているものが挙げられる。
【0188】
単独使用または併用することができる他の適するカブリ防止剤および安定剤には、米国特許第2,131,038(Brooker)および同第2,694,716(Allen)に記載されているようなチアゾリウム塩;米国特許第2,886,437号(Piper)に記載されているようなアザインデン;米国特許第2,444,605号(Heimbach)に記載されているようなトリアザインドリジン;米国特許第3,287,135号(Anderson)に記載されているようなウラゾール;米国特許第3,235,652号(Kennard)に記載されているようなスルホカテコール;英国特許第623,448号(Carrolら)に記載されているようなオキシム;米国特許第2,839,405号(Jones)に記載されているような多価金属塩;米国特許第3,220,839号(Herz)に記載されているようなチオウロニウム塩;米国特許第2,566,263号(Trirelli)および同第2,597,915号(Damshroder)に記載されているようなパラジウム、白金および金;米国特許第5,594,143号(Kirkら)および同第5,374,514号(Kirkら)に記載されているような−SO2CBr3基を有する化合物;ならびに米国特許第5,460,938号(Kirkら)に記載されているような2−(トリブロモメチルスルホニル)キノリン化合物が挙げられる。
【0189】
現像中に熱をかけることにより安定剤を放出することができる安定剤前駆化合物も使用することができる。このような前駆化合物は、例えば、米国特許第5,158,866号(Simpsonら)、同第5,175,081号(Krepskiら)、同第5,298,390号(Sakizadehら)および同第5,300,420号(Kenneyら)に記載されている。
【0190】
加えて、米国特許第6,171,767号(Kongら)に記載されているようなベンゾトリアゾールの一定の置換スルホニル誘導体(例えば、アルキルスルホニルベンゾトリアゾールおよびアリールスルホニルベンゾトリアゾール)は、(加工後プリント安定化などに)有用な安定化化合物であると判明した。
【0191】
さらに、他の具体的な、有用なカブリ防止剤/安定剤は、米国特許第6,083,681号(Lynchら)にさらに詳細に記載されている。
【0192】
他のカブリ防止剤は、例えば米国特許第5,028,523号(Skoug)に記載されているような複素環式化合物の臭化水素酸塩(例えば、臭化水素酸ピリジニウム過臭化物);例えば米国特許第4,784,949号(Pham)に記載されているようなベンゾイル酸化合物;例えば、米国特許第5,686,228号(Murrayら)に記載されているような置換プロペンニトリル化合物;例えば米国特許第5,358,843号(Sakizadehら)に記載されているようなシリルブロック型化合物;米国特許第6,143,487号(Philip,Jr.ら)に記載されているようなビニルスルホン;例えば欧州特許第0 600 586号A1(Philip,Jr.ら)に記載されているようなジイソシアネート化合物;および欧州特許第0 600 587号A1(Oliffら)に記載されているようなトリブロモメチルケトンである。
【0193】
好ましくは、フォトサーモグラフィ材料は、一つまたは二つ以上の多ハロカブリ防止剤を含み、この多ハロカブリ防止剤は、一つまたは二つ以上の多ハロ置換基を含み、前記置換基としては、ジクロロ基、ジブロモ基、トリクロロ基およびトリブロモ基が挙げられるが、これらに限定されない。前記カブリ防止剤は、芳香族、複素環式および炭素環式化合物を含む、脂肪族、脂環式または芳香族化合物であり得る。
【0194】
特に有用なカブリ防止剤は、−SO2C(X’)3基(式中、X’は、同じまたは異なるハロゲン原子を表す)を有するものなどの多ハロカブリ防止剤である。
【0195】
有利には、本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ材料は、一つまたは二つ以上の熱溶剤(またはメルトフォーマー)も含む。このような化合物の代表例には、サリチルアニリド、フタルイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−カリウム−フタルイミド、スクシンイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド、フタラジン、1−(2H)−フタラジノン、2−アセチルフタラジノン、ベンズアニリド、ジメチル尿素、D−ソルビトールおよびベンゼンスルホンアミドが挙げられるが、これらに限定されない。スクシンイミドとジメチル尿素の併用物を含むこれらの化合物の併用物も使用することができる。既知の熱溶剤は、例えば、米国特許第3,438,776号(Yudelson)、同第5,250,386号(Aonoら)、同第5,368,979号(Freedmanら)、同第5,716,772号(Taguchiら)および同第6,013,420号(Windender)に開示されている。
【0196】
本発明の方法により調製されるフォトサーモグラフィ材料の中に塩基放出物質または塩基前駆物質に含めて、改善された、より有効な画像現像を生じさせることは、多くの場合、有利である。本明細書において用いる「塩基放出物質」または「塩基前駆物質」は、加熱するとフォトサーモグラフィ材料中の記載の感光性ハロゲン化銀と銀塩および銀塩現像主薬を含む画像形成用併用物とをより有効に反応させる化合物を含むと解釈する。代表的な塩基放出物質または塩基前駆物質には、トリクロロ酢酸グアニジニウムなどのグアニジニウム化合物、および塩基を放出するが感光性ハロゲン化銀材料に悪影響を及ぼさないことが知られている他の化合物、例えば酢酸フェニルスルホニルが挙げられる。さらなる詳細は、米国特許第4,123,274号(Knightら)に提供されている。
【0197】
記載のフォトサーモグラフィ材料中、一定範囲の濃度の塩基放出物質または塩基前駆物質が有効である。塩基放出物質または塩基前駆物質の最適な濃度は、所望の画像、フォトサーモグラフィ材料中の個々の成分および加工条件などの要因に依存する。
【0198】
画像を改質する「トナー」またはその誘導体の使用は、フォトサーモグラフィ材料の非常に望ましい要素である。トナーは、フォトサーモグラフィ画像形成層(複数を含む)に添加されたとき、現像される銀画像の色を黄色を帯びた橙色から黒褐色または青黒色にシフトさせる化合物である。一般に、本明細書に記載の一つまたは二つ以上のトナーは、それが含まれる層の全乾燥重量を基準にして0.01重量%から10重量%、さらに好ましくは0.1重量%から10重量%の量で存在する。トナーは、フォトサーモグラフィ乳剤層(複数を含む)に組み込んでもよいし、または隣接層に組み込んでもよい。
【0199】
トナーとして有用な化合物は、例えば、米国特許第3,080,254号(Grant,Jr.)、同第3,847,612号(Winslow)、同第4,123,282号(Winslow)、同第4,082,901号(Laridonら)、同第3,074,809号(Owen)、同第3,446,648号(Workman)、同第3,844,797号(Willemsら)、同第3,951,660号(Hagemannら)および同第5,599,647号(Defieuwら)ならびに英国特許第1,439,478号(AGFA)に記載されている。
【0200】
フタラジンおよびフタラジン誘導体[米国特許第6,146,822号(Asanumaら)に記載されているものなど]、フタラジノン、およびフタラジノン誘導体は、特に有用なトナーである。
【0201】
さらなる有用なトナーは、例えば、米国特許第3,832,186号(Masudaら)、同第6,165,704号(Miyakeら)、同第5,149,620号(Simpsonら)、ならびに同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願番号10/193,443(Lynch、ZouおよびUlrichにより2002年7月11日に出願されたもの)および米国特許出願番号10/192,944(Lynch、UlrichおよびZouにより2002年7月11日に出願されたもの)に記載されているものなどの置換および非置換メルカプトトリアゾールである。
【0202】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,605,418号(Ramsdenら)に記載されているフタラジン化合物;米国特許出願番号10/341,754(Lynch、UlrichおよびSkougにより2003年1月14日に出願されたもの)に記載されているトリアジンチオン化合物;および米国特許出願番号10/384,244(LynchおよびUlrichにより2003年3月7日に出願されたもの)に記載されている複素環式ジスルフィド化合物も有用である。
【0203】
トナーの例には、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;環状イミド(例えば、スクシンイミド);ピラゾリン−5−オン;キナゾリノン;1−フェニルウラゾール;3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンおよび2,4−チアゾリジンジオン;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体[例えば、トリフルオロ酢酸ヘキサアミンコバルト(3+)];メルカプタン(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキサミド[例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミド]およびN−(ジメチルアミノメチル)ナフタレン−2,3−ジカルボキサミド;ブロックされたピラゾールの併用物;イソチウロニウム誘導体;メロシアニン色素{例えば、3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチル−エチリデン]−2−チオ−2,4−o−アゾリジンジオン};フタラジノンおよびフタラジノン誘導体もしくは金属塩またはこれらの誘導体[例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノン、および2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン];フタラジン(またはその誘導体)と一つまたは二つ以上のフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、および無水テトラクロロフタル酸)、キナゾリジンジオン誘導体、ベンズオキサジン誘導体またはナフトオキサジン誘導体との併用物;トナー改質剤としてだけではなく、インサイチューでのハロゲン化銀生成のためのハロゲン化物イオン源としても機能するロジウム錯体[例えば、ヘキサクロロロジウム酸(3+)アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウム、およびヘキサクロロロジウム酸(3+)カリウム];米国特許第5,817,598号(Defieuwら)に記載されているようなベンズオキサジン−2,4−ジオンおよびナフトオキサジンジオン(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1,3,2H−ベンズオキサジン、3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1,3,7−エチルカルボナトベンズオキサジン、および6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジンおよびasym−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンおよびアザウラシル);ならびにテトラアザペンタレン誘導体[例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレンおよび1,4−ジ−(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプトー1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
本発明の方法によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、通常は「裏面」層に組み込まれる画像安定化化合物も一つまたはそれ上含むことができる。このような化合物には、フタラジノンおよびその誘導体;ピリダジンおよびその誘導体;ベンズオキサジンおよびベンズオキサジン誘導体;ベンゾチアジンジオンおよびその誘導体;ならびにキナゾリンジオンおよびその誘導体、特に、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,599,685号(Kong)に記載されているようなものを挙げることができるが、これらに限定されない。他の有用な裏面画像安定剤には、アントラセン化合物、クマリン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ナフタール酸イミド化合物、ピラゾリン化合物、または例えば、米国特許第6,465,162号(Kongら)および英国特許第1,565,043号(富士写真フィルム株式会社(Fuji Photo))に記載されている化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
燐光体
一部の実施形態では、化学増感済みフォトサーモグラフィ乳剤および本明細書に記載のとおり調製された材料にX線感光性燐光体を組み込むことも有効である。有機溶剤系乳剤および材料は、米国特許第6,440,649号(Simpsonら)に記載されており、水系乳剤および材料は、米国特許第6,573,033号(Simpsonら)に記載されている。
【0206】
本発明の実施の際にはあらゆる従来のまたは有用な燐光体を単独でまたは混合物で使用することができる。有用な燐光体のより具体的な詳細を以下に提供する。
【0207】
燐光体は、励起すると赤外線、可視光または紫外線を発光する物質である。固有燐光体は、自然(すなわち、本質的に)燐光性である物質である。「活性化された」燐光体は、一つまたは二つ以上のドーパントを計画的に付加させた塩基性材料からなるものであり、前記材料は固有燐光体であってもよいし、なくてもよい。これらのドーパントが燐光体を「活性化」し、その燐光体による赤外線、可視光または紫外線の発光を生じさせる。例えば、Gd22S:Tbの場合、Tb原子(ドーパント/活性化因子)が燐光体の発光を起こさせる。
【0208】
一部の燐光体、例えばBaFBrは、蓄積性燐光体として知られている。これらの物質では、ドーパントが、放射線の蓄積ならびに発光に関与する。蓄積性燐光体が、フォトサーモグラフィ材料の中に組み込まれている場合、X線への初期露光量は、その燐光体粒子内に蓄積される。その後、その物質を二回目は刺激性電磁線(通常は可視光または赤外線)に露光すると、「蓄積された」エネルギーが、可視光または赤外線の発光として放出される。本明細書に記載のBaFBrは、このような蓄積性燐光体である。
【0209】
例えば、有用な燐光体は、蛍光増感スクリーンに関する非常に多数の参考文献に記載されている。このような参考文献には、リサーチディスクロージャ,184巻,1979年8月,第18431項,セクションIX,X−ray Screens/Phosphors;米国特許第2,303,942号(Wyndら)、同第3,778,615号(Luckey)、同第4,032,471号(Luckey)、同第4,225,653号(Brixnerら)、同第3,418,246号(Royce)、同第3,428,247号(Yocon)、同第3,725,704号(Buchananら)、同第2,725,704号(Swindells)、同第3,617,743号(Rabatin)、同第3,974,389号(Ferriら)、同第3,591,516号(Rabatin)、同第3,607,770号(Rabatin)、同第3,666,676号(Rabatin)、同第3,795,814号(Rabatin)、同第4,405,691号(Yale)、同第4,311,487号(Luckeyら)、同第4,387,141号(Patten)、同第5,021,327号(Bunchら)、同第4,865,944号(Robertsら)、同第4,994,355号(Dickersonら)、同第4,997,750号(Dickersonら)、同第5,064,729号(Zegarski)、同第5,108,881号(Dickersonら)、同第5,250,366号(Nakajimaら)および同第5,871,892号(Dickersonら);欧州特許第0 491 116号A1(Benzoら);ならびに燐光体に関して本明細書に引用されている全ての開示物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
有益な類の燐光体には、タングステン酸カルシウム(CaWO4);活性化または未活性化スズ酸リチウム;ニオブおよび/または希土類活性化または未活性化イットリウム、ルテチウムまたはタンタル酸ガドリニウム;希土類(例えば、テルビウム、ランタン、ガドリニウム、セリウムおよびルテチウム)活性化または未活性化ミドルカルコゲン燐光体、例えば希土類オキシカルコゲナイドおよびオキシハロゲン化物;ならびにテルビウム活性化または未活性化ランタン;およびルテニウムミドルカルコゲン燐光体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
さらに他の有用な燐光体は、例えば、米国特許第4,988,880号(Bryanら)、同第4,988,881号(Bryanら)、同第4,994,205号(Bryanら)、同第5,095,218号(Bryanら)、同第5,112,700号(Lambertら)、同第5,124,072号(Doleら)、および同第5,336,893号(Smithら)に記載されているような、ハフニウムを含有するものである。これらには、希土類活性化オキシ臭化ランタンおよびテルビウム活性化またはツリウム活性化酸化ガドリニウム、例えばGd22S:Tbが挙げられる。
【0212】
他の適する燐光体は、本明細書に引用する米国特許第4,835,397号(Arakawaら)および同第5,381,015号(Dooms)に記載され、例えば、二価ユーロピウムおよび他の希土類活性化アルカリ土類金属ハロゲン化物燐光体ならびに希土類元素活性化希土類オキシハロゲン化物燐光体が挙げられる。これらのタイプの燐光体の中でより好ましい燐光体には、アルカリ土類金属フルオロハロゲン化物即時発光および/または蓄積性燐光体[特に、米国特許第5,464,568号(Bringleyら)に記載されているようなアルカリ土類金属臭弗ヨウ化物蓄積性燐光体などのヨウ化物を含有するもの]が挙げられる。
【0213】
もう一つの有用な類の燐光体には、ユーロピウム活性化硫酸バリウムストロンチウムなどの希土類活性化混合型アルカリ土類金属硫酸塩である希土類ホストが挙げられる。
【0214】
特に有用な燐光体は、YTaO4、YTaO4:Nb、Y(Sr)TaO4、およびY(Sr)TaO4:Nbなどのドープされたまたはアンドープのタンタルを含有するものである。これらの燐光体は、米国特許第4,226,653号(Brixner)、同第5,064,729号(Zegarski)、同第5,250,366号(Nakajimaら)、および同第5,626,957号(Bensoら)に記載されている。他の有用な燐光体は、アルカリ土類金属燐光体である。
【0215】
蓄積性燐光体も本発明の実施の際に使用することができる。様々な蓄積性燐光体が、例えば、米国特許第5,464,568号(上述)に記載されている。このような燐光体には、場合によりヨウ化物を含有する二価アルカリ土類金属フルオロハロゲン化物燐光体が挙げられる。これらの燐光体についての一部の実施形態は、米国特許第5,464,568号(上述)により詳細に記載されている。さらに他の蓄積性燐光体は、本明細書に引用する米国特許第4,368,390号(Takahashiら)に記載され、より詳細に上記のような二価ユーロピウムおよび他の希土類活性化アルカリ土類金属ハロゲン化物および希土類元素活性化希土類オキシハロゲン化物が挙げられる。
【0216】
有用な燐光体の例には、SrS:Ce、SM、Srs:Eu、Sm、ThO2:Er、La22S:Eu、Sm、ZnS:Cu、Pb、および米国特許第5,227,253号(Takasuら)に記載されているその他のものが挙げられる。
【0217】
本発明の実施の際に使用される一つまたは二つ以上の燐光体は、そのフォトサーモグラフィ材料中の全銀1モル当たり少なくとも0.1モル、好ましくは0.5から20モルの量でフォトサーモグラフィ材料中に存在する。一般に、この全銀の量は、少なくとも0.002モル/m2である。
【0218】
本発明で使用される燐光体の寸法のため、一般に、それらが組み込まれる層(通常、一つまたは二つ以上の乳剤層)は、少なくとも5g/m2、好ましくは5g/m2から200g/m2の乾燥コーティング重量を有する。最も好ましくは、上述の好ましい範囲内の乾燥コーティング重量を有する同一の画像形成層内に、一つまたは二つ以上の燐光体および感光性ハロゲン化銀が組み込まれる。
【0219】
バインダー
化学増感済み感光性ハロゲン化銀、非感光性の被還元性銀イオン源、上で説明した還元剤組成物および本発明に使用される他のあらゆる画像形成層添加剤は、一般に、親水性または疎水性である一つまたは二つ以上のバインダーと併せる。従って、本発明の熱現像可能な材料を調製するために水系配合物を使用してもよいし、有機溶剤系配合物を使用してもよい。いずれかまたは両方のタイプのバインダーの混合物も使用することができる。このバインダーは、例えば、他の成分を溶液または懸濁液の状態で保持するために充分極性である、天然および合成樹脂などの疎水性高分子物質から選択されることが好ましい。
【0220】
典型的な疎水性バインダーの例には、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、メタクリル酸コポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ブタジエン−スチレンコポリマー、および当業者には容易にわかる他の物質が挙げられるが、これらに限定されない。コポリマー(ターポリマーを含む)もポリマーの定義に含まれる。ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマール)およびビニルコポリマー(例えば、ポリ酢酸ビニルおよびポリ塩化ビニル)が特に好ましい。特に適するバインダーは、商品名BUTVAR(商標)(Solutia,Inc.)およびPIOLOFORM(商標)(Wacker Chemical Company)で入手できるポリビニルブチラール樹脂である。
【0221】
バインダーとして単独でまたは他のバインダーと併用で、疎水性バインダーの水性分散物(またはラテックス)も使用することができる。
【0222】
有用な親水性バインダーの例には、タンパク質およびタンパク質誘導体;ゼラチンおよびゼラチン様誘導体(アルカリおよび酸処理ゼラチン、アセチル化ゼラチン、酸化ゼラチン、フタル酸化ゼラチンおよび脱イオン化ゼラチンを含む、硬化されているものまたは未硬化のもの);セルロース材料、例えばヒドロキシメチルセルロースおよびセルロースエステル;アクリルアミド/メタクリルアミドポリマー;アクリル酸/メタクリル酸ポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ(ビニルラクタム);アクリル酸スルホアルキルまたはメタクリル酸スルホアルキルのポリマー;加水分解されたポリ酢酸ビニル;ポリアクリルアミド;多糖類(デキストランおよびデンプンエーテルなど);ならびに水系写真乳剤での使用が一般に知られている他の合成または天然ビヒクル(例えば、上述のリサーチディスクロージャ,第38957項を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第5,620,840号(Maskasky)および同第5,667,995号(Maskasky)に記載されているように、カチオン性デンプンはハロゲン化銀平板粒子用の解膠剤として使用することができる。
【0223】
所望される場合には、様々なバインダー用の硬化剤が存在してもよい。有用な硬化剤は周知であり、そのような硬化剤には、例えば欧州特許第0 600 586号B1(Philip,Jr.ら)に記載されているようなジイソシアネート化合物;米国特許第6,143,487号(Philip,Jr.ら)および欧州特許第0 640 589号A1(Gathmannら)に記載されているようなスルホン化合物;米国特許第6,190,822号(Dickersonら)に記載されているようなアルデヒドおよび様々な他の硬化剤が挙げられる。フォトサーモグラフィ材料に使用される親水性バインダーは、一般に、いずれかの従来型硬化剤を使用して部分的または完全に硬化される。有用な硬化剤は周知であり、例えば、T.H.James,The Theory of the Photographic Process,Fourth Edition,Eastman Kodak Company,Rochester,NY,1977,Chapter 2,pp 77−78に記載されている。
【0224】
フォトサーモグラフィ材料の比率および活性に特定の現像時間および温度が必要な場合、バインダー(複数を含む)はこれらの条件に耐えることができねばならない。親水性バインダーを使用する場合、そのバインダーは、120℃で60秒間分解しないか、その構造の完全性を失わないことが好ましい。疎水性バインダを使用する場合、そのバインダーは、150℃で60秒間分解しないか、その構造の完全性を失わないことが好ましい。177℃で60秒間分解しないか、その構造の完全性を失わないことがさらに好ましい。
【0225】
ポリマーバインダー(複数を含む)は、それらに分散される成分を担持するために充分な量で使用される。ポリマーの量の有効な範囲は、当業者が適切に決定することができる。好ましくは、バインダーは、それが含められる層の全乾燥重量を基準にして10重量%から90重量%のレベル、さらに好ましくは20重量%から70重量%のレベルで使用される。両面型フォトサーモグラフィ材料中のバインダーの量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0226】
フォトサーモグラフィ材料では、支持体の両面の画像形成層と非画像形成層の両方に主として(全バインダー量の50重量%より多くの)疎水性バインダーを使用することが特に有用である。したがって、本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ乳剤に疎水性バインダーを混入して、支持体に塗布するためのフォトサーモグラフィ乳剤配合物を生成する。
【0227】
支持体材料
本発明によって作製されるフォトサーモグラフィ材料は、高分子支持体を含み、好ましくは、この支持体は、用途に依存してあらゆる望ましい厚さを有し、一つまたは二つ以上の高分子材料からなる、可撓性透明フィルムである。前記支持体は、一般に、透明(特に、その材料がフォトマスクに使用される場合)または少なくとも半透明であるが、場合によっては不透明な支持体が有用なこともある。それらには、熱現像中に寸法安定性を示すこと、および上積層との適する接着性を有することが求められる。このような支持体の製造に有用な高分子材料には、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート);酢酸セルロースおよび他のセルロースエステル;ポリビニルアセタール;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン);ポリカーボネート、ならびにポリスチレン(およびスチレン誘導体のポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい支持体は、良好な熱安定性を有するポリマー、例えばポリエステルおよびポリカーボネートからなる。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、特に好ましい支持体である。様々な支持体材料が、例えば、リサーチディスクロージャ,1979年8月,第18431項に記載されている。寸法安定性ポリエステルフィルムの製造方法は、リサーチディスクロージャ,1999年9月,第42536項に記載されている。支持体材料を処理またはアニールして、収縮を低減することおよび寸法安定性を上昇させることもできる。
【0228】
少なくとも所定の範囲の波長を有する放射線は乳剤層に反射し、所定の範囲の波長以外の波長を有する放射線は透過させるダイクロイックミラー層を含む支持体の使用も有用である。このようなダイクロイック支持体は、米国特許第5,795,708号(Boutet)に記載されている。
【0229】
少なくとも二つの異なる高分子材料の非常に多数の交互層を含む透明多層高分子支持体の使用は、さらに有用である。このような多層高分子支持体は、そのフォトサーモグラフィ材料が感光する波長範囲の化学線の少なくとも50%を好ましくは反射し、スピードが増加されたフォトサーモグラフィ材料をもたらす。このような透明多層高分子支持体は、米国特許第6,630,283号(Simpsonら)に記載されている。
【0230】
高温に安定である着色高分子フィルムおよび樹脂塗被紙などの不透明支持体も使用することができる。
【0231】
支持体材料は、所望される場合には様々な着色剤、顔料、ハレーション防止色素またはアキュータンス色素を含有することができる。例えば、支持体は、得られる画像形成済みフィルムの色を青にする色素を一つまたは二つ以上含むことができる。従来の手順(コロナ放電など)を用いて支持体材料を処理して上積層の接着を改善してもよいし、または下引き層もしくは他の接着促進層を使用してもよい。有用な下引き層配合物には、写真材料に従来使用されているもの、例えばハロゲン化ビニリデンポリマーが挙げられる。
【0232】
フォトサーモグラフィ配合物
本フォトサーモグラフィ乳剤層(複数を含む)用の有機溶剤系コーティング配合物は、本発明に従って調製したフォトサーモグラフィ乳剤を適する溶剤系中で一つまたは二つ以上のバインダー、還元性組成物、トナー(複数を含む)および任意の添加物と混合することにより調製することができ、前記溶剤系には、通常、有機溶媒、例えばトルエン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、アセトンまたはテトラヒドロフランが挙げられる。
【0233】
あるいは、水または水−有機溶剤混合物中の親水性バインダー(例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体またはラテックス)を用いて本フォトサーモグラフィ乳剤配合物を構成して、水系コーティング配合物を生じさせることができる。
【0234】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、米国特許第2,960,404号(Miltonら)に記載されているタイプのポリ(アルコール)およびジオールなどの可塑剤および潤滑剤;米国特許第2,588,765号(Robijns)および同第3,121,060号(Duane)に記載されているものなどの脂肪酸またはエステル;ならびに英国特許第955,061号(DuPont)に記載されているものなどのシリコーン樹脂を含有することができる。本材料は、艶消剤、例えば、デンプン、二酸化チタン、二酸化亜鉛、シリカ、ならびに米国特許第2,992,101号(Jelleyら)および同第2,701,245号(Lynn)に記載されているタイプのビーズを含むポリマービーズも含有することができる。米国特許第5,468,603号(Kub)に記載されているように、被覆性および光学濃度の均一性の改善などの様々な目的のために高分子フッ素化界面活性剤が画像形成材料の一つまたは二つ以上の層において有用である場合もある。
【0235】
米国特許第6,436,616号(Geislerら)には、「木目(woodgrain)」効果として知られているもの、すなわち均等でない光学濃度、を低減する様々なフォトサーモグラフィ材料改質手段が記載されている。この効果は、支持体の処理、トップコートへの艶消剤の添加、一定の層におけるアキュータンス色素の使用または上述の出版物に記載されている他の手順を含む幾つかの手段によって低減または排除することができる。
【0236】
本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ材料は、支持体のいずれかの面または両面の、フォトサーモグラフィ乳剤層を含むいずれかの層内または別の導電層内に、一つまたは二つ以上の静電防止剤を含むことができる。したがって、導電成分には、可溶性塩(例えば、塩化物または硝酸塩);金属蒸着層;または米国特許第2,861,056号(Minsk)および同第3,206,312号(Stermanら)に記載されているものなどのイオン性ポリマー;または米国特許第3,428,451号(Trevoy)に記載されているものなどの不溶性無機塩;米国特許第5,310,640号(Markinら)に記載されているものなどの電導性下地層;米国特許第5,368,995号(Christianら)に記載されているものなどの電導性金属アンチモン酸塩粒子;および欧州特許第0 678 776号A1(Melpolerら)に記載されているものなどの、高分子バインダー中に分散された電導性金属含有粒子が挙げられるが、これらに限定されない。特に有用な導電性粒子は、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願番号10/304,224(LaBelle、Sakizadeh、Ludemann、BhaveおよびPhamにより2002年11月27日に出願されたもの)に記載されている非針状金属アンチモン酸塩粒子である。他の静電防止剤は、当業者に周知である。
【0237】
さらに他の導電性組成物には、一つまたは二つ以上のフルオロケミカルが挙げられ、これらは、各々、Rf−CH2CH2−SO3H(式中、Rfは、4以上充分にフッ素化された炭素原子を含む)とアミンの反応生成物である。これらの静電防止組成物は、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2003−0198901号(Sakizadehら)に、より詳細に記載されている。
【0238】
さらなる導電性組成物には、構造Rf−R−N(R’1)(R’2)(R’3+-(式中、Rfは、炭素原子数4から18の直鎖または分枝鎖過フルオロアルキル基であり;Rは、鎖内に少なくとも4個の炭素原子および1個のスルフィド基を含む二価の連結基であり;R’1、R’2、R’3は、独立して、水素またはアルキル基であるか、R’1、R’2およびR’3のうちの二つが協力して、カチオン窒素原子を有する5から7員複素環を生じさせるために必要な炭素および窒素原子を表すことができ;ならびにX-は、一価のアニオンである)を有する一つまたは二つ以上のフルオロケミカルが挙げられる。これらの静電防止組成物は、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願番号10/265,058(Sakizadeh、LaBelleおよびBhaveにより2002年10月4日に出願されたもの)により詳細に記載されている。
【0239】
本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ材料は、支持体の画像形成面上の一つまたは二つ以上の層で構成されるものであってもよい。単層材料は、化学増感済みハロゲン化銀、非感光性被還元性銀イオン源、還元剤組成物、バインダーならびに任意の材料、例えばトナー、アキュータンス色素、コーティング助剤および他のアジュバントを含有しなければならない。
【0240】
一般に、全ての成分を含有する画像形成単層コーティングおよび表面保護トップコートを含む二相構造体が、本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料のおもて面に見られる。しかし、化学増感済みハロゲン化銀および非感光性被還元性銀イオン源が一つの画像形成層(通常は支持体に近いほうの層)内に含まれ、還元剤組成物および他の成分が第二の画像形成層内に含まれるか、両方の層の間に分散されている二相構造体も考えられる。
【0241】
米国特許第5,891,610号(Bauerら)、同第5,804,365号(Bauerら)および米国特許第4,741,992号(Przezdziecki)に記載されているような、フォトサーモグラフィ材料内の層同士の接着を促進するための層も知られている。接着は、米国特許第5,928,857号(Geislerら)に記載されているような特定の高分子接着材料を使用して促進することもできる。
【0242】
米国特許第6,352,819号(Kenneyら)、同第6,352,820号(Bauerら)、同第6,420,102号(Bauerら)、同時係属の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願番号10/341,747(Rao、Hammerschmidt,Bauer,KressおよびMillerにより2003年1月14日に出願されたもの)、および米国特許出願番号第10/351,814(Huntにより2003年1月27日に出願されたもの)に記載されているような重合体バリア層を含む、フィルムからの発光を低減する層が存在することもある。
【0243】
本明細書に記載のフォトサーモグラフィ配合物(フォトサーモグラフィ乳剤配合物を含む)は、線巻ロッド塗布、浸漬被覆、エアナイフ塗布、カーテン塗布、スライド塗布、または米国特許第2,681,294号(Beguin)に記載されているタイプのホッパーを使用する押出塗布を含む様々な塗布手順により塗布することができる。層は、一層ずつ塗布することができ、または米国特許第2,761,791号(Russell)、同第4,001,024号(Dittmanら)、同第4,569,863号(Keopkeら)、同第5,340,613号(Hanzalikら)、同第5,405,740号(LaBelle)、同第5,415,993号(Hanzalikら)、同第5,525,376号(Leonard)、同第5,733,608号(Kesselら)、同第5,849,363号(Yapelら)、同第5,843,530号(Jerryら)、同第5,861,195号(Bhaveら)、および英国特許第837,095号(Ilford)に記載されている手順により二つ以上の層を同時に塗布することができる。乳剤層の代表的な塗布ギャップは、10から750μmであり得、層は、20℃から100℃の温度で、押し込み空気の中で乾燥させることができる。層の厚さは、MacBeth Color Densitometer Model TD 504により測定して、0.2より大きい、さらに好ましくは0.5から5.0以上の最大画像濃度を生じさせるように選択することが好ましい。
【0244】
例えば、支持体へのフォトサーモグラフィ乳剤配合物の塗布後または塗布と同時に保護オーバーコート配合物をその乳剤配合物上に塗布することができる。好ましくは、これら二つの配合物は同時に塗布する。
【0245】
他の実施形態では、上記の二つ以上のポリマーの一相混合物を含む「担体」層配合物を支持体に直接塗布することができ、その結果、それらを乳剤層(複数を含む)の下に配置することができる。このような配合物は、米国特許第6,355,405号(Ludemannら)に記載されている。好ましくは、担体層配合物は、フォトサーモグラフィ乳剤層配合物の塗布と同時に支持体に塗布する。
【0246】
本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料におけるまだらおよび他の表面異常は、例えば米国特許第5,532,121号(Yonkoskiら)に記載されているようなフッ素化ポリマーを組み込むことにより、または例えば米国特許第5,621,983号(Ludemannら)に記載されている特別な乾燥技法を使用することにより低減することができる。
【0247】
好ましくは、スライド塗布を用いて二つ以上の層配合物をフィルム支持体に塗布する。第一層は、第二層がまだ濡れている間にその第二層の上に塗布することができる。これらの層を塗布するために使用される第一液および第二液は、同じ溶剤であってもよいし、異なる溶剤(または溶剤混合物)であってもよい。
【0248】
第一層および第二層をフィルム支持体の一方の面に塗布することができる一方で、導電層、ハレーション防止層もしくは艶消剤(シリカなど)を含有する層またはこのような層の組合せを含む一つまたは二つ以上のさらなる層をポリマー支持体の反対の面または裏面に形成することも製造方法に含めることができる。あるいは、一つの裏面層により所望の機能の全てが遂行されることもある。
【0249】
本発明に従って調製されるフォトサーモグラフィ材料が、支持体の両面にフォトサーモグラフィ乳剤層を含み、少なくとも一つの乳剤層の下にハレーション防止下地層として少なくとも一つの赤外線吸収性の熱漂白可能な組成物を含むことができることも考慮される。
【0250】
支持体の両面に配置された熱現像可能な層を有するフォトサーモグラフィ材料は、多くの場合、「クロスオーバー」を被る。クロスオーバーは、フォトサーモグラフィ材料の一方の面に画像形成するために使用される放射線が支持体の中を透過し、その支持体の反対の面のフォトサーモグラフィ層に画像形成するときに発生する。このような放射線は、画質(特に鮮明度)の低下の原因となる。クロスオーバーを減少させると、画像はより鮮明になる。クロスオーバーを減少させるために様々な方法を利用することができる。このような「クロスオーバー防止」材料は、クロスオーバーを減少させるために特別に含める材料であってもよいし、またはアキュータンス色素もしくはハレーション防止色素であってもよい。いずれにしても、可視光で画像形成する場合、加工中にそれらを無色にすることが必要なことが多い。
【0251】
画像鮮明度を上昇させるために、本発明の方法によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、アキュータンス色素および/またはハレーション防止色素を含有する一つまたは二つ以上の層を含むことができる。これらの色素は、露光波長に近い波長を吸収するように選択され、散乱光を吸収するように設計される。既知の技法に従って、ハレーション防止裏打ち層として、ハレーション防止下地層として、またはハレーション防止オーバーコートとしての一つまたは二つ以上のハレーション防止層に、一つまたは二つ以上のハレーション防止組成物を組み込むことができる。加えて、既知の技法に従って、一つまたは二つ以上のアキュータンス色素をおもて面の一つまたは二つ以上の層、例えばフォトサーモグラフィ乳剤層、プライマー層、下地層またはトップコート層に組み込むことができる。フォトサーモグラフィ材料が、支持体の裏面上に、さらに好ましくは裏面の導電層内に、ハレーション防止組成物を含有することが好ましい。
【0252】
ハレーション防止色素およびアキュータンス色素として有用な色素には、米国特許第5,380,635号(Gomezら)および同第6,063,560号(Suzukiら)ならびに欧州特許第1 083 459号A1(Kimura)に記載されているスクアライン色素;欧州特許第0 342 810号A1(Leichter)に記載されているインドレニン色素;および米国特許出願公開第2003−0162134号(Huntら)に記載されているシアニン色素が挙げられる。
【0253】
加工中に熱で脱色または漂白するアキュータンス色素またはハレーション防止色素を含む組成物の利用も有用である。色素およびこれらのタイプの色素を利用する構造体は、例えば、米国特許第5,135,842号(Kitchinら)、同第5,266,452号(Kitchinら)、同第5,314,795号(Hellandら)、同第6,306,566号(Sakuradaら)、特開2001−142175(Hanyuら)および特開2001−183770(Hanyeら)に記載されている。特開平11−302550(Fujiwara)、特開2001−109101(Adachi)、特開2001−51371(Yabukiら)および特開2000−029168(Noro)に記載されている漂白組成物も有用である。
【0254】
特に有用な熱漂白可能な裏面ハレーション防止組成物には、オキソノール色素などの赤外線吸収化合物、およびヘキサアリールビイミダゾール(「HABI」としても知られている)と併用される様々な他の化合物、またはそれらの混合物を挙げることができる。米国特許第4,196,002号(Levinsonら)、同第5,652,091号(Perryら)、および同第5,672,562号(Perry et al.)など、このようなHABI化合物は当分野において周知である。このような熱漂白可能な組成物の例は、例えば、米国特許第6,455,210号(Irvingら)、同第6,514,677号(Ramsdenら)、および同第6,558,880号(Goswamiら)に記載されている。
【0255】
実際の使用条件下では、これらの組成物を加熱して、少なくとも90℃の温度で少なくとも0.5秒間、漂白を生じさせる。好ましくは、漂白は、100℃から200℃の温度で5から20秒間行われる。最も好ましい漂白は、110℃から130℃の温度で20秒以内行われる。
【0256】
一部の好ましい実施形態において、本発明によって調製されるフォトサーモグラフィ材料は、支持体の両面の一つまたは二つ以上の画像形成層の上に表面保護層を含む。
【0257】
他の好ましい実施形態において、フォトサーモグラフィ材料は、一つまたは二つ以上のフォトサーモグラフィ乳剤層と同じ支持体面上にある表面保護層、ならびにハレーション防止組成物および/または導電性静電防止成分を含む裏面上にある層を含む。別の裏面表面保護層をこれらの実施形態に含めることもできる。
【0258】
画像形成/現像
本発明に従って作製されるフォトサーモグラフィ材料は、いずれかの適する画像形成源(典型的には、放射線または電子シグナルの何らかのタイプ)を使用して、その材料のタイプに合ういずれかの適する手法で画像形成することができる。一部の実施形態において、本材料は、少なくとも300nmから1400nm、好ましくは300nmから850nmの範囲の放射線に感光する。
【0259】
画像形成は、本発明により作製されるフォトサーモグラフィ材料をそれらが感光する適切な放射線(紫外線、可視光、近紫外線および赤外線を含む)源に露光して潜像を生じさせることにより、達成することができる。適する露光手段は周知であり、そのような手段には、白熱灯、蛍光灯、キセノンフラッシュランプ、レーザ、レーザダイオード、発光ダイオード、赤外線レーザ、赤外線レーザダイオード、赤外線発光ダイオード、赤外線ランプ、または当業者に容易にわかる他のあらゆる紫外線、可視光もしくは赤外線源、およびリサーチディスクロージャ,1996年9月,第38957項などに記載されている他のものを含む放射線源が挙げられる。特に有用な赤外露光手段には、レーザーダイオードが挙げられ、これは、米国特許第5,780,207号(Mohapatraら)に記載されているようなマルチ縦モード露光法として知られているものを使用して画像形成効率を増大させるように調節されているレーザーダイオードを含む。他の露光法は、米国特許第5,493,327号(McCallumら)に記載されている。
【0260】
一部の実施形態では、適するX線画像形成源を使用して潜像を生じさせることによりフォトサーモグラフィ材料に画像形成することができる。適する露光手段は周知であり、そのような手段には、医療用X線装置、乳房用X線装置、歯科用X線装置および工業用X線装置が挙げられる。
【0261】
蓄積性燐光体が、フォトサーモグラフィ材料の中に組み込まれている場合、X線への初期露光量は、それらの燐光体粒子内に「蓄積」される。その後、その材料を二回目は刺激性電磁線(通常は可視光または赤外線)に露光すると、「蓄積された」エネルギーが、可視光または赤外線の発光として放出される。その後、それらのフォトサーモグラフィ材料は、加熱により現像することができる。
【0262】
熱現像条件は、使用される構造体に依存して変化するであろうが、一般に、画像様露光済み材料の適切に上昇させた温度での加熱を含むであろう。従って、潜像は、例えば50℃から250℃(好ましくは80℃から200℃、さらに好ましくは100℃から200℃)の中等度に上昇させた温度で充分な時間、一般には1から120秒、その露光済み材料を加熱することにより現像することができる。加熱は、適する加熱手段、例えばホットプレート、スチームアイロン、熱ローラ又は加熱浴を使用して達成することができる。好ましい熱現像手順には、110℃から135℃での3から25秒の加熱が挙げられる。
【0263】
一部の方法では、現像を二段階で行う。熱現像をより高温、より短時間(例えば150℃で10秒以下)で行い、その後、転写溶剤の存在下、より低温(例えば80℃)で熱拡散させる。
【0264】
もう一つの二段現像法では、予熱段階(例えば110℃で10秒以下)、その直後の最終現像段階(例えば125℃で20秒以下)を用いて熱現像を行うことができる。
【0265】
フォトマスクとしての使用
本明細書に記載のフォトサーモグラフィ材料は、非画像形成領域が350から約450nmの範囲に関して充分透過性であるので、紫外線又は短波長可視光に感光する画像形成可能な媒体を引き続き露光する方法においても使用することができる。例えば、本材料を画像形成し、その後、現像を行うことにより、可視像が得られる。これらの熱現像済みフォトサーモグラフィ材料は、可視像がある領域では紫外線または短波長可視光を吸収し、可視像がない場所では、紫外線または短波長可視光を透過させる。その後、これらの熱現像済み材料をマスクとして使用し、画像形成用放射線源(例えば、紫外線または短波長可視光エネルギー源)と、このような画像形成用放射線に感光する画像形成可能な材料、例えばフォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジストまたは感光性印刷版との間に配置することができる。画像形成可能な材料を、露光および熱現像済みフォトサーモグラフィ材料内の可視像を通して画像形成用放射線に露光することにより、その画像形成可能な材料に画像が生じる。この方法は、画像形成可能な媒体が印刷版を含み、そのフォトサーモグラフィ材料がイメージセッティングフィルムとしての役割を果たす場合に特に有用である。
【0266】
従って、可視像(通常は白黒画像)の形成方法は、
(A)化学増感済み感光性ハロゲン化銀が感光する電磁線にフォトサーモグラフィ材料を画像様露光して、潜像を形成する段階、および
(B)同時にまたはその後、その露光済み材料を加熱して、その潜像を可視像に現像する段階
を含む。
【0267】
段階Aにおいて、このフォトサーモグラフィ材料は、紫外線、可視光、赤外線または当業者には容易にわかる他のいずれかの赤外線源を含むこの材料が感光するいずれかの放射線源を使用して露光することができる。
【0268】
その後、そのフォトサーモグラフィ材料から作製されたこの可視像は、適する画像形成用放射線(例えばUV線)に感光する他の感光性で画像形成可能な材料、例えばグラフィックアート用フィルム、校正刷り用フィルム、印刷版および回路基板フィルムのる露光用のマスクとして使用することができる。これは、画像形成可能な材料(例えば、フォトポリマー、ジアゾ材料、フォトレジスト、または感光性印刷版)を熱現像済みフォトサーモグラフィ材料を通して画像形成することにより行うことができる。従って、フォトサーモグラフィ材料が透明支持体を含む一部の他の実施形態では、前記画像形成法が、
(B)画像形成用放射線源とその画像形成用放射線に感光する画像形成可能な材料との間に、露光および熱現像済みフォトサーモグラフィ材料を配置する段階、および
(C)その露光および熱現像済みフォトサーモグラフィ材料内の可視像を通して、その画像形成可能な材料をその画像形成用放射線に露光する段階
をさらに含む。
【0269】
画像形成用集成体
本明細書に記載のフォトサーモグラフィ材料は、そのフォトサーモグラフィ材料のおもておよび/または裏に隣接した一つまたは二つ以上の蛍光増感スクリーンを含む画像形成用集成体においても有用である。このようなスクリーンは、当分野において周知である[例えば、米国特許第4,865,944号(Robertsら)および同第5,021,327号(Bunchら)]。集成体(多くの場合、カセットとして知られている)は、適するホルダー内にフォトサーモグラフィ材料および一枚以上のスクリーンを配列し、輸送用および画像形成用にそれらを適切に包装することによって作製することができる。
【0270】
使用の際、蛍光増感スクリーンは、フォトサーモグラフィ材料の「おもて」に配置して、X線を吸収し、および300nmより大きな波長を有する、そのフォトサーモグラフィ材料を増感した電磁線を放射するようにすることができる。
【0271】
二重塗被X線感光性フォトサーモグラフィ材料(すなわち、支持体の両面に一つまたは二つ以上の熱現像可能な画像形成層を有する材料)は、好ましくは二枚のスクリーン(その材料の「おもて」に一枚、「裏」に一枚のスクリーン)と併用される。このおもてと裏のスクリーンは、所望される発光のタイプ、所望されるフォティシティー(photicity),乳剤スピード、およびクロスオーバー率に依存して適切に選択することができる。所望される場合には、金属(銅または鉛など)スクリーンも含めることができる。
【0272】
画像形成用集成体またはカセット内でのスクリーンとフォトサーモグラフィ材料の他の配列は、当業者には容易にわかる。工業用ラジオグラフィにおいて有用な構造体および画像形成用集成体には、例えば、米国特許第4,480,024号(Lyonsら)および同第5,900,357号(Feumi−Jantouら)ならびに欧州特許第1 350 883号Al(Pesceら)が挙げられる。
【実施例】
【0273】
以下の例は、本発明の実施を説明するために提供するものであり、それによって本発明を制限する意味は持たない。
【0274】
実験および例のための材料および方法:
以下の例において使用する全ての材料は、特に他の指定がない限り、標準的な市場の供給業者、例えばAldrich Chemical Co.(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から容易に入手することができる。他に指示のない限り、全ての百分率は、重量パーセントである。次の追加の用語および材料を使用した。
【0275】
ACRYLOID(商標)A−21は、Rohm and Hss(ペンシルバニア州、フィラデルフィア)から入手できるアクリル酸コポリマーである。
【0276】
BUTVAR(商標)B−79は、Solutia,Inc.(ミズーリ州、セントルイス)から入手できるポリビニルブチラール樹脂である。
【0277】
CAB 171−15SおよびCAB 381−20は、Eastman Chemical Co.(テネシー州、キングズポート)から入手できる酢酸酪酸セルロース樹脂である。
【0278】
DESMODUR(商標)N3300は、Bayer Chemicals(ペンシルバニア州、ピッツバーグ)から入手できる脂肪族ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0279】
Fischer X線撮影装置は、Model 36600Gであり、Fischer Imaging Corporation(コロラド州、デンバー)から入手した。
【0280】
LOWINOX(商標)221B446は、Great Lakes Chemical(インディアナ州、ウエストラフィエット)から入手できる2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)である。
【0281】
硫化ジフェニルホスフィン(DPPS)は、Organometallics,Inc(ニューハンプシャー州、イーストハムステッド)から入手した。
【0282】
PERMANAX(商標)WSO(またはNONOX(商標))は、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン[CAS RN=7292−14−0]であり、St−Jean PhotoChemicals,Inc.(カナダ、ケベック)から入手できる。
【0283】
MEKは、メチルエチルケトン(または2−ブタノン)である。
【0284】
「PHP」は、臭化水素酸ピリジニウム過臭化物であり、Great Western Inorganics,Inc,Arvada,COから入手できる。
【0285】
PIOLOFORM(商標)BL−16およびPIOLOFORM(商標)BN−18は、Wacker Polymer System(ミシガン州、エードリアン)から入手できるポリビニルブチラール樹脂である。
【0286】
X−Rite(商標)Model 301濃度計は、X−Rite Inc.(ミシガン州、グランドヴィル)から入手した。
【0287】
ビニルスルホン−1(VS−1)は、米国特許第6,143,487号に記載されており、下に示す構造を有する。
【0288】
【化10】

【0289】
2−(トリブロモメチルスルホニル)ピリジン(カブリ防止剤−A)は、次の構造を有する。
【0290】
【化11】

【0291】
エチル−2−シアノ−3−オキソブタノエート(カブリ防止剤−B)は、米国特許第5,686,228号に記載されており、下に示す構造を有すると考えられる。
【0292】
【化12】

【0293】
増感色素Aは、下に示す構造を有する。
【0294】
【化13】

【0295】
化合物Au−2は、三塩化金(III)ターピリジン錯体であり、下に示す構造を有する。
【0296】
【化14】

【0297】
バックコート色素BC−1は、シクロブテンジイリウム,1,3−ビス[2,3−ジヒドロ−2,2−ビス[[1−オキソへキシル)オキシ]メチル]−1H−ペリミジン−4−イル]−2,4−ジヒドロキシ−,ビス(分子内塩)である。これは、下に示す構造を有すると考えられる。
【0298】
【化15】

【0299】
アキュータンス色素AD−1は、次の構造を有する。
【0300】
【化16】

【0301】
着色用色素TD−1は、次の構造を有する。
【0302】
【化17】

【0303】
有機硫黄色素化合物OSD−1は、次の構造を有する。
【0304】
【化18】

【0305】
例1
この例では、本発明の化学増感の化合物を、米国特許第5,891,615号(Winslowら)に記載されているものと比較する。化学増感剤を含有しない対照例も調製した。それに対照例1−1と名付けた。
【0306】
対照例1−1の調製:
予め形成されたハロゲン化銀を含有するベヘン酸銀完全石鹸のフォトサーモグラフィ乳剤を米国特許第5,939,249号(上述)に記載されているとおり調製した。この乳剤を均質化して、2%PIOLOFORM(商標)BM−18 ポリビニルブチラールバインダーを含有するMEK中、固体27.2%にした。15分間、20℃で混合し、その後、攪拌を継続しながらメタノール中の臭化水素酸ピリジニウム過臭化物の15%溶液 1.6部を添加した。60分間混合した後、メタノール中の11%臭化亜鉛溶液 2.1部を添加した。攪拌を継続し、30分後、0.15部の2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、0.007部の増感色素A、1.7部の2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸、10.8部のメタノールおよび3.8部のMEKを添加した。
【0307】
さらに75分間攪拌した後、26部のPIOLOFORM(商標)BM−18 ポリビニルブチラールおよび20部のPIOLOFORM(商標)BL−16を添加し、その温度を10℃に低下させ、さらに30分間、混合を継続した。
【0308】
フォトサーモグラフィコーティング配合物:
溶液A:
カブリ防止剤−A 1.2部
テトラクロロフタル酸 0.37部
4−メチルフタル酸 0.60部
MEK 16部
メタノール 0.28部
LOWINOX(商標)221B446 9.5部
【0309】
溶液B:
DESMODUR(商標)N3300 0.66部
MEK 0.33部
【0310】
溶液C:
フタラジン 1.3部
MEK 6.3部
【0311】
溶液A、LOWINOX(商標)221B446、溶液Bおよび溶液Cの添加により、フォトサーモグラフィコーティング配合物を完成した。これらの材料は、5分の間隔を空けて添加した。混合を継続した。
【0312】
保護トップコート配合物:
フォトサーモグラフィ乳剤層用の保護トップコートの原液配合物は、次のとおり調製した:
ACRYLOID(商標)A−21 2.9部
CAB 171−15S 32部
MEK 459部
ビニルスルホン(VS−1) 1.6部
ベンゾトリアゾール 0.9部
カブリ防止剤−B 0.8部
アキュータンス色素(AD−1) 0.5部
着色用色素(TD−1) 0.02部
【0313】
比較例1−2の調製:
比較例1−2は、次のことを除き、対照例1−1と同じ方法で調製した:
− MEK/メタノール(1:1)混合物中の有機硫黄色素化合物(ODS−1)の0.66溶液 3部を196部のフォトサーモグラフィ乳剤に添加した後、PHPを添加した。
【0314】
本発明の例1−3および1−4の調製:
本発明の例1−3および1−4は、次のことを除き、比較例1−1と同じ方法で調製した:
− 本発明の例1−3では、有機硫黄色素化合物OSC−1の代わりにMEK/メタノール(1:1)中の硫化ジフェニルホスフィン化合物PS−1の0.5%溶液 8部を使用した。化合物PS−1をこの乳剤に添加した後、PHPを添加した。
− 本発明の例1−4では、MEK中の硫化ジフェニルホスフィン化合物PS−15の1%溶液 2部を使用した。化合物PS−15をこの乳剤に添加した後、PHPを添加した。
【0315】
フォトサーモグラフィ配合物およびトップコート配合物を178μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に同時に二重ナイフ塗布し、支持体から遠いほうにトップコートがあるフォトサーモグラフィ材料を生じさせた。塗布および乾燥の間、ウェブ(支持体および塗布層)は5m/分の速度で移送した。塗布後直ちにサンプルをオーブンで5分間、約85℃で乾燥させた。画像形成層配合物を塗布して、約2g/m2の銀乾燥コーティング重量を生じさせた。トップコート配合物を塗布して、約2.6g/m2の乾燥コーティング重量を生じさせた。
【0316】
上で作製した塗布および乾燥済みフォトサーモグラフィ材料を1.5インチ×10インチのストリップ(3.6cm × 25.4cm)に切断し、811nmレーザーダイオードを組み込んだ走査レーザーセンシトメータで10cm連続ウエッジ(連続階調)により露光した。サンプルの全スキャン時間は、6秒であった。熱ロール処理機を15秒間、252°F(122.2℃)で使用してサンプルを現像した。
【0317】
濃度測定は、特注コンピュータ走査濃度計を用い、ISO規格5−2および5−3に見合うように行った。これらは、市販の濃度計での測定と同等であると考えられる。その後、そのフォトサーモグラフィ材料の感光性に適するフィルタを使用して前記ウエッジの濃度を測定して、濃度対log露光量のグラフ(すなわち、D log E曲線)を得た。
【0318】
下の表Iに示す結果は、硫化ジフェニルホスフィン化合物が、有機硫黄色素化合物に勝るSP−2の有意な改善をもたらすことを実証している。本発明の例1−3ではDminのわずかな増加が見られた。
【0319】
【表1】

【0320】
例2
この例は、化学増感の化合物が添加される温度のDmin、スピード−2およびスピード−3に対する影響を示すものである。対照例、比較例および本発明の例は、乳剤配合物の調製中の初期温度が20℃ではなく23℃であったことを除き、例1において説明したとおり製造した。
【0321】
【表2】

【0322】
例3
次のようにフォトサーモグラフィ配合物の調製を行った:
米国特許第6,413,710号(Shorら)に記載されているとおり予形成の臭化銀、カルボン酸銀「石鹸」を調製した。平均粒度は、0.15μmであった。
フォトサーモグラフィ乳剤配合物
【0323】
化学増感済みフォトサーモグラフィ乳剤は、本明細書に記載の硫化ジフェニルホスフィン化合物を組み込んだこと、ならびに下に記載する材料および量を使用したことを除き、米国特許第6,423,481号(Simpsonら)に記載されている手順に従って調製した。これらの材料は、10から60分の間隔を空けて添加し、添加中の温度は、50°Fから70°F(10℃から21℃)の範囲であった。
【0324】
固体28.4%のこの銀石鹸分散物163.0gに次のものを次の順序で添加した:
化学増感剤(PS−1) 8.64gのMEOH中の1.53×10-4モル溶液 8.1mL
PHP 1.58gのMeOH中、0.20g
ZnBr2 1.19gのMeOH中、0.169g
Au−2 50gのMeOH中の0.0052gの溶液 4.8mL
クロロベンゾイル安息香酸 1.42g
BUTVAR(商標)B−79 20g
カブリ防止剤−A 19.4gのMEK中、1.71g
DESMODUR(商標)N3300 1.5gのMEK中、0.63g
フタラジン 5gのMEK中、1.0g
テトラクロロフタル酸 2gのMEK中、0.35g
4−メチルフタル酸 4gのMEK中、0.45g
PERMANAX(商標)WSO 10.6g
【0325】
保護トップコート配合物
フォトサーモグラフィ乳剤層の保護トップコートは、次のとおり調製した:
ACRYLOID(商標)A−21 0.58g
CAB 171−15S 14.9g
MEK 200g
VS−1 0.3g
ベンゾトリアゾール 1.6g
カブリ防止剤−A 0.24g
カブリ防止剤−B 0.12g
【0326】
フォトサーモグラフィ乳剤配合物およびトップコート配合物は、CAB 171−15S樹脂バインダー中の色素BC−1を含有する裏面ハレーション防止層を設けた7ミル(178μm)青色着色ポリエチレンテレフタレート支持体上に、二重ナイフ塗布機を使用して安全光条件下で塗布した。サンプルを7分間、87℃で乾燥させた。銀コーティング重量は、約2.2から2.3g/m2であった。
【0327】
P−16フィルタと0.7中性濃度フィルタの両方を装備したEG&G Flashセンシトメータを使用して10-3秒間、それらのフォトサーモグラフィ材料のサンプルを画像様露光して、連続色調「ウエッジ」(連続階調)を生じさせた。露光後、15秒間、122.2℃から122.8℃で加熱ロール処理機を使用してフィルムを現像した。
【0328】
濃度測定は、上の例1において説明したような特注コンピュータ走査濃度計を使用して行った。下の表IIIに示すセンシトメトリーの結果は、硫化ジフェニルホスフィン化合物(PS−1)および酸化化合物(PHP)の添加後にZnBr2を添加することによって良好なDmim、スピードおよびコントラストを有するフォトサーモグラフィ材料が生じることを実証している。
【0329】
【表3】

【0330】
例4
燐光体含有フォトサーモグラフィ材料における使用:
上の例3において調製したフォトサーモグラフィ乳剤配合物各々の25gに、4.0μmの平均寸法を有する18.2gのYSrTaO4燐光体を添加した。これらの材料を5分間混合して、最終フォトサーモグラフィコーティング配合物を調製した。例4において説明したとおりフォトサーモグラフィ材料を塗布し、乾燥させた。おおよその燐光体コーティング重量は、76から77g/m2であった。
【0331】
それらのフォトサーモグラフィ材料を、上の例4において説明したとおり画像形成し、現像し、評価した。下の表IVに示すセンシトメトリーの結果は、硫化ジフェニルホスフィン化合物(PS−1)および酸化化合物(PHP)の添加後のZnBr2の添加がDmim、スピードおよびコントラストに良好な影響を及ぼすことを実証している。
【0332】
【表4】

【0333】
これらのフォトサーモグラフィ材料のX線センシトメトリー応答は、200mAおよび76KeVで動作し、3.0mmのアルミニウムシートで濾光するFischerX線装置を使用してそれらのサンプルを露光することにより判定した。サンプルは、X線源から85.5cmに設置したテーブルの上に置いた。一定強度の一連のX線照射および0.1秒から1.5秒の露光時間にした。露光済みサンプルを、例1に記載した手順に類似した手法で現像した。
【0334】
これらのサンプルの濃度は、Status Aフィルタを使用し、可視フィルタで測定するX−Rite(商標)310濃度計で測定した。下の表Vに示すセンシトメトリーの結果は、化合物PS−1およびPHP酸化化合物の添加後にZnBr2を添加することによって、現像濃度とDmimが良好に異なるフォトサーモグラフィ材料が生じることを実証している。
【0335】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、下記構造PS:
【化1】

(式中、Ph1およびPh2は、同じまたは異なるフェニル基であり;R1およびR2は、各々、独立して、水素またはアルキルまたはフェニル基であり;Lは、直接結合または二価の連結基であり;mは、1または2であり;mが、1であるときには、R3は、一価の基であり;mが、2であるときには、R3は、その鎖内に1〜20個の炭素、窒素、酸素または硫黄原子を有する二価脂肪族連結基である)
によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物一つまたは二つ以上を用意する段階;
(C)前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の上記構造(PS)によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下で分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;ならびに
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の前記被還元性銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子に変換する段階
を含む、フォトサーモグラフィ乳剤の調製方法。
【請求項2】
前記フォトサーモグラフィ乳剤をバインダーと混合する段階、および得られた乳剤配合物を支持体上に塗布する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非感光性の被還元性銀イオン源が、炭素原子数10から30の脂肪酸の脂肪酸カルボン酸銀または前記脂肪酸カルボン酸銀の混合物(これらのカルボン酸塩のうちの少なくとも一つはベヘン酸銀である)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Ph1およびPh2が、同じまたは異なるフェニル基であり、R1およびR2が、各々、独立して、水素であり、Lが、カルボニル[−(C=O)−]基であり、mが、1であり、R3が、炭素原子数1から7の一価脂肪族基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硫化ジフェニルホスフィン化合物が、前記フォトサーモグラフィ分散物中の前記非感光性の被還元性銀イオン源から、全銀1モル当たり1.5×10-6から4×10-3モルの量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被還元性銀イオンが、非感光性の被還元性銀イオン源1モル当たり10-4から10-1モルのハロゲン原子の量でのハロゲン含有化合物の添加により、感光性ハロゲン化銀に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
0.5から5モル%の前記非感光性の被還元性銀イオン源が、感光性ハロゲン化銀に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記硫化ジフェニルホスフィン化合物が、HSBrを生じる酸化剤の存在により分解される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記硫化ジフェニルホスフィン化合物が、一対の臭素原子と組み合わさるN−複素環化合物の臭化水素酸塩の存在により分解される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記硫化ジフェニルホスフィン化合物が、一つまたは二つ以上の酸化剤の複数の添加により分解される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化学増感段階が、10℃から30℃の温度で60分間以下行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化学増感段階後、分光増感色素を添加して、前記感光性ハロゲン化銀粒子を600から1100nmに対して分光増感する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記フォトサーモグラフィ乳剤配合物に還元剤組成物を添加する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フォトサーモグラフィ乳剤配合物に燐光体を添加する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および前記非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、下記化合物PS−1からPS−19:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

の少なくとも一つから選択される一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を用意する段階;
(C)臭化水素酸ピリジニウム過臭化物を20℃から30℃で60分間以下、一つまたは二つ以上の段階で前記ハロゲン化銀粒子に添加することによって、前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の前記一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、ベヘン酸銀を含む前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性臭化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;ならびに
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の0.1から10モル%の被還元性銀イオンを臭化物塩の添加により感光性臭化銀粒子に変換する段階
を含む、白黒フォトサーモグラフィ乳剤の調製方法。
【請求項16】
分光増感色素を前記フォトサーモグラフィ乳剤に添加して、前記感光性臭化銀粒子を600nmから1100nmに対して分光増感する段階をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フォトサーモグラフィ乳剤に一つまたは二つ以上のカブリ防止剤、静電防止剤、トナー、艶消剤、現像促進剤、アキュータンス色素、加工後安定剤または安定剤前駆物質、熱溶剤、保存安定性向上剤、補助現像剤、コントラスト増強剤または硬調化剤を添加する段階をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記フォトサーモグラフィ乳剤に燐光体を添加する段階をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記フォトサーモグラフィ乳剤に疎水性バインダーを添加して、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を提供する段階をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
支持体上に前記フォトサーモグラフィ乳剤配合物を塗布する段階をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(A)予め形成された感光性ハロゲン化銀および非感光性の被還元性銀イオン源のフォトサーモグラフィ分散物を用意する段階、および以下の段階を順番に行うこと、
(B)前記予め形成されたハロゲン化銀粒子および非感光性の被還元性銀イオン源と組み合わさる、下記構造PS:
【化7】

(式中、Ph1およびPh2は、同じまたは異なるフェニル基であり;R1およびR2は、各々、独立して、水素またはアルキルまたはフェニル基であり;Lは、直接結合または二価の連結基であり;mは、1または2であり;mが、1であるときには、R3は、一価の基であり;mが、2であるときには、R3は、その鎖内に1〜20個の炭素、窒素、酸素または硫黄原子を有する二価脂肪族連結基である)
によって表される硫化ジフェニルホスフィン化合物一つまたは二つ以上を用意する段階;
(C)前記ハロゲン化銀粒子上または周囲の前記一つまたは二つ以上の硫化ジフェニルホスフィン化合物を酸化環境下で分解することにより前記予め形成されたハロゲン化銀粒子を化学増感して、前記非感光性の被還元性銀イオン源と反応的に組み合わさる化学増感済み感光性ハロゲン化銀粒子を含むフォトサーモグラフィ乳剤を用意する段階;
(D)前記非感光性の被還元性銀イオン源中の被還元性銀イオンの一部を感光性ハロゲン化銀粒子に変換する段階;
(E)段階(A)から(D)のいずれかと同時に、または段階(D)の後に、バインダーを添加して、フォトサーモグラフィ乳剤配合物を形成する段階;ならびに
(F)段階(E)の後、前記乳剤配合物を支持体上に塗布し、乾燥させて、フォトサーモグラフィ材料を生じさせる段階
を含む、フォトサーモグラフィ材料の調製方法。
【請求項22】
段階(E)と同時に、または段階(E)の後に、保護オーバーコート配合物を前記フォトサーモグラフィ乳剤配合物上に塗布する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
段階(F)の前に、または段階(F)と同時に、担体層を、前記支持体の上、前記フォトサーモグラフィ乳剤配合物の下に塗布する、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514198(P2007−514198A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543861(P2006−543861)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/039916
【国際公開番号】WO2005/062120
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】