説明

フォトスペーサ用感光性樹脂組成物およびこれを用いたフォトスペーサ

【課題】g線及びh線に対する露光感度が高く、かつ、主PSとサブPSの両方の形状に優れたスペーサを提供する。
【解決手段】(A)光重合開始剤、(B)溶剤、(C)重合性モノマーおよび(D)アルカリ可溶性樹脂を含み、(A)光重合開始剤として、1種以上のO−アシルオキシムエステル化合物と、1種以上のα−アミノアセトフェノン化合物を含み、同時に2種以上の独立したパターンの形成が可能であることを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時に2種の独立したパターンの形成が可能なフォトスペーサ用感光性樹脂組成物に関する。また、かかるフォトスペーサ用感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法および該パターン形成方法を含むフォトスペーサの製造方法にも関する。さらに、フォトスペーサ用感光性樹脂組成物を用いたフォトスペーサおよび、該フォトスペーサを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置などに使われるフォトスペーサ材料について検討が行われている(特許文献1、2)。近年、フォトスペーサ(以下、「PS」ということがある)のコストダウン策の一つとして、減価償却が進んだ既存の設備を組み合わせて使用し、製造コスト(設備コスト)を下げるといった動きがある。また、近年、高精細化も進んできている。従来、フォトスペーサの作成には、主に、プロキシ露光のghi線露光が用いられてきたが、新規に製造ラインを立ち上げ時に、休止している高精細用ステッパーやスキャナー(gh線露光機)の活用が使えると設備投資が抑えられ、非常に生産効率が上げられる。そのため、gh線に特に優れた露光適性を持つフォトスペーサ材料が望まれていた。しかしながら、上記特許文献1は、ghi線用であり、gh線露光に特に優れた感度を有するフォトスペーサ材料はほとんど無い。
【0003】
また、主フォトスペーサ(主PS)と、サブフォトスペーサ(サブPS)の2つを同時に形成するPSの場合、特に、サブPSの形状がだれてしまうという問題もある。特許文献2はこの点を解決しようとしているが、採用する重合禁止剤の種類を検討することによって課題を解決しており、後述する本願発明とは思想が異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96846号公報
【特許文献2】特開2010−152362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決することを目的としたのもであって、特に、g線およびh線に対する露光感度が高く、かつ、ハーフトーン適正に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、特定の重合開始剤2種類を組み合わせて用いることにより、g線及びh線に対する露光感度が特に高く、かつ、主PSとサブPSの両方の形状に優れたフォトスペーサが得られることを見出し、本発明を完成させるにいたった。具体的には、下記<1>の手段により、好ましくは、下記<2>〜<15>の手段により達成された。
<1>(A)光重合開始剤、(B)溶剤、(C)重合性モノマーおよび(D)アルカリ可溶性樹脂を含み、(A)光重合開始剤として、1種以上のO−アシルオキシムエステル化合物と、1種以上のα−アミノアセトフェノン化合物を含み、同時に2種以上の独立したパターンの形成が可能であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
<2>(D)アルカリ可溶性樹脂のうち少なくとも1種が、酸価150〜400mgKOH/gである<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<3>さらに、(E)光増感剤または助開始剤を含む、<1>または<2>に記載の感光性樹脂組成物。
<4>(A)光重合開始剤と(E)光増感剤または助開始剤との添加量の総和が、感光性樹脂組成物の全固形分中の0.1〜15.0重量%である、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<5>(C)重合性モノマーが酸基を有し、かつ、酸価が20〜150mgKOH/gである<1>〜<4>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<6>O−アシルオキシムエステル化合物が、芳香環を有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<7>O−アシルオキシムエステル化合物が、芳香環を含む縮合環を有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<8>O−アシルオキシムエステル化合物が、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<9>O−アシルオキシムエステル化合物と、α−アミノアセトフェノン化合物とを、10:90〜80:20(重量比)で含む、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<10>(D)アルカリ可溶性樹脂が、アクリル系樹脂である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<11>gh線露光用である、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
<12><1>〜<11>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に付与して感光性樹脂組成物層を形成する工程と、前記感光性樹脂組成物層に対してパターン様に露光量を変えて露光を行い、露光部を硬化させる露光工程と、感光性樹脂組成物層の未硬化部を現像により除去して2種類以上の独立したパターンを形成する現像工程と、を含むパターン形成方法。
<13><1>〜<11>のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて基板上に2種類以上の独立したフォトスペーサパターンを形成する工程を含むフォトスペーサの製造方法。
<14><12>に記載の製造方法により製造された2種類以上の独立したパターンを有するフォトスペーサ。
<15><14>に記載の2種類以上の独立したパターンを有するフォトスペーサを有する表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、少なくとも、g線及びh線に対する露光感度が高く、かつ、主PSとサブPSの両方の形状に優れたスペーサを提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)光重合開始剤、(B)溶剤、(C)重合性モノマーおよび(D)アルカリ可溶性樹脂を含み、(A)光重合開始剤として、1種以上のO−アシルオキシムエステル化合物と、1種以上のα−アミノアセトフェノン化合物を含み、同時に2種以上の独立したパターンの形成が可能であることを特徴とする。O−アシルオキシムエステル化合物とα−アミノアセトフェノン化合物を併用することにより、2種類以上の独立したパターンが形成可能になる。
ここで、「同時に2種以上の独立したパターンの形成が可能な」とは、一度の露光によって、2種類以上の高さの異なるパターンを形成することをいう。一度の露光とは、同時期に行う露光を意味する。同時期に行う露光として、その露光方法は限定されないが、たとえば、透過率の異なるハーフトーンマスクを用いる方法、同時に2種類以上の露光量を照射して露光する方法などが挙げられる。
2種類以上の高さの異なるパターンは、例えば、2種類のパターンがある場合、高さの高い複数のパターンからなるパターン群(1)と、高さの低い複数のパターンからなるパターン群(2)が存在していることをいう。そして、パターン群(1)とパターン群(2)の間の高さの差は、0.4〜1.1μmであることが好ましい。パターン群の高さは、それぞれの平均値として定めることができる。また、それぞれの独立したパターン群の高さは一定であることが好ましく、例えば、標準偏差3σで±0.1μmとすることが好ましい。
一方、リブ材としての突起、リブ材をフォトスペーサと同時に作成する方法も知られているが、リブ材は基本的に液晶配向を制御するため、高さの制御というよりは角度の制御に趣がある。そして、フォトスペーサには高い弾性回復率(例えば、60%以上の弾性回復率)が求められる。
本発明のフォトスペーサ用感光性樹脂組成物を用いて、通常は、主PSとサブPSの2種類を形成するが、3種以上のPSを形成することを排除するものではないことは言うまでもない。
以下、本発明の各成分について詳細に説明する。
【0010】
(A)光重合開始剤
本発明では、(A)光重合開始剤として、O−アシルオキシムエステル化合物とα−アミノアセトフェノン化合物を用いる。
【0011】
O−アシルオキシムエステル化合物
本発明で用いるO−アシルオキシムエステル化合物は、−C=N−O−C(=O)構造を有するものであれば、特に定めるものではないが、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。また、本発明で用いるO−アシルオキシムエステル化合物は、オキシムエステル基が、前記縮合環に直接に結合した構造であることが好ましい。ここで、芳香環を含む縮合環とは、少なくとも1つの環が芳香環であればよい。
O−アシルオキシムエステル化合物は、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報等に記載のO−アシルオキシムエステル化合物等の公知である光重合開始剤の中から適宜選択できる。具体的には、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−ブタン−1,2−ジオン2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オクタン−1,2−ジオン2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オクタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等が挙げられる。O−アシルオキシムエステル化合物は、一種のみ用いてもよいし、二種以上の化合物を併用してもよい。
【0012】
上記のほか、より少ない露光量で矩形性の良好な断面プロファイルのパターンが得られる点からは、下記一般式(1)で表される化合物も好適な光重合開始剤として挙げることができる。
【化1】

上記一般式(1)中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、及び置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基のいずれかを表し、R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びアミノ基のいずれかを表し、mは、0〜4の整数を表す。mが2以上のとき、R2は互いに結合して環を形成していてもよい。Xは、CH2、O、及びSのいずれかを表す。lは、1〜3の整数を表す。
【0013】
また、前記O−アシルオキシムエステル化合物は、下記一般式(2)及び(3)のいずれかで表されるO−アシルオキシムエステル化合物であることがより好ましい。
一般式(2)
【化2】

一般式(3)
【化3】

上記一般式(2)及び(3)中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、及び置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基のいずれかを表し、R2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びアミノ基のいずれかを表し、mは、0〜4の整数を表す。mが2以上のとき、R2は互いに結合して環を形成していてもよい。Xは、CH2、O、及びSのいずれかを表す。lは、1〜3の整数を表す。
【0014】
前記一般式(1)から(3)のいずれかに記載のO−アシルオキシムエステル化合物は、一般式(1)、(2)及び(3)中、Xが、O及びSのいずれかであり、lが、1及び2のいずれかであり、R1が、置換基を有してもよいアシル基、及びアルコキシカルボニル基のいずれかであることが好ましい。
【0015】
前記一般式(1)、(2)及び(3)中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、及び置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基のいずれかである。
アシル基としては、脂肪族、芳香族、及び複素環のいずれでもよい。総炭素数2〜30のものが好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。前記アシル基は、更に置換基を有してもよい。置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びハロゲン原子のいずれかが好ましい。
アシル基としては、置換基を有していてもよく、例えば、アセチル基、n−プロパノイル基、i−プロパノイル基、メチルプロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ベンジルカルボニル基、フェノキシアセチル基、2−エチルヘキサノイル基、クロロアセチル基、ベンゾイル基、トルエンカルボニル基、パラメトキシベンゾイル基、2,5−ジブトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、ピリジルカルボニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0016】
アルキルオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、総炭素数が2〜30のものが好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニルブトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基が挙げられる。
【0017】
アリールオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、総炭素数7〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、総炭素数7〜20のものがより好ましく、総炭素数7〜16のものが特に好ましい。このようなアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、2−ナフトキシカルボニル基、パラメトキシフェノキシカルボニル基、2,5−ジエトキシフェノキシカルボニル基、パラクロロフェノキシカルボニル基、パラニトロフェノキシカルボニル基、パラシアノフェノキシカルボニル基が挙げられる。
【0018】
前記一般式(1)、(2)及び(3)中、R2としては、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びアミノ基のいずれかが挙げられ、特に、脂肪族、芳香族、複素芳香族、ハロゲン原子、−OR3、−SR3、−NR34が挙げられる。R3及びR4は、互いに連結して環を形成してもよい。また、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子若しくは脂肪族基、芳香族基、複素芳香族基のいずれかを表す。mが2以上であり、互いに連結して環を形成する場合は、それぞれ独立したR2同士で環を形成してもよく、R3及びR4の少なくともいずれかを介して環を形成してもよい。
【0019】
前記置換基R2を介して環を形成する場合は、下記構造が挙げられる。
【化4】

前記構造式中、Y及びZは、それぞれ、CH2、−O−、−S−、及び−NR−のいずれかを表す。
【0020】
アルキル基としては、置換基を有してもよく、総炭素数1〜18のものが好ましく、特に総炭素数1〜10のものが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、n−デシル基が挙げられる。
【0021】
アリール基としては、置換基を有してもよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、特に総炭素数6〜12のものが好ましい。このようなアルキル基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基が挙げられる。
【0022】
アルキルオキシ基としては、置換基を有してもよく、総炭素数1〜18のものが好ましく、特に総炭素数1〜12のものが好ましい。このようなアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェノキシエトキシ基が挙げられる。
【0023】
アリールオキシ基としては、置換基を有してもよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、特に総炭素数6〜12のものが好ましい。このようなアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基が挙げられる。
【0024】
アルキルチオ基としては、置換基を有してもよく、総炭素数1〜18のものが好ましく、特に総炭素数1〜12のものが好ましい。このようなアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基が挙げられる。
【0025】
アリールチオ基としては、総炭素数6〜20のものが好ましく、特に総炭素数6〜12のものが好ましい。このようなアリールチオ基としては、フェニルチオ基、トリルチオ基、クロロフェニルチオ基、エトキシカルボニルフェニルチオ基が挙げられる。
【0026】
アミノ基としては、アルキル基及びアリール基の少なくともいずれかが置換されていてもよく、総炭素数1〜20のものが好ましく、特に総炭素数1〜12のものが好ましい。このようなアミノ基としては、−NH2基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基が挙げられる。
【0027】
2、R3、及びR4の脂肪族基、芳香族基、及び複素芳香族基の具体例としては、前記R1と同様のものが挙げられる。
【0028】
前記一般式(1)〜(3)で表されるO−アシルオキシムエステル化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【化5】

【化6】

【0029】
前記オキシムエステルの基としては、2種類の立体配置(Z)又は(E)で存在するものであってもよい。慣用の方法によって、異性体を分離してもよいし、異性体混合物を光開始用の種として、そのままで用いてもよい。従って、本発明におけるO−アシルオキシムエステル化合物は、上記の化合物の立体配置上の異性体の混合物であってもよい。
【0030】
上記化合物は、1H−NMRスペクトル、UV−is吸収スペクトルを測定して同定することができる。
【0031】
(上記化合物の製造方法)
上記化合物の製造方法としては、特開2007−231000号公報の記載、特に、段落番号0033〜0036の記載を参酌できる。
【0032】
O−アシルオキシムエステル化合物は、本発明の感光性樹脂組成物に含有される溶剤を除いた総固形分に対し、0.1〜10質量%の割合で含まれることが好ましく、0.3〜8質量%の割合で含まれることがより好ましく、(0.5〜5質量%の割合で含まれることがさらに好ましい。
【0033】
α−アミノアセトフェノン化合物
α−アミノアセトフェノン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
前記α−アミノアセトフェノン化合物としては、下記の一般式(4)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0034】
一般式(4)
【化7】

(式中X1は下記式(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。)
【0035】
【化8】

(式中pは0又は1である。)
【0036】
【化9】

(式中qは0〜3の整数であり、rは0又は1である。)
【0037】
【化10】

(式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素数1〜12のアルキル基(なお、特に断りのない場合、アルキル基とは直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。本発明において、同様。)、炭素数1〜12のアルコキシ基、芳香環基、又は、複素環基を表す。)
【0038】
芳香環基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく例示できる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、又は、ピリジル基が好ましく例示できる。
Yにおけるアルキル基、アルコキシ基、芳香環基、及び、複素環基は置換基を有していてもよい。Yにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、ハロゲン原子、−N(X102(X10は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基又はフェニル基を表す。)、炭素数1〜12のアルコキシ基、−COOR(Rは炭素数1〜18のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2OCH2nOCH3(nは1〜20の整数を表す。)、又は、−OCOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)が挙げられる。
Yにおけるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、−COOR(Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。)、又は、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1〜20の整数を表す。)が挙げられる。
Yにおける芳香環基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、−(OCH2CH2nOH(nは1〜20の整数を表す。)、−(OCH2CH2nOCH3(nは1〜20の整数を表す。)、炭素数1〜8のアルキルチオ基、フェノキシ基、−COOR(Rは炭素数1〜18のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1〜20の整数を表す。)、フェニル基、又は、ベンジル基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば、2以上有していてもよい。また、これら置換基は、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中、X12は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、又は、フェニル基を表す。X13、X14及びX15は互いに独立して水素原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。X13とX14とは架橋して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよい。
【0039】
式中X2は前記式(a)、(b)若しくは(c)で表される基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
2におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、フェニル基が挙げられる。
2におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよい。また、これら置換基は、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中X1とX2とは架橋して次式で表される基を形成してもよい。
【0040】
【化11】

【0041】
式中X3は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数7〜9のフェニルアルキル基を表す。
3におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、OH基、炭素数1〜4のアルコキシ基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)が挙げられる。
式中X4は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、又は、フェニル基を表す。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、炭素数1〜4のアルコキシル基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X4におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は2〜4であることが好ましい。
4におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)が挙げられる。
ここで、X2とX4とは架橋して炭素数1〜7のアルキレン基、炭素数7〜10のフェニルアルキレン基、o−キシリレン基、2−ブテニレン基、又は、炭素数2若しくは3のオキサ−若しくはアザ−アルキレン基を形成してもよい。
また、X3とX4とは架橋して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよい。
3とX4とが架橋して形成するアルキレン基は、置換基として、OH基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキルを表す。)を有していてもよく、また、結合中に−O−、−S−、−CO−、又は、−N(X16)−(X16は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は、結合鎖中に1若しくは2以上の−O−を介在させた炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、−CH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、炭素数2〜8のアルカノイル基若しくはベンゾイル基を介在させた炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を介在させてもよい。
式中X5、X6、X7、X8、X9は互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、−OX17基、−SX18基、−SO−X18基、−SO2−X18基、−N(X19)(X20)基、−NH−SO2−X21基、又は、次式で表される基を表す。
【0042】
【化12】

【0043】
式中、Zは−O−、−S−、−N(X10)−X11−N(X10)−、又は、次式で表される基を表す。X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立に、前記一般式(4)と同義である。
【0044】
【化13】

【0045】
式中X10は前記と同義であり、X11は炭素数が2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、又は、これらの鎖中に1以上の−O−、−S−若しくは−N(X10)−が介在する炭素数が2〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基(X10は前記と同義である。)を表す。
17は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、−(CH2CH2O)nH(nは2〜20の整数を表す。)、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数7〜9のフェニルアルキル基、又は、−Si(R4r(R53-r(R4は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R5はフェニル基を表し、rは1、2又は3を表す。)を表す。
17におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
17におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、−CN、−OH、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数3〜6のアルケニルオキシ基、−OCH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、−COOH、又は、−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X17におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましい。
17におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
18は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のアルケニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、炭素数7〜9のフェニルアルキル基を表す。
18におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
18におけるアルキル基が有していてもよい置換基は、−SH、−OH、−CN、−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、炭素数1〜4のアルコキシ基、−OCH2CH2CN、又は、−OCH2CH2COOR(Rは炭素数1〜4のアルキルを表す。)が挙げられる。
18におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
19及びX20は互いに独立して水素原子;炭素数1〜12のアルキル基;炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基;炭素数2〜10のアルコキシアルキル基;炭素数3〜5のアルケニル基;炭素数5〜12のシクロアルキル基;炭素数7〜9のフェニルアルキル基;フェニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基により置換されたフェニル基;又は炭素数2若しくは3のアルカノイル基;又はベンゾイル基を表す。また、X19とX20とは架橋して炭素数2〜8のアルキレン基、又は、OH基、炭素数1〜4のアルコキシ基若しくは−COOR(Rは炭素数1〜4のアルキルを表す。)基により置換された炭素数2〜8のアルキレン基;結合鎖中に−O−、−S−若しくは−N(X16)−を介在させた炭素数2〜8のアルキレン基(X16は前記と同義である。)を形成してもよい。
21は炭素数1〜18のアルキル基;フェニル基;ナフチル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜8のアルコキシ基によって置換されたフェニル基若しくはナフチル基を表す。
【0046】
一般式(4)は、式(d)で表されることがより好ましい。
【0047】
【化14】

式(d)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は、ベンジル基を表し、−NX34はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表し、X5は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、ジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表す。これらの中でも−NX34はジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基であることがより好ましい。
【0048】
さらに、α−アミノアセトフェノン化合物として、前記一般式(4)で表される化合物の酸付加物塩を使用することもできる。
また、市販のα−アミノアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア907(IRGACURE 907)、イルガキュア369(IRGACURE 369)、イルガキュア379(IRGACURE 379)の商品名で入手可能な重合開始剤が例示できる。
【0049】
α−アミノアセトフェノン化合物として、具体的には、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)などが挙げられる。
【0050】
α−アミノアセトフェノン化合物は、本発明の感光性樹脂組成物に含有される溶剤を除いた総固形分に対し、0.1〜10質量%の割合で含まれることが好ましく、0.3〜8質量%の割合で含まれることがより好ましく、0.5〜5質量%の割合で含まれることがさらに好ましい。
【0051】
また、本発明ではO−アシルオキシムエステル化合物とα−アミノアセトフェノン化合物の添加重量比としては、アシルオキシム:アセトフェノンが10:90〜80:20の範囲が好ましく、20:80〜70:30の範囲がより好ましく、30:70〜60:40の範囲がさらに好ましい。O−アシルオキシムエステル化合物量を上記範囲内とすることにより、表面硬化がより適切となり、ハーフトーン適性が向上する傾向にあり、α−アミノアセトフェノン化合物を上記範囲内とすることにより、より高い感度が得られる傾向にある。
【0052】
その他の光重合開始剤
本発明においては、O−アシルオキシムエステル化合物およびα−アミノアセトフェノン化合物の併用における効果を阻害しない範囲で、一般的に公知な他の光重合開始剤をさらに併用することもできる。併用できる光重合開始剤は特に限定されないが、全光開始剤重量に対する、O−アシルオキシムエステル化合物およびα−アミノアセトフェノン化合物の重量が、80%以上であることがハーフトーン適性および感度の面から好ましく、90%以上であることがより好ましい。他の開始剤を併用する場合においても、O−アシルオキシムエステル化合物およびα−アミノアセトフェノン化合物の最適な添加重量比は同一である。
【0053】
(B)溶剤
本発明に使用できる(B)溶剤としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類等に分類される溶剤が挙げられる。
(B)溶剤として用いられるエステル類の例としては、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどの他に、3−オキシプロピオン酸メチルおよび3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなどの2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなどのアルコキシプロピオン酸アルキルエステル;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0054】
エーテル類の例としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
ケトン類の例としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類の例としては、例えば、トルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0055】
これらの溶剤うち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物中の(B)溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性などを考慮して適宜決められるが、一般的には、感光性樹脂組成物中の(B)溶剤の含有量は45〜85質量%である。
【0056】
(C)重合性モノマー
(重合性モノマー)
本発明の感光性樹脂組成物においては、硬化性成分として、(C)重合性モノマーを1種以上含有する。重合性モノマーとしては、複数の重合性モノマーを併用してもよく、酸基を含有する重合性モノマーと酸基を有しない重合性モノマーをそれぞれ1種以上を併用してもよい。ハーフトーン適性や現像ラチチュードを向上させるためには、酸基を有する重合性モノマー使用することが好ましい。その場合の酸価は5〜200mgKOH/gが好ましく、10〜180mgKOH/gがより好ましく、20〜150mgKOH/gがさらに好ましい。酸価を5mgKOH/g以上とすることにより、現像液浸透性が高くなり、ハーフトーン適性や現像ラチチュードが向上する傾向にあり、酸価を200mgKOH/g以下とすることにより、より適切なパターンを得ることが可能になる。
【0057】
構造中に酸基を有する重合性モノマーを用いることにより、低露光量領域での表面溶解および膜減りが促進されるため、ハーフトーン適性が大幅に改良される。さらに、未露光部の現像が促進されるため現像ラチチュードが改良される。中でも、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有する重合性モノマーは、アルカリ溶解性が高まるため、現像性向上および残渣抑制の寄与が大きく、好ましい。さらに好ましくは、カルボキシル基である。後述する(D)アルカリ可溶性樹脂のアルカリ可溶性付与効果に加え、酸基を有する重合性モノマーを用いる効果により、感度向上のために光開始剤濃度を増加させた樹脂組成物においても、現像ラチチュードが広がり、安定したフォトスペーサの製造が可能となる。
【0058】
カルボキシル基を含有する重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、シナモン酸等の不飽和脂肪酸の他に、カルボキシル基変性した多官能アクリレート化合物が挙げられる。カルボキシル基変性した多官能アクリレート化合物としては、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性トリメチロールプロパントリアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アジピン酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、アジピン酸変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アジピン酸変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アジピン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アジピン酸変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、等が挙げられ、アロニックスM−510、アロニックスM−520、アロニックスTO−2349、アロニックスTO−2359(以上、東亞合成(株)製)等の市販の化合物を好適に用いることができる。
【0059】
フェノール性水酸基を含有する重合性モノマーとしては、p−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン、3,5−ジヒドロキシスチレン、2,4,6−トリヒドロキシスチレン、(p−ヒドロキシ)ベンジルアクリレート、サリチル酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、サリチル酸変性トリメチロールプロパントリアクリレート、サリチル酸変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、サリチル酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、サリチル酸変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられ、好ましいものはサリチル酸変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、サリチル酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【0060】
スルホン酸基を含有する重合性モノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ブチルスルホン酸変性アクリルアミド、等がある。リン酸基を含有する重合性モノマーとしては、ビニルリン酸、スチレンリン酸、ブチルリン酸変性アクリルアミド、等が挙げられる。これらのうちで好ましいものはブチルスルホン酸変性アクリルアミドであり、市販の化合物としてはATBS(東亞合成(株)製)がある。
【0061】
これらの酸基を有する重合性モノマーの中で、製造適性およびコストの観点から、カルボキシル基を有する重合性モノマー、フェノール性水酸基を有する重合性モノマーが好ましく、カルボキシル基を有する重合性モノマーがより好ましい。
【0062】
(酸基を有しない重合性モノマー)
本発明において酸基を有する重合性モノマーと併用されうる酸基を有しない重合性モノマーは、重合可能であれば特に制限はなく、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する低分子化合物、二量体、三量体、オリゴマー等の付加重合可能な化合物を好適に使用することができる。
エチレン性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とモノヒドロキシ化合物とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸のエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸および前述の脂肪酸ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアナート化合物と(メタ)アクリロイル含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物等が挙げられる。
【0063】
具体的な重合性モノマーは、以下に示すように、1分子中の重合性基の数で分類して挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
(1)1分子中に1個の重合性基を有する化合物
1分子中に1個の重合性基を有する化合物の例としては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0065】
(2)1分子中に2個の重合性基を有する化合物
1分子中に2個の重合性基を有する化合物の例としては、重合性基として同一分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸変性物、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、好ましくはジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸変性物などが挙げられる。
【0066】
(3)1分子中に3個の重合性基を有する化合物
一分子中に三個の重合性基を有する化合物の例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレートなどが挙げられる。
【0067】
(4)1分子中に4個以上の重合性基を有する化合物
1分子中に4個以上の重合性基を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、共栄社化学(株)製のUA−306H、UA−306T、UA−306I等のウレタンアクリレートが挙げられる。
【0068】
これらの中でも、溶剤耐性やITOスパッタ適性を好適に保つという観点からは、同一分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。
特に、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは有利であり、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、溶剤耐性やITOスパッタ適性の観点で好ましく、これらの混合物(質量換算の混合比率は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート=2〜4:8〜6)の混合物が好適に使用される。
【0069】
酸基を有する重合性モノマーと酸基を有しない重合性モノマーとを併用する場合、酸基を有する重合性モノマーと酸基を有しない重合性モノマーとの合計を100質量部としたときの好ましい添加比は、先に示した好ましい酸価の範囲内であれば特に限定されない。
【0070】
本発明の感光性樹脂組成物中、重合性モノマーの好ましい含有量は、感光性樹脂組成物の溶剤を除いた総固形分に対し、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%の範囲である。
【0071】
(D)アルカリ可溶性樹脂
本発明に適用しうる(D)アルカリ可溶性樹脂としては、溶剤に可溶な高分子化合物であれば、いずれでも使用できる。アルカリ可溶性樹脂は、それぞれ、単一化合物で用いても複数の化合物を併用してもよい。好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、フォトリソ法によるアルカリ現像性を考えると酸基を有する樹脂(以下、適宜「アルカリ可溶性樹脂」と称する。)が好ましい。
【0072】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、その中に、少なくとも1つのアルカリ可溶性基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性高分子が好ましく、さらに好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0073】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。
ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類およびその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0074】
アルカリ可溶性樹脂として適用される線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。
例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられ、さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0075】
これらの中では、特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。 このほか、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。
該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0076】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0077】
その他のアルカリ可溶性樹脂としては、特開平7−207211号公報、特開平8−259876号公報、特開平10−300922号公報、特開平11−140144号公報、特開平11−174224号公報、特開2000−56118号公報、特開2003−233179号公報、特開2009−52020号公報等に記載の公知の高分子化合物を使用することができる。
【0078】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に、(メタ)アクリル酸およびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体が、簡便に入手でき、アルカリ溶解性等の調整が容易なことから、好適に使用されている。
【0079】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。
ここで、アルキル基およびアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0080】
前記アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、トリルアクリレート、ナフチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等を挙げることができる。
【0081】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH2=CR3132〔ここで、R31は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R32は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表す。〕、CH2=C(R31)(COOR33)〔ここで、R31は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R33は炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、等を挙げることができる。
【0082】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましい共重合可能な他の単量体は、CH2=CR3132、CH2=C(R31)(COOR33)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH2=CR3132および/またはCH2=C(R31)(COOR33)である。これらの、R31、R32およびR33はそれぞれ前記したのと同義である。
【0083】
また、感光性樹脂組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量としては、感光性樹脂組成物に含有される溶剤を除いた総固形分に対して、5〜60質量%が好ましく、より好ましくは10〜55質量%であり、特に好ましくは15〜50質量%である。
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は1000〜100000が好ましく、5000〜50000がより好ましい。
【0084】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂の酸価は150〜400mgKOH/gが好ましく、180〜380mgKOH/gがより好ましく、200〜350mgKOH/gがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、ハーフトーン適性等に優れた感光性組成物が得られる。
【0085】
(アルカリ可溶性樹脂D2)
本発明では、上記アルカリ可溶性樹脂に加えて、架橋性基を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂(D2)を併用することが好ましい。架橋性基を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂を併用することにより、ポストベーク時の架橋の効果によって力学特性が向上し、かつポストベークマージンが拡大する。これにより、フォトスペーサ等のレジストとして用いた際のプロセス安定性が非常に改良される。
【0086】
アルカリ可溶性樹脂(D2)の種類については、架橋性基を側鎖に有すること以外は特に限定されないが、架橋性基を有する点以外は上記(D)と同様のものが好ましい。例えば、アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に、(メタ)アクリル酸およびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体が、簡便に入手でき、アルカリ溶解性等の調整が容易なことから、好適に使用されている。
側鎖の架橋性基の種類は、合成の簡便性の観点から、アリル基、アクリル基、グリシジル基が好ましい。
【0087】
また、感光性樹脂組成物中におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量としては、感光性樹脂組成物に含有される溶剤を除いた総固形分に対して、(D)と(D2)の合計量で、5〜60質量%が好ましく、より好ましくは10〜55質量%であり、特に好ましくは15〜50質量%である。(D1)と(D2)の配合比は、90:10〜30:70が好ましく、80:20〜40:60がより好ましい。
【0088】
また、(C)重合性モノマーと(D)アルカリ可溶性樹脂との含有量の比としては、質量比(重合性モノマーの総質量/アルカリ可溶性樹脂の質量)で、0.1〜10の範囲が好ましく、0.4〜8の範囲がより好ましく、0.5〜5の範囲がさらに好ましい。
【0089】
(E)光増感剤または助開始剤
本発明の感光性樹脂組成物には、(E)光増感剤または助開始剤をさらに加えることもできる。これらを添加することにより、スペクトル感度を移動または拡大して、本発明の感光性樹脂組成物の光重合を促進することができる。
前記光増感剤または助開始剤としては、芳香族化合物を用いるのが特に好ましく、例えば、ベンゾフェノンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、クマリンやフェノチアジンおよびその誘導体、3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ローダニン、カンファーキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、キサンテン、チオキサンテン、アクリジン(例えば、9−フェニルアクリジン)、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、シアニン、メロシアニン染料が挙げられる。
【0090】
前記チオキサントンとしては、例えば、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン
2−エチルヘキシルエーテル、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−カルボン酸ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが挙げられる。
【0091】
前記ベンゾフェノンとしては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(p−イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(トルエン−4−スルホニル)プロパン−1−オン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタナミニウムクロリドが挙げられる。
【0092】
前記クマリンとしては、例えば、クマリン1、クマリン2、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン102、クマリン106、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン307、クマリン314、クマリン314T、クマリン334、クマリン337、クマリン500、3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3'−カルボニル−ビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3'−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジエトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ジメチルアミノ−3−フェニルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−フェニルクマリン、特開平9−179,299号公報および第9−325,209号公報に開示されたクマリン誘導体、例えば7−〔{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ〕−3−フェニルクマリンが挙げられる。
【0093】
前記3−(アロイルメチレン)チアゾリンとしては、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−ベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリンが挙げられる。
【0094】
前記ローダニンとしては、4−ジメチルアミノベンザルローダニン、4−ジエチルアミノベンザルローダニン、3−エチル−5−(3−オクチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)ローダニン、特開平8−305,019号公報に開示された、式〔1〕、〔2〕、〔7〕で表されるローダニン誘導体が挙げられる。
【0095】
前記化合物の他にも、アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、ダンシル酸誘導体、9,10−アントラキノン、アントラセン、ピレン、アミノピレン、ペリレン、フェナトレン、フェントレンキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、クルクミン、キサントン、チオミヒラーケトン、α−(4−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデンシクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、フェノチアジン、メチルフェノチアジン、アミン、N−フェニルグリシン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、4−ジメチルアミノアセトフェノン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾアート、ポリ(プロピレングリコール)−4−(ジメチルアミノ)ベンゾアート等を用いることができる。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物に添加する光増感剤または助開始剤(E)としては、前記の中でも、ベンゾフェノンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、クマリン誘導体から選択される少なくとも1種の光増感剤化合物が好ましく挙げられる。
【0097】
また、感光性樹脂組成物中における(E)光増感剤または助開始剤含有量としては、感光性樹脂組成物に含有される溶剤を除いた総固形分に対して、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜12質量%であり、特に好ましくは2〜10質量%である。
また、(A)光重合開始剤と(E)光増感剤または助開始剤との添加量の総和が、感光性樹脂組成物の全固形分中の0.1〜15.0重量%であることが好ましく、0.1〜12.0重量%であることがより好ましい。
【0098】
(その他の成分)
添加剤
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、ラジカル捕捉剤、光安定剤、硬化助剤、熱重合開始剤、界面活性剤、密着助剤、現像促進剤、熱重合防止剤、分散剤、その他の添加剤(充填剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤など)の各種添加剤を含有することができる。
【0099】
光安定剤
本発明には、耐光性向上のため各種の光安定剤を添加してもよい。光安定剤の種類については特に限定されないが、汎用性の面からヒンダードアミン系光安定剤;例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−テトラアクリレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−テトラアクリレート、ヒンダードフェノール系光安定剤;例えばペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオナート等が好適に使用される。
【0100】
本発明における光安定剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜5.0質量%程度が好ましく、0.2〜4.0質量%であることがさらに好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。0.1質量%以下であると所望の耐光性が得られず、5.0質量%以上であると感度が減少し好ましくない。
【0101】
(硬化助剤)
硬化助剤として、形成された塗布膜の強度を上げるために、エポキシ環を有する化合物を用いてもよい。エポキシ環を有する化合物を使用することによって、熱重合が進行し、溶剤耐性が向上したり、ITOスパッタ適性が向上したりして好ましい。
【0102】
エポキシ環を有する化合物としては、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ環を分子中に2個以上有する化合物である。
例えば、ビスフェノールA型としては、エポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上、東都化成製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上、ナガセ化成製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上、ダイセル化学製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型も挙げることができる。また、Ebecryl 3700、3701、600(以上、ダイセルユーシービー製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。
【0103】
クレゾールノボラック型としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上、東都化成製)、デナコールEM−125など(以上、ナガセ化成製)、ビフェニル型としては、3,5,3',5'−テトラメチル−4,4'−ジグリシジルビフェニルなど、脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上、ダイセル化学製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上、東都化成製)、Epiclon430、同673、同695、同850S、同4032(以上、DIC製)などを挙げることができる。
また、1,1,2,2−テトラキス(p−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリグリシジルトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L(以上、ナガセ化成製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0104】
この中で好ましいのは「分子量/エポキシ環の数」が100以上であり、より好ましいものは130〜500である。「分子量/エポキシ環の数」が小さいと硬化性が高く、硬化時の収縮が大きく、また、大きすぎると硬化性が不足し、信頼性に欠けたり、平坦性が悪くなる。
具体的な好ましい化合物としては、エポトートYD−115、118T、127、YDF−170、YDPN−638、YDPN−701(以上、ナガセ化成製)、プラクセルGL−61、GL−62、3,5,3',5'−テトラメチル−4,4'ジグリシジルビフェニル、セロキサイド2021、2081、エポリードGT−302、GT−403、EHPE−3150(以上、ダイセル化学製)などが挙げられる。
【0105】
本発明における硬化助剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜5.0質量%程度が好ましく、0.2〜4.0質量%であることがさらに好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。0.1質量%以下では硬化促進効果が得られず、5.0質量%以上では耐光性が悪化して問題である。
【0106】
熱重合開始剤
本発明の感光性樹脂組成物には、熱重合開始剤を含有させることも有効である。熱重合開始剤としては、例えば、各種のアゾ系化合物、過酸化物系化合物が挙げられ、前記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができ、前記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。
【0107】
界面活性剤
本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性を改良する観点から、各種の界面活性剤を用いて構成することが好ましい。界面活性剤により、塗布液としたときの液特性(特に流動性)を改善でき、塗布厚の均一性や省液性を改善することができる。すなわち、基板と塗布液との界面張力を低下させて基板への濡れ性が改善され、基板への塗布性が向上するので、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成が可能である点で有効である。また、液切れを起こしやすいスリット塗布においても効果的である。
【0108】
界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤を使用できる。中でも、ノニオン系界面活性剤でパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0109】
フッ素系界面活性剤のフッ素含有率は3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率が前記範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0110】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0111】
フッ素系以外の界面活性剤の例としては、フタロシアニン誘導体(市販品EFKA−745(森下産業社製))、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業社製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業社製)、W001(裕商社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製 プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商社製)等のアニオン系界面活性剤;が挙げられる。
【0112】
界面活性剤の添加量は、感光性樹脂組成物の全質量に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%である。
【0113】
密着助剤
本発明に用いられる感光性樹脂組成物には、基板との密着性向上といった観点から、密着助剤を添加することができる。密着助剤としては、アルコキシシラン化合物、なかでもシランカップリング剤を使用することができる。
シランカップリング剤は、基板である無機材料と化学結合可能な加水分解性基としてアルコキシシリル基を有するものが好ましく、有機樹脂との間で相互作用もしくは結合形成して親和性を示す(メタ)アクリロイル基、フェニル基、二級あるいは三級メルカプト基、エポキシ基、アミノシラン基などの基を有するシランカップリング剤が好ましく、その中でも(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、エポキシプロピルトリメトキシシランであることがより好ましい。このような素材としては、KBM−303、KBM−403、KBM−503、(以上信越化学工業(株)製)を挙げることができる。
シランカップリング剤を用いる場合の添加量としては、本発明の感光性樹脂組成物中の全固形分中、0.2質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、0.5質量%〜3.0質量%がより好ましい。
【0114】
現像促進剤
また、感光性樹脂組成物層の未硬化部のアルカリ溶解性を促進し、感光性樹脂組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、現像促進剤を感光性樹脂組成物に使用することができる。
このような現像促進剤としては、有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸が好ましい。具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0115】
熱重合防止剤
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0116】
その他添加剤
上記のほか、ガラス、アルミナ等の充填剤;2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;およびポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤を挙げることができる。
【0117】
本発明の感光性樹脂組成物は、以上述べた各成分、即ち(A)光重合開始剤、(B)溶剤、(C)重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、必要に応じ、(E)光増感剤または助開始剤等のその他の添加剤を添加し混合することによって調製することができる。
【0118】
本発明の方法によって形成されるフォトスペーサは、その形状等は特に定めるものではないが、円柱状、切頭円錐状であることが好ましい。これらの形状は、厳密な円柱状、切頭円錐状であるもののほか、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での誤差を含むものであることはいうまでもない。
本発明の方法によって形成されるフォトスペーサは、好ましくは、主PSとサブPSの2種類からなり、その高さは、例えば、主PSの高さが5.0〜1.5μmであり、サブPSの高さが4.0〜1.0μmとすることができる。さらに、主PSとサブPSの高さの差が0.2〜1.5μmであることが好ましく、0.3〜1.0μmであることがより好ましい。
【0119】
<フォトスペーサおよびその製造方法>
本発明のフォトスペーサは、例えば、感光性樹脂組成物を基板上に付与して感光性樹脂組成物層を形成する工程と、前記感光性樹脂組成物層に対してパターン様に露光量を変えて露光を行い、露光部を硬化させる露光工程と、感光性樹脂組成物層の未硬化部を現像により除去して2種類以上の独立したパターンを形成する現像工程と、を含むパターン形成方法を得て製造される。
露光量を変えて露光を行う方法としては、任意の透過率を持った膜を積層し、パターニングすることにより、半透過部を形成するハーフトーンマスク露光を行う方法や、感光性樹脂組成物層に対してドットパターン様に露光する方法が挙げられる。
【0120】
感光性樹脂組成物層は、基板に直接または他の層を介して付与されるが、感光性樹脂組成物層を付与する方法としては、回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布、インクジェット塗布、または転写等の方法により形成される。形成された感光性樹脂組成物に、マスクパターンを介して露光したり、パターン状に露光したりして、露光部を硬化させた後に未露光部(未硬化部)を現像液で現像除去することによりドット形状のパターンを形成することによって、フォトスペーサを作製することができる。
【0121】
この際、露光に用いる放射線としては、g線、h線、i線、j線等の紫外線があるが、冒頭の課題に鑑みて、特にg線、h線での露光が好ましい。これにより、gh線露光設備の有効利用が可能となり、生産効率の向上が達成できる。
【0122】
基板上に付与(好ましくは塗布)された本発明の感光性樹脂組成物による膜の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等を用いて50〜140℃の温度範囲で10〜300秒の条件にて行なうことができる。
【0123】
現像では、露光後の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化部のみを残存させる。現像温度としては、通常20〜30℃であり、現像時間としては20〜90秒である。
現像液としては、未硬化部における感光性樹脂組成物の膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0124】
前記有機溶剤としては、感光性樹脂組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤として列挙したものが挙げられる。
【0125】
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。
なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、一般に現像後に水で洗浄(リンス)が行なわれる。
【0126】
現像後は、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施した後、一般に100〜250℃の温度で加熱処理(ポストベーク)が施される。
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱であり、通常約200℃〜250℃の加熱(ハードベーク)を行う。このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行なうことができる。
【0127】
本発明の感光性樹脂組成物を基板上に付与して膜形成する場合、膜の乾燥厚みとしては、一般に0.5〜6.0μmであり、好ましくは1.0〜5.0μmであり、最も望ましくは2.0〜4.0μmである。
【0128】
基板としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる無アルカリガラス、ナトリウムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、およびこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等、並びにプラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている。
【0129】
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層および/または耐溶剤性層を有していることが好ましい。
基板上に他の層を介して感光性樹脂組成物を付与する場合の、他の層としては、層間絶縁膜層、平坦化膜層、SiNx層、ガスバリヤー層、耐溶剤性層、などが挙げられる。
【0130】
本発明のフォトスペーサは、ブラックマトリクス等の黒色遮蔽部及び着色画素等の着色部を含むカラーフィルタを形成した後に形成することもできる。
前記黒色遮蔽部及び着色部とフォトスペーサとは、感光性組成物を塗布する塗布法と感光性組成物からなる感光性樹脂層を有する転写材料を用いる転写法と、を任意に組合せて形成することが可能である。
前記黒色遮蔽部及び着色部並びに前記フォトスペーサはそれぞれ感光性組成物から形成でき、具体的には、例えば、基板に液体の前記感光性組成物を直接塗布することにより感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行い、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記感光性組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して感光性樹脂層を形成することにより作製された転写材料を用い、この転写材料を前記黒色遮蔽部もしくはITO上やSiNx及び着色部が形成された前記基板に密着させて感光性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりフォトスペーサをパターン状に形成することができる。このようにして、フォトスペーサが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0131】
<液晶表示装置用基板>
本発明の液晶表示装置用基板は、前記本発明のフォトスペーサの製造方法により得られたフォトスペーサを備えたものである。フォトスペーサは、支持体上に形成されたブラックマトリクス等の表示用遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の表示用遮光部やTFT等の駆動素子とフォトスペーサとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。COA(カラーフィルターオンアレイ)のようにTFT上に保護膜を設け、その上に形成されることも好ましい。
【0132】
例えば、フォトスペーサが表示用遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該支持体に予め配設された表示用遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば感光性樹脂転写フイルムの感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してフォトスペーサを形成することによって、本発明の液晶表示装置用基板を作製することができる。
本発明の液晶表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられていてもよい。
【0133】
<液晶表示素子>
前記本発明の液晶表示装置用基板を設けて液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0134】
この場合、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として構成できる。このカラーフィルタ基板には、高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサが設けられるため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間にセルギャップムラ(セル厚変動)の発生が抑えられ、色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0135】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が高さ均一で変形回復性に優れたフォトスペーサにより所定幅に規制して構成されたものである。
この場合も、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板として構成されている。
【0136】
本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0137】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示装置用基板を設けて構成されたものである。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示素子を設けて構成されたものである。すなわち、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間を既述のように、本発明のフォトスペーサの製造方法により作製されたフォトスペーサで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。主フォトスペーサはCF基板とTFT側の基板を貼り付ける上でのクッションとしての利用が主であり、サブフォトスペーサは低温(低温発砲)、高温(液晶流れ)に対して液晶が均一になるように仕組まれている。
【0138】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0139】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをフォトスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0140】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0141】
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明の液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0142】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0143】
本実施例では、以下の化合物を採用した。
(A1)オキシム系重合開始剤
(A1−1)下記化合物:特開2007−231000号公報に記載の方法で合成した。
【化15】

(A1−2)下記化合物:IRGACURE OXE−01(BASF社製)
【化16】

(A1−3)下記化合物:IRGACURE OXE−02(BASF社製)
【化17】

(A1−4)下記化合物:304A(常州協力電子製、TR−PBG304)
【化18】

(A1−5)下記化合物:(富士フイルム製、ZS539)
【化19】

【0144】
(A2)α−アミノアセトフェノン化合物
(A2−1)下記化合物:IRGACURE 379(BASF社製)
【化20】

(A2−2)下記化合物:IRGACURE 369(BASF社製)
【化21】

(A2−3)下記化合物:IRGACURE 907(BASF社製)
【化22】

【0145】
(C)重合性モノマー
(C−1)下記重合性モノマー:M−520(東亜合成化学株式会社製)、平均酸価:30±10mgKOH/g
【化23】

(C−2)下記重合性モノマー:東亜合成化学株式会社製、平均酸価:67.0±20mgKOH/g
【化24】

(C−3)下記重合性モノマーの混合物:M−510(東亜合成化学株式会社製)(酸価:100±20 mgKOH/g)
【化25】

(C−4)ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬製、KAYARAD DPHA)(酸価:0mgKOH/g)
(C−5)PETA(ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの40:60(重量比)の混合物)(東亞合成製、KAYARAD M−305)(酸価:0mgKOH/g)
【化26】

【0146】
(D)アルカリ可溶性樹脂
以下のモノマーをカッコに記載の割合(質量比)で重合させたバインダーを採用した。ここで、BzMAは、ベンジルメタクリレートを、MMAはメタクリル酸を、AAはアクリル酸を、CHMAはシクロヘキシルメタクリレートを、GMA−MMAはグリシジルメタクリレートを、AllylMAはアリルメタクリレートをそれぞれ示す。 下記の酸価の単位は、mgKOH/gであり、Mwは重量平均分子量を示している。
(D1−1)BzMA(53)/MAA(47)(酸価:195、Mw11000)
(D1−2)BzMA(60)/AA(40)(酸価:167、Mw11000)
(D1−3)BzMA(60)/MAA(40)(酸価:160、Mw11000)
(D1−4)BzMA(70)/MAA(30)(酸価:113、Mw11000)
(D1−5)BzMA(20)/MAA(80)(酸価:431、Mw11000)
(D2−1)CHMA(46)/MMA(2)/GMA−MMA(32)/MAA(20)(酸価:66、Mw40000)
(D2−2)CHMA(40)/MMA(2)/GMA−MMA(31)/MAA(27)(酸価:91、Mw40000)
(D2−3)AllylMA(50)/MAA(50)(酸価:264、Mw35000)
(D2−4)AllylMA(69)/MAA(31)(酸価:130、Mw35000)
(D2−5)AllylMA(80)/MAA(20)(酸価:95、Mw35000)
【0147】
(E)光増感剤
下記化合物:日本化薬製、KAYACURE DETX−S
【化27】

【0148】
実施例1
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表に示す成分を、下記に示す割合で混合して、撹拌し、感光性樹脂組成物を調製した。以下に示す添加量はいずれも質量部を表す。
(組成1)
・(A1)光重合開始剤 0.36部
・(A2)光重合開始剤 0.72部
・(B)溶剤:PGMEA 44.8部
・(B)溶剤:3−エトキシエチルプロピオネート 19.2部
・(C)重合性モノマー: 19.4部
・(D)アルカリ可溶性樹脂1: 6.27部
・(D)アルカリ可溶性樹脂2 6.48部
・(E)光増感剤: 2.52部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.03部
・密着助剤:KBM403(信越化学(株)製) 0.18部
・界面活性剤:メガファックF781−F(DIC(株)製、フッ素系界面活性剤)
0.04部
【0149】
<感光性樹脂組成物を用いたフォトスペーサ用パターンの形成>
上記により得られた感光性樹脂組成物を用いて、以下の如く基板上にパターンを形成した。
【0150】
−感光性樹脂組成物層の形成−
得られた感光性樹脂組成物を、ITO付ガラス基板(日本板硝子(株)製N−07、0.7mm厚)に塗布した。具体的には、ポストベーク後の感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚が約4.0μmとなるようにスリットノズルと基板との間隔、吐出量を調節して塗布した。
【0151】
−プリベーク工程−
次いで、感光性樹脂組成物層を、真空乾燥装置にて真空度が66Paに到達するまで乾燥した後、ホットプレートを用いて、80℃で120秒間加熱(プリベーク処理)を行なった。
【0152】
−露光工程(プロキシミティ露光)−
プリベーク処理後、プロキシミティ露光機(日立ハイテクノロジーズ社製、LE5565A)を用い、マスク面と感光性樹脂層表面との間にi線カットフィルタSC−39(富士フイルム製)を置き、ハーフトーンマスクを介してメインフォトスペーサについては200mJ/cm2、サブフォトスペーサについては40mJ/cm2となるように露光した。
【0153】
−現像工程、ベーク(ポストベーク)工程−
その後、現像装置(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、TMAH系現像液(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製FHD−5純水希釈品、0.5%)にて、24℃でシャワー圧を0.2MPaとして60秒間現像し、純水で洗浄した。
充分に乾燥後、230℃のオーブン中で20分ポストベークし、フォトスペーサ用パターンを得た。
【0154】
得られたフォトスペーサ用パターンについて、ハーフトーン適正および感度・密着性について評価した。
【0155】
(ハーフトーン適性)
得られたメインフォトスペーサおよびサブフォトスペーサの膜厚、および形状を観察しハーフトーン適性の評価を行った。膜厚測定および形状観察には非接触表面形状測定機NewView 7300(Zygo社製)を用いた。評価は5段階で、数字の大きいものほど良好な性能を示す。
5:メインフォトスペーサとサブフォトスペーサの膜厚差が0.5μm以上で、かつサブフォトスペーサの形状が台形状であるもの
4:メインフォトスペーサとサブフォトスペーサの膜厚差が0.4μm以上0.5μm未満で、かつサブフォトスペーサの形状が台形状であるもの
3:メインフォトスペーサとサブフォトスペーサの膜厚差が0.3μm以上0.4μm未満で、かつサブフォトスペーサの形状が台形状であるもの
2:メインフォトスペーサとサブフォトスペーサの膜厚差が0.3μm以上だが、サブフォトスペーサの形状が台形状でないもの
1:上記2〜5に該当しないもの
実用レベルは、3以上である。
【0156】
(感度・密着性)
感光性樹脂組成物がパターンを形成可能な最小露光量を感度・密着性として評価した。評価は5段階で、数字の大きいものほど良好な性能を示す。
5:40mJ/cm2以下の露光で6μmのドットパターンが解像し、かつ密着しているもの
4:40mJ/cm2を超え60mJ/cm2以下の露光で6μmのドットパターンが解像し、かつ密着しているもの
3:60mJ/cm2を超え100mJ/cm2以下の露光で6μmのドットパターンが解像し、かつ密着しているもの
2:60mJ/cm2を超え100mJ/cm2以下の露光で10μmのドットパターンが解像し、かつ密着しているもの(上記3に該当するものを除く)
1:上記2〜5に該当しないもの
実用レベルは、3以上である。
【0157】
実施例2〜24、比較例1〜8
実施例1の感光性樹脂組成物において、(A)光重合開始剤の種類、(C)重合性モノマーの種類、(D)アルカリ溶解性樹脂の種類、および露光波長を表1に記載されるように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、実施例および比較例の感光性樹脂組成物を調製した。尚、実施例9は、実施例1の感光性樹脂組成物において、(A1)0.36部を0.18部に、(A2)0.72部を0.90部に、また、実施例10は、(A1)0.36部を0.72部に、(A2)0.72部を0.36部に変更した以外は実施例1と同様に調整した。さらに、得られた各感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして、フォトスペーサ用パターンを作製した。さらに、実施例1と同様にハーフトーン適正および感度・密着性について評価した。
【0158】
結果を下記表に示す。
【表1】

【0159】
実施例の感光性樹脂組成物を用いて得られた各フォトスペーサは、ハーフトーン適性に優れ形状も良好であり、かつ、感度も高かった。これに対し、比較例1の感光性樹脂組成物を用いて得られた各フォトスペーサは、ハーフトーン適性と感度との両立をなしえなかった。
比較例1、3〜6より、光重合開始剤としてα−アミノアセトフェノン化合物を用いない場合、パターン表面の硬化が過剰に促進されるためハーフトーン性が得られず、一方で比較例7,8のように光重合開始剤にO−アシルオキシムエステル化合物を用いない場合、表面硬化性が低下するため感度および密着性が不足した。α−アミノアセトフェノン化合物およびO−アシルオキシムエステル化合物を併用することにより、ハーフトーン適性および感度・密着性についてトータルでの性能を実現することができることとわかった。
また、実施例1および2の比較から、本発明における感光性樹脂組成物はgh線露光のみならずghi線露光にも対応可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明のPSパターンは、主PSもサブPSも、円柱型に近い形状とすることが容易であるため、車載ナビゲーション用タッチパネル、タッチパネル、携帯用モバイル機器およびスマートフォンなどの高精細を必要とする素子のPSとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光重合開始剤、(B)溶剤、(C)重合性モノマーおよび(D)アルカリ可溶性樹脂を含み、(A)光重合開始剤として、1種以上のO−アシルオキシムエステル化合物と、1種以上のα−アミノアセトフェノン化合物を含み、同時に2種以上の独立したパターンの形成が可能であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)アルカリ可溶性樹脂のうち少なくとも1種が、酸価150〜400mgKOH/gである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)光増感剤または助開始剤を含む、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)光重合開始剤と(E)光増感剤または助開始剤との添加量の総和が、感光性樹脂組成物の全固形分中の0.1〜15.0重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)重合性モノマーが酸基を有し、かつ、酸価が20〜150mgKOH/gである請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
O−アシルオキシムエステル化合物が、芳香環を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
O−アシルオキシムエステル化合物が、芳香環を含む縮合環を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
O−アシルオキシムエステル化合物が、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
O−アシルオキシムエステル化合物と、α−アミノアセトフェノン化合物とを、10:90〜80:20(重量比)で含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(D)アルカリ可溶性樹脂が、アクリル系樹脂である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
gh線露光用である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に付与して感光性樹脂組成物層を形成する工程と、前記感光性樹脂組成物層に対してパターン様に露光量を変えて露光を行い、露光部を硬化させる露光工程と、感光性樹脂組成物層の未硬化部を現像により除去して2種類以上の独立したパターンを形成する現像工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて基板上に2種類以上の独立したフォトスペーサパターンを形成する工程を含むフォトスペーサの製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の製造方法により製造された2種類以上の独立したパターンを有するフォトスペーサ。
【請求項15】
請求項14に記載の2種類以上の独立したパターンを有するフォトスペーサを有する表示装置。

【公開番号】特開2013−41152(P2013−41152A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178445(P2011−178445)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】