説明

フォーク固定装置

【課題】工具を要せず簡単な操作で着脱ができ、さらに部品点数が少なく、掛かるコストを低減できるフォーク固定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両2前部のバックレスト10に沿ってスライドされるフォーク8を有するマスト装置3に備えられた前記フォーク8の固定装置4であって、バックレスト10に複数の係合孔24を形成し、フォーク8にいずれかの係合孔24と一致する孔部31を形成し、孔部31を通して係合孔24に係合する固定ピン35を備え、フォーク8に固定ピン35を把持する把持部40を設ける。この構成により、孔部31を通していずれかの係合孔24に係合された固定ピン35が把持部40により固定され、フォーク8のずれを防止できる。また、工具を要せず簡単な操作で固定ピン35が着脱でき、フォーク8の間隔調節を容易に行うことができる。さらに、フォーク固定装置4を構成する部品点数が少なく、掛かるコストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフト等の荷役装置に装備されるフォーク固定装置であって、特にバックレストに沿ってスライドされるフォークのスライドを阻止し、フォークのずれを防止するフォーク固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフォーク固定装置の一例が、特許文献1に開示されている。
フォークリフトに、車両の前部に設けられたマストに沿って昇降されるキャリッジと、前記キャリッジとともに昇降されるバックレストと、前記バックレストに沿ってスライド可能な、かつ着脱自在な左右一対のフォークとからなるフォークリフトの荷役装置が備えられ、特許文献1に開示されるフォーク固定装置は、このフォークリフトの荷役装置に備えられている。
【0003】
上記荷役装置では、前記フォークの直立部の上端に上部掛部が形成され、この上部掛部が前記バックレストの上部部材に引掛けられ、前記フォークの直立部の後面下部が前記バックレストの下部部材の前面に当接され、前記各フォークがそれぞれ左右方向にスライド可能に設けられている。
【0004】
上記フォーク固定装置は、前記フォークの直立部の後面下部に当接された前記バックレストの下部部材を後方より挟み込む係合部材と、この係合部材を固定するボルトから構成されている。前記係合部材には、所定数のボルトに貫通される所定数の孔部が形成され、前記フォークの直立部の後面下部には、前記フォークがスライドされると前記ボルトにより前記係合部材の孔部と連通される所定数のボルト孔が形成され、前記係合部材は、所定数の前記ボルトにより各フォークに固定される。
【0005】
上記構成では、前記フォークの上部掛部が前記バックレストの上部部材に引掛けられ、前記フォークの後面下部が前記バックレストの下部部材の前面に当接され、前記フォークが前記バックレストを上下方向から挟みこんだ状態で、前記バックレストの下部部材を、前記フォークの後面と前記係合部材で前記各ボルトの締め付けにより前後方向から挟みこむことにより、バックレストに対する各フォークのスライドが阻止され、各フォークのずれが防止される。
【特許文献1】特開平04−182300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記フォーク固定装置では、バックレストに対して各フォークを着脱するとき、またはフォーク間の間隔を調整するとき、すなわち、バックレストに対して各フォークを意図的にずらす作業を行うとき、工具を用いて複数のボルトの係脱を行わなければならず、前記作業に多大な時間と労力を要する恐れがある。
【0007】
また、上記問題を解決するために、例えば、ワンモーション式のフォーク固定装置の構成が考えられる。
まず、上記バックレストの下部部材に、複数の係合孔を形成する。そして、前記フォークに、前後方向に出退され、前記バックレストの係合孔に出入可能な固定ピンと、この固定ピンと同一線上に並設され、回動操作されると前記固定ピンを出退動させる出入操作部材と、前記固定ピンと前記出入操作部材との対向面に形成されたカム機構と、前記固定ピンを前記下部部材の係合孔から抜き出す方向に作用する抜き出し手段とを備えたワンモーション式のフォーク固定装置を設ける。なお、前記カム機構は、前記固定ピンと前記出入操作部材との対向面のいずれか一方に形成された傾斜面と、他方に形成され、前記傾斜面に当接可能な突起から構成する。
【0008】
このようなフォーク固定装置では、出入操作部材が回動操作(ワンモーション)されると、カム機構を介して固定ピンが押し出され、下部部材の係合孔に固定ピンが挿入されるため、各フォークのスライドが阻止される。また、出入操作部材が逆方向に回動操作(ワンモーション)されると、抜き出し手段を介して、固定ピンが下部部材の係合孔より抜き出されるため、各フォークはスライド自在にされる。よって、バックレストに対して各フォークを着脱する作業、またはフォーク間の間隔を調整する作業に多大な時間と労力を要することが解消される。
【0009】
しかしながら、回動操作にて各フォークのスライドを阻止し、また回動操作にて各フォークをスライド自在にする上記フォーク固定装置は、固定ピンと、出入操作部材と、カム機構と、抜き出し手段を備え、多数の部品から構成されるとともに、複数の係合孔を下部部材に形成し、固定ピンと出入操作部材を前記フォークに同一線上に並設し、カム機構を前記固定ピンと出入操作部材との対向面に設けて構成されることにより、複雑な各部品の形成、およびフォーク固定装置の組み立てに多大な手間を要し、フォーク固定装置に掛かるコストが増加する恐れがある。
【0010】
そこで本発明は、工具を要することなく簡単な操作で着脱でき、フォークの間隔調節を容易にでき、さらに部品点数が少なく構成され、掛かるコストを低減できるフォーク固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、車両前部に設けられた左右一対のマストに沿って昇降されるバックレストと、前記バックレストに沿って左右方向へスライドされる一対のフォークを有する荷役装置に備えられ、前記各フォークのスライドを阻止するフォーク固定装置であって、
前記バックレストに、前記バックレストの長手方向へ沿って前方より複数の係合部を形成し、前記各フォークに、前記各フォークがスライドされると、前記バックレストの係合部と順に一致する孔部を形成し、前記バックレストのいずれかの係合部と前記各フォークの孔部を連通する一対の固定ピンを有し、前記各フォークに、前記固定ピンを着脱自在に把持する把持部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、固定ピンがフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部に係合されると、フォークのスライドが阻止され、この状態で固定ピンが把持部により把持されると、固定ピンがフォークに固定され、また前記固定ピンが把持部から取り外されると、固定ピンがフォークから着脱自在にされ、固定ピンがフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部から抜かれると、フォークがスライド自在にされる。よって、各フォークのずれが防止され、工具を要することなく簡単な操作で固定ピンが着脱され、フォークの間隔調節が容易にされる。さらに、フォーク固定装置は、固定ピンと把持部を備え、複数の係合部をバックレストに形成し、孔部を各フォークに形成して構成される。よって、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、フォーク固定装置を構成する部品点数が少なく、かつ各部品が容易に形成され、フォーク固定装置の組み立てに掛かる手間が減少され、フォーク固定装置に掛かるコストが低減される。
【0013】
また本発明の請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明であって、前記各フォークの左右内方の側部に、前記各フォークの孔部が形成された孔部ブラケットを設け、前記固定ピンを、前記フォークの孔部を前方から貫通して、前記バックレストのいずれかの係合部に係合されるロッド部と、前記ロッド部の一端に、前記ロッド部に対して直角方向に設けられたハンドル部から構成し、前記固定ピンの前記ハンドル部を、前記把持部により着脱自在に把持することを特徴とするものである。
【0014】
上記構成によれば、固定ピンのロッド部がフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部に係合されると、フォークのスライドが阻止され、この状態で固定ピンのハンドル部が把持部により把持されると、固定ピンがフォークに固定され、また前記固定ピンのハンドル部が把持部から取り外されると、固定ピンがフォークから着脱自在にされ、固定ピンのロッド部がフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部から抜かれると、フォークがスライド自在にされる。よって、各フォークのずれが防止され、工具を要することなく簡単な操作で固定ピンが着脱され、フォークの間隔調節が容易にされる。さらに、フォーク固定装置は、ロッド部とハンドル部からなる簡単な構成の固定ピンと、把持部を備え、複数の係合部をバックレストに形成し、各フォークに孔部ブラケットを介して孔部を形成して構成される。よって、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、フォーク固定装置を構成する部品点数が少なく、かつ各部品が容易に形成され、フォーク固定装置の組み立てに掛かる手間が減少され、フォーク固定装置に掛かるコストが低減される。
【0015】
また本発明の請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明であって、前記把持部を、前記フォークの左右内方の側部で、前記孔部ブラケットの孔部より上方、あるいは下方に設けられ、かつ前記孔部ブラケットの前方へとずれた位置に設けられた固定ブラケットと、前記固定ブラケットに設けられ、前記ハンドル部を把持する把持部材から構成したことを特徴とするものである。
【0016】
上記構成によれば、固定ピンのロッド部がフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部に係合されると、フォークのスライドが阻止され、この状態で固定ピンのハンドル部が一方に回転操作されると、固定ピンのハンドル部が、把持部の固定ブラケットに設けられた把持部材に把持されて、固定ピンがフォークに固定され、また前記固定ピンのハンドル部が他方に回転操作されると、固定ピンのハンドル部が、把持部の固定ブラケットに設けられた把持部材から取り外されて、固定ピンがフォークから着脱自在にされ、固定ピンのロッド部がフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部から抜かれると、フォークがスライド自在にされる。よって、各フォークのずれが防止され、工具を要することなく簡単な操作で固定ピンが着脱され、フォークの間隔調節が容易にされる。
【0017】
さらに、フォーク固定装置は、ロッド部とハンドル部からなる簡単な構成の固定ピンと、固定ブラケットと把持部材からなる把持部を備え、複数の係合部をバックレストに形成し、各フォークの孔部ブラケットに孔部を形成して構成される。よって、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、フォーク固定装置を構成する部品点数が少なく、かつ各部品が容易に形成され、フォーク固定装置の組み立てに掛かる手間が減少され、フォーク固定装置に掛かるコストが低減される。
【0018】
また本発明の請求項4に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明であって、前記把持部を、前記孔部ブラケットの孔部の上方、あるいは下方に設けた、前記ハンドル部を把持する把持部材から形成したことを特徴とするものである。
【0019】
上記構成によれば、固定ピンのロッド部がフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部に係合されると、フォークのスライドが阻止され、この状態で固定ピンのハンドル部が一方に回転操作されると、固定ピンのハンドル部が、把持部の把持部材に把持されて、固定ピンがフォークに固定され、また前記固定ピンのハンドル部が他方に回転操作されると、固定ピンのハンドル部が把持部の把持部材から取り外されて、固定ピンがフォークから着脱自在にされ、固定ピンのロッド部がフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部から抜かれると、フォークがスライド自在にされる。よって、各フォークのずれが防止され、工具を要することなく簡単な操作で固定ピンが着脱され、フォークの間隔調節が容易にされる。
【0020】
さらに、フォーク固定装置は、ロッド部とハンドル部からなる簡単な構成の固定ピンと、孔部と把持部材からなる孔部ブラケットを備え、複数の係合部をバックレストに形成して構成される。よって、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、フォーク固定装置を構成する部品点数が少なく、かつ各部品が容易に形成され、フォーク固定装置の組み立てに掛かる手間が減少され、フォーク固定装置に掛かるコストが低減される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、固定ピンがフォークの孔部を通してバックレストのいずれかの係合部が係合されると、フォークのスライドが阻止され、この状態の固定ピンが把持部により把持されると、固定ピンがフォークに固定されることにより、各フォークのずれが防止され、工具を要することなく簡単な操作で固定ピンを着脱でき、各フォークの間隔調整を容易に行うことができ、さらに、フォーク固定装置は、固定ピンと把持部を備え、複数の係合孔をバックレストに形成し、孔部を各フォークに形成して構成されることにより、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、フォーク固定装置を構成する部品点数を少なくでき、かつ各部品を容易に形成でき、フォーク固定装置の組み立てに掛かる手間を減少でき、フォーク固定装置に掛かるコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、フォークリフト(荷役車両の一例)1は、操縦席に配設された各操作装置(図示せず)が操作され、前後左右に走行自在な車両2と、この車両2の前部に設けられ、荷を移載するマスト装置(荷役装置)3とを備え、このマスト装置3に、各フォーク8のスライドを阻止するフォーク固定装置4が設けられている。ここで、車両2の走行方向を前後方向Xとし、前記前後方向Xと直交する水平方向を左右方向Yとする。
【0023】
上記マスト装置3は、図1に示すように、車両2の前部に設けられた左右一対の固定マスト5および固定マスト5に沿って昇降自在な左右一対の可動マスト6からなるマスト7と、前記可動マスト6に沿って昇降自在に設けられたキャリッジ9と、キャリッジ9とともに昇降されるバックレスト10と、バックレスト10へ着脱自在に上方より引掛けられ、バックレスト10に沿って左右方向Yにスライドされる左右一対のフォーク8とを備えている。
【0024】
車両2とマスト7との間には、図2に示すように、マスト7の傾動を行わせるティルトシリンダー45が設けられ、このティルトシリンダー45によりマスト7は、左右方向Yのマスト連結軸(図示せず)を介して前後方向Xに傾動自在に取り付けられている。またマスト7は、上記固定マスト5に沿って可動マスト6を昇降するリフトシリンダー46を備えている。上記キャリッジ9は、キャリッジ9の後部に可動マスト6に形成されたレール(図示せず)に沿って昇降される左右のリフトブラケット(案内板)47を備えている。
【0025】
図1〜図3に示すように、一端が各固定マスト5に固定され、可動マスト6の上部を介して他端がリフトブラケット47に固定される左右のリフトチェーン11が設けられ、上記リフトシリンダー46により可動マスト6が固定マスト5に沿って昇降されると、各リフトチェーン11により各リフトブラケット47が昇降されるとともに、キャリッジ9が昇降される。
【0026】
また上記キャリッジ9は、リフトブラケット47の前方に連設された回転自在な回転フレーム13と、回転フレーム13を回転駆動する回転駆動装置14を有している。前記回転フレーム13は、正面視円形の円盤状に形成され、その後部には内歯ギヤ15が設けられている。前記回転駆動装置14は、油圧式又は電動式の駆動モータを有し、回転フレーム13内に設けられた駆動ピニオン16を回転させ、駆動ピニオン16により回転フレーム13に設けられた内歯ギヤ15を回転駆動し、回転フレーム13を前後方向Xの軸心を中心に回転駆動させる。
【0027】
上記バックレスト10は、回転フレーム13の前部に上下一対に設けられた矩形状の上下フィンガーバー19,20を有している。これら上下フィンガーバー19,20はそれぞれ、左右方向Yに適宜の長さで形成され、回転フレーム13から外側に突出されている。前記上フィンガーバー19は、上部に左右方向Y(長手方向)に沿ってレール部21が形成されている。また、前記下フィンガーバー20は、下部に左右方向Y(長手方向)に沿ってレール部23が形成されるとともに、前部に左右方向Y(長手方向)に沿って複数の係合孔(係合部の一例)24が形成されている。なお、前記係合孔24は、適宜間隔を設けて多数形成されている。
【0028】
上記各フォーク8は、上下方向の基部フレーム8aと、基部フレーム8aの下部から水平方向に折り曲げられた荷役フレーム8bから構成されている。前記各基部フレーム8aの後面には、上部に上フィンガーバー19のレール部21に沿ってスライド自在に係合される上部掛部27と、下部に下フィンガーバー20のレール部23にスライド自在に係合される下部掛部28が形成されている。
【0029】
また上記各フォーク8には、各フォーク8がスライドされると、バックレスト10の下フィンガーバー20の係合孔24と順に一致する孔部31が形成されている。詳しくは、孔部31が、各フォーク8の基部フレーム8aの左右内方の側部に形成された孔部ブラケット32に形成され、フォーク8がバックレスト10に掛けられた状態でスライドされると、いずれかの係合孔24と孔部31が順に一致する位置に孔部ブラケット32が形成されている。
【0030】
上記フォーク固定装置4は、図4,図5(a)に示すように、各フォーク8の孔部ブラケット32の孔部31を連通してバックレスト10の下フィンガーバー20のいずれかの係合部24に係合する一対の固定ピン35を有している。この各固定ピン35は、一端がフォーク8の孔部ブラケット32の孔部31を前方から貫通し、バックレスト10の下フィンガーバー20のいずれかの係合孔24に挿入(係合)されるロッド(ロッド部の一例)36と、ロッド36の他端に設けられ、フォーク8の孔部ブラケット32の孔部31の径よりも大径な頭部37と、ロッド36に対して垂直方向へ頭部37に設けられたハンドル(ハンドル部の一例)38から形成されている。
【0031】
また上記各フォーク8にはそれぞれ、固定ピン35を着脱自在に把持する把持部40が設けられている。この把持部40は、各フォーク8の基部フレーム8aの左右内方の側部の孔部ブラケット32の孔部31より下方で、かつ孔部ブラケット32の前方へとずれた位置に形成された固定ブラケット41と、固定ブラケット41にネジ42を介して設けられ、固定ピン35のハンドル38を把持する平面視略V字状の弾性板(把持部材の一例)43から形成されており、各把持部40により各固定ピン35のハンドル38がそれぞれ、各フォーク8へ着脱自在に把持されている。
【0032】
上記構成においてフォーク固定装置4は、図4に示すように、ロッド36と頭部37とハンドル38とから形成される固定ピン35と、ネジ42と弾性板43を備えた固定ブラケット41から形成される各フォーク8の把持部40と、孔部31が形成された各フォーク8の孔部ブラケット32と、バックレスト10の下フィンガーバー20に形成される複数の係合孔24とを備えている。
【0033】
以下に、上記した実施の形態における作用を説明する。
図3の実線,図4,図5に示すように、固定ピン35のロッド36がフォーク8の孔部31を通してバックレスト10のいずれかの係合孔24に挿入(係合)されると、フォーク8のスライドが阻止され、この状態で固定ピン35のハンドル38が下方に回転操作されると、固定ピン35のハンドル38が把持部40の弾性板43により把持されて、固定ピン35がフォーク8に固定される。よって、この状態で回転駆動装置14が駆動され、回転フレーム13が回転されるとともに、バックレスト10が回転されても、図3の仮想線で示すように、各フォーク8は、フォーク固定装置4によりバックレスト10に対して左右方向Yにずれることなく、バックレスト10とともに回転される。
【0034】
また、図3の実線,図4,図5(a)に示すように、上記固定ピン35がフォーク8に固定された状態から、固定ピン35のハンドル38が左右側方に回転操作されると、固定ピン35のハンドル38が把持部40の弾性板43から取り外されて、固定ピン35がフォーク8から着脱自在にされ、固定ピン35のロッド36がフォーク8の孔部31を通してバックレスト10のいずれかの係合孔24から抜かれると、フォーク8がスライド自在にされる。よって、この状態で例えば各フォーク8間の間隔を調整するとき、各フォーク8がバックレスト10に沿ってスライドされる。
【0035】
また、上述したように、固定ピン35のハンドル38が回転操作されるだけで、固定ピン35がフォーク8の孔部31を通してバックレスト10のいずれかの係合孔24に着脱自在にされ、フォーク8の間隔調整が容易にされる。
【0036】
また、図4,図5(a)に示すように、フォーク固定装置4は、ロッド36と頭部37とハンドル38とから形成される固定ピン35と、ネジ42と弾性板43と固定ブラケット41から形成される把持部40と、孔部31が形成された各フォーク8の孔部ブラケット32とを備え、複数の係合孔24がバックレスト10の下フィンガーバー20に形成されて構成される。
【0037】
以上のように本発明の実施の形態によれば、固定ピン35のロッド36がフォーク8の孔部31を通してバックレスト10のいずれかの係合孔24に挿入(係合)されると、フォーク8のスライドが阻止され、この状態で固定ピン35のハンドル38が下方に回転操作されると、固定ピン35のハンドル38が把持部40の弾性板43により把持されて、固定ピン35がフォーク8に固定され、またこの状態から、固定ピン35のハンドル38が左右側方に回転操作されると、固定ピン35のハンドル38が把持部40の弾性板43から取り外されて、固定ピン35がフォーク8から着脱自在にされ、固定ピン35のロッド36がフォーク8の孔部31を通してバックレスト10のいずれかの係合孔24から抜かれると、フォーク8がスライド自在にされることにより、各フォーク8のずれが防止され、工具を要することなく簡単な操作で固定ピン35を着脱でき、各フォークの間隔調整を容易に行うことができる。
【0038】
さらに、本発明の実施の形態によれば、フォーク固定装置4が、ロッド36と頭部37とハンドル38とから形成される固定ピン35と、ネジ42と弾性板43と固定ブラケット41から形成される把持部40と、孔部31が形成された孔部ブラケット32とから構成されており、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、部品点数が少なく構成されるとともに、複数の係合孔24がバックレスト10の下フィンガーバー20に形成されて構成されることにより、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、各部品を容易に形成でき、フォーク固定装置4の組み立てに掛かる手間を減少でき、フォーク固定装置4に掛かるコストを低減することができる。
【0039】
また、本発明の実施の形態によれば、固定ブラケット41により、フォーク8に載置された荷と、固定ピン35のハンドル38との接触を防止することができる。
なお、本発明の実施の形態では、固定ブラケット41は、各フォーク8の基部フレーム8aの左右内方の側部の、孔部ブラケット32の孔部31より下方で、かつ孔部ブラケット32の前方へとずれた位置に形成されているが、固定ブラケット41を、各フォーク8の基部フレーム8aの左右内方の側部の、孔部ブラケット32の孔部31より上方で、かつ孔部ブラケット32の前方へとずれた位置に形成してもよい。
【0040】
また本発明の実施の形態では、図5(a)に示すように、把持部40は、各フォーク8の基部フレーム8aの左右内方の側部の孔部ブラケット32の孔部31より下方で、かつ孔部ブラケット32の前方へとずれた位置に形成された固定ブラケット41と、固定ブラケット41にネジ42を介して設けられ、固定ピン35のハンドル38を把持する弾性板43から形成されているが、図5(b)に示すように、孔部ブラケット32の下部に、前方へ僅かだけ(頭部37のロッド36側からハンドル38のロッド36側までの長さだけ)突出する取付部32aを形成し、この取付部32aにネジ42を介して弾性板43を設け、固定ピン35のロッド36をフォーク8の孔部31を通してバックレスト10のいずれかの係合孔24に挿入(係合)し、この状態で固定ピン35のハンドル38を下方に回転操作して、固定ピン35のハンドル38を孔部ブラケット32´の弾性板43により把持してもよい。
【0041】
この構成によれば、フォーク固定装置4が、ロッド36と頭部37とハンドル38とから形成される固定ピン35と、取付部32aにネジ42により弾性板43を設けた把持部40´を有する孔部31が形成された孔部ブラケット32´を備え、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、フォーク固定装置4を構成する部品点数を少なくできるとともに、バックレスト10の下フィンガーバー20に複数の係合孔24が形成されて構成されることにより、従来のワンモーション式のフォーク固定装置と比較して、各部品をそれぞれ簡単な構成で形成でき、フォーク固定装置4の組み立てに掛かる手間を減少でき、フォーク固定装置4に掛かるコストを低減することができる。なお、孔部ブラケット32´の下部に取付部32aを形成し、取付部32aに弾性板43を設けているが、取付部32aを孔部ブラケット32´の上部に形成し、この取付部32aに弾性板43を設けてもよい。
【0042】
また本発明の実施の形態では、フォークリフト1は、リフトブラケット47の前方に連設された回転自在な回転フレーム13と、回転フレーム13を回転駆動する回転駆動装置14を有するキャリッジ9を備え、フォーク8が回転フレーム13とともに回転される構成とされているが、フォークリフト1は、このような回転フレーム13と、回転駆動装置14を有しないキャリッジ9を備える構成であってもよい。
【0043】
また本発明の実施の形態では、バックレスト10の下フィンガーバー20にレール部23を形成し、各フォーク8に下部掛部28を形成する構成としているが、これらレール部23と下部掛部28を形成しない構成であってもよい。
【0044】
また本発明の実施の形態では、係合孔24を、下フィンガーバー20の前部に、左右方向Y(長手方向)に沿って複数形成しているが、この係合孔24は、下フィンガーバー20を貫通する構成、または下フィンガーバー20を貫通しない構成のいずれの構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態におけるフォークリフトの要部斜視図である。
【図2】同フォークリフトのマスト装置の側面図である。
【図3】同マスト装置の正面図である。
【図4】同マスト装置の要部拡大図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】マスト装置の要部拡大斜視図であり、(a)は本発明の実施の形態を示し、(b)は本発明の他の実施の形態を示す。
【符号の説明】
【0046】
X 前後方向
Y 左右方向
1 フォークリフト
2 車両
3 マスト装置
4 フォーク固定装置
7 マスト
8 フォーク
9 キャリッジ
10 バックレスト
19 上フィンガーバー
20 下フィンガーバー
31 孔部
32,32´ 孔部ブラケット
35 固定ピン
36 ロッド
38 ハンドル
40,40´ 把持部
41 固定ブラケット
42 ネジ
43 弾性板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられた左右一対のマストに沿って昇降されるバックレストと、前記バックレストに沿って左右方向へスライドされる一対のフォークを有する荷役装置に備えられ、前記各フォークのスライドを阻止するフォーク固定装置であって、
前記バックレストに、前記バックレストの長手方向へ沿って前方より複数の係合部を形成し、
前記各フォークに、前記各フォークがスライドされると、前記バックレストの係合部と順に一致する孔部を形成し、
前記バックレストのいずれかの係合部と前記各フォークの孔部を連通する一対の固定ピンを有し、
前記各フォークに、前記固定ピンを着脱自在に把持する把持部を設けたこと
を特徴とするフォーク固定装置。
【請求項2】
前記各フォークの左右内方の側部に、前記各フォークの孔部が形成された孔部ブラケットを設け、
前記固定ピンを、
前記フォークの孔部を前方から貫通して、前記バックレストのいずれかの係合部に係合されるロッド部と、
前記ロッド部の一端に、前記ロッド部に対して直角方向に設けられたハンドル部
から構成し、
前記固定ピンの前記ハンドル部を、前記把持部により着脱自在に把持すること
を特徴とする請求項1に記載のフォーク固定装置。
【請求項3】
前記把持部を、
前記フォークの左右内方の側部で、前記孔部ブラケットの孔部より上方、あるいは下方に設けられ、かつ前記孔部ブラケットの前方へとずれた位置に設けられた固定ブラケットと、
前記固定ブラケットに設けられ、前記ハンドル部を把持する把持部材
から構成したこと
を特徴とする請求項2に記載のフォーク固定装置。
【請求項4】
前記把持部を、前記孔部ブラケットの孔部の上方、あるいは下方に設けられ、前記ハンドル部を把持する把持部材から構成したこと
を特徴とする請求項2に記載のフォーク固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−150014(P2010−150014A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331685(P2008−331685)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】