説明

フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体および抗フコシルGM1を使用するための方法

本開示は、単離されたモノクローナル抗体、詳細にはフコシルGM1に高い親和性で特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を提供する。本開示の抗体をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、および本開示の抗体を発現させるための方法も提供する。本開示の抗体を含む免疫接合体、二重特異性分子および薬学的組成物もまた提供する。本開示はまた、抗フコシルGM1抗体を用いる、フコシルGM1を検出するための方法、ならびに癌を含む各種疾患を処置するための方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2005年12月8日出願の米国仮出願第60/748,915号について優先権を主張し、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
フコシルGM1は、細胞膜中に分子を固着させるセラミド脂質成分、および細胞表面に露出している糖質成分とから成る、スフィンゴ脂質モノシアロガングリオシドである。糖質抗原は、癌細胞表面に最も豊富に発現される抗原である(Feizi T. (1985) Nature 314:53-7(非特許文献1))。小細胞肺癌(SCLC)などのいくつかの型の腫瘍では、化学療法に対する初期の応答は顕著であるが、その後化学療法不応性の再発が急速に起こる。新たな免疫療法による治療介入により、薬物耐性の再発を克服することができる可能性がある(Johnson DH. (1995) Lung Cancer 12 Suppl 3:S71-5(非特許文献2))。ガングリオシドGD3およびGD2などのいくつかの糖鎖抗原が、モノクローナル抗体(MAb)による受動的免疫療法の有効な標的として機能することが示されている(Irie RF and Morton DL. (1986) PNAS 83:8694-8698(非特許文献3); Houghton AN et al. (1985) PNAS 82:1242-1246(非特許文献4))。ガングリオシド抗原は、臨床試験において、ワクチンによる能動的免疫療法の有効な標的であることが実証されている(Krug LM et al. (2004) Clinical Cancer Research 10:6094-6100(非特許文献5); Dickler MN et al. (1999) Clinical Cancer Research 5:2773-2779(非特許文献6); Livingston PO et al. (1994) J Clin Oncol.12:1036-44(非特許文献7))。実際、KLH接合抗原によるワクチン接種の後でフコシルGM1に対する抗体価を生じたSCLC患者に由来する血清は、腫瘍細胞への特異的結合、および腫瘍特異的な補体依存性細胞障害性(CDC)を示した。抗フコシルGM1抗体価関連毒性は、穏和で一過性であり、また、限局期のSCLCの3人の患者は、18、24および30ヶ月目に無再発であった(Krug et al., 前記; Dickler et al, 前記)。
【0003】
フコシルGM1の発現は、高い割合のSCLC患者に見られ、他のガングリオシド抗原と異なり、フコシルGM1は、正常組織ではほとんどまたは全く発現しない(Nilsson et al. (1984) Glycoconjugate J 1:43-9(非特許文献8); Krug et al., 前記; Brezicka et al. (1989) Cancer Res 49:1300-5(非特許文献9); Zhangyi et al. (1997) Int J Cancer 73:42-49(非特許文献10); Brezicka et al. (2000) Lung Cancer 28:29-36(非特許文献11); Fredman et al. (1986) Biochim Biophys Acta 875:316-23(非特許文献12); Brezicka et al. (1991) APMIS 99:797-802(非特許文献13); Nilsson et al. (1986) Cancer Res 46:1403-7(非特許文献14))。フコシルGM1の存在が、SCLC細胞株の培養液中、ヌードマウス異種移植片の腫瘍抽出物および血清中、ならびに進行期のSCLC患者の血清中で実証されている(Vangsted et al. (1991) Cancer Res 51:2879-84(非特許文献15); Vangsted et al. (1994) Cancer Detect Prev 18:221-9(非特許文献16))。これらの報告は、フコシルGM1が免疫療法の標的にすることができる、極めて特異的な腫瘍抗原であるという確かな証拠を提供する。
【0004】
したがって、フコシルGM1を認識する薬剤およびそのような薬剤を用いる方法が望まれる。
【0005】
【非特許文献1】Feizi T. (1985) Nature 314:53-7
【非特許文献2】Johnson DH. (1995) Lung Cancer 12 Suppl 3:S71-5
【非特許文献3】Irie RF and Morton DL. (1986) PNAS 83:8694-8698
【非特許文献4】Houghton AN et al. (1985) PNAS 82:1242-1246
【非特許文献5】Krug LM et al. (2004) Clinical Cancer Research 10:6094-6100
【非特許文献6】Dickler MN et al. (1999) Clinical Cancer Research 5:2773-2779
【非特許文献7】Livingston PO et al. (1994) J Clin Oncol.12:1036-44
【非特許文献8】Nilsson et al. (1984) Glycoconjugate J 1:43-9
【非特許文献9】Brezicka et al. (1989) Cancer Res 49:1300-5
【非特許文献10】Zhangyi et al. (1997) Int J Cancer 73:42-49
【非特許文献11】Brezicka et al. (2000) Lung Cancer 28:29-36
【非特許文献12】Fredman et al. (1986) Biochim Biophys Acta 875:316-23
【非特許文献13】Brezicka et al. (1991) APMIS 99:797-802
【非特許文献14】Nilsson et al. (1986) Cancer Res 46:1403-7
【非特許文献15】Vangsted et al. (1991) Cancer Res 51:2879-84
【非特許文献16】Vangsted et al. (1994) Cancer Detect Prev 18:221-9
【発明の開示】
【0006】
概要
本開示は、単離されたモノクローナル抗体、特にフコシルGM1に結合し、多くの望ましい特性を示すヒトモノクローナル抗体を提供する。これらの特性には、フコシルGM1への高親和性の結合およびヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)への結合が含まれる。さらに本開示の抗体および組成物を用いて、様々なフコシルGM1によって媒介される疾病を治療する方法を提供する。
【0007】
1つの局面では、本開示は、(a) フコシルGM1に特異的に結合し;かつ(b) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。
【0008】
好ましくは、抗体はヒト抗体であるが、しかし他の態様では、抗体はマウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体であり得る。
【0009】
別の態様では、本開示は、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供することであって、該抗体がフコシルGM1への結合について参照抗体と交差競合(cross-compete)し、該参照抗体が、(a) フコシルGM1に特異的に結合し;かつ(b) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する。ある態様では、参照抗体は、(a) 配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。さらなる態様では、参照抗体は、(a) 配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。他の態様では、参照抗体は(a) 配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。よりさらなる態様では、参照抗体は(a) 配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。よりさらなる態様では、参照抗体は(a) 配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。よりさらなる態様では、参照抗体は(a) 配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0010】
1つの局面では、本開示は、ヒトVH 3-48遺伝子の産物であるかまたはその遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体(該抗体は、フコシルGM1に特異的に結合する)またはその抗原結合部分に関する。本開示はさらに、ヒトVK L15遺伝子の産物であるかまたはその遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体(該抗体はフコシルGM1に特異的に結合する)またはその抗原結合部分を提供する。
【0011】
好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:13を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:19を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:25を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:31を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:37を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:43を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0012】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:14を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:20を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:26を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:32を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:38を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:44を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0013】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:15を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:21を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:27を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:33を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:39を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:45を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0014】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:16を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:22を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:28を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:34を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:40を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:46を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0015】
別の好ましい組合せは以下の領域を含む:
(a) 配列番号:17を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:23を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:29を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:35を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:41を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:47を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0016】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:18を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:24を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:30を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:36を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:42を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:48を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0017】
他の好ましい本開示の抗体またはその抗原結合部分は、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:および
(b) 配列番号:7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0018】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:および
(b) 配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0019】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:および
(b) 配列番号:9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0020】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:および
(b) 配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0021】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:および
(b) 配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0022】
別の好ましい組合せは、以下の領域を含む:
(a) 配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:および
(b) 配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0023】
本開示の抗体は、例えばIgG1またはIgG4アイソタイプの、例えば全長の抗体であり得る。または、抗体は、FabまたはFab'2断片などの抗体断片、あるいは一本鎖抗体であり得る。
【0024】
本開示はまた、細胞毒素または放射性同位体などの治療薬に連結された本開示の抗体またはその抗原結合部分を含む免疫接合体(immunoconjugate)を提供する。本開示はまた、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含み、該抗体またはその抗原結合部分とは異なる結合特異性を有する第二の機能的部分に連結された、二重特異的分子を提供する。
【0025】
本開示の抗体もしくはその抗原結合部分、または免疫接合体もしくは二重特異性分子、ならびに薬学的に許容される担体を含む組成物もまた提供される。
【0026】
本開示の抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸分子、ならびにそのような核酸を含む発現ベクターおよびそのような発現ベクターを含む宿主細胞もまた、本開示に包含される。さらに本開示は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス(該マウスは本開示の抗体を発現する)、ならびにそのようなマウスから調製されたハイブリドーマ(該ハイブリドーマは本開示の抗体を生成する)を提供する。
【0027】
さらに別の局面では、本開示は、疾病を処置または予防するのに有効な量の本開示の抗体もしくはその抗原結合部分を被験体に投与する工程を含む、フコシルGM1を発現する腫瘍細胞の成長によって特徴付けられる疾病を処置または予防する方法を提供する。疾病は例えば、癌、例えば肺癌(小細胞肺癌を含む)であり得る。
【0028】
好ましい態様では、本開示は、癌をインビボで抗フコシルGM1抗体を用いて処置する方法を提供する。抗フコシルGM1抗体は、マウス、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体であってよい。本開示の方法を用いて処置することのできる他の癌の例には、以下の癌が含まれる:小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む肺癌、腎臓癌(例えば腎細胞カルシノーマ)、膠芽腫、脳腫瘍、ならびに、急性リンパ性白血病(ALL)、成人T細胞白血病(T-ALL)、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球白血病を含む慢性または急性白血病、ならびに、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、リンパ球リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性切れ込み小細胞リンパ腫(nodular small cleaved-cell lymphoma)、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、中心芽型/中心細胞型(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統びまん性大細胞型リンパ腫、血管免疫芽細胞リンパ節症(AILD)様T細胞リンパ腫、およびHIV関連体腔リンパ腫)、胎児性カルシノーマ、鼻咽頭未分化カルシノーマ(例えばシュミンケ(Schmincke)腫瘍)、キャッスルマン病、カポジ肉腫、多発性ミエローマ、ヴァルデンストレームのマクログロブリン血症および他のB細胞リンパ腫、上咽頭カルシノーマ、骨癌、皮膚癌、頭頸癌、皮膚または眼球内悪性メラノーマ、子宮癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管カルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰カルシノーマ、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児充実性腫瘍、膀胱癌、腎臓または尿管癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮癌、扁平上皮癌、例えば石綿によって誘起される中皮腫を含む環境誘起癌、ならびに前記の癌の組合せ。
【0029】
本開示の他の特徴および長所は、以下の詳細な記述および実施例(それらは限定的なものとして解釈されるべきではない)から明白である。本出願の全体にわたって引用される、すべての参照文献、Genbankエントリー、特許、および公表された特許出願の内容は、参照により明確に本明細書に組み入れられる。
【0030】
詳細な説明
1つの局面では、本開示は、一般に単離されたモノクローナル抗体に、詳細にはフコシルGM1に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体に関する。ある態様では、本開示の抗体は、フコシルGM1への高親和性結合、および/またはインビトロもしくはインビボで腫瘍細胞の成長を阻害する能力などの、1つまたは複数の望ましい機能特性を発揮する。ある態様では、本開示の抗体は、特定の重鎖および軽鎖生殖細胞系列配列に由来し、および/または、特定のアミノ酸配列を含むCDR領域などの特定の構造的特徴を含む。本開示は、単離された抗体、そのような抗体を作製する方法、そのような抗体を含む免疫接合体および二重特異性分子、ならびに本開示の抗体、免疫接合体または二重特異性分子を含む薬学的組成物を提供する。本開示はまた、癌のような疾病の処置などに抗体を用いる方法に関する。
【0031】
本開示をより容易に理解できるようにするために、最初に一定の用語を定義する。追加の定義を、詳細な説明の全体にわたって述べる。
【0032】
用語「免疫応答」とは、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって生成された可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用であって、侵入病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌細胞、あるいは自己免疫もしくは病理的炎症の場合には正常なヒト細胞もしくは組織の、選択的損傷、破壊、または人体からの除去をもたらす作用を指す。
【0033】
「シグナル伝達経路」とは、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝搬に役割を担う様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。本明細書に用いる語句「細胞表面レセプター」には、例えば、シグナルを受取り、細胞の原形質膜を横断してそのようなシグナルを伝搬することができる分子および分子の複合体が含まれる。本開示の「細胞表面レセプター」の一例は、フコシルGM1レセプターである。
【0034】
本明細書で言及される「抗体」という用語には、完全な抗体および任意の抗原結合断片(即ち「抗原結合部分」)またはそれらの一本鎖が含まれる。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略す)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略す)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と名付けられた複数の超可変性領域と、それらの間の、フレームワーク領域(FR)と名付けられたより保存的な領域に、さらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、の順に並んだ、3つのCDRおよび4つのFRから成る。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、ホストの組織または因子との結合を媒介する。
【0035】
本明細書に用いる場合、抗体の「抗原結合部分」(あるいは単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えばフコシルGM1)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長の抗体の断片によって遂行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例には、(i) Fab断片(VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る一価の断片);(ii) F(ab')2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む、二価の断片);(iii) VHおよびCH1ドメインから成るFd断片;(iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから成るFv断片;(v) VHドメインから成るdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi) 単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用い、合成リンカーによってそれらを連結し、VLおよびVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al. (1988) Science 242:423-426; および Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照のこと)を作製することができる。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものとする。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、また断片を利用するために、原型の抗体と同じ方法でスクリーニングする。
【0036】
本明細書に用いる「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、フコシルGM1を特異的に結合する単離された抗体は、フコシルGM1以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。
【0037】
本明細書に使用する用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成の抗体分子調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して、単一の結合特異性および親和性を示す。
【0038】
本明細書に用いる用語「ヒト抗体」には、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれるものとする。さらに、抗体が定常領域を含む場合は、定常領域もまた、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒトの生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダムなもしくは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボの体細胞突然変異によって、導入された突然変異)を含んでいてもよい。しかし、本明細書に用いる用語「ヒト抗体」には、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列上に移植さている抗体は、含まれないものとする。
【0039】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。1つの態様ではヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒトの重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えばトランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含む、ハイブリドーマにより生成される。
【0040】
本明細書に用いる用語「組換えヒト抗体」には、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されるすべてのヒト抗体を含み、例えば(a) ヒト免疫グロブリン遺伝子についてのトランスジェニック動物もしくは染色体組換え(transchromosomal)動物(例えばマウス)から、またはそれから調製されたハイブリドーマ(さらに下に記述する)から、単離された抗体、(b) ヒト抗体を発現するために形質転換された宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ)から単離された抗体、(c) 組換え体の、組み合わせの、ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d) ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む、任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体などが含まれる。そのような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒトの生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。ある態様では、しかし、そのような組換えヒト抗体を、インビトロの突然変異誘発(あるいは、ヒトIg配列のトランスジェニック動物が用いられる場合は、インビボの体細胞突然変異誘発)に供することができる。したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、一方でヒト生殖細胞系列VHおよびVL配列に由来し、関連しているが、インビボのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に自然には存在しない可能性がある配列である。
【0041】
本明細書に用いる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。
【0042】
語句「抗原を認識する抗体」、および「抗原に特異的な抗体」は本明細書で、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に用いられる。
【0043】
用語「ヒト抗体誘導体」とは、ヒト抗体の任意の修飾された形、例えば抗体と別の薬剤または抗体との接合体を指す。
【0044】
用語「ヒト化抗体」とは、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列に移植されている抗体を指すものとする。さらなるフレームワーク領域の修飾を、ヒトのフレームワーク配列内に行ってもよい。
【0045】
用語「キメラ抗体」とは、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体などの、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体を指すものとする。
【0046】
本明細書に用いる、「フコシルGM1に特異的に結合する」抗体とは、フコシルGM1に、1×10-7Mまたはそれ未満の、より好ましくは5×10-8Mまたはそれ未満の、より好ましくは1×10-8Mまたはそれ未満の、より好ましくは5×10-9Mまたはそれ未満のKDで結合する抗体を指すものとする。
【0047】
本明細書に用いる用語「Kassoc」または「Ka」とは、特定の抗体抗原相互作用の結合速度を指すものとする。一方、本明細書に用いる用語「Kdis」「Kd」とは、特定の抗体抗原相互作用の解離速度を指すものとする。本明細書に用いる用語「KD」とは、KdのKaに対する比(即ちKd/Ka)から得られる解離定数を指し、モル濃度(M)として表すものとする。抗体のKD値は、当技術分野において十分に確立された方法を用いて決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いて、好ましくはBiacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムを用いて行う。
【0048】
本明細書に用いる、IgG抗体についての「高親和性」という用語は、標的抗原に対して10-8Mまたはそれ未満、より好ましくは10-9Mまたはそれ未満、およびさらに好ましくは10-10Mまたはそれ未満のKDを有する抗体を指す。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプについては変化し得る。例えば、IgMアイソタイプについて「高親和性」結合は、10-7Mまたはそれ未満、より好ましくは、10-8Mまたはそれ未満、さらにより好ましくは10-9Mまたはそれ未満のKDを有する抗体を指す。
【0049】
本明細書に用いる用語「被験体」には、任意のヒトまたは非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等の、哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。
【0050】
本開示の種々の局面について、以下の項にさらに詳細に記載する。
【0051】
抗フコシルGM1抗体
本開示の抗体は、抗体の特別な機能的特徴または特性によって特徴付けられる。例えば、抗体は、特異的にフコシルGM1に、好ましくはフコシルGM1に結合する。好ましくは、本開示の抗体は、高い親和性で、例えば1×10-7Mまたはそれ未満のKDで、フコシルGM1に結合する。本開示の抗フコシルGM1抗体は、好ましくは以下の特性の1つまたは複数を示す:
(a)フコシルGM1に特異的に結合する;および
(b) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する。
【0052】
好ましくは、抗体は、5×10-8Mまたはそれ未満のKDでフコシルGM1に結合し、1×10-8Mまたはそれ未満のKDでフコシルGM1に結合し、5×10-9Mまたはそれ未満のKDでフコシルGM1に結合し、あるいは1×10-8M〜1×10-10Mまたはそれ未満のKDでフコシルGM1に結合する。フコシルGM1への抗体の結合能力を評価する標準分析は、当技術分野において公知であり、例えばELISA、ウエスタンブロット、およびRIAを含む。抗体の結合速度論(例えば結合親和性)を、ELISA、スキャチャードおよびBiacore分析などの、公知技術の標準分析によっても、評価することができる。
【0053】
モノクローナル抗体5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5
本開示の好ましい抗体は、実施例1および2に述べるように、単離され構造的に特徴付けられたヒトモノクローナル抗体5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5である。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5のVHアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:1、2、3、4、5、および6に示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5のVLアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:7、8、9、10、11、および12に示す。
【0054】
これらの抗体の各々がフコシルGM1に結合することができるとすれば、VHおよびVL配列を「混合し、組み合わせて」、本開示の他の抗フコシルGM1結合分子を作製することができる。そのような「混合され、組み合わされた」抗体のフコシルGM1結合を、上述および実施例に記述された結合分析(例えばELISA)を用いて、テストすることができる。好ましくは、VHおよびVL鎖を混合し、組み合わせる場合は、特定のVH/VL対のVH配列を、構造上類似のVH配列と置き換える。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対のVL配列を構造上類似のVL配列と置き換える。
【0055】
したがって、1つの局面では、本開示は、以下を含む単離されたモノクローナル抗体(該抗体は、特異的にフコシルGM1に、好ましくはフコシルGM1に結合する)、またはその抗原結合部分を提供する:
(a) 配列番号:1、2、3、4、5、および6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:7、8、9、10、11、および12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0056】
好ましい重鎖および軽鎖の組合せには以下のものが含まれる:
(a) 配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a) 配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a) 配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a) 配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a) 配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;または
(a) 配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b) 配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0057】
別の局面では、本開示は、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む抗体、またはそれらの組合せを提供する。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVH CDR1のアミノ酸配列を、配列番号:13、14、15、16、17および18に、それぞれ示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVH CDR2のアミノ酸配列を、配列番号:19、20、21、22、23および24に、それぞれ示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVH CDR3のアミノ酸配列を、配列番号:25、26、27、28、29および30に、それぞれ示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVκ CDR1のアミノ酸配列を、配列番号:31、32、33、34、35および36に、それぞれ示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVκ CDR2のアミノ酸配列を、配列番号:37、38、39、40、41および42に、それぞれ示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVκ CDR3のアミノ酸配列を、配列番号:43、44、45、46、47および48に、それぞれ示す。CDR領域は、カバットシステムを用いて詳細に描写されている(Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242)。
【0058】
これらの抗体の各々が、フコシルGM1に結合することができ、その抗原結合特異性が主としてCDR1、CDR2、およびCDR3領域によって提供されるとすれば、VH CDR1、CDR2、およびCDR3配列ならびにVκ CDR1、CDR2、およびCDR3配列を「混合し組み合わせて」(即ち、種々の抗体からのCDRを混合し、組み合わせることができるが、ただし各抗体はVH CDR1、CDR2およびCDR3ならびにVκ CDR1、CDR2およびCDR3を含まなければならない)、本開示の他の抗フコシルGM1結合分子を作製することができる。そのような「混合され、組み合わされた」抗体のフコシルGM1結合を、上述および実施例に記述された結合分析(例えばELISAおよびBiacore分析)を用いて、テストすることができる。好ましくは、VH CDR配列を混合し、組み合わせる場合は、特定のVH配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、構造上類似したCDR配列と置き換える。同様に、Vκ CDR配列を混合し、組み合わせる場合は、特定のVκ配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、好ましくは構造上類似したCDR配列と置き換える。1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を、モノクローナル抗体5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5について本明細書に開示されたCDR配列からの構造上類似した配列と置換することにより、新規なVHおよびVL配列を作製することができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0059】
したがって、別の局面では、本開示は、以下の領域を含む単離されたモノクローナル抗体(該抗体は、特異的にフコシルGM1に、好ましくはフコシルGM1に結合する)、またはその抗原結合部分を提供する:
(a) 配列番号:13、14、15、16、17および18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:19、20、21、22、23および24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:25、26、27、28、29および30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:31、32、33、34、35および36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:37、38、39、40、41および42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:43、44、45、46、47および48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0060】
好ましい態様では、抗体は以下の領域を含む:
(a) 配列番号:13を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:19を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:25を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:31を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:37を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:43を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0061】
別の好ましい態様では、抗体は以下の領域を含む:
(a) 配列番号:14を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:20を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:26を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:32を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:38を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:44を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0062】
別の好ましい態様では、抗体は以下の領域を含む:
(a) 配列番号:15を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:21を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:27を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:33を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:39を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:45を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0063】
別の好ましい態様では、抗体は以下の領域を含む:
(a) 配列番号:16を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:22を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:28を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:34を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:40を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:46を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0064】
別の好ましい態様では、抗体は以下の領域を含む:
(a) 配列番号:17を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:23を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:29を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:35を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:41を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:47を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0065】
別の好ましい態様では、抗体は以下の領域を含む:
(a) 配列番号:18を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:24を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:30を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:36を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:42を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:48を含む軽鎖可変領域CDR3。
【0066】
CDR3ドメインは、CDR1および/またはCDR2ドメインから独立して、単独で同種の抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができ、かつ共通のCDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有する複数の抗体を、予測通りに生成することができることは、当技術分野において周知である。例えば、Klimka et al., British J.of Cancer 83(2):252-260 (2000)(マウス抗CD30抗体Ki-4の重鎖可変ドメインCDR3のみを用いる、ヒト化抗CD30抗体の生成について記述する);Beiboer et al., J. Mol. Biol. 296:833-849 (2000)(親のマウスMOC-31抗EGP-2抗体の重鎖CDR3配列のみを用いた、組換え上皮糖タンパク質-2 (EGP-2)抗体を記述する);Rader et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8910-8915 (1998)(マウス抗インテグリンανβ3抗体LM609の重鎖および軽鎖の可変CDR3ドメインを用いた、一団のヒト化抗インテグリンανβ3抗体を記述する。該各メンバーの抗体は、CDR3ドメインの外側は別の配列を含み、親マウス抗体と同じエピトープに、親マウス抗体と同じかまたはそれより高い親和性で結合することができる);Barbas et al., J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162 (1994)(CDR3ドメインが抗原結合に最も大きく寄与することを開示する);Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:2529-2533 (1995)(ヒト胎盤DNAに対する3つのFab (SI-1、SI-40およびSI-32)の重鎖CDR3配列を、抗破傷風トキソイドFab重鎖上へ移植して、それにより既存の重鎖CDR3を置き換え、CDR3ドメインのみで結合特異性が与えられることを実証したことを記述している);およびDitzel et al., J. Immunol. 157:739-749 (1996)(親の多重特異的Fab LNA3の重鎖CDR3のみの、単一特異的IgGである破傷風トキソイド結合Fab p313抗体の重鎖への移転が、親Fabの結合特異性を保持するために十分であったという、移植研究について記述している)を参照のこと。これらの参照文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0067】
したがって、ある局面内では、本開示は、マウスまたはラット抗体などの非ヒト抗体由来の1つまたは複数の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むモノクローナル抗体を提供し、該モノクローナル抗体は、フコシルGM1に特異的に結合することができる。いくつかの態様内では、非ヒト抗体由来の1つまたは複数の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むそのような抗体は、対応する親の非ヒト抗体と、(a) 結合を競合することができる;(b) 機能的特性を維持する;(c) 同じエピトープに結合する;および/または(d) 同様の結合能を有する。
【0068】
他の局面においては、本開示は、第1のヒト抗体由来の(例えば非ヒト動物から得られたヒト抗体などの)1つまたは複数の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含む、モノクローナル抗体を提供する。ここで、該第1のヒト抗体はフコシルGM1に特異的に結合することができ、また該第1のヒト抗体由来のCDR3ドメインは、フコシルGM1に対する結合特異性を欠くヒト抗体中のCDR3ドメインと置き換わって、フコシルGM1に特異的に結合することができる第2のヒト抗体を生成する。いくつかの態様内では、第1のヒト抗体由来の1つまたは複数の重鎖および/または軽鎖CDR3ドメインを含むそのような本発明の抗体は、対応する親の第1のヒト抗体と、(a) 競合的に結合する;(b)機能的特性を維持する;(c) 同じエピトープに結合する;および/または(d) 同様の結合能を有することができる。
【0069】
特定の生殖細胞系列配列を有する抗体
ある態様では、本開示の抗体は、特定の生殖細胞系列重鎖免疫グロブリン遺伝子由来の重鎖可変領域、および/または特定の生殖細胞系列軽鎖免疫グロブリン遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
【0070】
例えば好ましい態様では、本開示は、ヒトVH 3-48遺伝子の産物であるかまたはヒトVH 3-48遺伝子に由来する重鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体(該抗体は、特異的にフコシルGM1に、好ましくはフコシルGM1に結合する)またはその抗原結合部分を提供する。別の好ましい実施態様では、本開示は、ヒトVK L15遺伝子の産物であるかまたはヒトVK L15遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体(該抗体は、特異的にフコシルGM1に、好ましくはフコシルGM1に結合する)、またはその抗原結合部分を提供する。さらに別の好ましい態様では、本開示は、以下のような単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する:
(a) ヒトVH 3-48遺伝子(この遺伝子は、配列番号:61に表されるアミノ酸配列をコードする)の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3-48遺伝子に由来する重鎖可変領域を含み;
(b) ヒトVK L15遺伝子(この遺伝子は、配列番号:62に表されるアミノ酸配列をコードする)の産物である軽鎖可変領域またはヒトVK L15遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含み;および
(c) フコシルGM1に特異的に結合する。
【0071】
VHおよびVKがそれぞれVH 3-48およびVK L15である抗体の例は、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5である。
【0072】
本明細書に用いられるヒト抗体は、抗体の可変領域が、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を用いるシステムから得られる場合は、特定の生殖細胞系列配列の「産物」であるか、またはその配列に「由来する」、重鎖または軽鎖可変領域を含む。そのようなシステムは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保持するトランスジェニックマウスを、関心対象の抗原によって免疫化する工程、あるいはファージ上に提示されているヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを、関心対象の抗原でスクリーニングする工程を含む。ヒト抗体のアミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、かつ配列がヒト抗体の配列に最も近い(すなわち最も大きな%同一性の)ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を選択することによって、そのヒト抗体が、選択されたヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか、またはその配列に「由来する」ものであると、同定することができる。特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか、またはその配列に「由来する」ヒト抗体は、生殖細胞系列配列と比較して、例えば自然に存在する体細胞突然変異または計画的な部位特異的突然変異の導入によるアミノ酸の差異を含む可能性がある。しかし、選択されたヒト抗体は、典型的にはアミノ酸配列において、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、また他の種(例えばマウスの生殖細胞系列配列)の生殖細胞系列免疫グロブリンアミノ酸配列と比較する場合、ヒト抗体を、ヒトのものであると識別するアミノ酸残基を含む。ある場合には、ヒト抗体は、アミノ酸配列において、少なくとも95%、あるいはさらに、少なくとも96%、97%、98%、または99%、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と同一である可能性がある。典型的には、特定のヒト生殖細胞系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、わずか10個程度のアミノ酸差異しか示さないであろう。ある場合には、ヒト抗体は、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、わずか5個程度、あるいはさらにわずか4個、3個、2個、または1個程度のアミノ酸差異しか示さないであろう。
【0073】
相同抗体
さらに別の実施態様では、本開示の抗体は、本明細書に記述された好ましい抗体(該抗体は、本開示の抗フコシルGM1抗体の望ましい機能特性を維持している)のアミノ酸配列に相同のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む。
【0074】
例えば本開示は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む以下のような単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する:
(a) 該重鎖可変領域は、配列番号:1、2、3、4、5および6からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同のアミノ酸配列を含み;
(b) 該軽鎖可変領域は、配列番号:7、8、9、10、11および12からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%相同のアミノ酸配列を含み;ならびに
該抗体は、次の特性の1つまたは複数を示す:
(c) 1×10-7Mまたはそれ未満のKDで、フコシルGM1に結合する;
(d) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する。
【0075】
他の態様では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、上述の配列に85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同である可能性がある。上述の配列のVHおよびVL領域に対して高い(すなわち80%またはそれ以上の)相同性を有するVHおよびVL領域を有する抗体を、配列番号:49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60をコードする核酸分子に突然変異を誘発することにより(例えば部位特異的突然変異誘発またはPCRによる突然変異誘発)、それに続いてコードされた改変抗体に機能(即ち、上の(c) および(d) に述べた機能)が維持されているかどうかを、本明細書に記述された機能分析を用いてテストすることにより、得ることができる。
【0076】
本明細書に用いられる、2つのアミノ酸配列間のパーセント相同性とは、2つの配列間のパーセント同一性と等価である。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップ数および各ギャップの長さを考慮に入れた、両配列が共有する同一位置の数の関数である(即ち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定を、数学的アルゴリズムを用いて、下の非限定的な例に述べるように、行うことができる。
【0077】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を、ALIGNプログラム(2.0版)に組み入れられた E. MeyersおよびW. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))のアルゴリズムを用い、PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを用いて、決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comにおいて利用可能)のGAPプログラムに組み入れられた NeedlemanおよびWunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムを用い、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重、および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用いて決定することができる。
【0078】
追加してまたは代わりに、本開示のタンパク質配列を、さらに公開データベースに対する探索を行うための「クエリー配列」として用いて、例えば、関連する配列を同定することができる。Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のXBLASTプログラム(2.0版)を用いて、そのような探索を行うことができる。XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)によって、BLASTタンパク質探索を行い、本開示の抗体分子に相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的のためのギャップ付きアラインメントを得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に述べられているGapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合には、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメーターを用いることができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと)。
【0079】
保存的修飾を有する抗体
ある態様では、本開示の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3の配列を含む重鎖可変領域、およびCDR1、CDR2およびCDR3の配列を含む軽鎖可変領域を含み、これらのCDR配列の1つまたは複数は、本明細書に記述される好ましい抗体(例えば、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8または18D5)に基づく指定されたアミノ酸配列あるいはそれらの保存的修飾を含み、またそれらの抗体は本開示の抗フコシルGM1抗体の望ましい機能特性を保持する。したがって本開示は、CDR1、CDR2およびCDR3の配列を含む重鎖可変領域、およびCDR1、CDR2およびCDR3の配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供し、ここで、
(a) 該重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:25、26、27、28、29、および30のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにその保存的修飾を含み;
(b) 該軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:43、44、45、46、47、および48のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにその保存的修飾を含み;かつ
その抗体は、次の特性の1つまたは複数を示す:
(c) フコシルGM1に特異的に結合する; および
(d) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する。
【0080】
好ましい態様では、重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:19、20、21、22、23、および24のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにその保存的修飾を含み;軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:37、38、39、40、41、および42のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにその保存的修飾を含む。別の好ましい実施態様では、重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:13、14、15、16、17、および18のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにその保存的修飾を含み;また軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:31、32、33、34、35、および36のアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびにその保存的修飾を含む。
【0081】
本明細書に用いられる用語「保存的配列修飾」とは、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を与えることも改変することもないアミノ酸修飾を指すものとする。そのような保存的修飾には、アミノ酸の置換、追加、および欠失が含まれる。本開示の抗体へ、部位特異的突然変異誘発およびPCRによる突然変異誘発などの当技術分野で公知の標準技術により、修飾を導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基と置き換えることができ、また本明細書に記述した機能分析を用いて、改変された抗体が、機能(即ち、上述の(c) および(d) の機能)を保持しているかをテストすることができる。
【0082】
本開示の抗フコシルGM1抗体と同じエピトープに結合する抗体
別の態様では、本開示は、任意の本開示のフコシルGM1モノクローナル抗体と同一のフコシルGM1上のエピトープに結合する抗体(すなわち、フコシルGM1への結合について、任意の本開示のモノクローナル抗体と交差競合する能力を有する抗体)を提供する。好ましい態様では、交差競合研究用の参照抗体は、モノクローナル抗体5B1 (配列番号:1および7にそれぞれ示されるVHおよびVL配列を有する)、モノクローナル抗体5B1a (配列番号:2および8にそれぞれ示されるVHおよびVL配列を有する)、またはモノクローナル抗体7D4 (配列番号:3および9にそれぞれ示されるVHおよびVL配列を有する)、またはモノクローナル抗体7E4 (配列番号:4および10にそれぞれ示されるVHおよびVL配列を有する)、またはモノクローナル抗体13B8 (配列番号:5および11にそれぞれ示されるVHおよびVL配列を有する)、あるいはモノクローナル抗体18D5 (配列番号:6および12にそれぞれ示されるVHおよびVL配列を有する)でよい。そのような交差競合する抗体を、標準フコシルGM1結合分析で、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5と交差競合するその能力に基づいて、同定することができる。例えば、本開示の抗体との交差競合を実証するために、BIAコア分析、ELISA分析、またはフローサイトメトリーを用いてもよい。テスト抗体が、例えば5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5のフコシルGM1への結合を阻害する能力は、テスト抗体が、フコシルGM1への結合を、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5と競合することができること、したがって5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8または18D5と同一のフコシルGM1上のエピトープに結合することを実証する。好ましい態様では、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5とフコシルGM1上の同じエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体を、実施例に述べるように調製し、単離することができる。
【0083】
遺伝子操作されかつ修飾された抗体
本明細書に開示されたVHおよび/またはVL配列の1つまたは複数を有する抗体を出発物質として用いて、遺伝子操作して、修飾された抗体を調製することができ、その修飾抗体は、出発抗体に比べて改変された特性を有するであろう。一方または両方の可変領域(即ちVHおよび/またはVL)内の、例えば1つまたは複数のCDR領域内の、および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の、1つまたは複数の残基の修飾により、抗体を遺伝子操作することができる。さらに、または代わりに、定常領域内の残基の修飾により抗体を遺伝子操作して、例えば抗体のエフェクター機能を改変することができる。
【0084】
実行することができる1つの型の可変領域遺伝子操作は、CDRの移植である。抗体は標的抗原と、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基によって相互作用する。この理由のために、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間でより多様である。CDR配列が、ほとんどの抗体抗原相互作用の原因であるので、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上に移植された特定の自然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構成することにより、特定の自然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが、可能である(例えば、Riechmann, L. et al. (1998) Nature 332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature 321:522-525; Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:10029-10033; Winterへの米国特許第5,225,539号、およびQueenらへの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照のこと)。
【0085】
したがって、本開示の別の態様は、配列番号:13、14、15、16、17および18からなる群、配列番号:19、20、21、22、23および24からなる群、ならびに配列番号:25、26、27、28、29および30からなる群よりそれぞれ選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号:31、32、33、34、35および36からなる群、配列番号:37、38、39、40、41および42からなる群、ならびに配列番号:43、44、45、46、47および48からなる群よりそれぞれ選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。したがってそのような抗体は、モノクローナル抗体5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5のVHおよびVLのCDR配列を含むが、しかし、これらの抗体と異なるフレームワーク配列を含んでいてもよい。
【0086】
そのようなフレームワーク配列を、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは刊行された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列を、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(インターネット上のwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで利用可能)、ならびに Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al. (1992) "The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops" J. Mol. Biol. 227:776-798; および Cox, J. P. L. et al. (1994) "A Directory of Human Germ-line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage" Eur. J. Immunol. 24:827-836 中に見出すことができ;それらの各々の内容は、参照により明確に本明細書に組み入れられる。別の例として、ヒト重鎖および軽鎖可変部領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列を、Genbankデータベース中に見出すことができる。例えば、HCo7 HuMAbマウスで発見された以下の重鎖生殖細胞系列配列が、次のGenbankアクセッション番号で利用可能である:1-69 (NG_0010109、NT_024637およびBC070333)、3-33 (NG_0010109およびNT_024637)、ならびに3-7(NG_0010109およびNT_024637)。別の例として、HCo12 HuMAbマウスで見出された以下の重鎖生殖細胞系列配列が、次のGenbankアクセッション番号で利用可能である:1-69 (NG_0010109、NT_024637およびBC070333)、5-51 (NG_0010109およびNT_024637)、4-34 (NG_0010109およびNT_024637)、3-30.3 (?)ならびに3-23 (AJ406678)。
【0087】
本開示の抗体に使用される好ましいフレームワーク配列は、本開示の選択された抗体によって用いられるフレームワーク配列に構造上似た、例えば、本開示の好ましいモノクローナル抗体によって用いられるVH 3-48フレームワーク配列(配列番号:61)および/またはVK L15フレームワーク配列(配列番号:62)に似た配列である。VH CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにVK CDR1、CDR2およびCDR3配列を、そのフレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子に見出されるフレームワーク配列と同一の配列を有するフレームワーク領域上に移植することができ、あるいは、CDR配列を、生殖細胞系列配列と比較して、1つまたは複数の突然変異を含むフレームワーク領域上に移植することもできる。例えば、場合によっては、フレームワーク領域内の残基を突然変異させることが、抗体の抗原結合能力を維持するかまたは増強するために有益であることが判明している(例えばQueenらへの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号、および第6,180,370号を参照のこと)。
【0088】
別の型の可変領域の修飾は、VHおよび/またはVK CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異させ、それにより関心対照の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば親和性)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはPCRによる突然変異誘発を行って突然変異を導入し、抗体結合または他の関心対象の機能特性に対する影響を、本明細書に記述され、実施例で提供されるインビトロまたはインビボの分析によって評価することができる。好ましくは保存的修飾(上に論じた)を導入する。突然変異は、アミノ酸の置換、付加、または欠失であってよいが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の、わずか1、2、3、4または5残基を改変する。
【0089】
したがって別の態様では、本開示は、以下の領域を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗フコシルGM1モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する:(a) 配列番号:13、14、15、16、17、および18からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号:13、14、15、16、17および18と比較して、1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換、欠失、または付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR1領域;(b) 配列番号:19、20、21、22、23および24からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは、配列番号:19、20、21、22、23および24と比較して、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR2領域;(c) 配列番号:25、26、27、28、29および30からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは、配列番号:25、26、27、28、29および30と比較して、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR3領域;(d) 配列番号:31、32、33、34、35および36からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号:31、32、33、34、35および36と比較して、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、VK CDR1領域;(e) 配列番号:37、38、39、40、41および42からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号:37、38、39、40、41および42と比較して、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、VK CDR2領域;および(f) 配列番号:43、44、45、46、47および48からなる群より選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号:43、44、45、46、47および48と比較して、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、VK CDR3領域。
【0090】
本開示の遺伝子操作された抗体には、例えば抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVK内のフレームワーク残基に修飾が行われたものが含まれる。そのようなフレームワーク修飾は、典型的には抗体の免疫原性を減少させるために行われる。例えば、1つの方法は、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列に「逆突然変異させる」ことである。より具体的には、体細胞突然変異を経た抗体は、その抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含む可能性がある。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより、同定することができる。
【0091】
例えば7E4については、VHのアミノ酸残基11番(FR1内)はセリンであるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列内のこの残基はロイシンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、体細胞突然変異を、例えば部位特異的突然変異誘発またはPCRによる突然変異誘発により生殖細胞系列配列へ「逆突然変異」させる(例えば、7E4のVHのFR1の残基11番をセリンからロイシンへと「逆突然変異」させる)ことができる。
【0092】
別の例として、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5については、VHのアミノ酸残基16番(FR1内)はグルタミン酸であるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列中のこの残基はグリシンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、例えば5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5のVHの残基16番をグルタミン酸からグリシンへと「逆突然変異」させることができる。そのような「逆突然変異された」抗体もまた本開示に包含されるものとする。
【0093】
別の例として、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5については、VHのアミノ酸残基23番(FR1内)はバリンであるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、例えば5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8および18D5のVHの残基23番をバリンからアラニンへと「逆突然変異」させることができる。そのような「逆突然変異された」抗体もまた本開示に包含されるものとする。
【0094】
別の例として、7D4については、VHのアミノ酸残基24番(FR1内)はバリンであるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列中のこの残基はアラニンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、例えば7D4のVHの残基24番をバリンからアラニンへと「逆突然変異」させることができる。そのような「逆突然変異された」抗体もまた本開示に包含されるものとする。
【0095】
別の例として、13B8については、VHのアミノ酸残基29番(FR1内)はロイシンであるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列中のこの残基はフェニルアラニンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、例えば13B8のVHの残基29番をロイシンからフェニルアラニンへと「逆突然変異」させることができる。そのような「逆突然変異された」抗体もまた本開示に包含されるものとする。
【0096】
別の例として、7D4、13B8、および18D5については、VHのアミノ酸残基48番(FR2内)はイソロイシンであるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列中のこの残基はバリンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、例えば7D4、13B8、および18D5のVHの残基48番(FR2内の残基13番)をイソロイシンからバリンへと「逆突然変異」させることができる。そのような「逆突然変異された」抗体もまた本開示に包含されるものとする。
【0097】
別の例として、7D4および18D5については、VHのアミノ酸残基84番(FR3内)はセリンであるが、一方、対応するVH 3-48生殖細胞系列配列中のこの残基はアスパラギンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列構成に戻すために、例えば7D4および18D5のVHの残基84番(FR3内の残基18番)をセリンからアスパラギンへと「逆突然変異」させることができる。そのような「逆突然変異された」抗体もまた開示に包含されるものとする。
【0098】
別の型のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去して、それにより抗体の潜在的免疫原性を減少させるために、フレームワーク領域内の、またはさらには1つまたは複数のCDR領域内の、1つまたは複数の残基を突然変異させることを含む。この手法は「脱免疫化」とも呼ばれ、Carrらによって米国特許出願公開第20030153043号にさらに詳細に記述されている。
【0099】
フレームワークまたはCDR領域内について行われる修飾に加えて、または代わりに、Fc領域内に修飾が含まれるように本開示の抗体を遺伝子操作して、典型的には、血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合、および/または、抗原依存性細胞障害性などの、抗体の1つまたは複数の機能特性を改変することができる。さらに、本開示の抗体を化学的に修飾して(例えば、抗体に1つまたは複数の化学部分を接着させることができる)、またはその糖鎖形成を改変する修飾をして、同様に抗体の1つまたは複数の機能特性を改変することができる。これらの態様の各々についてさらに詳細に以下に記述する。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatのEU指標の番号付けによる。
【0100】
1つの態様では、ヒンジ領域のシステイン残基の数が変わる(例えば、増加または減少する)ように、CH1のヒンジ領域を修飾する。この方法については、さらにBodmerらにより、米国特許第5,677,425号に述べられている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を改変して、例えば軽鎖と重鎖の会合を促進するか、または抗体の安定性を増加または減少させる。
【0101】
別の態様では、抗体の生物学的半減期を減少させるために、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させる。より具体的には、Fcヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン境界領域へ1つまたは複数のアミノ酸突然変異を導入することにより、抗体が、自然のFcヒンジドメインのブドウ球菌プロテインA (SpA)結合に比べて、損なわれたSpA結合を有するようにする。この手法については、米国特許第6,165,745号に、Wardらによってさらに詳細に述べられている。
【0102】
別の態様では、抗体は、その生物学的半減期を増大させるように修飾される。様々な手法が可能である。例えば、Wardに与えられた米国特許第6,277,375に述べられているように、突然変異T252L、T254S、T256Fの1つまたは複数を導入することができる。または、生物学的半減期を増大させるために、米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に、Prestaらによって述べられているように、抗体をCH1またはCL領域内で改変して、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージレセプター結合エピトープを含むようにすることができる。
【0103】
さらに他の態様では、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基に置き換えることにより、Fc領域を改変して、抗体のエフェクター機能を改変する。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320、および322のアミノ酸残基より選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えることにより、抗体は、エフェクターリガンドに対して改変された親和性を有するが、しかし親抗体の抗原結合能を保持するようにすることが可能である。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、例えばFcレセプター、または補体のC1成分であり得る。この方法は、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号の両方にWinterらによって、さらに詳細に記述されている。
【0104】
別の例では、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基と置き換えることにより、抗体のC1q結合を改変しおよび/または補体依存性細胞障害性(CDC)を減少または消滅させることができる。この手法は、米国特許第6,194,551号にIdusogieらにより、さらに詳細に述べられている。
【0105】
別の例では、アミノ酸位置231および239の1つまたは複数のアミノ酸残基を改変することにより、抗体の補体結合能力を改変する。この手法は、さらにPCT公報WO94/29351にBodmerらによって記述されている。
【0106】
さらに別の例では、以下に列挙する位置の1つまたは複数のアミノ酸を修飾することにより、Fc領域が修飾されて、抗体の抗体依存性細胞障害(ADCC)を仲介する能力が増大し、および/または、抗体のFcγレセプターに対する親和性が増大する:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438、または439。この手法はさらに、PCT公報WO00/42072にPrestaにより述べられている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、改善された結合を有する変異体が記述されている(Shields, R.L. et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604を参照のこと)。位置256、290、298、333、334、および339での特異的な突然変異が、FcγRIIIへの結合を改善することが示された。さらに、次の組み合せ突然変異体がFcγRIII結合を改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A、およびS298A/E333A/K334A。
【0107】
さらに別の態様では、抗体の糖鎖形成が修飾される。例えば、脱糖鎖された抗体(すなわち、抗体が糖鎖を欠く)を作製することができる。例えば、糖鎖形成を改変して、抗体の抗原に対する親和性を増大させることができる。そのような糖質修飾を例えば抗体配列内の1つまたは複数の糖鎖形成部位を改変することにより遂行することができる。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換を行い、その結果1つまたは複数の可変領域フレームワーク糖鎖形成部位の除去がもたらされ、それによりその部位での糖鎖形成を除去することができる。そのような脱糖鎖は、抗原に対する抗体の親和性を増大させる可能性がある。そのような手法が、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にCoらにより、さらに詳細に記述されている。
【0108】
さらに、またはかわりに、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体または二分岐GlcNac構造が増大した抗体などの、改変された型の糖鎖形成を有する抗体を作製することができる。そのような改変された糖鎖形成パターンは、抗体のADCC能力を増大させることが実証された。そのような糖質修飾を、例えば抗体を、改変された糖鎖形成機構を有する宿主細胞中で発現させることにより、遂行することができる。改変された糖鎖形成機構を備えた細胞が当技術分野において記述されており、それを本開示の組換え抗体を発現する宿主細胞として用いて、それにより改変された糖鎖形成を有する抗体を生成することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、その結果、Ms704、Ms705、およびMs709細胞株中で発現された抗体は、それらの糖質上のフコースを欠く。Ms704、Ms705、およびMs709のFUT8-/-細胞株を、2つの置き換えベクターを用いて、CHO/DG44細胞中のFUT8遺伝子の標的指向破壊により作製した(Yamaneらによる米国特許公開公報第20040110704号、およびYamane-Ohnuki et al. (2004) Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照のこと)。別の例として、Hanaiらによる欧州特許第1,176,195号は、機能的に破壊されたFUT8遺伝子(フコシルトランスフェラーゼをコードする)を有する細胞株について、そのような細胞株で発現される抗体は、α1,6結合関連酵素の減少かまたは除去により、低フコシル化を示すと記述している。Hanaiらはまた、抗体のFc領域に結合しているN-アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素活性が低いかまたは酵素活性を有しない細胞株、例えばラットミエローマ細胞株YB2/0 (ATCC CRL 1662)、について記述している。PrestaによるPCT公報WO03/035835は、アスパラギン(Asn)(297)に連結された糖質にフコースを付着させる能力が低下した変異CHO細胞株、Lec13細胞でもまた、それを宿主細胞として発現された抗体の低フコシル化が起こると記述している(さらにShields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-2674Oを参照のこと)。UmanaらによるPCT公報WO99/54342は、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII (GnTIII))を発現するように遺伝子操作された細胞株について、この遺伝子操作された細胞株中で発現された抗体は、二分岐GlcNac構造の増加を示し、それは抗体のADCC活性の増大に帰着すると記述している(Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-180 も参照のこと)。または、フコシダーゼ酵素を用いて抗体のフコース残基を切断して除いてもよい。例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を取り除く(Tarentino, A.L. et al. (1975) Biochem. 14:5516-23)。
【0109】
本開示によって考慮される本明細書の抗体の別の修飾は、PEG化である。例えば、抗体をPEG化して、抗体の生物学的(例えば血清)半減期を増大させることができる。抗体をPEG化するために、抗体またはその断片を、典型的には、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に接着されるような条件下で反応させる。好ましくはPEG化を、反応性PEG分子(あるいは類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行う。本明細書に用いる用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために用いられてきた、例えばモノ(C1〜C10)アルコキシ-、もしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどの、任意のPEGの形を包含するものとする。ある態様では、PEG化される抗体は、脱糖鎖された抗体である。タンパク質をPEG化する方法は当技術分野において公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、Nishimuraらによる欧州特許第0154316号およびIshikawaらによる欧州特許第0401384号を参照のこと。
【0110】
抗体を遺伝子操作する方法
上に論じたように、本明細書に開示するVHおよびVK配列を有する抗フコシルGM1抗体を用いて、VHおよび/またはVK配列、またはそれに接着された定常領域の修飾によって、新しい抗フコシルGM1抗体を作製することができる。したがって、本開示の別の局面では、本開示の抗フコシルGM1抗体(例えば、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5)の構造的特徴を用いて、例えばフコシルGM1への結合などの、本開示の抗体の少なくとも1つの機能特性を保持している構造上関連する抗フコシルGM1抗体を作製する。例えば、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8または18D5の1つまたは複数のCDR領域、またはそれらの突然変異体を、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換えによって組み合わせて、新たな、遺伝子組換え技術によって作られた本開示の抗フコシルGM1抗体を、上に論じたように作製することができる。他の型の修飾には、前の節に述べたものが含まれる。遺伝子操作のための出発物質は、本明細書に提供される1つまたは複数のVHおよび/またはVK配列、あるいはそれらの1つまたは複数のCDR領域である。遺伝子操作された抗体を作製するために、本明細書に提供される1つまたは複数のVHおよび/またはVK配列を有する抗体、あるいはそれの1つまたは複数のCDR領域を、実際に調製すること(即ちタンパク質として発現させること)は必要ではない。むしろ、配列に含まれる情報を、元の配列に由来する「第二代」配列を作製するための出発物質として用い、次に「第二代」配列を調製して、タンパク質として発現させる。
【0111】
したがって、別の態様では、本開示は、以下の工程を含む、抗フコシルGM1抗体を調製する方法を提供する:
(a) (i) 配列番号:13、14、15、16、17および18からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号:19、20、21、22、23および24からなる群より選択されるCDR2配列、および/または、配列番号:25、26、27、28、29および30からなる群より選択されるCDR3配列を含む、重鎖可変領域抗体配列;ならびに/あるいは(ii) 配列番号:31、32、33、34、35および36からなる群より選択されるCDR1配列、配列番号:37、38、39、40、41および42からなる群より選択されるCDR2配列、および/または配列番号:43、44、45、46、47および48からなる群より選択されるCDR3配列を含む、軽鎖可変領域抗体配列を提供する工程;
(b) 重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列の中の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変して、少なくとも1つの改変された抗体配列を作製する工程;ならびに
(c) 改変された抗体配列をタンパク質として発現させる工程。
【0112】
改変された抗体配列を調製し発現するために標準的分子生物学技術を用いることができる。
【0113】
好ましくは、改変された抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書に記述された抗フコシルGM1抗体の機能特性の1つ、いくつか、またはすべてを保持する抗体であり、その機能特性は以下の性質を非限定的に含む:
(a) 抗体は、1×10-7Mまたはそれ未満のKDでフコシルGM1に結合する;
(b) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79(ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する。
【0114】
改変された抗体の機能特性を、当技術分野において利用可能な、および/または実施例において述べるものなど本明細書に記述する、標準の分析法(例えばフローサイトメトリー、結合分析)を用いて評価することができる。
【0115】
本開示の抗体を遺伝子操作する方法のある態様においては、抗フコシルGM1抗体のコード配列の全体または一部に沿って、突然変異を無作為にまたは選択的に導入することができ、またその結果生じる修飾された抗フコシルGM1抗体を、結合活性および/または本明細書に記述する他の機能特性について、スクリーニングすることができる。突然変異の方法は、当技術分野において記述されている。例えば、ShortによるPCT公報WO02/092780に、抗体突然変異を、飽和突然変異誘発、人工ライゲーション組み立て、またはそれらの組合せを用いて、作製しかつスクリーニングする方法が記述されている。または、LazarらによるPCT公報WO03/074679は、計算機スクリーニング法を用いて抗体の生理化学的特性を最適化する方法について記述している。
【0116】
本開示の抗体をコードする核酸分子
本開示の別の局面は、本開示の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、細胞全体に、細胞溶解物中に、あるいは部分的に精製されたかまたは実質的に純粋な形で存在する可能性がある。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフイー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野において周知のその他を含む標準技術により、他の細胞構成要素または他の混入物質(例えば細胞の他の核酸、タンパク質)から分離して精製された時に「単離され」または「実質的に純粋にされ」ている。F. Ausubel et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照のこと。本開示の核酸は、例えばDNAまたはRNAであってよく、イントロン配列を含んでもよく、含まなくてもよい。好ましい態様では、核酸はcDNA分子である。
【0117】
本開示の核酸を、標準の分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、さらに以下に記述するヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体の場合は、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAを、標準のPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えばファージディスプレー技術を用いる)から得られる抗体については、抗体をコードする核酸をライブラリーから取り出すことができる。
【0118】
好ましい本開示の核酸分子は、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、または18D5モノクローナル抗体のVHおよびVL配列をコードする核酸分子である。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5のVH配列をコードするDNA配列をそれぞれ、配列番号:49、50、51、52、53および54に示す。5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5のVL配列をコードするDNA配列をそれぞれ、配列番号:55、56、57、58、59および60に示す。
【0119】
VHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られれば、これらのDNA断片を標準の組換DNA技術によりさらに操作して、例えば可変領域遺伝子を、全長の抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子、またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNA断片を、例えば抗体定常領域または柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に、機能的に連結する。このような文脈で用いる用語「機能的に連結する」とは、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームに保持されるように2つのDNA断片を連結することを意味するものとする。
【0120】
VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することにより、VH領域をコードする単離されたDNAを全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野において公知であり(例えば Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片を、標準のPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgDの定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1またはIgG4の定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子のために、VHをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能的に連結することができる。
【0121】
VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能的に連結することにより、VL領域をコードする単離されたDNAを全長の軽鎖遺伝子に(ならびにFab軽鎖遺伝子に)変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野において公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242を参照のこと)、標準のPCR増幅によりこれらの領域を包含するDNA断片を得ることができる。軽鎖定常領域はκまたはλ定常領域であり得るが、最も好ましくはκ定常領域である。
【0122】
scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする(例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする)別の断片に機能的に連結することにより、VHおよびVL配列を、連続する一本鎖タンパク質として(VHおよびVL領域は柔軟なリンカーによって連結されて)発現させることができる(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554を参照のこと)。
【0123】
本開示のモノクローナル抗体の産生
本開示のモノクローナル抗体(mAb)を、従来のモノクローナル抗体法を含む様々な技術、例えばKohler and Milstein (1975) Nature 256:495の標準体細胞ハイブリダイゼーション技術によって産生することができる。体細胞雑種形成法が好まれるが、原理的にモノクローナル抗体を産生するための他の技術、例えばBリンパ球のウイルスまたは腫瘍による形質転換を採用することもできる。
【0124】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、マウスの系である。マウスでのハイブリドーマ生成は、極めてよく確立している手順である。免疫化プロトコル、および免疫化された脾細胞を融合のために単離する技術は、当技術分野において公知である。融合の相手(例えばマウスミエローマ細胞)および融合手順もまた公知である。
【0125】
上述のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて、本開示のキメラまたはヒト化抗体を調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを、関心対象のマウスハイブリドーマから得て、標準の分子生物技術を用いて遺伝子操作し、非マウス(例えばヒト)の免疫グロブリン配列を含ませることができる。例えばキメラ抗体を作製するために、当技術分野で公知の方法を用いて、マウス可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらへの米国特許第4,816,567号を参照のこと)。ヒト化抗体を作製するために、当技術分野で公知の方法を用いて、マウスCDR領域をヒトのフレームワーク中に挿入することができる(例えばWinterへの米国特許第5,225,539号;およびQueenらへの、米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照のこと)。
【0126】
好ましい態様では、本開示の抗体はヒトモノクローナル抗体である。フコシルGM1に向けられたそのようなヒトモノクローナル抗体を、マウス系ではなくヒト免疫系の諸要素を有する、トランスジェニックマウスまたは染色体組換えマウスを用いて生成することができる。これらのトランスジェニックマウスおよび染色体組換えマウスには、HuMAbマウスおよびKMマウス(商標)とそれぞれ本明細書で呼ばれる、かつまとめて本明細書で「ヒトIgマウス」と呼ばれるマウスが含まれる。
【0127】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ座位を、内在的なμおよびκ鎖座位を不活性化する標的指向突然変異と共に含む(例えば、Lonberg, et al. (1994) Nature 368(6474):856-859を参照のこと)。したがって、そのマウスは、マウスIgMおよびκの発現低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子が、クラス切り替えおよび体細胞突然変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモロクローナルを生成する(Lonberg, N. et al. (1994), 上記; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101に概説されている; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol, 13:65-93, およびHarding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMabマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスが有するゲノムの修飾については、さらにTaylor, L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al. (1993) International Immunology 5:647-656; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al. (1993) EMBO J. 12:821-830; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6:579-591; および Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に述べられており、それらのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み入れられる。さらに、すべて Lonberg および Kayへの米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,874,299号;および第5,770,429号;Suraniらへの米国特許第5,545,807号;すべてLonbergおよびKayへのPCT公報WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884、およびWO99/45962;およびKormanらへのPCT公報WO01/14424を参照のこと。
【0128】
別の態様では、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスなどの、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウスを用いて、本開示のヒト抗体を生成することができる。本明細書で「KMマウス(商標)」と呼ばれるそのようなマウスについて、IshidaらへのPCT公報WO02/43478に詳細に述べられている。
【0129】
またさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランスジェニック動物系が、当技術分野において利用可能であり、本開示の抗フコシルGM1抗体を生成するために用いることができる。例えば、ゼノマウス(Abgenix, Inc.)と呼ばれる別のトランスジェニック系を用いることができ、そのようなマウスが、例えばKucherlapatiらへの米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,114,598号;第6,150,584号および第6,162,963号に述べられている。
【0130】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別の染色体組換え動物系が当技術分野において利用可能であり、本開示の抗フコシルGM1抗体を生成するために用いることができる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を有するマウスを用いることができる;そのようなマウスが、Tomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci USA 97:722-727 に記述されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖導入染色体を有するウシが当技術分野において記述されており(Kuroiwa et al. (2002) Nature Biotechnology 20:889-894)、本開示の抗フコシルGM1抗体を生成するために用いることができる。
【0131】
本開示のヒトモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレー法を用いて調製することもまた可能である。ヒト抗体を単離するための、そのようなファージディスプレー法が、当技術分野において確立されている。例えば、Ladnerらへの米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;および第5,571,698号;Dowerらへの米国特許第5,427,908号、および第5,580,717号;McCaffertyらへの米国特許第5,969,108号および第6,172,197号;ならびに Griffithsらへの米国特許第5,885,793号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号、および第6,593,081号を参照のこと。
【0132】
免疫処置することによってヒトの抗体反応を生成させることができるように、ヒト免疫細胞が体内に再構成されているSCIDマウスを用いて、本開示のヒトモノクローナル抗体を調製することもまた可能である。そのようなマウスが、例えばWilsonらへの米国特許第5,476,996号および第5,698,767号に記述されている。
【0133】
ヒトIgマウスの免疫化
ヒトIgマウスを用いて本開示のヒト抗体を生成する場合は、そのようなマウスを、Lonberg, N. et al. (1994) Nature 368(6474):856-859; Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851; およびPCT公報WO98/24884、WO01/14424に記述されているように、フコシルGM1抗原および/または組換えフコシルGM1あるいはフコシルGM1融合タンパクの精製されたまたは濃縮された調製物で免疫化することができる。好ましくは、マウスは、最初の注入の際に6〜16週齢であろう。例えば、フコシルGM1抗原の精製または組換え調製物(5〜50μg)を用いて腹腔内接種し、ヒトIgマウスを免疫化することができる。
【0134】
フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体を完全に生成する詳細な手順が、以下の実施例1に記述される。様々な抗原について累積された経験によって、トランスジェニックマウスが、最初に完全フロイントアジュバント中の抗原で腹腔内(IP)接種により免疫化し、それに続いて隔週に不完全フロイントアジュバント中の抗原でIPに免疫化した(合計6回まで)場合に、応答することが示されている。しかし、フロイント以外のアジュバントも有効であることが判明している。さらに、全細胞は、アジュバントがない状態で高度に免疫原性であることが判明している。免疫応答を、免疫化プロトコルの全過程に亘って、眼窩後出血によって得られる血漿試料によりモニターすることができる。血漿をELISAによりスクリーニングすることができ(以下に述べるように)、十分な力価の抗フコシルGM1ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合に用いることができる。マウスを抗原の静脈内接種によりブーストし、その3日後に屠殺して脾臓を取り出すことができる。各免疫化につき2〜3回の融合を行う必要があるであろうと予想される。6〜24匹のマウスが、典型的には各抗原について免疫化される。通常、HCo7およびHCo12系統の両方が用いられる。さらに、HCo7およびHCo12導入遺伝子の両方を共に導入して、2つの異なるヒト重鎖導入遺伝子を有する単一のマウス(HCo7/HCol2)を作ることもできる。かわりにまたは追加して、実施例1に述べるように、KMマウス(商標)系統を用いることもできる。
【0135】
本開示のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
本開示のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化されたマウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離して、マウスミエローマ細胞株などの適切な不死化細胞株に融合させることができる。その結果生じたハイブリドーマを、抗原特異性抗体の産生について、スクリーニングすることができる。例えば、免疫化されたマウスからの脾リンパ球の単個細胞浮遊液を、6分の1の数のP3X63-Ag8.653非分泌性マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL 1580)に、50% PEGで融合させることができる。または、免疫化されたマウスからの脾リンパ球の単個細胞懸濁液を、Cyto Pulse大チェンバー細胞融合エレクトロポレーター(Cyto Pulse Sciences, Inc., Glen Burnie, MD)を用いる電場による電気融合法を用いて、融合させることができる。細胞を、平底マイクロタイタープレートにおよそ2×105個プレートし、続いてL-グルタミンおよびピルビン酸ナトリウム(Mediatech, Inc., Herndon, VA)を含み、さらに20%ウシ胎児血清(Hyclone, Logan, UT)、18% P388DI調整培地、5%オリゲン(Origen)ハイブリドーマクローニング因子(BioVeris, Gaithersburg, VA)、4mM L-グルタミン、5mM HEPES、0.055mM β-メルカプトエタノール、50単位/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシンおよびよび1×ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地(Sigma;HATは融合の24時間後に加える)を含む、DMEM高グルコース培地中で1週間インキュベートする。1週間後に、HATを用いた培地中で培養された細胞を、HTと置き換えた。次に個々のウエルをELISAによりヒトモロクローナルIgMおよびIgG抗体についてスクリーニングすることができる。大規模なハイブリドーマの成長が生じたら、通常10〜14日後に培地を観察すればよい。抗体を分泌するハイブリドーマを再プレートし、再びスクリーニングし、依然としてヒトIgGについて陽性である場合には、モノクローナル抗体を、限界希釈法により、少なくとも2回サブクローニングすることができる。次に安定したサブクローンをインビトロで培養して、特徴決定用に少量の抗体を組織培養培地中に生成することができる。
【0136】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用の2リットルのスピナーフラスコ中で成長させることができる。上清を濾過して濃縮し、その後プロテインA-セファロース(Pharmacia, Piscataway, N.J.)によるアフィニティークロマトグラフィーを行うことができる。溶出したIgGを、純度を保証するために、ゲル電気泳動法および高速液体クロマトグラフィーによってチェックすることができる。緩衝液をPBSへ交換し、OD280で1.43の吸光係数を用いて濃度を決定することができる。モノクローナル抗体を小分けにし、-80℃で保存する。
【0137】
本開示のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成
本開示の抗体を、例えば、当技術分野において周知の組換DNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ中で生成することもまた可能である(例えば、Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。
【0138】
例えば、抗体またはその抗体断片を発現するために、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAを、標準の分子生物学的技術(例えば関心対象の抗体を発現するハイブリドーマを用いるPCR増幅またはcDNAクローニング)によって得ることができ、また、そのDNAを、遺伝子が転写および翻訳の制御配列に機能的に連結されるように、発現ベクターに挿入することができる。この文脈では、用語「機能的に連結される」とは、ベクター内の転写および翻訳の制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する、その意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中へライゲーションされることを意味するものとする。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選ばれる。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を、個別のベクターに挿入することができ、あるいは、より典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子を発現ベクター中に、標準的方法(例えば抗体遺伝子断片とベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は、平滑端ライゲーション)によって挿入する。本明細書に記述される抗体の軽鎖および重鎖可変領域を用いて、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター中に、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに機能的に連結され、VKセグメントがベクター内のCLセグメントに機能的に連結されるように、それらを挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作製することができる。さらにまたは代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドを、コードすることができる。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームに連結されるように、抗体鎖遺伝子を、ベクター中へクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは非相同のシグナルペプチド(すなわち非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0139】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中の抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」には、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)が含まれるものとする。そのような調節配列が、例えばGoeddel (Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)) に記述されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等などの因子に依存するであろうことは、当業者には当然であろう。哺乳動物宿主細胞発現用の好ましい調節配列には、サイトメガロウィルス(CMV)、シミアンウィルス40 (SV40)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマウイルスに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの哺乳動物細胞での高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス構成要素が含まれる。または、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーターのような非ウイルス調節配列を用いてもよい。さらにまた、調節エレメントは、SV40初期プロモーター由来の配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列を含むSRαプロモーターシステムなどの種々の供給源由来の配列から成る(Takebe, Y. et al (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0140】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でベクターの複製を調節する配列(例えば複製開始点)および選択可能なマーカー遺伝子などの追加の配列を有してもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216号、第4,634,665号、および第5,179,017号を参照のこと)。例えば典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキセートなどの薬物に対する抵抗性を与える。好ましい選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr-宿主細胞中でのメトトレキセートによる選択/増幅に使用するための)およびneo遺伝子(G418選択用)が含まれる。
【0141】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、宿主細胞へ標準的技術によってトランスフェクションする。用語「トランスフェクション」の様々な形は、外来性DNAの原核生物または真核生物の宿主細胞中への導入に一般に用いられる種々様々の技術(例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクション等)を包含するものとする。本開示の抗体は、原核生物または真核生物のどちらの宿主細胞中でも発現されることが理論上可能であるが、真核細胞中の、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞中の抗体の発現が最も好ましい、何故ならそのような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、適切に折り畳まれ免疫学的活性を有する抗体を組立てて分泌する可能性が原核細胞より高いからである。抗体遺伝子の原核生物での発現は、活性抗体の高収率の産生には効果がないことが報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R. (1985) Immunology Today 6:12-13)。
【0142】
本開示の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621)に述べられているDHFR選択可能マーカーと共に用いられる、Urlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記述されたdhfr-CHO細胞を含む)、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。特にNSOミエローマ細胞を使用するための別の好ましい発現系が、WO87/04462、WO89/01036、およびEP338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合は、宿主細胞中の抗体の発現を、またはより好ましくは宿主細胞が成長する培地中への抗体の分泌を可能にするために十分な期間だけ宿主細胞を培養することによって抗体を生成する。抗体を、標準のタンパク質精製法を用いて、培地から回収ことができる。
【0143】
抗原への抗体結合の特徴付け
本開示の抗体を、フコシルGM1への結合について、例えば標準のELISAによってテストすることができる。簡潔に述べれば、マイクロタイタープレートを、PBS中の0.25μg/mlの精製フコシルGM1でコートし、次に、PBS中の5%ウシ血清アルブミンでブロックする。抗体の稀釈液(例えばフコシルGM1で免疫化したマウスから得た血漿の稀釈液)を各ウエルに加えて、37℃で1〜2時間インキュベートする。PBS/ツイーンでプレートを洗浄し、次にアルカリフォスファターゼに接合された、第2の試薬(例えばヒト抗体の場合は、ヤギ抗ヒトIgGFc特異的なポリクローナル試薬)と37℃で1時間インキュベートする。洗浄後、プレートをpNPP基質(1mg/ml)で発色させ、405〜650のODで解析する。好ましくは、最も高い力価を示すマウスを融合に用いることにする。
【0144】
上述のELISA分析を用いて、フコシルGM1免疫原と陽性反応性を示すハイブリドーマをスクリーニングすることができる。フコシルGM1へ高い結合力で結合するハイブリドーマをサブクローニングし、さらに特徴付けを行う。各ハイブリドーマから親細胞の反応性を保持している(ELISAによる) 1つのクローンを選択して、5〜10個のバイアル瓶の細胞バンクを作製して-140℃で保存し、また抗体精製を行う。
【0145】
抗フコシルGM1抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用の2リットルのスピナーフラスコ中で成長させることができる。上清を濾過して濃縮し、その後プロテインA-セファロース(Pharmacia, Piscataway, NJ)によるアフィニティークロマトグラフィーを行うことができる。溶出されたIgGを、ゲル電気泳動法および高速液体クロマトグラフィーによってチェックして、純度を確かめることができる。緩衝溶液をPBSへ交換し、OD280で1.43の吸光係数を用いて濃度を決定することができる。モノクローナル抗体を小分けにし、-80℃で保存することができる。
【0146】
選択された抗フコシルGM1モノクローナル抗体が独自のエピトープに結合するかどうかを判定するために、市販の試薬(Pierce, Rockford, IL)を用いて、各抗体をビオチン化することができる。未ラベルのモノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を用いる競合試験を、上述のフコシルGM1でコートされたELISAプレートを用いて行うことができる。ビオチン化mAbの結合を、ストレプトアビジンアルカリホスファターゼプローブで検出することができる。
【0147】
精製された抗体のアイソタイプを決定するために、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いて、アイソタイプELISAを行うことができる。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウエルを、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで、4℃で終夜コートすることができる。1% BSAでブロックした後、プレートを、1μg/mlまたはそれ未満のテストモノクローナル抗体または精製されたアイソタイプ対照と周囲温度で1〜2時間反応させる。次にウエルを、ヒトIgG1またはヒトIgMに特異的なアルカリフォスファターゼ接合プローブのいずれかと反応させることができる。プレートを上述のように発色させて解析する。
【0148】
抗フコシルGM1ヒトIgGを、さらにフコシルGM1抗原との反応性について、ウェスタンブロッティングによってテストすることができる。簡潔に述べれば、フコシルGM1を調製して、硫酸ドデシルナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法に付する。電気泳動の後、分離された抗原をニトロセルロースメンブレンに移し、10%のウシ胎仔血清でブロックし、テストされるモノクローナル抗体で探査する。ヒトIgG結合を、抗ヒトIgGアルカリフォスファターゼを用い、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem. Co., St. Louis, Mo.)で発色させて検出することができる。
【0149】
免疫接合体
別の局面では、本開示は、細胞毒素、薬物(例えば免疫抑制剤)、または放射性毒素などの治療性部分に接合された抗フコシルGM1抗体またはその断片を特色とする。そのような接合体を、本明細書では「免疫接合体」と呼ぶ。1つまたは複数の細胞毒素を含む免疫接合体を「免疫毒素」と呼ぶ。細胞毒素または細胞障害性薬剤には、細胞に有害な(例えば死滅させる)任意の薬剤が含まれる。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または同族体が含まれる。治療薬には、さらに例えば、代謝拮抗剤(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル デカルバジン(decarbazine))、およびアルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ(thioepa) クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0150】
本開示の抗体に接合することができる治療用細胞毒素の他の好ましい例には、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシン、およびオーリスタチン(auristatin)、ならびにそれらの誘導体が含まれる。カリケアマイシン抗体接合体の一例が、市販されている(Mylotarg(商標);Wyeth-Ayerst)。治療用細胞毒素の例は、米国特許第6548530号および第6281354号、ならびに米国特許出願のUS2003/0064984、US2003/0073852、およびUS2003/0050331に、例えば見出されるであろう。
【0151】
細胞毒素は、当技術分野において利用可能なリンカー技術を用いて、本開示の抗体に接合することができる。抗体へ細胞毒素を接合するために用いられるリンカー型の例には、ヒドラゾン、チオエテール、エステル、ジスルフィド、およびペプチドを含むリンカーが非限定的に含まれる。リンカーを、例えばリソソーム区画内の低pHによる切断を受けやすいもの、またはカテプシン(例えばカテプシンB、C、D)などの腫瘍組織で優先的に発現されるプロテアーゼなどの、プロテアーゼによる切断を受けやすいものから選ぶことができる。
【0152】
細胞毒素の型、リンカー、および治療薬剤を抗体へ接合するための方法のさらなる考察については、さらにSaito, G. et al. (2003) Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215; Trail, P.A. et al. (2003) Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337; Payne, G. (2003) Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan, I. and Kreitman, R. J. (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091; Senter, P.D. and Springer, C.J. (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264を参照のこと。
【0153】
本開示の抗体を、さらに放射性同位体に接合して、放射性免疫接合体とも呼ばれる細胞障害性の放射性薬剤を生成することができる。診断用にまたは治療用に使用するために抗体に接合される放射性同位体の例には、非限定的に、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、およびルテチウム177が含まれる。放射性免疫接合体を調製する方法は、当技術分野において確立されている。放射性免疫接合体の例が市販されており、それにはZevalin(商標)(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa Pharmaceuticals)が含まれ、また、本開示の抗体を用い、同様の方法を用いて放射性免疫接合体を調製することができる。
【0154】
本開示の抗体接合体を用いて、所与の生体応答を修飾することができ、また薬剤部分は古典的化学治療薬に限定されると解釈するべきではない。例えば、薬剤部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってよい。そのようなタンパク質は、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素もしくはジフテリア毒素などの、酵素活性を有する毒素またはその活性断片;腫瘍壊死因子またはインターフェロン-γなどのタンパク質;あるいは、例えば、リンホカイン、インターロイキン1 (「IL-1」)、インターロイキン2 (「IL-2」)、インターロイキン6 (「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)または他の成長因子などの生体応答調節因子を含む。
【0155】
そのような治療用部分を抗体へ接合するための技術は周知であり、例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp.243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp.623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review", in Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); "Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985), および Thorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982) を参照のこと。
【0156】
二重特異性分子
別の局面では、本開示は、本開示の抗フコシルGM1抗体またはその断片を含む二重特異性分子を特色とする。本開示の抗体またはその抗原結合部分を誘導体化するか、または別の機能分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えば別の抗体またはレセプターのリガンド)に連結して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。実際、本開示の抗体を誘導化するか、または1つより多い他の機能分子へ連結して、2つより多い異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を生成してもよく、そのような多重特異性分子はまた、本明細書に用いる用語「二重特異性分子」に包含されるものとする。本開示の二重特異性分子を作製するために、本開示の抗体を、二重特異性分子をもたらすように、別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合模倣物などの、1つまたは複数の他の結合分子に、機能的に連結することができる(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合による結合、または他の方式によって)。
【0157】
したがって、本開示には、少なくともフコシルGM1用の第1の結合特異性部および第2の標的エピトープ用の第2の結合特異性部を含む、二重特異性分子が含まれる。本開示の特定の態様では、第2の標的エピトープは、Fcレセプター、例えばヒトFcγRI (CD64)またはヒトFcαレセプター(CD89)である。したがって、本開示には、FcγRまたはFcαRを発現しているエフェクター細胞(例えば単球、マクロファージ、または多形核白血球(PMN))およびフコシルGM1を発現している標的細胞の両方に結合することができる二重特異性分子が含まれる。これらの二重特異性分子は、フコシルGM1を発現している細胞をエフェクター細胞へ指向させ、フコシルGM1を発現している細胞の食細胞活動、抗体依存性細胞障害(ADCC)、サイトカイン放出、またはスーパーオキシドアニオンの生成などの、Fcレセプターに媒介されるエフェクター細胞活動をトリガーする。
【0158】
二重特異性分子が多重特異的である本開示の態様では、分子は、抗Fc結合特異性部および抗フコシルGM1結合特異性部に加えて、さらに第3の結合特異性部を含むことができる。1つの態様では、第3の結合特異性部は、抗増強因子(EF)部分、例えば細胞障害性活性に関連する表面タンパク質に結合してそれにより標的細胞に対する免疫応答を増加させる分子である。「抗増強因子部分」は、所与の分子、例えば抗原またはレセプターに結合して、それによりFcレセプターまたは標的細胞抗原に対する結合決定因子の効果の増強をもたらす、抗体、機能的抗体断片またはリガンドであり得る。「抗増強因子部分」は、Fcレセプターまたは標的細胞抗原を結合することができる。または、抗増強因子部分は、第1および第2の結合特異性が結合する実体とは異なる実体に結合することができる。例えば、抗増強因子部分は、細胞障害性T細胞に結合することができる(例えばCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM-1を介して、または標的細胞に対する免疫応答の増大をもたらす他の免疫細胞に)。
【0159】
1つの態様では、本開示の二重特異性分子は、結合特異性部として、少なくとも1つの抗体、または例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fv、または一本鎖Fvを含むその抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖または重鎖の二量体、またはFvまたはLadnerらの米国特許第4,946,778号(その内容は参照により明確に本明細書に組み入れられる)に述べられている一本鎖コンストラクトなどのそれらの任意の最小断片であってよい。
【0160】
1つの態様では、モノクローナル抗体により、Fcγレセプターに対する結合特異性部が提供され、その結合は、ヒト免疫グロブリンG (IgG)によってブロックされない。本明細書に用いる用語「IgGレセプター」とは、染色体1上に位置する8個のγ-鎖遺伝子のうちの任意のものを指す。これらの遺伝子は、FcγRI (CD64)、FcγRII (CD32)およびFcγRIII (CD16)の3つのFcγレセプターのクラスに分類される合計12の膜貫通のまたは可溶性のレセプターアイソフォームをコードする。1つの好ましい態様では、Fcγレセプターは、ヒト高親和性FcγRIである。ヒトFcγRIは、72kDaの分子であり、それが、モノマーのIgGに対して高い親和性(108〜109 M-1)を示す。
【0161】
ある好ましい抗Fcγモノクローナル抗体の産生および特徴付けが、FangerらによりPCT公報WO88/00052および米国特許第4,954,617号に述べられている(それらの教示は参照により完全に本明細書に組み入れられる)。これらの抗体は、レセプターのFcγ結合部位とは明らかに異なる部位で、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIIIのエピトープに結合する。したがってそれらの結合は、生理的なレベルのIgGによって実質的にブロックされない。本開示において役立つ特異的抗FcγRI抗体は、mAb22、mAb32、mAb44、mAb62、およびmAb197である。mAb32を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collectionから、ATCCアクセッション番号HB9469で利用可能である。他の態様では、抗Fcγレセプター抗体は、モノクローナル抗体22のヒト化型(H22)である。H22抗体の産生および特徴付けについて、Graziano, R.F. et al (1995) J. Immunol 155(10):4996-5002 およびPCT公報WO94/10332に述べられている。H22抗体産生細胞株は、American Type Culture Collectionに、指定HA022CL1で委託され、アクセッション番号CRL11177を有する。
【0162】
さらに別の好ましい態様では、Fcレセプターに対する結合特異性部が、ヒトIgAレセプター、例えばFcαレセプター(FcαRI(CD89))に結合する抗体によって提供され、結合は、好ましくはヒト免疫グロブリンA (IgA)によりブロックされない。用語「IgAレセプター」は、染色体19上に位置する1つのα-遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を含むものとする。この遺伝子は、いくつかの選択的スプライシングを受ける55〜110kDaの膜貫通型アイソフォームをコードすることが知られている。FcαRI (CD89)は、単球/マクロファージ、好酸球および好中球上で構成的に発現されるが、非エフェクター細胞集団では発現されない。FcαRIはIgA1およびIgA2の両方に中間の親和性(≒5×107M-1)を有し、それはG-CSFまたはGM-CSFなどのサイトカインに曝すと増大する(Morton, H.C. et al. (1996) Critical Reviews in Immunology 16:423-440)。A3、A59、A62、およびA77として同定された4つのFcαRI特異的モノクローナル抗体(それは、IgAリガンド結合ドメインの外側でFcαRIに結合する)が記述されている(Monteiro, R.C. et al. (1992) J. Immunol. 148:1764)。
【0163】
FcαRIおよびFcγRIは、本開示の二重特異性分子で使用される好ましいトリガーレセプターである;その理由は、それらが(1) 主として免疫エフェクター細胞(例えば単球、PMN、マクロファージ、樹状細胞)上で発現され、(2) 高レベル(例えば1細胞当たり5,000〜100,000)で発現され;(3) 細胞障害性活性(例えばADCC、食細胞活動)の媒介物質であり;(4)自己へ向けられた自己抗原を含む抗原の抗原呈示の増大を媒介するからである。
【0164】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本開示の二重特異性分子中で使用することができる他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0165】
本開示の二重特異性分子を、構成要素である結合特異性部(例えば抗FcRおよび抗フコシルGM1結合特異性部)を当技術分野で公知の方法を用いて接合することにより調製することができる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性部を別々に生成し、次に互いに接合することができる。結合特異性部がタンパク質またはペプチドである場合は、様々な接続剤または架橋剤を用いて共有結合の接合をさせることができる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオ酢酸(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が含まれる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照のこと)。他の方法には、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al. (1985) Science 229:81-83, および Glennie et al. (1987) J. Immunol. 139:2367-2375)に述べられているものが含まれる。好ましい接合剤は、SATAおよびスルホ-SMCCであり、両方が、Pierce Chemical Co. (Rockford, IL)から入手可能である。
【0166】
結合特異性部が抗体である場合は、それらを、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合形成によって接合することができる。特に好ましい態様では、接合に先立ってヒンジ領域が奇数の、好ましくは1つの、スルフヒドリル残基を含むように修飾される。
【0167】
または、同じのベクター中で両方の結合特異性部がコードされ、同じ宿主細胞中で発現され、組み立てられることができる。二重特異性分子が、mAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab')2、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、この方法が特に有用である。本開示の二重特異性分子は、1つの一本鎖抗体および結合決定部を含む一本鎖分子、または2つの結合決定部を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含んでよい。二重特異性分子を調製する方法が、例えば米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482,858号に述べられている。
【0168】
二重特異性分子のそれらの特異的な標的への結合を、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫定量法(RIA)、FACS分析、生物検定法(例えば成長阻害)またはウエスタンブロット分析によって確認することができる。これらの分析の各々は、一般に、関心対象の複合体に特異的な、ラベルされた試薬(例えば抗体)を用いて、特に関心対象のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。例えば、FcR-抗体複合体を、例えば抗体-FcR複合体を認識し特異的に結合する、酵素に連結された抗体または抗体断片を用いて、検出することができる。または、任意の様々な他の免疫測定を用いて、複合体を検出することができる。例えば、抗体を放射ラベルし、放射免疫定量法(RIA)で用いることができる(例えば、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986を参照のこと。これは参照により本明細書に組み込まれる)。放射性同位体を、γカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用などの手段、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0169】
薬学的組成物
別の局面では、本開示は、組成物、例えば薬学的に許容される担体と共に製剤された、本開示のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分の1つまたは組合せを含む薬学的組成物を提供する。そのような組成物は、抗体の1つまたは組合せ(例えば2つまたはそれ以上の異なる)、あるいは本開示の免疫接合体または二重特異性分子を含んでもよい。例えば、本開示の薬学的組成物は、標的抗原上の種々のエピトープに結合するかまたは相補的な活性を有する抗体の組合せ(あるいは免疫接合体または二重特異性分子)を含むことができる。
【0170】
本開示の薬学的組成物はまた、併用療法でも、即ち他の薬剤と組み合わせても、投与することができる。例えば併用療法は、本開示の抗フコシルGM1抗体を、少なくとも1つの他の抗炎症剤または免疫抑制剤と組み合わせて含むことができる。併用療法中で用いることができる治療薬の例については、さらに詳しく、以下の本開示の抗体の使用についての項に述べる。
【0171】
本明細書に用いる「薬学的に許容される担体」には、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに生理的に適合するその他が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊柱、表皮への投与(例えば注射または注入による)に適している。投与経路に依存して、活性化合物(すなわち抗体、免疫接合体、二重特異性分子)を、化合物を不活性化する可能性のある酸および他の自然の条件の作用から化合物を保護する物質で覆ってもよい。
【0172】
本開示の薬学的化合物は、1つまたは複数の薬学的に許容される塩を含んでもよい。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を保持し、いかなる望ましくない毒物的影響も与えない塩を指す(例えば Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと)。そのような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等の無毒な無機酸から導かれるもの、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸等の無毒な有機酸から導かれるものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属から導かれるもの、ならびにN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の無毒な有機アミンから導かれるものが含まれる。
【0173】
本開示の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤を含んでもよい。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、以下のものが含まれる:(1) アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤;(2) アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロール等の油溶性抗酸化剤;および(3) クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤。
【0174】
本開示の薬学的組成物中に使用することができる適当な水性および非水性の担体の例には、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの適当な混合物、オリーブオイルなどの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性を、例えばレシチンなどの被覆剤の使用、分散液の場合の必要な粒度の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0175】
これらの組成物は、さらに保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含んでもよい。上記の殺菌処理、および様々な抗菌・抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等)の含有の両方によって、微生物の存在を確実に防止することができる。組成物中へ、ショ糖、塩化ナトリウム等の等張剤を入れることも望ましいであろう。さらに、注射可能な剤形の遅延吸収を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を含めることによって実現することができる。
【0176】
薬学的に許容される担体には、無菌注射溶液または分散液を即席で調製するための、無菌水溶液または分散液および無菌粉末剤が含まれる。そのような媒質および薬剤の薬学的活性物質のための使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の媒質または薬剤は、活性化合物との適合性がない場合を除いて、本開示の薬学的組成物中の使用を考慮する。補助活性化合物もまた、組成物に組み入れることができる。
【0177】
治療用組成物は、典型的には製造および貯蔵の条件下で、無菌かつ安定でなければならない。組成物を、溶液、ミクロエマルジョン、リポソームまたは高薬剤濃度に適する他の規則的構造として、調剤することができる。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適当な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性を、例えばレシチンなどの被覆剤の使用、分散液の場合の必要な粒度の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中へ、ショ糖、マンニトールやソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることも望ましいであろう。注射可能な組成物の遅延吸収を、組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって実現することができる。
【0178】
必要量の活性化合物を、必要に応じて上記列挙された成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に組み入れ、その後滅菌マイクロ濾過することにより、無菌注射溶液を調製することができる。一般に、活性化合物を無菌の賦形剤(基礎分散媒および必要なら上記列挙された成分からの他の成分を含む)に組み入れることにより、分散液を調製する。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の好ましい調製法は、有効成分プラス任意の所望の追加成分の予め無菌濾過された溶液から、真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾燥法)により粉末を得る方法である。
【0179】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療されている被験体および特定の投与様式に依存して変化すると考えられる。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に治療効果を生む組成物の有効成分の量と考えられる。一般にこの量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて100%のうち、約0.01%〜約99%の有効成分、好ましくは約0.1%〜約70%、最も好ましくは約1%〜約30%の有効成分の範囲と考えられる。
【0180】
投与計画を、最適の所望の応答(例えば治療応答)が得られるように調節する。例えば、単一の巨丸剤を投与してもよいし、またはいくつかに分割した用量を時間をかけて投与してもよく、または治療状況の必要性に合わせて用量を減少または増加してもよい。非経口組成物を用量単位形態に調製することが、投与を容易にし、用量を一定にするために特に有利である。本明細書で使用する用量単位形態とは、処置される被験体のための一回用量に適する物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生むように計算された所定量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含む。本開示の用量単位形態の仕様は、(a) 活性化合物の独自の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b) そのような活性化合物を個体毎の感度を処理するよう調合する分野に内在する限界によって、指示されまたそれらに直接依存する。
【0181】
抗体の投与については、用量は、ホストの体重の約0.0001〜100mg/kg、より普通には0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば、用量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、または10mg/kg体重に、または1〜10mg/kgの範囲内になり得る。例示的な処置療法は、週一回、2週に一回、3週に一回、4週に一回、月一回、3ヶ月に一回、または3〜6ヶ月に一回の投与を必要とする。本開示の抗フコシルGM1抗体の好ましい投与計画には、抗体を静脈内投与により1mg/kg体重または3mg/kg体重で、以下の投与スケジュールの1つを用いて与えることが含まれる:(i) 4週毎に6回、次に3か月毎の投与;(ii) 3週毎の投与;(iii) 3mg/kg体重で一回、続いて1mg/kg体重で3週毎に投与。
【0182】
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つまたはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、投与する各抗体の用量は、示した範囲内になる。抗体を通常は複数回投与する。単一投与の間隔は、例えば1週間毎、1月毎、3ヶ月毎、または1年毎であり得る。患者中の標的抗原に対する抗体の血中濃度を測定することにより必要となれば、間隔は不規則にもなりえる。いくつかの方法では、約1〜1000μg/mlの血漿抗体濃度を、およびいくつかの方法では約25〜300μg/mlを達成するために用量を調節する。
【0183】
または、徐放性製剤として抗体を投与することができる。その場合には、それほど頻繁に投与する必要はない。用量および頻度は患者中の抗体の半減期に依存して変化する。一般に、ヒト抗体は、最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体がそれに続く。投与の用量および頻度は、処置が予防的かまたは治療的かに依存して変化し得る。予防的用途では、長期間比較的頻繁でない間隔で比較的低用量を投与する。ある患者は、その後の人生を通して処置を受け続ける。治療用途では、疾病の進行が減少するか終了するまで、好ましくは患者が病状の部分的なまたは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的大用量が、時として必要である。その後は、患者に予防療法を施せばよい。
【0184】
本開示の薬学的組成物中の有効成分の実際の用量レベル、組成および投与様式を、特定の患者の所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量が患者に対する毒性なく得られるように変更してもよい。選択される用量レベルは、使用される本開示の特定の組成物あるいはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、他の薬物、使用される特定の組成物と組合せて用いられる他の薬剤、化合物、および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、症状、一般的健康状態、および既往歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な薬物動態学的因子に依存するであろう。
【0185】
本開示の抗フコシルGM1抗体の「治療上有効な用量」は、好ましくは病徴の重症度の減少、病徴のない期間の頻度および持続時間の増加、または病苦による機能障害または作業不能の防止をもたらす。例えば、腫瘍の治療については、「治療上有効な用量」は、好ましくは未治療の被験体に比べて、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、よりさらに好ましくは少なくとも約60%、およびさらにもっと好ましくは少なくとも約80%の細胞成長または腫瘍成長を阻害する。化合物の腫瘍成長を阻害する能力を、ヒト腫瘍での有効性を予測できる動物モデル系で評価することができる。または組成物のこの特性を、熟練した開業医に公知の分析によって化合物の阻害する能力(インビトロにおけるそのような阻害)を調べて評価することができる。治療上有効な量の治療化合物は、被験体の腫瘍の大きさを減少させるか、そうでなければ症状を改善することができる。当業者は、そのような量を、被験体の大きさ、被験体の症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路のような因子に基づいて決定することができよう。
【0186】
本開示の組成物を、1つまたは複数の投与経路を介して、当技術分野で公知の様々な方法の1つまたは複数を用いて投与することができる。当業者には当然のことであるが、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変化すると考えられる。本開示の抗体の好ましい投与経路には、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄への、または他の非経口の投与経路が含まれる。本明細書に使用される語句「非経口投与」とは、経腸および局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄膜下、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管経由、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内への注射および注入を非限定的に含む。
【0187】
または本開示の抗体を、局所的、表皮、粘膜投与経路などの非経口的経路を介して、例えば、鼻腔内、口内、膣内、直腸内、舌下または局所に投与することができる。
【0188】
活性化合物を、埋込物、経皮的貼付剤、およびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの急速な放出から化合物を保護する担体と共に調剤することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生物分解性で生物適合的なポリマーを用いることができる。そのような製剤を調製するための多くの方法は、特許を得ているか、または一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。
【0189】
治療用組成物を、当技術分野で公知の医療装置で投与することができる。例えば、好ましい態様では、本開示の治療用組成物を、米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;あるいは第4,596,556号中に開示された装置などの針なし皮下注射装置で投与することができる。本開示中で有用な周知の埋込物およびモジュールの例には、以下のものが含まれる:米国特許第4,487,603号(これは制御された速度で薬剤を投薬するための埋込可能なマイクロ輸液ポンプを開示する);米国特許第4,486,194号(これは皮膚を通して薬剤を投与するための治療装置を開示する);米国特許第4,447,233号(これは正確な注入速度で薬物を送達するための薬物輸液ポンプを開示する);米国特許第4,447,224号(これは連続的薬物配送用の可変流量埋込可能注入器を開示する);米国特許第4,439,196号(これはマルチチャンバ区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示する);および米国特許第4,475,196号(これは浸透圧での薬物送達システムを開示する)。これらの特許は、参照により本明細書に組み入れられる。他の多くのそのような埋込物、配送システムおよびモジュールが当業者に公知である。
【0190】
ある態様では、本開示のヒトモノクローナル抗体を、インビボでの適切な分布を保証するために製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)が多くの非常に親水性の化合物を排除する。本開示の治療用化合物がBBBを越える(もし所望であれば)ことを保証するために、例えばそれらをリポソーム中に製剤化することができる。リポソームを作製する方法については、例えば米国特許第4,522,811号;第5,374,548号;および第5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または器官へ選択的に輸送され、したがって標的に向けた薬物送達を促進する1つまたは複数の部分を含んでもよい(例えばV.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照のこと)。例示的な標的指向部分には、葉酸またはビオチン(例えばLowらへの米国特許第5,416,016号参照);マンノシド(Umezawa et al, (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体;(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180)界面活性物質プロテインAレセプター(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が含まれる。さらに K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; JJ. Killion; I.J. Fidler (1994); Immunomethods 4:273も参照のこと。
【0191】
本開示の使用および方法
本開示の抗体、抗体組成物、および方法は、フコシルGM1が媒介する障害の診断および処置を含む、多数のインビトロおよびインビボの診断用および治療用に有用性を有する。好ましい態様では、本開示の抗体はヒト抗体である。例えばこれらの分子を、培養中の細胞へインビトロまたはエクスビボで、あるいはヒト被験体へ、例えばインビボで、様々な障害を処置し、防止し、また診断するために投与することができる。本明細書に用いる用語「被験体」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むものとする。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長動物、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生動物、および爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。好ましい被験体には、フコシルGM1活性によって媒介される障害を有する、あるいはフコシルGM1によって媒介される活性と一致する障害を有する、ヒト患者が含まれる。方法は、異常なフコシルGM1発現または増加したフコシルGM1の存在に関連する障害を有するヒト患者を処置するために特に適する。フコシルGM1に対する抗体を別の薬剤と共に投与する場合は、2つを、いずれの順でもまたは同時にでも投与することができる。
【0192】
本開示の抗体のフコシルGM1に対する特異的結合を考慮すれば、本開示の抗体を細胞表面のフコシルGM1発現を特異的に検出するために用いることができ、さらに免疫アフィニティー精製によってフコシルGM1を精製するためにも用いることができる。
【0193】
本開示はさらに、抗体またはその部分とフコシルGM1との複合体の形成が可能な条件下で、試料および対照試料をヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分(それはフコシルGM1に特異的に結合する)と接触させる工程を含む、試料中のフコシルGM1抗原の存在を検出するかまたはフコシルGM1抗原の量を測定するための方法を提供する。次に複合体の形成を検出し、対照試料と試料の間の複合体形成の差異が試料中のフコシルGM1抗原の存在を示す。
【0194】
フコシルGM1は小細胞肺癌に発現されるが、正常な肺または他の組織では検出されない(Nilsson et al. (1984) Glycoconjugate J 1:43-9; Krug et al. (2004) Clin Cancer Res 10:6094-100)。抗フコシルGM1抗体を、カルシノーマ腫瘍の成長を阻害するために単独で用いてもよい。または、下記に述べるように、抗フコシルGM1抗体を、他の免疫原性薬剤、標準癌治療剤、または他の抗体と共に用いてもよい。
【0195】
抗フコシルGM1モノクローナル抗体が、フコシルGM1陽性細胞株に指向された強力なCDCを媒介することが実証されている(Livingston PO et al. (1994) J Clin Oncol. 12:1036-44; Brezicka et al. (2000) Cancer Immunol Immunother 49:235-42)。さらに、フコシルGM1に特異的なモノクローナル抗体によって引き起こされる補体活性化が、細胞増殖抑止剤と共同して、フコシルGM1発現細胞株に対して相乗的細胞障害性効果をもたらすことが報告されている(Brezicka and Einbeigi (2001) Tumour Biol 22:97-103)。最後に、抗フコシルGM1モノクローナル抗体が、ヌードマウスへのフコシルGM1発現腫瘍細胞の移植を阻害することも報告されている(Brezicka et al. (1991) Int J Cancer 49:911-8)。これらのデータは、フコシルGM1に対する完全にヒトモノクローナル抗体の、単独でのまたは化学療法剤と組み合わせてのいずれかのSCLC治療用の免疫療法剤としての開発を支持する。
【0196】
本開示の抗体を用いて成長を阻害することのできる好ましい癌には、典型的には免疫療法に応答する癌が含まれる。処置のために好ましい癌の非限定的な例には、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む)が含まれる。本開示の方法を用いて処置することができるであろう他の癌の例には、以下の癌が含まれる:結腸癌(小腸癌を含む)、肺癌、乳癌、膵臓癌、メラノーマ(例えば転移性悪性メラノーマ)、急性骨髄白血病、腎臓癌、膀胱癌、卵巣癌および前立腺癌、腎臓癌(例えば腎細胞カルシノーマ)、膠芽腫、脳腫瘍、ならびに、急性リンパ性白血病(ALL)、成人T細胞白血病(T-ALL)、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球白血病を含む慢性または急性リンパ性白血病、ならびに、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、リンパ球リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性切れ込み小細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、中心芽型/中心細胞型(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統びまん性大細胞型リンパ腫、血管免疫芽細胞リンパ節症(AILD)様T細胞リンパ腫、およびHIV関連体腔リンパ腫)、胎児性カルシノーマ、鼻咽頭未分化カルシノーマ(例えばシュミンケ(Schmincke)腫瘍)、キャッスルマン病、カポジ肉腫、多発性ミエローマ、ヴァルデンストレームのマクログロブリン血症および他のB細胞リンパ腫、上咽頭カルシノーマ、骨癌、皮膚癌、頭頚癌、皮膚または眼球内悪性メラノーマ、子宮癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管カルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰カルシノーマ、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟繊維肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児充実性腫瘍、膀胱癌、腎臓または尿管癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、腫瘍血管新生、脊柱軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮癌、扁平上皮癌、例えば石綿によって誘起される中皮腫を含む環境誘起癌、ならびに前記の癌の組合せ。
【0197】
さらに、フコシルGM1が様々な腫瘍細胞上に発現することを考慮すると、本開示のヒト抗体、抗体組成物および方法を、腫瘍形成性障害、例えばフコシルGM1を発現する腫瘍細胞の存在によって特徴付けられる障害(例えば肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む)、結腸癌(小腸癌を含む)、メラノーマ(例えば転移性悪性メラノーマ)、急性骨髄白血病、肺癌、乳癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、および前立腺癌を含む)を有する被験体を処置するために用いることができる。腫瘍形成性障害を有する他の被験体の例には、以下の癌腫を有する被験体が含まれる:腎臓癌(例えば腎細胞カルシノーマ)、膠芽腫、脳腫瘍、ならびに、急性リンパ性白血病(ALL)、成人T細胞白血病(T-ALL)、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球白血病を含む慢性または急性リンパ性白血病、ならびに、リンパ腫(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、リンパ球リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性切れ込み小細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球リンパ腫、T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、中心芽型/中心細胞型(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系統びまん性大細胞型リンパ腫、血管免疫芽細胞リンパ節症(AILD)様T細胞リンパ腫、およびHIV関連体腔リンパ腫)、胎児性カルシノーマ、鼻咽頭未分化カルシノーマ(例えばシュミンケ(Schmincke)腫瘍)、キャッスルマン病、カポジ肉腫、多発性ミエローマ、ヴァルデンストレームのマクログロブリン血症および他のB細胞リンパ腫、上咽頭カルシノーマ、骨癌、皮膚癌、頭頚癌、皮膚または眼球内悪性メラノーマ、子宮癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管カルシノーマ、子宮内膜カルシノーマ、頚部カルシノーマ、膣カルシノーマ、外陰カルシノーマ、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟繊維肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児充実性腫瘍、膀胱癌、腎臓または尿管癌、腎盂カルシノーマ、中枢神経系(CNS)腫瘍、腫瘍血管新生、脊柱軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、類表皮癌、扁平上皮癌、例えば石綿によって誘起される中皮腫を含む環境誘起癌、ならびに前記癌の組合せ。
【0198】
したがって、1つの態様では、本開示は、被験体に治療上有効な量の抗フコシルGM1抗体またはその抗原結合部分を投与する工程を含む、被験体中の腫瘍細胞の成長を阻害する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗フコシルGM1抗体(本明細書に記述された任意のヒト抗フコシルGM1抗体など)である。追加してまたは代わりに、抗体は、キメラまたはヒト化抗フコシルGM1抗体であってよい。
【0199】
1つの態様では、本開示の抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに組成物)を用いて、フコシルGM1のレベルまたは膜表面にフコシルGM1を含む細胞のレベルを検出することができ、次にれらのレベルを一定の病徴に結び付けることができる。または、抗体を用いてフコシルGM1機能を阻害またはブロックすることができ、次にそれを一定の病徴の予防または改善に結び付けることができる。それにより、フコシルGM1がその疾病の媒介物質として関連付けられる。抗体とフコシルGM1間の複合体形成を可能にする条件下で、実験試料および対照試料を抗フコシルGM1抗体と接触させることにより、これを達成することができる。抗体とフコシルGM1の間で形成された任意の複合体を、実験試料および対照中で検出し比較する。
【0200】
別の態様では、本開示の抗体(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子、ならびに組成物)を、最初にインビトロで、治療または診断での使用に関連する結合活性に関してテストすることができる。例えば、本開示の組成物を、下の実施例に記述するフローサイトメトリー分析を用いて、テストすることができる。
【0201】
本開示の抗体(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子、免疫接合体および組成物)は、フコシルGM1に関連した疾病の治療および診断に、追加の有用性を有する。例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性または二重特異性分子および免疫接合体を、以下の生物活性の1つまたは複数を、インビボでまたはインビトロで誘発するために用いることができる:フコシルGM1を発現している細胞の成長を阻害するおよび/または死滅させる;ヒトエフェクター細胞の存在下で、フコシルGM1を発現する細胞の食細胞活動またはADCCを媒介する;またはフコシルGM1へのフコシルGM1リガンドの結合をブロックする。
【0202】
特定の態様では、抗体(例えば、ヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子、ならびに組成物)を、様々なフコシルGM1に関連する疾病を処置し、防止し、または診断するために、インビボで用いる。フコシルGM1に関連する疾病の例には、とりわけ、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む)が含まれる。
【0203】
インビボおよびインビトロで、本開示の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子、および免疫接合体)を投与する適当な経路は、当技術分野において周知であり、当業者が選択することができる。例えば、抗体組成物を、注射(例えば、静脈内または皮下)により投与することができる。使用する分子の適当な用量は、被験体の年齢および体重、ならびに抗体組成物の濃度および/または製剤に依存するであろう。
【0204】
上述したように、本開示のヒト抗フコシルGM1抗体を、1つまたは他の複数の治療剤(例えば細胞障害性薬剤、放射障害性薬剤、免疫抑制剤)と、併用投与することができる。抗体を薬剤に連結する(免疫複合体(immunocomplex)として)か、または薬剤とは別に投与することができる。後者の場合(個別の投与)では、抗体を薬剤の前に、後にまたは同時に投与するか、または他の公知の治療法(例えば抗癌治療、例えば放射線)と併用投与することができる。そのような治療薬剤には、とりわけ、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロランブシル、およびシクロホスファミド・ヒドロキシ尿素のような抗腫瘍性薬剤(それらは、それだけでは患者に有毒または準毒性レベルでのみ有効である)が含まれる。シスプラチンは、4週毎に一回、100mg/用量として静脈内に投与し、アドリアマイシンは、21日毎に一回、60〜75mg/ml用量として静脈内に投与する。本開示のヒト抗フコシルGM1抗体またはその抗原結合断片と化学療法剤との併用投与は、ヒト腫瘍細胞に対して細胞障害性効果を生み出す異なる機構を介して作用する、2つの抗癌剤を提供する。そのような併用投与は、薬物への耐性の発達、または抗体と反応しなくなる腫瘍細胞の抗原性変化による問題を解決することができる。
【0205】
1つの態様では、本開示の免疫接合体を使用して、化合物(例えば治療薬剤、ラベル、細胞毒素、放射性毒素、免疫抑制剤等)を抗体に連結することにより、フコシルGM1細胞表面レセプターを有する細胞へそのような化合物を指向させることができる。例えば、抗フコシルGM1抗体を、全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,281,354号および第6,548,530号、米国特許出願公開第20030050331号、第20030064984号、第20030073852号および第20040087497号に記述されている、あるいはWO03/022806に公表された毒素化合物のいずれにも接合することができる。したがって、本開示は、さらにフコシルGM1を発現している細胞の位置をエクスビボまたはインビボで決定する(例えば放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補助因子などの検知できるラベルで)方法を提供する。または、免疫接合体を用いて、細胞毒素または放射性毒素をフコシルGM1に向かわせることにより、フコシルGM1細胞表面レセプターを有する細胞を死滅させることができる。
【0206】
標的特異的エフェクター細胞、例えば本開示の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)に連結されたエフクター細胞を、治療薬として用いることができる。標的に指向させるエフェクター細胞は、マクロファージ、好中球または単球などのヒト白血球であり得る。他の細胞には、好酸球、ナチュラルキラー細胞および他のIgGレセプターまたはIgAレセプターを有する細胞が含まれる。所望の場合は、処置されるべき被験体から、エフェクター細胞を得ることができる。標的特異的エフェクター細胞を、生理学的に許容される溶液中の細胞懸濁液として投与することができる。投与する細胞数は、およそ108〜109であり得るが、治療目的に依存して変化することになろう。一般的にその量は、標的細胞、例えばフコシルGM1を発現している腫瘍細胞に局在化して、例えば食細胞活動によって細胞を死滅させるのに十分であろう。投与経路もまた変化することができる。
【0207】
標的特異的なエフェクター細胞による治療法を、標的細胞を除去するための他の技術と共に行うことができる。例えば本開示の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)および/またはこれらの組成物を装備するエフェクター細胞を使用する抗腫瘍療法を化学療法と共に用いることができる。さらに、組合せ免疫療法を用いて、2つの別の細胞障害性エフェクター集団を腫瘍細胞排除に向けてもよい。例えば、抗FcγRIまたは抗CD3に連結された抗フコシルGM1抗体を、IgGレセプターまたはIgAレセプター特異的結合剤と共に用いてもよい。
【0208】
本開示の二重特異性および多重特異性分子を用いてまた、エフェクター細胞上のFcγRまたはFcγRのレベルを、細胞表面のそれらレセプターのキャッピングおよび除去などにより、モジュレートすることができる。抗Fcレセプターの混合物をこの目的に用いることもできる。
【0209】
IgG1、IgG2、またはIgG3あるいはIgM由来の補体を結合する部分などの補体結合部位を有する本開示の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子、ならびに免疫接合体)を、補体の存在下で用いることができる。1つの態様では、本開示の結合剤および適切なエフェクター細胞による、標的細胞を含む細胞集団のエクスビボ処置を、補体または補体を含む血清の追加によって補足することができる。本開示の結合剤で覆われた標的細胞の食細胞活動が、補体タンパク質の結合により改善され得る。別の態様では、本開示の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)で覆われた標的細胞を補体によって溶解することもできる。さらに別の態様では、本開示の組成物は補体を活性化しない。
【0210】
本開示の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子、ならびに免疫接合体)を、補体と共に投与することもできる。したがって、ヒト抗体、多重特異性または二重特異性分子、ならびに血清または補体を含む組成物は、本開示の範囲内にある。これらの組成物は、補体が、ヒト抗体、多重特異性または二重特異性分子のすぐ近くに位置するという点が有利である。または、本開示のヒト抗体、多重特異性または二重特異性分子と、補体または血清とは、別々に投与することもできる。
【0211】
したがって、本開示の抗体組成物で処置されている患者に、ヒト抗体の治療効果を促進するかまたは増大する、細胞障害性または放射障害性の薬剤などの別の治療薬を(本開示のヒト抗体の投与の前に、同時に、あるいは後に)追加して投与することができる。
【0212】
他の態様では、被験体をさらに、FcγまたはFcγレセプターの発現または活性をモジュレートする(例えば増強するか阻害する)薬剤で処置することができる(例えば、被験体をサイトカインで処置することによって)。多重特異性分子による処置の間に投与するための好ましいサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロンγ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。
【0213】
本開示の組成物(例えばヒト抗体、多重特異性および二重特異性分子)をまた、さらにFcγRまたはフコシルGM1を発現する標的細胞に、例えばそのような細胞をラベルするために用いることもできる。そのような使用のために、結合剤を検出可能な分子に連結することができる。したがって本開示は、FcγRなどのFcレセプターまたはフコシルGM1を発現する細胞の位置をエクスビボまたはインビトロで決定する方法を提供する。検知可能なラベルは、例えば放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、酵素補助因子であり得る。
【0214】
さらに本開示の範囲内に、本開示の抗体組成物(例えばヒト抗体、二重特異性分子または多重特異性分子、あるいは免疫接合体)および使用のための指示書を含むキットがある。キットは、免疫抑制剤、細胞障害性薬剤または放射障害性薬剤、あるいは1つまたは複数の追加の本開示のヒト抗体(例えば第1のヒト抗体とは異なるフコシルGM1抗原中のエピトープに結合する相補的な活性を有するヒト抗体)などの1つまたは複数の追加の試薬をさらに含むことができる。キットは、典型的にはキットの内容物の用途を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キットの上にまたはキットと共に供給されるか、そうでなければキットに付随する、任意の記載または記録物が含まれる。
【0215】
本開示をさらに次の実施例によって説明する。しかしそれらを、さらなる限定として解釈するべきではない。本出願の全体にわたって引用されるすべての図、およびすべての参照文献、特許ならびに公表された特許出願の内容は、参照により明確に本明細書に組み入れられる。
【0216】
実施例
実施例1. フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体の生成
抗原
免疫化プロトコルでは、抗原としてサルモネラ・ミネソタ (Salmonella minnesota)に吸着されたフコシルGM1(Northwest Biotherapeutics, Inc.)を利用した。
【0217】
トランスジェニックHuMabおよびKMマウス(商標)
フコシルGM1に対する完全にヒトのモノクローナル抗体を、HuMabトランスジェニックマウスのHCo7、HCo12、HCo7+HCo12系統およびトランスジェニック・染色体組換えマウスのKM系統(それらはそれぞれヒト抗体遺伝子を発現する)を用いて調製した。これらのマウス系統の各々では、内在的マウスκ軽鎖遺伝子が、Chen et al. (1993) EMBO J. 12:811-820に記述されているように、同型接合的に破壊され、また内在的マウス重鎖遺伝子も、PCT公報WO01/09187の実施例1に記述されているように同型接合的に破壊されている。これらのマウス系統の各々は、Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に記述されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を有している。HCo7系統は、米国特許第5,770,429号;第5,545,806号;第5,625,825号;および第5,545,807号に記述されているように、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子を有する。HCo12系統は、WO01/09187の実施例2またはWO01/14424の実施例2に記述されているように、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子を有する。HCo7+HCo12系統は、HCo7およびHCo12重鎖導入遺伝子の両方を有する。KM系統は、PCT公報WO02/43478に記述されているように、SC20導入染色体を含む。これらの系統をすべて、本明細書ではHuMAbマウスと呼ぶ。
【0218】
HuMabおよびKMの免疫化
フコシルGM1に対する完全にヒトのモノクローナル抗体を生成するために、HuMabマウスおよびKMマウス(商標)を、酸処理されたサルモネラ・ミネソタ (Northwest Biotherapuetics, Inc.)の表面上に凍結乾燥によって吸着されたフコシルGM1で免疫化した。HuMabマウスの一般的な免疫方式について、Lonberg, N. et al (1994) Nature 368(6474):856-859; Fishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851およびPCT公報WO98/24884に記述されている。マウスは、最初の抗原注入のときに6〜16週齢であった。
【0219】
トランスジェニックマウスを、腹腔内(IP)または皮下(SC)に完全フロイントアジュバント中の抗原で2回、それに続けて不完全フロイントアジュバント中の抗原で2〜4週間IPに免疫化した(合計8回まで免疫)。眼窩後の出血から得られた血清のELISA (以下に述べる)により、免疫応答をモニターした。十分な力価の抗フコシルGM1ヒト免疫グロブリンを有するマウスを融合に用いた。マウスに抗原を静脈内ブーストして、2、3日後に屠殺して脾臓を取り出した。
【0220】
抗フコシルGM1抗体を産生しているHuMabまたはKMマウス(商標)の選択
フコシルGM1を結合する抗体を産生しているHuMabまたはKMマウス(商標)を選択するために、免疫化されたマウスからの血清を、ELISAによってFishwild, D. et al. (1996)によって記述されたようにテストした。簡潔に述べれば、フコシル転移酵素をトランスフェクトされた細胞株(Northwest Biotherapeutics, Inc.)またはウシ脳(Matreya, Inc)から精製された自然のフコシルGM1を、メタノール中に1mg/mlで溶解し、ポリプロピレンマイクロタイタープレート上に、50μl/ウエルを、1〜2時間室温での空気乾燥により、受動的に吸着させた。同様に、GM1などの関係する対照抗原でコートされたプレートを、交差反応性抗体のための逆スクリーニングとして調製した。次に分析プレートを、室温で1時間、250μl/ウエルのPBS中の1%卵白アルブミンでブロックした。フコシルGM1で免疫化されたマウスからの血漿の稀釈液を各ウエルに加え、周囲温度で1〜2時間インキュベートした。プレートをPBSで洗浄し、次に西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)にそれぞれ接合されたヤギ抗ヒトIgG Fcまたはヤギ抗ヒトIgM Fcポリクローナル抗体のいずれかと、1時間室温でインキュベートした。洗浄の後、プレートをTMB基質で発色させ、分光測光器によりOD 450nmで解析した。
【0221】
抗フコシルGM1抗体の最も高い力価を発生させたマウスを融合に用いた。融合を下記に述べるように行い、ハイブリドーマ上清を、抗フコシルGM1活性について、ELISAによりテストした。
【0222】
フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
HuMab(登録商標)マウスおよびKMマウス(商標)から単離された脾細胞を、マウスミエローマ細胞株と、標準プロトコルに基づいてPEGを用いて、またはCyto Pulse大チェンバー細胞融合エレクトロポレーター(Cyto Pulse Sciences, Inc., Glen Burnie, MD)を用いる電場による電気融合を用いて融合させた。その結果得られたハイブリドーマを、次に抗原特異的抗体産生についてスクリーニングした。
【0223】
免疫化したマウスの脾リンパ球単細胞懸濁液を、50% PEG(Sigma)を用いて、4分の1の数のP3X63-Ag8.653非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL 1580)またはSP2/0非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL 1581)に融合させた。細胞を、平底マイクロタイタープレートに、約1×105/ウエルの密度でプレートし、およそ2週間、DMEM (Mediatech, CRL10013、高濃度のグルコース、L-グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを含む)プラス5mM HEPES、0.055mM 2-メルカプトエタノール、50mg/mlゲンタマイシンおよび1×HAT (Sigma, CRL P-7185)中に、10%ウシ胎児血清、10% P388D1 (ATCC CRL TIB-63)調整培地、3〜5%オリゲン(origen) (IGEN)を含む選択培地中でインキュベートした。1〜2週間後に、細胞を、HATをHTと置換した培地中で培養した。個々のウエルを次に、ELISA (上述の)により、ヒト抗フコシルGM1 IgGおよびIgM抗体についてスクリーニングした。
【0224】
ELISA分析スクリーニングで特異的結合活性を有するハイブリドーマを、さらにFACS(以下に述べる)により、哺乳動物細胞に吸着したフコシルGM1に対する特異的結合についてテストした。ELISAおよびFACSによって最も高い特異的結合を示したハイブリドーマを、限界希釈法によって少なくとも2回サブクローニングした。次に得られた安定なサブクローンをインビトロで培養し、組織培養培地中で少量のモノクローナル抗体を生成させた。サブクローンの活性を確認するために、ELISAスクリーニングを繰り返した。ELISAで最も高い活性を有するサブクローンをスケールアップして、さらなる特徴決定用のモロクローナル抗フコシルGM1を精製するための十分な調整培地(通常は1L)を生成した。
【0225】
ハイブリドーマクローン5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、13B8a、および18D5を選択して、さらに詳しく分析した。
【0226】
実施例2. ヒトモノクローナル抗体5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5の構造的特徴付け
5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を、5B1、5B1a、7D4、7E4、13B8、および18D5ハイブリドーマそれぞれから標準PCR技術を用いて得て、かつ標準のDNA配列決定技術を用いて配列決定した。
【0227】
5B1の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図1Aならびに配列番号:49および1にそれぞれ示す。
【0228】
5B1の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図1Bならびに配列番号:55および7にそれぞれ示す。
【0229】
5B1重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、5B1重鎖がヒト生殖細胞系列VH3-48由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列1-1由来のDセグメントおよびヒト生殖細胞系列JH6b由来のJHセグメントを利用していることが実証された。図7に、5B1 VH配列の、生殖細胞系列VH3-48配列に対するアラインメントを示す。カバットシステムを用いて5B1 VH配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図1Aおよび図7、ならびに配列番号:13、19および25それぞれに、重鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0230】
5B1軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、5B1軽鎖が、ヒト生殖細胞系列VK L15由来のVLセグメント、およびヒト生殖細胞系列JK4由来のJKセグメントを利用していることが実証された。図8に、5B1 VL配列の生殖細胞系列VK L15配列に対するアラインメントを示す。カバットシステムを用いて5B1 VL配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図1Bおよび図8、ならびに配列番号:31、37および43それぞれに、軽鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0231】
5B1aの重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図2Aならびに配列番号:50および2にそれぞれ示す。
【0232】
5B1aの軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図2Bならびに配列番号:56および8にそれぞれ示す。
【0233】
5B1a重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、5B1a重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3-48由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列1-1由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 6b由来のJHセグメントを利用していることが実証された。5B1a VH配列の生殖細胞系列VH 3-48配列に対するアラインメントを図7に示す。カバットシステムを用いて5B1a VH配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図2Aおよび図7、ならびに配列番号:14、20および26それぞれに、重鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0234】
5B1a軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、5B1a軽鎖がヒト生殖細胞系列VK L15由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK4由来のJKセグメントを利用していることが実証された。図8に、5B1a VL配列の生殖細胞系列VK L15配列に対するアラインメントを示す。カバットシステムを用いて5B1a VL配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図2Bおよび図8、ならびに配列番号:32、38および44それぞれに、軽鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0235】
7D4の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図3Aならびに配列番号:51および3にそれぞれ示す。
【0236】
7D4の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図3Bならびに配列番号:57および9にそれぞれ示す。
【0237】
7D4重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、7D4重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3-48由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列1-1由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 6b由来のJHセグメントを利用していることが実証された。7D4 VH配列の生殖細胞系列VH 3-48配列に対するアラインメントを図7に示す。カバットシステムを用いて7D4 VH配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図3Aおよび図7、ならびに配列番号:15、21および27それぞれに、重鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0238】
7D4軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、7D4軽鎖がヒト生殖細胞系列VKL15由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK4由来のJKセグメントを利用していることが実証された。7D4 VL配列の生殖細胞系列VK L15配列に対するアラインメントを図8に示す。カバットシステムを用いて7D4VL配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図3Bおよび図8、ならびに配列番号:33、39および45それぞれに、軽鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0239】
7E4の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図4Aならびに配列番号:52および4にそれぞれ示す。
【0240】
7E4の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図4Bならびに配列番号:58および10にそれぞれ示す。
【0241】
7E4重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、7E4重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3-48由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列1-1由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 6b由来のJHセグメントを、利用していることが実証された。7E4 VH配列の生殖細胞系列VH 3-48配列に対するアラインメントを図7に示す。カバットシステムを用いて7E4VH配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図4Aおよび図7、ならびに配列番号:16、22および28それぞれに、重鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0242】
7E4軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、7E4軽鎖がヒト生殖細胞系列VK L15由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 4由来のJKセグメントを利用していることが実証された。7E4 VL配列の生殖細胞系列VK L15配列に対するアラインメントを図8に示す。カバットシステムを用いて7E4 VL配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図4Bおよび図8、ならびに配列番号:34、40および46それぞれに、軽鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0243】
13B8の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図5Aならびに配列番号:53および5にそれぞれ示す。
【0244】
13B8の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図5Bならびに配列番号:59および11にそれぞれ示す。
【0245】
13B8重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、13B8重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3-48由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列1-1由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 6b由来のJHセグメントを、利用していることが実証された。13B8 VH配列の生殖細胞系列VH 3-48配列に対するアラインメントを図7に示す。カバットシステムを用いて13B 8VH配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図5Aおよび図7、ならびに配列番号:11、17および23それぞれに、重鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0246】
13B8軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、13B8軽鎖がヒト生殖細胞系列VK L15由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 4由来のJKセグメントを利用していることが実証された。13B8 VL配列の生殖細胞系列VK L15配列に対するアラインメントを図8に示す。カバットシステムを用いて13B8 VL配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図5Bおよび図8、ならびに配列番号:35、41および47それぞれに、軽鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0247】
18D5の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図6Aならびに配列番号:54および6にそれぞれ示す。
【0248】
18D5の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、図6Bならびに配列番号:60および12にそれぞれ示す。
【0249】
18D5重鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、18D5重鎖が、ヒト生殖細胞系列VH 3-48由来のVHセグメント、ヒト生殖細胞系列1-1由来のDセグメント、およびヒト生殖細胞系列JH 6b由来のJHセグメントを利用していることが実証された。18D5 VH配列の生殖細胞系列VH 3-48配列に対するアラインメントを図7に示す。カバットシステムを用いて18D5 VH配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図6Aおよび図7、ならびに配列番号:18、24および30それぞれに、重鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0250】
18D5軽鎖免疫グロブリン配列の、公知のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、18D5軽鎖がヒト生殖細胞系列VK L15由来のVLセグメントおよびヒト生殖細胞系列JK 4由来のJKセグメントを利用していることが実証された。18D5 VL配列の生殖細胞系列VK L15配列に対するアラインメントを図8に示す。カバットシステムを用いて18D5 VL配列をさらに分析することによってCDR領域を決定し、図6Bおよび図8、ならびに配列番号:36、42および48それぞれに、軽鎖CDR1、CDR2、およびCD3領域を図示した。
【0251】
実施例3. フコシルGM1をドープされた細胞の調製
原形質膜にフコシルGM1が埋込まれた細胞を結合分析で使用するために調製した。精製されたフコシルGM1を、ガラス管中でクロロホルム:メタノールの1:1の混合液に溶解し、チッ素下で蒸発させて乾燥させた。乾燥したフコシルGM1にCaもMgも含まないPBSを、抗原濃度が200μg/mlとなるように加え、5分間ボルテックス撹拌し、その後5分間超音波処理を行って乳濁液を作製した。標的細胞、典型的にはHEK293 (ヒト腎臓、ATCC #CRL-1573)またはダウディ(ヒトバーキットリンパ腫、ATCC # CCL-213)の、PBS中2×106細胞/ml懸濁液を調製した。等容量のフコシルGM1乳液と細胞懸濁液を混合して、最終濃度100μg抗原/106細胞/mlとした。フコシルGM1が細胞膜へ入り込めるように、細胞と抗原を37℃で15分間インキュベートし、その後、室温で30分間時々十分に混合した。細胞を10分間1000rpmで遠心した。上清液を捨て、「ドープされた」細胞を、FACS緩衝液(CaもMgも含まないPBS+1%ヒト血清+2% FBS+2mM EDTA)中に4×106細胞/mlの密度で再懸濁した。同様に、GM1などの関連する抗原で「ドープされた」、または抗原でドープされていない対照細胞を調製した。
【0252】
実施例4. 抗フコシルGM1ヒトモノクローナル抗体の結合特異性および結合速度論の特徴付け
ELISAによる結合特異性
精製されたモノクローナルヒト抗フコシルGM1抗体の、精製されたフコシルGM1への特異的結合について、組換え抗原およびドープされた細胞の両方により、ELISAによってテストした。すべての手続きを氷上で行った。ELISA陽性ハイブリドーマ培養液からの調整培地を、「V」底プレート中で抗原または細胞と混合し、1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、結合した抗体を、HRPに接合されたマウス抗ヒトIgG Fc二次抗体で検出した。洗浄後、プレートを比色定量用基質で発色させ、遠心分離により沈殿させ、上清液を分光測光器による分析のために、平底マイクロタイター分析プレートに移した。結果を、図9 (抗原ELISA)および図10 (全細胞ELISA)に示す。抗フコシルGM1抗体がフコシルGM1に特異的に結合することが示された。
【0253】
フローサイトメトリーによる結合特異性
H-4-II-E (ラット肝癌ATCC # CRL-1548)またはDMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)などの、フコシルGM1を自然に発現している陽性細胞株を用いて、フローサイトメトリーによるフコシルGM1ヒトモノクローナル抗体の特異性を決定した。全ての染色手続きを氷上で行った。抗フコシルGM1ヒトモノクローナル抗体の結合を、トランスフェクトされた細胞を10μg/ml濃度の抗フコシルGM1ヒトモノクローナル抗体とインキュベートすることにより評価した。細胞を洗浄し、結合をFITCラベルされた抗ヒトIgG Abで検出した。FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いて、フローサイトメトリー分析を行った。結果を図11に表す。抗フコシルGM1ヒトモノクローナル抗体が、H-4-II-EおよびDMS-79細胞株に結合した。このデータは、抗フコシルGM1ヒトモノクローナル抗体のフコシルGM1に対する特異性を実証している。
【0254】
実施例5. 抗フコシルGM1モノクローナル抗体の内在化(internalization)
抗フコシルGM1 HuMAbのフコシルGM1発現細胞株内へ内在化する能力を、Hum-Zap内在化アッセイを用いてテストした。Hum-Zap分析は、一次ヒト抗体の内在化を、毒素サポリンに接合された、ヒトIgGへ親和性を有する二次抗体の結合によってテストする。
【0255】
フコシルGM1を発現している細胞株(H-4-II-EまたはDMS79)を培養液に懸濁し、7500細胞/ウエルでマイクロタイター細胞培養プレートへ加えた。テスト抗体およびアイソタイプ対照の系列希釈液を培養液で調製し、2:1モル過剰のサポリン接合二次抗体(Hum-Zap(商標)、Advanced Targeting Systems, San Diego, CA, IT-22-25)と、氷上で1時間混ぜ合わせる。抗体とサポリン接合体の混合物を、次に細胞と混合し、37℃で48〜72時間インキュベートした。細胞の生存率を、MTS (Promega)を加え、さらに4時間インキュベートした後にO.D.を読み取ることにより測定した(吸光度は内在化に反比例する)。結果を図12に示す。このデータは、ヒト抗フコシルGM1抗体は、フコシルGM1を発現している細胞株へ内面化することができることを示す。
【0256】
実施例6. 抗フコシルGM1抗体の補体依存性細胞障害性効果
「ドープされた」または自然に発現している細胞株のどちらかの標的細胞を、CDC緩衝液(RPMI1640)に106/mlで懸濁した。ヒト補体(HC)を、細胞株成長培地で1:3に薄めた。テスト抗体およびアイソタイプ対照の系列希釈液を調製した。細胞、補体および抗体を、マイクロタイター分析プレート中で同じ容量ずつ混合し、37℃で2時間インキュベートした。アラマーブルーを各ウエルに加え、プレートを37℃でさらに21時間インキュベートした。プレートを、蛍光プレートリーダー上で、530nm吸収/590nm放射のプロフィールを用いて読み取った。細胞の生存率は、蛍光単位に比例する。結果を図13に示す。ヒトおよびマウスの対照抗体は、DMS 79およびH-4-II-E細胞の両方で強固な用量依存性CDC活性を示す。アイソタイプ対照抗体は、有意な細胞障害性を示さない。RamosおよびARH77などの、フコシルGM1陰性細胞株でのCDC活性は無視できる。
【0257】
実施例7. 抗フコシルGM1抗体のADCC活性の評価
本実施例において、抗フコシルGM1モノクローナル抗体の、エフェクター細胞の存在下で、抗体依存性細胞障害(ADCC)によりフコシルGM1発現細胞株を死滅させる能力を、蛍光細胞障害性分析によりテストした。
【0258】
ADCC活性を、デルフィア(Delfia) システム(Perkin-Elmer)を用いて測定する。簡潔に述べれば、エフェクター細胞を、200u/mlのIL-2による終夜の刺激によって、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から培養し、再懸濁して2×107/mlとする。標的細胞を106/mlに薄め、20分間のインキュベートにより蛍光増強リガンド(BATDA)を負荷し、2×107細胞/mlに薄める。マイクロタイター分析プレート中で、100:1の比率でエフェクター細胞と標的細胞を組み合わせ、テスト抗体およびアイソタイプ対照の系列希釈液と混合する。プレートを37℃で1時間インキュベートし、遠心して細胞を沈殿にして上清液20ulを取り出して、Eu溶液(Perkin-Elmer)と混合する。融合プレートリーダー(Perkin-Elmer)で、Euと結合した放出されたリガンドから発生する蛍光を測定する。それは細胞溶解に比例する。バックグランド溶解のための抗体が存在しない状態のエフェクター細胞の分析ウエル、および完全な溶解のための界面活性剤対照を有するウエルが、抗体特異的溶解の計算を可能にする。結果を図14に示す。このデータは、抗フコシルGM1抗体が、細胞表面にフコシルGM1を発現している細胞に対して細胞障害性であることを実証する。
【0259】
実施例8. 肺癌の免疫組織化学
抗フコシルGM1 HuMAb 7E4がフコシルGM1を認識する能力を、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)の臨床生検を用いて、IHCによって検討した。
【0260】
免疫組織化学のために、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)の臨床生検から5mmの凍結切片(Ardais Inc, USA)を調製した。30分間乾燥させた後に、切片をメタノールで固定し(室温で10分間)、5分間風乾した。PBS中でスライドを濯ぎ、次に、PBS中の10%正常ヤギ血清と20分間予備インキュベートし、続いて10mg/mlのビオチン化7E4と、10%正常ヤギ血清を含むPBS中で、室温で30分間インキュベートした。スライドをPBSで3回洗浄し、次に室温でストレプトアビジンFITC (DAKO)と30分間インキュベートした。スライドをPBSで再び洗浄し、室温で30分間ヤギ抗FITC HRP接合体(DAKO)とインキュベートした。スライドを再びPBSで3回洗浄した。HRPの基質としてジアミノベンジジン(Sigma)を用いると、7E4結合陽性の組織は茶色に染色された。蒸留水で洗浄後、組織構造を示すために、スライドをヘマトキシリンで1分間対比染色した。続いて、スライドを、10秒間蒸留水を流して洗浄し、グリセルゲル(DAKO)に封入した。臨床生検の免疫組織化学染色が、SCLC区分およびNSCLC区分の両方の中に陽性染色を示した。各場合において悪性細胞のみが陽性であり、隣接する正常な肺組織は染色されなかった。肺癌中の全体の陽性率は、テストされた試料の5/13 (SCLCの2/6、およびNSCLCの3/7)であった。正常な肺組織への7E4の結合については、IHCは陰性であった。
【0261】
実施例9. 非フコシル化HuMAbの産生
フコシル残基が少ない抗体は、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。本実施例では、フコシル残基が不足している抗フコシルGM1 HuMAbを産生する。
【0262】
フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT 8を欠くCHO細胞株Ms704-PF (Biowa, Inc., Princeton, NJ)に、抗フコシルGM1 HuMAbの重鎖および軽鎖を発現するベクターをエレクトロポレーションする。6mM のL-グルタミンおよび500μg/mlのG418 (Invitrogen, Carlsbad, CA)を含むEx-Cell 325-PF CHO培地(JRH Biosciences, Lenexa, KS)中での成長により、薬剤耐性クローンを選択する。標準のELISA分析により、クローンを、IgG発現についてスクリーニングする。
【0263】
実施例10. 抗フコシルGM1ヒトモノクローナル抗体のインビボでの有効性
腫瘍を形成させるために十分な期間(約8日間)、オスのSCIDマウスにDMS79小細胞肺癌細胞(フコシルGM1+)を皮下に移植した(5×106細胞/マウス)。移植8日後に腫瘍を測定して、後の抗体療法のために平均腫瘍容積(約200mm3)に基づいて、マウスを無作為に各々8匹の6つの群に分けた。移植後8、11、15、18、および22日目に、マウスに、以下のものを群毎に、腹腔内(i.p.)に注入した:(A) PBS (媒体対照);(B) 各マウス当たり30mg/kgでのヒトIgG1 (アイソタイプ対照);(C) 各マウス当たり10mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体5B1;(D) 各マウス当たり30mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体5B1;(E) 各マウス当たり10mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体7E4;または(F) 各マウス当たり30mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体7E4。これらの実験で用いられたモノクローナル抗体組成物は低レベルの菌体内毒素を有しており、有意には凝集しなかった。電子精密キャリパーを用いて、腫瘍を三次元的に(高さ×幅×長さ)測定し、腫瘍容積を計算した。実験の間(61日間)週に2回腫瘍測定を行った。腫瘍が所定のエンドポイントに達した時(1500mm3などの特定の腫瘍容積、および/またはマウスが不快のサインを示したとき、または約15%より大きな体重減少を示した時)に、マウスを安楽死させた。
【0264】
抗フコシルGM1モノクローナル抗体が腫瘍成長を遅延させたかどうかを調べるために、腫瘍容積が1000mm3に達した日をモニターした。7E4および5B1の抗フコシルGM1モノクローナル抗体が共に、媒体対照およびアイソタイプ対照と比較して、腫瘍成長を有意に遅延させた(表1を参照のこと)。どの場合でも30mg/kg処置群がより大きな応答を示すので、抗体の有効性は用量依存性であるように見える。さらに、7E4抗体30mg/kgで処置されたマウス中の腫瘍容積は1000mm3に達せず、61日目の研究終了時に600mm3の平均腫瘍容積を有していた。
【0265】
【表1】

【0266】
DMS79細胞がフコシルGM1をインビボで発現し続けたかどうかを調べるために、移植に先立って、および未処置の腫瘍からDMS79細胞を採取した後に、モノクローナル抗体7E4および5B1のDMS79細胞への結合を、FACSにより解析した。移植前および移植後のDMS79細胞に結合した抗体は、インビボでフコシルGM1発現レベルを維持することを実証した(図11C)。
【0267】
図15Aは、対照マウス(群AおよびB)が、1つを除きすべて61日のずっと以前に腫瘍のエンドポイントに達したことを示す。図15Bは、抗フコシルGM1抗体5B1 10mg/kgで処置した群(群C)では、2匹のマウスが腫瘍エンドポイントに達し、6匹のマウスの腫瘍容積が約600mm3〜1000mm3の範囲に達したが、一方抗フコシルGM1 5B1抗体30mg/kgで処理した群(群D)の8匹のマウスは、いずれも61日目までに腫瘍エンドポイントに達することはなかった(1000mm3またはそれ未満を有した)ことを示す。図15Cは、抗フコシルGM1モノクローナル抗体7E4 10mg/kgで処置した群(群E)の8匹のマウスのいずれも、61日目までに腫瘍エンドポイントに達しなかったことを示す(約1200mm3またはそれ未満の容積を有し、1匹のマウスは腫瘍無しであった)。図15Cはさらに、抗フコシルGM1モノクローナル抗体7E4 30mg/kgで処置した群(群F)の8匹のマウスのいずれも、61日目までに腫瘍エンドポイントに達しなかったことを示す(約800mm3またはそれ未満の容積を有し、2匹のマウスは腫瘍無しであった)。図16は、61日目に測定された腫瘍容積の平均値(A)および中央値(B)を示す。いずれの場合も、対照と比較して30mg/kg処置群がより大きな応答を示すことから、抗体の有効性は用量依存性であるように見える。
【0268】
【表2】

【0269】
この研究は、マウス腫瘍モデルでは、抗フコシルGM1抗体による処置は、用量依存性に機能して、腫瘍成長に対して、媒体対照およびアイソタイプ対照よりも、有意に大きな効果を有することを明らかにした。抗フコシルGM1抗体処置はまた、マウスに体重減少を起さず、また他のいかなる有意な副作用も生じさせず、これらの抗体が安全で、よく許容されていることを示している(図17)。実に、抗フコシルGM1抗体は、32日目で81〜90%の範囲のパーセント腫瘍成長阻害率(TGI%)を示した(表2)。さらに、30mg/kgの用量の抗体7E4による処置により、25%のマウスが腫瘍を生じなかった。
【0270】
本開示の範囲は、本明細書に記述された具体的な態様によって限定されるべきではない。実際、本明細書に記述された改変に加えて、本開示の様々な改変が上記の記述および添付図から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付された特許請求の範囲の範囲内にあるものと考える。したがって本開示は、添付の特許請求の範囲の用語、ならびに特許請求の範囲が権利を有するそれと等価なものの全範囲によってのみ限定される。
【0271】
配列リスト

【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1A】5B1ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域の、ヌクレオチド配列(配列番号:49)およびアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。CDR1 (配列番号:13)、CDR2 (配列番号:19)およびCDR3 (配列番号:25)領域に線を引き、またV、D、およびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図1B】5B1ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:55)およびアミノ酸配列(配列番号:7)を示す。CDR1 (配列番号:31)、CDR2 (配列番号:37)およびCDR3 (配列番号:43)領域に線を引き、またVおよびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図2A】5B1aヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:50)およびアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。CDR1 (配列番号:14)、CDR2 (配列番号:20)およびCDR3 (配列番号:26)領域に線を引き、またV、D、およびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図2B】5B1aヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:56)およびアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。CDR1 (配列番号:32)、CDR2 (配列番号:38)およびCDR3(配列番号:44)領域に線を引き、またVおよびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図3A】7D4ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:51)およびアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。CDR1 (配列番号:15)、CDR2 (配列番号:21)およびCDR3 (配列番号:27)領域に線を引き、またV、D、およびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図3B】7D4ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:57)およびアミノ酸配列(配列番号:9)を示す。CDR1 (配列番号:33)、CDR2 (配列番号:39)およびCDR3 (配列番号:45)領域に線を引き、またVおよびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図4A】7E4ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:52)およびアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。CDR1 (配列番号:16)、CDR2 (配列番号:22)およびCDR3 (配列番号:28)領域に線を引き、またV、D、およびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図4B】7E4ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:58)およびアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。CDR1 (配列番号:34)、CDR2 (配列番号:40)およびCDR3 (配列番号:46)領域に線を引き、またVおよびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図5A】13B8ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:53)およびアミノ酸配列(配列番号:5)を示す。CDR1 (配列番号:17)、CDR2 (配列番号:23)およびCDR3 (配列番号:29)領域に線を引き、またV、D、およびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図5B】13B8ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:59)およびアミノ酸配列(配列番号:11)を示す。CDR1 (配列番号:35)、CDR2 (配列番号:41)およびCDR3 (配列番号:47)領域に線を引き、またVおよびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図6A】18D5ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:54)およびアミノ酸配列(配列番号:6)を示す。CDR1 (配列番号:18)、CDR2 (配列番号:24)およびCDR3 (配列番号:30)領域に線を引き、またV、D、およびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図6B】18D5ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:60)およびアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。CDR1 (配列番号:36)、CDR2 (配列番号:42)およびCDR3 (配列番号:48)領域に線を引き、またVおよびJ生殖細胞系列由来領域を示す。
【図7】5B1、5B1a、7D4、7E4、18B8、および18D5の重鎖可変領域のアミノ酸配列の、ヒト生殖細胞系列VH3-48アミノ酸配列(配列番号:61)とのアラインメントを示す。
【図8】5B1、5B1a、7D4、7E4、18B8、および18D5の軽鎖可変領域のアミノ酸配列の、ヒトの生殖細胞系列VK L15のアミノ酸配列(配列番号:62)とのアラインメントを示す。
【図9】図9A〜Cは、フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体が、フコシルGM1に特異的に結合することを実証するELISA実験の結果を示す。
【図10】図10A〜Cは、フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体が、フコシルGM1を発現する細胞へ特異的に結合することを実証する全細胞ELISA実験の結果を示す。
【図11】図11A〜Cは、フローサイトメトリー実験の結果を示し、(AおよびB)は、フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体が、フコシルGM1を発現している細胞株DMS79およびH-4-II-Eの細胞表面に結合すること、および(C)は、DMS79細胞が、インビボで(すなわちマウス中への移植後に)フコシルGM1を発現し続けると判明したことを示す。
【図12】図12AおよびBは、フコシルGM1に対するヒトモノクローナル抗体が、フコシルGM1+ 細胞中に内在化することができることを示すHum-Zap内在化実験の結果を示す。
【図13】図13AおよびBは、ヒトモロクローナル抗フコシルGM1抗体が、フコシルGM1を発現する細胞株(A) DMS79および(B) H-4-II-Eを死滅させることを実証する、補体依存性細胞障害性(CDC)細胞増殖分析の結果を示す。
【図14】図14AおよびBは、ヒトモロクローナル抗フコシルGM1抗体が、CD16ブロックの非存在下で、フコシルGM1を発現している細胞株を死滅させることを実証する、抗体依存性細胞障害(ADCC)細胞増殖分析の結果を示す。
【図15】図15A〜Cは、DMS79小細胞肺癌腫瘍細胞(フコシルGM1+)を移植された個々のSCIDマウス中の腫瘍容積を経時的に示す。腫瘍が定着した後に、マウスを次の療法の1つで5回処理した:(A) PBS(媒体対照);(B) マウス当たり30mg/kgでのヒトIgG1 (アイソタイプ対照);(C) マウス当たり10mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体5B1;(D) マウス当たり30mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体5B1;(E) マウス当たり10mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体7E4;または(F) マウス当たり30mg/kgでの抗フコシルGM1モノクローナル抗体7E4。処置初日の腫瘍容積は、約200mm3であった。
【図16】図16AおよびBは、図15に示したマウスの腫瘍容積の平均値および中央値をそれぞれ示す。
【図17】図15に示したマウスの群平均体重を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) フコシルGM1に特異的に結合し;かつ
(b) ヒト小細胞肺癌細胞株DMS-79 (ヒトSCLC ATCC # CRL-2049)に結合する、
単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
IgG1またはIgG4アイソタイプの全長の抗体である、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
抗体断片または一本鎖抗体である、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
フコシルGM1への結合について、以下を含む参照抗体と交差競合(cross-compete)する、単離されたヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分:
(a) ヒト重鎖可変領域が、配列番号:1、2、3、4、5、および6からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;かつ
(b) ヒト軽鎖可変領域が、配列番号:7、8、9、10、11、および12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【請求項5】
ヒト重鎖可変領域が、配列番号:1のアミノ酸配列を含み、かつヒト軽鎖可変領域が、配列番号:7のアミノ酸配列を含む、請求項4記載の抗体。
【請求項6】
ヒト重鎖可変領域が、配列番号:2のアミノ酸配列を含み、かつヒト軽鎖可変領域が、配列番号:8のアミノ酸配列を含む、請求項4記載の抗体。
【請求項7】
ヒト重鎖可変領域が、配列番号:3のアミノ酸配列を含み、かつヒト軽鎖可変領域が、配列番号:9のアミノ酸配列を含む、請求項4記載の抗体。
【請求項8】
ヒト重鎖可変領域が、配列番号:4のアミノ酸配列を含み、かつヒト軽鎖可変領域が、配列番号:10のアミノ酸配列を含む、請求項4記載の抗体。
【請求項9】
ヒト重鎖可変領域が、配列番号:5のアミノ酸配列を含み、かつヒト軽鎖可変領域が、配列番号:11のアミノ酸配列を含む、請求項4記載の抗体。
【請求項10】
ヒト重鎖可変領域が、配列番号:6のアミノ酸配列を含み、かつヒト軽鎖可変領域が、配列番号:12のアミノ酸配列を含む、請求項4記載の抗体。
【請求項11】
ヒトVH 3-48遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3-48遺伝子に由来する重鎖可変領域を含み、フコシルGM1に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
ヒトVκ L15遺伝子の産物である軽鎖可変領域またはヒトVκ L15遺伝子に由来する軽鎖可変領域を含み、フコシルGM1に特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
ヒトVH 3-48遺伝子の産物である重鎖可変領域またはヒトVH 3-48遺伝子に由来する重鎖可変領域をさらに含む、請求項12記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
(a) 配列番号:13を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:19を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:25を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:31を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:37を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:43を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項15】
(a) 配列番号:14を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:20を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:26を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:32を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:38を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:44を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項16】
(a) 配列番号:15を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:21を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:27を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:33を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:39を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:45を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項17】
(a) 配列番号:16を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:22を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:28を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:34を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:40を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:46を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項18】
(a) 配列番号:17を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:23を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:29を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:35を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:41を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:47を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項19】
(a) 配列番号:18を含む重鎖可変領域CDR1;
(b) 配列番号:24を含む重鎖可変領域CDR2;
(c) 配列番号:30を含む重鎖可変領域CDR3;
(d) 配列番号:36を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e) 配列番号:42を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f) 配列番号:48を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項20】
(a) 配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
(a) 配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項22】
(a) 配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項23】
(a) 配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項24】
(a) 配列番号:5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項25】
(a) 配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b) 配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項26】
請求項1記載の抗体またはその抗原結合部分および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項27】
治療薬に連結された請求項1記載の抗体またはその抗原結合部分を含む、免疫接合体(immunoconjugate)。
【請求項28】
請求項27記載の免疫接合体および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項29】
治療薬が細胞毒素である、請求項27記載の免疫接合体。
【請求項30】
請求項29記載の免疫接合体および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項31】
治療薬が放射性同位体である、請求項27記載の免疫接合体。
【請求項32】
請求項31記載の免疫接合体および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項33】
請求項1記載の抗体またはその抗原結合部分をコードする、単離された核酸分子。
【請求項34】
請求項33記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項35】
請求項34記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項36】
請求項35記載の宿主細胞中で抗体を発現させる工程、および宿主細胞から抗体を単離する工程を含む、抗フコシルGM1抗体を調製するための方法。
【請求項37】
フコシルGM1を発現する腫瘍細胞の成長によって特徴付けられる疾病を処置または予防する方法であって、その疾病を処置または予防するのに有効な量の請求項1記載の抗体またはその抗原結合部分を被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項38】
疾病が癌である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
癌が肺癌である、請求項38記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−518050(P2009−518050A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544669(P2008−544669)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/061817
【国際公開番号】WO2007/067992
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(506199879)メダレックス インコーポレーティッド (30)
【Fターム(参考)】