説明

フタレート非含有イソシアヌレート調剤

【課題】フタレート非含有イソシアヌレート調剤を提供する。
【解決手段】低粘度、低モノマー含有率のイソシアヌレート調剤であり、A)ジアルキルアミノ基を有するフェノール系触媒で、65〜95重量%の2,4−ジイソシアナートトルエンと5〜35重量%の2,6−ジイソシアナートトルエンとの混合物から製造され、イソシネート基を含有する、15〜50重量%のイソシアヌレートと、B)アリールアルカンスルホネートを含有する、85〜50重量%のフタレート非含有可塑剤とを含む。可塑化ポリ塩化ビニルをベースとするコーティング組成物用の接着促進剤としてのそれらの使用、ならびにまたコーティングおよびコートされた基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート基を含有するイソシアヌレートとフタレート非含有可塑剤とを含む新規の低モノマー含有率の、低粘度調剤、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)をベースとするコーティング組成物用の接着促進剤としてのそれらの使用、さらにまたコーティングおよびコートされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
基材への可塑化PVCの接着能力がイソシアネート基を含有する接着促進剤を可塑化PVCに添加することによって向上し得ることは知られている。このタイプの向上した接着能力は、一例として、PVCカバーを備えた合成織物材料を製造することを目的としているときに重要である。イソシアネート基を含有し、そしてジイソシアネートからオリゴマー化、特に三量化によって製造することができるイソシアヌレートの接着促進剤としての使用が好ましい。この目的に最も好適なジイソシアネートは、主として2,4−ジイソシアナートトルエン(2,4−TDI)と2,6−ジイソシアナートトルエン(2,6−TDI)とからなる、異性体ジイソシアナートトルエン(TDI)の、容易に商業的に入手可能である混合物である。これらはほぼ完全に、容易に反応してイソシアネート基を含有するイソシアヌレートを生じさせ得る。オペレーター安全性および製品安全性は、接着促進剤調剤中のジイソシアネートの残留含有率が1.0重量%未満に留まることを要求するので、ほぼ完全な反応が必要である。ジイソシアナートジフェニルメタン(MDI)は同様に容易に入手可能であるが、それほど好適ではなく、TDIより三量化するのが困難であり、それ故ジイソシアネートの望ましくないほど高い残留含有率につながり得る。MDIをベースとするイソシアネート基を含有するイソシアヌレートはさらに、不十分な溶解性を示し、かつ、結晶化傾向を有する。
【0003】
イソシアネート基を含有するイソシアヌレートは、それらが可塑剤中の溶液の形態で使用されるときに接着促進剤として取り扱うのが特に容易である。実用的な方法では、イソシアネート基を含有し、そしてTDIから誘導されるイソシアヌレートは、溶媒として使用される可塑剤中で同様に製造される。(特許文献1)は、可塑剤を含むこれらの接着促進剤および接着促進剤調剤、ならびにそれらの調製およびそれらの使用を一例として記載している。
【0004】
可塑剤は、本質的に硬質で脆性のPVCと混合すると、可塑化PVCとして知られる軟質で強靱な材料を生じさせる物質である。公知の可塑剤の例は、フタル酸、アジピン酸または安息香酸のエステルである。可塑化PVCは、大量の、時々可塑化PVCの50重量%より多いこれらの可塑剤を含むことができる。使用条件下で、可塑剤は表面で分離し得るかまたは隣接材料中へ移動し得る。可塑化PVCの使用はそれ故、可塑剤による人のおよび環境の汚染の危険をもたらす。これらの問題を考慮して、使用される可塑剤に課されることが多くなっている要求は、人間に対して、それらが無害であり、そして生物濃縮性ではないことである。
【0005】
(非特許文献1)によれば、可塑剤ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジブチルフタレートおよびベンジルブチルフタレートはもはや、玩具またはベビー用品に使用することができず、かつ、可塑剤ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレートおよびジ−n−オクチルフタレートはもはや、幼児の口に入り得る玩具またはベビー用品に使用することができない。多くの消費者が憂慮すべき、そして理解し難いと考える可能性のあるこれらの制限を考慮して、多くの生産業者は、可塑化PVCの生産においてフタレート含有可塑剤の全面的な廃止を進めつつある。それ故、加工性および使用特性に関してフタレート含有可塑剤の性能レベルを達成するフタレート非含有可塑剤を求める要求がある。
【0006】
本発明の目的のためには、フタレート非含有可塑剤は、ジアルキルフタレートを全く含まない可塑剤、特に0.1重量%未満のジアルキルフタレートを含む可塑剤である。
【0007】
フタレート含有可塑剤の廃止はまた、可塑剤を含む、特に、玩具またはベビー用品などの、注意を要する用途向けの接着促進剤調剤に現在課されている要求である。それ故、フタレートを全く含まないが、それでもなお先行技術のフタレート含有接着促進剤調剤の良好な接着特性を有する接着促進剤調剤を求める主要な要求がある。さらなる要求は、調剤が無色透明であり固形分を含まず、揮発性溶媒を全く含まず、良好な加工性のために23℃で30,000mPasより小さい粘度を有することである。ジイソシアネートの残留含有率は1.0重量%未満であるべきである。先行技術ではこれらの製品特性の全ての組み合わせについての記載はこれまで全くなかった。
【0008】
例えば、(特許文献2)に記載されている、ジイソノニルフタレートをベースとする接着促進剤調剤はもはや、敏感な用途に好適ではない。(特許文献3)および(特許文献4)は、イソシアネート基を含有し、そして接着促進剤として好適であり、そしてTDIをベースとするイソシアヌレートが、中でもフタレート非含有可塑剤である、任意の所望の溶媒中で製造できることを特許請求している。しかしながら、以下に記載される比較例は、全てのフタレート非含有可塑剤が、記載された要件を満たす接着促進剤調剤を必ずもたらすとは限らないことを示す。(特許文献5)は、接着促進剤として、イソシアネート基を含有するがMDIから製造されるイソシアヌレートの好適な溶液を記載している。これらの溶液は、上述の理由によって、不適当である。
【0009】
それ故、調剤がフタレート非含有可塑剤を含むが、それらの機械的特性、例えば、結合強度のレベルは(特許文献2)のフタレート含有接着促進剤調剤の結合強度のレベルと同じものである、イソシアネート基を含有し、そして接着促進剤として好適であるイソシアヌレートの調剤を提供することが本発明の目的であった。イソシアネート基を含有するイソシアヌレートは、TDIの工業的に入手可能な異性体混合物をベースとするべきであり、特に純粋な2,4−TDIの使用は経済的理由で避けられるべきである。調剤は無色透明であるべきであり、それらの粘度は23℃で30,000mPas未満であるべきであり、それらの遊離TDIの含有率は(全ての異性体の)1.0重量%未満であるべきである。
【特許文献1】DE 24 19 016 A1号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/70984 A1号パンフレット
【特許文献3】DE 25 51 634 A1号明細書
【特許文献4】EP 1 378 529 A1号明細書
【特許文献5】DE 30 41 732 A1号明細書
【非特許文献1】欧州連合指令(European Union Directive)第2005/84/EG
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、イソシアネート基を含有し、且つその粘度が23℃で30,000mPas未満であり、且つその遊離TDIの含有率が(全てのTDI異性体の合計の)1.0重量%以下であるイソシアヌレートの調剤であって、
A)イソシアネート基を含有し、且つジアルキルアミノ基を含有するフェノール系触媒による、脂肪族ヒドロキシおよび/またはウレタン基の非存在下での触媒作用で65〜95重量%の2,4−ジイソシアナートトルエンと5〜35重量%の2,6−ジイソシアナートトルエンとを含む異性体ジイソシアナートトルエンの混合物から製造された15〜50重量%のイソシアヌレートと、
B)アリールアルカンスルホネートを含有する85〜50重量%のフタレート非含有可塑剤とを含むことを特徴とする調剤によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態では、調剤は、イソシアネート基を含有する20〜35重量%のイソシアヌレートと、アリールアルカンスルホネートを含有する80〜65重量%のフタレート非含有可塑剤とを含む。
【0012】
成分A)の製造のために、本質的に2,4−TDIと2,6−TDIとからなる工業的に入手可能な混合物が使用される。TDI異性体混合物は好ましくは、15〜25重量%の2,6−TDIとの混合物で75〜85重量%の2,4−TDIを含む。バイエル・マテリアル・サイエンス社(Bayer Material Science AG)から入手できる製品デスモデュール(Desmodur)(登録商標)T80は、使用が好ましいこれらのTDI異性体混合物の例である。
【0013】
成分A)の製造のために、ジアルキルアミノ基を含有するフェノール系触媒がさらに使用され、これらはマンニッヒ(Mannich)塩基として当業者に周知である。DE 25 51 634 A1号明細書および国際公開第2005/70984 A1号パンフレットは、好適なマンニッヒ塩基の合成を一例として記載している。
【0014】
成分A)は、それ自体公知の方法によりジイソシアネート混合物の三量化によって製造され、これらは国際公開第2005/70984 A1号パンフレットに一例として記載されている通りである。三量化は有利には、可塑剤成分B)の存在下に実施される。三量化反応は、40〜140℃、好ましくは40〜80℃の温度範囲で行われる。反応混合物中の遊離TDIの含有率が1.0重量%未満であるとき、三量化は、触媒の熱分解によってあるいは好ましくは触媒毒の添加によって停止される。生成物はそのとき3〜7重量%のイソシアネート基を含む。
【0015】
三量化反応の停止に好適な触媒毒は、酸または酸誘導体、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸、プロピオン酸、異性体フタロイルクロリド、安息香酸もしくは塩化ベンゾイル、またはその他の四級化剤、例えばパラ−トルエンスルホン酸メチル、ジエチル硫酸、またはリン酸のモノ−もしくはジエステルである。パラ−トルエンスルホン酸メチルが好ましくは触媒毒として使用される。
【0016】
本発明によれば、アリールアルカンスルホネートを含む成分B)のフタレート非含有可塑剤は、0.1重量%未満のジアルキルフタレートおよび0.1%より多いアリールアルカンスルホネートを含む。本発明の好ましい一実施形態では、90重量%より多いアリールアルカンスルホネートのフタレート非含有可塑剤が成分B)として使用される。アリールアルカンスルホネートは、第一級または第二級C〜C20アルカンスルホン酸またはこれらのスルホン酸の混合物から誘導される。アリールアルカンスルホネート中に存在するアリール基は、フェニル、1〜5個のC〜C20アルキル基で置換されたフェニル、またはC〜C10アリール基で置換されたフェニルである。フェニルアルカンスルホネートの混合物が成分B)として特に好ましくは存在する。これらの混合物は容易に工業的に入手可能であり、例は、ランクセス独国社(Lanxess Deutschland GmbH)からの製品メサモール(Mesamoll)(登録商標)またはメサモール(登録商標)IIである。
【0017】
本発明の調剤は、数週間の貯蔵後でさえ結晶化もしくは沈澱物の形成への傾向、または相分離への傾向のいずれも有しない、透明の、僅かに黄色がかった液体である。それらはまた、貯蔵後でさえ、遊離TDIの極めて低い含有率を特徴とし、これは、この毒性学的に危険有害なジイソシアネートの沸点が比較的低いために、本発明の調剤の特別な利点である。
【0018】
先行技術によれば、接着促進剤として好適であり、そしてイソシアネート基を含有するイソシアヌレートを含む調剤を製造する最良の方法は可塑剤中でのジイソシアネートの三量化であり、三量化反応の進行は触媒によってのみならず、一例として、使用される可塑剤、TDIの異性体組成、または反応中に存在する任意の化合物、例えばヒドロキシ基を含有する化合物によっても影響を受けるので、ヒドロキシ化合物が全く存在しない状態で、可塑剤、触媒および最大量の2,6−TDIの本発明に不可欠である組み合わせが特に、要求される特性の接着促進剤調剤を提供することは意外であった。以下に記載される比較例2および3は、本発明の基礎をなす目的がランダムに選択されたフタレート非含有可塑剤を使用して達成できるわけではないことを実際に示す。
【0019】
本発明の調剤は、可塑化PVC用の接着促進剤として、特にPVCプラスチゾル用の接着促進添加剤として好適である。本発明の調剤は、イソシアネート基に対して反応性である基を有する合成繊維、例えばポリアミド繊維またはポリエステル繊維からなる基材とPVCプラスチゾルまたは可撓性PVC溶融物との間の接着促進剤として特に有利に使用される。本発明の溶液はまた、当然ながら、可塑化PVCのまたはPVCスラスチゾルのシート様基材への、例えば箔への接着性を向上させるためにも使用することができる。
【0020】
本発明はそれ故、可塑化PVCをベースとするコーティング組成物用の接着促進剤としての本発明の調剤の使用をさらに提供する。
【0021】
本発明の調剤の本発明の使用において可能な手順の例は、本発明の調剤を、印刷、へら付け、スクリーン法もしくは吹き付け、または浸漬コーティングによってコートしようとする基材へ塗布する。製造しようとする製品に応じて、1つ以上の接着促進剤を含まないPVC層が、例えばプラスチゾルの形態でまたは押出コーティングによってもしくはホットメルトコーティングによってまたは積層によって、得られた前処理基材表面に塗布される。本発明の調剤はまた、その塗布の前にPVCプラスチゾルに特に好ましくは加えられる。
【0022】
本発明の調剤の通常使用される量は、イソシアネート基を含有するイソシアヌレートの存在量が、コーティング組成物の可塑剤を含まないPVCを基準にして0.5〜200重量%、好ましくは2〜30重量%であるようなものである。しかしながら、本発明の溶液のそれぞれの用途分野に適切な任意の所望の他の量を用いることも可能である。
【0023】
完成層の生成、すなわち接着促進剤のイソシアネート基と基材との反応、およびPVC層のゲル化は、比較的高い温度で、通常の方法で塗布モードとは独立して行われ、用いられる温度は、PVC層の組成に応じて110〜210℃である。
【0024】
本発明は、上記の接着促進剤調剤を使用して得られる、織物または布用のコーティングおよびコートされた基材をさらに提供する。本発明の調剤は、可塑化PVCをベースとするコーティングのための、特に防水布、掲示板、空気膜構造物および他の織物構造物、可撓性容器、多角形屋根、天幕、防護衣、コンベヤーベルト、フロックカーペットまたは発泡合成皮革の製造のための接着促進剤として好適である。本発明の調剤は、イソシアネート基に対して反応性である基を有する基材のコーティングで、特にポリエステル繊維からまたはポリアミド繊維からなる糸、マットおよび布のコーティングで添加される接着促進剤として特に良好な適性を有する。
【0025】
以下の実施例は本発明の例示をさらに提供するが、本発明をそれによって限定する意図はない。
【実施例】
【0026】
全ての部および百分率は、特記のない限り重量を基準とする。
【0027】
測定される製品特性は、固形分含有率(厚層方法:蓋、1gの試料、1時間125℃、対流式オーブン、DIN EN ISO 3251に基づく方法)、23℃での粘度(ハーケ社、カールスルーエ、独国(Haake GmbH,Karlsruhe,Germany)製のVT550回転粘度計)、およびまた遊離TDIの含有率(DIN ISO 55956通りのガスクロマトグラフィー、ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)5890)であった。イソシアネート含有率は、EN ISO 11909通りに測定した。
【0028】
出発原料
デスモデュール(登録商標)T80:80重量%の2,4−TDIと20重量%の2,6−TDIとからなるTDI異性体混合物、バイエル・マテリアル・サイエンス社
ベスチノル(Vestinol)(登録商標)9DINP:ジイソノニルフタレート、オキセノ社(Oxeno GmbH)
ベスチノル(登録商標)AH:ジ−2−エチルヘキシルフタレート、オキセノ社
アジモール(Adimoll)(登録商標)DO:ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ランクセス独国社
ベンゾフレックス(Benzoflex)(登録商標)2088:ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートおよびジプロピレングリコールジベンゾエートからなる混合物、ベルシコール・ケミカル社(Velsicol Chemical Corp.)
メサモール(登録商標):フェニルアルカンスルホネート、ランクセス独国社
メサモール(登録商標)II:0.25重量%以下の揮発性パラフィン系化合物入りフェニルアルカンスルホネート、ランクセス独国社。
【0029】
触媒(DE 24 52 532 A1号明細書に従って調製):188重量部のビスフェノールAを720部の25%濃度ジメチルアミン水溶液および425重量部の40%濃度ホルムアルデヒド水溶液と2時間80℃に加熱した。冷却後に、有機相を分離し、90℃および15ミリバールで濃縮した。残留物を、等容量の酢酸ブチルとキシレンとからなる混合物に取り上げ、得られた触媒液はそれ故30重量%の所望のマンニッヒ塩基を含んだ。以下の実施例での定量的なデータはこの触媒液をベースとする。
【0030】
比較例1(本発明に係らない)
180部のデスモデュール(登録商標)T80を、7.85部の触媒液で489部のベスチノル(登録商標)9DINP中45℃で三量化した。84時間後に、反応を、4.65部のパラ−トルエンスルホン酸メチルを加えることによって中断し、混合物の撹拌を60〜70℃で1時間続けた。固形分含有率を、13.4部のベスチノル(登録商標)9DINPを加えることによって27%に調整した。これにより、4.7%のイソシアネート含有率の、23℃で5700mPasの粘度の、そして0.16%の遊離TDI含有率の無色透明な溶液が得られた。
【0031】
比較例2(本発明に係らない)
180部のデスモデュール(登録商標)T80を、2.2部の触媒液で414部のアジモール(登録商標)DO中45℃で三量化した。著しい混濁が起こり、得られた生成物はそれ故均質ではなかったので、5時間後に、反応を、停止剤を加えることによって中断した。
【0032】
比較例3(本発明に係らない)
180部のデスモデュール(登録商標)T80を、1.8部の触媒液で414部のベンゾフレックス(登録商標)2088中45℃で三量化した。84時間後に、反応を、1.65部のパラ−トルエンスルホン酸メチルを加えることによって中断し、混合物の撹拌を60〜70℃で1時間続けた。これにより、4.8%のイソシアネート含有率の、23℃で200,000mPasより大きい粘度の、そして1.09%の遊離TDI含有率の無色透明な溶液が得られた。
【0033】
比較例1は、EP 1 711 546 A1号明細書の実施例2に相当し、本発明の接着促進剤調剤の特性の先行技術との比較を可能にするのに役立つ。本発明に係らない比較例2および3によって示されるように、溶媒の選択は三量化の結果に決定的な影響を及ぼす。これは、所望の特性組み合わせが先行技術に記載されたフタレート非含有可塑剤、例えばジ−2−エチルヘキシルアジペートまたはアルキレングリコールジベンゾエート混合物を使用することによって達成できないことを意味する。
【0034】
本発明の実施例1
180部のデスモデュール(登録商標)T80を、7.85部の触媒液で489部のメサモール(登録商標)中45℃で三量化した。84時間後に、反応を、4.65部のパラ−トルエンスルホン酸メチルを加えることによって中断し、混合物の撹拌を60〜70℃で1時間続けた。固形分含有率は約27%であった。これにより、5.3%のイソシアネート含有率の、23℃で10,400mPasの粘度の、そして0.78%の遊離TDI含有率の無色透明な溶液が得られた。
【0035】
本発明の実施例2
180部のデスモデュール(登録商標)T80を、7.85部の触媒液で420部のメサモール(登録商標)II中50℃で三量化した。84時間後に、反応を、4.65部のパラ−トルエンスルホン酸メチルを加えることによって中断し、混合物の撹拌を60〜70℃で1時間続けた。固形分含有率を、メサモール(登録商標)IIを加えることによって26%に調整した。これにより、4.8%のイソシアネート含有率の、23℃で11,600mPasの粘度の、そして0.25%の遊離TDI含有率の無色透明な溶液が得られた。
【0036】
性能試験および試験結果
ポリエステル布に、工業的条件に近い試験システムでPVCプラスチゾル/接着促進剤コーティングを施した。このコーティングの結合強度を次に、標準化試験ストリップに関して測定した。このために、ナイフを用いて接着促進剤を含む接着剤コートと他の同一組成物を使用する2つの接着促進剤を含まないトップコートとをポリエステル布に塗布した。これらのコーティングをオーブン中で十分にゲル化させてさらなる試験のために使用した。結合強度についての試験は、その後2つの層をさらに分離する引張試験機でコーティングおよび布の締め付けを可能にするために布からコーティングの数センチメートルを剥離することを伴った。コーティングの最初の数センチメートルはそれ故、容易な手動分離ができることを意図される。これは、付着防止含浸材料(表1)を約5cmの幅にわたって使用することによって達成され、この材料の薄層を布の一端に手動操作のナイフを用いて塗布した。
【0037】
【表1】

【0038】
材料を布の一面(接着コートもその後塗布される)に塗布した。さらなる加工の前に、付着防止含浸材料を通気室中で乾燥させた。
【0039】
試験機器
天秤:最小精度0.1g
撹拌機:高回転バー撹拌機
対流式オーブン:T=140℃および175℃
手動操作ナイフ、幅150mm
ナイフ−オーバー−ゴム−ブランケットコーター、幅約45cm、鋭い刃のナイフ付き
ナイフ−オーバー−ゴム−ブランケットコーター、幅約45cm、鈍い刃のナイフ付き
ポリエステル布:リュッケンハウス(Lueckenhaus)、1100デシテックス、平織1/1構成、設定:cm当たり9/9エンド/ピック
【0040】
試験のために使用した布試料のサイズは約40×25cmであった。
【0041】
PVCプラスチゾルの調製
【0042】
【表2】

【0043】
PVCプラスチゾルを調製するために、表2にリストする出発原料を、真空で、水冷しながら、ドライス(Drais)ミキサーにて最高回転速度で2.5時間撹拌することによって混合した。
【0044】
接着剤コート
様々な接着促進剤含有率(表3を参照されたい)の上記プラスチゾルをベースとする接着剤コートを、鋭い刃のナイフでのナイフ−オーバー−ゴム−ブランケット法を用いてポリエステル布に塗布した。ここで塗布された重量は約100g/mであり、それぞれコーティングを約30×20cmの面積に塗布した。接着剤コートを次に、トップコートを塗布する前に対流式オーブン中140℃で2分の貯蔵によってプレゲル化させた。
【0045】
第1トップコート
上述のプラスチゾルをベースとする第1トップコートを、鈍い刃のナイフを用いるナイフ−オーバー−ゴム−ブランケット法によって塗布し(約850g/mの塗布重量)、オーブン中140℃で1分間熱順化させることによってプレゲル化させた。
【0046】
布の裏面用のコーティング
布の裏面上の次のトップコートは、引張機による層の分離中に布の引裂およびほつれを抑えた。布の裏面上のコーティングを、鈍い刃のナイフでのナイフ−オーバー−ゴム−ブランケット法を用いて塗布し(約150g/mの塗布重量)、オーブン中140℃で1分間熱順化させることによってプレゲル化させた。
【0047】
第2トップコート
上記のPVCプラスチゾルを同様にベースとする第2トップコートを、鈍い刃のナイフでのナイフ−オーバー−ゴム−ブランケット法を用いて第1プレゲル化トップコート上へ塗布し(約1400g/mの塗布重量)、オーブン中140℃で2分間熱順化させることによってプレゲル化させた。
【0048】
塗布された層の全ての完全ゲル化を次に175℃で12分間行った。
【0049】
サイズ5×26cmの試験試料を、得られた布試料から打ち抜いた。
【0050】
結合強度を、ロイド(Lloyd)M5K引張機を用いてこれらの試料に関して測定した。得られた結合強度値は、5cmのコーティングを裏地から剥離するのに必要とされるニュートン単位での力を示す(剥離試験)。表3に提示される値は、少なくとも3つの個々の測定値を平均することによって得られた。
【0051】
【表3】

【0052】
本発明の実施例1および2についての試験結果によって示されるように、本発明のフタレート非含有接着促進剤調剤の使用は、先行技術のフタレート含有接着促進剤調剤(比較例1)を使用して達成されるものと類似の結合強度値を示す。比較例2および3の接着促進剤は、これらが曇っている(比較例2)か、均質なコーティングをもたらすには粘稠すぎる(比較例3)かのいずれかであったので、さらなる加工にとって好適ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を含有し、且つその粘度が23℃で30,000mPas未満であり、且つその遊離ジイソシアナートトルエンの含有率が(全てのジイソシアナートトルエン異性体の合計の)1.0重量%以下であるイソシアヌレートの調剤であって、
A)ジアルキルアミノ基を含有するフェノール系触媒による、脂肪族ヒドロキシおよび/またはウレタン基の非存在下での触媒作用で、65〜95重量%の2,4−ジイソシアナートトルエンと5〜35重量%の2,6−ジイソシアナートトルエンとを含む異性体ジイソシアナートトルエンの混合物から製造され、イソシアネート基を含有する、15〜50重量%のイソシアヌレートと、
B)アリールアルカンスルホネートを含有する、85〜50重量%のフタレート非含有可塑剤と
を含むことを特徴とする調剤。
【請求項2】
イソシアネート基を含有する20〜35重量%のイソシアヌレートとアリールアルカンスルホネートを含有する80〜65重量%のフタレート非含有可塑剤とを含むことを特徴とする請求項1に記載の調剤。
【請求項3】
イソシアネート基を含有する前記イソシアヌレートが75〜85重量%の2,4−ジイソシアナートトルエンと15〜25重量%の2,6−ジイソシアナートトルエンとの混合物から製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の調剤。
【請求項4】
アリールアルカンスルホネートを含有する、前記フタレート非含有可塑剤が90重量%を超えるアリールアルカンスルホネートを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の調剤。
【請求項5】
前記アリールアルカンスルホネートがフェニルアルカンスルホネートの混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の調剤。
【請求項6】
可塑化ポリ塩化ビニルをベースとするコーティング組成物用の接着促進剤としての請求項1〜5のいずれか一項に記載の調剤の使用。
【請求項7】
前記コーティング組成物が防水布、掲示板、空気膜構造物および他の織物構造物、可撓性容器、多角形屋根、天幕、防護衣、コンベヤーベルト、フロックカーペットまたは発泡合成皮革の製造のために使用されることを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の調剤を使用して得られる織物または布用のコーティング。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティングでコートされた基材。
【請求項10】
織物ポリエステル布または織物ポリアミド布であることを特徴とする請求項9に記載の基材。

【公開番号】特開2009−132866(P2009−132866A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−192715(P2008−192715)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】