説明

フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜及びその製造方法

親水性に優れ、且つ強度、伸度および透水量のバランスのとれた精密濾過膜あるいは電池用セパレータとして有用なフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を、フッ化ビニリデン系単量体100モルと、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種を有する親水性単量体0.01〜10.0モルとの共重合体であるフッ化ビニリデン系共重合体により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、親水性に優れ、且つ強度、伸度および透水量のバランスのとれたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
従来より薬剤または細菌等の精密濾過膜として、あるいは電池用セパレータとして、耐候性、耐薬品性、耐熱性および強度等に優れているフッ化ビニリデン系樹脂製の多孔膜が使用されている。
これらフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造のためには、例えばポリフッ化ビニリデン樹脂にフタル酸ジエチル等の有機液状体と無機微粉体として疎水性シリカを混合し、溶融成形後に有機液状体と疎水性シリカを抽出する方法(特開平3−215535号公報)、フッ化ビニリデン系樹脂を、制御された条件での結晶化−熱処理−延伸−緊張熱処理して多孔膜化する方法(特開昭54−62273号公報)、特定の分子量のフッ化ビニリデン系樹脂を可塑剤とともに製膜後、片側から冷却し次いで可塑剤を抽出する方法(特開平7−13323号公報)、通常分子量のフッ化ビニリデン系樹脂に耐熱変形性の向上のための高分子量フッ化ビニリデン系樹脂と有機質多孔化剤または無機質多孔化剤とを配合して膜形成した後、多孔化剤を抽出除去することにより、あるいは無機質多孔化剤の場合には、これを延伸時の応力集中核として作用させることにより、膜に孔を発生させて多孔膜とする方法(特開2000−309672号公報)、等が提案されている。
このようにして得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、前述したように耐候性、耐薬品性、耐熱性および強度等に優れるものであるが、浄水処理膜等とし用いる場合のタンパク質等の有機物による汚染(目詰り)を防止して長期間に亘って透水量の低下を防止することが求められ、そのため、フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を親水化することが提案されている。より具体的には、親水化手段としては、中空糸膜表面をエチレン−ビニルアルコール共重合体で被覆する方法(特開2002−233739号公報)および湿潤膜上にポリビニルピロリドン架橋体を形成する方法(特開平11−302438号公報)が提案されている。
しかしながら、これら従来技術には、▲1▼被覆や架橋操作が必要であり工程が多くなる、▲2▼被覆物や架橋体により本来の孔構造が変化し、透水性の制御が難しいとともに、これら処理によって初期の透水量が大幅に低下する、▲3▼本来フッ化ビニリデンの持つ耐オゾンや耐塩素といった耐薬品性が生かしにくい、等の問題があった。
【発明の開示】
本発明の主要な目的は、上記した従来技術の▲1▼〜▲3▼等の問題を起さずに親水性が改善され、且つ初期透水量も増大したフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を提供することにある。
本発明の更なる目的は、強度および伸度も改善され、従って強度、伸度および透水量のバランスのとれたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を提供することにある。
本発明者らは、上述の目的で研究した結果、その達成のためには、原料フッ化ビニリデン系樹脂として、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種の親水性基を有するフッ化ビニリデン系共重合体を用いることが極めて有効であることを見出した。
すなわち、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、フッ化ビニリデン系単量体100モルと、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種を有する親水性単量体0.01〜10.0モルとの共重合体であるフッ化ビニリデン系共重合体を含むことを特徴とするものである。
上記本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、親水化処理の結果として、透水性が初期的にも改善されているほか、強度および伸度も改善されていることが特徴的である。これは、少量の親水性単量体の配合による共重合の結果として、溶融、冷却による製膜条件下での球晶の発達が抑制され、これが最終的に製造される多孔膜の強度および伸度等の機械的特性の改善につながっていると考えられる。
発明を実施するため最良の形態
以下、本発明の好ましい実施形態を逐次説明する。
<フッ化ビニリデン系共重合体>
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜を構成するフッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデン系単量体100モルと、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種を有する親水性単量体0.01〜10.0モルとの共重合体である。フッ化ビニリデン系単量体100モルに対して、親水性単量体が0.01モル未満では、フッ化ビニリデン単独重合体に比べて、親水性共重合体を形成する効果に乏しく、10.0モルを超えると、フッ化ビニリデン系単量体との共重合時間が長くなり、生産性が極端に悪化するうえ、得られるフッ化ビニリデン系共重合体において、耐候性、耐薬品性、耐熱性等のフッ化ビニリデン系樹脂の固有の性質が失われる。親水性単量体の共重合割合は、より好ましくは0.05〜7モル、更に好ましくは0.1〜5モルである。親水性単量体を二種以上併用するときは、合計量について定める。
(フッ化ビニリデン系単量体)
フッ化ビニリデン系単量体としては、フッ化ビニリデン単量体に加えて、フッ化ビニリデンと共重合し得る慣用の単量体群(すなわち、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルビニルエーテル)の一種以上が含まれ得る。但し、耐薬品性、耐候性、耐熱性等のフッ化ビニリデン系樹脂の優れた性質を損なわないために、フッ化ビニリデン系単量体中のフッ化ビニリデン単量体は70モル%以上であることが好ましい。
(親水性単量体)
親水性単量体としては、グリジジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレートおよび1−メチルグリシジル(メタ)アクリレートおよびグリシジルアリルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種のエポキシ基含有ビニル単量体(なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」の表現は、アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方を示す意味で用いられている);
ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ基含有ビニル単量体;
マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、アクリル酸、メタクリル酸およびβ−メタクリロイルオキシエチルハイドロジエンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも一種のカルボキシ基含有ビニル単量体;
酢酸ビニル、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルエステル、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルエステル、メタクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルエステル、ビニレンカーボネートおよびプロピオン酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種のエステル基含有ビニル単量体;
ダイアセトンアクリルアミド、メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミド基含有ビニル単量体;
無水マレイン酸および無水シトラコン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸無水物基含有ビニル単量体;
あるいはこれらの混合物が用いられる。
(物性)
フッ化ビニリデン系共重合体は、融点(DSC(示差走査熱量測定)による窒素雰囲気中での10℃/分の昇温における結晶融解に伴う最大吸熱ピーク温度を指すものとする)が150〜180℃であることが好ましい。融点が150℃未満では、生成する多孔膜の耐熱変形性が不充分となりがちであり、180℃を超えると溶融成形性が低下し、均一な膜形成が困難となりがちである。
またフッ化ビニリデン系共重合体は、平均分子量に相当するインヘレント粘度(樹脂4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度)が、0.5〜5dl/gであることが好ましい。上限および下限の理由は、融点における、それらとほぼ同様である。
(重合)
本発明で用いるフッ化ビニリデン系共重合体は、任意の重合法で形成可能であるが、上記したような比較的高フッ化ビニリデン含量で且つ高融点・高分子量のフッ化ビニリデン系共重合体は、好ましくは乳化重合あるいは懸濁重合、特に好ましくは懸濁重合により得ることができる。
<フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造>
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、前述した特開平3−215535号公報、特開昭54−62273号公報、特開平7−13323号公報等の従来のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法によって製造することも可能である。しかし、本発明に従い、フッ化ビニリデン系単量体100モルと、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種を有する親水性単量体0.01〜10.0モルとの共重合体であるフッ化ビニリデン系共重合体を含むフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対し、可塑剤を70〜250重量部および該共重合体の良溶媒5〜80重量部を添加し、得られた組成物を膜状に溶融押出し、その片側面から優先的に冷却して固化成膜した後、可塑剤を抽出し、更に延伸することを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法により製造することが、引張り強度、破断伸度等の機械的強度に優れ、且つ孔径分布幅の狭い多孔膜を得るために好ましい。以下、この製造方法について逐次説明する。
本発明に従い、上記のフッ化ビニリデン系共重合体に、フッ化ビニリデン系共重合体の可塑剤および良溶媒を加えて膜形成用の原料組成物を形成する。
(可塑剤)
可塑剤としては、一般に、二塩基酸とグリコールからなる脂肪族系ポリエステル、例えば、アジピン酸−プロピレングリコール系、アジピン酸−1,3−ブチレングリコール系等のアジピン酸系ポリエステル;セバシン酸−プロピレングリコール系、セバシン酸系ポリエステル;アゼライン酸−プロピレングリコール系、アゼライン酸−1,3−ブチレングリコール系等のアゼライン酸系ポリエステル等が用いられる。
(良溶媒)
また、フッ化ビニリデン系共重合体の良溶媒としては、20〜250℃の温度範囲でフッ化ビニリデン系共重合体を溶解できる溶媒が用いられ、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、プロピレンカーボネート、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、ジメチルフタレート、およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。なかでも高温での安定性からN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。
(組成物)
膜形成用の原料組成物は、好ましくはフッ化ビニリデン系共重合体を含むフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対し、可塑剤70〜250重量部および良溶媒5〜80重量部を混合することにより得られる。
フッ化ビニリデン系樹脂は、上記フッ化ビニリデン系共重合体のみからなることが好ましいが、必要に応じて、これと熱混和性の他の熱可塑性樹脂、特に上記したフッ化ビニリデン系単量体の一種以上の(共)重合体、と混合して用いることもできる。但し、この場合も、フッ化ビニリデン系樹脂中に、上記親水性単量体の重合単位が0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上含まれ、フッ化ビニリデン単量体の重合単位が70重量%以上含まれることが好ましい。
フッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、可塑剤が70重量部未満であると、空孔率が低くなるため電池セパレータにおいては電解液の含浸性が劣り、あるいは電気抵抗が増し、精密ろ過膜においてはろ過性能(透水量)に劣る。また、250重量部を超えると空孔率が大きくなり過ぎるため、機械的強度が低下する。
フッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、良溶媒が5重量部未満ではフッ化ビニリデン系樹脂と可塑剤を均一に混合できなかったり、あるいは混合に時間を要する。また、80重量部を超えると可塑剤の添加量に見合った空孔率が得られない。すなわち可塑剤の抽出による効率的な空孔形成が阻害される。
可塑剤と良溶媒の合計量は100〜250重量部の範囲が好ましい。両者はいずれも溶融押出し組成物の粘度低減効果があり、ある程度代替的に作用する。そのうち良溶媒は、5〜30重量%の割合が好ましい。
(混合・溶融押出し)
溶融押出組成物は、一般に140〜270℃、好ましくは150〜230℃の温度で、中空ノズルあるいはT−ダイから押出されて膜状化される。従って、最終的に、上記温度範囲の均質組成物が得られる限りにおいて、フッ化ビニリデン系樹脂、可塑剤および良溶媒の混合並びに溶融形態は任意である。このような組成物を得るための好ましい態様の一つによれば、二軸混練押出機が用いられ、フッ化ビニリデン系樹脂は、該押出機の上流側から供給され、可塑剤と良溶媒の混合物が、下流で供給され、押出機を通過して吐出されるまでに均質混合物とされる。この二軸押出機は、その長手軸方向に沿って、複数のブロックに分けて独立の温度制御が可能であり、それぞれの部位の通過物の内容により適切な温度調節がなされる。
(冷却)
本発明法に従い、溶融押出された膜状物は、その片面側から冷却・固化される。冷却は、T−ダイから押出された平坦シート状物が、表面温度調節された冷却ドラムないしローラと接触させることにより行われ、ノズルから押出された中空糸膜の場合は、水等の冷却媒体中を通過させることにより行われる。冷却ドラム等あるいは冷却媒体の温度は5〜120℃とかなり広い温度範囲から選択可能であるが、好ましくは10〜100℃、特に好ましくは30〜80℃の範囲である。
(抽出)
冷却・固化された膜状物は、次いで抽出液浴中に導入され、可塑剤および良溶媒の抽出除去を受ける。抽出液としては、ポリフッ化ビニリデン系共重合体を溶解せず、可塑剤や良溶媒を溶解できるものであれば特に限定されない。例えばアルコール類ではメタノール、イソプロピルアルコールなど、塩素化炭化水素類ではジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタンなど、の沸点が30〜100℃程度の極性溶媒が適当である。
(熱処理)
抽出後の膜状物は、次いで引き続く延伸操作性の向上のために、80〜160℃、好ましくは100〜400℃の範囲1秒〜3600秒、好ましくは3秒〜900秒、熱処理して、結晶化度を増大させることが好ましい。
(延伸)
膜状物は、次いで延伸に付され、空孔率および孔径の増大並びに強伸度の改善を受ける。延伸は、例えばテンター法による二軸延伸も可能であるが、一般に、周速度の異なるローラ対等による膜状物の長手方向への一軸延伸を行うことが好ましい。これは、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の多孔率と強伸度を調和させるためには、延伸方向に沿って延伸フィブリル(繊維)部と未延伸ノード(節)部が交互に現われる微細構造が好ましいことが知見されているからである。延伸倍率は、1.2〜4.0倍、特に1.4〜3.0倍程度が適当である。
上記のようにして、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜が得られるが、更に塩基溶液により処理されることが好ましい。それは、このような塩基溶液処理により、フッ化ビニリデン系共重合体の親水性が更に向上し、多孔膜の透水量が改善されるからである。より詳しくは、例えば本発明のフッ化ビニリデン系共重合体は、ヒドロキシ基−OH、カルボキシ基−COOH、エポキシ基−C(O)C−のいずれか少なくとも一種を有するが、これらが塩基溶液で処理されると、そのイオン体−Oまたは−Oあるいはイオン体−COOまたは−COO(Mはカウンターカチオン)に変化し、より大なる親水性を示すようになり、これに伴い得られる多孔膜の透水量が向上する。塩基溶液はpH12以上のものが好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムのような無機アルカリ(土類)金属の水酸化物の水溶液やアルコール溶液(アルコラート)、アンモニア水、メチルアミンやジメチルアミンのような有機アミン類、などとして得られる。
(フッ化ビニリデン系樹脂多孔膜)
上記のようにして得られる本発明のフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜によれば、一般に空孔率が55〜90%、好ましくは60〜85%、特に好ましくは65〜80%、引張り強度が5MPa以上、破断伸度が5%以上の特性が得られ、これを透水処理膜として使用する場合には5m/m・day・100kPa以上の透水量が得られる。また厚さは、5〜800μm程度の範囲が通常であり、好ましくは50〜600μm、特に好ましくは150〜500μmである。中空糸の場合、その外径は0.3〜3mm程度、特に1〜3mm程度が適当である。
また、上記本発明の製造方法により得られたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜は、微細構造として、X線回折法により結晶配向部と、結晶非配向部(ランダム配向部)が認められることが特徴であり、これはそれぞれ延伸フィブリル部と未延伸ノード部に対応するものと解される。
(X線回折法)
より詳しくは、本明細書に記載する膜状物のX線回折特性は、以下の測定法(より詳細を必要であればPCT/JP2004/003074の明細書参照)による測定結果に基づくものである。
膜状物が中空糸の場合は長手方向に沿って半割にしたものを、その長手方向が鉛直となるように試料台に取り付け、長手方向に垂直にX線を入射する。X線発生装置は理学電機社製「ロータフレックス200RB」を用い、30kV−100mAでNiフィルタを通したCuKα線をX線源とする。イメージングプレート(富士写真フィルム社製「BAS−SR127」)を用いて、試料−イメージングプレート間距離60mmで回折像を撮影する。
結果的に、本発明の多孔膜における結晶配向部と結晶非配向部の混在は、X線回折法による回折角2θ=20.1±1°と2θ=23.0±1°における子午線上での回折強度比が1.1以上、好ましくは1.2以上で、且つ2θ=20.1±1°における方位角強度分布曲線ピークの半値幅Δβが80°以下、好ましくは60°以下であることで、定量的に表現される。
【実施例】
以下、実施例、比較例により、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載を含め、上記したX線回折特性以外の本明細書に記載の特性は、以下の方法による測定値に基くものである。
(インヘレント粘度)
樹脂濃度4g/LのN,N−ジメチルホルムアミド中溶液の30℃における対数粘度である。
(融点)
フッ化ビニリデン系樹脂試料5mgをアルミ製パンに充填し、Mettler社の「TC10A型TA Processor」を用いて、10℃/minの速度で示差走査熱量測定を行った。2回目の昇温時の吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。
(接触角)
フッ化ビニリデン系樹脂試料の230℃熱間プレスシートを、5重量%および1重量%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に70℃で1.5時間浸漬後に水洗したものをサンプルとし、KYOWA界面化学社の「FACECONTACT−ANGLE−METTER CA−D」を用いて接触角測定を行った。
(空孔率)
多孔膜の長さ、並びに幅および厚さ(中空糸の場合は外径および内径)を測定して多孔膜の見掛け体積V(cm)を算出し、更に多孔膜の重量W(g)を測定して次式より空孔率を求めた。

(透水量(フラックス))
多孔膜をエタノールに15分間浸漬し、次いで水に15分間浸漬して親水化した後、水温25℃、差圧100kPaにて測定した。多孔膜が中空糸形状の場合、膜面積は外径に基いて次式により算出した。

(引張り強度および破断伸度)
引張り試験機(東洋ボールドウィン社製「RTM−100」)を使用して、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で初期試料長100mm、クロスヘッド速度200mm/分の条件下で測定した。
実施例1(VDF/HEMA=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、酢酸エチル1.2g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、ヒドロキシエチルメタクリレート4gを仕込み(フッ化ビニリデン:ヒドロキシエチルメタクリレート(モル比)=100:0.49)、29℃で30時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(1)を得た。重合収率90重量%、インヘレント粘度1.47dl/g、融点は174℃であった。
重合体粉末(1)を37.5重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)7.8重量%、アジピン酸系ポリエステル可塑剤(旭電化工業株式会社製、「PN−150」)54.7重量%を30mmφ二軸押出機で混合し、中空糸状妨口を取り付けて紡糸し空中を経て12℃の水槽中に5m/minの紡速で溶融押出しして、中空糸状に成形して巻き取った。次いで、巻き取った中空糸を、室温の塩化メチレン中に振動を与えながら30分間浸漬を2回繰り返して、NMPとPN−150を押出した後、室温で延伸し120℃で熱処理・乾燥して外径:1.487mm、内径:0.721mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例2−1(VDF/2M−GMA=100/0.5(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、酢酸エチル2.0g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、2−メチルグリシジルメタクリレート2gを仕込み(フッ化ビニリデン:2−メチルグリシジルメタクリレート(モル比)=100:0.20)、28℃で36時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(2−1)を得た。重合収率87重量%、インヘレント粘度1.49dl/g、融点は174℃であった。
重合体粉末(2−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.467mm、内径:0.771mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例2−2(VDF/2M−GMA=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、酢酸エチル2.0g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、2−メチルグリシジルメタクリレート4gを仕込み(フッ化ビニリデン:2−メチルグリシジルメタクリレート(モル比)=100:0.41)、28℃で27時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(2−2)を得た。重合収率90重量%、インヘレント粘度1.52dl/g、融点は174℃であった。
重合体粉末(2−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.526mm、内径:0.767mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例2−3(VDF/2M−GMA=100/5(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、2−メチルグリシジルメタクリレート20gを仕込み(フッ化ビニリデン:2−メチルグリシジルメタクリレート(モル比)=100:2.1)、28℃で26.5時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(2−3)を得た。重合収率90重量%、インヘレント粘度1.84dl/g、融点は171℃であった。
重合体粉末(2−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.621mm、内径:0.776mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例3−1(VDF/GMA=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、グリシジルメタクリレート4gを仕込み(フッ化ビニリデン:グリシジルメタクリレート(モル比)=100:0.45)、28℃で26時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(3−1)を得た。重合収率90重量%、インヘレント粘度1.79dl/g、融点は174℃であった。
重合体粉末(3−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.489mm、内径:0.795mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例3−2(VDF/GMA=100/3(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、グリシジルメタクリレート12gを仕込み(フッ化ビニリデン:グリシジルメタクリレート(モル比)=100:1.35)、28℃で32時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(3−2)を得た。重合収率93重量%、インヘレント粘度1.77dl/g、融点は173℃であった。
重合体粉末(3−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.503mm、内径:0.743mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例4(VDF/MAA/HEMA=100/1/0.5(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)3.2g、フッ化ビニリデン400g、メタクリル酸4g、ヒドロキシエチルメタクリレート2gを仕込み(フッ化ビニリデン:メタクリル酸:ヒドロキシエチルメタクリレート(モル比)=100:0.74:0.25)、28℃で23時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(4)を得た。重合収率95重量%、インヘレント粘度1.88dl/g、融点は173℃であった。
重合体粉末(4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.417mm、内径:0.707mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例5(VDF/CTFE/HFP/2M−GMA=96.5/2/1.5/1重量)
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.6g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)0.88g、フッ化ビニリデン386g、クロロトリフルオロエチレン8g、6フッ化プロピレン6g、2−メチルグリシジルメタクリレート4gを仕込み(フッ化ビニリデン:クロロトリフルオロエチレン:6フッ化プロピレン、2−メチルグリシジルメタクリレート(モル比)=98.2:1.1:0.7:0.41)、28℃で52時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗・脱水後、80℃で20時間乾燥して重合体粉末(5)を得た。重合収率90重量%、インヘレント粘度3.43dl/g、融点は163℃であった。
重合体粉末(5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.683mm、内径:0.786mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例6(VDF/MMM=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、酢酸エチル2.5g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート4g、フッ化ビニリデン396g、マレイン酸モノメチルエステル4.0gを仕込み(フッ化ビニリデン:マレイン酸モノメチルエステル(モル比)=100:0.50)、28℃で47時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末(6)を得た。重合収率80重量%、インヘレント粘度1.13dl/g、融点は169℃であった。
重合体粉末(6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.526mm、内径:0.801mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例7(VDF/VAc=100/3(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.2g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート(以下NPP)6.4g、フッ化ビニリデンモノマー400g、酢酸ビニルモノマー12g(フッ化ビニリデン:酢酸ビニル(モル比)=100:2.23)を仕込み、28℃で31時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末(7)を得た。重合収率87重量%、インヘレント粘度0.97dl/gであった。
重合体粉末(7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.50mm、内径:0.90mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例8(VDF/DAAAm=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.2g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート6.4g、フッ化ビニリデンモノマー400g、ダイアセトンアクリルアミド(以下DAAAm)4g(フッ化ビニリデン:ダイアセトンアクリルアミド(モル比)=100:0.38)を水40gに溶解してから仕込み、28℃で28時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末(8)を得た。重合収率85重量%、インヘレント粘度1.12dl/gであった。
重合体粉末(8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.49mm、内径:0.89mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例9(VDF/VC=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.2g、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート6.4g、フッ化ビニリデンモノマー400g、ビニレンカーボネート(以下VC)4g(フッ化ビニリデン:ビニレンカーボネート(モル比)=100:0.74)を仕込み、28℃で22.5時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末(9)を得た。重合収率83重量%、インヘレント粘度1.10dl/gであった。
重合体粉末(9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.48mm、内径:0.88mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
実施例10(VDF/無水シトラコン酸=100/1(重量))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1036g、メチルセルロース0.4g、イソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)2g、フッ化ビニリデンモノマー400g、無水シトラコン酸4g(フッ化ビニリデン:無水シトラコン酸(モル比)=100:0.49)を仕込み、40℃で62.5時間懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末(10)を得た。重合収率79重量%、インヘレント粘度0.78dl/gであった。
重合体粉末(10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.47mm、内径:0.87mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂多孔性中空糸膜を得た。
比較例1(VDF=100(%))
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1024g、メチルセルロース0.2g、ジノマルプロピルパーオキシジカーボネート2.0g、フッ化ビニリデン400gを仕込み、26℃で13時間の懸濁重合を行った。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥して重合体粉末(11)を得た。重合収率94重量%、インヘレント粘度1.70dl/g、融点は175℃であった。
重合体粉末(11)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外径:1.468mm、内径:0.736mmのポリフッ化ビニリデン単独重合体からなる多孔性中空糸膜を得た。
上記実施例および比較例で用いたフッ化ビニリデン系樹脂の組成、融点、(インヘレント)粘度、ならびに熱間プレスシートの5重量%NaOH(pH14)および1重量%NaOH(pH13)で1.5時間処理後の接触角測定結果を、次表にまとめて記す、表中、(共)重合によりフッ化ビニリデン系樹脂を与える単量体は、以下の略号で代表している。
VDF:フッ化ビニリデン、
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート、
2−MGMA:2−メチルグリシジルメタクリレート、
GMA:グリシジルメタクリレート、
MAA:メタクリル酸、
CTFE:クロロトリフルオロエチレン、
HFP:ヘキサフルオロプロピレン、
MMM:マレイン酸モノメチルエステル
VAc:酢酸ビニル
DAAAm:ダイアセトンアクリルアミド
VC :ビニレンカーボネート

上記実施例1、実施例3−1、比較例1で得られた中空糸の透水量、引張強度、破断伸度について測定した結果を下表2にまとめて示す。

更に、表2で示した実施例1、実施例3−1、比較例1の中空糸を5%NaOH水溶液中に70℃で1時間浸漬後、水洗したものの透水量を測定した結果を、処理前のものとまとめて次表3に示す。

【産業上の利用可能性】
上記表2および表3の結果から理解されるように、本発明のエポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基から選ばれた親水基を有するフッ化ビニリデン系共重合体を用いて得られた多孔膜はフッ化ビニリデン単独重合体を用いて得られた多孔膜に比べて透水量、引張り強度および破断伸度において著しく向上しており、特に透水量は、塩基溶液処理により更に著しく向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン系単量体100モルと、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種を有する親水性単量体0.01〜10.0モルとの共重合体であるフッ化ビニリデン系共重合体を含むフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜。
【請求項2】
親水性単量体が、グリジジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレートおよび1−メチルグリシジル(メタ)アクリレートおよびグリシジルアリルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種のエポキシ基含有ビニル単量体である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項3】
親水性単量体が、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のヒドロキシ基含有ビニル単量体である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項4】
親水性単量体が、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、アクリル酸、メタクリル酸およびβ−メタクリロイルオキシエチルハイドロジエンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも一種のカルボキシ基含有ビニル単量体である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項5】
親水性単量体が、酢酸ビニル、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルエステル、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルエステル、メタクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルエステル、ビニレンカーボネートおよびプロピオン酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種のエステル基含有ビニル単量体である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項6】
親水性単量体が、ダイアセトンアクリルアミド、メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミド基含有ビニル単量体である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項7】
親水性単量体が、無水マレイン酸および無水シトラコン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸無水物基含有ビニル単量体である請求項1に記載の多孔膜。
【請求項8】
フッ化ビニリデン系共重合体の融点が150〜180℃である請求項1〜7のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項9】
フッ化ビニリデン系共重合体のインヘレント粘度が0.5〜5dl/gである請求項1〜8のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項10】
中空糸状である請求項1〜9のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項11】
塩基溶液処理されている請求項1〜10のいずれかに記載の多孔膜。
【請求項12】
フッ化ビニリデン系単量体100モルと、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基および酸無水物基のうちの少なくとも一種を有する親水性単量体0.01〜10.0モルとの共重合体であるフッ化ビニリデン系共重合体を含むフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対し、可塑剤を70〜250重量部および該共重合体の良溶媒5〜80重量部を添加し、得られた組成物を膜状に溶融押出し、その片側面から優先的に冷却して固化成膜した後、可塑剤を抽出し、更に延伸することを特徴とするフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/092257
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505380(P2005−505380)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005149
【国際出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】