説明

フッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤

式(1)
B−X−COCH2O−[−Cp2pO−]n−CH2CO−X−Ra (1)
のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤であり、
式中、
Bは、MまたはRaであり、
Mは、イオン化可能な水素、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり、
pは、約2から約4であり、
nは、約5から約43であり、
各Xは、独立してNR、SCH2CH2NR、SO2NRCH2CH2NR、またはSO2CH2CH2NRであり、
Rは、水素、あるいは線状または分岐アルキル基Cb(2b+1)(式中、bは1から約18である)であり、
aは、Rf(CH2CF2d−(Cg2g)−、Rf(OCF2CF2r−(Cg2g)−、RfOY−、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−、Rf(Cg2g)−、またはH(Cc2c)−(Cg2g)−であり、
Yは、CFHCF2O(Cw2w)−、またはCF(CF3)CONH−(Cg2g)−であり、
各Rfは、独立してCc(2c+1)(式中、cが1から約6である)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミドおよびその界面活性剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
最も多く市販されているフッ素化界面活性剤は、電気化学的フッ素化またはテロメル化により生産される。電気化学的フッ素化は、フッ素源として無水フッ化水素酸を利用する。しかしながら工業的に生産されるフッ化水素酸は不純物を含有し、それらの不純物を除去するために更なる複雑な工程の使用を必要とする。
【0003】
テロメル化法は、出発原料としてテトラフルオロエチレンを使用する。しかしながらテトラフルオロエチレンは、利用の限られた有害かつ高価な中間体である。テロメル化生成物は、一般に約4個から約20個の炭素の鎖長を含有する異なる炭素鎖長分布を包含した同族体の混合物を含有する。したがって一定の長さのフッ化炭素鎖を含有し、様々な長さの混合物を含有しないフッ素化界面活性剤を生産するためには、「Fluorinated Surfactants,Synthesis−Properties−Applications」中でErik Kissaが述べているようなテロメル化生成物の何らかの逐次分離が必要である。例えば米国特許第6,537,662号明細書は、防汚スピン仕上げ用組成物中に任意選択の添加剤の一つとして取り込むことができるフルオロケミカルを開示している。フルオロケミカル添加剤には、フルオロケミカルポリオキシエチレンジアミドが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長いペルフルオロアルキル鎖を含有するこのようなフッ素化界面活性剤を使用することには欠点がある。例えば、Koji Hondaらは、「Molecular Aggregation Structure and Surface Properties of Poly(fuluoroalkylacrylate)Thin Films」Macromolecules(2005),38(13),5699〜5705中で、少なくとも8個の炭素のペルフルオロアルキル鎖の向きが並列に配置された状態に保たれ、一方、5個以下の炭素を含有するそのようなペルフルオロアルキル鎖の場合は新たな方向付けが起こることを教示している。この再配向は、表面挙動を変えることに関しては性能効果を低下させる。さらに、フッ素化界面活性剤の価格は、主として化合物中に取り込まれるフッ素に量によって決まる。したがってテロマー以外のフッ素含有化学薬品から調製することができるフッ素化界面活性剤を得ることが望ましい。より短いフッ素含有鎖またはフッ素含有基を含有し、それにもかかわらず表面挙動を変えることに関して本質的に同一の性能または一層優れた性能を提供するフッ素化界面活性剤を得ることがさらに望ましい。表面張力を低下させ、かつ液体に低い表面張力、低い界面張力値、および低い臨界ミセル濃度を与えることが、特に望ましい。本発明は、このようなフッ素化界面活性剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)
B−X−COCH2O−[−Cp2pO−]n−CH2CO−X−Ra (1)
の化合物を含み、
式中、
Bは、MまたはRaであり、
Mは、イオン化可能な水素、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり、
pは、約2から約4であり、
nは、約5から約43であり、
各Xは、独立してNR、SCH2CH2NR、SO2NRCH2CH2NR、またはSO2CH2CH2NRであり、
Rは、水素、あるいは線状または分岐アルキル基Cb(2b+1)(式中、bは1から約18である)であり、
aは、Rf(CH2CF2d−(Cg2g)−、Rf(OCF2CF2r−(Cg2g)−、RfOY−、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−、Rf(Cg2g)−、またはH(Cc2c)−(Cg2g)−であり、
Yは、CFHCF2O(Cw2w)−、またはCF(CF3)CONH−(Cg2g)−であり、
各Rfは、独立してCc(2c+1)(式中、cが1から約6である)であり、
dは、1から約3であり、
gは、1から約4であり、
sは、0または1であり、
rは、1から約4であり、
hは、1から約6であり、
wは、約2から約12であり、
i、j、およびkは、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−中の炭素原子の総数が約8から約22であるという条件で、それぞれ独立して1、2、または3、あるいはそれらの混在したものである。
【0006】
本発明はさらに、液体に上記式(1)の化合物またはその混合物を加えることを含む、液体表面挙動を変える方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書中では商標は大文字で示される。
【0008】
本明細書中では用語「ツインテイル(twin−tailed)界面活性剤」は、2個の疎水基が単結合親水基に結合している界面活性剤を記述するために使用される。これら2個の疎水基は、同一のもの(「対称ツインテイル界面活性剤」と呼ばれる)であってもよく、また異なるもの(「ハイブリッドツインテイル界面活性剤」と呼ばれる)であってもよい。
【0009】
本発明は、そのフッ素含有基中に6個未満の炭素しか有しないフッ素含有基を含有するフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤を提供する。意外なことに本発明のこのフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、水中の0.1重量%で21mN/m未満の、好ましくは0.1重量%の水中濃度で20mN/m未満のきわめて低い表面張力を実現し、かつ低CMC値もまた有する。本発明のこのフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、順に疎水基と、親水基と、好ましくは第二の疎水基とを含有するツインテイル界面活性剤である。このようなツインテイルフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、表面挙動を変えるのに、一般には表面張力を下げるのに役立ち、また様々な用途、例えば塗料、洗浄剤、油田、および多くの他の用途に使用することができる。この界面活性剤はまた、濡れ、レベリング、ブロッキング防止、発泡成形などに関係する多くの用途に役立つ。
【0010】
本発明の式(1)のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、上記の部分的フッ素化Ra基を含有する少なくとも1つの疎水性部分、好ましくは2つの疎水性部分を含む。本発明のこの化合物はまた、水溶性の親水性部分を含む。本発明のこれら界面活性剤は電荷を坦持しない非イオン界面活性剤であり、その水溶性は様々な長さの高度に極性の基、ポリオキシエチレン−(−CP2PO−)nの存在によって付与される。このような界面活性剤の水溶性は、nの値が増すと強まる傾向がある。水性媒体系ではその表面活性は、親水性成分と親水性成分の間のバランスによって調節される。
【0011】
表面挙動を変えることに関連して本発明のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミドを含む界面活性剤を使用する利点の一つは、低フッ素含量を有する低濃度のフッ素化界面活性剤を使用し、こうして「フッ素効率」を高めながら、同一の性能または一層優れた性能を達成することである。本明細書中で使用される用語「フッ素効率」は、最少量のフルオロ界面活性剤を使用して、基体に塗布した場合に所望の表面効果または表面特性を得る能力、または同一レベルのフッ素を使用してよりすぐれた性能を得る能力を意味する。さらに、本発明のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、より短いフッ素含有鎖またはフッ素含有基を含有し、意外なことにそれは、より長いフッ素含有鎖を含有する従来の界面活性剤と比べた場合、表面活性を変えることに関して本質的に同一または一層優れた性能を実現する。
【0012】
本発明のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、式(1)
B−X−COCH2O−[−Cp2pO−]n−CH2CO−X−Ra (1)
の構造式を有し、
式中、
Bは、MまたはRaであり、
Mは、イオン化可能な水素、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり、
pは、約2から約4であり、
nは、約5から約43であり、
各Xは、独立してNR、SCH2CH2NR、SO2NRCH2CH2NR、またはSO2CH2CH2NRであり、
Rは、水素、あるいは線状または分岐アルキル基Cb(2b+1)(式中、bは1から約18である)であり、
aは、Rf(CH2CF2d−(Cg2g)−、Rf(OCF2CF2r−(Cg2g)−、RfOY−、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−、Rf(Cg2g)−、またはH(Cc2c)−(Cg2g)−であり、
Yは、CFHCF2O(Cw2w)−、またはCF(CF3)CONH−(Cg2g)−であり、
各Rfは、独立してcが1から約6であるCc(2c+1)であり、
dは、1から約3であり、
gは、1から約4であり、
sは、0または1であり、
rは、1から約4であり、
hは、1から約6であり、
wは、約2から約12であり、
i、j、およびkは、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−中の炭素原子の総数が約8から約22であるという条件で、それぞれ独立して1、2、または3、あるいはそれらの混在したものである。
【0013】
式(1)の好ましい化合物には、nが約6から約32のもの、より好ましくはnが約6から約30のもの、より好ましくはnが10から12のものが挙げられる。XがNRまたはSCH2CH2NRであるものもまた好ましい。式(1)の化合物の好ましい実施形態は、RaがRf(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、式中、cが4または6であり、gが1または2であるものである。式(1)の化合物の好ましい実施形態は、RaがRf(CH2CF2d−(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、それら式中でcが4または6であり、dが1または2であり、gが2であるものである。RaがRf(OCF2CF2r(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、それら式中でcが2または3であり、sが0であり、rが1、2、または3であり、gが2である化合物もまた好ましい。式(1)の化合物の別の好ましい実施形態は、RaがRf(OCF2CF2r(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、それら式中でcが3であり、sが1であり、rが1であり、gが2であるものである。RaがRfOY−であり、RfがCc(2c+1)であり、それら式中でcが1、2、または3であり、YがCFHCF2O(Cw2w)−であり、wが2、3、または4である式(1)の化合物もまた好ましい。さらにもう一つの好ましい化合物は、RaがRfOY−であり、RfがCc(2c+1)であり、それら式中でcが3であり、YがCF(CF3)CONH−(Cg2g)−であり、gが2である式(1)の化合物である。RaがRf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−であり、RfがCc(2c+1)であり、式中、cが1、2、または3であり、hが2であり、kが1、2、または3であり、iおよびjがそれぞれ1であり、かつXがOまたはSCH2CH2Oである、式(1)の化合物もまた好ましい。
【0014】
本発明の式(1)のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミドは、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)などのカップリング剤の存在下で室温において、カルボン酸をアミンと接触させることによって合成される。これらジアミドはまた、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒を用いてカルボン酸をアミンと共に還流させることによって調製することもまた可能である。別法では、カルボン酸を対応する酸塩化物に変換させることもでき、塩基(Et3N)の存在下でその酸塩化物とアミンを反応させることによりアミドを生成する。
【0015】
このアミドの合成に対しては分子量約Mw250、400、600、1000、および1450のポリアルキレングリコールジカルボン酸が使用される。Mw250および600のポリアルキレングリコールジカルボン酸は市販されており(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)、一方、Mw400、1000、および1450は、文献の手順(Lele,B.S.;Kulkarni,M.G.,Journal of Applied Polymer Science,Vol.70,883〜890,1008)による対応するポリアルキレングリコールのジョーンズ試薬を用いた酸化によって、または米国特許第3,929,873号明細書に開示されているグリコールの酸化によって合成される。式HOOCCH2O−(CH2CH2O)n−CH2COOH(式中、nは約6から約32、具体的にはnは6、10、20、または30である)のジカルボン酸が好ましい。
【0016】
例えば、式(1)の化合物は、ポリアルキレングリコールジカルボン酸を、少なくとも1種類の下記のアミンと反応させることによって調製される。これらアミンは、反応の間に1個の水素を取り除いた後の式(1)中のRa−Xに対応する。
CF3CF2CF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2CF2CH2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CF2CH2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2−O−CF2CF2CH2CH2−NH2
CF3CF2−O−CF2CF2CH2CH2−NH2
CF3−O−CF2CF2CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2−O−CHFCF2OCH2CH2−NH2
CF3CF2−O−CHFCF2OCH2CH2−NH2
CF3−O−CHFCF2OCH2CH2−NH2
CF3CF2CF2−O−CHFCF2OCH2CH2CH2−NH2
CF3CF2−O−CHFCF2OCH2CH2CH2−NH2
CF3−O−CHFCF2OCH2CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2−O−CHFCF2OCH2CH2CH2CH2−NH2
CF3CF2−O−CHFCF2OCH2CH2CH2CH2−NH2
CF3−O−CHFCF2OCH2CH2CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2CH2−S−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−S−CH2CH2−NH2
CF3CF2CH2CH2CF2CF2CH2CH2−NH2
CF3CF2CH2CH2CF2CF2CH2CH2CF2CF2CH2CH2−NH2
CF3CF2CH2CH2CF2CF2CH2CH2CF2CF2CH2CH2CF2CF2CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2−O−CF(CF3)−CONH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2−O−CF(CF3)−CONCH3−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2CH2−SO2NH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−SO2NH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−SO2NH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−CH2CH2−SO2NCH3−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−SO2NCH3−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−CH2CH2−SO2NCH3−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−SO2NH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−SO2NH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−SO2NH−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2−SO2NCH3−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2−SO2NCH3−CH2CH2−NH2
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−SO2NCH3−CH2CH2−NH2
HCF2CF2CF2CF2−CH2−NH2
HCF2CF2CF2CF2CF2CF2−CH2−NH2
HCF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2−CH2−NH2
CF3CF2OCF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2OCF2CF2OCF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2OCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF2OCF2CF2OCF2CF2−CH2CH2−NH2
CF3CF(CF3)OCF2CF2−CH2CH2−NH2
F(CF2m(CH2q[(CF2CF2i(CH2CH2jk−NH2、および
F(CF2m(CH2q[(CF2CF2i(CH2CH2jk−S−CH2CH2−NH2
【0017】
本発明で使用されるフッ化アミンの幾つかの上記の例は、Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI、Matrix Scientific,Columbia,SC、またはE.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから入手できる。他のアミンの調製法は下記に述べる。
【0018】
aがH(Cc2c)−(Cg2g)−およびRf−(Cg2g)−である式(1)の化合物は、簡単に入手できるヨウ化物から、対応する既知の合成方法を用いた合成によって入手できる。例えば、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキルアミンは、対応するヨウ化物からアジ化ナトリウムによる処理、続いて文献の手順中に記載されているラネーNiを用いた還元により合成される(Trabelsi,H.,Szoenyi,F.,Michelangeli,N.,Cambon,A.,J.Fluorine Chem.,1994,69,115〜117)。1H,1H,2H,2H,3H,3H−ペルフルオロノニルアミンは、3−ペルフルオロヘキシルプロピオニトリルをラネーNiで水素化することによって得られる(Qiu,W.,米国特許第6054615号明細書)。2−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキルチオ)エチルアミンは、Rondestvedt,C.S.,Jr,et al,J.Org.Chem.1977,42,2680に記載されているように、ヨウ化1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキルを2−アミノエタンチオールと反応させることによって調製される。類似の方法ではヨウ化1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキルを3−アミノプロパンチオールまたは4−アミノブタンチオールと反応させることにより、それぞれ対応する3−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキルチオ)プロピルアミンおよび4−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキルチオ)ブチルアミンを得る。ω−アミノアルキルチオールのより高度な同族体を、類似の方法で処理することもできる。
【0019】
a基、Rf(CH2CF2d−(Cg2g)−(式中、dは1から3であり、gは1から4である)を含有する式(1)の化合物は、式(II)
f−(CH2CF2q(CH2CH2r−NH2 (II)
(式中、Rfは炭素原子2個から6個を有する線状または分岐ペルフルオロアルキル基であり、下付き文字qは1から3の整数であり、またrは1から2である)の型のフッ素化アミンから調製される。これらのアミンは、スキーム1(式中、Rfおよびdは式(I)について定義したものと同様であり、qは1または2である)に従って合成することにより入手できる。
【0020】
【化1】

【0021】
フッ化ビニリデンを線状または分岐ヨウ化ペルフルオロアルキルと反応させることにより、構造式Rf(CH2CF2dI(式中、dは1またはそれ以上であり、RfはC1からC6ペルフルオロアルキル基である)の化合物が生成される。例えば、Balagueらの「Synthesis of fluorinated telomers,Part 1,Telomerization of vinylidene fluoride with perfluoroalkyl iodides」,J.Fluorine Chem.(1995),70(2),215〜23を参照されたい。これら特定のヨウ化物テロマーは、分別蒸留によって単離される。米国特許第3,979,469号明細書に記載の手順により、ヨウ化物テロマーをエチレンで処理してヨウ化エチレンテロマー(スキーム1のIII)(式中、qは、1から3またはそれ以上である)を得る。次いで、そのヨウ化物(III)を、NaN3を用いてアジ化物に変換し、続いてラネーNiを用いた触媒水素化によって対応するアミンに変換する。
【0022】
基Rf(OCF2CF2r(Cg2g)−を含有する式(1)の化合物は、下記の一連の反応によって入手できる式RfOCF2CF2CH2CH2OH(式中、Rfは、任意選択で1個から3個の酸素原子によって中断される線状または分岐C1からC6ペルフルオロアルキルであり、qは1から3の整数である)の型の前駆フルオロアルコールから得られる。
【0023】
【化2】

【0024】
上記スキーム2の式Vのヨウ化ペルフルオロアルキルエーテルは、米国特許第5,481,028号明細書中に記載の手順によって製造することができる。この特許は、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテルからのスキーム2の式Vの化合物の調製について開示しており、参照により本明細書中に援用される。スキーム2の式Vのヨウ化ペルフルオロアルキルエーテルを、高温高圧において過剰のエチレンと反応させる。エチレンの付加反応は熱的に行うことができるが、適切な触媒を使用することが好ましい。好ましくはこの触媒は、過酸化ベンゾイル、過酸化イソブチリル、過酸化プロピオニル、または過酸化アセチルなどの過酸化物触媒である。より好ましくはこの過酸化物触媒は、過酸化ベンゾイルである。反応の温度は限定されないが、110℃から130℃の範囲の温度が好ましい。反応時間は、触媒および反応条件により変わる可能性があるが、一般には24時間が妥当である。生成物は、未反応の出発原料を最終生成物から分離する任意の手段によって精製されるが、蒸留が好ましい。1モルのヨウ化ペルフルオロアルキルエーテル当たり約2.7モルのエチレンと、110℃の温度および自生圧力と、24時間の反応時間とを使用し、生成物を蒸留により精製することによって理論の80%までの満足な収率が得られた。次いで、スキーム2の式VIのヨウ化ペルフルオロアルキルエーテルエチレンを、NaN3を用いたアジ化物への変換、続いてラネーNiを用いた触媒水素化によって対応するアミンに変換する。
【0025】
基RfOCFHCF2O(Cw2w)−(式中、wは約2から約12である)を含有する式(1)の化合物は、式RfOCFHCF2O(Cw2w)NH2のアミンからを調製される。これらのアミンは、フッ化ビニルエーテルを2−ヨードエタノールまたは3−ヨードプロパノールと反応させ、続いてそのヨウ化物をアジ化物に変換し、次いでアミンに還元することによって製造される。上記反応に使用されるフッ化ビニルエーテルは様々な方法によって製造される。それらの方法は、フッ化2−アルコキシプロピオニルを炭酸金属塩の固定床中で、または乾燥した炭酸金属塩を満たし、かつ管を貫通するスクリューブレードを備えた管型反応器中で、または炭酸金属塩の流動床中で反応させることによってフッ化ビニルエーテルを製造するステップを含む。米国特許出願公開第2007/0004938号明細書は、撹拌層反応器中で中間カルボン酸エステルの脱カルボキシル温度を超える温度で無水条件下においてフッ化2−アルコキシプロピオニルを炭酸金属塩と反応させてフッ化ビニルエーテルを生成することによるフッ化ビニルエーテルの生成方法を述べている。好ましいエーテルには、式Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは炭素2個から6個のペルフルオロアルキルである)のものが挙げられる。使用に適したフッ化ビニルエーテルの例には、CF3−O−CF=CF2、CF3CF2−O−CF=CF2、CF3CF2CF2−O−CF=CF2、およびCF3CF2CF2CF2−O−CF=CF2が挙げられ、これらのそれぞれがE.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから入手できる。
【0026】
基RfOCF(CF3)CONH−(Cg2g)−を含有する式(1)の化合物は、式RfOCF(CF3)CONH−(Cg2g)NH2(式中、Rfおよびgは式(1)中で定義したものと同様である)を有するフッ化アミンを用いて調製される。これらのフッ化アミンは、対応するフッ素化したフッ化アシルを過剰のジアミンと反応させることによって調製される。好ましいフッ化物は、炭素2個から6個を有するペルフルオロアルキル基を含有するものである。この反応は、約−30℃から約40℃の温度、好ましくは約5℃から約25℃の間で行われる。この反応のための好適な溶媒には、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、アセトン、CHCl3、CH2Cl2、または2−メトキシエチルエーテル、ジエチルエーテルが挙げられる。
【0027】
基Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−を含有する式(1)の化合物は、式Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jkNH2(式中、RfはC2からC6ペルフルオロアルキルであり、下付き文字hは1から約6であり、下付き文字i、j、およびkは、それぞれ独立して1、2、3、またはこれらの混在したものである)のフッ化アミンを調製することによって得られる。これらのアミンは、アジ化物オリゴマーから、文献の手順(Trabelsi,H.,Szoenyi,F.,Michelangeli,N.,Cambon,A.,J.Fluorine Chem.,1994,69,115〜117)の修正手順に従ってヒドラジン水和物およびラネーNiを用いて還元することによって調製される。アジ化物オリゴマーのアミンへの変換は、水とエタノールを1:1で含む混合溶媒系中で、ヒドラジン水和物/ラネーNiと、アジ化ナトリウムとを用いて60℃で12時間行われる。
【0028】
本発明のRf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−SCH2CH2NH2のイオウ含有アミンは、ヨウ化物オリゴマーから、文献の手順(Rondestvedt,C.S.,Jr,Thayer,G.L.,Jr.,J.Org.Chem.1977,42,2680)に従って2−アミノエタンチオールとの置換反応によって調製される。このヨウ化物オリゴマーを、tert−ブタノールに溶かした2−メルカプトエチルアミン塩酸塩および水酸化ナトリウムと共に12時間還流させて、対応する硫化アミノエチルオリゴマーを得る。
【0029】
好ましくは式Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jkI(式中、Rfおよび下付き文字h、i、j、およびkは、上記の定義と同様である)のヨウ化物は、エチレンとテトラフロロエチレンの混合物を用いてCn2n+124I、Cn2n+1CH2I、またはCn2n+1I(式中、nは1から約6である)をオリゴマー化することによって調製される。この反応は、適切なラジカル開始剤により室温から約150℃までの任意の温度で行うことができる。好ましくはこの反応は、約40℃から約100℃の温度において、その範囲で約10時間の半減期を有する開始剤により行われる。Cn2n+124I、Cn2n+1CH2I、またはCn2n+1I(式中、nは1から約6)のモル対エチレンとテトラフロロエチレンを合わせたモルである出発原料の気相での供給比を用いて反応の転化率を制御することができる。このモル比は、約1:3から約20:1、好ましくは約1:2から10:1、より好ましくは約1:2から約5:1である。エチレン対テトラフロロエチレンのモル比は、約1:10から約10:1、好ましくは約3:7から約7:3、より好ましくは約4:6から約6:4である。
【0030】
必要に応じて上記反応混合物中の主要化学薬品は、溶解度、融点、蒸気圧、および他の特徴の違いによって個々の成分に分離することができる。例えば、アセトニトリルおよびテトラヒドロフラン中でのこのような成分の相対的溶解度はこのような精製に役立つことが分かっている。他の溶媒および方法もまた使用することができ、それらは当業者が容易に決められる。
【0031】
本発明の利点の一つは、本発明の非イオン性フッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤が、ポリアルキレングリコールをフッ素化アルコールまたはチオール−アルコールと直接に反応させることを避ける方法で合成され、こうしてそれらの合成を容易にすることである。本発明のこれらの非イオン界面活性剤は、そのエステル結合基の加水分解と、その界面活性剤分子のポリオキシアルキレングリコールジカルボン酸部分の易生分解性とにより環境中で容易に生分解可能である。
【0032】
例えば表面張力低下に関してのフッ素化界面活性剤の効率は、そのフッ素化界面活性剤のフッ素含有炭素鎖の長さに比例する。フッ素含有炭素鎖長を大きくすることにより表面張力低下効率が増大する。本発明のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤はまた、最低量の本明細書中でさきに述べたフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤を使用することによって、また低レベルのフッ素を使用して所望の界面活性剤効果を得ることによって「フッ素効率」を向上させる。
【0033】
本発明はさらに、液体に上記式(1)の化合物を加えることを含む、液体の表面挙動を変える方法を含む。本発明は、表面挙動を変えるための、一般には様々な用途、例えば塗料、洗浄剤、油田、および多くの他の用途において表面張力および臨界ミセル濃度(CMC)の値を低下させるためのフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤の使用法を含む。非イオン界面活性剤は重要なフルオロ界面活性剤であり、液体に低い表面または界面張力の値および低いCMCを与える。それらは、濡れ、レベリング、ブロッキング防止、発泡成形、浸透、延展、流動、乳化および分散の安定化などに関係する多くの用途に役立つ。本発明の方法を用いて変えることができる表面挙動の種類には、濡れ、浸透、延展、レベリング、流動、乳化、分散、撥水撥油、離型、潤滑、エッチング、接着、および安定化が挙げられる。本発明の方法で使用することができる液体の種類には、塗料組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、フィルム蒸発抑制剤、湿潤剤、浸透剤、洗浄剤、研摩剤、電気めっき剤、腐蝕防止剤、エッチング液、はんだ付け剤、分散助剤、微生物製剤(microbial agent)、パルプ助剤、すすぎ助剤、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床仕上げ剤、または接着剤が挙げられる。
【0034】
本発明のフッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミド界面活性剤は、低表面張力が望ましい様々な用途、例えばガラス、木材、金属、煉瓦、コンクリート、セメント、天然または合成石材、タイル、合成床材、紙、繊維材料、プラスチックス用の塗装配合物、および塗料に役立つ。本発明の界面活性剤は、床、家具、靴、および自動車の手入れ用の濡れ、レベリング、および光沢を向上させるためのワックス、仕上げ剤、および艶出剤に有用である。本発明の界面活性剤は、ガラス、タイル、大理石、セラミック、リノリウムおよび他のプラスチックス、金属、石材、積層材、天然および合成ゴム、樹脂、プラスチックス、繊維、および織物用の様々な水性および非水性の洗浄製品に有用である。
【0035】
本発明の界面活性剤および方法は、農業用組成物に使用するのに適している。本発明の界面活性剤は、除草剤、殺草剤、ホルモン成長制御剤、殺寄生虫剤、殺虫剤、殺菌剤、殺細菌剤、殺線虫剤、殺微生物剤、枯葉剤、あるいは肥料、治療薬、抗菌薬を含有する組成物用の湿潤剤として役立つ。本発明の界面活性剤はまた、茎葉用の、家畜洗液用の、また家畜の皮膚を濡らすための湿潤剤として適しており、また消毒、変色、および洗浄用組成物中の、また昆虫忌避組成物中の成分として適している。
【0036】
本発明の界面活性剤および方法は、フッ素系(fluorochemical)代用血液、繊維処理浴、繊維紡糸仕上げ剤、パーソナルケア製品(例えばシャンプー、コンディショナー、クリーム、リンスなどを含めた)、皮膚用化粧品(治療または保護用クリームおよびローション、撥油および撥水粉末化粧品、デオドラント、発汗抑制剤など)、マニキュア液、口紅、練り歯磨き、織物手入れ用品(布、絨毯、および室内装飾品のしみの下処理および/またはしみ抜きなど)、洗濯洗剤、すすぎ助剤(洗車用の、また自動皿洗い機における)の組成物に使用するのに適している。
【0037】
さらに本発明の界面活性剤および方法は、石油およびガス産業において湿潤剤として、また油井処理用に(極圧潤滑剤中で、また貫入回数を改善するための減摩切削油向上剤としてだけでなく、三次油井採収を改善するための掘穿汚水および添加剤を含めた)、またガス、ガソリン、ジェット燃料、溶剤、および炭化水素に関してフィルム蒸発およびガス/オイルブロッキングを防止し排除するための処理剤として使用するのに好適である。
【0038】
さらに本発明の界面活性剤および方法は、筆記用インク、印刷用インク、現像液、森林火災消防、乾式化学消火剤、エアロゾル型消火器、医療廃棄物の凝固またはカプセル化用ゲルを形成するための増粘剤、ならびに半導体および電子機器の製造、加工、および取扱いにおけるフォトレジスト、現像液、清浄液、酸化膜エッチング組成物、現像液、ポリッシャ、およびレジストインクに使用するのに適している。
【0039】
さらに本発明の界面活性剤および方法は、繊維および皮革産業において湿潤剤、消泡剤、浸透剤、または乳化剤として、または織布、不織布、および皮革処理用の油剤として、開繊および均質性のための繊維仕上げ剤用に、染色用の湿潤剤として、不織布における結合剤として、また漂白剤の浸透添加剤として使用するのに適している。
【0040】
さらに本発明の界面活性剤および方法は、改良された表面効果を実現するために鉱業および金属工業において、医薬品産業、自動車、ビルメンテナンス、およびクリーニングにおいて、家庭用品、化粧品、およびパーソナルケア用品において、また写真撮影およびグラフィック・アートにおいて使用するのに適している。
【0041】
本発明の界面活性剤および方法は、ガラス表面および写真フィルム用のかぶり防止剤として、また磁気テープ、レコード、フロッピー・ディスク、ディスク駆動機構、ゴム組成物、PVC、ポリエステルフィルム、写真フィルム用の帯電防止剤として、また光学素子(ガラス、プラスチック、またはセラミックビーズなど)用の表面処理剤として機能する製品中に組み込むことができる。
【0042】
本発明の界面活性剤および方法はまた、ウレタンフォーム、スプレー式オーブン用洗剤、泡状の台所および浴室洗剤ならびに消毒剤、エアロゾル髯剃りクリーム中で、また織物処理浴中で整泡剤として役立つ。
【0043】
本発明の界面活性剤および方法は、重合、特にフルオロモノマーの重合用の乳化剤として、ラテックス安定剤として、シリコーン、写真乳剤安定剤、無機粒子、および顔料用の離型剤として役立つ。
【0044】
本発明の界面活性剤および方法は、幾つかの予想外の利点を提供する。これら化合物は、電気化学的フッ素化によっては調製されず、また多くはテロメル化によっても調製されない。したがって大量の不純物の形成が回避され、同族体の混合物を含有する生成物が得られない。本発明の界面活性剤は、一般のテロメル化から得られる生成物よりもフッ素効率がよい。本発明の式(1)の化合物中に存在するフッ素のレベルが低いほど経済的であるが、この低レベルのフッ素は、より高レベルのフッ素を含有する従来の界面活性剤と比較して同等の、またはより優れた性能を与える。
【0045】
材料および試験方法
材料
すべての溶媒および試薬は、別段の指示がない限りSigma−Aldrich,Milwaukee,WIから購入し、供給されたまま直接使用した。Mw250および600のポリアルキレングリコールジカルボン酸は市販されており(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)、一方、Mw400、1000、および1450は、文献の手順により、対応するポリアルキレングリコールをジョーンズ試薬で酸化することによって合成される(Lele,B.S.;Kulkarni,M.G.,Journal of Applied Polymer Science,Vol.70,883〜890,1008)。1H,1H−ペルフルオロヘプチルアミンは、Matrix Scientific,Columbia,SCから得た。1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルアミンおよび1H,1H,2H,2H−ペルフルオロヘキシルアミンは、対応する市販のヨウ化1H,1H,2H,2H−ペルフルオロアルキル(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE)からアジ化物を経由して合成し、続いて文献の手順(Cambon,et al.,J.Fluorine Chem.,1994,69,115〜117)に記載のようにラネーNiを用いて還元した。2−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルチオ)エチルアミンおよび2−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロヘキシルチオ)エチルアミンは、文献の手順(Rondestvedt,C.S.,Jr,Thayer,G.L.,Jr.,J.Org.Chem.1977,42,2680)に従って、ヨウ化ペルフルオロアルキルを2−アミノエタンチオールと反応させることによって調製した。Hおよび19F NMRスペクトルは、Brucker DRX400または500分光計上に記録された。化学シフトは、内部基準(CDCl3、CFCl3、またはTMS)に対して単位ppm(μg/g)で記録された。
【0046】
試験方法1−臨界ミセル濃度(CMC)およびCMCを超える表面張力の測定
表面張力は、Kruess Tensiometer,K11 Version 2.501をその装置に添付されている使用説明書に従って使用して測定した。Wilhelmy Plate法を使用した。既知の周長の垂直板を天秤に取り付け、濡れによる力を測定した。10個の反復試験試料をそれぞれの希釈度について試験し、下記のマシンセッティングを使用した。すなわち、方法:プレート法SFT、間隔:1.0秒、濡れ長さ:40.2mm、読取限界:10、最小標準偏差:2ダイン/cm、Gr.Acc.:9.80665m/秒2
【0047】
臨界ミセル濃度(CMC)は、それを超える界面活性剤濃度でミセルが自然に形成され、その高い界面活性剤濃度では本質的にもはや表面張力を低下させない界面活性剤の濃度として定義される。CMCを求めるために界面活性剤濃度の関数として表面張力を測定した。次いで表面張力を対数濃度に対してプロットした。得られた曲線は、そのCMCよりも高い濃度ではほぼ水平な部分を有し、そのCMCよりも低い濃度では負の急勾配を有した。CMCは、平らな部分と外挿した急勾配が交差する曲線のその濃度として計算された。CMCを超える表面張力は曲線の平らな部分の値であった。CMCは、有効性能にとって最低コストを得るためにできるだけ低くあるべきである。
【0048】
試験方法2−濡れおよびレベリング試験
各試料を床磨き剤(RHOPLEX(登録商標)3829,Rohm & Haas,Spring House,PA)に加え、Comet(登録商標)洗剤でストリップした12インチ×12インチ(30.36cm×30.36cm)ビニルタイルの半分にこの混合物を塗布することによって、試料の濡れおよびレベリング能力を試験した。脱イオン水で希釈することにより試験される界面活性剤の1重量%溶液を調製した。製造業者のプロトコルに従って100g分のPHOPLEX(登録商標)3829配合物を調製し、続いて1重量%の界面活性剤溶液0.75gを加えて試験床磨き剤を得た。
【0049】
この試験床磨き剤の3mL分をタイルの中心に置き、塗布具を用いてその溶液を上部から下部まで広げ、最後に塗布具を用いてそのタイルの半分を越えて大きく「X」を描くことにより試験床磨き剤をタイルに塗布した。タイルを放置して30分間乾燥した。5枚の塗膜全部が塗布された。各塗布の後、タイル表面で磨き剤の濡れおよびレベリングを促進させる界面活性剤の能力に関して、タイルを1から5の尺度(1は最低であり、5は最高である)に基づいて格付けした。この格付けは、フルオロ界面活性剤またはレベリング助剤を含有しない床磨き剤で処理したタイルの比較に基づいて下記の尺度に従って求めた。
【0050】
表1−主観的タイル格付け尺度
1 皮膜のむらのある表面被覆、顕著な縞、および表面のきず
2 目に見える縞および表面のきず、タイルの縁部から皮膜の後退
3 非常に多くの表面のきずおよび縞がはっきりわかるが、全般的には皮膜がタイル表面全体を被覆している
4 軽微な表面欠陥または縞
5 目に見える表面のきずまたは縞がない
【実施例】
【0051】
実施例1
窒素雰囲気下でt−ブタノール(50mL)、水酸化ナトリウム(6.0g)、2−アミノエタンチオール(11.5g)を入れた250mLフラスコを80℃に加熱し、ヨウ化1H,1H,2H,2H−ペルフルオロヘキシル(47.4g)を一滴ずつ加えた。この混合物を80℃で2時間加熱し、冷却し、冷水(200mL)中に注いだ。有機層を分離し、水性層をCH2Cl2(2×50mL)で抽出した。一緒にした有機層を水(1×100mL)で洗浄し、無水MgSO4上で乾燥した。蒸留による精製により、29.3gの2−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロヘキシルチオ)エチルアミン(C49CH2CH2SCH2CH2NH2)を透明な液体として生成した。1H NMR(CDCl3):δ2.82(t,J=6Hz,2H)、2.67(tm,J=9Hz,2H)、2.59(t,J=6Hz,2H)、2.31(m,2H)。19F NMR(CDCl3):δ−81.6(m,3F)、−114.9(m,2F)、−124.8(s,2F)、−126.5(m,2F)。
【0052】
空冷コンデンサー、栓、および窒素フラッシュ下に保った隔膜を備えた三つ口フラスコに乾燥ジクロロメタン(100mL)を充填した。このフラスコを15℃まで冷却し、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約600、平均n=10〜11、2.0g)、続いて1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)(1.28g)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.815g)を加えた。この混合物を10分間撹拌し、得られた懸濁液にC49CH2CH2SCH2CH2NH2(2.92g)を加えた。この反応混合物を室温まで暖め、一晩撹拌した。GC分析は、フッ素化アミンのアミドへの完全な転化を示した。得られた透明な溶液を分液漏斗に移し、2%HCl(2×50mL)、飽和NaHCO3溶液(2×50mL)、およびブライン(1×50mL)で洗浄した。有機層を乾燥(無水MgSO4)し、真空下で濃縮、乾燥して、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)−ジアミドC49CH2CH2SCH2CH2NHCOCH2O(CH2CH2O)nCH2CONHCH2CH2SCH2CH249(4.03g)を淡褐色の油として得た。IR、ニート、1672cm-1のアミドのC=O伸縮、3346cm-1のアミドのN−H伸縮。1H NMR(CDCl3):δ7.4(bs,2H,NH)、3.98(s,4H,COCH2O)、3.66(bs,PEG OCH2s)、3.47(q,J=4.8Hz,4H,NHCH2)、2.78(t,J=6.4Hz,4H,SCH2)、2.37(m,4H,CF2CH2):19F NMR(CDCl3):δ−81.2(m,6F)、−114.6(m,4F)、−124.9(s,4F)、−126.4(m,4F)。C49CH2CH2SCH2CH2NHCOCH2O(CH2CH2O)nCH2−CONHCH2CH2SCH2CH249の構造式を有する上記調製からの生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。またこの生成物を、Rohm & Haas,Spring House,PAから入手できる市販の床磨き剤Rhoplex(登録商標)3829(N−29−1)において試験方法2に従って湿潤およびレベリング剤としての性能を評価した。対照にはレベリング剤が加えられなかった。すべての試料は75ppm(μg/g)の負荷量で、またそれに加えて室内湿度および温度の起こり得る変動を無くするように測定された。それらの結果は表3に記載され、格付けが高いほど優れた性能を示す。
【0053】
実施例2
アセトン(400mL)に溶かした10gのポリエチレングリコール(Mw約400、10.0g)を15℃に冷却し、ジョーンズ試薬(43mL)(5.18mLのH2SO4、5gのCrO3、および38mLのH2Oから調製される)を加えた。この混合物を室温で12時間撹拌した。アセトンを真空下で除去し、そのスラリーをCH2Cl2(150mL)に溶解し、飽和NaCl溶液(1×100mL)で洗浄した。このCH2Cl2層を乾燥(無水MgSO4)し、溶媒を除去して、対応するポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約400)を油として得た(9.35g)。IR、ニート、1739cm-1のカルボン酸のC=O伸縮、3436cm-1のアミドのブロードO−H伸縮。
【0054】
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約400、平均n=6〜7、2.0g)およびC49CH2CH2SCH2CH2NH2(1.62g)を用いて、実施例1で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C49CH2CH2SCH2CH2NHCOCH2O(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2SCH2CH249(2.0g)を褐色の油として生成した。IR、ニート、1672cm-1のアミドのC=O伸縮、3341cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3):δ−81.3(m,6F)、−114.7(m,4F)、−124.9(s,4F)、−126.5(m,4F)。
【0055】
この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0056】
実施例3
ポリエチレングリコール(Mw約1000、10.0g)およびジョーンズ試薬(17mL)を用いて、実施例1で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約1000)を白色結晶性固体として生成した(8.62g)。IR、ニート、1740cm-1のカルボン酸のC=O伸縮、3436cm-1のブロードO−H伸縮。
【0057】
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約1000、平均n=19〜20、2.0g)およびC49CH2CH2SCH2CH2NH2(1.29g)を用いて、実施例1で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C49CH2CH2SCH2CH2NHCOCH2O(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2SCH2CH249(2.59g)をオレンジ色の固体として生成した。IR、ニート、1672cm-1のアミドのC=O伸縮、3348cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3):δ−81.4(m,6F)、−114.8(m,4F)、−124.7(s,4F)、−126.4(m,4F)。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0058】
実施例4
ポリエチレングリコール(Mw約1450、10.0g)およびジョーンズ試薬(12mL)を用いて、実施例1で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約1000)を白色結晶性固体として生成した(8.14g)。IR、ニート、1739cm-1のカルボン酸のC=O伸縮、3429cm-1のブロードO−H伸縮。
【0059】
ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約1450、平均n=29〜30、2.0g)およびC49CH2CH2SCH2CH2NH2(0.904g)を用いて、実施例1で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C49CH2CH2SCH2CH2NHCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2SCH2CH249(1.67g)を黄白色の固体として生成した。IR、ニート、1673cm-1のアミドのC=O伸縮、3347cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3):δ−81.4(m,6F)、−114.8(m,4F)、−124.8(s,4F)、−126.4(m,4F)。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0060】
実施例5
1H,1Hペリフルオロヘプチルアミン(C613CH2NH2)を、Matrix Scientific,Columbia,SCから得た。ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約600、平均n=10〜11、2.0g)およびC613CH2NH2(2.44g)を用いて、実施例1で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C613CH2NHCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2613(3.21g)を琥珀色の油として生成した。IR、ニート、1693cm-1のアミドのC=O伸縮、3326cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3):δ−81.2(m,6F)、−118.2(m,4F)、−121.9(m,4F)、−122.3(m,4F)、−124.0(m,4F)、−126.5(m,4F)。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。またこの生成物を、Rohm & Haas,Spring House,PAから入手できる市販の床磨き剤Rhoplex(登録商標)3829(N−29−1)において、試験方法2に従って湿潤およびレベリング剤としての性能を評価した。対照にはレベリング剤が加えられなかった。すべての試料は75ppm(μg/g)の負荷量で、またそれに加えて室内湿度および温度の起こり得る変動を無くするように測定された。それらの結果は表3に記載され、格付けが高いほど優れた性能を示す。
【0061】
実施例6
撹拌機、熱電対、窒素パージ、滴下漏斗、およびジャケット付きコンデンサーを備えた500mL四つ口反応器を窒素でパージし、アジ化ナトリウム(40.1g、974.7mmolと臭化テトラブチルアンモニウム(6.28g、19.5mmol)と水(100mL)との溶液を充填した。この反応器に、ヨウ化1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル(308g、649.8mmol)を加え、12時間継続的に撹拌しながら90〜95℃まで加熱した。その経過をGC分析により監視した。転化が完了したらフラスコを室温まで冷却し、有機相(アジ化物)を25mL分の水で5回洗浄した。その得られた粗アジ化物(250.0g、643.0mmol、98%)を次のステップに直接使用した。
【0062】
撹拌機、熱電対、窒素パージ、滴下漏斗、およびジャケット付きコンデンサーを備えた1L四つ口反応器を窒素でパージし、アジ化1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチル(250.0g、643mmol)、ラネーNi(4.2g)、および水(250mL)を充填した。この混合物に、温度を室温に保ちながら滴下漏斗によりヒドラジン水和物(28.2g、978.3mmol)を加えた。次いでこの混合物を60℃まで8時間漸次加熱した。反応が終了した(GC分析による)後、混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタン(4×400mL)で抽出し、無水MgSO4上で乾燥した。溶媒の蒸発、続いて減圧下での蒸留により、純粋な1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルアミンを無色の液体(167.7g、462mmol、72%)として生成した。沸点:18mmHgで56℃。1H NMR(CDCl3):δ3.08(t,J=7.0Hz,2H)、2.27(m,2H)。19F NMR(CDCl3)δ−81.4(m,3F)、−114.1(m,2F)、−122.4(m,2F)、−123.4(m,2F)、−124.2(m,2F)、−126.6(m,2F)。
【0063】
空冷コンデンサー、栓、および窒素フラッシュ下に保った隔膜を備えた三つ口フラスコに乾燥ジクロロメタン(100mL)を充填した。このフラスコを15℃に冷却し、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約600、平均n=10〜11、2.0g)、続いて1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)(1.28g)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.815g)を加えた。この混合物を10分間撹拌し、得られた懸濁液にC613CH2CH2CH2NH2(2.42g)を加えた。この反応混合物を室温まで暖め、一晩撹拌した。GC分析は、フッ化アミンのアミドへの完全な転化を示した。得られた透明な溶液を分液漏斗に移し、2%HCl(2×50mL)、飽和NaHCO3溶液(2×50mL)、およびブライン(1×50mL)で洗浄した。有機層を乾燥(無水MgSO4)し、真空下で濃縮し乾燥してフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C613CH2CH2NHCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2613(4.05g)を無色の油として得た。IR、ニート、1673cm-1のアミドのC=O伸縮、3341cm-1のアミドのN−H伸縮。1H NMR(CDCl3):δ7.4(bs,2H,NH)、4.10(s,4H,COCH2O)、3.68(bs,4H,NHCH2)、3.65(bs,PEG OCH2s)、2.32(m,4H,CF2CH2):19F NMR(CDCl3):δ−81.2(m,6F)、−114.4(m,4F)、−122.2(s,4F)、−123.2(s,4F)、−124.0(s,4F)、−126.5(m,4F)。上記調製によるこの生成物を、試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0064】
実施例7
実施例2の場合と同様に調製したポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約400、平均n=6〜7、1.0g)および実施例6の場合と同様に調製したC613CH2CH2NH2(1.82g)を用いて、実施例6で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C613CH2CH2NHCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2613(1.5g)を褐色の油として生成した。IR、ニート、1671cm-1のアミドのC=O伸縮、3370cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3):δ−81.3(m,6F)、−114.5(m,4F)、−122.4(s,4F)、−123.3(s,4F)、−124.0(s,4F)、−126.6(m,4F)。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0065】
実施例8
実施例3の場合と同様に調製したポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約1000、平均n=19〜20、2.0g)および実施例6の場合と同様に調製したC613CH2CH2NH2(1.45g)を用いて、実施例6で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C613CH2CH2NHCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2613(2.07g)を黄白色の固体として生成した。IR、ニート、1671cm-1のアミドのC=O伸縮、3347cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3):δ−81.2(m,6F)、−114.5(m,4F)、−122.2(s,4F)、−123.2(s,4F)、−123.9(s,4F)、−126.5(m,4F)。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0066】
実施例9
実施例4の場合と同様に調製したポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約1450、平均n=29〜30、2.0g)および実施例6の場合と同様に調製したC613CH2CH2NH2(1.02g)を用いて、実施例6で述べたと同様の手順をたどることによって、対応するフッ化ポリ(エチレングリコール)ジアミド、C613CH2CH2NHCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2CONHCH2CH2613(1.7g)を黄白色の固体として生成した。IR、ニート、1673m-1のアミドのC=O伸縮、3350cm-1のアミドのN−H伸縮。19F NMR(CDCl3)δ−81.2(m,6F)、−114.4(m,4F)、−122.2(s,4F)、−123.2(s,4F)、−124.0(s,4F)、−126.5(m,4F)。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。
【0067】
比較例A
コンデンサー、ディーン・スターク・トラップ、マグネティックスターラー、熱電対、および加熱用マントルを備えた四つ口フラスコに、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル(Mw約250、平均n〜3、5.0g)、Zonyl BA−Nアルコール(20.6g、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから市販されているペルフルオロアルキルエチルアルコールであり、このペルフルオロアルキルは炭素原子6から20個を含有するペルフルオロアルキル鎖の同族体の混合物である)、p−トルエンスルホン酸(0.26g)、およびトルエン(100g)を充填した。15時間還流させた後、GC分析によりジエステルの形成を確かめた。水酸化カルシウム(0.26g)を加え、熱い間に濾過することによって沈殿物を除去し、続いてロータリーエバポレーターによってトルエンを除去した。その反応生成物を約500mLの水中に溶解し、続いて濾過して構造式Cj2j+1CH2CH2OCOCH2O−(CH2CH2O)n−CH2COOCH2CH2j2j+1(式中、jは6から20であり、nは3である)で表されるフッ化ポリ(エチレングリコール)ジエステルの約5重量%水溶液を得た。この生成物を試験方法1によりCMCと、そのCMCを超える表面張力について評価した。その結果を表2に示す。またこの生成物を、Rohm & Haas,Spring House,PAから入手できる市販の床磨き剤Rhoplex(登録商標)3829(N−29−1)において、試験方法2に従って湿潤およびレベリング剤としての性能を評価した。対照にはレベリング剤が加えられなかった。すべての試料は75ppm(μg/g)の負荷量で、またそれに加えて室内湿度および温度の起こり得る変動を無くするように測定された。それらの結果は表3に記載され、格付けが高いほど優れた性能を示す。
【0068】
比較例B
比較例Bは、米国特許第5,567,857号明細書に従って調製される水に溶かしたフルオロアルキルエトキシラート非イオン界面活性剤であるE.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから入手できる市販の界面活性剤である。試験方法2により、この生成物は、Rohm & Haas,Spring House,PAから入手できる市販の床磨き剤Rhoplex(登録商標)3829(N−29−1)において湿潤およびレベリング剤としての性能を評価された。対照にはレベリング剤が加えられなかった。すべての試料は75ppm(μg/g)の負荷量で、またそれに加えて室内湿度および温度の起こり得る変動を無くするように測定された。それらの結果は表3に記載され、格付けが高いほど優れた性能を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
脱イオン水の通常の表面張力は72ダイン/cmである。上記フッ化ポリオキシアルキレングリコールジアミドを指定された割合で加えた場合、各水溶液の表面張力は顕著に低下した。実施例1〜9は、比較例Aと比べてより良好または似た表面張力の低下を示した。
【0071】
【表2】

【0072】
これらの結果は、比較例AおよびBよりも少ないフッ素を含有する実施例1および5の界面活性剤が、比較例AおよびBの界面活性剤と似た濡れおよびレベリングの特徴を示したことを表わしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
B−X−COCH2O−[−Cp2pO−]n−CH2CO−X−Ra (1)
の化合物であって、
式中、
Bが、MまたはRaであり、
Mが、イオン化可能な水素、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり、
pが、約2から約4であり、
nが、約5から約43であり、
各Xが、独立してNR、SCH2CH2NR、SO2NRCH2CH2NR、またはSO2CH2CH2NRであり、
Rが、水素、あるいは線状または分岐アルキル基Cb(2b+1)(式中、bは1から約18である)であり、
aが、Rf(CH2CF2d−(Cg2g)−、Rf(OCF2CF2r−(Cg2g)−、RfOY−、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−、Rf(Cg2g)−、またはH(Cc2c)−(Cg2g)−であり、
Yが、CFHCF2O(Cw2w)−、またはCF(CF3)CONH−(Cg2g)−であり、
各Rfが、独立してCc(2c+1)(式中、cは1から約6である)であり、
dが、1から約3であり、
gが、1から約4であり、
sが、0または1であり、
rが、1から約4であり、
hが、1から約6であり、
wが、約2から約12であり、
i、j、およびkは、Rf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−中の炭素原子の総数が約8から約22であるという条件で、それぞれ独立して1、2、または3、あるいはそれらの混在したものである、
化合物。
【請求項2】
nが約6から約32であり、XがNRまたはSCH2CH2NRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
aがRf(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、式中、cが4または6であり、gが1また2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
aがRf(CH2CF2d−(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、式中、cが4または6であり、dが1または2であり、gが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
aがRf[OCF2CF2r(Cg2g)−であり、RfがCc(2c+1)であり、式中、cが2または3であり、sが0であり、rが1、2、または3であり、gが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
aがRfOY−であり、RfがCc(2c+1)であり、式中、cが1、2、または3であり、YがCFHCF2O(Cw2w)−またはCF(CF3)CONH−(Cg2g)−であり、wは2、3、または4であり、gは2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
aがRf(CH2h[(CF2CF2i(CH2CH2jk−であり、RfがCc(2c+1)であり、それら式中でcが1、2、または3であり、hが2であり、kが1、2、または3であり、iおよびjがそれぞれ1であり、かつXがOまたはSCH2CH2Oである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
0.1重量%の水中濃度において約21mN/m未満の表面張力を有する、請求項1に記載の化合物またはその混合物。
【請求項9】
液体に請求項1に記載の前記化合物を加えることを含む、前記液体の表面挙動を変える方法。
【請求項10】
前記表面挙動が、表面張力の低下、濡れ、浸透、延展、レベリング、流動、乳化、分散、撥水撥油、剥離、潤滑、蝕刻、接着、および安定化からなる群から選択され、また前記液体が、塗料組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、フィルム蒸発抑制剤、湿潤剤、浸透剤、洗浄剤、研摩剤、電気めっき剤、腐蝕防止剤、エッチング液、はんだ付け剤、分散助剤、微生物製剤、パルプ助剤、すすぎ助剤、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床仕上げ剤、または接着剤である、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2012−506459(P2012−506459A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532343(P2011−532343)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061416
【国際公開番号】WO2010/048248
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】