説明

フッ素樹脂塗装板

【課題】クリーンルーム等に使用されるUV殺菌灯が放射する253.7nmの紫外線に実用的に耐えられる窯業系基板をベースとした壁面材、天井材を効率よく安価に製造する技術を提供する。
【解決手段】公知の技術によりシーラー、UV目止め、研磨の平滑下地処理が施された窯業系基板を用い、その表面に第1層として着色・隠蔽を目的としたアクリルエナメル層4を乾燥膜厚で20μm〜40μm設け、第2層として主に着色と紫外線に実用的に耐えることを目的として、第1層と同一色相のフッ素樹脂エナメル層5を乾燥膜厚で7μm〜15μm設ける。この2つの同一色相のエナメル層4及び5を設けることにより効率良く低コストで目的の窯業系化粧板を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV(紫外線)殺菌灯が定常的に使用される室内向けの化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年UV殺菌灯が定常的に使用されるクリーンルームの需要が高まってきた。物件が大型化したこと、現場の工期短縮、建築費用の低減が求められ、壁面材料、天井用材料も工場塗装品が使用されることが多くなってきた。従来のアクリルウレタンを始めとする、有機塗料を使用した化粧板はクリーンルーム使用後1年程度で塗膜が著しく白化してしまう。これらのクリーンルームではUV殺菌灯照射が定常的に行われることが一般的である。UV殺菌灯は253.7Nmの紫外線を大量に放出して微生物の増殖を抑止する機能を持っているが、この紫外線が有機樹脂を劣化させる。UV殺菌灯照射に耐えて量産可能で安価な化粧板の出現が期待される。
【0003】
フッ素樹脂の結合エネルギーは、有機樹脂の中では最も高く424KJ/molである。太陽光が地表に到達する時の紫外線エネルギーは411KJ/molで理論的にはフッ素樹脂は太陽光の紫外線では劣化しない。フッ素樹脂塗料は外壁、橋梁、鉄塔等外部の耐久性構造物の塗装に用いられ多くの実績がある。UV殺菌灯の紫外線は253.7nmの自然界には存在しない波長で、その紫外線エネルギーは473KJ/molでフッ素樹脂の結合エネルギーを上回る。従って僅かではあるが劣化する。
【0004】
発明者は永年UV殺菌灯を照射しないクリーンルームの壁面材、天井材を製造してきた。繊維混入ケイ酸カルシウム板、フレキシブルボード等の窯業系ボードを公知の平滑素地形成法によりシーラー処理、目止め処理、ワイドベルトサンダー処理を行い平滑素板を得て、その上にアクリルウレタンエナメルをロールコーター、フローコーター等を用いて乾燥膜厚が20μm〜40μmのエナメル層を得てクリーンルーム用化粧板を生産してきた。
【0005】
アクリルウレタンエナメル仕上げの化粧板をUV殺菌灯照射が定常的に行われるクリーンルームに使用したところ、約1年後に塗膜が著しく白化してしまった。表面を研磨してフッ素エナメルを2回塗装して補修した。その後5年経過したが表面の劣化は生じていない。
【0006】
その後発明者はUV殺菌灯照射が定常的に行われるクリーンルームの壁面、天井に使用される化粧板として繊維混入ケイ酸カルシウム板、フレキシブルボード等窯業系基板を公知の方法で平滑下地処理を行った後、フッ素樹脂エナメルを乾燥膜厚で30μm±3μmとなる様ロールコーターとフローコーターで塗装を行い、100℃〜120℃×20分乾燥を行い、24時間養生を行い積取って生産していた。これらの方法は乾燥後の養生に時間がかかり棚入れ養生が必要で生産効率が悪い、フッ素塗料が非常に高価で材料費が高い、フッ素樹脂塗料はフローコーターのカーテン適性が悪く膜切れが発生して不良率が高い等、非常に値段の高い商品となっていた。
【0007】
発明者らはUV殺菌灯照射が行われないクリーンルームに使用されるアクリルウレタンエナメル塗膜の上にアクリルウレタンエナメルと同色のフッ素樹脂エナメルを薄く均一に塗装することにより使用上支障のある表面の劣化が発生しない化粧板が出来るのではないか、フッ素樹脂エナメルとアクリルウレタンエナメルを同一色にすることにより色の安定性、下地の隠蔽性に問題がなく塗装出来るのではないか、乾燥後の養生時間が短縮出来るのではないか、安価なアクリルウレタンエナメルと高価格のフッ素樹脂エナメルの二つの塗膜を組み合わせて使用することによりフッ素樹脂エナメルの使用量を少なくしてコストダウン出来るのではないかと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第1734358号
【特許文献2】特許第1779712号(両特許文献には、ケイ酸カルシウム板の含浸シーラー、UV目止め処理、研磨、アクリルウレタンエナメル塗装について言及されている)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】建築設計のための塗料選択の手引き 大日本塗料(株) 発行日:1986.12.173頁(アルミニウム材の現地塗装・工場塗装仕様 塗装仕様No.DNT 25−2 フッ素樹脂塗料仕上げ Vフロン#200 塗装仕様工程9の強制乾燥の項参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は下記の通りである。
UV殺菌灯照射が定常的に行われるクリーンルームの壁、天井に使用が可能な平滑性と美観とクリーンルームが要求する性能を有して低コストで量産可能な化粧板の開発と製造方法の確立である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
クリーンルーム用化粧板として実績のある公知の方法で平滑素地調整された窯業系基板にアクリルウレタンエナメルを塗布してなる化粧板の表面にアクリルウレタンエナメルと同色に調色された薄膜のフッ素樹脂エナメル層を設けることによりUV殺菌灯の紫外線照射に実用的に耐えられるようにする。
実用的にUV殺菌灯照射に耐えられるフッ素樹脂エナメルの膜厚の決定、色が安定して発色できる方法の検討、乾燥後の養生を短くする方法の検討、膜厚を均一に工業的に形成する方法の検討を行った。
【0012】
基板である窯業系基材としてはケイ酸カルシウム板、繊維混入セメント板等が用いられる。それらの平滑下地調整方法としては公知技術である特許第1734358号に記載されるイソシアネート含浸シーラー、UV目止め処理、ワイドベルトサンダーによる研磨を行い平滑な下地処理面を得る。
【0013】
クリーンルームとしての一般的な機能と色の発色・安定性を持たせるためにアクリルウレタンエナメルをロールコーターとフローコーターを用いて乾燥膜厚で20μm〜40μm形成する。この化粧板はUV殺菌灯が定常的に使用されることのないクリーンルームの内壁・天井用として多くの実績を有する。
【0014】
更にその表面にUV殺菌灯照射に実用的に耐え得る程度にフッ素樹脂エナメル塗膜を形成させた。下層のアクリルウレタンエナメルの紫外線劣化を防止するために、フッ素樹脂塗料は光の直進性を抑えるためにクリア塗料ではなく顔料の入ったエナメル塗料を使用した。また、紫外線を熱エネルギーに変える光安定剤としてハルスが混合されたフッ素樹脂エナメルを使用した。下層のアクリルウレタンエナメル層との付着性を損なわないためにアクリルウレタンエナメル塗膜形成後24時間以内にフッ素樹脂エナメル層を形成させた。アクリルウレタンエナメル塗料とフッ素樹脂エナメル塗料は同一の耐候性顔料を用いて同一色に調色することにより色の安定性と発色、隠蔽性を確保した。
【0015】
UV殺菌灯照射に対する耐久性評価方法は、適当な促進テスト方法が確立されておらず実際にUV殺菌灯照射し表面の劣化の程度を表面光沢度計で測定し光沢の低下の割合と白化の程度で評価した。クリーンルームにおいて殺菌灯の稼働は人、動物のいない間の稼働となり3000時間の評価を行えば実用上10年相当と判断した。3000時間照射後の光沢度保持率が80%以上、白化の程度が軽微であること、2mm碁盤目セロテープ(登録商標)テストで付着性の低下のない事を実用上使用に耐え得る性能とした。
【0016】
フッ素樹脂エナメルの塗布量を振って試験体を作成し、段落(0015)に示す評価を行った。フッ素樹脂エナメルの塗布量は17g/m、24g/m、44g/m、55g/m、66g/mとし、併せて乾燥性テストを実施した。
【0017】
乾燥性テストは大日本塗料(株)が推奨するVフロン#200上塗りの強制乾燥仕様の厳しい条件に従いセッティング10分(室温)、120℃×20分行い40℃以下に冷却して0.3mm厚発泡ポリスチレンシートを合紙として介在させ、面々合わせで積取り、0.06kg/cm2の荷重をかけて24時間放置した。24時間後に塗膜表面の合紙跡の付着の有無を確認した。
【0018】
試験体の作成条件は以下のとおりである。基材としてケイ酸カルシウム板(商品名:NPラックス メーカー名:ニチアス(株) 6mm厚 サイズ910mm×1820mm 比重1.0)を用いた。シーラーとしてイソシアネート含浸シーラー(商品名:UCカラー W−004K メーカー名: DIC(株))を専用シンナーを用いて重量比で主材:シンナー=1:1で希釈しロールコーターを用いて60g/mの割合で塗布した。その後リバースコーターを用いてエポキシ系UV目止め剤(商品名:AC−12 メーカー名: DIC(株))を100g/m塗布した。直ぐに80W/cmの高圧水銀灯を用いて300MJ/cm2照射し硬化させた。次にワイドベルトサンダーに#280、#320のサンドペーパーを装着して表面を研磨し平滑素面を得た。その表面を乾燥機を用いて加温し40℃に調整してロールコーター及びフローコーターを用いて指定色に調色されたアクリルウレタンエナメル(商品名:UCカラー指定色 メーカー名: DIC(株))を重量比で主剤:硬化剤:専用シンナー=18:2.7:5で調合して110g/m塗布した。1分間室温で養生した後60℃、80℃、100℃に設定された3つのゾーンを有するジェット式ドライヤーを3分間通過させて乾燥させ、クーリングゾーンを通過させて表面温度を40℃以下にして0.3mm厚発泡ポリスチレンシートを合紙として介在させて面裏合せで積取った。次に薄膜を均一塗布できるリバースロールコーターを用いて指定色に調色されたフッ素樹脂エナメル(商品名:Vフロン#200上塗 3分艶 指定色 メーカー名:大日本塗料(株))を重量比で主剤:硬化材=14.4:1.6で調合し17g/m、24g/m、44g/m、55g/m、66g/mの割合で塗布して棚に入れて10分間室温でセッティングし金庫路に入れて120℃雰囲気温度で20分間乾燥した。表面温度が40℃以下になったら0.3mmの発泡ポリスチレンシートを合紙として介在させ面々合わせで積取り、上から0.06kg/cm2の荷重をかけブロッキングテストを行った。アクリルウレタンエナメルとフッ素樹脂エナメルの指定色は同一色である。アクリルウレタンエナメルの乾燥膜厚は30μm、フッ素樹脂エナメルの乾燥膜厚は塗布量17g/mの場合0.006mm(6μm)、24g/mでは0.008mm(8μm)、44g/mでは0.015mm(15μm)、55g/mでは0.019mm(19μm)、66g/mでは0.023mm(23μm)であった。
【0019】
各試験体を24時間後にブロッキング評価した。評価後その試験体は1週間養生して段落(0015)に記載されるUV殺菌灯照射テストを3000時間行った。比較例としてアクリルウレタンエナメル塗装品もテストした。500時間毎の光沢度測定結果を表1に示す。アクリルウレタンエナメル塗装品は殺菌灯照射が行われないクリーンルームに実績のある化粧板である。
【0020】
【表1】

【0021】
アクリルウレタンエナメル仕上げ(従来UV殺菌灯照射が行われないクリーンルームで実績のある材料)の試験体6は500時間照射で白化が著しく発生しそれ以降3000時間まで光沢度は変化しなかった。試験体1〜5はフッ素樹脂エナメルの膜厚に関係なく1500時間では白化は発生しなかった。また光沢度の低下も見られなかった。2000時間ではいずれの試験体にも僅かに白化が見られ3000時間では若干の白化の進行は見られたが利用上支障のあるものとは認められなかった。光沢度保持率は80%強であった。上記結果から判断してアクリルウレタンエナメル塗膜と同色のフッ素樹脂エナメル6μm以上を組み合わせた着色塗膜はUV殺菌連続3000時間照射に耐え得る化粧板である。
【0022】
UV殺菌灯照射により各層内及び各層間強度に低下が見られないかどうかをJIS K54002mm碁盤目テストにより判断した。テスト結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
段落(0021)、(0022)に示すテスト結果よりアクリルウレタンエナメル塗膜と同色のフッ素樹脂エナメル6μm以上を組み合わせた着色塗膜はUV殺菌灯3000時間の連続照射に耐え得る塗膜と判断した。またアクリルウレタンエナメル塗膜のみではUV殺菌灯照射が行われるクリーンルームには使用できないことも再認識できた。今回のテストに使用したフッ素樹脂エナメル(Vフロン#200上塗 3分艶 指定色)は旭硝子(株)が製造するフッ素樹脂 商品名:ルミフロンをベースとした塗料である。
【0025】
段落(0019)に記載のブロッキングテスト結果は表3の通りである。
【0026】
【表3】

【0027】
段落(0021)、(0022)、(0025)に示す結果よりアクリルウレタンエナメル層をロールコーターとフローコーターで乾燥膜厚20μm〜40μmを形成し、その上にアクリルウレタンエナメルと同色に調色されたフッ素樹脂エナメル層を膜厚6μm〜15μm形成させることにより成る2層のエナメル層を有する塗装板はUV殺菌灯が定常的に照射されるクリーンルーム用壁面材・天井材として実用上使用可能で安定した発色が得られ、乾燥時間も短く短時間で積み重ねが可能でライン生産が可能となり、高価なフッ素樹脂エナメルの使用量を減らしてコストダウンも可能となった。
【0028】
フッ素樹脂エナメルを17g/m〜44g/mの範囲で均一に連続的に塗布する手段としては各種スプレー塗装、ロールコーター塗装、リバースロールコーター塗装等が工業的に使用可能である。
【発明の効果】
【0029】
UV殺菌灯に直接さらされる表層に結合エネルギーの高いフッ素樹脂エナメルを使用しているのでUV殺菌灯照射に実用上耐えられる。フッ素樹脂エナメルには光安定剤としてハルスが配合されており、有害な紫外線を熱エネルギーに変えると共に着色顔料が光の直進を抑止し、下層のアクリルウレタンエナメルの紫外線劣化を防止している。
【0030】
トップコートと同色のアクリルウレタンエナメルを中塗りとして20μm〜40μmの乾燥膜厚を設けているため、色の発色が安定し隠蔽性が得られている。
【0031】
トップコートのフッ素樹脂エナメルの乾燥膜厚が6μm〜15μmと薄いため乾燥が容易で乾燥後の養生が短くて済み工業的ライン生産が可能となる。
【0032】
単価の高いフッ素樹脂エナメルの膜厚を薄く塗布し、単価の安いアクリルウレタンエナメルの膜厚を厚くすることにより実用上支障のない化粧塗膜を形成させるため材料コストを低減できた。また、フッ素樹脂エナメルの膜厚を薄くすることにより乾燥時間の短縮と後養生の時間を大幅に短縮でき、これによりライン生産が可能となり製造コストを低減できた。従来のフッ素樹脂エナメルの塗膜を持つ化粧板に比べ大幅にコストダウンできた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はUV殺菌灯試験機の構成説明図である。 6は15W UV殺菌灯、7は試験体でUV殺菌灯と試験体は30cm離して静置される。
【図2】図2は本発明によるケイ酸カルシウム板を基板とした塗装板の断面説明図である。
【図3】図3は本発明の実施例1及び2で使用したリバースロールコーターの構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明における化粧板の模式断面図を図2に示す。1はケイ酸カルシウム板、繊維補強セメント板等の平滑に研磨された窯業系基板である。2は表層強化並びに基材からにじみ出るアルカリ成分を防止するために含浸、固化したイソシアネート樹脂層である。1に接して3を形成しているのはUV硬化型エポキシ系目止め剤層である。この面はワイドベルトサンダーで研磨され平滑な面をしている。その上に形成される4はトップコートと同色のアクリルウレタンエナメル塗膜で20μm〜40μmの乾燥塗膜を有し化粧板としての性能付与と着色と下地の隠蔽の働きをしている。その上に形成される4と同色の5はこの化粧板の耐紫外線性を付与するための着色フッ素樹脂エナメル塗膜で、乾燥膜厚は7μm〜15μmである。
【0035】
(実施例1)
ケイ酸カルシウム板(サイズ910mm×1820mm×6mm、商品名:NPラックス メーカー:ニチアス(株) 比重1.0)の表面に湿気硬化型含浸シーラー(商品名:UCシーラーW−004K メーカー:DIC(株))をウレタンシンナーを用いて重量比で1:1の割合で希釈しスポンジロールコーターで60g/m(wet)の割合で塗布し自然乾燥させた。
【0036】
24時間経過後表面をリバースコーターを用いてUV硬化型エポキシ系目止め剤(商品名:UV目止め AC12 メーカー名: DIC(株))を150g/m(wet)の割合で擦り込むように塗布し、360nmを主波長とする出力80W/cmのUVランプの下を通過させ、300MJ/cm2照射して硬化させた。ワイドベルトサンダーに#280、#320のサンドペーパーを装着して目止め面を研磨して平滑面を得た。次にトップコートであるフッ素樹脂エナメルと同色に調色されたアクリルウレタンエナメル(商品名:UCカラー#500 メーカー名: DIC(株))を重量比で主剤:硬化剤:ウレタンシンナー=18:2.7:5の割合で調合しロールコーターとフローコーター110g/m(wet)の割合で塗布し1分間セッティングさせた後、60℃、80℃、120℃に設定されたジェット式熱風乾燥炉の中を3分間通過させ乾燥した。40℃以下に冷却して0.3mm厚の発泡ポリスチレンシートを合紙として介在させ面裏合せで積取った。この時のアクリルウレタンエナメルの塗膜厚はおよそ30μmであった。
【0037】
24時間以内に図3に示すリバースロールコーターを用いてアクリルウレタンと同色に調色されたフッ素樹脂エナメル塗料(商品名:Vフロン#200上塗 3分艶 メーカー名:大日本(株))を重量比で主剤:硬化剤=14.4:1.4の比率で調合し、17g/m(wet)の割合で塗布した。棚に入れ10分間室温でセッティングした後、120℃に設定された金庫炉に入れて20分間乾燥した。乾燥後金庫炉から棚を取り出し、室温で40℃以下になるまで冷却して0.3mm厚の発泡ポリスチレンシートを合紙として介在させ面々合わせで積取った。図3において、8は基板であり、リバースロールコーター12は、送りロール9、塗布ロール10、リバースロール11からなり、正確な塗布量を得ることが出来る。
【0038】
(実施例2)
実施例1の段落(0034)と(0035)と同様の作業を行い30μm厚の塗膜厚を有するアクリルウレタン塗装板を得た。次に(0036)と同様にリバースロールコーター(図3)を用いてアクリルウレタンエナメルと同色に調色されたフッ素樹脂エナメルを44g/m(wet)の割合で塗布し1分間セッティングを行った後80℃、100℃、130℃に設定されたジェット式乾燥機の中を5分間通過させて乾燥した。冷却ゾーンを通過させて表面温度を40℃以下に冷却して段落(0036)と同様に合紙を介在させて積取った。直ぐに0.06kg/cm2の荷重をかけ24時間ブロッキングテストを行いブロッキングしていないことを確認した。
【0039】
(比較例1)
実施例1の段落(0034)、(0035)と同様にして30μm厚の塗膜厚を有するアクリルウレタン塗装板を得る。次にフローコーターを用いてフッ素樹脂エナメル塗装を行う。フッ素樹脂エナメルは実施例1と同一の塗料を使用する。主剤:硬化剤:専用シンナー=14.4:1.4:3.0で調合しロールコーターで10g/m、フローコーターで100g/mとなる様に調整した。フローコーターのカーテンは時々膜切れを生じた。フッ素樹脂塗料と同色のアクリルウレタン塗装板をプレヒートゾーンを通過させて表面温度を50℃に加温し、ロールコーターとフローコーターを通過させてフッ素樹脂エナメルを塗装して1分間セッティングさせた後80℃、100℃、130℃に調整された3ゾーンを有するジェット式乾燥炉を5分間かけて通過させ乾燥した。その後5分間かけて表面温度が40℃になる様クーリングを行った。クーリング後の表面状態は、塗膜はタックが残り積取ることは不可能であった。棚に入れて24時間室温で養生した。その後0.3mm厚の発泡ポリスチレンシートを合紙として介在させ面々合わせで積取り、0.06kg/cm2の荷重をかけブロッキングテストを行った。24時間後にブロッキングは生じていなかった。尚、10枚塗装した中で2枚に膜切れ不良が発生し収率は80%であった。フッ素樹脂の乾燥膜厚は31μmであった。
【0040】
UV殺菌灯が定常的に使用されるクリーンルーム用のフッ素樹脂エナメル塗装板をカーテンフローコーターを用いて塗装することは膜切れが発生して収率が悪く技術的にも難しく材料コスト面においても高価なフッ素樹脂塗料の膜厚が本発明品の6〜15μmに比べ31μmと厚くコスト高であることの実証である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明はUV殺菌灯照射が定常的に行われるクリーンルーム向けフッ素化粧板を低コストで大量に生産する方法を提供するものである。
【符号の説明】
【0042】
1 ケイ酸カルシウム板
2 イソシアネート含浸シーラー層
3 UV硬化型エポキシ系目止め剤層
4 アクリルウレタンエナメル層
5 フッ素樹脂エナメル層
6 15W 殺菌灯
7 試験体
8 基板
9 送りロール
10 塗布ロール
11 リバースロール
12 リバースロールコーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑素地調整された窯業系基板の表面に非黄変型ポリウレタン系エナメル塗料よりなる中塗りとフッ素樹脂エナメル塗料よりなるトップコート層の2層のエナメル層を有する窯業系化粧板。
【請求項2】
請求項1において中塗りエナメル層とフッ素樹脂エナメル塗料層が同色であることを特徴とする窯業系化粧板。
【請求項3】
請求項2において中塗り層の塗膜厚が20μm〜40μm、トップコート層の乾燥膜厚が6μm〜15μmであることを特徴とする窯業系化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152944(P2012−152944A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12069(P2011−12069)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(398007483)壽工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】