説明

フッ素系ポリマー複合粒子の製造方法

【課題】 本発明は、粒子径の小さいフッ素系ポリマー複合粒子が得られるとともに、粒子径やフッ素系ポリマー層の膜厚を均一に制御することが可能なフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子を作製する工程1、前記樹脂コア粒子及びフッ素含有アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子の表面にフッ素系ポリマー層を形成する工程2を有するフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径の小さいフッ素系ポリマー複合粒子が得られるとともに、粒子径やフッ素系ポリマー層の膜厚を均一に制御することが可能なフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)/パーフロロ(アルキルビニールエーテル)共重合体(PFA)、TFE/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体(FEP)等のフッ素系ポリマーを用いた微粒子、粉末等は、撥水性、耐熱耐寒性、難燃性、摺動性、非粘着性、防汚性、耐薬品性、耐候性、電気特性等の性能を付与するための材料として各分野で利用されている。
【0003】
このようなフッ素系ポリマー粒子を製造する方法としては、乳化重合、懸濁重合等を用いる方法が行われており、例えば、特許文献1には、含フッ素樹脂複合微粒子を製造する方法として、水性媒体中で乳化剤の存在下、TFE85〜100重量%および他のフルオロオレフィン0〜15重量%を重合させる工程と、ビニリデンフルオライド30〜100モル%およびビニリデンフルオライドと共重合しうる他の含フッ素オレフィン0〜70モル%から成るビニリデンフルオライド系樹脂を生成し得るモノマー組成で重合させる工程とからなる方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、粒子径分布が広く平均粒子径が大きいフッ素系ポリマー粒子しか作製できないという問題があった。特に粒子径が1μm以下のフッ素系ポリマー粒子を作製することは困難であった。また、粒子径分布が広いか、又は、粒子径が1μm以上の粒子は、塗布した表面が撥水性等の物性に劣るものであった。
【0004】
これに対して、特許文献2には、粉体塗料として好適なフッ素系重合体粉末の製造方法として、フッ素系重合体原末をシート状に圧縮して高密度化し、粉砕する方法が開示されている。
ところが、このような方法を用いた場合でも、得られる粒子は粒度分布が広いものとなることから、気流分級等によって粗粒子を除去する工程が別途必要となり、製造工程が煩雑になったり、製造コストが高くなったりするという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−73137号公報
【特許文献2】特許3467778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粒子径の小さいフッ素系ポリマー複合粒子が得られるとともに、粒子径やフッ素系ポリマー層の膜厚を均一に制御することが可能なフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子を作製する工程1、前記樹脂コア粒子及びフッ素含有アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子の表面にフッ素系ポリマー層を形成する工程2を有するフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子を作製し、更にフッ素含有アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子の表面にフッ素系ポリマー層を形成することにより、粒子径の小さいフッ素系ポリマー複合粒子が得られることに加えて、粒子径やフッ素系ポリマー層の膜厚を均一に制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明のフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法は、炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子を作製する工程1を有する。
【0010】
上記リビング分散重合とは、開始剤を起点とする重合反応が停止反応や連鎖移動反応などの副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合(リビング重合)を分散重合で行う方法のことをいう。
本発明では、このようなリビング分散重合を用いることで、重合反応が同時に開始すれば分子量が均一な重合体を得ることができ、その結果、粒子径が揃った樹脂コア粒子を得ることができる。
また、上記リビング分散重合を用いることで、水系媒体中での重合反応が可能となり、種々の置換基を有するポリマーを得ることが可能となる。
【0011】
上記リビング分散重合において行われるリビング重合としては、特に限定されず、例えば、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビング配位重合等を採用することができる。なかでも、リビング配位重合が好ましい。
【0012】
上記リビング分散重合において使用する開始剤としては、例えば、π−アリルニッケル触媒をはじめとする各種遷移金属触媒が使用できる。
上記π−アリルニッケル触媒は、ハロゲン化アリル、アリルアセテート等のアリル化合物に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(以下Ni(COD)とする)等の有機ニッケル、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリフェノキシフォスフィン、トリエトキシフォスフィン等のフォスフィンを添加して得られる。
【0013】
上記リビング分散重合において使用する分散安定剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
上記リビング分散重合において使用する重合溶媒としては特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒のほか、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの非極性溶媒を用いることができる。これらの溶媒は、1種類又は2種類以上用いてもよい。これらの中では、水およびメタノール、エタノールを適宜混合して使用するのが好ましい。
また、重合温度は、反応速度の観点から0〜90℃が好ましい。
【0015】
上記炭化水素系アレンモノマーとしては、例えば、フェノキシアレン、アレン(1,2−プロパジエン)、メチルアレン、エチルアレン、プロピルアレン、ブチルアレン、イソプロピルアレン、ヘキシルアレン、フェニルアレン、ベンジルアレン、ジメチルアレン、ジエチルアレン、ジヘキシルアレン、ジフェニルアレン、ヒドロキシメチルアレン、置換アルキルブタジニエルエーテル、アレン酸、アレン酸エステル、ポリオキシエチレンアレニルアルキルエーテル等が挙げられる。
上記フェノキシアレンとしては、例えば、フェノキシアレン、(4−tert−ブチルフェノキシ)アレン、(4−ニトロフェノキシ)アレン、(4−アセチルフェノキシ)アレン、(4−アミノフェノキシ)アレン等が挙げられる。
【0016】
上記樹脂コア粒子重合の際には、必要に応じて官能基含有アレンモノマーを共重合させても良い。官能基含有アレンモノマーとしては、例えば、カルボキシメチルアレン、2−カルボキシエチルアレン、ジカルボキシルメチルアレン、2,2−ジカルボキシエチルアレン、アミノメチルアレン、2−アミノエチルアレン、シアノメチルアレン、2−シアノエチルアレン等が挙げられる。
【0017】
上記樹脂コア粒子は、平均粒子径の好ましい下限が0.001μm、好ましい上限が1000μmである。平均粒子径が0.001μm未満であると、コア粒子表面上にフッ素系ポリマーを均質に形成できないことがある。平均粒子径が1000μmを超えると、重合中に粒子が凝集することがある。上記平均粒子径のより好ましい下限は0.005μm、より好ましい上限は100μmである。
なお、上記樹脂コア粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡、又は、電子顕微鏡を用いて無作為に選んだ50個の樹脂コア粒子を観察して得られた直径の平均値を意味する。
【0018】
また、上記樹脂コア粒子の平均粒子径は、CV値の好ましい上限が30%である。CV値が30%を超えると、フッ素系ポリマー複合粒子が粒子径分布の広いものとなる。CV値のより好ましい上限は20%である。なお、CV値は、標準偏差を平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0019】
上記リビング分散重合における上記炭化水素系アレンモノマーの添加量は、開始剤1重量部に対して好ましい下限は5重量部、好ましい上限は1000重量部である。上記炭化水素系アレンモノマーの添加量が5重量部未満であると樹脂コア粒子が生成しにくくなることがあり、1000重量部を超えると、樹脂コア粒子同士の凝集を招くことがある。
上記炭化水素系アレンモノマーの添加量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は200重量部である。
【0020】
上記リビング分散重合の具体的方法としては、例えば、窒素置換した重合容器に予め調製したπ−アリルニッケル触媒に溶媒、炭化水素系アレンモノマーを添加し、室温で数時間攪拌する方法が挙げられる。
上記リビング分散重合の結果得られるポリマーの分子量は特に限定されないが、ポリマーの分子量は開始剤との仕込み比により予測できる値から±10%以内に収まり、分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は1.2以下となることが好ましい。
【0021】
本発明のフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法は、次いで、上記樹脂コア粒子及びフッ素含有アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子の表面にフッ素系ポリマー層を形成する工程2を有する。
【0022】
上記工程2では、リビング分散重合を用いることで、炭化水素系アレンポリマーにフッ素含有アレンモノマーを共重合させることができ、その結果、均一な厚みを有するフッ素系ポリマー層を形成することができる。また、上記フッ素系ポリマー層の厚みを所望の厚みに制御することが可能となる。
更に、多種多様な官能基を有するフッ素含有アレンモノマーを用いることができ、フッ素系ポリマー複合粒子に所望の性能を付与することが可能となる。
加えて、一般的に高価であるフッ素系ポリマーの割合を低減させることができ、生産コストを大幅に低下させることが可能となる。
【0023】
上記工程2において使用する開始剤、重合溶媒、重合条件については、上記工程1と同様とすることが好ましい。
【0024】
上記フッ素含有アレンモノマーとしては、親水性フッ素含有アレンモノマー及び非極性フッ素含有アレンモノマーを用いることが好ましい。
【0025】
上記親水性フッ素含有アレンモノマーとしては、例えば、ポリオキシエチレンアレニル(トリフルオロメチル)エーテル、ポリオキシエチレンアレニル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、ポリオキシエチレンアレニル(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)エーテル等が挙げられる。なかでも、ジエチレングリコールアレニル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテルが好ましい。
【0026】
上記非極性フッ素含有アレンモノマーとしては、例えば、2−(パーフルオロオクチル)エチル−2,3−ブタジエニルエーテル、2,2,2−トリフルオロエトキシアレン、ペンタフルオロフェノキシアレン、ヘキサフルオロイソプロポキシアレン等が挙げられる。
【0027】
上記フッ素系ポリマー複合粒子重合の際には、必要に応じて官能基含有アレンモノマーを共重合させても良い。官能基含有アレンモノマーとしては、例えば、3,4−ペンタジエン酸、4,5−ヘキサジエン酸、2−アレニルマロン酸、2−(2,3−ブテニル)マロン酸、2,3−ブタジエニルアミン、3,4−ペンタジエニルアミン、3,4−ペンタジエンニトリル、4,5−ヘキサジエンニトリル等が挙げられる。
【0028】
上記フッ素含有アレンモノマーの添加量としては、形成するフッ素系ポリマー層の厚みに応じて決定されるが、上記樹脂コア粒子100重量部に対して0.1〜700重量部であることが好ましい。上記範囲内とすることで、適度な厚みを有するフッ素系ポリマー層を形成することが可能となる。より好ましくは、樹脂コア粒子100重量部に対して1〜100重量部である。
【0029】
上記工程2において形成されるフッ素系ポリマー層の厚みの好ましい下限は0.0001μm、好ましい上限100μmである。厚みが0.0001μm未満であると、フッ素系ポリマーに由来する耐熱性や撥水性といった効果が十分得られないことがある。厚みが100μmを超えると、厚みの均一性が失われることがある。上記厚みのより好ましい下限は0.001μm、より好ましい上限は10μmである。
【0030】
また、フッ素系ポリマー層の厚みは、CV値の好ましい上限が40%である。CV値が40%を超えると、フッ素系ポリマー複合粒子が粒子径分布の広いものとなる。CV値のより好ましい上限は30%である。なお、CV値は、標準偏差を平均厚みで割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0031】
上記工程2におけるポリマーの分子量、リビング分散重合の具体的方法等については、上記工程1と同様とすることが好ましい。
【0032】
本発明で得られるフッ素系ポリマー複合粒子は、塗料をはじめ各種成形体の充填材として使用できるほか、特にナノサイズのフッ素系ポリマー複合粒子を用いた場合、優れた撥水作用を示す撥水性コート材に用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、粒子径の小さいフッ素系ポリマー複合粒子が得られるとともに、粒子径やフッ素系ポリマー層の膜厚を均一に制御することが可能なフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
(樹脂コア粒子の作製)
三方コックをつけたすり付き試験管中に、分散安定剤としてポリ(N−ビニルピロリドン)0.070gを加え、窒素置換を行った。これにアリルトリフルオロアセテートのトルエン溶液(1.0M、120μL)、Ni(COD)のトルエン溶液(0.1M、1.0mL)、トリフェニルホスフィンのトルエン溶液(1.0M、150μL)を順次加え、減圧下にてトルエンを留去した。ここに重合媒体として乾燥メタノール(10.0mL)を加え、π−アリルニッケル触媒溶液(0.10mmol)を得た。
得られたπ−アリルニッケル触媒溶液に対して、フェノキシアレン(1.3g、10.0mmol)を加え室温にて24時間、350rpmで攪拌しつつ重合を行うことにより、樹脂コア粒子を得た。
【0036】
(フッ素系ポリマー複合粒子の作製)
次いで、得られた樹脂コア粒子エマルション(樹脂コア粒子1.3g)に、2−(パーフルオロオクチル)エチル−2,3−ブタジエニルエーテル(0.072g、0.15mmol)を加え共重合を行い、2−(パーフルオロオクチル)エチル−2,3−ブタジエニルエーテルの消費をガスクロマトグラフィーにより確認後、重合系を空気中で放置し生長末端の不活性化により反応を終了させた。その後、3000rpmの回転速度で遠心分離を行い、懸濁成分を沈降させ上澄み液を除去した。続けて再びメタノール溶媒を加えこの作業を3回繰り返して精製を行い白色のフッ素系ポリマー複合粒子を得た。
【0037】
(実施例2)
(フッ素系ポリマー複合粒子の作製)
実施例1の(樹脂コア粒子の作製)と同様の方法で樹脂コア粒子を作製した後、得られた樹脂コア粒子エマルションに、2,2,2−トリフルオロエトキシアレン(0.040g、0.30mmol)を加え、共重合を行い、2,2,2−トリフルオロエトキシアレンの消費をガスクロマトグラフィーにより確認後、重合系を空気中で放置し生長末端の不活性化により反応を終了させた。その後、3000rpmの回転速度で遠心分離を行い、懸濁成分を沈降させ上澄み液を除去した。続けて再びメタノール溶媒を加えこの作業を3回繰り返して精製を行い白色のフッ素系ポリマー複合粒子を得た。
【0038】
(実施例3)
(樹脂コア粒子の作製)
三方コックをつけたすり付き試験管中に、分散安定剤としてポリ(N−ビニルピロリドン)0.070gを加え、窒素置換を行った。これにアリルトリフルオロアセテートのトルエン溶液(1.0M、120μL)、Ni(COD)のトルエン溶液(0.1M、1.0mL)、トリフェニルホスフィンのトルエン溶液(1.0M、150μL)を順次加え、減圧下にてトルエンを留去した。ここに重合媒体として乾燥メタノール(10.0mL)を加え、π−アリルニッケル触媒溶液(0.10mmol)を得た。
得られたπ−アリルニッケル触媒溶液に対して、フェノキシアレン(0.65g、5.0mmol)を加え室温にて6時間、350rpmで攪拌しつつ重合を行い、ついでジエチレングリコールアレニルメチルエーテル(0.80g、5.0mmol)を加え60℃にて6時間攪拌しつつ重合を行うことにより、樹脂コア粒子を得た。
【0039】
(フッ素系ポリマー複合粒子の作製)
次いで、得られた樹脂コア粒子エマルション(樹脂コア粒子0.65g)に、2−(パーフルオロオクチル)エチル−2,3−ブタジエニルエーテル(0.482g、1.0mmol)を加え共重合を行い、2−(パーフルオロオクチル)エチル−2,3−ブタジエニルエーテルの消費をガスクロマトグラフィーにより確認後、重合系を空気中で放置し生長末端の不活性化により反応を終了させた。その後、3000rpmの回転速度で遠心分離を行い、懸濁成分を沈降させ上澄み液を除去した。続けて再びメタノール溶媒を加えこの作業を3回繰り返して精製を行い白色のフッ素系ポリマー複合粒子を得た。
【0040】
(実施例4)
(樹脂コア粒子の作製)
三方コックをつけたすり付き試験管中に、分散安定剤としてポリ(N−ビニルピロリドン)0.070gを加え、窒素置換を行った。これにアリルトリフルオロアセテートのトルエン溶液(1.0M、120μL)、Ni(COD)のトルエン溶液(0.1M、1.0mL)、トリフェニルホスフィンのトルエン溶液(1.0M、150μL)を順次加え、減圧下にてトルエンを留去した。ここに重合媒体として乾燥メタノール(8.0mL)とイオン交換水(2.0mL)の混合溶液を加え、π−アリルニッケル触媒溶液(0.10mmol)を得た。
得られたπ−アリルニッケル触媒溶液に対して、フェノキシアレン(1.3g、10.0mmol)を加え室温にて24時間、350rpmで攪拌しつつ重合を行うことにより、樹脂コア粒子を得た。
【0041】
(フッ素系ポリマー複合粒子の作製)
次いで、得られた樹脂コア粒子エマルション(樹脂コア粒子1.3g)に、2,2,2−トリフルオロエトキシアレン(0.040g、0.30mmol)を加え共重合を行い、2,2,2−トリフルオロエトキシアレンの消費をガスクロマトグラフィーにより確認後、重合系を空気中で放置し生長末端の不活性化により反応を終了させた。その後、3000rpmの回転速度で遠心分離を行い、懸濁成分を沈降させ上澄み液を除去した。続けて再びメタノール溶媒を加えこの作業を3回繰り返して精製を行い白色のフッ素系ポリマー複合粒子を得た。
【0042】
(実施例5)
(樹脂コア粒子の作製)
三方コックをつけたすり付き試験管中に、分散安定剤としてポリ(N−ビニルピロリドン)0.070gを加え、窒素置換を行った。これにアリルトリフルオロアセテートのトルエン溶液(1.0M、120μL)、Ni(COD)のトルエン溶液(0.1M、1.0mL)、トリフェニルホスフィンのトルエン溶液(1.0M、150μL)を順次加え、減圧下にてトルエンを留去した。ここに重合媒体として乾燥メタノール(5.0mL)とイオン交換水(5.0mL)の混合溶液を加え、π−アリルニッケル触媒溶液(0.10mmol)を得た。
得られたπ−アリルニッケル触媒溶液に対して、フェノキシアレン(1.3g、10.0mmol)を加え室温にて24時間、350rpmで攪拌しつつ重合を行うことにより、樹脂コア粒子を得た。
【0043】
(フッ素系ポリマー複合粒子の作製)
次いで、得られた樹脂コア粒子エマルション(樹脂コア粒子1.3g)に、ジエチレングリコールアレニル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル(0.066g、0.30mmol)を加え共重合を行い、2,2,2−トリフルオロエトキシアレンの消費をガスクロマトグラフィーにより確認後、重合系を空気中で放置し生長末端の不活性化により反応を終了させた。その後、3000rpmの回転速度で遠心分離を行い、懸濁成分を沈降させ上澄み液を除去した。続けて再びメタノール溶媒を加えこの作業を3回繰り返して精製を行い白色のフッ素系ポリマー複合粒子を得た。
【0044】
(比較例1)
攪拌機を備えた内容量が3リットルのステンレス製耐圧重合器に、脱イオン水1480ml及びパーフルオロオクタン酸アンモニウム1.5gを仕込み、加温しながら、窒素ガスで置換後、テトラフルオロエチレン(TFE)で内圧を9.0kgf/cmにして、撹拌を250rpmで行いつつ、内温を70℃に保った。
【0045】
次に、ヘキサフルオロプロペン(HFP)ガス30mlを注射器で加え、続いて水10mlに過硫酸アンモニウム(APS)75mg(全水量に対し50ppm)を溶解した水溶液をTFEで圧入し、オートクレーブ内圧を9.0kgf/cmにした。反応は加速的に進行するが、反応温度は70℃、撹拌は250rpmに保った。
TFEは、オートクレーブの内圧を常に±0.5kgf/cmに保つように連続的に供給した。
開始剤(過硫酸アンモニウム)を添加してから反応で消費されたTFEが289gに達した時点(約3時間後)で直ちに撹拌とTFEの供給を停止し、オートクレーブ内の圧力が1.5kgf/cmになるまでTFEを系外に放出した。
【0046】
更に、別のラインからビニリデンフルオライド(VdF)81モル%のTFE/VdF混合ガスを、圧力9.0kgf/cmになるまで供給し、撹拌を再開して、その圧力を保ちながら反応を続けた。
混合ガスが実質的に63g消費されたところで撹拌と混合ガスの供給を停止し、オートクレーブ内に残ったガスを常圧まで放出して反応を終了させることにより、含フッ素樹脂複合微粒子の水性分散体を得た。重合中オートクレーブ内のVdF濃度は、70〜80モル%であった。全反応時間は8時間であった。
【0047】
(評価)
(1)平均粒子径の測定
動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いて、各実施例及び比較例で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径及び粒子径のCV値を測定した。
【0048】
(2)フッ素系ポリマー層の膜厚の測定
任意に100個の樹脂粒子を抽出し、電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM−1200EXII」)を用いて断面観察し、粒子の写真映像より樹脂粒子のフッ素系ポリマー層の膜厚を測定した。また、膜厚のCV値についても測定した。
【0049】
(3)フッ素系ポリマー粒子塗布膜の接触角の測定
得られたフッ素系ポリマー粒子をエタノール中に分散し、スピンコーターにてガラス基板上に塗布した。エタノールを完全に乾燥させた後、塗布膜上にイオン交換水の水滴をたらして接触角を測定した。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、粒子径の小さいフッ素系ポリマー複合粒子が得られるとともに、粒子径やフッ素系ポリマー層の膜厚を均一に制御することが可能なフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子を作製する工程1、
前記樹脂コア粒子及びフッ素含有アレンモノマーを用いてリビング分散重合を行うことで樹脂コア粒子の表面にフッ素系ポリマー層を形成する工程2を有する
ことを特徴とするフッ素系ポリマー複合粒子の製造方法。