説明

フッ素重合体をベースにした可撓性フィルム

PETまたはPENのシートに結合したPVDFベースのフィルムF1、または、PVDFベースのフィルムF2に結合しているPETまたはPENのシートに結合したPVDFベースのフィルムF1を有する多層構造物。
【課題】上記F1および/またはF2のフィルムは下記の層:5〜40重量部の少なくとも一種のPVDFと、60〜95重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜5重量部の少なくとも一種のUV吸収剤とを含む組成物Bの層(任意層)、50〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜50重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とを含むの組成物Aの層、80〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜20重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とを含む組成物Cの層(任意層)を(PETまたはPENのシートからの順番)有し、組成物Aおよび/または組成物Bはアクリルエラストマーもコアシェル粒子も含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を保護するためのPVDFベースのフィルムと、このフィルムで被覆された基材とに関するものである。
本発明はさらに、PETまたはPENのシートとPVDFベースのフィルムとを組合せた多層構造物に関するものである。
本発明はさらに、上記のPVDFベースのフィルムまたは多層フィルムの光電池モジュールの保護での使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PVDF(ポリ弗化ビニリデン)は放射線および化学薬品に対する非常に優れた耐候性、耐薬品性を有するので、物品および材料の保護に利用されているポリマーである。さらに、このポリマーの光沢のある外観およびグラフィティ耐久性も知られている。従って、種々の物体の被覆にPVDFフィルムは利用されている。
【0003】
しかし、PVDFのフィルムには被保護基材に対する優れた接着性が要求され、また、厳しい気象状況に曝される外部での使用や高温で実行される成形プロセスに耐えるだけの非常に優れた耐熱性を有していることが要求される。さらに、PVDFのフィルムにはフィルムを物体上に取付けたとき、あるいは、フィルムを付けた物体を成形、例えばプレス成形したときに加わる機械的応力に耐えるだけの優れた柔軟性と高い破断強度が要求される。こうした用途に適用できるテスト方法はオープン中で劣化させたフィルムの引裂強度を調べ、亀裂が簡単に拡大するか否かを調べるる方法である。
【0004】
下記文献にはPVDFのホモポリマーまたはコポリマーをベースにした2層または3層から成るフィルムが記載されている。
【特許文献1】欧州特許第EP 1 382 640号公報
【0005】
PVDFコポリマーは0〜50%のコモノマーを含むが、実施例ではPVDFのホモポリマーを使用している。
下記文献にもPVDFのホモポリマーまたはコポリマーをベースにした2層または3層から成るフィルムが記載されている。
【特許文献2】欧州特許第EP 1 566 408号公報
【0006】
PVDFのコポリマーは0〜50%、好ましくは0〜25%、さらに好ましくは0〜15%のコモノマーを含むが、このフィルムは充填材を含まない。
下記文献にはPVDF/PETフィルムで保護された光起電力電池が記載されている。
【特許文献3】欧州特許第EP 172 864号公報
【0007】
PVDFとPETとの間には接着剤の層はない。
下記文献には、フルオロポリマとアクリル重合体とをべースにした多層フィルムが記載されている。
【特許文献4】国際特許公開第WO 2005/081859号公報
【0008】
下記文献にはPEN層、接着剤層、フルオロポリマ(PCTFE、PVDF、その他)の層をこの順番で有する多層構造物が記載されている。
【特許文献5】米国特許第US 6 555 190号明細書
【0009】
接着剤の層は不飽和カルボン酸または無水物によって官能化されたポリオレフィンか、モノマーとして、不飽和酸または無水物によって編成されていてもよいアクリル酸、アクリレートおよびアルキルアクリレートから成るホモポリマーまたはコポリマーである。
【0010】
下記文献には135℃以上の融点を有する層と、融点が135℃以下である層とから成る2層のフルオロポリマ層から成るフィルムで保護された光電池モジュールが記載されている。
【特許文献6】米国特許公開第US 2005/0268961号明細書
【0011】
下記文献にはポリビニリデン(TEDLAR)フィルムで保護された光電池モジュールが記載されている。
【特許文献7】米国特許公開第US 2005/0172997号明細書
【特許文献8】米国特許第US 6 369 316号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、優れた柔軟性を有し且つ高い破断強度を有する、所定用途に使用可能なPVDFベースのフィルムを開発した。
本発明者はさらに、PETまたはPENのシートとPVDFベースのフィルムとを組み合せた多層構造物を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対象は、請求項1に記載のPVDFベースのフィルムを使用した多層構造物にある。
本発明の他の対象は、上記多層構造物の使用と、上記PVDFベースのフィルムの製造方法にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
「PVDF」という用語はビニリデンフルオリド(VDFまたはCH2 = CF2)のホモポリマーおよび好ましくは少なくとも50重量%のVDFと、VDFと共重合可能な少なくとも一種の他のフルオロモノマーと含むVDFのコポリマーを意味する。このPVDFポリマーは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%のVDFを含むのが好ましい。
【0015】
フィルムの柔軟性を増やすために、フィルムの層の任意の一つの層で、80〜95重量%、好ましくは87〜93重量%のVDFに対して5〜20重量%、好ましくは7〜13重量%の少なくとも一種のフッ素化されたコモノマーを含むPVDF使用することができる(以下、このタイプのPVDFを「可撓性PVDF」という)。組成物AおよびBには可撓性のPVDFを使用するのが好ましい。
【0016】
VDFと共重合可能なフッ素化されたコモノマーは以下の中から選択できる:フッ化ビニル、三フッ化エチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル、例えばペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、ペルフルオロ(1,3-ジオキソール)およびペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)。
【0017】
フッ素化されたコモノマーはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、三フッ化エチレン、VF3およびテトラフルオロエチレン(TFE)の中から選択するのが好ましい。コモノマーはHFPであるのが有利である。すなわち、HFPはVDFと良く共重合し、優れた熱機械特性を耐える。コポリマーはVDFとHFPとだけから成るのが好ましい。
【0018】
PVDFは100Pa.s〜2000Pa.sの粘度を有するのが好ましい(粘度は230℃で毛管レオメータで100s-1の剪断速度で測定する)。このタイプのPVDFは押出成形に適している。PVDFは300Pa.s〜1200Pa.sの粘度(230℃で100s-1の剪断速度で毛管レオメータを使用して測定した粘度)を有するのが好ましい。
【0019】
「PMMA」という用語はメタクリル酸メチル(MMA)のホモポリマーと、少なくとも50重量%のMMAとMMAと共重合可能な少なくとも一種の他のモノマーとのコポリマーを示す。MMAと共重合可能なコモノマーの例としてはアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンおよびイソプレンを挙げることができる。アルキル(メタ)アクリレートの例は下記文献に記載されている。
【非特許文献1】KIRK-OTHMER, Encyclopedia of Chemical Technology,第4版、vol. 1, p.292-293,vol. 16, p.475-478
【0020】
PMMAは0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%のC1-C8アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはアクリル酸メチルおよび/またはアクリル酸エチルを含むのが好ましい。PMMAと官能化できる(すなわち、例えば酸、酸クロリド、アルコールまたは無水物官能基を含むことができる)。これらの官能基はグラフトまたは共重合によって導入できる。官能基はアクリル酸のコモノマーによる酸官能基であるのが有利である。互いに隣接する2つのアクリル酸官能基から水を取っては無水物を形成することもできる。官能基比率は官能基を含んでいてもよいPMMAの0〜15重量%にすることができる。
【0021】
PMMAは少なくとも一種のアクリルエラストマーを含むことができるが、アクリルエラストマーはフィルムを白化させるので、アクリルエラストマーを含むPMMAの使用は避けるのが好ましい。「耐衝撃性」PMMAとよばれるPMMAのグレートが市販されている。これは多層粒子の形をしたアクリルエラストマーを含む。すなわち、販売時にアクリルエラストマーがPMMA中に存在する(換言すれば、樹脂の製造プロセス時に導入される)が、フィルム製造時に加えることもできる。アクリルエラストマの配比率は70〜100重量部のPMMAに対して0〜30重量部である(全体で100重量部)。アクリルエラストマーとして多層粒子(コア−シェル粒子ともよばれる)を使用することもでき、これは少なくとも一種のエラストマー(または柔質)層、すなわち、ガラス遷移温度(Tg)が−5℃以下のポリマーから成る層と、25℃以上のTgを有するポリマーから成る少なくとも一種のリジッド(または硬質)な層とを有する。粒子の寸法は1マイクロメートル以下、好ましくは一般に50〜300ナノメートルである。コアシェルタイプの多層粒子の例は下記文献に記載されている:
【特許文献9】欧州特許第EP 1 061 100-A号公報
【特許文献10】米国特許公開第US 2004/0030046 A1号明細書
【特許文献11】フランス特許第FR-A-2 446 296号公報
【特許文献12】米国特許公開第US 2005/0124761 A1号明細書
【0022】
柔質エラストマーの相を少なくとも80重量%有する粒子が好ましい。アクリルエラストマーはPMMAの引張強度を改善し(衝撃改質剤)、PMMAの柔軟性を促進する役目をする。
PMMAのMVI(溶融容積指数)は2〜15cm3/10分(230℃、3.8kgの荷重下に測定)にすることができる。
【0023】
接着剤層はフィルムを基材に接着することができるもので、フィルムを基材に接着できる任意タイプの接着剤を使用することができる。接着剤層としてはウレタン(PU)、エポキシ、アクリルまたはポリエステルの熱可塑性または熱硬化性の接着剤を使用できる。PUの接着剤を使用するのが有利である。
【0024】
UV吸収剤は例えば下記文献に記載の添加剤にすることができる。
【特許文献13】米国特許第US 5 256 472号明細書
【0025】
ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンジリデンマロネートまたはキナゾリンタイプの化合物を使用するのが有利である。例としてはCiba Specialty Chemicalsから市販のTINUVIN(登録商標)213またはTINUVIN(登録商標)109があり、TINUVIN(登録商標)234を使用するのが好ましい。
【0026】
分散剤は無機充填材を分散させるのを助ける役目をするもので、ポリアルキレングリコール(すなわちアルキレンオキシド(例えばエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド)単位を含むポリマー)にするのが好ましい。好ましくはポリ(オキシエチレン)グリコール(一般にポリエチレングリコール(PEG)とよばれる)が好ましい。このポリアルキレングリコールの数平均分子量は1000〜10000 g/モルであるのが好ましい。ポリアルキレングリコールは無機充填材粒子を被覆して、粒子とPVDFとが直接接触するのを阻止する。
【0027】
PEGの例は下記文献に記載されている。
【特許文献14】米国特許第US 5 587 429号明細書
【特許文献15】米国特許第US 5 015 693号明細書
【0028】
例としては下記のものを挙げることができる:式:H(OC24nOHのポリエチレングリコール(ここで、nは70〜80の間で76に近い整数)、式:H(OC24d[OCH(CH3)CH2e(OC24fOHの製品(ここで、d、eおよびfは、d+fが100〜110で、108に近い整数、eが30〜40の間で35に近い整数)、カーボワックス(CARBOWAX、登録商標)3350(数平均分子量=約3500グラム/モル)、カーボワックス(CARBOWAX、登録商標)8000(数平均分子量=約8000グラム/モル)、Clariant社から市販のポリグリコール(POLYGLYYCOL、登録商標)8000(数平均分子量=7000〜9000グラム/モル)。
【0029】
無機充填材は金属酸化物、例えば酸化チタン(TiO2)、シリカ、石英、アルミナ、炭酸エステル、例えば炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)、モンモリロナイト(アルミノ珪酸塩)、BaSO4、ZrSiO4、Fe3O4にすることができる。
無機充填材はUV/可視領域で乳白色化剤の役目をする。充填材の保護作用はUV吸収剤の保護作用を補うものである。両者の違いは、UV吸収剤が有機分子であるのに対して、乳白色化剤としての無機充填材はより長時間保護作用を保持する(劣化がない)ことである。この見地から最も好ましいのはTiO2充填剤の添加である。
【0030】
無機充填材にはさらに他の機能もある。例えば酸化アンチモンSb2O3、Sb2O5、Al(OH)3、Mg(OH)2、フンタイト(huntite)(3MgCO3・CaCO3)、ヒドロマグネサイト(hydromagnesite)(3MgCO3・Mg(OH)2・3H2O)は難燃剤の役目もする。さらに電気伝導性の充填剤、例えばカーボンブラックまたはカーボンナノチューブでもよい。
【0031】
充填材は一般に0.05マイクロメートル〜1mmの寸法を有する。組成物AまたはC中の無機充填材の含有量は0.1〜30重量部(合計で100重量部)であるのが好ましい。この含有量は10〜25重量部、好ましくは10〜20重量部の間で変えることができる。乳白色化剤(および難燃化剤)としての効果を良くするためには無機充填材の含有量を少なくとも10重量部にするのが好ましい。充填剤を含む層の機械特性(従って、全フィルムの機械特性)を低下させないために無機充填材の含有量は25重量部を超えない、好ましくは20重量部を超えないのが好ましい。
【0032】
PVDFベースのフィルムは複数の形にすることができる。
第1の形
第1の形のPVDFベースのフィルムは、50〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜50重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とから成る(全体で100重量部)(組成物A)。接着剤層を介して基材に接着する接着フィルムは例えば接着性ポリウレタン(PU)の層にすることができる。この場合の多層構造物は下記の層構成を有する:
基材/接着剤層/組成物Aの層
最良の形態
組成物Aは50〜70重量部の少なくとも一種のPVDFと、10〜40重量部の少なくとも一種のPMMAと、10〜25重量部の少なくとも一種の無機充填材(好ましくはTiO2)から成る(全体で100重量部)。例:60重量%の可撓性PVDF+15%のTiO2+25%のPMMA(実施例1参照)。組成物AのPVDFは可撓性PVDFであるのが好ましい。
【0033】
第2の形
第2の形でのPVDFベースのフィルムは5〜40重量部の少なくとも一種のPVDFと、60〜95重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜5重量部の少なくとも一種のUV吸収剤(全体で100重量部)とから成る組成物Aの層と組成物Bの層とを有する。基材上の接着剤フィルムは組成物Bにするか、基材と組成物Bの層との間に配置された接着剤の層にする。従って、下記構成の多層構造物になる:
基材/接着剤層(任意層)/組成物Bの層/組成物Aの層
組成物BのPVDFは可撓性PVDFであるのが好ましい。組成物Bはアクリルエラストマーもコア/シェル粒子も含まないのが好ましい。
【0034】
第3の形
第3の形では、PVDFベースのフィルムは、80〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜20重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とから成る(全体で100重量部)組成物Cの層と、組成物Aの層とを有する。接着フィルムは接着剤層を介して基材に接着する。従って、以下の構成の多層構造物になる。
基材/接着剤層/組成物Aの層/組成物Cの層
最良の形態
組成物CはポリマーとしてPVDFのみを含む。組成物Aは50〜70重量部の少なくとも一種のPVDFと、10〜40重量部の少なくとも一種のPMMAと、10〜25重量部の少なくとも一種の無機充填材(好ましくはTiO2)とから成る(全体で100重量部)。例:[60%可撓性PVDF+15% TiO2+25%PMMA]/PVDFのホモポリマー(実施例3参照)。
組成物CのPVDFはPVDFのホモポリマーであるのが好ましい。組成物AのPVDFは可撓性PVDFであるのが好ましい。
【0035】
第4の形
第4の形では、PVDFベースのフィルムは組成物Cの層、組成物Aの層および組成物Bの層を有する。基材に接着する接着フィルムは組成物Bを用いるか、接着剤層を用いる。従って、以下の構成の多層構造物になる:
基材/接着剤層(任意層)/組成物Bの層/層組成物Aの層/組成物Cの層
最良の形態
組成物CはポリマーとしてPVDFのみを含む。組成物Bは5〜40重量部の少なくとも一種のPVDFと、60〜95重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜5重量部の少なくとも一種のUV吸収剤とから成る(全体で100重量部)。組成物Aは50〜70重量部の少なくとも一種のPVDFと、10〜40重量部の少なくとも一種のPMMAと、10〜25重量部の少なくとも一種の無機充填材(好ましくはTiO2)とから成る(全体で100重量部)。組成物CのPVDFはPVDFのホモポリマーであるのが好ましい。組成物Aおよび/または組成物BのPVDFは可撓性PVDFであるのが好ましい。
【0036】
第3および第4の形では組成物Aの層と対向する組成物Cの層が「最も外側」の層になる。全ての形で、組成物Aおよび/または組成物Bはアクリルエラストマーもコア/シェル粒子も含まないのが好ましい。すなわち、そうすることによってフィルムが大きな変形、例えばフィルム製造時にフィルムを基材上に配置する時(例えば、フィルムで保護された金属フォイルをプレス成形する時)にフィルムが受ける大きな変形で白化するのを防止することができる。
【0037】
従って、基材を保護するPVDFベースのフィルムは基材側から下記の順番の層を有する:組成物Bの層(任意層)、組成物Aの層、組成物Cの層(任意層)、接着剤層を介して基材に接着した接着フィルム(組成物Bの層が存在する場合には接着剤層は任意層である)。
【0038】
本発明の各形では、組成物Aの層の厚さは5〜50マイクロメートル、好ましくは5〜15マイクロメートルであるのが好ましい。組成物Bの層の厚さは5〜45マイクロメートル、好ましくは5〜15マイクロメートルであるのが好ましい。組成物Cの層の厚さは2〜30マイクロメートル、好ましくは2〜15マイクロメートルであるのが好ましい。
【0039】
PVDFベースのフィルムの製造
PVDFベースのフィルムは共押出し法で作るのが好ましいが、溶剤を用いた加工法や、被覆法を使用した他の方法を使用することもできる。PVDFベースのフィルムは共押出し−フィルムブロー成形穂法で作ることもできる。この方法は基本的に下から上へ向かって環状ダイから熱可塑性ポリマーを押し出し、それと同時に、押出物を通常ロールから成る引張り装置を用いて縦方向に延伸し、ダイ、延伸装置およびチューブ壁の間に閉じ込められた一定量の空気で膨張させる。膨張したチューブ(「バブル」ともよばれる)は一般にダイ出口で空気吹込みリングによって冷却される。バブルを平らにし、チューブの形のままにするか、スリットして2枚のフィルムにする。下記文献では半結晶流体のポリマーと熱可塑性樹脂との2枚のフィルム(すなわち互いに相溶性がないもの)を共押出しし、バブルを冷却し、平らにした後に、従来手段によって2枚の別々のフィルムに分離し、各々別々のフィルムとして回収する方法が記載されている。
【特許文献16】欧州特許第EP 0278804−A1号公報
【0040】
この特許の唯一の実施例ではバブルは60マイクロメートルのポリエチレン(PE)のフィルムと、25マイクロメートルのPVDFのフィルムとを共押出したものから成る。明細書にはPEフィルムの厚さは半結晶性ポリマーフィルムの厚さの1〜5倍でなければならないと記載されている。2枚以上のフィルムを共押出しできることも記載されているが、各フィルムの種類に関する記載はない。下記文献にも相溶性のないポリマー(好ましくはPE、耐衝撃性ポリスチレンまたは可塑化されたPVC、さらに好ましくは低密度PE)を用いてフッ素化フィルムを作る方法が記載されている。
【特許文献17】国際特許出願第WO03/039840号公報
【0041】
共押出し−ブローフィルム成形方法でPVDFベースのフィルムを作る方法は下記(a)〜(c):
(a)PVDFベースのフィルムの各層(組成物A、B、C)、
(b) 組成物Cの相または組成物Aの層に隣接したポリオレフィンの層L1
(c) (a)および(b)で押出された層の組合せに隣接し、(b)の層とは反対側にある、任意層のポリオレフィンの他の層L2
を共押出成形し、共押出物を冷却した後に、ポリオレフィン層からPVDFベースのフィルムを分離して回収する。
(b)で使用するポリオレフィン(「ライナー」ともよばれる)は(c)で使用するものと同じでも異なっていてもよい。
【0042】
フィルムの使用
以下、本発明のPVDFベースフィルムの使用法をより詳細に説明する。
光電池モジュールの保護膜としての用途
光電池モジュールの背面はPVDFベースのフィルムで保護することができる。光電池モジュールは光エネルギーを電流に転換するもので、一般に光電池モジュールは互いに電気接続手段を介して直列に接続された光起電電池群(cellules photovoltaiques)から成る。光起電電池は一般にシリコン溶融時に硼素をp-ドープし、照射表面上にリンをn-ドープした多結晶シリコンをベースにして製作されたモノラルジャンクショである。光電池は薄く積層体中に配置される。積層体はEVA(エチレン/酢酸ビニールコポリマー)から成り、光起電力電池を被覆してシリコンを酸化反応および水分から保護する。積層体は支持体となるガラス板に片側が並べられ、反対側はフィルムで保護される。従って、光電池モジュールは老化(UV、塩水、その他)、照射、水分または水蒸気から保護される。
【0043】
一般に、光電池モジュールはアカソル(AKASOL、登録商標)またはイコソーラ(ICOSOLAR、登録商標)の名称で市販の多層構造物によって保護される。この多層構造物はテドラール(TEDLAR、登録商標)(ポリ弗化ビニール、PVF)のフィルムと、PET(ポリエチレンテレフタレート)シートとを組合せたものである。本発明者は上記テドラール(TEDLAR、登録商標)のフィルムの代わりに上記で定義したPVDFベースのフィルムを有利に使用できるということを確認した。すなわち、PVDFの方がPVFよりも機械強度に優れ、融点が高い(耐熱性が高い)という利点がある。
【0044】
従って、本発明の多層構造物は上記定義の少なくとも一種のPVDFベースのフィルムに接着したPETシートを含み、以下の(1)または(2)の形をしている:
(1)PVDFベースのフィルムF1/PETシートの形、
(2)PVDFベースのフィルムF1/PETシート/PVDFベースのフィルムF2の形
【0045】
この第2の形の2つのフィルムF1およびF2は上記定義のものであり、両者は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、両者は本発明の上記4つの形の一つで独立している。これら2つのフィルムF1またはF2の各々は組成物Bの層を介して、または、一つの接着剤層を介してPETシートに接着している。
【0046】
本発明の多層構造物は下記の(1)または(2):
(1)PETまたはPENのシートに結合されたPVDFベースのフィルムF1、または、
(2)それ自体はPVDFベースのフィルムF2に接合されているPETまたはPENに結合されたPVDFベースのフィルムF1
を有し、フィルムF1および/またはF2は(PETまたはPENのシート側から順番に)以下の層:
(3)5〜40重量部の少なくとも一種のPVDFと、60〜95重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜5重量部の少なくとも一種のUV吸収剤とを含む(全体で100重量部)組成物Bの層(任意層)、
(4)50〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜50重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とを含む(全体で100重量部)組成物Aの層、
(5)80〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜20重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とを含む(全体で100重量部)組成物Cの層(任意層)
を有し、
(6)PETまたはPENのシートとフィルムF1および/またはF2との間には接着剤の層が配置され、
(7)組成物Bが存在する場合にはこの接着剤の層は無くてもよい(任意である)。
【0047】
接着剤の層は、不飽和カルボン酸または酸無水物によって官能化されたポリオレフィン、または、不飽和酸または酸無水物によって変性されていてもよいアクリル酸、アクリレートおよびアルキルアクリレートをモノマーとして含むホモポリマーまたはコポリマーは含まないのが好ましい。また、組成物Aおよび/または組成物Bもアクリルエラストマーやコア/シェル粒子を含まないのが好ましい。
【0048】
従って、多層構造物は以下の層を以下の順番で有する:
組成物C(任意層)/組成物A/組成物B(任意層)/接着剤層/PET、または、
組成物C(任意層)/組成物A/組成物B(任意層)/接着剤層/PET/接着剤層/組成物B(任意層)/組成物A/組成物C(任意層)
組成物Bの層が存在する場合には、接着剤の層は任意である。接着剤の層を使用する場合にはPUの接着剤を使用するのが好ましい。
【0049】
本発明の多層構造物は各要素(すなわちPETシート、PVDFベースのフィルム、その他)を高温度で圧縮成形して製造できる。また、ラミネーションセ技術を使用することもできる。この場合にはPVDFベースのフィルム(ロール状に巻き取ったもの)の層にPETのシートをラミネートし、必要に応じてその上に接着剤を塗布する。アカソル(AKASOL、登録商標)またはイコソーラ(ICOSOLAR、登録商標)タイプの構造を光電池モジュール上へ被覆する真空ラミネーション法の例は下記文献に記載されている。
【特許文献18】米国特許第US 5 593 532号明細書
【0050】
本発明の多層構造物はこの方法に適用できる。一般に、予め作っておいたPVDFベースのフィルムをPETシートと結合することによって本発明の多層構造物を形成する。共押出を必要とする熱可塑性タイプの接着剤よりも、液体状態で塗布する熱硬化性タイプの接着剤を使用するのが好ましい理由はこのためである。また、不飽和カルボン酸または酸無水物によって官能化されたポリオレフィンから成る接着剤の層や、モノマーとして不飽和酸または酸無水物によって変性されていてもよいアクリル酸、アクリレートおよびアルキルアクリレートを含むホモポリマーおよびコポリマーを除く理由もこのためである。
【0051】
PETの代わりにPETより高いTgを有するPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することもできる。PENは紫外線抵抗性に優れているが、PENフィルムは脆く(壊れ易く)、湿気に対するバリヤー性がない。
【0052】
[図1]および[図2]は保護された光電池モジュール2の例の概念図である。[図1]の3はPVDFベースのフィルムか、PETまたはPENのシートを1枚または2枚のPVDFベースのフィルムと組み合せた多層構造物である。
【0053】
本発明はさらに、PVDFベースのフィルムまたは多層構造物によって保護された光電池のモジュールに関するものでもある。
PVDFベースのフィルムの場合には以下の構成になる:(光電池モジュール)/接着剤の層/組成物B(任意層)/組成物A/組成物C(任意層)。層組成物Bの層が存在する場合には接着剤の層は任意である。
【0054】
多層構造物の場合には以下の構成になる:(光電池モジュール)/組成物C(任意層)/組成物A/組成物B/接着剤の層/PET、または、(光電池モジュール)/組成物C/組成物A/組成物B/接着剤の層/PET/接着剤の層/組成物B/組成物A/組成物C(任意層)。
組成物Bの層が存在する場合、接着剤の層は任意である。
【0055】
しかし、本発明は[図2]に示した光電池モジュールに限定されるものではない。光電池のモジュールの他の例は下記文献に記載されている。
【特許文献18】フランス特許第FR 2 863 775 A1号公報(特に図1を参照)、
【特許文献19】米国特許第6 369 316 B1号明細書
【特許文献20】米国特許公開第2004/0229394 A1号明細書
【特許文献21】米国特許公開第2005/0172997 A1号明細書
【特許文献22】米国特許公開第US 2005/0268961 A1号明細書
【0056】
可撓性基材の保護フィルムとしての用途
PVDFベースのフィルムは、可撓性基材、例えば織られたまたは不織布のテクニカル織物(textile technique)の保護にも用いることができる。テクニカル織物としてはPVC、ポリエステル、ポリアミド、ガラス繊維、ガラスマット、アラミドまたはケブラー、その他で作られた多層構造物を挙げることができる。PVCターポーリンは例えば可撓性のあるPVCの基材で構成できる。本発明のフィルムは例えばラミネーション法またはコーテングを使用してテクニカル織物上に積層できる。
本発明は、PVDFベースのフィルムによって保護されたテクニカル織物にも関するものである。このテクニカル織物は以下の層構成を有する:(テクニカル織物)/接着剤の層/組成物B/組成物A/組成物C(任意層)。組成物Bの層が存在する場合、接着剤の層はなくてもよい。
【0057】
金属シートの保護被覆としての用途
本発明のPVDFベースのフィルムは金属、例えば鋼、銅またはアルミニウムの基材と共ラミネートすることができる。金属シートの基材は鋼シートであるのが好ましい。鋼にはメッキをし、プライマーを塗布することもできる。鋼は鋼は電流を流されて例えばZincroxで処理するか、アクリル/ビニルプライマーB1236、エポキシプライマーB710またはポリエステルメラミンプライマーCN4118で被覆することができる。PVDFベースのフィルムは十分に可撓性であるので、鋼/フィルム組立体をその後に大きく変形、例えば鋼/フィルム組立体を深絞り加工することができる。
【0058】
[図3]はPVDFベースのフィルム(10)で保護された鋼部材10の例を示す図で、この鋼部材10はPVDFベースのフィルムを共ラミネートした金属シートを深絞りして得られる金属(例えば鋼)のコップ(godet)を表している。
従って、本発明はPVDFベースのフィルムで保護された金属基材に関するものである。この金属基材は以下の層構成を有する:(金属)/プライマー(任意層)/接着剤の層/組成物B/組成物A/組成物C(任意層)。組成物Bの層が存在する場合、接着剤の層はなくてもよい。
【実施例】
【0059】
使用した材料
PVDF-1
VDFR/HFPコポリマー(HFPは10重量%)(MVIは1.1cm3/10分(230℃/5kg)、230℃/100s-1での粘度は2500mPa.s、融点は約145℃、顆粒の形をしている)
アルツグラス(ALTUGLAS、登録商標)BS8
Altuglas International社(以前はAtoglas社)のPMMA(以前はオログラス(OROGLAS)BS 580の名称で市販)(コモノマーとしてのアクリル酸メチルを6重量%含む)(MVIは4.5cm3/10分(230℃/3.8kg)、ビーズの形をしている。このPMMAは衝撃改質剤もアクリルエラストマーも含んでいない。
PVDF-2
顆粒形のPVDFホモポリマー(MVIは1.1cm3/10分(230℃/5kg)。
PVDF-3
顆粒状のVDF/HFPコポリマー(HFPは17重量%)(MVIは10cm3/10分(230℃/5kg)、230℃/100s-1での粘度は900mPa.s)
デスモデュール(DESMODUR、登録商標)N-100
CAS番号28182-81-2の脂肪族イソシアネート(ラネックセス(Lanxess)社から市販)
フルオレッド(FLUORAD、登録商標)FC-430
3M社から市販のフッ素化界面活性剤
トーン(TONE、登録商標)201:
ユニオン・カーバイド社から市販のポリ(カプロラクトン)ジオール(分子量は約830グラム/モル)。
【0060】
実施例1(本発明の第1の形)
[60%の可撓性PDVF+15%のTiO2+25%のPMMA]共層/PU接着剤層/PET
60重量%のPVDF-1と、15重量%のTiO2 (記号R960)と、25重量%のALTUGLAS BS 580とから成る単一層のフィルム(厚さ:15マイクロメートル、幅:2000mm)をフィルム押出機を使用して245℃の温度でフィルムの形に押出した。
100重量部のTONE 201と、キシレン中に1%の0.5重量部のDBTL(ジブチルter−ジラウレート)と、60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸塩と、0.6重量部の10%FC-430(フッ素化界面活性剤)と、74重量部のDESMODUR N-100とを反応させて得たウレタン系接着剤を予め塗布したポリエステル(PET)基材を120℃のオーブン中を5分間通過させた。
この単層のフィルムを130℃でポリエステル基材上にラミネートした(従って、PET/PU接着剤/多層フィルムの構造を有する)。得られた接着強度は40N/cm以上である。95℃のオーブン中に8時間置いた後も接着力は維持され、フッ素化フィルムの所にクラックを発生させずに多層構造物は容易に曲げることができた。
【0061】
実施例2(本発明の第3の形)
[PVDFホモポリマー]層C/[60%可撓性PVDF+15%TiO2+25%PMMA]層A/接着性のPU/PET
2層フィルムは以下から成る:
(1)60重量%のPVDF-1と、15重量%のTiO2(R960)、25重量%のPMMA(ALTUGLAS(登録商標)BS 580)とを含む厚さ15マイクロメートルの層
(2)100重量%のPVDF-2から成る245℃の温度で押出し成形した幅2000mm、厚さ10マイクロメートルのフィルム。
【0062】
100重量部のTONE(登録商標)201と、キシレン中1%の0.5重量部のDBTL(ジブチルter−ジラウレート)と、60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、10%のフッ素化界面活性剤中の0.6重量部のFC-430と、74重量部のDESMODUR N−100とを反応させて得たウレタン系接着剤を塗布したポリエステル(PET)基材を120℃のオーブン中に5分間放置した。上記の2層フィルムを150℃でポリエステル基材上にラミネートした。従って、PET/PU接着剤層/PVDF−1の層/PVDF−2の層の構造が得られる。
得られた接着強度は60N/cm以上である。95℃のオーブン中に8時間置いた後にも接着力は維持された。この多層構造物はフッ素化されたフィルムの所にクラックを生じさせずに容易に曲げることができた。
【0063】
実施例3(本発明の第1の形)
[83%の可撓性PVDF+15%のSb23+2%のPEG]層A/PU接着剤/PET
83重量%のPVDF-3と、15重量%のSb23と、2重量%のClariant社のPEG(分子量=1500g/モル)とから成る単層フィルムをフィルム押出機を使用して245℃の温度で幅2000mm、厚さ15マイクロメートルで押し出した。
100重量部のTONE(登録商標)201と、キシレン中1%の0.5重量部のDBTL(ジブチルter−ジラウレート)と、60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、10%のフッ素化界面活性剤中の0.6重量部のFC-430と、74重量部のDESMODUR N−100とを反応させて得たウレタン系接着剤を塗布したポリエステル(PET)基材を120℃で5分間オーブン中に維持した。
上記単層フィルムを130℃でポリエステル基材上にラミネートした。従って、PET/PU接着剤/単層の構造が得られる。
得られた接着強度は40N/cm以上で、95℃のオーブン中に8時間放置した後も接着力を維持した。この多層構造物はフッ素化されたフィルム中にクラックを生じさせずに簡単に曲げることができた。
【0064】
実施例4(本発明第1の形)
この実施例では共押出し−ブローフィルム製造方法を使用してPVDFベースの単層フィルムを製造した。
下記:
(1)83重量%のPVDF-3と、15重量%のSb2O3と、2重量%のPEG (Clariant社製、モル分子量=1500g)とから成る厚さ15マイクロメートルの層
(2)トタルペトロケミカル(Total Petrochemicals)社から市販のポリエチレンLACQTENE 1003FE23(MFI=0.3g /10分、ISO 1133、密度=0.923、ISO 1183)から成る厚さ50マイクロメートルの層
から成る2層構造物は245℃の温度で、KIEFEL押出しブローフィルム成形機を用いて製造した。2層の間に接着力は生じない。PEの層は上記の層L1である(「ライナー」)。
100重量部のTONE(登録商標)201と、キシレン中1%の0.5重量部のDBTL(ジブチルter−ジラウレート)と、60重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、10%のフッ素化界面活性剤中の0.6重量部のFC-430と、74重量部のDESMODUR N−100とを反応させて得たウレタン系接着剤を塗布したポリエステル(PET)基材を120℃で5分間オーブン中に維持した。
上記2層フィルムを130℃でポリエステル基材上にラミネートした。PU接着剤と接触する層はPVDF-3を含む層である。ラミネーション中または後にPET/PU接着剤層/PVDF−3を含む単層フィルムの構造が得られ、この構造はPE層で保護され、このPE層は使用前に除去することができる。
PETとPVDFベースのフィルムとの間の接着強度は40N/cm以上である。95℃のオーブン中に8時間放置した後でも接着力は維持され、この多層構造物はフッ素化されたフィルムにクラックを生じさせずに簡単に曲げることができる。このフィルムは優れた耐火性も示す。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】層3によって保護された光電池モジュール2を含む組立体1を示す図。
【図2】層3によって保護された光電池モジュール2を含む組立体4を概念で記載に示した図で、光電池モジュール2は熱可塑性樹脂(例えばEVA)中に封入された光電池から成る層6と、モジュール2の前方で支持体の役目をするガラス板5とを有している。保護は2枚のPVDFベースのフィルム(7、7')の間に配置されたPETシート8を有する多層構造物3により確実になる。
【図3】PVDFベースのフィルム(11)で保護された鋼板10から成る深絞り部品9(フレアー形で概念的に示す)を表す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)PETまたはPENのシートに結合したPVDFベースのフィルムF1、または、
(2)PVDFベースのフィルムF2に結合しているPETまたはPENのシートに結合したPVDFベースのフィルムF1
を有する多層構造物であって、
フィルムF1および/またはフィルムF2は下記の層:
(3)任意層としての、5〜40重量部の少なくとも一種のPVDFと、60〜95重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜5重量部の少なくとも一種のUV吸収剤とを含む(全体で100重量部)組成物Bの層、
(4)50〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜50重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とを含む(全体で100重量部)組成物Aの層、
(5)任意層としての、80〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜20重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とを含む(全体で100重量部)組成物Cの層
を(PETまたはPENのシートからの順番で)有し、
(5)PETまたはPENのシートとフィルムF1および/またはフィルムF2との間には接着剤の層が配置され、
(6)この接着剤の層は、組成物Bの層が存在し且つ不飽和カルボン酸または無水物によって官能化されたポリオレフィンまたはモノマーとしてアクリル酸、アクリレートおよびアルキルアクリレート(不飽和酸または無水物によって編成されていてもよい)を含むホモポリマーまたはコポリマーを含まない場合には、無くてもよく、
(7)組成物Aおよび/または組成物Bはアクリルエラストマもコアシェル粒子も含まない、
ことを特徴とする多層構造物。
【請求項2】
PVDFが80〜95重量%、好ましくは87〜93重量%のVDFと、5〜20重量%、好ましくは7〜13重量%のフッ素化されたコモノマーとから成る可撓性PVDFである請求項1に記載の多層構造物物。
【請求項3】
組成物Aおよび/または組成物BのPVDFが80〜95重量%、好ましくは87〜93重量%のVDFと、5〜20重量%、好ましくは7〜13重量%のフッ素化されたコモノマーとから成る請求項1に記載の多層構造物。
【請求項4】
組成物CのPVDFがPVDFホモポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項5】
フッ素化されたコモノマーがフッ化ビニル、三フッ化エチレン(VF3)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル、例えばペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール(dioxole))およびペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)の中から選択される請求項2または3に記載の多層構造物。
【請求項6】
PMMAが0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%のC1−C8アルキルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリル酸メチルおよび/またはアクリル酸エチルを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項7】
任意層の接着剤層がウレタン、エポキシ、アクリルまたはポリエステルの接着剤である請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項8】
UV吸収剤がベンジトリアゾール、ベンゾフエノン、ベンジリデンマロネートまたはキナゾリンタイプの化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項9】
分散剤がポリエチレングリコールである請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項10】
ポリアルキレングリコールの数平均分子量が1000〜10000g/モルである請求項1〜9のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項11】
無機充填材が金属酸化物、例えば酸化チタン(TiO2)、シリカ、石英、アルミナ、カーボネート、例えば炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ドロマイト(CaCO3・MgCO3)、モンモリロナイト(アルミノ珪酸塩)、BaSO4、ZrSiO4、Fe34、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、Al(OH)3、Mg(OH)2、フンタイト(huntite、3MgCO3・CaCO3)、ヒドロマグネサイト(3MgCO3・Mg(OH)2・3H2O)であるか、電気伝導性充填材(例えばカーボンブラックまたはカーボンナノチューブ)である請求項1〜10のいずれか一項に記載の多層構造物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層多層構造物の、光電池モジュールの保護のための使用(多層構造物はPVDFベースのフィルムF1を介して光電池モジュール上に配置される)。
【請求項13】
(1)光電池モジュール、(2)テクニカル織物または(3)金属から成る基材を保護するためのPVDFベースのフィルムの使用であって、PVDFベースのフィルムが(基材側からの順番で)下記の層:
(4)5〜40重量部の少なくとも一種のPVDFと、60〜95重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜5重量部の少なくとも一種のUV吸収剤とから成る(全体で100重量部)組成物Bの層、
(5)50〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜50重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とから成る(全体で100重量部)組成物Aの層、
(6)任意層としての、80〜100重量部の少なくとも一種のPVDFと、0〜20重量部の少なくとも一種のPMMAと、0〜30重量部の少なくとも一種の無機充填材と、0〜3重量部の少なくとも一種の分散剤とから成る(全体で100重量部)組成物Cの層、
を有し、
接着剤の層は基材とPVDFベースのフィルムとの間に配置され、この接着剤の層は組成物Bの層が存在する場合には無くてもよい、
ことを特徴とする使用。
【請求項14】
組成物Aが50〜70重量部の少なくとも一種のPVDFと、10〜40重量部の少なくとも一種のPMMAと、10〜25重量部の少なくとも一種の無機充填材とから成る(全体で100重量部)請求項13に記載の使用。
【請求項15】
組成物A、BおよびCが請求項2〜11のいずれか一項で定義したものである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
テクニカル織物が編成物または不織布である請求項13〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
基材がPVC、ポリエステルまたはポリアミド、ガラス繊維、艶消しガラス、アラミドまたはケブラー繊維で作られている請求項13〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のPVDFベースのフィルムまたは請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層構造物によって表面が保護された光電池モジュール。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のPVDFベースのフィルムによって保護された請求項16または17に記載のテクニカル織物。
【請求項20】
下記(a)〜(c)の層:
(a)PVDFベースのフィルムの各層(組成物A、B、C)、
(b)組成物Aの層または組成物Cの層に隣接したポリオレフィンの層L1
(c)(a)と(b)の組合せに隣接し且つ(b)の層とは反対側に押し出される任意層としてのポリオレフィンの他の層L2
を共押出しし、共押出物を冷却した後に、ポリオレフィンの層からPVDFベースのフィルムを分離して回収することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のPVDFベースのフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−524537(P2009−524537A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551841(P2008−551841)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050693
【国際公開番号】WO2007/085769
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】