説明

フューザーコーティング組成物および製造方法

【課題】トップコートまたは剥離層を備え、低光沢印刷物を作り出すフューザー部材を製造する方法を提供する。
【解決手段】フューザー部材は基材の上に配置された弾性層を備え、フッ素含有粒子、エアロゲル粒子、ポリ(アルキレンカーボネート)の粉末コーティング組成物が、弾性層の上に堆積し、被覆層を形成する。被覆層を、約300℃〜約380℃の温度まで加熱し、剥離層を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、デジタル、多重画像型などを含む電子写真式画像形成装置で有用なフューザー部材に関する。また、本開示は、フューザー部材を製造するプロセスおよび使用するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電子写真式の画像形成装置では、複写される元々の画像または電子書類の画像は、感光部材の上に静電潜像の形態で記録され、この潜像は、次いで、一般的にトナーと呼ばれる熱可塑性樹脂粒子またはそのコンポジットを塗布することによって可視化される。可視化されたトナー画像は、固定されていない粉末形態であり、簡単に乱れたり、壊れたりしてしまうことがある。トナー画像は、通常は、切断されたシートまたは連続媒体であってもよい基板または支持部材(例えば、普通紙)の上で固定されるか、または融合される。
【0003】
光沢は、鏡面反射に関する表面の性質である。鏡面反射は、平滑で均一な表面からの反射によって生じる、境界の明瞭な光線である。光沢は、光線が表面から反射する場合に、入射光の角度が反射光の角度と等しいという反射則に従う。光沢性能は、一般的に、光沢計によって、gardner gloss unit(ggu)で測定される。
【0004】
現在、低光沢印刷物を提供することが必要であるが、低光沢印刷物を提供するフューザートップコートを製造することは困難である。トップコートまたは剥離層を備え、低光沢印刷物を作り出すフューザー部材を製造する方法を提供することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
種々の実施形態によれば、フッ素含有粒子、エアロゲル粒子、ポリ(アルキレンカーボネート)の粉末を含むコーティング組成物が提供される。
【0006】
代替的な実施形態は、フューザー部材を製造する方法を含む。この方法は、基材の上に配置された弾性層を備えるフューザー部材を得ることを含む。フッ素含有粒子、エアロゲル粒子、ポリ(アルキレンカーボネート)の粉末コーティング組成物が、弾性層の上に堆積し、被覆層を形成する。被覆層を、約300℃〜約380℃の温度まで加熱し、剥離層を作成する。
【0007】
本明細書に記載のさらなる局面は、フューザー部材である。フューザー部材は、基材と、基材の上に配置される外側層とを備え、外側層は、エアロゲル粒子とフッ素系界面活性剤とが分散したフルオロプラスチックマトリックスを含み、エアロゲル粒子は、約1重量%〜約2.5重量%含まれ、外側層の表面エネルギーは、約20mN/m未満である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、画像形成装置の概略図である。
【図2】図2は、フューザー部材の一実施形態の概略図である。
【図3A】図3Aは、エアロゲル粒子およびPFA粒子の粉末コーティングの光学顕微鏡画像を示す。
【図3B】図3Bは、エアロゲル粒子、PFA粒子、ポリプロピレンカーボネート、界面活性剤GF 400の粉末コーティングの光学顕微鏡画像を示す。
【図4A】図4Aは、2.5重量%のエアロゲル粒子、PFA粒子、ポリプロピレンカーボネートの粉末コーティングのSEM画像を示す。
【図4B】図4Bは、2.5重量%のエアロゲル粒子、PFA粒子、ポリプロピレンカーボネートの粉末コーティングのSEM画像を示す。
【図5A】図5Aは、2.5重量%のエアロゲル粒子、PFA粒子、ポリプロピレンカーボネートの粉末コーティングおよび融合したトップコートのSEM画像を示す。
【図5B】図5Bは、2.5重量%のエアロゲル粒子、PFA粒子、ポリプロピレンカーボネートの粉末コーティングのSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、典型的な静電複写装置において、複写される元の光像は、感光部材の上に静電潜像の形態で記録され、この潜像は、次いで、一般的にトナーと呼ばれる電気的性質を帯びた熱可塑性樹脂粒子を塗布することによって可視化される。特定的には、光受容体10は、電源11から電圧が供給される充電器12を用い、表面が帯電する。次いで、光受容体10は、光学系または画像入力装置13(例えば、レーザーおよび発光ダイオード)からの光に画像の形に露光され、表面に静電潜像が作られる。一般的に、静電潜像は、現像ステーション14からの現像混合物と接触することによって現像される。現像は、磁気ブラシ、パウダークラウド、または他の既知の現像プロセスを用いることによって行われてもよい。乾燥現像混合物は、通常は、トナー粒子が摩擦電気によって接着したキャリア顆粒を含む。トナー粒子は、キャリア顆粒から潜像に引き寄せられ、表面にトナー粉末画像を形成する。または、液体現像材料が用いられてもよく、この液体現像材料は、トナー粒子が分散した液体キャリアを含む。液体現像材料が移動して静電潜像と接触し、トナー粒子は、画像の形状になるように堆積する。
【0010】
光伝導性表面にトナー粒子が画像の形状になるように堆積した後、トナー粒子は、転写手段15によってコピー紙16に転写され、転写は、加圧転写であってもよく、静電転写であってもよい。または、現像された画像を中間転写体またはバイアス転写体に転写し、次いで、コピー紙に転写してもよい。コピー基板の例としては、紙、透明材料(例えば、ポリエステル、ポリカーボネートなど)、布、木材、または最終画像が表面に乗るであろう任意の他の望ましい材料が挙げられる。
【0011】
現像された画像の転写が終了した後、コピー紙16は、融合ステーション19(図1ではフューザーロール20および加圧ロール21として示されている(しかし、加圧ロールと接触したフューザーベルト、加圧ベルトと接触したフューザーロールなどのような任意の他の融合要素が、本装置とともに使用するのに適している))に進み、現像された画像は、コピー紙16を融合ロールと加熱ロールの間を通過させることによってコピー紙16に融合され、それによって、永久的な画像が作られる。または、転写および融合は、転写固定装置によって行われてもよい。
【0012】
光受容体10は、転写の後に、クリーニングステーション17に進み、このクリーニングステーション17で、光受容体10に残った任意のトナーが、ブレード(図1に示されるもの)、ブラシ、または他のクリーニング装置を用いることによって、クリーニングされる。
【0013】
図2は、フューザー部材の一実施形態の拡大概略図であり、種々の可能な層を示している。フューザー部材は、ローラーであってもベルトであってもよい。図2に示されるように、基板25は、表面に弾性層または中間層22を有している。中間層22の表面には、剥離層24または表面層がある。
【0014】
(基板)
適切な基板25の材料の例としては、ローラー形状の場合、アルミニウム、ステンレス鋼、鋼、ニッケルなどのような金属が挙げられる。ベルト形状を有する実施形態では、基板材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドのようなポリマーを挙げることができる。
【0015】
(弾性層または中間層)
中間層22(緩衝層または中間層とも呼ばれる)として用いられる材料の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製);106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製);JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン);フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Coatings(リッチモンド、バージニア)から入手可能));液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAlのような無機粒子と混合してもよい。
【0016】
また、中間層22として使用するのに適した材料の他の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー;(2)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー;(3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーといった種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、種々の名称、例えば、VITON A(登録商標)、VITON B(登録商標)、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON GH(登録商標)、VITON GF(登録商標)、VITON ETP(登録商標)で商業的に知られている。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)、TNS(登録商標)、T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Solvay Solexisから入手可能)が挙げられる。
【0017】
3種類の既知のフルオロエラストマーの例は、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー類、例えば、VITON A(登録商標)として商業的に知られているもの;(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー類;(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー類である。
【0018】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0019】
中間層22の厚みは、約30μm〜約10mm、または約100μm〜約800μm、または約150μm〜約500μmである。
【0020】
(剥離層)
剥離層24の例示的な実施形態を以下にさらに詳細に記載する。油を用いない融合の場合、剥離層は、フルオロプラスチックポリマーを含む。フルオロプラスチックポリマーは、融点が約300℃〜約380℃、または約330℃〜約370℃、または約340℃〜約360℃である。フルオロプラスチックポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマー;テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー;テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
フューザー部材の場合、外側表面層または剥離層24の厚みは、約5μm〜約250μm、または約20μm〜約80μm、または約30μm〜約60μmであってもよい。剥離層24または表面層は、電気表面抵抗率が、約10〜約10Ω/sq、または約5×10〜約1.5×10Ω/sq、または約8×10〜約1.5×10Ω/sqである。
【0022】
(接着層)
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層(プライマー層とも呼ばれる)が、剥離層24、機能性中間層22、基板25の間に配置されていてもよい。適切な接着剤の例としては、アミノシランのようなシラン類(例えば、Dow Corning製のHV Primer 10)、チタネート、ジルコネート、アルミネートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、接着剤は、約0.001%溶液〜約10%溶液の形態で基板にのせられてもよい。接着層は、約0.1μm〜約10μm、または約1μm〜約6μmの厚みで基板または外側層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0023】
良好な剥離性のために、油を用いない融合のトップコート材料としてフッ素含有粒子が用いられてきた。フッ素含有ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマー;テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンのターポリマー;テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。PFAおよびPTFEは、融合用途で最も代表的なフルオロプラスチックであり、化学的に安定であり、かつ熱に安定であり、表面エネルギーが低い。しかし、これらの材料は、高度に結晶性でもあり、したがって、処理するのが難しい。高温での焼結(>300℃)は、これらの材料から連続膜を製造する唯一の方法である。
【0024】
低光沢印刷物は、油を用いない融合システム(すなわち、DC700)において、つや消しフューザーロールによって製造することができることが示されている。つや消しフューザーロールは、疎水性シリカエアロゲル(VM2270エアロゲル粉末、Dow Corning)で満たされたフルオロプラスチックから作られるトップコートを備えている。フューザーロールの光沢は、エアロゲルの保持量が増えるにつれて低下する。印刷物の光沢は、ロールの光沢と良好な相間関係にある。低光沢トップコートは、エアロゲル/PFAのイソプロピルアルコール(IPA)分散物をスプレーコーティングした後、高温で硬化させることによって調製された。しかし、スプレーコーティングの製造信頼性には、疑問が残る。
【0025】
確実に均一な層を製造するための粉末コーティングでは、コーティングは均質でなければならない。エアロゲルおよびPFA粒子は、Henschelブレンダーを用いて均質にブレンドすることができるが、このブレンドの均質性を、粉末コーティングプロセスの間維持することはできない。その結果、エアロゲル粒子は、ブレンドしたエアロゲル/PFA混合物を用いて粉末コーティングしたエアロゲル/PFAトップコート中には存在しない。エアロゲルとPFAとの相互作用が不足することによって、粉末コーティングプロセス中にこれらが分離してしまうという理論がたつ。それに加え、エアロゲル/PFAトップコートは、多くの空隙を含んでおり、これはおそらく、エアロゲルとPFAとの間の濡れ性が悪いことによるものであろう。したがって、粉末コーティングプロセス中、上の2種類の粒子の均質性を維持することを目的として、エアロゲルをPFA粒子に接続する方法を開発することが重要である。
【0026】
本明細書には、粉末コーティング技術を用い、エアロゲル/フッ素含有ポリマーフューザートップコートのための製作方法、組成物およびシステムが開示されている。この粉末組成物は、フッ素含有粒子と、エアロゲル粒子と、界面活性剤または湿潤剤とを含む。それに加え、エアロゲル粒子をフッ素含有粒子と結合させるためにバインダーを使用する。具体的には、バインダーは、一時的なバインダーであり、フッ素含有粒子が溶融して連続膜を生成する前に分解し、したがって、一時的なバインダーは、最終的なトップコートの性能に影響を及ぼさない。エアロゲルの保持量は、フッ素含有粒子の合計重量を基準として、約0.1重量%〜約5.0重量%、または約0.5重量%〜約4.0重量%、または約1.0重量%〜約3.0重量%である。
【0027】
本発明で使用される一時的なバインダーは、ポリ(アルキレンカーボネート)(PAC)であり、本質的に、250℃で分解する。本発明で使用される適切なポリ(アルキレンカーボネート)としては、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
エアロゲルとフルオロプラスチック粒子との間の濡れ性を向上させるために、フッ素系界面活性剤GF300または400(東亞合成株式会社から市販)を湿潤剤として加える。GF−300およびGF−400は、フッ素化グラフトコポリマーと呼ばれるメタクリレート系フルオロ界面活性剤である。他のフッ素系界面活性剤としては、東亞合成化学製のGF−150;日油株式会社製のMODIPER F−600;AGC旭硝子製のSURFLON S−381およびS−382;3M製のFC−430、FC−4430、FC−4432およびFC−129が挙げられる。粉末中の湿潤剤の量は、フッ素含有粒子の合計重量を基準として、約0.1重量%〜約5重量%、または約0.5重量%〜約3.0重量%、または約1.0重量%〜約2.0重量%である。
【0029】
乾燥エアロゲル/フッ素含有粒子コンポジット粉末は、エアロゲルおよびフッ素含有粒子と、溶媒(例えば、GF400およびポリ(アルキレンカーボネート)を含むメチルエチルケトン(MEK)溶液)とを混合した後、エバポレーションによって溶媒を除去し、減圧下で乾燥させることによって得られる。他の適切な溶媒としては、アセトン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、酢酸エチル、メトキシメチルエーテル、酢酸ブチル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合物が挙げられる。このように調製した粉末を用い、粉末コーティングされたエアロゲル/フッ素含有ポリマートップコートは、均一な凹凸のついた表面を有する。DC700でロールによる融合を試験すると、コントロールよりも光沢が小さい均一な印刷光沢を生じる。
【0030】
一般的に、フッ素系界面活性剤は、粉末コーティング組成物の重量を基準として約0.01〜約3.0重量%の量で存在する。他の実施形態では、界面活性剤は、約0.08〜約1.0重量%の量で存在する。具体的な実施形態では、界面活性剤は、約0.1〜約0.3重量%の量で存在する。乾燥エアロゲル/フッ素含有粉末は、溶媒中、エアロゲルおよびフッ素含有粒子と、ポリ(アルキレンカーボネート)(PAC)およびGF400と混合した後、エバポレーションによって溶媒を除去し、減圧下で乾燥させることによって得られた。最適な結合効果を得るために、バインダー含有量を制御することによって配合を最適化した。粉末コーティングされたエアロゲル/フッ素含有ポリマートップコートを300℃より高い温度まで加熱し、フッ素含有粒子を溶融させ、連続膜を作成した。一時的なバインダーは、フッ素含有ポリマーが溶融する前に完全に分解し、フッ素含有層から除去されるので、トップコートは、フッ素含有ポリマーのあらゆる特性(すなわち、良好な剥離特性および堅牢性)を維持している。印刷光沢は、シリカエアロゲル粒子の保持量を制御することによって調節することができる。
【0031】
本明細書に記載の実施形態の利点としては、限定されないが、フッ素含有粒子とエアロゲル粒子が互いに接続しているため、粉末コーティングプロセス中、ずっとエアロゲルとフッ素含有粒子が均質に混ざり合っていることである。一時的なバインダーは、フッ素含有ポリマーの融点よりも低い温度で完全に分解するため、バインダーは、最終的なコンポジットコーティングの性能になんら影響を及ぼさない。エアロゲルとフッ素含有ポリマーの間の濡れ性を向上させるために加えられた湿潤剤によって、コーティングの品質が向上する。
【0032】
ポリ(アルキレンカーボネート)は、約250℃で水とCOに分解する。トップコート粉末コーティング中のポリ(アルキレンカーボネート)の量は、約1重量%〜約30重量%、または約2重量%〜約15重量%、または約3重量%〜約10重量%である。
【0033】
エアロゲル/フッ素含有ポリマートップコートは、シリコーンで成型したロールをコーティング組成物でコーティングして被覆層を作成した後、ポリ(アルキレンカーボネート)が分解する温度で加熱し、次いで、フルオロポリマーの融点よりも高い温度で加熱して被覆層を作成することによって製作される。フッ素含有ポリマーは、融点が約320℃〜約380℃、または約330℃〜約370℃、または約340℃〜約360℃である。
【0034】
フルオロプラスチックの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えば、DuPontによってTeflonの商品名で販売される)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA、例えば、DuPontによってTeflonの商品名で販売される)、フッ素化エチレン−プロピレン(FEP、例えば、DuPontによってTeflonの商品名で販売される)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE、例えば、DuPontによって登録商標Tefzelで販売されるか、または、旭硝子によって登録商標Fluonで販売される)、ポリフッ化ビニル(PVF、例えば、DuPontによって登録商標Tedlarで販売される)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE、例えば、Solvay Solexisによって登録商標Halarで販売される)、または、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、例えば、Arkemaによって登録商標Kynarで販売される)が挙げられる。
【0035】
エアロゲル/フッ素含有ポリマーコンポジットコーティングは、表面エネルギーを非常に低くすることが可能な超疎水性表面を作り出す。エアロゲルをフッ素含有コーティングに加えると、弾性率が上がり、表面エネルギーを増加させることなく、材料の特性を変える機会を得ることができる(例えば、カーボンブラックまたは他の硬質フィラー粒子を加える場合など)。最終的なコーティングの表面エネルギーは、約10mN/m〜約25mN/m、または約12mN/m〜約20mN/m、または約15mN/m〜約18mN/mである。
【0036】
エアロゲルは、一般的な用語で、細孔液を除去し、この細孔液を空気と交換することによって固相になるように乾燥したゲルとして記述してもよい。本明細書で使用する場合、「エアロゲル」は、一般的に非常に密度が低いセラミック固体であり、典型的には、ゲルから作られる材料を指す。したがって、用語「エアロゲル」は、乾燥中にゲルがほとんど縮まず、空隙率および関連する特徴が保存されるように乾燥したゲルを示すために用いられる。対照的に、「ヒドロゲル」は、細孔液が水系液である濡れたゲルを記述するために用いられる。用語「細孔液」は、孔要素を作成している間、孔構造の中に含まれる液を記述する。例えば、超臨界乾燥によって乾燥させると、かなりの量の空気を含むエアロゲル粒子が作られ、低密度の固体と、高い表面積を生じる。したがって、種々の実施形態では、エアロゲルは、質量密度が低く、比表面積が大きく、空隙率が非常に大きいことを特徴とする低密度マイクロセル材料である。特に、エアロゾルは、多数の小さな相互に接続した孔を備える固有の構造を特徴とする。溶媒を除去した後、この重合した材料を不活性雰囲気下で熱分解し、エアロゲルを作成する。
【0037】
任意の適切なエアロゲル成分を使用してもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル成分は、例えば、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されてもよい。特定の実施形態では、セラミックエアロゲルを適切に用いることができる。これらのエアロゲルは、典型的には、シリカから構成されるが、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア)または炭素から構成されてもよく、場合により、金属のような他の元素でドープされていてもよい。ある実施形態では、エアロゲル成分は、ポリマーエアロゲル、コロイド状エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されるエアロゲルを含んでいてもよい。
【0038】
エアロゲル成分は、最初に望ましい大きさの粒子として作られてもよく、または大きな粒子を作成し、次いで、望ましい粒径になるまで粒径を小さくしてもよい。例えば、作成されたエアロゲル材料を粉砕してもよく、または、ナノサイズからミクロンサイズのエアロゲル粒子として直接作成してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態のエアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.9%であってもよく、この場合、エアロゲルは、99.9%の空間を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.0%、または50%〜約98%である。いくつかの実施形態では、エアロゲル成分の孔は、直径が約2nm〜約500nm、または約10nm〜約400nm、または約20nm〜約100nmであってもよい。特定の実施形態では、エアロゲル成分は、直径が100nm未満、さらには約20nm未満でさえある孔が50%より多い空隙率を有していてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル成分は、球状、またはほぼ球状、円柱形、棒状、ビーズ状、立方体、平板状などの形状の粒子の形態であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、エアロゲル成分は、エアロゲル粒子またはエアロゲル粉末を含み、平均体積径が約1μm〜約100μm、または約3μm〜約50μm、または約5μm〜20μmである。エアロゲル成分は、十分に分散した単一粒子として、または、2個以上の粒子または粒子群がポリマー材料内で凝集物としてあらわれるエアロゲル粒子を含んでいてもよい。
【0041】
エアロゲル成分を特徴づける相互に接続した孔の連続したモノリス構造によっても高い表面積が導かれ、エアロゲルを製造するのに使用される材料によっては、導電性が、熱的および電気的に非常に導電性のものから、熱的および電気的に非常に絶縁性のものまで多岐にわたっていてもよい。さらに、エアロゲル成分は、いくつかの実施形態で、表面積が約400m/g〜約1200m/g、例えば、約500m/g〜約1200m/g、または約700m/g〜約900m/gであってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル成分は、電気抵抗率が、約1.0×10−4Ω−cmより大きくてもよく、例えば、約0.01Ω−cm〜約1.0×1016Ω−cm、約1Ω−cm〜約1.0×10Ω−cm、または約50Ω−cm〜約750,000Ω−cmであってもよい。種々の実施形態で使用される異なる種類のエアロゲルは、電気抵抗率が、導電性(約0.01Ω−cm〜約1.00Ω−cm)から絶縁性(約1016Ω−cmより大きい)までであってもよい。他の方法では得ることが困難な物理特性、機械特性、電気特性の組み合わせを得るために、いくつかの実施形態の導電性エアロゲル(例えば、炭素エアロゲル)を他の導電性フィラーと合わせてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態で適切に使用可能なエアロゲルを、主に、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲルの3つのカテゴリーに分けてもよい。いくつかの実施形態では、フューザー部材層は、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択される1種類以上のエアロゲルを含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態は、同じ型の複数のエアロゲルを含んでいてもよく(例えば、2種類以上の無機エアロゲルの組み合わせ、2種類以上の有機エアロゲルの組み合わせ、または2種類以上の炭素エアロゲルの組み合わせ)、または、異なる型の複数のエアロゲルを含んでいてもよい(例えば、1種類以上の無機エアロゲル、1種類以上の有機エアロゲル、および/または1種類以上の炭素エアロゲル)。例えば、化学修飾した疎水性シリカエアロゲルを、高伝導性炭素エアロゲルと合わせ、コンポジットの疎水性と電気特性を同時に変え、それぞれの性質について望ましい目標値を得てもよい。
【0043】
無機エアロゲル(例えば、シリカエアロゲル)は、一般的に、金属酸化物のゾル−ゲル重縮合によって作られ、高度に架橋した透明ヒドロゲルを生成する。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、無機エアロゲルを作成する。
【0044】
有機エアロゲルは、一般的に、レゾルシノールおよびホルムアルデヒドのゾル−ゲル重縮合によって作られる。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、有機エアロゲルを作成する。
【0045】
炭素エアロゲルは、一般的に、不活性雰囲気中、有機エアロゲルを熱分解することによって作られる。炭素エアロゲルは、三次元網目構造に整列した、共有結合したナノメートルサイズの粒子から構成される。炭素エアロゲルは、表面積の大きな炭素粉末とは異なり、酸素を含まない表面を有し、これを化学修飾し、ポリマーマトリックスとの適合性を高めることができる。それに加え、炭素エアロゲルは、一般的に導電性であり、電気抵抗率は約0.005Ω−cm〜約1.00Ω−cmである。特定の実施形態では、コンポジットは、1種類以上の炭素エアロゲルおよび/または1種類以上の炭素エアロゲルと1種類以上の無機エアロゲルおよび/または有機エアロゲルのブレンドを含んでいてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態に含まれてもよい炭素エアロゲルは、ポリマーおよびコロイド状という2種類の形状を示し、これらははっきりと異なる特徴をもつ。炭素エアロゲルの形状の種類は、エアロゲル調製の詳細によって変わるが、両方とも、分子クラスターの動的な凝集によって生じる。つまり、粒径が20Å(オングストローム)未満であってもよい炭素エアロゲルの一次粒子であるナノ孔と、絡み合ったナノ結晶黒鉛リボンで構成され、二次粒子を形成するクラスター、約20Å〜約500Åであってもよいメソ孔。これらのメソ孔は、鎖を形成し、多孔性炭素エアロゲルマトリックスを作成することができる。炭素エアロゲルマトリックスを、いくつかの実施形態では、例えば、適切な溶融ブレンドまたは溶媒混合技術によってポリマーマトリックスに分散させてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、炭素エアロゲルを金属と合わせるか、または金属でコーティングするか、または金属をドープし、導電性、磁化率および/または分散性を高めてもよい。金属をドープした炭素エアロゲルを、いくつかの実施形態では、単独で使用してもよく、または他の炭素エアロゲルおよび/または無機エアロゲルまたは有機エアロゲルとのブレンドで使用してもよい。任意の適切な金属、または金属混合物、金属酸化物およびアロイが、金属をドープした炭素エアロゲルを使用する実施形態で導入されてもよい。特定の実施形態では、また、具体的な実施形態では、炭素エアロゲルに、(元素の周期表によって定義されている)遷移金属およびアルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、カドミウム、インジウム、スズ、水銀、タリウムおよび鉛から選択される1種類以上の金属をドープしてもよい。特定の実施形態では、炭素エアロゲルに、銅、ニッケル、スズ、鉛、銀、金、亜鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、アルミニウム、白金、パラジウム、および/またはルテニウムをドープする。例えば、いくつかの実施形態では、銅をドープした炭素エアロゲル、ルテニウムをドープした炭素エアロゲルおよびこれらの混合物が、コンポジットに含まれていてもよい。
【0048】
例えば、すでに述べたように、エアロゲル成分がナノメートルスケールの粒子を含む実施形態では、これらの粒子またはその一部が、ポリマーの分子格子構造の分子間および分子内の空間を占めていてもよく、それにより、水分子がこれらの分子スケールの空間に入り込むのを防ぐことができる。このような抑制によって、全体的なコンポジットの親水性が下がる場合がある。それに加え、多くのエアロゲルは、疎水性である。疎水性エアロゲル成分を組み込むと、いくつかの実施形態のコンポジットの親水性を下げる場合もある。親水性が低下したコンポジット、およびこのようなコンポジットから作られた任意の成分は、特に、低湿度および高湿度を繰り返す条件で環境安定性が優れている。
【0049】
エアロゲル粒子は、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、アミノシランおよびメタクリルシランの群から選択される表面官能基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、表面処理材料は、改質された表面相互作用を生じるような、エアロゲルに反応性の官能基を含む。また、表面処理によって、組成物表面に対し、非粘着性の相互作用が可能になる。
【0050】
それに加え、多孔性エアロゲル粒子は、フッ素含有ポリマーと相互に入り込んでいてもよく、または絡み合っていてもよく、それによって、ポリマー格子を強化してもよい。エアロゲル粒子がポリマー格子に相互に入り込んでいるか、または散在している実施形態の全体的なコンポジットの機械特性は、高まり、安定化される場合がある。
【0051】
例えば、一実施形態では、エアロゲル成分は、平均粒径が5〜15ミクロンであり、空隙率が90%以上であり、バルク密度が40〜100kg/mであり、表面積が600〜800m/gであるシリカシリケートであってもよい。もちろん、所望な場合、これらの範囲からはずれた1つ以上の特性を有する材料を利用してもよい。
【0052】
エアロゲル成分の特性に依存して、エアロゲル成分をそのまま使用してもよく、または、化学修飾してもよい。例えば、エアロゲル表面の化学を種々の用途のために改質してもよく、例えば、エアロゲル表面を、エアロゲルの分子構造の上または内部に、親水性または疎水性の特性をもつように化学置換することによって改質してもよい。例えば、エアロゲル成分の疎水性を高めるような化学修飾が望ましい場合がある。このような化学処理が望ましい場合、当該技術分野でよく知られている任意の従来からある化学処理を使用することができる。例えば、エアロゲル粉末のこのような化学処理は、表面のヒドロキシル基を有機基または部分的にフッ素化した有機基などと置き換えることを含んでいてもよい。
【0053】
一般的に、多様なエアロゲル成分が当該技術分野で知られており、種々の用途に応用されてきた。例えば、粉砕した疎水性エアロゲル粒子を含め、多くのエアロゲル成分が、毛髪、スキンケア、制汗剤組成物のような配合物の低コスト添加剤として使用されてきた。ある具体的で非限定的な例は、すでに化学処理された粒径が約5〜15ミクロンの市販されているDow Corning VM−2270エアロゲル微粒子の粉末である。
【0054】
任意の適切な量のエアロゲルを粉末コーティングに組み込み、望ましい結果を得てもよい。例えば、コーティング層は、表面コーティングの合計重量の約0.1重量%〜約25重量%のエアロゲル、または約0.5重量%〜約15重量%のエアロゲル、または約1重量%〜約10重量%のエアロゲルから作られてもよい。エアロゲル粒子の粒径は、約1μm〜約100μm、または約3μm〜約50μm、または約5μm〜約20μmである。
【0055】
表面コーティングは、表面自由エネルギーが、コンポジットに使用されるフッ素含有ポリマーベース層の表面エネルギーよりも低い。このことは、フッ素含有ポリマーに依存する。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子が分散したフッ素含有ポリマーは、表面エネルギーが20mN/m未満の表面層を作り出す。いくつかの実施形態では、表面自由エネルギーは、超疎水性表面では10mN/mより小さく、または、10mN/m〜2mN/m、または10mN/m〜5mN/m、または10mN/m〜7mN/mである。
【0056】
ポリ(アルキレンカーボネート)犠牲材料は、Empower Materialsなどから市販されている。ポリ(アルキレンカーボネート)は、分子量が10,000〜800,000、または50,000〜600、000、または100,000〜500,000である。この分子量は、重量平均分子量(Mw)である。ポリ(アルキレンカーボネート)は、二酸化炭素から誘導され、COと1種類以上のエポキシドとの共重合によって作られるコポリマーであり、約200℃〜約340℃、または約210℃〜約330℃、または約220℃〜約300℃で分解する。分解が均一であり、制御されるので、最終的なコーティングの割れおよび欠陥の可能性は減る。
【0057】
添加剤およびさらなるフィラーが、フューザー部材の上述の粉末コーティング組成物または他の記載されている層に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)をコーティング組成物に使用してもよく、その後に作成される剥離層に使用してもよい。本明細書で使用される導電性フィラーとしては、カーボンブラック(例えば、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなど;カーボンナノチューブ、金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンをドープした酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムをドープした三酸化スズなど、およびこれらの混合物が挙げられる。特定のポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、有機スルホン酸の塩、アンモニウム塩またはホスホニウム塩、またはこれらの混合物をフィラーとして使用してもよい。種々の実施形態では、開示されているコンポジット材料を作成するために、当業者が知っている他の添加剤も含まれていてもよい。フィラーは、コーティング組成物の約0.1重量%〜約50重量%、または約0.5重量%〜約30重量%、約1重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0058】
粉末組成物を、任意の適切な既知の様式で、基材に静電的にスプレーコーティングするか、静電流動床によってコーティングするか、静電磁気ブラシによってコーティングするか、または流動床によってコーティングする。
【0059】
コーティングした後、組成物を、第1の温度まで、ポリ(アルキレンカーボネート)が分解して被覆層を生成するのに十分な時間加熱する。加熱工程は、約300℃〜約380℃、または約320℃〜約370℃、または約330℃〜約360℃で約15分〜約60分、または約20分〜約50分、または約25分〜約45分行われる。ポリ(アルキレンカーボネート)が分解し、フッ素含有物が溶融し、連続層を生成する。ポリ(アルキレンカーボネート)の量は、組成物の合計固形分を基準として約1重量%〜約30重量%、または約2重量%〜約15重量%、または約3重量%〜約10重量%である。
【実施例】
【0060】
1%のシリカエアロゲルを含むエアロゲル/PFA粉末組成物(I)の調製
0.2gのポリ(プロピレンカーボネート)(QPAC(登録商標)40、Empower)、0.02gのGF400、100gのMEKを含むメチルエチルケトン(MEK)溶液中、エアロゲル粒子(5g)の分散物を、磁気スターラーで撹拌しつつ、500gのPFA粉末に滴下した。30分以内で加え終わった。この混合物を60分間連続して撹拌した。得られた粉末を44℃で48時間乾燥させた。この乾燥粉末を粉末コーティングに使用した。
【0061】
2.5%のシリカエアロゲルを含むエアロゲル/PFA粉末組成物(II)の調製
1%のエアロゲル/PFA粉末の場合と同じ手順で、乾燥粉末を調製した。エアロゲル、GF400、MEK、PFAの量は、それぞれ、12.5g、0.1g、200g、500gであった。
【0062】
個々のエアロゲル粒子は、粉末混合物の光学顕微鏡画像において、バインダーであるポリプロピルカーボネート(PPC)にゆるく分散していた(図3A)。PPCを用いると、エアロゲル粒子は、PPCバインダーによってPFA粒子にほぼ完全に結合する(図3B)。したがって、PPCおよびGF400を混合物に添加すると、十分に全体的に混合した状態を維持する粉末コーティングが得られる。
【0063】
図4Aおよび4Bにおいて、この粉末混合物は、粗い表面を有し、顆粒状のエアロゲル粒子が、PPCによって、球状で滑らかなPFA粒子と結合していることを示している。図4Bは、倍率が大きく、エアロゲルとPFA粒子とが結合していることを示している。スプレーコーティング操作の間、エアロゲル粒子は沈降せず、均質なコーティングを製造することができる。
【0064】
厚みが約3μm〜5μmのプライマーまたは接着層(DuPont PL−990CL)を、シリコーンコーティングを有するフューザーロールに湿式噴霧することによって、フューザーロールを製造した。図4Aおよび4Bに示される粉末コーティングの静電粉末コーティング層をプライマー層に適用し、エアロゲル/PFAを粉末コーティングしたトップコートを作成した。トップコートの層の厚みは、約25μm〜約35μmであった。次いで、対流式乾燥器中、このフューザーロールを室温から約330℃の硬化温度まで速やかに(約10〜約15分間)加熱し、約20分間安定に維持して連続膜を作成した。次いで、乾燥器を開け、フューザーロールを約235℃まで(約5分間で)冷却した後、フューザーロールを室温環境に置いた。
【0065】
硬化した2.5% エアロゲル/PFAトップコートは、空隙が存在せず、連続したPFAマトリックスの上にエアロゲル粒子が均一に分布していることを示す(図5A)。また、エアロゲル粒子は、PFAマトリックスと良好な濡れ性およびレベリング性を示す(図5B)。
【0066】
上の実施例で記載した1重量%および2.5重量%のエアロゲル粒子を含むPFA粉末混合物から作られたフューザーロールから得られた、非コート紙(Color Xpressions Select 90gsm)およびコート紙(Digital Color Elite 120gsm)の印刷光沢は、コントロールであるPFAフューザーDC700よりも低い。光沢レベルは、エアロゲル粒子の保持量を調節することによって制御することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有粒子、エアロゲル粒子およびポリ(アルキレンカーボネート)の粉末を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記ポリ(アルキレンカーボネート)が、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(ブチレンカーボネート)およびポリ(シクロヘキセンカーボネート)からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記ポリ(アルキレンカーボネート)は、分子量(Mw)が約10,000〜約800,000である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記ポリ(アルキレンカーボネート)の量が、前記粉末の合計固形分の約1重量%〜約30重量%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記コーティング組成物が、さらに、メタクリレート系フルオロ界面活性剤を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
フューザー部材を製造する方法であって、
基材の上に配置された弾性層を備えるフューザー部材を得ることと、
フッ素含有粒子、エアロゲル粒子およびポリ(アルキレンカーボネート)の組成物を含む粉末を前記弾性層にスプレーコーティングして被覆層を作成することと、
前記被覆層を、約300℃〜約380℃の温度まで加熱し、このときにポリ(アルキレンカーボネート)が分解し、剥離層が生成することとを含む、方法。
【請求項7】
前記ポリ(アルキレンカーボネート)が、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)またはこれらの混合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記剥離層は、厚みが約5ミクロン〜約250ミクロンである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記弾性層が、シリコーンゴム、高温加硫シリコーンゴム、低温加硫シリコーンゴム、液体シリコーンゴムおよびシロキサンからなる群から選択される材料を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記エアロゲル粒子が、シリカ、炭素、アルミナ、チタニアおよびジルコニアからなる群から選択される材料を含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2013−97382(P2013−97382A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234151(P2012−234151)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】