説明

フライ菓子の製造方法

【課題】従来品より軽い食感を有するフライ菓子が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】先ず、煎餅状物1の表面に、粘度が水の粘度の1.1倍以上15倍以下であるバッター2を塗布してバッター層21を形成する。次に、煎餅状物1の表面に、バッター層21を介して、10メッシュ以上40メッシュ以下であるパン粉4を付着する。次に、この状態の煎餅状物1を油6で揚げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フライ菓子(パン粉が付いたフライ食品を模した外観と食感を有するスナック菓子)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フライ菓子の従来例としては、下記の特許文献1に記載されたものが挙げられる。この文献には、澱粉を主原料とする生地(ドウ)を圧縮焼成することで煎餅状物(せんべい状生地)を得、その表面に、バッター(粘性物)を塗布した後、粉状または粒状の外皮物を付着し、油で揚げることによりフライ菓子を得ることが記載されている。
さらに、このようにして得られたフライ菓子は、煎餅状物(せんべい状生地)の表面が密なため、フライ工程で油が浸透しにくい(油のしみ込みが多くなり過ぎない)ことと、煎餅状物(せんべい状生地)の水分含有率が極めて少ないため、フライ工程で水と置換される油の量が少ないことから、せんべいのサクサク感とフライの香ばしさをミックスした味が楽しめるものとなると記載されている。
【0003】
なお、この文献には、バッターの粘度や外皮物の粒度に関する具体的な記載はなく、バッターの粘度に関して、単に、バッターミックス粉(小麦粉、澱粉、全卵粉、卵白粉、調味料等を配合したもの):水=1:2〜4の比が適当であると記載されているだけである。外皮物に関しては、パン粉以外に、ゴマ、のり、ポテトチップ、ナッツ類、チーズ、ペッパー、魚介類なども使用できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第347251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、特許文献1に記載されていないバッターの粘度や外皮物の粒度を特定することで、従来品より軽い食感を有するフライ菓子が得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のフライ菓子の製造方法は、澱粉を主原料とする生地を圧縮焼成することで得られた煎餅状物の表面に、粘度が水の粘度の1.1倍以上15倍以下であるバッターを塗布してバッター層を形成するバッター層形成工程と、前記煎餅状物のバッター層が形成されている表面に10メッシュ以上40メッシュ以下である粉状の外皮物を付着する外皮物付着工程と、前記外皮物が付着された煎餅状生地を油で揚げるフライ工程と、からなることを特徴とする。
【0007】
この発明の方法によれば、外皮物の下地として、煎餅状物の表面に、粘度が水の粘度の1.1倍以上15倍以下であるバッターを塗布しているため、煎餅状物の表面に存在するバッター層の厚さが従来品(粘度が水の粘度の50倍以上のバッターを塗布している)よりも薄くなる。これにより、フライ後の食感が軽くなる。また、短時間でフライを行うことができるため、フライ菓子に含まれる油分を少なくすることができる。
【0008】
また、外皮物付着工程で、10メッシュ以上40メッシュ以下である粉状の外皮物を用いることにより、外皮物を、粘度の低い(粘度が水の粘度の1.1倍以上15倍以下である)バッターが塗布された煎餅状物の表面の全体に均一に付着することができる。外皮物の粒子の大きさが10メッシュ未満である(荒い)と、粘度の低いバッターが塗布された煎餅状物の表面に付着しにくくなる。外皮物の粒子の大きさが40メッシュを超える(細かくなり過ぎる)と、フライ工程後に得られるフライ菓子の食感からパン粉の舌触り感が失われる。
また、澱粉を主原料とする生地を圧縮焼成することで得られた煎餅状物は、表面の凹凸が細かく密になっているため、この煎餅状物を用いることで、煎餅状物の表面に、粘度の低いバッターを均一に付着させることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明のフライ菓子の製造方法によれば、使用するバッターの粘度や外皮物の粒度を特定することで、従来品より軽い食感を有するフライ菓子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態に相当するフライ菓子の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態を説明する。
先ず、馬鈴薯澱粉100部に、食塩1部、水40部、調味料(適量)を添加し、ミキサーで攪拌することで、澱粉を主原料とする生地を作った。この生地を、適量ずつ、加熱した下鉄板の上に置き、その上に、上鉄板を載せて圧縮焼成することにより、直径70mm、厚さ2.5mmの円形の煎餅状物を得た。この煎餅状物の表面の凹凸は細かく密になっていて、目視では平滑に見える程度であった。この煎餅状物の水分含有率は14質量%であった。
【0012】
次に、この煎餅状物1を、図1(a)に示すように、バッター2が入った容器3に浸漬してから引き揚げることにより、煎餅状物1の表面にバッター層21を形成した。これがバッター層形成工程に相当する。容器3内に入れたバッター2は、小麦粉、醤油や砂糖などの調味料、澱粉などと水を混ぜ合わせたものであり、粘度は水の粘度の2倍となっている。
次に、図1(a)の工程後の煎餅状物1を、図1(b)に示すように、15メッシュのパン粉(外皮物)4が入った容器5に入れて、煎餅状物1の表面にパン粉4を満遍なく付着させた。これが外皮物付着工程に相当する。これにより、煎餅状物1の表面に、バッター層21を介してパン粉4が付着した状態となる。
【0013】
次に、図1(c)に示すように、油6が入った鍋7を火にかけて加熱し、図1(b)の工程後の煎餅状物1を、油6の温度が180°C程度になった時点で鍋7に入れてフライ工程を行った。フライ工程に必要な時間は60秒程度であった。
このようにして、この発明の実施形態に相当する方法でフライ菓子Aを得た。
一方、比較例の方法として、以下の方法でフライ菓子Bを得た。
先ず、同じ煎餅状物1を用い、容器3内に入れるバッター2を、水と醤油などの液状物の量だけを変えることで、粘度が水の粘度の57.5倍となっているものとし、それ以外は上記と同じ方法で図1(a)の工程を行った。
【0014】
次に、15メッシュのパン粉4を用い、上記と同じ方法で図1(b)の工程を行った。次に、上記と同じ方法で図1(c)の工程を行ったところ、フライ工程に必要な時間は90秒程度であった。
このように、この実施形態の方法によれば、フライ工程にかかる時間を比較例の方法より短くすることができた。また、この実施形態の方法で得られたフライ菓子Aは比較例の方法で得られたフライ菓子Bと比較して、油の含有率が少なく、より軽い食感を有するものであった。
【符号の説明】
【0015】
1 煎餅状物
2 バッター
21 バッター層
3 容器
4 パン粉(外皮物)
5 容器
6 油
7 鍋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉を主原料とする生地を圧縮焼成することで得られた煎餅状物の表面に、粘度が水の粘度の1.1倍以上15倍以下であるバッターを塗布してバッター層を形成するバッター層形成工程と、前記煎餅状物のバッター層が形成されている表面に10メッシュ以上40メッシュ以下である粉状の外皮物を付着する外皮物付着工程と、前記外皮物が付着された煎餅状生地を油で揚げるフライ工程と、からなることを特徴とするフライ菓子の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−234630(P2011−234630A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106315(P2010−106315)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(595177361)株式会社おやつカンパニー (9)
【Fターム(参考)】