説明

フライ製品の製造方法

【課題】フライ製品の油含有量を少なくすることができ、崩れやすい食品素材の形状を維持するようにフライすることができるフライ製品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるフライ製品の製造方法は、食品素材(M)を、真空容器(4)内で、加熱された油の泡(B)で覆ってフライする。好ましくは、食品素材(M)を、支持面(2e)の上に置いた状態で真空容器(4)の中に配置し、食品素材(M)において、液状の油(L)に浸された第1の層(50)と、液状の油(L)に浸されていない第2の層(52)を形成する。液状の油(L)を加熱すると共に真空容器(4)内を減圧することによって、第1の層(50)の食品素材(M)に含まれる水分を沸騰させて水蒸気にし、この水蒸気により、液状の油(L)の上に、加熱された油の泡(B)の層を形成する。第2層(52)の食品素材(M)が、加熱された油の泡で覆われてフライされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、イモ類や果物等の素材を真空フライヤーのフライかごに入れて、フライ製品を製造する方法が知られている。例えば、素材を真空フライヤーのフライかごに入れ、フライかごをフライヤーの油の中に入れたりそれから出したりすることにより、素材をフライ製品にする方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、気泡発生器によって、フライヤーの油の中に気体を導入し、油内を撹拌させる装置が知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−269458号公報
【特許文献2】特開平6−70699号公報
【特許文献3】国際公開WO2003/043442号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では、健康志向が高まっており、フライ製品中の油の含有量は少ない方が好まれる傾向にある。従って、フライ製品の油含有量をより少なくすることが望まれる。
【0006】
また、上述した特許文献1の装置を用いて、フライ製品を製造しようとすると、うまく製品にならないことがある。例えば、スライス状にしたかぼちゃを蒸して個別に冷凍したものを、かごに入れてフライすると、かぼちゃが崩れたり互いに粘着したりして、かごにこびりついてしまうことがある。
【0007】
また、従来の装置をできるだけ利用できることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、フライ製品の油含有量を少なくすることができるフライ製品の製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、崩れやすい食品素材の形状を維持するようにフライすることができるフライ製品の製造方法を提供することにある。
【0010】
なお、本明細書で使用する用語「フライする」は、油で加熱することを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によるフライ製品の製造方法は、フライ製品にされる食品素材を、真空容器内で、加熱された油の泡で覆ってフライする工程を有することを特徴とする。
【0012】
このように構成された本発明によるフライ製品の製造方法では、食品素材を、真空容器内で、加熱された油の泡で覆うことにより、食品素材を加熱し、食品素材に含まれる水分を沸騰及び蒸発させる。かくして、食品素材がフライされる。
【0013】
また、本発明者は、食品素材に含まれる水分を蒸発させるとき、水分と置換される油の量が、食品素材を液体の油の中でフライする場合よりも、食品素材を油の泡で覆った状態でフライする場合の方が少なくなるとの知見を得た。即ち、本発明によるフライ製品の製造方法では、フライ製品の油含有量を、食品素材が液体の油の中でフライする場合よりも少なくすることができる。
【0014】
また、食品素材が油の泡で覆われフライされるので、食品素材に作用する力が緩和され、崩れやすい食品素材の形状を維持するようにフライすることができる。
【0015】
本発明によるフライ製品の製造方法において、好ましくは、更に、フライ製品にされる食品素材を、油が通過可能な孔を有する支持面の上に置いた状態で真空容器の中に配置する工程と、真空容器内に液状の油を供給する工程と、食品素材の一部分を液状の油に浸して、液状の油に浸された第1の層と、油に浸されていない第2の層を形成する工程と、液状の油を加熱し且つ真空容器内を減圧することによって、油に浸された第1の層の食品素材に含まれる水分を沸騰させて、液状の油の上に、加熱された油の泡の層を形成する工程と、を有し、第2の層の食品素材のうち、加熱された油の泡の層に覆われた部分がフライされることを特徴とする。
【0016】
このように構成されたフライ製品の製造方法では、液状の油の上に油の泡を形成することにより、油の泡を加熱することができる。また、水分の沸騰により泡を形成するので、油の泡によってフライされるときの温度が、沸騰温度よりも高い温度であることが確保される。また、食品素材に含まれる水分を利用して、油の泡を形成するので、例えば、泡を発生させる装置が必要でない。
【0017】
上記フライ製品の製造方法において、好ましくは、更に、加熱された油の泡の層で覆われた第2の層の食品素材に含まれる水分を沸騰させて、油の泡の層を上方に成長させる工程を有する。
【0018】
このように構成されたフライ製品の製造方法では、泡が成長することにより、より多くの食品素材を油の泡で加熱することを可能にする。
【0019】
上記フライ製品の製造方法において、好ましくは、更に、第2の層の食品素材全体を油の泡で覆う工程を有する。
【0020】
上記フライ製品の製造方法において、好ましくは、更に、第2の層の食品素材全体が油の泡で覆われた後、食品素材全体を、加熱された液状の油に浸す工程を有する。
【0021】
このように構成されたフライ製品の製造方法では、食品素材のフライを確実に行うことができる。崩れやすい食品素材がフライされる場合、加熱された液状の油に浸す工程は、かかる食品素材がフライにより保形性を有するようになった後に行われることが好ましい。
【0022】
上記フライ製品の製造方法において、好ましくは、食品素材全体を加熱された油に浸す工程は、真空容器内に、加熱された油を追加することによって行われる。
【0023】
このように構成されたフライ製品の製造方法では、真空フライヤーシステムを簡素化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるフライ製品の製造方法は、フライ製品の油含有量を少なくすることができる。また、本発明によるフライ製品の製造方法は、崩れやすい食品素材の形状を維持するようにフライすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による真空フライヤーシステムの概略図である。
【図2】本発明による真空フライヤーシステムの部分的な概略図である。
【図3】本発明によるフライ製品の製造方法の説明図である。
【図4】本発明による真空フライヤーシステムの部分的な概略図である。
【図5】本発明による真空フライヤーシステムの部分的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
最初、図1を参照して、本発明によるフライ製品の製造方法に使用する真空フライヤーシステムの実施形態を説明する。図1は、真空フライヤーシステムの概略図である。
【0027】
図1に示すように、真空フライヤーシステム1は、フライ製品にされる食品素材Mを入れるかご2を収容する真空容器4と、真空容器4内の油Lを加熱する加熱装置6と真空容器4内を減圧するための減圧装置8と、真空容器4内に油Lを供給する油供給装置10と、を有している。
【0028】
真空容器4は、食品素材Mをかご2の中に入れるために、容器部分4aと蓋部分4bに分離可能である(図2参照)。容器部分4aと蓋部分4bが連結されているとき、真空容器4は密封されるように構成されている。蓋部分4bは、真空容器4内のガスを排出するための真空ポート11aを有している。容器部分4aは、真空容器4内に油Lを導入するための油導入ポート11bと、真空容器4内の油Lを排出するための油排出口11cを有している。
【0029】
食品素材Mが入れられるかご2は、油が通る孔2aが設けられた側板2b及び底板2cと、天板2dとを有している。また、かご2は、素材を出し入れするための開閉可能な出し入れ口(図示せず)を有している。底板2cの上面2e(図3参照)は、食品素材Mを支持する支持面を構成する。かご2の大きさは、例えば、直径30〜200cm、高さ10〜40cmの平たい円盤状の円柱状であり、孔2aは、例えば、直径3mmの円形である。
【0030】
図示の実施形態では、かご2及び蓋部分4bは、上下移動装置12によって上下移動可能である。上下移動装置12は、真空容器4をまたぐように設けられたフレーム14と、真空容器4の上方においてフレーム14に取付けられた支持スパン16と、支持スパン16に上下移動可能に支持され且つ蓋部分4bを貫いてかご2に連結されたシャフト18と、シャフト18及びかご2を上下移動させるために支持スパン16に取付けられたスクリュージャッキ装置20とを有している。シャフト18及びかご2は、図示していない駆動装置によって、シャフト18の軸線を中心に回転可能であることが好ましい。
【0031】
加熱装置6は、例えば、容器部分4aの内側に配置された蒸気管6aによって構成されている。
【0032】
減圧装置8は、真空容器4内のガスから油分を分離するために真空ポート11に接続されたオイルセパレータ22、例えば、サイクロンと、真空容器4内のガスから水分を分離するためにオイルセパレータ22に接続された冷却器24と、冷却器24に接続された真空ポンプ26とを有している。また、オイルセパレータ22と冷却器24との間の配管28には、流量調整弁30が設けられている。流量調整弁30は、例えば、バタフライ弁である。
【0033】
油供給装置10は、油Lを貯蔵するタンク32と、タンク32に接続された油供給ポンプ34と、油供給ポンプ34と油導入ポート11bを接続する配管部36とを有している。配管部36は、互いに並行するように配置された第1の流路36a及び第2の流路36bと、油供給ポンプ34からの流れを第1の流路36a又は第2の流路36bのいずれかに切替える切替え弁38と、配管部36を開閉する開閉弁40とを有している。第1の流路36a及び第2の流路36bはそれぞれ、第1の流量調整弁42a及び第2の流量調整弁42bを有している。第1の流量調整弁42a及び第2の流量調整弁42bは、第2の流路36bの流量が、第1の流路36aの流量よりも少なくなるように調整されている。
【0034】
タンク32は、その中の油Lのレベル又は容量を検出するためのセンサ44を有している。
【0035】
上述した流量調整弁30、40a、40b及び切替え弁38は、電気作動式であり且つコントローラ46に電気的に接続されることが好ましい。また、スクリュージャッキ装置20、真空ポンプ26、油供給ポンプ34、センサ44も、コントローラ46に電気的に接続されることが好ましい。
【0036】
次に、本発明によるフライ製品の製造方法の例示の実施形態を詳細に説明する。
【0037】
図2に示すように、スクリュージャッキ装置20を作動させることにより、シャフト18及びかご2を上昇させる。かご2を上昇させることにより、真空容器4の蓋部分4bを容器部分4aから持上げて、分離する。かご2の出し入れ口(図示せず)から、フライすべき食品素材Mをかご2の中に入れる。食品素材Mは、かご2の支持面2eの上に支持される(図3(a)参照)。
【0038】
フライ製品にされる食品素材Mは、例えば、スライスしたかぼちゃである。かぼちゃは、例えば、長さ約2〜10cm、幅1〜4cm、厚さ1〜10mmであり、予め蒸された後、個別に冷凍されている。かかるかぼちゃは、それを解凍して手で持つと、崩れてしまう食品素材である。
【0039】
かご2の中に入れられる食品素材Mの量は、かごの容量の20〜80%であることが好ましい。
【0040】
図1に示すように、スクリュージャッキ装置20を作動させることにより、シャフト18及びかご2を下降させる。かご2を下降させることにより、真空容器4の蓋部分4bを容器部分4aに結合させ、真空容器4を密封する。かご2を予め決められた高さレベルH0に保持する。かくして、フライ製品にされる食品素材Mが、油が通過可能な孔2aを有する支持面2eの上に置いた状態で真空容器4の中に配置される。
【0041】
次に、タンク32内の油を真空容器4内に予め決められた高さレベルH1まで供給する。具体的には、開閉弁40を開き、切替え弁38を第1の流路36aに切替え、油供給ポンプ34を作動させ、タンク32内の油を第1の流路36aを通して比較的大きい流量で、高さレベルH1よりも低い高さレベルH2まで供給する。次いで、切替え弁38を第2の流路36bに切替え、タンク32内の油を第2の流路36bを通して比較的小さい流量で高さレベルH1まで供給し、開閉弁40を閉鎖する。本実施形態では、タンク32内の油のレベル又は容量の変化をセンサ44によって検知することによって、高さレベルH1、H2を決定する。開閉弁40の開閉及び切替え弁38の切替えは、センサ44による信号に応じてコントローラ46よって作動されることが好ましい。第1の流量弁42aを用いて、油の供給時間を短縮し、第2の流量弁42bを用いて、正確な高さレベルH1を実現することが好ましい。
【0042】
油は、例えば、なたね油、ライス油、パーム油、パームオレイン、オリーブ油、落花生油、綿実油、大豆油である。
【0043】
図3(a)に示すように、高さレベルH1は、支持面2e上の食品素材Mにおいて、液状の油に浸された第1の層50と、液状の油に浸されていない第2の層52を形成するように定められる。第1の層50は、できるだけ薄いことが好ましいが、後述する油の泡の発生が持続するように定められる。第1の層50の厚さは、例えば、1〜15cmである。食品素材Mは、その中に水分を含んでいる。
【0044】
次に、真空容器4内の油Lを加熱装置6によって加熱すると同時に、真空容器4内を減圧装置8によって減圧する。真空ポンプ26によって真空容器4内から引かれたガスは、オイルセパレータ22において、油分が分離され、冷却器24において、水分が分離される。真空容器4内の圧力は、大気圧である101kPaから約40kPaに減圧することが好ましい。油の温度は、食品素材Mに焼き色がつき、食品素材Mの水分を沸騰させることができる程度であればよく、例えば、70〜120℃である。
【0045】
液状の油Lを加熱すると共に真空容器4内を減圧することによって、第1の層50の食品素材Mに含まれる水分を沸騰させて水蒸気にする。
【0046】
図3(b)に示すように、水蒸気により、液状の油Lの上に、加熱された油の泡Bを生じさせる。油の泡Bの消滅速度を遅くすることにより、油の泡Bが徐々に堆積し、油の泡Bの層が液状の油Lの上に形成され、それが維持される。油の泡Bの消滅速度は、油の粘度、泡の径等に左右される。油の泡Bの消滅速度が遅くなるようにするためには、水分の沸騰が緩やかに行われ、油の泡Bの径が小さくなるようにすることが好ましい。従って、油の温度は、120℃よりも低いことが好ましい。また、流量調整弁30の開度を小さくすることにより、少しずつ真空容器4内のガスを引いて、水蒸気の気泡を小さくすることが好ましい。真空容器4内の圧力を下げるために、流量調整弁30の開度を大きくし過ぎることは、激しい沸騰により水蒸気の気泡が大きくなるので好ましくない。即ち、流量調整弁30の開度は、沸騰の開始時点から、油の泡が堆積する程度の大きさの水蒸気の気泡が継続的に発生するように調整されるのがよい。
【0047】
油の泡Bは、第2層の食品素材Mの隙間に入り込む。液状の油L自体が加熱されているので、油の泡Bに液状の油Lの熱が伝わり、油の泡Bの温度も、液状の油Lの温度とほぼ等しくなっている。それにより、支持面2e上の食品素材Mの少なくとも一部分、即ち、第2の層52の食品素材Mのうち、油の泡Bで覆われている部分(下方部分)がフライされる。それにより、例えば、スライスしたかぼちゃ同士がくっつくことを防止することができる。
【0048】
引き続いて、加熱された油の泡Bで覆われた第2の層52の食品素材Mの水分を沸騰させて水蒸気にする。第2の層52の食品素材Mから生じた水蒸気により、加熱された油の泡Bの層の中で、さらに油の泡Bが発生する。上述したように、油の泡Bの消滅速度が遅いため、油の泡Bの層を上方に成長させることができる。また、油の泡Bに、液状の油の熱が供給され、油の泡Bの温度は、液状の油Lの温度はほぼ等しい。最終的に、図3(c)に示すように、第2の層の食品素材全体が、加熱された油の泡Bで覆われてフライされる。
【0049】
油の泡が食品素材Mの隙間にいきわたることを促進させるために、かご2を回転させてもよい。それにより、例えば、スライスしたかぼちゃ同士がくっつくことを更に防止することができる。
【0050】
油の泡を発生させるために、真空ポンプ26の作動速度及び流量調整弁30の開度を変化させてもよいし、予め決められた設定に維持したままでもよい。
【0051】
食品素材Mに含まれる水分の沸騰が終了した後、油の泡Bの層の成長は止まる。次いで、油の泡Bが消滅していくので、油の泡Bの層が次第に薄くなる。この段階で、食品素材Mの加熱を確実にするために、食品素材M全体を、加熱された液状の油Lに(例えば、3〜15分間)浸すことが好ましい。本実施形態では、図4に示すように、真空容器4内に油Lを追加することによって行う。具体的には、開閉弁40を開き、切替え弁38を第1の流路36aに切替え、油供給ポンプ34を作動させ、タンク32内の油を第1の流路36aを通して比較的大きい流量で、高さレベルH1よりも高い高さレベルH3まで供給する。
【0052】
上述した本発明によるフライ製品の製造方法では、食品素材Mを油の泡の中でフライするので、食品素材Mを液状の油の中でフライする場合と比べて、食品素材Mにかかる油の外圧が小さくなり、食品素材Mの中に油が侵入することが少なくなる。
【0053】
次に実施例と比較例を説明する。
【0054】
(実施例)
食品素材として、スライス状に切断したかぼちゃを用いて、本発明によるフライ製品の製造方法によりかぼちゃスナックを製造した。かぼちゃの寸法は、長さ100mm、幅20mm、厚み4mmであった。かご内のかぼちゃは、支持面2eの上に18cm堆積され、液状の油に浸されたかぼちゃの高さH1−H0は、6cmであった。液状の油の温度を85℃にした。油の泡が形成される前に、真空ポンプ26の作動速度及び流量調整弁30の開度を予め決められた値に設定し、それをフライが完了するまで維持した。真空容器4内の圧力が、水の飽和蒸気圧に達すると、次第に油の泡が形成され、油の泡が形成されてから約1分後に、かぼちゃ全体が油の泡で覆われ、その17分後に油の泡の層が薄くなり始めた。かぼちゃ全体を約8分間液状の油で浸し、フライを完了した。
【0055】
フライ後のかぼちゃスナックは、個別に分離でき、手で持っても、形状が崩れることはなかった。また、ソックスレー抽出法で測定した油の含有量は、36〜42%であった。
【0056】
(比較例)
実施例と同じ形状、寸法のスライス状のかぼちゃを、同じ量だけ同じかごに入れ、液状の油の中に浸してフライを行った。
【0057】
フライ後のかぼちゃスナックは、油を吸ってやわらかくなり、かごの孔の中に入り込み、個別に分離できない状態であった。ソックスレー抽出法で測定した油の含有量は、45〜53%であった。
【0058】
以上説明したように、本発明によるフライ製品の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して、崩れやすい食品素材の形状を維持するようにフライすることができること、及び、フライ製品の油含有量を少なくすることができることを確認できた。
【0059】
また、油の含有量が少ないので、軽い食感のフライ製品が得られた。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0061】
上記実施形態では、食品素材の水分を利用して油の泡を形成したけれども、真空容器の外部から、水分又はガスを供給して油の泡を形成してもよい。また、油の泡の形成を促進させるために、油に乳化剤を入れてもよい。
【0062】
上記実施形態では、かご2の高さレベルH0に固定して、真空容器4内の液状の油Lの量を変化させたが(図1及び図4参照)、真空容器4内の液状の油Lの量を一定にし、かご2の高さレベルをスクリュージャッキ装置20によって変化させてもよい。例えば、食品素材Mをフライする前、真空容器4内の液状の油Lを高さレベルH1にしてから、かご2の高さレベルをH0にしてもよい(図1参照)。また、食品素材M全体を液状の油Lに浸す際、かご2の高さレベルをH0からH4に下降させてもよい(図5参照)。
【0063】
上記実施形態では、かぼちゃを例に説明したけれども、フライ製品にする素材は、タマネギ、サツマイモ、ジャガイモ、その他のイモ類、ニンジン、蓮根、ピーマン、大根、ナス、キノコ類、アスパラガス、マカロニ等の生地や、粉原料を加水し押し固め成型した生地等であってもよい。特に、形状が崩れやすい素材に有用である。また、食品素材Mの形状は任意であり、円柱状、球状、角切り、チップ状、スライス形態等任意に設定できる。
【符号の説明】
【0064】
2a 孔
2e 支持面
4 真空容器
50 第1の層
52 第2の層
B 油の泡
L 液状の油
M 食品素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ製品の製造方法であって、
フライ製品にされる食品素材を、真空容器内で、加熱された油の泡で覆ってフライする工程を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
更に、フライ製品にされる食品素材を、油が通過可能な孔を有する支持面の上に置いた状態で真空容器の中に配置する工程と、
真空容器内に液状の油を供給する工程と、
食品素材の一部分を液状の油に浸して、液状の油に浸された第1の層と、油に浸されていない第2の層を形成する工程と、
液状の油を加熱し且つ真空容器内を減圧することによって、油に浸された第1の層の食品素材に含まれる水分を沸騰させて、液状の油の上に、加熱された油の泡の層を形成する工程と、を有し、
第2の層の食品素材のうち、加熱された油の泡の層に覆われた部分がフライされることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
更に、加熱された油の泡の層で覆われた第2の層の食品素材に含まれる水分を沸騰させて、油の泡の層を上方に成長させる工程を有することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
更に、第2の層の食品素材全体を油の泡で覆う工程を有することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
更に、第2の層の食品素材全体を油の泡で覆った後、食品素材全体を、加熱された液状の油に浸す工程を有することを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記食品素材全体を加熱された油に浸す工程は、真空容器内に、加熱された油を追加することによって行われることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−167155(P2011−167155A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35998(P2010−35998)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(591115578)カルビー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】