説明

フラックスゲートセンサおよびフラックスゲートセンサ用コア

【課題】x方向検出コイルとy方向検出コイルの高い直角度を容易に確保できるようにする。
【解決手段】互いに直交するx方向直線部(11x)およびy方向直線部(11y)を有するコア(11)と、励磁コイル(12)と、x方向直線部(11x)を直接的に利用してコア(11)の周囲に巻回されたx方向検出コイル(13x)と、y方向直線部(11y)を間接的に利用してコア(11)の周囲に巻回されたy方向検出コイル(13y)とを具備する。
【効果】x方向検出コイル(13x)とy方向検出コイル(13y)の高い直角度を容易に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスゲートセンサおよびフラックスゲートセンサ用コアに関し、さらに詳しくは、x方向検出コイルとy方向検出コイルの高い直角度を容易に確保できるフラックスゲートセンサ、および、そのフラックスゲートセンサに好適に用いうるフラックスゲートセンサ用コアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トロイダル・コアに励磁コイルがトロイダル巻され、トロイダル・コアの周囲にx方向検出コイルとy方向検出コイルとが互いに直角になるように巻回されているフラックスゲートセンサが知られている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−64475号公報
【特許文献2】特開平10−153427号公報
【特許文献3】特開平6−241808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフラックスゲートセンサでは、トロイダル・コアが円環形状であるため、x方向検出コイルとy方向検出コイルとを巻回する時に互いに直角になっているか否かをトロイダル・コアを利用しては確認できず、何らかの治具を用いる必要があり、作業が繁雑になる問題点があった。
そこで、本発明の目的は、x方向検出コイルとy方向検出コイルの高い直角度を容易に確保できるフラックスゲートセンサ、および、そのフラックスゲートセンサに好適に用いうるフラックスゲートセンサ用コアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、互いに直交するx方向直線部(11x)およびy方向直線部(11y)を有し且つ閉磁路を形成するコア(11)と、前記コア(11)を励磁する励磁コイル(12)と、前記x方向直線部(11x)で方向を規定されたx方向コイル面(14x)を形成するように前記コア(11)の周囲に巻回されたx方向検出コイル(13x)と、前記y方向直線部(11y)で方向を規定されたy方向コイル面(14y)を形成するように前記コア(11)の周囲に巻回されたy方向検出コイル(13y)とを具備したことを特徴とするフラックスゲートセンサ(10)を提供する。
上記第1の観点によるフラックスゲートセンサ(10)では、コア(11)のx方向直線部(11x)とy方向直線部(11y)とが互いに直交しているので、x方向直線部(11x)を利用してx方向検出コイル(13x)をコア(11)の周囲に巻回し、y方向直線部(11y)を利用してy方向検出コイル(13y)をコア(11)の周囲に巻回すれば、x方向検出コイル(13x)とy方向検出コイル(13y)の高い直角度を容易に確保できる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、平行な2辺とそれらに直角な1辺からなるコの字形のコア部材(11a)を向き合わせてロの字形に接続したことを特徴とするフラックスゲートセンサ用コア(11)を提供する。
上記第2の観点によるフラックスゲートセンサ用コア(11)では、平行に対向する辺が2対あり且つそれら対の方向が直交するから、一方の対を利用してx方向検出コイル(13x)を巻回し、他方の対を利用してy方向直線部(11y)を巻回すれば、x方向検出コイル(13x)とy方向検出コイル(13y)の高い直角度を容易に確保できる。また、コの字形のコア部材(11a)に分割して励磁コイル(12)を嵌めることが出来るから、励磁コイル(12)をトロイダル巻する必要がなくなり、フラックスゲートセンサ(10)を製造しやすくなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフラックスゲートセンサおよびフラックスゲートセンサ用コアによれば、x方向検出コイルとy方向検出コイルの高い直角度を容易に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1に係るフラックスゲートセンサ100を示す構成図である。
このフラックスゲートセンサ100は、互いに直交するx方向直線部11xおよびy方向直線部11yを有し且つ閉磁路を形成するコア11と、コア11を励磁する励磁コイル12と、平行に対向する一対のx方向直線部11xを直接的に利用してコア11の周囲に巻回されたx方向検出コイル13xと、平行に対向する一対のy方向直線部11yを間接的に利用してコア11の周囲に巻回されたy方向検出コイル13yとを具備している。
x方向コイル面14xはx方向検出コイル13xのコイル面であり、y方向コイル面14yはy方向検出コイル13yのコイル面である。
【0010】
図2は、コア11の斜視図である。
このコア11は、平行な2辺111とそれらに直角な1辺112からなるコの字形のコア部材11aを向き合わせてロの字形に接続した構造である。辺111がy方向直線部11yに相当し、辺112がx方向直線部11xに相当する。
コア部材11aは、例えばパーマロイまたはセンダストなどの軟磁気特性(保持力が小さく、透磁率が大きい。)を有する材料の板を積層したものである。
【0011】
図3は、励磁コイル12の斜視図である。
この励磁コイル12は、ボビン12aに励磁巻線12bを巻回したものである。
ボビン12aは、コア部材11aの辺111をほとんど隙間なく挿通しうる四角形の中空孔12cを有している。また、中空孔12cと相似な外形のフランジ12dを有している。
【0012】
図4に示すように、コの字形のコア部材11aに励磁コイル12を嵌め、別のコの字形のコア部材11aを向き合わせてロの字形に接続し、励磁コイル12を嵌めたコア11とする。コア部材11aの接続は、重ね接続でも、突合せ接続でもよい。
【0013】
次に、図5に示すように、平行に対向する一対のx方向直線部11xを利用して、コア11の周囲に、x方向検出コイル13xを巻回する。これにより、x方向検出コイル13xのコイル面であるx方向コイル面14xは、x方向直線部11xの方向に直交する方向となる。
【0014】
次に、図6に示すように、励磁コイル12のフランジ12dにボビン15を嵌める。
そして、図1に示すように、ボビン15の周囲に、y方向検出コイル13yを巻回する。これにより、y方向検出コイル13yのコイル面であるy方向コイル面14yは、y方向直線部11yの方向に直交する方向となる。
従って、x方向検出コイル13xとy方向検出コイル13yとは、高い直角度を容易に確保できる。
【0015】
図7は、フラックスゲートセンサ10と、励磁部50と、信号処理部20を示す構成図である。
励磁部50は、周波数f0(例えばf0=2kHz)の矩形波を発振する発振器51と、発振器51が発振した矩形波を分周し周波数f0/2の交流電流を励磁コイル12に通電するコイル駆動回路52とを含んでおり、フラックスゲートセンサ10の励磁コイル12に交流電流を通電する。
【0016】
信号処理部20は、x方向検出コイル13xに誘起される検出信号Ixに帰還信号Ibxを重畳する帰還回路26xと、フラックスゲートセンサ10の励磁移相から移相をずらせた同期信号を出力する移相器31xと、検出信号Ixに帰還信号Ibxを重畳した信号を増幅する前置増幅器32xと、遮断周波数fc1(>f0/2)で励磁信号成分を遮断するためのハイパスフィルタ33xと、ハイパスフィルタ33xからの出力信号を同期信号で位相検波する位相検波器34xと、遮断周波数fc2(≪f0)で所望帯域の出力信号Vpxを取り出すローパスフィルタ35xと、出力信号Vpxを時定数τ1xで積分し第1の積分信号Vi1x出力する第1の積分器41xと、第1の積分信号Vi1xを時定数τ2x(>τ1x)で積分し第2の積分信号Vi2xを出力する第2の積分器42xと、第2の積分信号Vi2xを時定数τ3x(>τ2x)で積分し第3の積分信号Vi3xを出力する第3の積分器43xと、第1〜第3の積分信号Vi1x〜Vi3xを減衰/増幅する第1〜第3の積分信号調整器20x〜22xと、積分信号調整器20x〜22xを経た第1〜第3の積分信号Vi1'x〜Vi3'xを加算して加算信号Vdxを出力する加算器23xと、感度を調整するべく加算信号Vdxを減衰/増幅する帰還量調整器24xと、帰還量調整器24xを経た加算信号Vd'xにバイアス信号Vaxを加えて帰還信号Ibxを出力するバイアス調整器25xとを具備している。
【0017】
バイアス信号Vaxは、磁性物体が近傍に存在しないときに加算信号Vdxが0になるように(つまり、ノイズ磁気の直流成分を打ち消すように)調整しておく。
【0018】
各積分器41x,42x,43yの時定数τ1x,τ2x,τ3xやフィードバック特性を積分信号調整器20x〜22xで調整することで、出力信号Vpxから抽出される信号成分の帯域を積分器ごとに変えることが可能となり、異なる複数の帯域の信号成分をそれぞれ検出信号として同時に得ることが出来る。すなわち、第1〜第3の積分信号Vi1x〜Vi3xのいずれか適当なものをx方向検出信号として選べばよい。
【0019】
また、信号処理部20は、y方向検出コイル13yに誘起される検出信号Iyに帰還信号Ibyを重畳する帰還回路26yと、フラックスゲートセンサ10の励磁移相から移相をずらせた同期信号を出力する移相器31yと、検出信号Iyに帰還信号Ibyを重畳した信号を増幅する前置増幅器32yと、遮断周波数fc1(>f0/2)で励磁信号成分を遮断するためのハイパスフィルタ33yと、ハイパスフィルタ33yからの出力信号を同期信号で位相検波する位相検波器34yと、遮断周波数fc2(≪f0)で所望帯域の出力信号Vpyを取り出すローパスフィルタ35yと、出力信号Vpyを時定数τ1yで積分し第1の積分信号Vi1y出力する第1の積分器41yと、第1の積分信号Vi1yを時定数τ2y(>τ1y)で積分し第2の積分信号Vi2yを出力する第2の積分器42yと、第2の積分信号Vi2yを時定数τ3y(>τ2y)で積分し第3の積分信号Vi3yを出力する第3の積分器43yと、第1〜第3の積分信号Vi1y〜Vi3yを減衰/増幅する第1〜第3の積分信号調整器20y〜22yと、積分信号調整器20y〜22yを経た第1〜第3の積分信号Vi1'y〜Vi3'yを加算して加算信号Vdyを出力する加算器23yと、感度を調整するべく加算信号Vdyを減衰/増幅する帰還量調整器24yと、帰還量調整器24yを経た加算信号Vd'yにバイアス信号Vayを加えて帰還信号Ibyを出力するバイアス調整器25yとを具備している。
【0020】
バイアス信号Vayは、磁性物体が近傍に存在しないときに加算信号Vdyが0になるように(つまり、ノイズ磁気の直流成分を打ち消すように)調整しておく。
【0021】
各積分器41y,42y,43yの時定数τ1y,τ2y,τ3yやフィードバック特性を積分信号調整器20y〜22yで調整することで、出力信号Vpyから抽出される信号成分の帯域を積分器ごとに変えることが可能となり、異なる複数の帯域の信号成分をそれぞれ検出信号として同時に得ることが出来る。すなわち、第1〜第3の積分信号Vi1y〜Vi3yのいずれか適当なものをy方向検出信号として選べばよい。
【0022】
実施例1に係るフラックスゲートセンサ100によれば、次の効果が得られる。
(A)コア11のx方向直線部11xを直接的に利用してx方向検出コイル13xをコア11の周囲に巻回し、コア11のy方向直線部11yを間接的に利用してy方向検出コイル13yをコア11の周囲に巻回しているが、x方向直線部11xとy方向直線部11yとが互いに直交しているので、x方向検出コイル13xとy方向検出コイル13yの高い直角度を容易に確保できる。
(B)コの字形のコア部材11aに分割して励磁コイル12をコア11に嵌めることが出来るから、励磁コイル12をトロイダル巻する必要がなくなり、フラックスゲートセンサ10を製造しやすくなる。
【実施例2】
【0023】
実施例1のコア11のy方向直線部11yを全体的に長くし、複数個の励起コイル12を並べてy方向直線部11yに嵌めてもよい。
【実施例3】
【0024】
実施例1のコア11のx方向直線部11xやy方向直線部11yの幅をx方向検出コイル13xやy方向検出コイル13yの幅程度に短くし、残りの部分を丸くしてもよい。
【実施例4】
【0025】
平行な3辺とそれらに直角な1辺からなるEの字形のコア部材を向き合わせて日の字形に接続したフラックスゲートセンサ用コアを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のフラックスゲートセンサは、磁気センサとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に係るフラックスゲートセンサを示す斜視図である。
【図2】実施例1に係るコアを示す斜視図である。
【図3】実施例1に係る励磁コイルを示す斜視図である。
【図4】コアに励磁コイルを嵌める状態を示す斜視図である。
【図5】x方向検出コイルを巻回した状態を示す斜視図である。
【図6】y方向検出コイルを巻回するためのボビンを嵌めた状態を示す斜視図である。
【図7】フラックスゲートセンサと励磁部と信号処理部を示す構成図である。
【符号の説明】
【0028】
10 フラックスゲートセンサ
11 コア
11a コア部材
11x x方向直線部
11y y方向直線部
12 励磁コイル
12a ボビン
12b 励磁巻線
12c 中空孔
12f フランジ
13x x方向検出コイル
13y y方向検出コイル
14x x方向コイル面
14y y方向コイル面
15 ボビン
20 信号処理部
50 励磁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するx方向直線部(11x)およびy方向直線部(11y)を有し且つ閉磁路を形成するコア(11)と、前記コア(11)を励磁する励磁コイル(12)と、前記x方向直線部(11x)で方向を規定されたx方向コイル面(14x)を形成するように前記コア(11)の周囲に巻回されたx方向検出コイル(13x)と、前記y方向直線部(11y)で方向を規定されたy方向コイル面(14y)を形成するように前記コア(11)の周囲に巻回されたy方向検出コイル(13y)とを具備したことを特徴とするフラックスゲートセンサ(10)。
【請求項2】
平行な2辺とそれらに直角な1辺からなるコの字形のコア部材(11a)を向き合わせてロの字形に接続したことを特徴とするフラックスゲートセンサ用コア(11)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−3288(P2007−3288A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182216(P2005−182216)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】