説明

フラッシュパネルおよび同フラッシュパネルの変形防止方法

【課題】反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができるフラッシュパネルおよび同フラッシュパネルの変形防止方法を提供する。
【解決手段】戸襖10は、水平方向(図示左右方向)に沿って互いに平行に延びる2つの横框12a,12bと、垂直方向(図示上下方向)に沿って互いに平行に延びる2つの縦框13a,13とを四角枠状に組んで成形された框11を備えている。框11の内側には、縦框13aと縦框13bとの間にて水平姿勢で掛け渡した横桟14と、横框12aと横框12bとの間にて垂直姿勢で掛け渡した縦桟15とがそれぞれ設けられている。横桟14は、幅が2分に形成されており、垂直方向に45mmの間隔で37本配置されている。また、縦桟15は、幅が3分に形成されており、水平方向に135mmの間隔で4本配置されている。横桟14と縦桟15とは、溝状の切欠き部に互いに見込み方向から差し込まれて格子状の組子を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四角枠状に形成された框の表裏面のうちの少なくとも一方の面に面材を貼り合わせて構成したフラッシュパネルおよび同フラッシュパネルの変形防止方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、家屋や工場などの建物においては、ドア、戸、襖または戸襖などの建具、または室内空間を仕切る間仕切りとしてフラッシュパネルが広く用いられている。フラッシュパネルは、一般に、水平方向に沿って互いに平行に延びる2つの横框と垂直方向に沿って互いに平行に延びる2つの縦框とを四角枠状に組んで構成された框の表裏面のうちの少なくとも一方に面材を貼り合わせた所謂フラッシュ構造のパネル体である。
【0003】
このようなフラッシュパネルにおいては、経時的に反りや捩れが生じることが問題となっている。特に、框の表裏面にそれぞれ複数のまたは互いに異なる種類の面材を貼り合わせた構成の戸襖においては、框の表裏面にそれぞれ貼り合わせた面材の収縮率の相違などにより反りや捩れなどの変形が生じ易い。このため、例えば、下記特許文献1には、予想される経時的な反り量に応じて予想される変形方向とは反対方向に予め反らせて成形したフラッシュパネルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−132289号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記したフラッシュパネルにおいては、フラッシュパネルにおける経時的な反り量を予想することは困難である。すなわち、フラッシュパネルにおける反りは、フラッシュパネルを構成する部材の性質や、フラッシュパネルによって仕切られる2つの空間の湿度や温度などの設置環境の相違などが総合的に作用して生じるものである。このため、フラッシュパネルを予め反らして成形した場合であっても、フラッシュパネルが予想以上または予想未満の反り量で反ることにより、結果としてフラッシュパネルの反りが解消しないという問題がある。また、フラッシュパネルにおける捩れ量については、更に予想することが困難であり、上記特許文献1においてもフラッシュパネルの捩れの解消については言及されていない。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができるフラッシュパネルおよび同フラッシュパネルの変形防止方法を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、水平方向に沿って互いに平行に延びる2つの横框と垂直方向に沿って互いに平行に延びる2つの縦框とによって四角枠状に形成された框の表裏面のうちの少なくとも一方の面に面材を貼り合わせて構成したフラッシュパネルにおいて、前記2つの縦框間に、横框と平行に12本以上かつ互いに70mm以下の間隔でそれぞれ配置した横桟と、前記2つの横框間に、縦框と平行に4本以上かつ互いに150mm以下の間隔でそれぞれ配置した縦桟とを備えたことにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、フラッシュパネルは、四角枠状に形成された框内において、水平方向に延びる12本以上の横桟を垂直方向に70mm以下の間隔でそれぞれ配置するとともに、垂直方向に延びる4本以上の縦桟を水平方向に150mm以下の間隔でそれぞれ配置して構成されている。一般に、フラッシュパネルにおける框内においては、上記特許文献1にも示されるように、水平方向に11本の横桟が約130mm前後の間隔でそれぞれ配置されているとともに、垂直方向に3本の縦桟が約190mm前後の間隔でそれぞれ配置されて構成されている。すなわち、本願発明に係るフラッシュパネルにおいては、従来の横桟の配置間隔のおおよそ半分程度以下の間隔で横桟が配置されるとともに、従来の縦桟の配置間隔より短い間隔で縦桟が配置されている。これにより、フラッシュパネルを反らせるおよび/または捩れさせる変形力に抗してフラッシュパネルの形状を維持するとともに、フラッシュパネルに反りや捩れが生じた場合であっても常に元の形状に戻ろうとする復帰力(弾性力)が作用するため、フラッシュパネルにおける反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができる。なお、本発明者による実験によれば、フラッシュパネルにおける反りや捩れに加えて面材の波うちや弛みなどの変形を効果的に抑制することができることを確認している。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記フラッシュパネルにおいて、横桟および縦桟は、各幅がそれぞれ3分(約9mm)以下に形成されていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、框内に配置される横桟および縦桟の各幅は、それぞれ3分(約9mm)で構成されている。一般に、フラッシュパネルにおける框内に配置される横桟および縦桟の各幅は、4分(約12mm)に形成されている。このように、横桟および縦桟の各幅を、従来技術における横桟および縦桟の各幅よりも細く形成することによって横桟および縦桟における弾力性が高まり、フラッシュパネルにおける反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記フラッシュパネルにおいて、横桟は、幅が2分(約6mm)に形成されており、縦桟は、幅が3分(約9mm)に形成されていることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、フラッシュパネルは、框内に配置される横桟の幅が2分(約6mm)で構成されるとともに、縦桟の幅が3分(約9mm)で構成されている。これにより、本発明者による実験によれば、横桟および縦桟は適度な弾力性と剛性とを備えるようになり、フラッシュパネルにおける反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明は、フラッシュパネルとして実施できるばかりでなく、同フラッシュパネルの変形防止方法の発明としても実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る戸襖の全体構成の概略を示した一部切欠き正面図である。
【図2】(A)は本発明者による戸襖の変形実験における変形量の測定結果を示す表であり、(B)は戸襖における変形量の測定位置を示すための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るフラッシュパネルおよび同フラッシュパネルの変形防止方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るフラッシュパネルとしての戸襖10の全体構成の概略を一部切り欠いて示している。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この戸襖10は、家屋における部屋と部屋との間に設置されて、これら2つの部屋を開閉自在に仕切る建具である。
【0016】
(戸襖10の構成)
戸襖10は、四角枠状に形成された框11を備えている。框11は、戸襖10の外形を構成する部材であり、水平方向(図示左右方向)に沿って互いに平行に延びる2つの横框12a,12bと、垂直方向(図示上下方向)に沿って互いに平行に延びる2つの縦框13a,13とを四角枠状に組んで成形されている。横框12a,12bおよび縦框13a,13bは、スギやヒノキなどの木材、またはこれらの木材を積層して形成した合板や集成材およびMDF(Medium density Fiberboard)、PB(Particle Board)およびLVL(Laminated Veneer Lumber)などの木質系部材を四角柱状の棒状体に形成して構成されている。なお、本実施形態に係る框11の上下方向の寸法は2000mm、左右方向の寸法は800mm、見込み寸法(戸襖10の表裏面方向の厚さ寸法)は、22.5mmにそれぞれ設定されている。
【0017】
この框11の内側には、前記木材または木質系部材を四角柱状の棒状体を縦框13aと縦框13bとの間にて水平姿勢で掛け渡した横桟14が設けられている。横桟14は、戸襖10における反りや捩れなどの変形を防止するための部材であり、框11の垂直方向に沿って所定の間隔aを介して複数本配置されている。本実施形態においては、框11の垂直方向に沿って37本の横桟14が互いに45mmの間隔a(横桟14間の内寸法)を介してそれぞれ配置されている。
【0018】
これらの横桟14は、框11の内側における図示中央部に配置される3つの横桟14を除き、縦框13aと縦框13bとの内幅に対応する長さにそれぞれ形成されている。一方、框11の内側における図示中央部に配置される3つの横桟14は、框11の内側における図示中央右端に配置される引手板16と縦框13aとの間の内幅に対応する長さにそれぞれ形成されている。本実施形態においては、長い方の横桟14の長さが710mmにそれぞれ設定され、短い方の横桟14の長さが566mmにそれぞれ設定されている。また、これらの横桟14は、横桟14に加えられる外力によって撓み変形(弾性変形)可能な厚さにそれぞれ形成されている。本実施形態においては、横桟14の各幅は、2分(約6mm)にそれぞれ設定されている。なお、本実施形態における横桟14の2分の幅は、一般的な横桟の幅である4分の半分の厚さである。
【0019】
また、この框11の内側には、前記木材または木質系部材を四角柱状の棒状体を横框12aと横框12bとの間にて垂直姿勢で掛け渡した縦桟15が設けられている。縦桟15は、前記横桟14とともに戸襖10における反りや捩れなどの変形を防止するための部材であり、框11の水平方向に沿って所定の間隔bを介して複数本配置されている。本実施形態においては、框11の水平方向に沿って4本の縦桟15が互いに135mmの間隔b(縦桟15間の内寸法)を介してそれぞれ配置されている。
【0020】
これらの縦桟15は、横框12aと横框12bとの内幅に対応する長さに形成されているとともに、縦桟15に加えられる外力によって撓み変形(弾性変形)可能な厚さにそれぞれ形成されている。本実施形態においては、縦桟15は、長さが1910mm、幅が3分(約9mm)にそれぞれ設定されている。なお、本実施形態における縦桟15の3分の幅は、一般的な縦桟の幅である4分より薄い厚さである。そして、これらの横桟14および縦桟15は、それぞれ互いに差し込み合うための図示しない溝状の切欠き部に互いに見込み方向から差し込まれることにより格子状に組まれた所謂組子を構成している。
【0021】
框11の内側における図示中央右端に配置される引手板16は、戸襖10の開閉時に手が掛けられる引き手18を固定するための部材であり、前記木材または木質系部材からなる板状体によって構成されている。この引手板16の中央部には、引き手19を嵌め込んで固定するための図示しない凹部が形成されている。
【0022】
框11の表裏面には、一対の面材17a,17bがそれぞれ貼り付けられている。これらの面材17a,17bのうち、面材17aは、戸襖10における一方の面(図1に表側が現れている面)の表面を構成する化粧クロス18が貼り付けられる下地部材であり、前記した木材または木質系部材を框11の外形に対応した四角形状の薄板状に形成されている。一方、面材17bは、戸襖10における他方の面(図1に裏側が現れている面)を構成する部材であり、前記した木材または木質系部材を框11の外形に対応した四角形状の薄板状に形成されている。本実施形態においては、面材17aの厚さが1.5mmに設定されているとともに、面材17bの厚さが3.0mmに設定されている。
【0023】
化粧クロス18は、表面に室内装飾用の各種模様や図柄が施されたビニル製のシート体である。本実施形態においては、化粧クロス18の厚さが0.4mmに設定されている。これらの面材17a,17bの各表面における図示中央右側には、上下方向に長円形に形成された凹状の引き手19がそれぞれ設けられている。また、框11における化粧クロスの外側の縁部および框11の外周端面(木口)には、大手材としての戸掾シール20および大手シール21がそれぞれ貼り付けられている。戸掾シール20および大手シール21は、化粧クロス18の縁部および框11の外周端面を覆って同外周端面を保護するとともに戸襖10の美観を向上させるためのビニル製のテープ状部材である。本実施形態においては、戸掾シール20および大手シール21の厚さが0.3mmに設定されている。また、大手シール21の見込み寸法が30mmに設定されている。すなわち、本実施形態に係る戸襖10の見込み寸法は、30mmとなる。
【0024】
(戸襖10の製造方法)
次に、このように構成された戸襖10の製造方法について説明する。まず、作業者は、戸襖10を構成する各部材を予め設計された所定の形状に加工する。具体的には、作業者は、図示しないNCルータやパネルソーなどの加工機を用いて記木材または木質系部材を所定の寸法形状に加工することにより、横框12a,12b、縦框13a,13b、横桟14、縦桟15および引手板16を製作する。
【0025】
次に、作業者は、横桟14と縦桟15とを組み合わせて格子状の組子を組み立てる。具体的には、作業者は、横桟14(または縦桟15)に形成された溝状の切欠き部を縦桟15(または横桟14)に形成された溝状の切欠き部に差し込んで格子状に組み立てる。この場合、横桟14および縦桟15に形成する切欠き部を所定の数ごとに見込み方向において互い違いに形成しておくことにより、横桟14(または縦桟15)を所定の数ごとに縦桟15(または横桟14)に対して見込み方向における逆方向から差し込んで組み付ける。これにより、横桟14と縦桟15とを強固に連結して連結後の組子の変形を抑えることができる。これにより、框11の内側における縦方向および横方向の各内幅にそれぞれ対応した形状の組子が成形される。
【0026】
次に、作業者は、框11を組み立てる。具体的には、作業者は、横框12a,12bおよび縦框13a,13bを四角形状の枠状に組み付け、その内側に横桟14と縦桟15とで構成される前記組子を配置するとともに同組子における所定の位置(図示中央部右端)に引手板16を配置する。そして、作業者は、これらの横框12a,12b、縦框13a,13b、横桟14、縦桟15および引手板16をタッカー釘により互いに連結し固定する。これにより、框11に横桟14と縦桟15とからなる組子および引手板16が一体的に組み付けられる。
【0027】
次に、作業者は、組子などが組み付けられた框11の表裏面に面材17a,17bをそれぞれ貼り付ける。この面材17a,17bの貼り付け作業は、図示しないプレス機によって行われる。具体的には、作業者は、プレス機のベッド上に面材17a,17bの一方(例えば面材17a)を同面材における裏面を上方に向けてセットする。次に、作業者は、図示しない糊付け機を用いて横桟14と縦桟15とからなる組子の両端面を含む框11の表裏両面に接着剤を塗布した後、同框11をベッド上に載置された面材17aの裏面上に四隅を一致させた状態で載置する。次いで、作業者は、他方の面材である面材17bの裏面を框11側に向けるとともに面材17bの四隅と框11の四隅とを一致させた状態で框11上に載置する。
【0028】
そして、作業者は、プレス機を操作してベッド上にセットされた框11および面材17a,17bに圧力を掛けて、面材17a,17bを框11に貼り付ける。この場合、プレス機は、作業者により予め設定された圧力(例えば2〜5Kg/cm)を面材17a,17bの全面に対して加える。これにより、面材17bが框11の表裏面の一方に押し当てられると同時に、面材17aは框11の表裏面の他方に押し当てられる。この場合、面材17a,17bは、框11に押し当てられることにより、同時に框11の内部に組み付けられた横桟14および縦桟15からなる組子の両端面に押し付けられる。これらにより、面材17a,17bは、横桟14および縦桟15からなる組子を含む框11に貼り付けられる。
【0029】
このプレス加工の後、作業者は、プレス機から面材17a,17bが貼り付けられた框11を取り出して框11の外径を整える。具体的には、作業者は、図示しないパネルソーを用いて面材17a,17bが貼り付けられた框11の端部の仕上がりおよび寸法を整える。次に、作業者は、框11の縁部および框11の外周端面(木口)に戸掾シール20および大手シール21をそれぞれ貼り付けた後、框11に貼り付けられた面材17aの表面に化粧クロス18を貼り付ける。具体的には、作業者は、化粧クロス18の裏面に接着剤を塗布した後、この化粧クロス18面材17aの表面に重ねて載置する。そして、作業者は、引き手19の取り付けなど他の必要な作業を施工して戸襖10を完成させる。なお、この戸襖10の製造工程は、一例を示すに過ぎず、各工程は戸襖10の構成部材の種類や仕様に応じて適宜変更して行われることは当然である。
【0030】
(戸襖10の作動)
次に、このように製造した戸襖10の作動について説明する。前記製造工程によって製造された戸襖10は、家屋の施工者などによって家屋内における部屋と部屋との境界部に設けられた敷居上に設置される。そして、戸襖10の使用者によって敷居上をスライドされることにより、家屋内における部屋と部屋とを仕切ったり繋げたりする。
【0031】
戸襖10が長期間に亘って使用される過程においては、面材17a,17bおよび化粧クロス18の収縮率の相違などにより戸襖10に反りや捩れなどの変形を生じさせる外力が框11などに作用する。しかし、框11は、框11内において45mmの間隔を介して設けた37本の横桟14と、135mmの間隔を介して設けた4本の縦桟15とによって前記外力に抗して形状を維持する。また、一時的に、框11が前記外力によって反ったり捩れたりした場合であっても、横桟14および縦桟15の弾性力によって元の形状に復元される。これらにより、戸襖10における反りや捩れなどの変形を効果的に抑制される。
【0032】
なお、本発明者による戸襖10の変形量を確認する実験結果を図2(A)に示す。この実験は、2つの戸襖10を試料1および試料2として温度の異なる2つの環境化に6日間設置した後の変形量を調べたものである。この場合、変形量は、戸襖10における図2(B)において破線で示した4つの線上にそれぞれ糸を張って戸襖10の表面の凹量および凸量の最大値を測定したものである。この場合、戸襖などのフラッシュパネルの変形の評価においては、図示A−B間の反り量が最も重要であり、このA−B間の反り量が少ないことが求められる。
【0033】
そして、この実験結果によれば、試料1に係る戸襖10においては、反りや捩れの変形が殆ど生じていない。一方、試料2に係る戸襖10においては、A−B間の反り量が最大でも−1.5mmに抑えられている。すなわち、本実験により、本発明に係る戸襖10が、反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することが確認できた。
【0034】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、戸襖10は、四角枠状に形成された框11内において、水平方向に延びる37本の横桟14を垂直方向に45mmの間隔でそれぞれ配置するとともに、垂直方向に延びる4本の縦桟15を水平方向に135mmの間隔でそれぞれ配置して構成されている。一般に、フラッシュパネルにおける框内においては、水平方向に11本の横桟が約130mm前後の間隔でそれぞれ配置されているとともに、垂直方向に3本の縦桟が約190mm前後の間隔でそれぞれ配置されて構成されている。すなわち、本願発明に係る戸襖10においては、従来の横桟の配置間隔の半分以下の間隔で横桟が配置されるとともに、従来の縦桟の配置間隔より短い間隔で縦桟が配置されている。これにより、戸襖10を反らせるおよび/または捩れさせる変形力に抗して戸襖10の形状を維持するとともに、戸襖10に反りや捩れが生じた場合であっても常に元の形状に戻ろうとする復帰力(弾性力)が作用するため、戸襖10における反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができる。
【0035】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、戸襖10は、框11内において水平方向に37本の横桟14を45mmの間隔でそれぞれ配置するとともに、垂直方向に4本の縦桟15を135mmの間隔でそれぞれ配置して構成されている。しかし、框11内に設置する横桟14および縦桟15の設置数やその配置間隔は、戸襖10の大きさや框11の表裏面に貼り付ける面材の種類や数によって適宜設定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。この場合、本発明者の実験によれば、戸襖10を含むフラッシュパネルを構成する框内に、水平方向に12本以上の横桟を70mm以下の間隔でそれぞれ配置するとともに、垂直方向に4本以上の縦桟を150mm以下の間隔でそれぞれ配置することが好適である。
【0037】
また、上記実施形態においては、横桟14を2分の幅で形成するとともに、縦桟15を3分の幅で形成した。しかし、横桟14および縦桟15の各幅は、戸襖10の大きさや框11の表裏面に貼り付ける面材の種類や数によって適宜設定されるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。しかし、本発明者による実験によれば、従来、横桟および縦桟の各幅として一般的に採用されてきた4分(12mm)の幅よりも細く形成することが好適である。具体的には、3分(9mm)以下で形成することによって横桟および縦桟における弾力性が高まり、フラッシュパネルにおける反りや捩れなどの変形を効果的に抑制することができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、框11に貼り合わせる面材17a,17bを木材や木質系部材で構成した。しかし、面材17a,17bは、戸襖10の表面材としての機能、または化粧クロス18や襖紙を貼り付けるための下地材としての機能を備えるものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、面材17a,17bを耐水性を有する紙材で構成することも可能である。この場合、本発明者の実験によれば、紙材からなる面材17a,17bを横桟14および縦桟15からなる組子を含む框11に貼り付けることにより、貼り付け後における面材17a,17bの波うちや弛みなどの変形も効果的に抑制できることを確認している。
【0039】
また、上記実施形態においては、本発明に係るフラッシュパネルとして框11の表裏面に一対の面材17a,17bを貼り合わせた戸襖10を用いて説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、框11の表裏面の一方に面材を貼り合わせて構成したフラッシュパネルにも広く適用できるものである。
【0040】
また、上記実施形態においては、本発明に係るフラッシュパネルを戸襖10に適用した例を用いて説明したがフラッシュ構造からなるパネルであれば、これに限定されるものではない。例えば、建物に用いられるドアや襖などの他の建具、室内空間を仕切る間仕切りまたは家具に用いられる扉などにも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0041】
10…戸襖、11…框、12a,12b…横框、13a,13b…縦框、14…横桟、15…縦桟、16…引手板、17a,17b…面材、18…化粧クロス、19…引き手、20…戸掾シール20、21…大手シール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って互いに平行に延びる2つの横框と垂直方向に沿って互いに平行に延びる2つの縦框とによって四角枠状に形成された框の表裏面のうちの少なくとも一方の面に面材を貼り合わせて構成したフラッシュパネルにおいて、
前記2つの縦框間に、前記横框と平行に12本以上かつ互いに70mm以下の間隔でそれぞれ配置した横桟と、
前記2つの横框間に、前記縦框と平行に4本以上かつ互いに150mm以下の間隔でそれぞれ配置した縦桟とを備えたことを特徴とするフラッシュパネル。
【請求項2】
請求項1に記載したフラッシュパネルにおいて、
前記横桟および前記縦桟は、各幅がそれぞれ3分(約9mm)以下に形成されていることを特徴とするフラッシュパネル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したフラッシュパネルにおいて、
前記横桟は、前記幅が2分(約6mm)に形成されており、
前記縦桟は、前記幅が3分(約9mm)に形成されていることを特徴とするフラッシュパネル。
【請求項4】
水平方向に沿って互いに平行に延びる2つの横框と垂直方向に沿って互いに平行に延びる2つの縦框とによって四角枠状に形成された框の表裏面のうちの少なくとも一方の面に面材を貼り合わせて構成したフラッシュパネルの変形防止方法であって、
前記2つの縦框間に、水平棒体で構成される横桟を、前記横框と平行に12本以上かつ互いに70mm以下の間隔でそれぞれ配置し、
前記2つの横框間に、垂直棒体で構成される縦桟を、前記縦框と平行に4本以上かつ互いに150mm以下の間隔でそれぞれ配置したことを特徴とするフラッシュパネルの変形防止方法。
【請求項5】
請求項4に記載したフラッシュパネルの変形防止方法において、
前記横桟および前記縦桟は、各幅がそれぞれ3分(約9mm)以下に形成されていることを特徴とするフラッシュパネルの変形防止方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載したフラッシュパネルの変形防止方法において、
前記横桟は、前記幅が2分(約6mm)に形成されており、
前記縦桟は、前記幅が3分(約9mm)に形成されていることを特徴とするフラッシュパネルの変形防止方法。

【図1】
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【図2】
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