説明

フラットベルト式走行試験装置

【課題】走行試験を実行しながらローラに付着した摩耗粉等の付着物を除去することが可能なフラットベルト式走行試験装置を提供する。
【解決手段】フラットベルト式走行試験装置100がタイヤの走行試験を行っている状態で、リモートスイッチ32をオン操作する。このオン信号により流体圧シリンダ2204aのピストンロッド2204bを伸長させ、付着物除去部材2202を、退避位置(図1の破線で示す位置)から付着物除去位置(図1の実線で示す位置)に移動させる。すなわち、付着物除去部材2202を、回転している駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aに10kPa〜50kPaの圧力で一定の時間押し付ける。これにより、駆動ローラ12の外周面1202aに付着したタイヤ摩耗粉等の付着物が除去され、駆動ローラ12の外周面1202aを摩耗させることなく清掃することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットベルト式の擬似路面でタイヤの耐久性、タイヤの摩耗性、タイヤの旋回性(コーナリング特性)のようなタイヤの動的特性等の測定に適用されるフラットベルト式走行試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの動的特性等を測定するタイヤ試験装置として、フラットベルト式のタイヤ試験装置が知られている(例えば特許文献1)。
フラットベルト式のタイヤ試験装置は、駆動手段により回転される駆動ドラムと従動ドラムとの間に巻き掛けられた、擬似路面を有するフラットな無端ベルトに、タイヤ支持装置に回転可能に支持された試験用のタイヤを押し付け、無端ベルトを走行させることによりタイヤを回転させ、タイヤの動的特性を測定するようになっている。
【0003】
このようなベルト式のタイヤ試験装置では、駆動ドラムと従動ドラムとの間の無端ベルトは平坦であるため、タイヤが平面と接触することになり、実際の路面にタイヤを接地した場合と、タイヤの接地形状やタイヤの接地圧分布などが近似する。このため、ベルト式のタイヤ試験装置は、タイヤが実際の路面を転動するのと同じ状況が再現でき、タイヤの動的特性の測定精度を上げることができる。
【0004】
ところで、無端ベルトの走行に伴いタイヤが無端ベルト上を転動すると、タイヤには6分力、すなわち、3直交力(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)及び3回転力(X軸周り、Y軸周り、Z軸周り)の力が作用する。この6分力をセンサで検出し、センサから出力される3直交力及び3回転力データに基づいて、タイヤに加えられる荷重やタイヤのコーナリングフォース、タイヤの前後力等の動的特性を取得するようになっている。
【0005】
特にフラットベルト式のタイヤ試験装置において、タイヤのコーナリング試験時などでは、無端ベルトに幅方向の横力が作用する。このため、駆動ドラムと従動ドラムとの間に巻き掛けられた無端ベルトに横ずれが発生する。この横ずれを放置すると、無端ベルトがローラから外れてしまう。したがって、無端ベルトに横ずれが生じた場合は、無端ベルトがローラから外れないようにドラムを制御することで、無端ベルトの横ずれを元に戻すようにしている。このような無端ベルトの横ずれを元に戻すベルト制御装置として、ドラムの軸心を傾斜させるもの(特許文献2)など、様々な構成が知られている。
【0006】
一方、上記特許文献2に示すベルトエッジ制御装置で用いられている渦電流式位置センサに代え、撮像カメラを用いて、駆動ローラと従動ローラとの間に巻き掛けられた無端ベルトの幅方向のエッジ部を撮像し、この撮像画像からローラと無端ベルトのコントラストを利用して、無端ベルトのエッジを検出する方式のものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−3416号公報
【特許文献2】実開平3−57649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フラットベルト式のタイヤ試験装置において、タイヤのコーナリング試験などを行った場合、タイヤの摩耗粉などが飛散し、これが無端ベルトのエッジ部分やローラの端部外周面に付着することが多い。このため、無端ベルトのエッジ部分とローラの端部外周面のコントラストに差異がほとんどなくなってしまう。その結果、撮像カメラを用いて両者のコントラストの差異から無端ベルトのエッジを検出することができない。
従来、このような無端ベルトのエッジを検出できなくなった場合は、タイヤ試験装置を一旦停止し、ローラの保護カバーを取り外した後、駆動ローラを少しずつ回転しながら、撮像カメラが対応するローラに付着した摩耗粉を手作業により除去して、両者の間に明瞭なコントラストを生じさせる必要がある。
しかしながら、上述のような従来の清掃方法では、ローラの清掃作業が煩雑になり、安全性に欠けるほか、タイヤ試験装置を一旦停止するため、試験効率および生産性が低下し、試験コストも上昇するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、走行試験を実行しながらローラに付着した摩耗粉等の付着物を除去することが可能なフラットベルト式走行試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、互いに間隔をおいて平行に配置された駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラと前記従動ローラとの間に巻き掛けられ前記駆動ローラ及び前記従動ローラの長さより短い幅を有する無端ベルトと、前記駆動ローラまたは前記従動ローラの長さ方向の端部の外周面に対向して配置され、前記端部の外周面の予め定められた範囲に前記無端ベルトの幅方向の端部が位置しているか否かを検出する無端ベルト位置検出手段を有し、前記無端ベルト位置検出手段で検出された検出信号に基づいて前記無端ベルトの巻き掛け位置を制御するようにしたフラットベルト式走行試験装置において、前記端部の外周面に付着した付着物を除去する清掃機構が設けられ、前記清掃機構は、前記端部の外周面に接触可能な付着物除去部材と、前記付着物除去部材を前記端部の外周面に一定の圧力で押し付ける付着物除去位置と前記付着物除去部材を前記端部の外周面から離間した退避位置との間で移動させる移動機構とを含んで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるフラットベルト式走行試験装置によれば、走行試験を実行しながらローラに付着した摩耗粉等の付着物を除去し、ローラの外周面を清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明かかるフラットベルト式走行試験装置の第1の実施の形態を示す概略正面図である。
【図2】本発明のフラットベルト式走行試験装置における駆動ローラ及び無端ベルトに対する撮像カメラの配置関係と駆動ローラに対する清掃機構の配置関係を示す概略平面図である。
【図3】本発明かかるフラットベルト式走行試験装置の清掃機構に適用される付着物除去部材の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明にかかるフラットベルト式走行試験装置の第1の実施の形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
フラットベルト式走行試験装置100は、図1に示すように、駆動ローラ12と、従動ローラ14と、無端ベルト16と、流体ベアリング18と、無端ベルト位置検出手段20と、清掃機構22と、制御装置24とを備える。
【0014】
駆動ローラ12と従動ローラ14は、互いに間隔をおいて水平方向に平行に配置され、これら駆動ローラ12及び従動ローラ14は、図2に示す支持機構26にそれぞれの回転軸12A,14Aを介して回転可能に支持されている。また、駆動ローラ12は駆動モータ28により回転駆動される。この駆動モータ28は、制御装置24から出力される制御信号により、その動作、停止、回転速度などが制御される。
制御装置24は、フラットベルト式走行試験装置100を制御するもので、図示しない入出力ポート、処理部、記憶部などにより構成されている。
【0015】
無端ベルト16は、被試験体であるタイヤ転動用の擬似路面を形成するもので、駆動ローラ12と従動ローラ14との間に巻き掛けられている。
無端ベルト16は、駆動ローラ12及び従動ローラ14の長さより短い幅を有している。具体的には、駆動ローラ12の長さ方向の両方の端部1202が無端ベルト16の幅方向の端部1602から突出する長さ寸法は、図2に示すようにLである。また、図示しないが、従動ローラ14においても、その長さ方向の両方の端部が無端ベルト16の幅方向の端部1602から突出する長さ寸法はLである。したがって、駆動ローラ12及び従動ローラ14は、無端ベルト16の幅寸法に長さ2L分加えた長さの外周面を有している。
【0016】
駆動ローラ12と従動ローラ14と無端ベルト16はそれぞれ金属製で、駆動ローラ12及び従動ローラ14の外周面と、無端ベルト16の外表面は、一般的に銀色を呈している。そこで、無端ベルト16の外表面と駆動ローラ12(または従動ローラ16)の外周面との間のコントラストに差を生じさせるために、無端ベルト16の端部1602に、駆動ローラ12の外周面1202aより暗い色、例えば黒色の表面処理1602aが施されている。この場合、黒色の表面処理1602aは、図2の斜線で示したように、無端ベルト16の全長に亘り細幅の帯状に施されている。これにより、後述する撮影画像による無端ベルト16の端部1602と駆動ローラ12(または従動ローラ16)の外周面1202aとの識別を明確にできるようになっている。
【0017】
流体ベアリング18は、無端ベルト16のタイヤ転動用の擬似路面16aに加えられる被試験用タイヤTの荷重を被試験用タイヤTが接触する擬似路面16aと反対の面側から支えるもので、擬似路面16aの下面側で、無端ベルト16の走行方向に沿い擬似路面16aの下面と摺接可能に配設されている。流体ベアリング(水ベアリング)18には、従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0018】
無端ベルト位置検出手段20は、駆動ローラ12の長さ方向の端部1202の外周面1202aの予め定められた範囲に、無端ベルト16の幅方向の端部1602が位置しているか否かを検出するものである。
無端ベルト位置検出手段20は、図1及び図2に示すように、駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aと、この端部1202の外周面1202aに隣接する無端ベルト16の端部1602を含む領域を撮像する撮像カメラ2002と、この撮像カメラ2002で撮像された画像データを基に駆動ローラ12の端部1202と無端ベルト16の端部1602との間の寸法Lを算出し、この算出された距離データが予め定められた閾値(例えば、駆動ローラ12の長さ方向の両方の端部1202が無端ベルト16の幅方向の端部1602から突出する長さ寸法Lの1/2程度に相当する)より大きいか否かを判別する判別処理部2004を有する。この判別処理部2004から出力される判別信号は制御装置24に入力され、無端ベルト16が駆動ローラ12及び従動ローラ14から外れないように駆動ローラ12または従動ローラ14を制御する構成になっている。かかる制御は、ドラムの軸心を傾斜させるもの(特許文献2)など、従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0019】
清掃機構22は、駆動ローラ12の長さ方向の端部1202の外周面1202aに付着したタイヤの摩耗粉等の付着物を除去し、駆動ローラ12の端部寄り外周面1202aと無端ベルト16の端部1602との間のコントラストを明確に維持するものである。
清掃機構22は、図1及び図2に示すように、付着物除去部材2202と移動機構2204とを含んで構成されている。
付着物除去部材2202は、駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aに付着した付着物を除去するものであり、駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aに接触可能に配置されている。
付着物除去部材2202は、無端ベルト16の内側で駆動ローラ12と従動ローラ16とで挟まれたデッドスペースを利用して配置されている。このデッドスペースに付着物除去部材2202を配置すると、付着物除去部材2202は、走行移動する無端ベルト16から離れた箇所に位置するため、無端ベルト16との接触による付着物除去部材2202の損傷を防止し、耐久性を高める上で有利となる。
なお、付着物除去部材2202は定期的に交換され、あるいは、清掃に支障をきたす程度に汚れた際に適宜交換される。
【0020】
移動機構2204は、付着物除去部材2202を駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aに一定の圧力で押し付ける付着物除去位置(図1の実線で示す位置)と、付着物除去部材2202を駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aから駆動ローラ12の半径方向外側に離間した退避位置(図1の破線で示す位置)との間で移動させるものである。
前記一定の圧力は、10kPa〜50kPaであることが望ましい。かかる圧力は、後述する移動機構2204の流体圧シリンダによって付与される。上記圧力を10kPa〜50kPaの範囲に設定した理由は次の通りである。すなわち、駆動ローラ12の外周面1202aに付着する付着物は、タイヤの摩耗粉でありゴム組成物であることから、外周面1202aに一旦付着すると簡単に除去し難く、付着物除去部材2202の摺接圧力が10kPaを下回る圧力であると、外周面1202aに付着した摩耗粉を除去できない不具合があるためである。また、付着物除去部材2202の摺接圧力が50kPaを超える圧力であると、駆動ローラ12の外周面1202aを摩耗させる虞があるためである。
【0021】
移動機構2204は、図2に示すように、支持機構26にピン2602により一端部が揺動可能に連結された流体圧シリンダ(アクチュエータ)2204aと、この流体圧シリンダ2204aの他端から伸縮可能に突出されるピストンロッド2204bと、ピストンロッド2204bの突出側で支持機構26にピン2204cを介して揺動可能に支持されたレバー2204dとを含んで構成されている。レバー2204dの一端はピストンロッド2204bの突出端に揺動可能に連結されている。そして、駆動ローラ12の端部1202の外周面1202a側へ延在するレバー2204dの他端には、付着物除去部材2202を着脱可能に保持する保持具2202aが揺動可能に連結されている。また、流体圧シリンダ2204aには、そのピストンロッド2204bを伸縮動作させて付着物除去部材2202を付着物除去位置(図1の実線で示す位置)と退避位置(図1の破線で示す位置)に移動させる油圧または空気圧からなる流体圧供給装置30が接続されている。
【0022】
さらに、移動機構2204を遠隔作動するリモートスイッチ32が設けられている。このリモートスイッチ32は、フラットベルト式走行試験装置100が設置された試験室内でフラットベルト式走行試験装置100から離れた箇所または試験室外に設置される。リモートスイッチ32を設けることで、回転する駆動ローラ12、従動ローラ14や、走行駆動される無端ベルト16から離れた箇所で、安全に清掃機構22を遠隔操作できるように図られている。
リモートスイッチ32は、駆動ローラ12の外周面に付着される付着物の付着状況に応じて手動でオン・オフ操作され、そのオン信号またはオフ信号で流体圧供給装置30を制御することにより、付着物除去部材2202を付着物除去位置(図1の実線で示す位置)及び退避位置(図1の破線で示す位置)に移動させ、駆動ローラ12の外周面を随時清掃できるようになっている。
【0023】
付着物除去部材2202は、ブラシまたはスポンジにより構成される。
付着物除去部材2202をブラシで構成する場合は、図3(a)に示す直線ブラシ50が挙げられる。直線ブラシ50は、直線状の把持部材5002の長さ方向に沿って形成した溝5004に一定長さの刷毛5006の基部を差し込んで固着したものである。
このような直線ブラシ50は、把持部材5002の両端部に形成された取付孔5008を利用して、上述の清掃機構22に保持具2202aを介して装着される。
【0024】
また、付着物除去部材2202をブラシで構成する他の例としては、図3(b)に示すように、ロールブラシ60が挙げられる。ロールブラシ60は、棒状の把持部材6002の外周に一定長さの刷毛6004を把持部材6002の長さ方向に沿い螺旋状に植設したものである。
このようなロールブラシ60は、把持部材6002の一端部6002aが上述の清掃機構22に保持具2202aに回転可能に支持され、清掃時に駆動ローラ12の端部の外周面1202aに押し付けられ、外周面1202aの回転に伴って回転される。
【0025】
直線ブラシ50及びロールブラシ60の刷毛材には、化学繊維、導電性繊維、動物繊維、植物繊維の何れか、もしくはこれら繊維に研磨砥粒が配合されたものが使用される。
ブラシの刷毛材として導電性繊維を用いると、駆動ローラ12、従動ローラ16、疑似路面16aへの帯電防止の点で有利となる。
また、ブラシの刷毛材として研磨砥粒が配合されたものを用いると、駆動ローラ12の外周面の損傷を防止しつつ付着物をより効果的に除去する上で有利となる。
また、駆動ローラ12または従動ローラ16の長さ方向に沿った直線ブラシ50及びロールブラシ60の長さL2は、5cm乃至10cmの範囲であることが望ましい。その理由は、長さL2が5cmを下回ると、許容される無端ベルト16の横ずれ移動範囲に満たない可能性があり、また、長さL2が10cmを超えても許容される無端ベルト16の横ずれ移動範囲が10cmを超えることがなく無駄になるためである。
【0026】
付着物除去部材2202を構成するスポンジには、図3(c)に示すように、厚さを有する矩形の平板状を呈するスポンジ材70が使用される。
このようなスポンジ材70として、例えば、商品名「スコッチ・ブライト」(住友スリーエム株式会社)などの市販品が使用可能である。この市販品は、ナイロン不織布に研磨砥粒を配合したものである。研磨砥粒が配合されたスポンジ材70を用いると、駆動ローラ12の外周面の損傷を防止しつつ付着物をより効果的に除去する上で有利となる。
また、駆動ローラ12または従動ローラ16の長さ方向に沿ったスポンジ材70の幅D2は、5cm乃至10cmの範囲であることが望ましい。その理由は、上記ブラシの場合と同様である。
【0027】
上記のように構成されたフラットベルト式走行試験装置100は、図1に示すように、タイヤTの動的特性を測定するためにタイヤTを無端ベルト16の擬似路面16aに接触させる周知のタイヤ支持装置34を備える。
タイヤ支持装置34は、タイヤTが無端ベルト16の擬似路面16aと接する基準点Oを支点にして無端ベルト16の長さ方向である前後方向及び無端ベルト16の幅方向である左右方向に揺動可能に設けられた枠体36と、枠体36に鉛直方向に移動可能にかつ鉛直方向の軸回りに回転可能に支持された軸38に連結され、タイヤTを回転可能に支持するタイヤ回転軸40と、軸38を図1の矢印A方向に回転させることでタイヤTのスリップ角を変更するスリップ角変更手段42と、タイヤTに作用する6分力を検出する6分力センサ44を有するほか、周知の荷重変更手段やキャンバー角度変更手段(何れも図示せず)等を備える。また、無端ベルト16が図1の矢印B方向に走行されることにより、タイヤTが図1の矢印C方向に転動されるように構成されている。
なお、タイヤ回転軸40に駆動モータを連結し、タイヤTを回転できるようにすることも無論可能である。
【0028】
スリップ角変更手段42、6分力センサ44、荷重変更手段やキャンバー角度変更手段等は制御装置24に接続されている。
スリップ角変更手段42は、制御装置24から出力されるスリップ角度制御信号によりタイヤのスリップ角度の大きさ、向きなどを制御する。
6分力センサ44は、タイヤに作用する3直交力(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)及び3回転力(X軸周り、Y軸周り、Z軸周り)検出し、この6分力センサ44から制御装置24に出力される3直交力及び3回転力データに基づいて、タイヤに加えられる荷重やタイヤのコーナリングフォース、タイヤの前後力等の動的特性を取得する。
荷重変更手段は、タイヤTに加わる荷重を変更するもので、制御装置24から出力される荷重制御信号により、タイヤに加わる荷重などを制御する。
キャンバー角度変更手段は、制御装置24から出力されるキャンバー角度制御信号により、タイヤTのキャンバー角度の大きさ、向きなどを制御する。
【0029】
次に、本実施の形態に示すフラットベルト式走行試験装置100において、駆動ローラ12の外周面を清掃する場合の動作について説明する。なお、図1及び図2では、付着物除去部材2202にスポンジを用いた場合を示している。
まず、フラットベルト式走行試験装置100がタイヤの走行試験を行っている状態で、リモートスイッチ32をオン操作する。このオン信号により流体圧供給装置30を動作させ、その流体圧を流体圧シリンダ2204aに供給することにより、流体圧シリンダ2204aのピストンロッド2204bを伸長させる。これに伴い、図2に示すレバー2204dがピン2204cを支点にして反時計周りに回動されると共に、スポンジからなる付着物除去部材2202を、退避位置(図1の破線で示す位置)から付着物除去位置(図1の実線で示す位置)に移動させる。そして、付着物除去部材2202を、回転している駆動ローラ12の端部1202の外周面1202aに10kPa〜50kPaの圧力で一定の時間押し付ける。これにより、駆動ローラ12の外周面1202aに付着したタイヤ摩耗粉等の付着物が除去され、駆動ローラ12の外周面1202aを摩耗させることなく清掃することができる。
【0030】
また、駆動ローラ12の外周面1202aが清掃されたならば、リモートスイッチ32をオフ操作する。これに伴い、流体圧供給装置30から流体圧シリンダ2204aに対して、そのピストンロッド2204bを後退させる方向に流体圧が供給されるため、付着物除去部材2202は駆動ローラ12の外周面1202aから離間し、付着物除去位置(図1の実線で示す位置)から図1の破線で示す退避位置に移動されることで、駆動ローラ12の外周面1202aに対する清掃が終了する。
【0031】
このようなフラットベルト式走行試験装置100によれば、タイヤの走行試験を実行しながら駆動ローラ12の外周面1202aに付着した摩耗粉等の付着物を除去することができる。これにより、従来のようにフラットベルト式走行試験装置を停止したり、ローラカバーを取り外したりする必要がなくなるため、駆動ローラ12の清掃作業が容易かつ簡便になり、安全性も確保できるほか、タイヤの試験効率及び生産性が向上し、試験コストを低減することができる。
【0032】
また、本実施の形態に示すフラットベルト式走行試験装置100によれば、駆動ローラ12の外周面1202aを清掃機構22により清掃できるため、無端ベルト16の端部1602と駆動ローラ12の外周面1202aとのコントラスト差を確保でき、撮像カメラを用いて両者のコントラストの差異から無端ベルトのエッジを確実に検出することができる。さらに、無端ベルト16の端部1602に、駆動ローラ12の外周面1202aより暗い黒色の表面処理1602aが施されているため、撮像カメラによる無端ベルト16の端部1602と駆動ローラ12の外周面との識別をより明確に行うことができる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、移動機構2204を含めた清掃機構22の操作に、リモートスイッチ32を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フラットベルト式走行試験装置100の一定の稼働時間毎に制御装置24により移動機構2204を含む清掃機構22を一定時間稼動して、駆動ローラ12の外周面1202aを自動的に清掃することも可能である。
また、撮像カメラ2002で撮像された画像データから駆動ローラ12の外周面に付着される付着物の付着状況をローラ外周面のコントラストの差異に基づいて、上述の判別処理部2004とは別のコントラスト判別処理部(図示せず)で判別し、コントラストの差異が予め定められた閾値より大きいと判別された際に清掃機構22を一定時間稼動して、駆動ローラ12の外周面1202aを自動的に清掃することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
100……フラットベルト式走行試験装置、T……タイヤ、12……駆動ローラ、1202……端部、1202a……外周面、14……従動ローラ、16……無端ベルト、1602……端部、18……流体ベアリング、20……無端ベルト位置検出手段、2002……撮像カメラ、2004……判別処理部、22……清掃機構、2202……付着物除去部材、2204……移動機構、24……制御装置、34……タイヤ支持装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて平行に配置された駆動ローラ及び従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラとの間に巻き掛けられ前記駆動ローラ及び前記従動ローラの長さより短い幅を有する無端ベルトと、
前記駆動ローラまたは前記従動ローラの長さ方向の端部の外周面に対向して配置され、前記端部の外周面の予め定められた範囲に前記無端ベルトの幅方向の端部が位置しているか否かを検出する無端ベルト位置検出手段を有し、
前記無端ベルト位置検出手段で検出された検出信号に基づいて前記無端ベルトの巻き掛け位置を制御するようにしたフラットベルト式走行試験装置において、
前記端部の外周面に付着した付着物を除去する清掃機構が設けられ、
前記清掃機構は、前記端部の外周面に接触可能な付着物除去部材と、前記付着物除去部材を前記端部の外周面に一定の圧力で押し付ける付着物除去位置と前記付着物除去部材を前記端部の外周面から離間した退避位置との間で移動させる移動機構とを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項2】
さらに、前記移動機構を遠隔作動させるリモートスイッチを備えることを特徴とする請求項1記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項3】
前記付着物除去部材は、前記無端ベルトの内側で前記駆動ローラと従動ローラとで挟まれた空間に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項4】
前記一定の圧力は、10kPa〜50kPaであることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項5】
前記付着物除去部材は、ブラシまたはスポンジであることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項6】
前記ブラシは直線ブラシまたはロールブラシからなり、当該ブラシの刷毛材は化学繊維、導電性繊維、動物繊維、植物繊維の何れか、もしくはこれら繊維に研磨砥粒が配合されたものであり、前記スポンジはナイロン不織布に研磨砥粒が配合されたものであることを特徴とする請求項5記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項7】
前記スポンジは厚さを有する矩形の平板状を呈し、前記駆動ローラまたは従動ローラの長さ方向に沿った前記平板状のスポンジの幅は5cm乃至10cmの範囲であり、前記駆動ローラまたは従動ローラの長さ方向に沿った前記直線ブラシまたはロールブラシの長さは5cm乃至10cmの範囲であることを特徴とする請求項6記載のフラットベルト式走行試験装置。
【請求項8】
前記無端ベルト位置検出手段は、前記駆動ローラまたは前記従動ローラの長さ方向の端部の外周面と、該端部の外周面に隣接する前記無端ベルトの幅方向の端部を含む領域を撮像する撮像カメラと、前記撮像カメラで撮像された画像データを基に前記駆動ローラまたは前記従動ローラの長さ方向の端部と前記無端ベルトの幅方向の端部との間の距離を算出し、前記算出された距離データが予め定められた閾値より大きいか否かを判別する判別処理部を有することを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載のフラットベルト式走行試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163469(P2012−163469A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24812(P2011−24812)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)