説明

フラット照明用の部材

【課題】本発明は、少なくとも1つの有機発光ダイオードがそれぞれの環境に対して完全に密閉され、好適にはハウジングを用いて達成可能であるフラット照明用の部材に関する。
【解決手段】その際に設定された課題に基づき、防湿と組み合わせた光学特性の向上が達成される。本発明による部材では、1つ又は複数の発光ダイオードから放射された電磁放射線が光透過性部材から出射する。この光透過性部材は、少なくとも1つの乾燥材を含む層を内部に備える。さらに単独で、又は補足的に乾燥材を埋め込んだマトリックスの形態の光透過部材を備えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの有機発光ダイオードが、例えばハウジング内に格納されてそれぞれの環境に対して完全に密閉されるフラット照明用の部材に関する。しかし密閉は、例えばフォイル又はフォイル外皮で形成される、少なくとも一部が可撓性の構造体内で行われることもできる。さらに、特に面積が大きい照明を達成するために複数の有機発光ダイオードを使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物をベースにしたエレクトロルミネッセンスの効果はかなり以前から知られている。しかしその効率は有効利用が可能になった80年代後半になってようやく高めることができるようになった。
【0003】
現在では有機発光ダイオード(OLED)はいわゆる情報表示用のサブディスプレイの分野で使用されている。明らかに、更に大型のディスプレイへの利用は近い将来に可能になる。
【0004】
有機発光ダイオードを使用した照明の更に別の用途は近い将来に開発することが可能である。それはフラット拡散照射用又はフラット拡散照明用の照明部材にも当てはまる。
【0005】
そこでこのようなOLEDの使用に際して光学的な、及びその他の条件が考慮されなければならない。
【0006】
その際に、一方ではスポット光源としての個々の有機発光ダイオードの統合を、また湿気に対する脆弱性も考慮する必要がある。
【0007】
そこで湿気、特に水を適宜の形態で吸収し、ハウジング内に格納された有機発光ダイオードを湿気による直接的な影響から防護し、それに応じて使用可能な寿命を延ばす有機発光ダイオード乾燥材を有するシステム又は装置を使用することが既知である。
【0008】
そこで欧州特許第1 143 539 A2号から有機発光ダイオードを光透過性の基板上に配置することが既知である。その後、有機発光ダイオードはハウジング内に封入され、環境に対して密閉される。ハウジングの壁には湿気を吸収可能な乾燥材を含む層が形成される。この層の機能はそれだけである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に基づき、本発明の目的は、防湿性と組み合わせて補足的に光学特性の改善を達成する、有機発光ダイオードを使用したフラット照明用の部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、本発明により、特許請求の範囲第1項の特徴を備える部材によって解決される。
【0011】
有利な実施形態及びさらなる改良は従属請求項に記載の特徴によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による部材は、少なくとも1つの有機発光ダイオードが、例えばハウジング内に格納されてそれぞれの環境に対して完全に密閉されるように形成される。しかし密閉は可撓性フォイルでも達成することができる。1つ又は複数の有機発光ダイオードは従来の形態で電気的に接続されるので、電磁放射線は可視光線の少なくとも一部の領域で放射される。放射線はウィンドウと呼ぶこともできる光透過部材を通して出射し、フラット照明用に使用することができる。
【0013】
代替の実施形態では、光透過性部材はハウジングの内部に位置する表面に、乾燥材を含む少なくとも1つの層を備えることができる。
【0014】
さらに光透過性部材を単独で、又は補足的に、乾燥剤が内部に埋め込まれたマトリックスで形成することもできる。
【0015】
乾燥材は細孔質、メソ多孔質又はマクロ多孔質であってもよく、選択によって湿気吸収及び光学的機能に関して最適化することができる。
【0016】
このように乾燥材によって面積が比較的広い領域で、散乱する拡散並びに均一な照射及び照明を達成可能である。
【0017】
乾燥材として、好適には例えばゼオライトのような、通常は分子篩を形成する材料を使用することができる。その際に異なるゼオライトを1つの層又は複数の層内に含むか、又は埋め込むことができる。
【0018】
別の適切な乾燥材は、例えばカルシウム又はバリウムのようなアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物又はハロゲン化物であることができよう。さらに、乾燥材として、燐酸化物を使用することができる。
【0019】
乾燥材、特にゼオライトは液体吸収能力を高めるため使用前に焼き出し工程によって熱により、又は負圧の作用により活性化させる必要がある。
【0020】
1つ又は複数の乾燥材を埋め込むにはマトリックス用に例えば液化ポリマー又はコポリマー(ポリイミド、ポリスルフォン、PMMA、ポリエチレン、ポリスチロール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、又はPVC)のような有機化合物を単独で、又は混合して使用することができる。
【0021】
その際にマトリックスは多孔質であってもよいので、孔も拡散する光散乱に影響を及ぼすことができる。
【0022】
それによって乾燥材内に埋め込まれた可撓性フォイルを製造し、これを本発明による部材に透明な光学部材として、又は透明な光学部材と共にも使用することができる。さらに複数のこのようなフォイル又は層を重ねて配置することもできる。
【0023】
これらのフォイルは、例えばマトリックスを形成する物質又はマトリックスを含む乾燥材(複数可)のような異なる構成にすることもできる。そこでフォイル、層また光透過部材の場合に、液体吸収能力に有利な影響を及ぼすように段階的な、又は傾斜した透湿性を保つことができる。
【0024】
好適には結晶質の乾燥材によって電磁放射線の拡散作用に影響を及ぼすことができる。
【0025】
乾燥材の他に光学特性に影響を及ぼすため少なくとも1つの別の物質を利用することもできる。
【0026】
このような1つ又は複数の別の物質によって、部材から出射する電磁放射線のカラー(Farbung)に影響を及ぼすことができる。このように波長スペクトルの少なくとも特定の一部分が吸収され、ひいては光フィルタの機能をも果たすことができる。
【0027】
電磁放射線から、出射する面積全体にわたるむらのない光学的印象を呈するようにするため、このような物質は層全体に、マトリックス内に、乾燥材内に、及び、適宜の層が積層されるか、又はマトリックスが載置される光透過部材内にできるだけ均一に配分されることができる。
【0028】
さらに多色照射又は光学的情報伝達が可能であるように、事前に選択された特定の領域がこのような別の物質を含むことも可能である。
【0029】
別の物質として酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、又は炭化物が使用される。その具体例は酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム又は二酸化珪素である。
【0030】
少なくとも1つの乾燥材を含む層が積層されるか、又は乾燥材を含むポリマーマトリックスと組み合わせて使用可能である光透過部材には、ガラス又はその他の光透過性ポリマー、すなわちマトリックスの形成に関して前述したようなポリマーを使用することができる。
【0031】
層形成又はマトリックス形成には例えばポリマー、オリゴマー、ベンゾール若しくはその誘導体又はシクロへキサンのような無水液或いはゲルを使用することもできる。
【0032】
本発明による照明用部材は、有機発光ダイオード(複数可)から放射された電磁放射線の少なくとも20%を透過する。すなわちこの放射線の少なくとも20%が出射し、照明用に利用できる。
【0033】
本発明により達成可能な前述の作用の他に、電磁放射線の減結合を向上させるために光の屈折率にも影響を及ぼすことができる。
【0034】
分子篩の場合は、カラー効果、カラー調整又は物質若しくは分子(たとえば酸素)の意図的な吸収を達成するため、例えば好適には分子篩のケージ内に分子を組み込むことによって内表面及び/又は外表面を機能的にすることができる。この分子の組み込みは、好適にはマイクロ波主導合成(Mikrowellen initiierte Synthese)によって達成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機発光ダイオードがそれぞれの環境に対して完全に密閉され、該有機発光ダイオード(複数可)から放射される電磁放射線が光透過部材を通って出射するフラット照明用の部材であって、該光透過部材は内部に少なくとも1つの乾燥材を含む層を備え、且つ/又は内部に乾燥材が埋め込まれたマトリックスの形態で形成されることを特徴とする、フラット照明用の部材。
【請求項2】
前記乾燥材は細孔質、メソ多孔質又はマクロ多孔質であることを特徴とする、請求項1に記載のフラット照明用の部材。
【請求項3】
前記乾燥材は分子篩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフラット照明用の部材。
【請求項4】
前記乾燥材はゼオライトであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項5】
前記乾燥材はアルカリ土類金属若しくはアルカリ金属の酸化物又はハロゲン化物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項6】
前記有機発光ダイオード(複数可)はハウジング内に格納されるか、又は可撓性フォイルによって密閉されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項7】
前記乾燥材は事前に活性化されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項8】
前記乾燥材は有機マトリックス内に埋め込まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項9】
前記光透過部材は可撓性フォイルであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項10】
光透過部材、光透過性部材上の層、又はマトリックスの内部に少なくとも1つの別の物質が含まれるか、又は埋め込まれることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項11】
前記別の物質は電磁放射線の一部を吸収することを特徴とする、請求項10に記載のフラット照明用の部材。
【請求項12】
別の物質は一部の領域だけに含まれるか、又は埋め込まれることを特徴とする、請求項10又は11に記載のフラット照明用の部材。
【請求項13】
前記別の物質は酸化物、珪酸塩、炭酸塩、炭化物又は燐酸塩であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項14】
マトリックスは多孔質であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項15】
乾燥材を含む少なくとも1つの層を備える光透過部材はガラス又は光透過性ポリマーから形成されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項16】
無水液又はゲルを含む層が形成されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。
【請求項17】
前記有機発光ダイオード(複数可)から放射される電磁放射線の少なくとも20%が前記光透過性部材を通って出射することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載のフラット照明用の部材。

【公開番号】特開2007−115681(P2007−115681A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281075(P2006−281075)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(504323294)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァー フェーデルング デア アンゲバンテン フォルシュング エー ファー (2)
【Fターム(参考)】