フランジにおける開口および隣接欠陥を補修する方法および装置
【課題】前側インナーノズルサポートなどの部品のフランジに位置する小径孔を補修する方法、装置を提供する。
【解決手段】部品14の開口および隣接欠陥を補修する方法は、まず母材の開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が除去される。母材の除去は、開口の高応力集中領域を超えて延びる溶接シームを生成するようになされる。開口に隣接して除去された母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材34と、インサート材34を取り囲む組合せトップ・ランオフ板24とが設けられる。裏当て板36が、溶接中に組合せ板24が裏当て板36に融着するのを防ぐ空隙48が裏当て板36と組合せ板24との間に生じるように、組合せ板24およびインサート材34の下方に挿入される。インサート材34が母材に溶接され、裏当て板36が取り外される。補修開始前の開口の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口を得るためにインサート34から余分の材料が除去される。
【解決手段】部品14の開口および隣接欠陥を補修する方法は、まず母材の開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が除去される。母材の除去は、開口の高応力集中領域を超えて延びる溶接シームを生成するようになされる。開口に隣接して除去された母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材34と、インサート材34を取り囲む組合せトップ・ランオフ板24とが設けられる。裏当て板36が、溶接中に組合せ板24が裏当て板36に融着するのを防ぐ空隙48が裏当て板36と組合せ板24との間に生じるように、組合せ板24およびインサート材34の下方に挿入される。インサート材34が母材に溶接され、裏当て板36が取り外される。補修開始前の開口の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口を得るためにインサート34から余分の材料が除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジン構成要素の補修に関し、特に、前側インナーノズルサポートのような部品のフランジに位置する小径孔の補修に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンの運転中、前側インナーノズルサポートが損傷することがある。通常運転中に生じた傷および表面欠陥に対して、補修がなされねばならない。1つの一般的な補修は、前側インナーノズルサポートの前側フランジの小径孔から生じるクラックに対するものである。
【0003】
大径孔、例えば、約0.30インチ以上の直径を有するボルト孔などを補修する多くの技術が、当技術分野において知られている。図1に示されるように、このような1つの従来技術による補修では、孔11の径方向の中心線RCの両側の約45°の線に囲まれた領域が、除去される。次いで、この材料は、補修される部品の母材と同様の材料からなるウエッジ材13と置き換えられる。ウエッジ材13は、互いに略90°の角度で開いた少なくとも2つの側面17,19を含む。ウエッジ材の残りの幾何学的な形状は、補修にとって重要ではなく、残っている側面21は、さまざまな形状および角度を有することができる。この略直角のコーナが、除去された母材の領域内に挿入され、部品の残っている母材の縁23,25と嵌合する。ウエッジ材13は、3枚のランオフ板27,29,31によって包囲される。加えて、裏当て板が補修に用いられてもよい。従って、5つの別個の断片が、補修を開始するのに必要とされる。ウエッジ材13およびランオフ板27,29,31は、補修を開始する前に、タック溶接部33によって取り付けられる。複数のランオフ板27,29,31は、小さく、ウエッジ材13の周囲に組み立てるのが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の補修では、ウエッジ材13は、元の母材から略45°の溶接部によって、適切な位置に溶接される。この構成では、溶接部によって、溶接材料(材料特性が劣化した溶接区域)は、孔位置の最も高い応力領域の外に移行する。これによって、(母材の特性を有する)取換えウエッジ材の素材が、最も高い応力領域に位置する。孔の周囲の最も高い応力領域は、互いに略90°離間した個所に位置する。この補修は、約0.30インチの直径までの孔に対して良好であるが、より小さな孔の場合、ウエッジ材が小さいので、このウエッジ材を保持するのに用いられる溶接部がフランジの最も高い応力領域内に延びることになる。本発明以前には、フランジの小径孔(すなわち、約0.30インチ以下の直径を有する孔)の補修は、不可能と見なされていた、従って、小径孔の補修が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、部品における開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。この方法では、まず、母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が除去される。この母材の除去は、開口の高応力が集中する領域を超えて延びる溶接シームを生成するように、なされる。開口に隣接して除去された母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材と、このインサート材を包む組合せトップ・ランオフ板とが、設けられる。裏当て板が、溶接過程中に組合せトップ・ランオフ板が裏当て板に融着するのを防ぐ空隙が裏当て板と組合せトップ・ランオフ板との間に生じるように、組合せトップ・ランオフ板およびインサート材の下方に挿入される。インサート材が母材に溶接され、裏当て板が取り外される。補修を開始する前の孔の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口を得るために、インサート材から余分の材料が除去される。
【0006】
他の実施形態では、本発明は、第1のフランジにおける開口に隣接する欠陥を補修するのに用いられる装置に関する。第1のフランジは、第2のフランジと平行である。この装置は、第1のフランジにおける開口に隣接して除去された材料の輪郭に対応するインサート材と、このインサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板とを有する。インサート材は、組合せトップ・ランオフ板を構成する元の材料片から作製される。この装置は、第2のフランジと組合せ板およびインサート材との間に配置される裏当て板も有する。裏当て板は、第1のフランジと第2のフランジとの間の厚みよりも小さい厚みを有する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。この方法では、開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が、開口に隣接する母材から円弧状に除去される。母材の除去された円弧状の部分に対応する輪郭を有するインサートが、母材に溶接される。この溶接は、単一の湾曲経路に沿って、なされる。次に、補修前の開口および周囲部分におけるのと本質的に同一の寸法を有する補修された開口および周囲部分を生成するために、インサートが除去される。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去することによって、開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。開口に隣接して除去された母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材と、このインサート材を包む組合せ板とが、設けられる。インサート材が母材および組合せ板に溶接され、補修を開始する前におけるのと本質的に同一の輪郭を有する開口および周囲部分を得るために、インサート材および組合せ板から材料が除去される。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、フランジにおける開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。まず、フランジにおける開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が除去される。インサートプラグおよびランオフ板が、単一の材料片から形成される。ランオフ板が、インサートプラグを包む。ランオフ板は、フランジの現存する母材にタック溶接され、インサートプラグは、フランジの母材およびランオフ板に溶接される。最終的に、補修を開始する前の開口およびフランジの輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口およびフランジを得るために、インサートプラグおよびランオフ板から、材料が除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、高圧タービンの二重環状燃焼器(dual annular combustor)(DAC)の前側インナーノズルサポート10の透視図である。ノズルサポート10は、外径フランジ14の周りに周方向に離間した一連の小径孔12を含む。孔12は、付加的な部分をフランジに取り付ける小径ピンまたは小径ボルトを受け入れるのに用いられる開口である。図2Aは、フランジ14の1つの小径孔12のクラック16を示すノズルサポート10の拡大図である。クラック16は、典型的には、孔12から径方向外方に伝播する。これまで、ノズルサポート10の小径孔12のクラック16は、補修不能であった。
【0011】
図3は、フランジ14における孔12に隣接する欠陥16を示す平面図である。孔12は、他の物をノズルサポート10に固定するピンまたはボルトを受け入れることができる、フランジ14を貫通する開口である。図示の実施例では、孔12は、円形であるが、他の開口輪郭も考えられる。孔12は、欠陥が開口に隣接して検出されたときにこれまでは補修不能であった、約0.30インチ未満の直径を有する小径開口である。
【0012】
フランジ14は、耐熱性母材から構成される。この母材は、ニッケル基またはコバルト基超合金などの超合金やガスタービン業界において一般的なその他の合金である。合金の例として、インコネル 718(Inconel7 718)(IN718)、IN617、IN625、Ti6Al4V、および他のチタン合金、Al6061およびAl4043、Waspaloy、Astroloy、Udimet7 500、およびHA230が挙げられる。クラック16は、フランジ14の孔12から外面に作用することが多い熱応力によって生じる。
【0013】
図4は、フランジ14の除去される部分18を示す平面図である。フランジ14の部分18は、当業者に知られている一般的な材料除去技術、例えば、レーザ切断またはレーザ加工によって、切除される。部分18は、孔12を完全に除去することなく、孔12の直径を通る軸を中心とする放物線状に除去されるべきである。材料は、フランジ14の上面と直交する切断によって除去される。材料を放物線状または同様の形状に除去することによって、欠陥を除去すると共に、取付け面を孔12に隣接する高応力区域の外側にもたらすことができる。典型的には、孔のフランジ外縁に最も近い位置または孔のフランジ外縁と直交する位置、およびその位置から90°、180°、および270°ずれた領域が、最も高い応力を含む(図2AのA、B、C,Dを参照)。溶接シームがこれらの領域間(略45°、135°、225°、315°)にある補修を行なうことによって、溶接部は、孔12を囲む高応力区域の外に移行する(図2AのE,F,G、Hを参照)。溶接部を孔12の周囲の高応力区域の外に移すことによって、前述した大きな孔を補修する場合におけるのと同様の溶接部が得られる。これによって、補修部品に対して、良好な疲労寿命がもたらされる。
【0014】
図5は、部分18が除去されたフランジ14を示す平面図である。部分18の除去によって、下側フランジ20が露出している。部分18が除去され、孔12の小さい円弧22のみが残っている。この残っている円弧22は、補修された孔をフランジ14の元の孔12の位置と同一の位置に公称的に配置させることを確実にするように補修を完了させるためのガイド・位置表示として作用する。下側フランジ20は、フランジ14と平行の構造物であり、スロット15が、前側インナーノズルサポートの基部の周りに周方向に延びる2つのフランジ14,20間に存在する(図2,図2Aを参照されたい)。
【0015】
図6は、フランジ14に取り付けられた組合せ板24(すなわち、組合せトップ・ランオフ板)を示す平面図である。組合せ板24は、組合せ板24の縁がフランジ14の外縁と接触する個所にタック溶接部26、28を設けることによって、フランジ14に取り付けられる。タック溶接部26,28は、組合せ板24を一時的に所定位置に保持する。また、タック溶接部は、後の工程において、組合せ板24を取り外すために、フランジ14を損傷させることなく、容易に除去される。組合せ板24は、フランジ14の母材と同一の材料から作製されてもよいし、共通する冶金学的な性質を有する材料から作製されてもよい。実施例では、組合せ板24は、中心部が除去され、下側フランジ20を露出させるが、円弧22を覆っている。代替の実施例(図示せず)では、組合せ板24は、円弧22を覆っていない。
【0016】
図7は、タック溶接部30,32を介して組合せ板24に取り付けられたインサート34を示す平面図である。これらのタック溶接部30,32は、最終的な溶接プロセスが行なわれるまで、インサート34を所定位置に保持する。インサート34は、好ましくはフランジ14の母材と同一の材料または同一の冶金学的な性質を有する材料からなるプラグである。インサート34は、すでに除去されたフランジ14の部分18(図4を参照)の縁に対して配置され、かつ組合せ板24の開口の形状と嵌合するように、寸法決めされる。図示される実施例では、インサート34は、円形である。円形として示されているが、インサート34は、楕円状、ビスケット状(biscuit shaped)であってもよく、あるいはフランジ14の除去された材料18の輪郭と一致する円弧状の部分を有してもよい。溶接が完了すると、これらのタック溶接部30,32は、最終的な補修溶接部に取り込まれる。
【0017】
実施例では、組合せ板24は、補修される孔12の直径よりも大きい。実施例では、組合せ板24は、元の孔12(図2)の直径の少なくとも2倍の長さ(フランジ14の外縁と略平行な両辺間の測定値)を有し、孔12の直径の少なくとも2倍の幅(フランジ14の外縁と略直交する両辺間の測定値)を有する。組合せ板24の前述の寸法によって、インサート34の良好な支持を確実とし、タック溶接部26,28をインサート34の周囲の補修溶接部から十分に離して配置させることができる。
【0018】
図8は、組合せ板24およびインサート34の下方に配置された裏当て板36を示す平面図である。裏当て板36は、組合せ板24およびインサート34を構成するのに用いられる金属と同様の金属から作製されるとよい。代替の実施例では、裏当て板36は、異なる金属またはセラミックのような耐熱材料から構成される。図8において、裏当て板36は、組合せ板24よりも大きい寸法を有するとして示されているが、補修溶接がなされる個所の下方の領域を覆う限り、組合せ板24より小さくてもよい。組合せ板24よりも大きい場合、裏当て板36は、溶接の溢流またはスパッタから隣接領域を保護すると共に、下側フランジ20が電子ビームまたは同様の溶接源によって貫通されるのを防ぐ。
【0019】
図9は、図8に示される、フランジ14を再加工するボルト孔補修装置の断面立面図である。この図では、フランジ14の母材の残っている部分が見える。また、インサート34、組合せ板24、および裏当て板36も示されている。インサート34は、組合せ板24の後縁38の厚みと略等しい厚みを有する。このインサート34の厚みは、組合せ板24の前端40の厚みにフランジ14に残された孔12の一部の周りの残余の厚みを加えた合計の厚みとも略等しい。小さい隙間42,44が、インサート34と組合せ板24との間にある。この隙間によって、インサート34は、組合せ板24の開口内に容易に挿入される。隙間42,44は、補修溶接中にインサート34の材料および組合せ板24の材料が互いに融着すると、消失する。
【0020】
組合せ板24の前端40は、フランジ14の残っている表面46および孔12に適合する輪郭を有する。フランジ14は、この図では、アール部(radius)を有するとして示されているが、他の幾何学的な形状、例えば、ベベル(bevel)、面取り(chamfer)、さねはぎ(rabbet)、腰羽目(dado)、または段ノッチ(stepped notch)を有することも考えられる。この輪郭部の幾何学的な形状は、フランジ14に残っている母材の幾何学的な形状に依存する。インサート34および組合せ板24は、溶接補修が完了した後にインサート34が適切な大きさに機械加工され得るように、フランジ14から除去された材料の厚みよりも大きい材料からなる。
【0021】
図9に示される部分は、図2のノズルサポート10の断面である。ノズルサポート10は、2つのフランジ、すなわち、補修されるフランジ14、および下側フランジ20を含む。下側フランジ20およびフランジ14は、狭い間隔で互いに離間され、典型的な間隔は、約0.25インチ未満である。裏当て板36は、フランジ14と下側フランジ20との間に配置され、溶接プロセスによるどのようなスラグ、スパッタ、または同様の副生成物からも、下側フランジ20を保護する。
【0022】
裏当て板を利用する典型的な従来技術による溶接補修では、良好な溶接を確実に得るために、溶接部は、補修部分を貫通しなければならない。このような補修では、裏当て板は、溶接の残留エネルギーを吸収するために、溶接部のすぐ背後に配置され、これによって、裏当て板は、補修部に融着する。次いで、補修後、この裏当て板は、除去されねばならない。しかし、ここでは、フランジ14と下側フランジ20との間の距離が比較的小さいので、このような除去が困難である。
【0023】
従って、本発明では、裏当て板36の上面と、インサート34、組合せ板24、およびフランジ14の残っている部分の各底面との間に、空隙48が設けられる。実施例では、空隙48は、約0.10インチ以下である。この空隙48によって、溶接ビームの過剰なエネルギーを吸収しながら、裏当て板36を補修片(インサート34、組合せ板24、およびフランジ14)の底縁から十分に離間させ、これによって、裏当て板36が補修片に融着するのを確実に防ぐことができる。良好な溶接部を得るのに組合せ板24を利用すると共に、空隙48を介して補修片を裏当て板36から分離することによって、良好な、すなわち、構造的に健全な溶接補修が、確実に得られる。裏当て板36は、インサート34の縁の周囲の全体にわたって、組合せ板24とインサート34の縁との間の隙間42,44を覆うのに十分な大きさを有するべきである。裏当て板36の厚みは、図示されるような空隙48を設けるために、フランジ14と下側フランジ20との間の距離よりも小さくされる。
【0024】
図10は、インサート34と組合せ板24との間の施工済みの溶接部50を示す平面図である。インサート34は、電子ビーム溶接のようなプロセスによって、所定位置に溶接される。電子ビーム溶接(electronic beam welding)(EBW)は、金属加工品に溶接部を生成するのに必要な熱を生じさせるために、高速・高エネルギー電子の狭ビームを用いる。特別の機器を用いて、電子ビームを真空チャンバ内で集束させる。電子の運動エネルギーは、金属に衝突すると、熱エネルギーに変換される。EBWによって生じる溶接部は、その特徴として、深くかつ狭く、熱影響部が極めて小さく、歪が小さい。この補修では、溶接シームは、孔12の周囲の高応力領域から外に移行した領域に、形成される。すなわち、この溶接シームは、フランジ14の低応力領域に形成される。
【0025】
EBWは、典型的には、自溶性(autogenous)であり、すなわち、溶加材(filler material)を必要としない。従って、残っている母材および組合せ板24へのインサート34の密嵌着は、これらの部材が、溶加材を加えることなく、溶接プロセス中に互いに融着するときに、生じる。溶接部50は、インサート34、フランジ14の母材、および組合せ板24を互いに接合する突合せ溶接部である。溶接部50は、インサート34の上方から施されるが、インサート34の全周およびインサート34の全厚みにわたって、延びている。
【0026】
EBWでは、溶接された部分に、凹みが残ることがある。従って、インサート34および組合せ板24をフランジ14の元の厚みよりも確実に厚くすることによって、インサート34および組合せ板24のそれぞれの上側からの材料の溶融物および融着物が、下方に流れ、フランジ14の母材への溶接部を埋めることが可能になる。その結果、材料を除去して補修部を仕上げるとき、残っている母材は、機械加工されず、新たに溶接された材料のみが、除去される。
【0027】
EBWは、高エネルギー密度の溶接プロセスと見なされ、航空宇宙業界において、例えば、この場合におけるような高品質の低歪溶接部が必要とされる箇所において、溶接が困難な合金を互いに接合させるのに、広く用いられている。当業者は、電子ビーム溶接のプロセスを熟知しており、約100kVを超える電圧および約25mAを超える電流による電子ビームによって、この補修を行なうことができる。溶接部が補修部品の厚みを一部しか貫通しないときに生じ、補修部品の接合部の繰返し疲労寿命(cyclical fatigue life)を低下させることがある、融着欠陥を防ぐために、高電圧および/または高電流が用いられる。上記のパラメータ、および移動速度、振動、周波数、および集束を含む他の一般的なパラメータは、当業者に知られている原理に応じて修正されてもよい。
【0028】
この補修プロセスに組合せトップ・ランオフ板(すなわち、組合せ板24)を利用することによって、従来技術によって利用された3枚の別個の板を用いる必要をなくすことができる。これらの3枚の板を組み立てることに関連する一般的な問題も、なくすことができる。組合せ板24およびインサート34は、単一の材料片から、組合せ板24の他に、インサート34を作ることによって、得られる。すなわち、フランジ14の外面と適合するブランク(blank)が用意される。このブランクから、インサート34になる中心部分が切り抜かれ、残りが組合せ板24になる。同様に、組合せ板24およびインサート34は、迅速に組み立てられ、プレアッセンブリが得られる。これによって、孔12を補修する時間が節約される。
【0029】
図11は、裏当て板36が除去された状態における施工済みの溶接部50を示す平面図である。裏当て板36が補修片(インサート34、組合せ板24、およびフランジ14)に融着していないので、溶接部50が施工された後、裏当て板36は、補修部品から外に簡単に引き出される。材料を除去する装置、例えば、研削盤(grinder)または同様の機械を用いて、裏当て板36を除去する必要がない。裏当て板36は、再使用されてもよい。なぜなら、溶接プロセス中に融着される板と関連する除去跡を含まないので、裏当て板36の上面には、最小限の損傷しか生じないからである。
【0030】
図12は、組合せ板24の一部およびインサート34の一部が除去された状態における施工済みの溶接部50を示す平面図である。組合せ板24およびインサート34は、フランジ14の外形に実質的に追従する経路に沿って切断される。組合せ板24およびインサート34を切断するのに、フライス盤(mill)、レーザ、または同様の材料を除去する機械が用いられる。最初の切断の後に、組合せ板24およびインサート34の材料をわずかに残すことによって、切断プロセスが元のフランジの輪郭の完全な状態に影響を与えないことが確実になる。
【0031】
図13は、フランジ14の元の輪郭を得るために組合せ板24が取り外された状態を示す平面図である。組合せ板24を取り外すために、まず、タック溶接部26,28がフランジ14から取り外される。次に、機械加工のような機械化された方法を利用して、フランジ14の上面の元の輪郭が得られるまで、組合せ板24を取り除くと共に、インサート34の余剰の材料を除去する。組合せ板24が取り除かれると、フランジ14の元の開口の円弧22が再び見える。フランジ14の補修前におけるのと同一の表面を公称的に得るために、溶接部50の上面と底面の両方も機械加工される。最終的に、補修前の輪郭と実質的に同一の輪郭および外径を得るために、フランジ24の外縁が機械加工される。
【0032】
図14は、新しい孔52がフランジ14に形成された完全な補修部を示す平面図である。フランジの輪郭が公称的に得られた後、補修の前に存在したのと同一の孔12を公称的に作製するために、開口がフランジに機械加工によって形成される。円弧22は、孔52を機械加工によって作製するガイドとして用いられ、これによって、孔52の位置を補修前におけるのと公称的に同一の位置とすることが確実になる。代替の実施例では、下側フランジ20の孔(図2A,図9を参照)が、フランジ14に孔52を作製するガイドとして用いられる。
【0033】
前側インナーノズルサポートの小径孔を補修するには、まず、部品は一部が除去され、検査を受ける。部品は、全ての面を確実に検査するために、洗浄される。前述したようなクラックの入ったピンホールに対して、電子ビームによるインサートの溶接を含む種々の補修がなされる。
【0034】
部品は、溶接された後、フランジが許容誤差以内にあることを確実にするために、機械加工される。この機械加工プロセス(または他の材料を除去するプロセス)によって、施工された溶接部から余分の材料が除去され、新しい孔52が形成され、フランジ14の外周が回復される。補修されたフランジ14を形成するのに用いられるのは、インサート34の材料である。組合せ板24は、組合せ板24を保持するタック溶接部を切除することによって、取り外される。フランジ24の滑らかな外形を形成するのに必要ではない組合せ板24の部分が、除去される。最終的に、インサート34の残っている材料は、新たに修復されたフランジ14を形成するために、機械加工され、次いで、孔52が再加工される。
【0035】
材料の除去が完了した後、さらに他の検査がなされる。周知の非破壊検査(nondestructive inspection)(NDI)技術、例えば、視覚検査、蛍光浸透検査(fluorescent penetrant inspection)(FPI)、渦電流検査(eddy current inspection)、超音波検査、およびX線検査などが用いられる。この検査によって、部品が補修の前に有していたのと近似的に同一の寸法に復元していることが、確認される。フランジの外径部から開口までの最小の縁距離が、補修の後に保持されることが重要である。なぜなら、もしこの寸法が元の規格値と異なっている場合、部品の疲労寿命が、著しく低下するからである。最終的な検査が終了すれば、部品をタービン内の元の位置に戻すことができる。
【0036】
図2に示された前側インナーノズルサポートのようなフランジに隣接する孔を含む部品では、長く使用されると、欠陥が生じることが多い。典型的には、この欠陥は、フランジの開口の1つを起点とし、フランジの外径部に向かって伝播するクラックである。このクラックは、熱サイクルフープ応力(thermal cycle hoop stress)および取り付けられたベーンのフランジを介してピンに加えられる負荷によって、生じる傾向にある。孔の周囲の応力は、フランジの外径部に隣接する個所において最も高い。補修を行なうのに、インサート(すなわち、ビスケット状、略円形、または他の適切な形状の部材)を利用することによって、大径孔に対する周知のウエッジ補修による溶接部と同様の溶接部が得られる。得られた溶接部は、孔の径方向の中心線の両側において、略45°の線に沿っている。これによって、溶接部が、孔の周囲の最も高い応力領域から母材の低応力領域に移行し、その結果、補修された孔の疲労寿命が改良される。同時に、溶接部は、従来技術によるウエッジ補修法と関連する溶接部のような個別の線状溶接部ではなく、電子ビームを部品の円弧経路に沿って連続的に移動させることによって、得られる。この補修におけるような小さい領域では、溶接経路を急変させると、溶接ビームが方向を変化させるために一時休止しなければならないので、不均一な溶接部が生じる。
【0037】
この補修は、部品の疲労寿命を劣化させることがないので、開口の近くの欠陥を部分的に置き換えることによって、部品の寿命が更新される。補修された部品の疲労寿命は、元の部分の寿命にまで実質的に回復される。
【0038】
本発明を好ましい実施例を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形状および細部に関して、変更がなされてもよいことを認めるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ウエッジ材および複数のランオフ板を利用する従来技術による孔補修を示す平面図である。
【図2】高圧タービンの二重環状燃焼器構造の前側インナーノズルサポートの透視図である。
【図2A】フランジボルト孔の1つにおけるクラックを示すノズルサポートの透視図の一領域の拡大図である。
【図3】フランジの開口に隣接する欠陥を示す平面図である。
【図4】フランジの除去される部分を示す平面図である。
【図5】フランジの除去された部分および別の平行フランジを示す平面図である。
【図6】フランジにタック溶接された組合せトップ・ランオフ板を示す平面図である。
【図7】組合せ板にタック溶接されたビスケット状インサートを示す平面図である。
【図8】組合せ板およびインサートの下方に配置された裏当て板を示す平面図である。
【図9】図7に示されるノズルサポートのフランジを再加工するボルト孔補修装置の断面立面図である。
【図10】裏当て板が所定位置に保持されている状態における、インサート、組合せ板、およびフランジ間の施工済み溶接部を示す平面図である。
【図11】裏当て板が取り外された状態における、施工済み溶接部を示す平面図である。
【図12】組合せ板の一部およびインサートの一部が除去された状態における、施工済み溶接部を示す平面図である。
【図13】元のフランジの輪郭を生成するために、組合せ板およびインサートが除去された状態を示す平面図である。
【図14】新しい開口がフランジに形成された完全な補修部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…前側インナーノズルサポート
12…小径孔
14…外径フランジ
20…下側フランジ
24…組合せトップ・ランオフ板
34…インサート
36…裏当て板
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジン構成要素の補修に関し、特に、前側インナーノズルサポートのような部品のフランジに位置する小径孔の補修に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンの運転中、前側インナーノズルサポートが損傷することがある。通常運転中に生じた傷および表面欠陥に対して、補修がなされねばならない。1つの一般的な補修は、前側インナーノズルサポートの前側フランジの小径孔から生じるクラックに対するものである。
【0003】
大径孔、例えば、約0.30インチ以上の直径を有するボルト孔などを補修する多くの技術が、当技術分野において知られている。図1に示されるように、このような1つの従来技術による補修では、孔11の径方向の中心線RCの両側の約45°の線に囲まれた領域が、除去される。次いで、この材料は、補修される部品の母材と同様の材料からなるウエッジ材13と置き換えられる。ウエッジ材13は、互いに略90°の角度で開いた少なくとも2つの側面17,19を含む。ウエッジ材の残りの幾何学的な形状は、補修にとって重要ではなく、残っている側面21は、さまざまな形状および角度を有することができる。この略直角のコーナが、除去された母材の領域内に挿入され、部品の残っている母材の縁23,25と嵌合する。ウエッジ材13は、3枚のランオフ板27,29,31によって包囲される。加えて、裏当て板が補修に用いられてもよい。従って、5つの別個の断片が、補修を開始するのに必要とされる。ウエッジ材13およびランオフ板27,29,31は、補修を開始する前に、タック溶接部33によって取り付けられる。複数のランオフ板27,29,31は、小さく、ウエッジ材13の周囲に組み立てるのが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の補修では、ウエッジ材13は、元の母材から略45°の溶接部によって、適切な位置に溶接される。この構成では、溶接部によって、溶接材料(材料特性が劣化した溶接区域)は、孔位置の最も高い応力領域の外に移行する。これによって、(母材の特性を有する)取換えウエッジ材の素材が、最も高い応力領域に位置する。孔の周囲の最も高い応力領域は、互いに略90°離間した個所に位置する。この補修は、約0.30インチの直径までの孔に対して良好であるが、より小さな孔の場合、ウエッジ材が小さいので、このウエッジ材を保持するのに用いられる溶接部がフランジの最も高い応力領域内に延びることになる。本発明以前には、フランジの小径孔(すなわち、約0.30インチ以下の直径を有する孔)の補修は、不可能と見なされていた、従って、小径孔の補修が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、部品における開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。この方法では、まず、母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が除去される。この母材の除去は、開口の高応力が集中する領域を超えて延びる溶接シームを生成するように、なされる。開口に隣接して除去された母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材と、このインサート材を包む組合せトップ・ランオフ板とが、設けられる。裏当て板が、溶接過程中に組合せトップ・ランオフ板が裏当て板に融着するのを防ぐ空隙が裏当て板と組合せトップ・ランオフ板との間に生じるように、組合せトップ・ランオフ板およびインサート材の下方に挿入される。インサート材が母材に溶接され、裏当て板が取り外される。補修を開始する前の孔の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口を得るために、インサート材から余分の材料が除去される。
【0006】
他の実施形態では、本発明は、第1のフランジにおける開口に隣接する欠陥を補修するのに用いられる装置に関する。第1のフランジは、第2のフランジと平行である。この装置は、第1のフランジにおける開口に隣接して除去された材料の輪郭に対応するインサート材と、このインサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板とを有する。インサート材は、組合せトップ・ランオフ板を構成する元の材料片から作製される。この装置は、第2のフランジと組合せ板およびインサート材との間に配置される裏当て板も有する。裏当て板は、第1のフランジと第2のフランジとの間の厚みよりも小さい厚みを有する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。この方法では、開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が、開口に隣接する母材から円弧状に除去される。母材の除去された円弧状の部分に対応する輪郭を有するインサートが、母材に溶接される。この溶接は、単一の湾曲経路に沿って、なされる。次に、補修前の開口および周囲部分におけるのと本質的に同一の寸法を有する補修された開口および周囲部分を生成するために、インサートが除去される。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去することによって、開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。開口に隣接して除去された母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材と、このインサート材を包む組合せ板とが、設けられる。インサート材が母材および組合せ板に溶接され、補修を開始する前におけるのと本質的に同一の輪郭を有する開口および周囲部分を得るために、インサート材および組合せ板から材料が除去される。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、フランジにおける開口および隣接欠陥を補修する方法に関する。まず、フランジにおける開口に隣接する1つまたは複数の欠陥が除去される。インサートプラグおよびランオフ板が、単一の材料片から形成される。ランオフ板が、インサートプラグを包む。ランオフ板は、フランジの現存する母材にタック溶接され、インサートプラグは、フランジの母材およびランオフ板に溶接される。最終的に、補修を開始する前の開口およびフランジの輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口およびフランジを得るために、インサートプラグおよびランオフ板から、材料が除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2は、高圧タービンの二重環状燃焼器(dual annular combustor)(DAC)の前側インナーノズルサポート10の透視図である。ノズルサポート10は、外径フランジ14の周りに周方向に離間した一連の小径孔12を含む。孔12は、付加的な部分をフランジに取り付ける小径ピンまたは小径ボルトを受け入れるのに用いられる開口である。図2Aは、フランジ14の1つの小径孔12のクラック16を示すノズルサポート10の拡大図である。クラック16は、典型的には、孔12から径方向外方に伝播する。これまで、ノズルサポート10の小径孔12のクラック16は、補修不能であった。
【0011】
図3は、フランジ14における孔12に隣接する欠陥16を示す平面図である。孔12は、他の物をノズルサポート10に固定するピンまたはボルトを受け入れることができる、フランジ14を貫通する開口である。図示の実施例では、孔12は、円形であるが、他の開口輪郭も考えられる。孔12は、欠陥が開口に隣接して検出されたときにこれまでは補修不能であった、約0.30インチ未満の直径を有する小径開口である。
【0012】
フランジ14は、耐熱性母材から構成される。この母材は、ニッケル基またはコバルト基超合金などの超合金やガスタービン業界において一般的なその他の合金である。合金の例として、インコネル 718(Inconel7 718)(IN718)、IN617、IN625、Ti6Al4V、および他のチタン合金、Al6061およびAl4043、Waspaloy、Astroloy、Udimet7 500、およびHA230が挙げられる。クラック16は、フランジ14の孔12から外面に作用することが多い熱応力によって生じる。
【0013】
図4は、フランジ14の除去される部分18を示す平面図である。フランジ14の部分18は、当業者に知られている一般的な材料除去技術、例えば、レーザ切断またはレーザ加工によって、切除される。部分18は、孔12を完全に除去することなく、孔12の直径を通る軸を中心とする放物線状に除去されるべきである。材料は、フランジ14の上面と直交する切断によって除去される。材料を放物線状または同様の形状に除去することによって、欠陥を除去すると共に、取付け面を孔12に隣接する高応力区域の外側にもたらすことができる。典型的には、孔のフランジ外縁に最も近い位置または孔のフランジ外縁と直交する位置、およびその位置から90°、180°、および270°ずれた領域が、最も高い応力を含む(図2AのA、B、C,Dを参照)。溶接シームがこれらの領域間(略45°、135°、225°、315°)にある補修を行なうことによって、溶接部は、孔12を囲む高応力区域の外に移行する(図2AのE,F,G、Hを参照)。溶接部を孔12の周囲の高応力区域の外に移すことによって、前述した大きな孔を補修する場合におけるのと同様の溶接部が得られる。これによって、補修部品に対して、良好な疲労寿命がもたらされる。
【0014】
図5は、部分18が除去されたフランジ14を示す平面図である。部分18の除去によって、下側フランジ20が露出している。部分18が除去され、孔12の小さい円弧22のみが残っている。この残っている円弧22は、補修された孔をフランジ14の元の孔12の位置と同一の位置に公称的に配置させることを確実にするように補修を完了させるためのガイド・位置表示として作用する。下側フランジ20は、フランジ14と平行の構造物であり、スロット15が、前側インナーノズルサポートの基部の周りに周方向に延びる2つのフランジ14,20間に存在する(図2,図2Aを参照されたい)。
【0015】
図6は、フランジ14に取り付けられた組合せ板24(すなわち、組合せトップ・ランオフ板)を示す平面図である。組合せ板24は、組合せ板24の縁がフランジ14の外縁と接触する個所にタック溶接部26、28を設けることによって、フランジ14に取り付けられる。タック溶接部26,28は、組合せ板24を一時的に所定位置に保持する。また、タック溶接部は、後の工程において、組合せ板24を取り外すために、フランジ14を損傷させることなく、容易に除去される。組合せ板24は、フランジ14の母材と同一の材料から作製されてもよいし、共通する冶金学的な性質を有する材料から作製されてもよい。実施例では、組合せ板24は、中心部が除去され、下側フランジ20を露出させるが、円弧22を覆っている。代替の実施例(図示せず)では、組合せ板24は、円弧22を覆っていない。
【0016】
図7は、タック溶接部30,32を介して組合せ板24に取り付けられたインサート34を示す平面図である。これらのタック溶接部30,32は、最終的な溶接プロセスが行なわれるまで、インサート34を所定位置に保持する。インサート34は、好ましくはフランジ14の母材と同一の材料または同一の冶金学的な性質を有する材料からなるプラグである。インサート34は、すでに除去されたフランジ14の部分18(図4を参照)の縁に対して配置され、かつ組合せ板24の開口の形状と嵌合するように、寸法決めされる。図示される実施例では、インサート34は、円形である。円形として示されているが、インサート34は、楕円状、ビスケット状(biscuit shaped)であってもよく、あるいはフランジ14の除去された材料18の輪郭と一致する円弧状の部分を有してもよい。溶接が完了すると、これらのタック溶接部30,32は、最終的な補修溶接部に取り込まれる。
【0017】
実施例では、組合せ板24は、補修される孔12の直径よりも大きい。実施例では、組合せ板24は、元の孔12(図2)の直径の少なくとも2倍の長さ(フランジ14の外縁と略平行な両辺間の測定値)を有し、孔12の直径の少なくとも2倍の幅(フランジ14の外縁と略直交する両辺間の測定値)を有する。組合せ板24の前述の寸法によって、インサート34の良好な支持を確実とし、タック溶接部26,28をインサート34の周囲の補修溶接部から十分に離して配置させることができる。
【0018】
図8は、組合せ板24およびインサート34の下方に配置された裏当て板36を示す平面図である。裏当て板36は、組合せ板24およびインサート34を構成するのに用いられる金属と同様の金属から作製されるとよい。代替の実施例では、裏当て板36は、異なる金属またはセラミックのような耐熱材料から構成される。図8において、裏当て板36は、組合せ板24よりも大きい寸法を有するとして示されているが、補修溶接がなされる個所の下方の領域を覆う限り、組合せ板24より小さくてもよい。組合せ板24よりも大きい場合、裏当て板36は、溶接の溢流またはスパッタから隣接領域を保護すると共に、下側フランジ20が電子ビームまたは同様の溶接源によって貫通されるのを防ぐ。
【0019】
図9は、図8に示される、フランジ14を再加工するボルト孔補修装置の断面立面図である。この図では、フランジ14の母材の残っている部分が見える。また、インサート34、組合せ板24、および裏当て板36も示されている。インサート34は、組合せ板24の後縁38の厚みと略等しい厚みを有する。このインサート34の厚みは、組合せ板24の前端40の厚みにフランジ14に残された孔12の一部の周りの残余の厚みを加えた合計の厚みとも略等しい。小さい隙間42,44が、インサート34と組合せ板24との間にある。この隙間によって、インサート34は、組合せ板24の開口内に容易に挿入される。隙間42,44は、補修溶接中にインサート34の材料および組合せ板24の材料が互いに融着すると、消失する。
【0020】
組合せ板24の前端40は、フランジ14の残っている表面46および孔12に適合する輪郭を有する。フランジ14は、この図では、アール部(radius)を有するとして示されているが、他の幾何学的な形状、例えば、ベベル(bevel)、面取り(chamfer)、さねはぎ(rabbet)、腰羽目(dado)、または段ノッチ(stepped notch)を有することも考えられる。この輪郭部の幾何学的な形状は、フランジ14に残っている母材の幾何学的な形状に依存する。インサート34および組合せ板24は、溶接補修が完了した後にインサート34が適切な大きさに機械加工され得るように、フランジ14から除去された材料の厚みよりも大きい材料からなる。
【0021】
図9に示される部分は、図2のノズルサポート10の断面である。ノズルサポート10は、2つのフランジ、すなわち、補修されるフランジ14、および下側フランジ20を含む。下側フランジ20およびフランジ14は、狭い間隔で互いに離間され、典型的な間隔は、約0.25インチ未満である。裏当て板36は、フランジ14と下側フランジ20との間に配置され、溶接プロセスによるどのようなスラグ、スパッタ、または同様の副生成物からも、下側フランジ20を保護する。
【0022】
裏当て板を利用する典型的な従来技術による溶接補修では、良好な溶接を確実に得るために、溶接部は、補修部分を貫通しなければならない。このような補修では、裏当て板は、溶接の残留エネルギーを吸収するために、溶接部のすぐ背後に配置され、これによって、裏当て板は、補修部に融着する。次いで、補修後、この裏当て板は、除去されねばならない。しかし、ここでは、フランジ14と下側フランジ20との間の距離が比較的小さいので、このような除去が困難である。
【0023】
従って、本発明では、裏当て板36の上面と、インサート34、組合せ板24、およびフランジ14の残っている部分の各底面との間に、空隙48が設けられる。実施例では、空隙48は、約0.10インチ以下である。この空隙48によって、溶接ビームの過剰なエネルギーを吸収しながら、裏当て板36を補修片(インサート34、組合せ板24、およびフランジ14)の底縁から十分に離間させ、これによって、裏当て板36が補修片に融着するのを確実に防ぐことができる。良好な溶接部を得るのに組合せ板24を利用すると共に、空隙48を介して補修片を裏当て板36から分離することによって、良好な、すなわち、構造的に健全な溶接補修が、確実に得られる。裏当て板36は、インサート34の縁の周囲の全体にわたって、組合せ板24とインサート34の縁との間の隙間42,44を覆うのに十分な大きさを有するべきである。裏当て板36の厚みは、図示されるような空隙48を設けるために、フランジ14と下側フランジ20との間の距離よりも小さくされる。
【0024】
図10は、インサート34と組合せ板24との間の施工済みの溶接部50を示す平面図である。インサート34は、電子ビーム溶接のようなプロセスによって、所定位置に溶接される。電子ビーム溶接(electronic beam welding)(EBW)は、金属加工品に溶接部を生成するのに必要な熱を生じさせるために、高速・高エネルギー電子の狭ビームを用いる。特別の機器を用いて、電子ビームを真空チャンバ内で集束させる。電子の運動エネルギーは、金属に衝突すると、熱エネルギーに変換される。EBWによって生じる溶接部は、その特徴として、深くかつ狭く、熱影響部が極めて小さく、歪が小さい。この補修では、溶接シームは、孔12の周囲の高応力領域から外に移行した領域に、形成される。すなわち、この溶接シームは、フランジ14の低応力領域に形成される。
【0025】
EBWは、典型的には、自溶性(autogenous)であり、すなわち、溶加材(filler material)を必要としない。従って、残っている母材および組合せ板24へのインサート34の密嵌着は、これらの部材が、溶加材を加えることなく、溶接プロセス中に互いに融着するときに、生じる。溶接部50は、インサート34、フランジ14の母材、および組合せ板24を互いに接合する突合せ溶接部である。溶接部50は、インサート34の上方から施されるが、インサート34の全周およびインサート34の全厚みにわたって、延びている。
【0026】
EBWでは、溶接された部分に、凹みが残ることがある。従って、インサート34および組合せ板24をフランジ14の元の厚みよりも確実に厚くすることによって、インサート34および組合せ板24のそれぞれの上側からの材料の溶融物および融着物が、下方に流れ、フランジ14の母材への溶接部を埋めることが可能になる。その結果、材料を除去して補修部を仕上げるとき、残っている母材は、機械加工されず、新たに溶接された材料のみが、除去される。
【0027】
EBWは、高エネルギー密度の溶接プロセスと見なされ、航空宇宙業界において、例えば、この場合におけるような高品質の低歪溶接部が必要とされる箇所において、溶接が困難な合金を互いに接合させるのに、広く用いられている。当業者は、電子ビーム溶接のプロセスを熟知しており、約100kVを超える電圧および約25mAを超える電流による電子ビームによって、この補修を行なうことができる。溶接部が補修部品の厚みを一部しか貫通しないときに生じ、補修部品の接合部の繰返し疲労寿命(cyclical fatigue life)を低下させることがある、融着欠陥を防ぐために、高電圧および/または高電流が用いられる。上記のパラメータ、および移動速度、振動、周波数、および集束を含む他の一般的なパラメータは、当業者に知られている原理に応じて修正されてもよい。
【0028】
この補修プロセスに組合せトップ・ランオフ板(すなわち、組合せ板24)を利用することによって、従来技術によって利用された3枚の別個の板を用いる必要をなくすことができる。これらの3枚の板を組み立てることに関連する一般的な問題も、なくすことができる。組合せ板24およびインサート34は、単一の材料片から、組合せ板24の他に、インサート34を作ることによって、得られる。すなわち、フランジ14の外面と適合するブランク(blank)が用意される。このブランクから、インサート34になる中心部分が切り抜かれ、残りが組合せ板24になる。同様に、組合せ板24およびインサート34は、迅速に組み立てられ、プレアッセンブリが得られる。これによって、孔12を補修する時間が節約される。
【0029】
図11は、裏当て板36が除去された状態における施工済みの溶接部50を示す平面図である。裏当て板36が補修片(インサート34、組合せ板24、およびフランジ14)に融着していないので、溶接部50が施工された後、裏当て板36は、補修部品から外に簡単に引き出される。材料を除去する装置、例えば、研削盤(grinder)または同様の機械を用いて、裏当て板36を除去する必要がない。裏当て板36は、再使用されてもよい。なぜなら、溶接プロセス中に融着される板と関連する除去跡を含まないので、裏当て板36の上面には、最小限の損傷しか生じないからである。
【0030】
図12は、組合せ板24の一部およびインサート34の一部が除去された状態における施工済みの溶接部50を示す平面図である。組合せ板24およびインサート34は、フランジ14の外形に実質的に追従する経路に沿って切断される。組合せ板24およびインサート34を切断するのに、フライス盤(mill)、レーザ、または同様の材料を除去する機械が用いられる。最初の切断の後に、組合せ板24およびインサート34の材料をわずかに残すことによって、切断プロセスが元のフランジの輪郭の完全な状態に影響を与えないことが確実になる。
【0031】
図13は、フランジ14の元の輪郭を得るために組合せ板24が取り外された状態を示す平面図である。組合せ板24を取り外すために、まず、タック溶接部26,28がフランジ14から取り外される。次に、機械加工のような機械化された方法を利用して、フランジ14の上面の元の輪郭が得られるまで、組合せ板24を取り除くと共に、インサート34の余剰の材料を除去する。組合せ板24が取り除かれると、フランジ14の元の開口の円弧22が再び見える。フランジ14の補修前におけるのと同一の表面を公称的に得るために、溶接部50の上面と底面の両方も機械加工される。最終的に、補修前の輪郭と実質的に同一の輪郭および外径を得るために、フランジ24の外縁が機械加工される。
【0032】
図14は、新しい孔52がフランジ14に形成された完全な補修部を示す平面図である。フランジの輪郭が公称的に得られた後、補修の前に存在したのと同一の孔12を公称的に作製するために、開口がフランジに機械加工によって形成される。円弧22は、孔52を機械加工によって作製するガイドとして用いられ、これによって、孔52の位置を補修前におけるのと公称的に同一の位置とすることが確実になる。代替の実施例では、下側フランジ20の孔(図2A,図9を参照)が、フランジ14に孔52を作製するガイドとして用いられる。
【0033】
前側インナーノズルサポートの小径孔を補修するには、まず、部品は一部が除去され、検査を受ける。部品は、全ての面を確実に検査するために、洗浄される。前述したようなクラックの入ったピンホールに対して、電子ビームによるインサートの溶接を含む種々の補修がなされる。
【0034】
部品は、溶接された後、フランジが許容誤差以内にあることを確実にするために、機械加工される。この機械加工プロセス(または他の材料を除去するプロセス)によって、施工された溶接部から余分の材料が除去され、新しい孔52が形成され、フランジ14の外周が回復される。補修されたフランジ14を形成するのに用いられるのは、インサート34の材料である。組合せ板24は、組合せ板24を保持するタック溶接部を切除することによって、取り外される。フランジ24の滑らかな外形を形成するのに必要ではない組合せ板24の部分が、除去される。最終的に、インサート34の残っている材料は、新たに修復されたフランジ14を形成するために、機械加工され、次いで、孔52が再加工される。
【0035】
材料の除去が完了した後、さらに他の検査がなされる。周知の非破壊検査(nondestructive inspection)(NDI)技術、例えば、視覚検査、蛍光浸透検査(fluorescent penetrant inspection)(FPI)、渦電流検査(eddy current inspection)、超音波検査、およびX線検査などが用いられる。この検査によって、部品が補修の前に有していたのと近似的に同一の寸法に復元していることが、確認される。フランジの外径部から開口までの最小の縁距離が、補修の後に保持されることが重要である。なぜなら、もしこの寸法が元の規格値と異なっている場合、部品の疲労寿命が、著しく低下するからである。最終的な検査が終了すれば、部品をタービン内の元の位置に戻すことができる。
【0036】
図2に示された前側インナーノズルサポートのようなフランジに隣接する孔を含む部品では、長く使用されると、欠陥が生じることが多い。典型的には、この欠陥は、フランジの開口の1つを起点とし、フランジの外径部に向かって伝播するクラックである。このクラックは、熱サイクルフープ応力(thermal cycle hoop stress)および取り付けられたベーンのフランジを介してピンに加えられる負荷によって、生じる傾向にある。孔の周囲の応力は、フランジの外径部に隣接する個所において最も高い。補修を行なうのに、インサート(すなわち、ビスケット状、略円形、または他の適切な形状の部材)を利用することによって、大径孔に対する周知のウエッジ補修による溶接部と同様の溶接部が得られる。得られた溶接部は、孔の径方向の中心線の両側において、略45°の線に沿っている。これによって、溶接部が、孔の周囲の最も高い応力領域から母材の低応力領域に移行し、その結果、補修された孔の疲労寿命が改良される。同時に、溶接部は、従来技術によるウエッジ補修法と関連する溶接部のような個別の線状溶接部ではなく、電子ビームを部品の円弧経路に沿って連続的に移動させることによって、得られる。この補修におけるような小さい領域では、溶接経路を急変させると、溶接ビームが方向を変化させるために一時休止しなければならないので、不均一な溶接部が生じる。
【0037】
この補修は、部品の疲労寿命を劣化させることがないので、開口の近くの欠陥を部分的に置き換えることによって、部品の寿命が更新される。補修された部品の疲労寿命は、元の部分の寿命にまで実質的に回復される。
【0038】
本発明を好ましい実施例を参照して説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形状および細部に関して、変更がなされてもよいことを認めるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ウエッジ材および複数のランオフ板を利用する従来技術による孔補修を示す平面図である。
【図2】高圧タービンの二重環状燃焼器構造の前側インナーノズルサポートの透視図である。
【図2A】フランジボルト孔の1つにおけるクラックを示すノズルサポートの透視図の一領域の拡大図である。
【図3】フランジの開口に隣接する欠陥を示す平面図である。
【図4】フランジの除去される部分を示す平面図である。
【図5】フランジの除去された部分および別の平行フランジを示す平面図である。
【図6】フランジにタック溶接された組合せトップ・ランオフ板を示す平面図である。
【図7】組合せ板にタック溶接されたビスケット状インサートを示す平面図である。
【図8】組合せ板およびインサートの下方に配置された裏当て板を示す平面図である。
【図9】図7に示されるノズルサポートのフランジを再加工するボルト孔補修装置の断面立面図である。
【図10】裏当て板が所定位置に保持されている状態における、インサート、組合せ板、およびフランジ間の施工済み溶接部を示す平面図である。
【図11】裏当て板が取り外された状態における、施工済み溶接部を示す平面図である。
【図12】組合せ板の一部およびインサートの一部が除去された状態における、施工済み溶接部を示す平面図である。
【図13】元のフランジの輪郭を生成するために、組合せ板およびインサートが除去された状態を示す平面図である。
【図14】新しい開口がフランジに形成された完全な補修部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…前側インナーノズルサポート
12…小径孔
14…外径フランジ
20…下側フランジ
24…組合せトップ・ランオフ板
34…インサート
36…裏当て板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品における開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
母材の除去が、前記開口の高応力が集中する領域を超えて延びる溶接シームを生成するように、母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
前記開口に隣接して除去された前記母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材を設け、
前記インサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板を設け、
裏当て板を、前記組合せトップ・ランオフ板が溶接過程中に前記裏当て板に融着するのを防ぐために、前記裏当て板と前記組合せトップ・ランオフ板との間に空隙が生じるように、前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材の下方に挿入し、
前記インサート材を前記母材に溶接し、
前記裏当て板を取り外し、
前記補修を開始する前の前記開口の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口を得るために、前記インサート材から材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項2】
前記欠陥を除去することが、前記母材の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項3】
前記インサートを溶接することが、前記インサート材を前記母材に突合せ溶接することを含むことを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項4】
前記欠陥を除去することが、前記開口の直径を中心とする放物線状になされることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項5】
前記開口が、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項6】
前記裏当て板が、前記母材と異なる材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項7】
前記裏当て板と前記組合せトップ・ランオフ板との間の前記空隙が、約0.10インチ未満であることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項8】
前記インサート材を溶接することが、電子ビーム溶接によってなされることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項9】
前記インサート材および前記組合せトップ・ランオフ板が、前記母材と本質的に同一の冶金学的な性質を有することを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項10】
第1のフランジにおける開口に隣接する欠陥を補修するのに用いられる装置であって、前記第1のフランジが第2のフランジと平行である装置において、
前記第1のフランジにおける前記開口に隣接して除去された材料の輪郭に対応するインサート材と、
前記インサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板であって、前記インサート材が、前記組合せトップ・ランオフ板を構成する元の材料片から作製される、組合せトップ・ランオフ板と、
前記第2のフランジと前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材との間に配置される裏当て板と、
を備え、
前記裏当て板が、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間の厚みよりも小さい厚みを有することを特徴とする装置。
【請求項11】
前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材は、前記第1のフランジの厚みよりも大きい厚みを有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記組合せトップ・ランオフ板が、
前縁をさらに備え、
前記前縁が、前記第1のフランジの幾何学的形状と、前記第1のフランジに隣接する前記領域とに適合する輪郭を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記前縁の前記輪郭が、アール部、ベベル、面取り、さねはぎ、腰羽目、および段ノッチの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記インサート材が、円形、楕円形、ビスケット形、および円弧形の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材が、前記第1のフランジと本質的に同様の冶金学的な性質を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項16】
開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
前記開口に隣接する母材の円弧状部分を除去することによって、開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
前記母材の前記除去された円弧状部分に対応する輪郭を有するインサートを設け、
溶接が、単一の湾曲経路に沿ってなされるように、前記インサートを前記母材に溶接し、
前記補修前の前記開口および周囲部分の寸法と本質的に同一の寸法を備える補修された開口および周囲部分を生成するために、前記インサートから材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項17】
前記欠陥を除去することが、前記母材の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項18】
溶接が、前記インサートおよび前記母材を互いに接合する突合せ溶接を含むことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項19】
前記欠陥を除去することが、前記開口の直径を中心とする放物線状になされることを含むことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項20】
前記開口が、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項21】
前記インサートが、略円形または略楕円形の形状を有することを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項22】
前記溶接プロセスが、電子ビーム溶接を含むことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項23】
開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
前記開口に隣接して除去された前記母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材を設け、
前記インサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板を設け、
前記インサート材を前記母材および前記組合せ板に溶接し、
前記補修を開始する前の前記開口および周囲部分の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口および周囲部分を得るために、前記インサート材および前記組合せ板から材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項24】
前記欠陥を除去することが、前記母材の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数の欠陥を除去することが、前記開口に隣接する高応力が集中する領域から延びる溶接シームを生成するのに十分な母材を除去することを含むことを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項26】
前記溶接部が、前記プラグ、前記母材、および前記組合せ板を接合する突合せ溶接であることを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項27】
前記開口が、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項28】
前記組合せ板を前記母材にタック溶接することをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項29】
前記用いられる溶接プロセスが、電子ビーム溶接であることを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項30】
前記インサート材および前記一体型トップ・ランオフ板が、前記母材と同一の冶金学的な性質を有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項31】
フランジにおける開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
フランジにおける開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
ランオフ板が、インサートプラグを取り囲むように、インサートプラグおよびランオフ板を単一の材料片から形成し、
前記ランオフ板を前記フランジの現存する母材にタック溶接し、
前記インサートプラグを前記フランジの前記母材および前記ランオフ板に溶接し、
前記補修を開始する前の前記開口および前記フランジの輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口およびフランジを得るために、前記インサートプラグおよび前記ランオフ板から材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項32】
前記欠陥を除去することが、前記フランジの前記残っている部分の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを含むことを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項33】
前記欠陥を除去することが、前記開口の直径を中心とする放物線状になされることを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項34】
前記開口は、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項35】
前記インサートプラグが、略円形または略楕円形の形状を有することを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項36】
前記インサートプラグを前記ランオフ板にタック溶接することをさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項37】
前記用いられる溶接プロセスが、電子ビーム溶接であることを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項1】
部品における開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
母材の除去が、前記開口の高応力が集中する領域を超えて延びる溶接シームを生成するように、母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
前記開口に隣接して除去された前記母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材を設け、
前記インサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板を設け、
裏当て板を、前記組合せトップ・ランオフ板が溶接過程中に前記裏当て板に融着するのを防ぐために、前記裏当て板と前記組合せトップ・ランオフ板との間に空隙が生じるように、前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材の下方に挿入し、
前記インサート材を前記母材に溶接し、
前記裏当て板を取り外し、
前記補修を開始する前の前記開口の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口を得るために、前記インサート材から材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項2】
前記欠陥を除去することが、前記母材の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項3】
前記インサートを溶接することが、前記インサート材を前記母材に突合せ溶接することを含むことを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項4】
前記欠陥を除去することが、前記開口の直径を中心とする放物線状になされることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項5】
前記開口が、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項6】
前記裏当て板が、前記母材と異なる材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項7】
前記裏当て板と前記組合せトップ・ランオフ板との間の前記空隙が、約0.10インチ未満であることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項8】
前記インサート材を溶接することが、電子ビーム溶接によってなされることを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項9】
前記インサート材および前記組合せトップ・ランオフ板が、前記母材と本質的に同一の冶金学的な性質を有することを特徴とする請求項1に記載の補修方法。
【請求項10】
第1のフランジにおける開口に隣接する欠陥を補修するのに用いられる装置であって、前記第1のフランジが第2のフランジと平行である装置において、
前記第1のフランジにおける前記開口に隣接して除去された材料の輪郭に対応するインサート材と、
前記インサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板であって、前記インサート材が、前記組合せトップ・ランオフ板を構成する元の材料片から作製される、組合せトップ・ランオフ板と、
前記第2のフランジと前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材との間に配置される裏当て板と、
を備え、
前記裏当て板が、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間の厚みよりも小さい厚みを有することを特徴とする装置。
【請求項11】
前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材は、前記第1のフランジの厚みよりも大きい厚みを有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記組合せトップ・ランオフ板が、
前縁をさらに備え、
前記前縁が、前記第1のフランジの幾何学的形状と、前記第1のフランジに隣接する前記領域とに適合する輪郭を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記前縁の前記輪郭が、アール部、ベベル、面取り、さねはぎ、腰羽目、および段ノッチの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記インサート材が、円形、楕円形、ビスケット形、および円弧形の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記組合せトップ・ランオフ板および前記インサート材が、前記第1のフランジと本質的に同様の冶金学的な性質を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項16】
開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
前記開口に隣接する母材の円弧状部分を除去することによって、開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
前記母材の前記除去された円弧状部分に対応する輪郭を有するインサートを設け、
溶接が、単一の湾曲経路に沿ってなされるように、前記インサートを前記母材に溶接し、
前記補修前の前記開口および周囲部分の寸法と本質的に同一の寸法を備える補修された開口および周囲部分を生成するために、前記インサートから材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項17】
前記欠陥を除去することが、前記母材の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項18】
溶接が、前記インサートおよび前記母材を互いに接合する突合せ溶接を含むことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項19】
前記欠陥を除去することが、前記開口の直径を中心とする放物線状になされることを含むことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項20】
前記開口が、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項21】
前記インサートが、略円形または略楕円形の形状を有することを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項22】
前記溶接プロセスが、電子ビーム溶接を含むことを特徴とする請求項16に記載の補修方法。
【請求項23】
開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
母材における開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
前記開口に隣接して除去された前記母材の輪郭に対応する輪郭を有するインサート材を設け、
前記インサート材を取り囲む組合せトップ・ランオフ板を設け、
前記インサート材を前記母材および前記組合せ板に溶接し、
前記補修を開始する前の前記開口および周囲部分の輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口および周囲部分を得るために、前記インサート材および前記組合せ板から材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項24】
前記欠陥を除去することが、前記母材の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数の欠陥を除去することが、前記開口に隣接する高応力が集中する領域から延びる溶接シームを生成するのに十分な母材を除去することを含むことを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項26】
前記溶接部が、前記プラグ、前記母材、および前記組合せ板を接合する突合せ溶接であることを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項27】
前記開口が、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項28】
前記組合せ板を前記母材にタック溶接することをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項29】
前記用いられる溶接プロセスが、電子ビーム溶接であることを特徴とする請求項23に記載の補修方法。
【請求項30】
前記インサート材および前記一体型トップ・ランオフ板が、前記母材と同一の冶金学的な性質を有することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項31】
フランジにおける開口および隣接欠陥を補修する方法であって、
フランジにおける開口に隣接する1つまたは複数の欠陥を除去し、
ランオフ板が、インサートプラグを取り囲むように、インサートプラグおよびランオフ板を単一の材料片から形成し、
前記ランオフ板を前記フランジの現存する母材にタック溶接し、
前記インサートプラグを前記フランジの前記母材および前記ランオフ板に溶接し、
前記補修を開始する前の前記開口および前記フランジの輪郭と本質的に同一の輪郭を有する開口およびフランジを得るために、前記インサートプラグおよび前記ランオフ板から材料を除去する、
ことを含むことを特徴とする補修方法。
【請求項32】
前記欠陥を除去することが、前記フランジの前記残っている部分の前記元の開口の少なくとも一部を残すことを含むことを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項33】
前記欠陥を除去することが、前記開口の直径を中心とする放物線状になされることを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項34】
前記開口は、約0.30インチ未満の直径を有することを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項35】
前記インサートプラグが、略円形または略楕円形の形状を有することを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項36】
前記インサートプラグを前記ランオフ板にタック溶接することをさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【請求項37】
前記用いられる溶接プロセスが、電子ビーム溶接であることを特徴とする請求項31に記載の補修方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−110404(P2008−110404A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278518(P2007−278518)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】
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