説明

フランジのガスケット締代測定方法

【課題】フランジのガスケット締代を容易に測定できるフランジのガスケット締代測定方法を提供する。
【解決手段】一対のフランジの間に装着されて締結部材によって締付けられるガスケットの締代を測定するフランジのガスケット締代測定方法において、一対のフランジの間にガスケットを挟んで組立て、締結部材でフランジの仮締めを行うフランジ組立工程と、一対のフランジ外周の間にガスケットの締代を表示する測定装置を備えたπ型ゲージを固定するπ型ゲージ取付け工程と、π型ゲージの測定装置をゼロ点に合わせて補正するゼロ点補正工程と、π型ゲージの測定値が所定値に達するまで締め付けを行う締め付け工程により、フランジの間に装着されたガスケットの締代を容易かつ正確に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジとガスケットを有する配管系の接続時における、ガスケット締代の計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等のフランジ配管系では、一対のフランジ間にガスケットを装着してボルト等の締結部材でフランジを締付ける。これによりガスケットに所定圧力を越える圧力を加えてフランジに密着させることにより、フランジ接合部からの流体の漏れを防いでいる。
【0003】
一般的に、任意圧力の各種流体の漏れを防ぐガスケットの必要締代はガスケットメーカから提供されており、ガスケットの使用者はボルト締付時に必要な所定圧力を得られる締代を管理することによって流体の漏れ防止を管理している。
【0004】
しかし、ガスケットはフランジに挟まれているために、実際のガスケット締代を測定することは簡単ではなく、従来技術では相当な作業工数を要する。例えばフランジ締付作業時に、締付前と締付後にノギス等の測定装置を使用してガスケットの両面間を測定した後、測定値よリガスケット締代を算出しなければならないため煩雑である。そのため、測定装置の使用回数を低減し、また、使用者による計測誤差を発生させないようにするガスケット締代の計測方法を確立することが望まれている。
【0005】
特許文献1には、フランジリングに測定用孔を設け、他のフランジリング表面またはガスケット外輪までの距離を測定するフランジ締付け状態検査方法およびそれに用いるフランジが開示されている。ボルト締付け前後の距離の変化量を求めることによってフランジ変化量を測定する。距離の測定は光学的に行われ、例えばレーザ変化量計を用いる。測定用孔はなるべくフランジ軸中心に近く周方向90°毎に4つ設けられ、フランジ変化量とガスケットの圧縮量の誤差を少なくしている。
【0006】
また、特許文献2には、多孔性断熱気泡材の伸び量をストレインゲージを有するπ型ゲージを用いて測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−239763号公報
【特許文献2】実開昭63−146745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のフランジギャップの変化量を測定する方法では、フランジリングに測定用孔を設け、距離の変化量を光学的に求めることによってボルト締付前後の変化量を測定している。この方法では、フランジリングの軸中心に近く測定孔を正確に追加工しなければならず、かつ正確な締付け状態を評価するためには周方向に少なくとも4箇所の加工が必要であるから、加工工数が大きく増加してしまう。さらに高価なレーザ距離計を必要とし、各測定孔にセッティングする必要があるために作業工数も増大する。
【0009】
また、特許文献2の測定方法では、単に多孔性断熱気泡材の伸び量をストレインゲージを有するπ型ゲージを用いて測定するものであり、フランジ用ガスケットの締代を測定する構成は開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、フランジを有する配管系において、ガスケットの締代を少ない誤差でかつ少ない作業工数で容易に測定できる測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一対のフランジの間に装着されて締結部材によって締付けられるガスケットの締代を測定するフランジのガスケット締代測定方法において、一対のフランジの間にガスケットを挟んで組立て、締結部材でフランジの仮締めを行うフランジ組立工程と、一対のフランジ外周の間にガスケットの締代を表示する測定装置を備えたπ型ゲージを固定するπ型ゲージ取付け工程と、π型ゲージの測定装置をガスケット締代がゼロであるゼロ点に合わせて補正するゼロ点補正工程と、π型ゲージの測定値が所定値に達するまで締め付けを行う締め付け工程を有し、ガスケットの締代を測定することを特徴とする。
【0012】
また、フランジのガスケット締代測定方法において、π型ゲージ取付け工程におけるガスケットの締代を表示する測定装置は、一対のフランジの間隙であるフランジギャップの変位量をガスケットの締代として表示することを特徴とする。
【0013】
また、フランジのガスケット締代測定方法において、フランジ組立工程における締結部材による仮締めは、作業者による手締めで行うことを特徴とする。
【0014】
また、フランジのガスケット締代測定方法において、π型ゲージ取付け工程は、ネジによってπ型ゲージの一端を一方のフランジ外周に固定し、π型ゲージの他端を他方のフランジ外周に固定したことを特徴とする。
【0015】
また、フランジのガスケット締代測定方法において、π型ゲージ取付け工程は、接着によってπ型ゲージの一端を一方のフランジ外周に固定し、π型ゲージの他端を他方のフランジ外周に固定したことを特徴とする。
【0016】
さらに、フランジのガスケット締代測定方法において、π型ゲージ取付け工程におけるフランジ外周へのπ型ゲージ取付け位置を、フランジ外周に均等間隔で配置したことを特徴とする。
【0017】
さらに、フランジのガスケット締代測定方法において、π型ゲージ取付け工程におけるフランジ外周へのπ型ゲージ取付け位置を、フランジ中心を通る直線上に設けたことを特徴とする。
【0018】
さらに、フランジのガスケット締代測定方法において、π型ゲージ取付け工程における新たなπ型ゲージ取付け位置を、π型ゲージが取付けられたフランジ中心を通る直線に対して直交する直線上に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一対のフランジの間に装着されて締結部材によって締付けられるガスケットの締代を測定するフランジのガスケット締代測定方法において、一対のフランジの間にガスケットを挟んで組立て締結部材でフランジの仮締めを行うフランジ組立工程と、一対のフランジ外周の間にガスケットの締代を表示する測定装置を備えたπ型ゲージを固定するπ型ゲージ取付け工程と、π型ゲージの測定装置をガスケット締代がゼロであるゼロ点に合わせて補正するゼロ点補正工程と、π型ゲージの測定値が所定値に達するまで締め付けを行う締め付け工程を有し、ガスケットの締代を測定することによって、ガスケットの締代を少ない誤差で、容易に測定する新規な測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるフランジの縦断面図。
【図2】本発明にかかるフランジの平面図。
【図3】本発明にかかるフランジの締代測定方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面について説明する。
【0022】
図1に本発明の実施形態におけるフランジの縦断面図を示す。図1において、一対のフランジ1はボルト4とナット5にて締結されている。9はボルト4を通すフランジ1に設けた貫通孔である。一対のフランジ1の間にはガスケット2が挟まれている。3はガスケット2の外輪である。ガスケット2の厚さは通常数mmであり、金属、プラスチック等の材料が用途に応じて選択される。
【0023】
フランジ1の側面にはπ型ゲージ6用の取付けネジ7を設けており、π型ゲージ6が一対のフランジ1を跨ぐように取り付けられている。π型ゲージ6は計測器8と接続されており、計測器8はπ型ゲージ6の歪み量から、一対のフランジの間隙であるフランジギャップGの変化量を検出することによって、ガスケット2の締代を測定することができる。計測装置8は、π型ゲージ6の歪み量からフランジギャップ変化量を算出する演算装置をそなえ、算出したフランジギャップ変化量すなわちガスケット2の締代(変形量)を表示する表示部Dを有する。
【0024】
これにより、フランジ1をボルト4で締付ける際に、ガスケット2の締代をリアルタイムで確認しながら容易に所定量まで締結することができる。
【0025】
本発明において、フランジギャップ変化量とこれに対応するガスケット締代の関係を予め測定しておくことによってより正確にガスケット締代を得ることができる。なお、大径フランジでなければ、フランジギャップ変化量はガスケット締代と同一と見なすことができる。
【0026】
図2に本発明の実施形態におけるフランジの平面図を示す。図2において、一対のフランジ1は4組のボルト4とナット5にて締結されている。9はフランジ1に設けた貫通孔である。フランジ1外周のフランジ1の中心を通る直線上の対向する場所に、π型ゲージ6が取付けネジ7で取付けられている。
【0027】
π型ゲージ6の取付け箇所は2箇所には限定されず、測定精度を上げるには個数を更に増やしても良い。例えば、図2に示す様にフランジ1の中心を通る直線と直交する直線上にもう一組のπ型ゲージ6を取付けると、ガスケットの全周に渡って変形量をより正確に測定でき、ガスケットの締代を正確に測定することができる。
【0028】
一般に、フランジ直径の増加に伴って測定箇所を増やす場合に、フランジ外周の円周方向に等間隔で測定箇所を設置すれば、フランジ締代を正確に検出することができる。
【0029】
π型ゲージ6のフランジ外周への固定方法は、取付けネジのほか、接着剤によって固定しても良く、この場合は作業工数がさらに少なくて足りる。
【0030】
図3に、本発明のフランジ締代測定方法の工程を説明するフローチャートを示す。
【0031】
始めにガスケット設置ステップS10で、一対のフランジの間にガスケットを挟んで設置する。
【0032】
次に、フランジ組立ステップS20で、ボルト/ナット等の締結部材でガスケットを挟んだフランジを手締めにより仮締めする。
【0033】
次に、π型ゲージ取付けステップS30で、一対のフランジの各々にガスケットの締代を表示する測定装置を備えたπ型ゲージの端部をネジ等によって固定する。
【0034】
次に、測定(ゼロ点補正)ステップS40で、ガスケットの締代が無い状態でπ型ゲージの測定装置の測定値をゼロ点補正して、フランジ締め付け時のガスケットの変形量を測定する原点を設定する。
【0035】
次に、締め付けステップS50で、締め付け部材により一対のフランジおよびガスケットを締め付ける。
【0036】
次に、測定確認ステップS60で、ガスケットの締め付けによる変形量が目標とする所定値に達したことを確認して、ステップS70で締め付け作業を完了する。
【0037】
本実施形態は上記のように、π型ゲージで測定したフランジギャップ変化量をガスケット締代と見なすことで、従来技術に比べて誤差の少ない締付状態の評価が可能となる。また、測定対象となるフランジ形状が多種類であっても容易に測定することが可能である。
【0038】
これによって、ガスケットの締代を少ない誤差で正確に測定することが可能となり、作業工数が少なく精度の高いフランジ締付状態の測定方法を提供できる。
【符号の説明】
【0039】
1 フランジ
2 ガスケット
3 外輪
4 ボルト
5 ナット
6 π型ゲージ
7 取付けネジ
8 測定装置
9 貫通孔
G フランジギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジの間に装着されて締結部材によって締付けられるガスケットの締代を測定するフランジのガスケット締代測定方法において、
前記一対のフランジの間にガスケットを挟んで組立て、前記締結部材で前記フランジの仮締めを行うフランジ組立工程と、
前記一対のフランジ外周の間に前記ガスケットの締代を表示する測定装置を備えたπ型ゲージを固定するπ型ゲージ取付け工程と、
前記π型ゲージの前記測定装置をガスケット締代がゼロであるゼロ点に合わせて補正するゼロ点補正工程と、
前記π型ゲージの測定値が所定値に達するまで締め付けを行う締め付け工程
を有し、前記ガスケットの締代を測定することを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記π型ゲージ取付け工程における前記ガスケットの締代を表示する測定装置は、前記一対のフランジの間隙であるフランジギャップの変位量を前記ガスケットの締代として表示することを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記フランジ組立工程における前記締結部材による仮締めは、作業者による手締めで行うことを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記π型ゲージ取付け工程は、ネジによって前記π型ゲージの一端を一方のフランジ外周に固定し、前記π型ゲージの他端を他方のフランジ外周に固定したことを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記π型ゲージ取付け工程は、接着によって前記π型ゲージの一端を一方のフランジ外周に固定し、前記π型ゲージの他端を他方のフランジ外周に固定したことを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記π型ゲージ取付け工程におけるフランジ外周へのπ型ゲージ取付け位置を、前記フランジ外周に均等間隔で配置したことを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記π型ゲージ取付け工程におけるフランジ外周へのπ型ゲージ取付け位置を、前記フランジ中心を通る直線上に設けたことを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。
【請求項8】
請求項6に記載のフランジのガスケット締代測定方法において、前記π型ゲージ取付け工程における新たなπ型ゲージ取付け位置を、前記π型ゲージが取付けられた前記フランジ中心を通る直線に対して直交する直線上に設けたことを特徴とするフランジのガスケット締代測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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