説明

フラーレン誘導体

【課題】有機溶媒に対する溶解性が優れたフラーレン誘導体を提供する。
【解決手段】 下記式(1)で表されるフラーレン誘導体を提供する。




(1)
[式中、Arは縮合環をもつ芳香族炭化水素基を、mは1〜30の整数を表す。該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基で置換されていてもよい。]
Arの具体例としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、ペンタセニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基等があげられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子、ホール)輸送性を有する有機半導体材料は、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)等への適用が検討されており、例えば、フラーレン誘導体を用いた有機太陽電池が検討されている。フラーレン誘導体を含む有機太陽電池を製造する場合、フラーレン誘導体を有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、塗布法により該溶液から薄膜を作製して有機太陽電池に用いることができる。フラーレン誘導体としては、例えば非特許文献1に有機溶媒に可溶な [6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(以下、[60]−PCBMということがある。)が知られている。
【0003】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials Vol.13 (2003) 85p
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、[60]−PCBMは、有機溶媒に対する溶解性が必ずしも十分でないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、有機溶媒に対する溶解性が優れたフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、下記式(1)で表されるフラーレン誘導体を提供する。

(1)
[式中、Arは縮合環をもつ芳香族炭化水素基を、mは1〜30の整数を表す。該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基で置換されていてもよい。]
【0007】
本発明は第二に、前記式(1)で表されるフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を提供する。
【0008】
本発明は第三に、前記式(1)で表されるフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフラーレン誘導体は、有機溶媒に対する溶解性に優れ、有機光電変換素子に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
<フラーレン誘導体>
本発明のフラーレン誘導体は、C60フラーレンの誘導体であり、前記式(1)で表される。式(1)中、Arは縮合環をもつ芳香族炭化水素基を表す。Arは、通常、炭素数が10〜80であり、具体的には、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、ペンタセニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基等があげられる。フラーレン誘導体の溶媒への溶解性の観点からは、ナフチル基、アントラセニル基が好ましい。
【0012】
前記芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。有機薄膜太陽電池に用いた場合の変換効率の観点からは、フッ素原子が好ましい。
【0013】
前記アルキル基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基等が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、モノハロメチル基、ジハロメチル基、トリハロメチル基、ペンタハロエチル基等があげられる。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0014】
前記アルコキシ基は、炭素数が通常1〜20であり、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0015】
前記アリール基は、炭素数が通常6〜60であり、置換基を有していてもよい。アリール基が有している置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基があげられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基がより好ましい。前記アリール基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子の中では、フッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0016】
前記式(1)中、mは1〜30の整数を表す。フラーレン誘導体の溶媒への溶解性と電荷輸送性とのバランスの観点からは、mが3〜20であることが好ましい。
【0017】
式(1)式で表されるフラーレン誘導体としては、具体的には下記式のような化合物が例示される。
【0018】

【0019】

【0020】

【0021】

【0022】
前記式(1)で表されるフラーレン誘導体の中では、有機薄膜太陽電池に用いた場合の変換効率の観点からは、下記式(2)で表されるフラーレン誘導体が好ましい。

(2)
[式中、mは前述と同じ意味を表す。Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。これらの基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは0または1を表す。]
【0023】
前記式(2)中、Rがアルキル基である場合の具体例としては、前述のアルキル基の例示と同じアルキル基があげられる。Rがアルコキシ基である場合の具体例としては、前述のアルコキシ基の例示と同じアルコキシ基があげられる。Rがアリール基である場合の具体例としては、前述のアリール基の例示と同じアリール基があげられる。
【0024】
前記式(2)中、フラーレン誘導体の溶媒への溶解性と電荷輸送性とのバランスの観点からは、mが3〜20であることが好ましい。また、有機薄膜太陽電池に用いた場合の変換効率の観点からは、nは0であることが好ましい。
【0025】
式(1)で表される化合物は、下式で示されるように、グリシン誘導体とアルデヒドで生成するイミンから脱炭酸して生じるイミニウムカチオンとC60フラーレンとの1,3-双極子環化付加反応(Prato反応、Accounts of Chemical Research Vol.31 1998 519-526ページ)で合成することができる。
ここで用いられるグリシン誘導体の例としては、N−ヘキサデシルグリシン、N−オクチルグリシン、N−エチルグリシン、などが例示される。
これらのグリシン誘導体の使用量はフラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜3モルの範囲である。
もう一つの置換基の原料であるアルデヒドとしては、例えば、アントリルアルデヒド、ナフチルアルデヒドなどが例示される。
これらのアルデヒド類使用量はフラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜4モルの範囲である。
通常この反応は、溶媒中で行なわれる。この場合溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、クロルベンゼンなど、この反応に対して不活性な溶媒が用いられる。その使用量は、特に限定されないが、フラーレンに対して通常1〜100000重量倍の範囲である。
反応に際しては、例えば溶媒中でグリシン誘導体とアルデヒド類とフラーレンとを混合し加熱反応させればよく、反応温度は、特に限定されないが通常50〜350℃の範囲で行なわれる。反応時間は、特に限定されないが通常、30分間から50時間行なわれる。
加熱反応後、反応混合物を室温まで放冷し,溶媒をロータリーエバポレーターで減圧留去し,得られた固形物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製目的とするフラーレン誘導体を得ることができる。
【0026】


【0027】
<有機光電変換素子>
本発明のフラーレン誘導体を用いる有機光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に本発明のフラーレン誘導体を含む層を有する。本発明のフラーレン誘導体は、電子受容性化合物として用いることも電子供与性化合物として用いることもできるが、電子受容性化合物として用いることが好ましい。
【0028】
次に、有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0029】
本発明のフラーレン誘導体を用いる有機光電変換素子の具体的としては、
1.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物として本発明のフラーレン誘導体を含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられた電子供与性化合物を含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子であることを特徴とするもの、
2.少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられ電子受容性化合物として本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であることを特徴とするもの、
のいずれかが好ましい。
【0030】
このような観点から、本発明の有機光電変換素子としては、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記2.が好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の有機層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層が挙げられる。
【0031】
また、前記2.の有機光電変換素子では、本発明のフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する有機層におけるフラーレン誘導体の割合が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0032】
本発明のフラーレン誘導体を含む有機層は、該フラーレン誘導体を含む有機薄膜を含むことが好ましい。該有機薄膜の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0033】
前記電子供与性化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ポルフィリン、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、テトラセン、ペンタセン、ルブレン等が挙げられる。高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。塗布性の観点からは、高分子化合物が好ましい。
【0034】
有機光電変換素子の変換効率の観点からは、有機光電変換素子に用いる電子供与性化合物は、下記式(3)および下記式(4)からなる群から選ばれる繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましく、下記式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることがより好ましい。


(3) (4)
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。]
【0035】
前記式(3)中、R1およびR2がアルキル基である場合の具体例としては、前述のアルキル基の例示と同じアルキル基があげられる。R1およびR2がアルコキシ基である場合の具体例としては、前述のアルコキシ基の例示と同じアルコキシ基があげられる。R1およびR2がアリール基である場合の具体例としては、前述のアリール基の例示と同じアリール基があげられる。
【0036】
前記式(3)中、有機光電変換素子の変換効率の観点からは、R1およびR2の少なくとも一方が、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることがより好ましい。
【0037】
前記式(4)中、R3〜R10がアルキル基である場合の具体例としては、前述のアルキル基の例示と同じアルキル基があげられる。R3〜R10がアルコキシ基である場合の具体例としては、前述のアルコキシ基の例示と同じアルコキシ基があげられる。R3〜R10がアリール基である場合の具体例としては、前述のアリール基の例示と同じアリール基があげられる。
【0038】
前記式(4)中、モノマーの合成の行いやすさの観点からは、R5〜R10は水素原子であることが好ましい。また、有機光電変換素子の変換効率の観点からは、R3およびR4は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数5〜8のアルキル基または炭素数6〜15のアリール基であることがより好ましい。
【0039】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0040】
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0041】
付加的な層としてのバッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0042】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜の製造方法は、特に制限されず、例えば、本発明のフラーレン誘導体を含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0043】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明のフラーレン誘導体を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が挙げられる。前記フラーレン誘導体は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0044】
前記溶液は、さらに高分子化合物を含んでいてもよい。該溶液に用いられる溶媒の具体例としては、前述の溶媒があげられるが、高分子化合物の溶解性の観点からは、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレンがより好ましい。
【0045】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0046】
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0047】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
合成に用いた試薬および溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下蒸留精製した品を使用した。C60フラーレンはフロンティアカーボン社製を使用した。NMRスペクトルはJEOL社製 MH500を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準に使用した。赤外吸収スペクトルは島津製作所者製 FT−IR 8000を用いて測定した。
【0050】
<実施例1> (フラーレン誘導体Aの合成)
2−(ヘキサデシルアミノ)酢酸の合成
二口ナス型フラスコ(200mL)に1-ブロモ酢酸ベンジルエステル(4.58 g, 20 mmol)のジクロロメタン(70mL)溶液、ヘキサデシルアミン(9.66 g, 40 mmol)、トリエチルアミン(4.05 g, 40 mmol)および4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(10 mg)を入れ、室温で5時間攪拌した。脱イオン水5mL を加えた後、酢酸エチル抽出(3回)を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、無水硫酸マグネシウムをろ別後、ろ液をロータリーエバポレーターに入れて溶媒を減圧除去した。その後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜4:1)で精製して2−ヘキサデシルアミノ酢酸ベンジルエステル(5.01g,13mmol)を収率64%で得た。つぎにこのベンジルエステルを100mL二口フラスコにとり、メタノール(40 mL)溶液とし、Pd/C (10%) 50mgを加え、水素ガス雰囲気下室温で5時間攪拌した。グラスフィルターでPd/Cを除去し、濾液を濃縮したところ、2-(ヘキサデシルアミノ)酢酸(3.89g, 13 mmol)が定量的に得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3)TM 0.88 (3H, t, J= 5.0 Hz), 1.25-1.29 (28 H, m), 1.45-1.64 (2H, m), 1.64 (NH, brs), 2.58 (2H, t, J=5.0 Hz), 3.38 (2H, s) ,10.0 (1H, brs); IR (neat, cm-1) 2911, 2850, 1747, 1470, 1207, 721.
【0051】
N−ヘキサデシル−2−(2−ナフチル)フレロピロリジン(フラーレン誘導体A)の合成

ジムロートコンデンサーを装着した2口フラスコ(300mL)にフラーレン C60 (500 mg, 0.69 mmol)、2−(ヘキサデシルアミノ)酢酸(312mg, 1.04 mmol)および1−ナフトアルデヒド (217 mg, 1.39 mmol)をとり、クロロベンゼン(100 mL) を加えて3時間加熱還流した。室温まで放冷後、ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し(二硫化炭素/ 酢酸エチル = 1/0 to 20/1 ) フラーレン誘導体Aを343 mg (0.31 mmol, 収率44 %) 得た(褐色粉末)。この粉末をメタノールで5回洗浄した後、減圧乾燥した。
【0052】
<実施例2>
N−ヘキサデシル−2−(9−アントリル)フレロピロリジン(フラーレン誘導体B)の合成

フラーレン C60 (250 mg, 0.35 mmol)、2−(ヘキサデシルアミノ)酢酸(156 mg, 0.52 mmol)および9−アントリルアルデヒド(143 mg, 0.69 mmol)をクロロベンゼン50mL中3時間加熱還流した。同様の操作で精製し、フラーレン誘導体Bを 221 mg(0.19 mmol, 収率55 %) 得た。
【0053】
(キシレンへの溶解性評価)
表1に示されるフラーレン誘導体に1wt%の濃度となるようキシレン溶媒を加え、マグネチックスターラーで10分間攪拌した。その後のキシレン溶媒への溶解性を目視で観察した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
−評価−
表1から分かるように、フラーレン誘導体A、Bは、[60]PCBMに比べてキシレンへの溶解性が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるフラーレン誘導体。


(1)
[式中、Arは縮合環をもつ芳香族炭化水素基を、mは1〜30の整数を表す。該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基で置換されていてもよい。]
【請求項2】
前記式(1)で表されるフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物。
【請求項3】
電子供与性化合物が高分子化合物である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表されるフラーレン誘導体を含む層を有する有機光電変換素子。
【請求項5】
請求項2または3に記載の組成物を含む層を有する有機光電変換素子。

【公開番号】特開2009−67708(P2009−67708A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236373(P2007−236373)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】