説明

フリーズ状態の解消機能を備えた電子機器および電子回路

【課題】CPU等による制御を必要とせずに、一度のスイッチキー操作によりソフトウェア処理とフリーズ解消処理が重複してなされないようにし得る電子機器を提供する。
【解決手段】第1状態またはその他の状態を選択できるスイッチ手段と、スイッチ手段が、第1状態に所定の第1時間保持されたことを検出したとき、所定のソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理実行部と、スイッチ手段が、第1状態に第1時間より長い第2時間保持されたことを検出したときに、ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行するフリーズ解消手段と、スイッチ手段が第1状態に保持されてソフトウェア処理がなされた場合は、そのまま該保持が継続されることによるフリーズ状態解消処理の実行を阻止する阻止手段と、を備え、フリーズ解消手段および阻止手段が実行する処理は、ハードウェア処理のみからなる電子機器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および電子回路に関するものであり、特に、CPU等おけるフリーズ状態の解消が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CPU等を備えて種々のソフトウェア処理を実行する電子機器においては、その使用途中にソフトウェア処理の暴走状態やロック状態等、いわゆるフリーズ状態となる問題が生じていた。これは、例えば処理負荷の大きいソフトウェア処理を行うことによるシステムリソースの不足等に起因しており、フリーズ状態の程度によっては、通常通りに(ソフトウェア処理により)電子機器の電源を切ることや、各動作を正常に戻すことができなくなる。
【0003】
こうしたフリーズ状態に陥った場合、例えば電子機器に内蔵されている電池を一旦取り外すことにより供給電力が遮断され、これによりソフトウェアのフリーズ状態が解除されるのが一般的である。しかしフリーズ状態となる度に電子機器から内蔵電池を抜き取るという対処法は、ユーザにとっては面倒な作業でもあり、好ましい方法とは言えない。
【0004】
またフリーズ状態を解消するための手段として、電子機器に別途押しボタンスイッチ等を設け、かかるボタンスイッチを押下することで強制的にシステムを再起動させる方法も考えられる。しかし電子機器に再起動のためだけのスイッチを設けるようにすると、その分のスペースを電子機器に確保する必要があり、またボタン数が増加することにより電子機器の使い勝手が悪くなるといった懸念がある。
【0005】
そこで特許文献1には、電子機器がフリーズ状態に陥ったとき、電源のON/OFFを切替えるための電源キーが所定時間押下されることにより、制御手段の再起動(リセット)を行うものが開示されている。このような技術によれば、フリーズ状態と疑われる状態に陥ったとき、まずユーザは通常通り電源キーを押下することで、電源をOFFさせることを試みることができる。これはフリーズ状態を解消しようとする心理状態を考慮すると、ユーザにとって自然な行為であるといえる。
【0006】
そして結局深刻なフリーズ状態であって、通常の電源キー操作による電源OFFが不可能であった場合は、そのまま電源キーが押下され続けることで制御をリセットさせ、フリーズ状態を脱することが可能となる。このように、電源キーをその押下時間に応じて、電源ON/OFFの切替手段(電源切替手段)またはリセット実行手段とすることにより、利便性の高い電子機器が実現されている。
【特許文献1】特開2004−140457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上述したように、電源キーに電源切替手段とリセット実行手段の双方を兼用させるものでは、正常時(フリーズ状態となっていないとき)における電源の起動中、または遮断処理中に、ユーザが電源キーを不用意に長押ししてしまうことが懸念される。例えば電源ON状態から電源を遮断させる場合、電源キーを押すことにより電源の遮断処理が開始される。しかしそのまま電源キーが押下され続けると、当該遮断処理中にリセット処理の割り込みが発生し、スムーズな遮断処理が妨げられることとなる。その結果、電子機器はユーザの意に反した状態となるおそれがある。
【0008】
また逆に電源OFF状態から電源を起動させる場合、電源キーを押すことにより電源の起動処理が開始されるが、そのまま電源キーが押下され続けると、当該起動処理中にリセット処理の割込みが発生する。この場合も、電子機器はユーザの意に反した状態となるおそれがある。
【0009】
こういった不具合を回避するため、例えば特許文献1では、CPUからのSTOP信号により、一度の電源キー押下により電源切替処理(ソフトウェア処理)とリセット処理(フリーズ状態を解消する処理)が重複してなされないように制御している。しかしこの方法では、デバイスの端子数が増えるなど回路設計上の欠点があるとともに、CPUの動作自体が不安定となっている場合には、依然として上述した不具合が生ずるおそれがある。
【0010】
そこで本発明は上記の問題点に鑑み、CPU等による制御を必要とせずに、一度のスイッチキー操作によりソフトウェア処理とフリーズ解消処理が重複してなされないようにし得る電子機器および電子回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、第1状態と該第1状態以外の状態の何れかを選択できるスイッチ手段と、該スイッチ手段が、前記第1状態に、所定の第1時間保持されたことを検出したとき、所定のソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理実行部と、該スイッチ手段が、前記第1状態に、前記第1時間より長い第2時間保持されたことを検出したときに、前記ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行するフリーズ解消手段と、前記スイッチ手段が前記第1状態に保持されることにより、前記ソフトウェア処理がなされた場合は、そのまま該保持が継続されることによる前記フリーズ状態を解消させる処理の実行を阻止する阻止手段と、を備え、前記フリーズ解消手段および阻止手段が実行する処理は、ハードウェア処理のみからなる構成(第1の構成)としている。
【0012】
本構成によれば、スイッチ手段を第1状態に第1時間保持することで、所定のソフトウェア処理を実行させることができる一方、同じく第2時間保持することで、ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行させることができる。すなわち、同じスイッチ手段における第1状態への保持時間により、これらの何れかの処理を選択することが可能であるため、スイッチ手段の増加により電子機器の使い勝手が悪くなるといった不都合を極力抑えることができる。
【0013】
また本構成によれば、ソフトウェア処理を実行させようとしているにも関わらず、スイッチ手段を誤って第1状態に第2時間まで保持してしまった場合であっても、該ソフトウェア処理がなされた場合は、フリーズ状態を解消させる処理の実行が阻止される。その結果、誤ってソフトウェア処理とフリーズ状態を解消させる処理の双方を実行してしまうといった不具合を回避し得る。
【0014】
そしてさらに、フリーズ解消手段および阻止手段は、ハードウェア処理のみを行うものとしているから、CPU等による制御を必要とせずに、一度のスイッチキー操作によりソフトウェア処理とフリーズ解消処理が重複してなされないようにすることが可能となる。
【0015】
ここで「ハードウェア処理」とは、CPU等による演算ならびに制御を必要としない処理のことである。例えば、単なる信号伝達処理、カウンタ回路によるパルス幅カウント処理、フリップフロップ回路による遅延処理、トランジスタによるスイッチング処理などが挙げられる。
【0016】
また「フリーズ状態」とは、何らかの原因により、ソフトウェア処理が適切になされなくなった状態(多くの場合は、途中でソフトウェア処理が停止(フリーズ)する)であるが、電源の再起動等によって解消し得るものである。
【0017】
また上記第1の構成において、前記ソフトウェア処理は、前記ソフトウェア処理実行部への電力供給のON/OFFを切替える電力供給切替処理である構成(第2の構成)としてもよい。
【0018】
本構成によれば、電源がOFFである時においては、ソフトウェア処理実行部への電力供給を開始させ、電源がONである時においては、ソフトウェア処理実行部への電力供給を終了させる処理が、ソフトウェア処理により実行される。そのため、現状に応じた処理を必要とする当該処理であっても、容易に実行させることが可能である。
【0019】
また上記第1または第2の構成において、前記ソフトウェア処理は、所定のリセット信号に応じて、前記フリーズ状態が解消するものであり、前記フリーズ解消手段は、前記スイッチ手段が前記第1状態に前記第2時間保持されたことを検出し、該検出に応じて、前記リセット信号を前記ソフトウェア処理実行部に伝送するものであり、前記阻止手段は、前記電力供給切替処理がなされたことを検知するとともに、該検知された時から所定期間内は、前記伝送を阻止するものである構成(第3の構成)としてもよい。
【0020】
本構成によれば、フリーズ解消手段及び阻止手段が行う処理を、ハードウェア処理のみからなるものとすることが容易となる。つまり、フリーズ解消手段としては、例えばカウンタ回路、パルス発生回路、トランジスタ等を用いて実現され得るとともに、阻止手段としては、フリップフロップ回路による遅延回路等を用いて実現され得る。
【0021】
また上記第1から第3の何れかの構成において、前記スイッチ手段は、押しボタンスイッチであり、前記第1状態は、該押しボタンスイッチが押下された状態である構成(第4の構成)としてもよい。本構成によれば、例えば携帯電話機などに広く用いられている押しボタン式の入力インターフェースに、スイッチ手段を容易に設置することが可能となる。
【0022】
また、所定のスイッチが所定状態に保持されていることを検知し、該保持時間に応じた信号であるスイッチ信号を発生させるスイッチ信号発生部と、該スイッチ信号に基づいて、前記保持時間が、所定の第1時間に達したことを検出したとき、所定のソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理実行部と、該スイッチ信号に基づいて、前記保持時間が、前記第1時間より長い第2時間に達したことを検出したときに、前記ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行するフリーズ解消部と、前記保持時間が前記第1時間に達したことにより、前記ソフトウェア処理がなされた場合は、そのまま該保持が継続されることによる前記フリーズ状態を解消させる処理の実行を阻止する阻止部と、を備え、前記フリーズ解消部および阻止部が実行する処理は、ハードウェア処理のみからなる構成(第5の構成)の電子回路であれば、これを用いることにより、上述した第1から第4の構成に係る電子機器を容易に実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上記したように本発明によれば、スイッチ手段を第1状態に第1時間保持することで、所定のソフトウェア処理を実行させることができる一方、同じく第2時間保持することで、ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行させることができる。すなわち、同じスイッチ手段における第1状態への保持時間により、これらの何れかの処理を選択することが可能であるため、スイッチ手段の増加により電子機器の使い勝手が悪くなるといった不都合を極力抑えることができる。
【0024】
またソフトウェア処理を実行させようとしているにも関わらず、スイッチ手段を誤って第1状態に第2時間まで保持してしまった場合であっても、ソフトウェア処理がなされた場合は、フリーズ状態を解消させる処理の実行が阻止される。その結果、誤ってソフトウェア処理とフリーズ状態を解消させる処理の双方を実行してしまうといった不具合を回避し得る。
【0025】
そしてさらに、フリーズ解消手段および阻止手段は、ハードウェア処理のみを行うものとしているから、CPU等による制御を必要とせずに、一度のスイッチキー操作によりソフトウェア処理とフリーズ解消処理が重複してなされないようにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の一実施形態として、リセット機能を有する携帯電話機(電子機器)を挙げて以下に説明する。当該携帯電話機の構成図(主に回路構成を表す図)を図1に示す。本図のように携帯電話機10は、電源キー1、電源キー検出部2、電源部3、ホスト部4、パルス発生回路5、10秒遅延回路6、MOSFET7、30秒遅延回路8、およびリセットライン9等から構成されている。
【0027】
電源キー1は、携帯電話機10に備えられている各押しボタンスイッチの中の一つである。電源キー1は操作パネルの外部方向に付勢されており、通常は非入力状態となっているが、ユーザの押下操作によって入力状態となる。そして非入力状態のときは、電源キー検出部2およびパルス発生回路5の入力端子にHレベルの信号(スイッチ信号)が入力され、逆に入力状態のときは、これらにLレベルの信号が入力されることになる。なおかかる電源キー1の構成態様は一例であり、他の態様のものを用いてもよい。
【0028】
電源キー検出部2は、電源キー1が1秒間押下され続けたか否か(1秒間継続するLレベル信号の有無)を継続的に検出し、この検出結果に応じて、ホスト部4への電力供給のON/OFFを切替えるための処理を実行する。また電源キー検出部2またはシステムを構成するハードウェアは、起動開始レジスタ21と遮断開始レジスタ22を有しており、ホスト部4がかかるレジスタの内容に基づいた適切な制御(ソフトウェア処理)を行うことにより、現状が電源ON/OFF状態の何れであるかに応じた電源ON/OFFの切替処理が実現できるものとなっている。
【0029】
電源部3は、取り外し可能な充電池の他、定電圧レギュレータ、DC/DCコンバータ、およびチャージポンプ等を備え、電源キー検出部2からのPOWER−GOOD信号に応じて、ホスト部4などに所定の電力を供給する。
【0030】
ホスト部4は、CPU等により構成されており、電源部3からの電力供給を受けて駆動する。電源キー検出部2や携帯電話機10における各種ソフトウェア処理についての制御を実行する。またホスト部4はRESETB端子が備えられており、これを介してリセットライン9が接続されている。そしてホスト部4には、このリセットライン9を通じてRESETB信号が入力される。
【0031】
このRESETB信号は、後述する通り、電源起動処理の開始時から電源遮断処理の終了時まではHレベルに、電源遮断処理の終了後、電源駆動処理が開始されるまではLレベルに設定される。そしてHレベルとなっている間において、MOSFET7からのパルス信号により一時的にLレベルとなると、ホスト部4は電源の再起動処理(一旦電源遮断処理を行い、その直後に電源駆動処理を行う処理)を開始する。再起動処理により一旦電源は遮断されるため、それまでホスト部4に生じていたフリーズ状態は解消される。
【0032】
パルス発生回路5は、電源キー1が4秒間押下され続けたか否か(4秒間継続するLレベル信号の有無)を継続的に検出し、4秒間の押下を検出したときに20msのパルス信号を生成する。そしてこのパルス信号を後段の10秒遅延回路6に伝送する。なおパルス発生回路5は、計時回路や発振器などにより構成されており、ホスト部4による制御(ソフトウェア処理)によらずに、これらの処理を実行する。
【0033】
またパルス発生回路5にはRESET−DELAY信号に係る入力端子が備えられている。そしてRESET−DELAY信号がHレベルであれば上述のパルス生成および伝送を行うが、逆にLレベルであれば、これらの処理を行わないこととする。
【0034】
10秒遅延回路6は、パルス発生回路5から伝送されたパルス信号を受けるとともに、該パルス信号を10秒遅延させて、MOSFET7のゲートに出力する。なお10秒遅延回路6は、計時回路やフリップフロップ回路などにより構成されており、ホスト部4による制御(ソフトウェア処理)によらずに、かかる処理を実行する。
【0035】
また10秒遅延回路6にもRESET−DELAY信号に係る入力端子が備えられており、RESET−DELAY信号がHレベルであれば上述の遅延処理を行うが、逆にLレベルであれば、この処理を行わないこととする。
【0036】
MOSFET7は、例えばNチャネル型のMOSFET[Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor]が用いられており、ゲート電極は10秒遅延回路6の出力側に接続されている。またソース電極は接地され、ドレイン電極はリセットライン9に接続されている。これにより、ゲート電極に10秒遅延回路6からのパルス信号が入力された時に、RESETB信号を一時的に(パルス幅である20msの間)Lレベルとする。
【0037】
30秒遅延回路8は、入力側がリセットライン9に接続されており、RESETB信号を継続して受け取る。そして受け取ったRESETB信号を30秒遅延させ、これをRESET−DELAY信号として、パルス発生回路5および10秒遅延回路6へ出力する。
【0038】
リセットライン9は、電源部3、ホスト部4、MOSFET7のドレイン電極、および30秒遅延回路8に接続されており、RESETB信号を伝送する。また、電源キー検出部2、電源部3、およびホスト部4の各々は、通信インターフェースで接続されていて、携帯電話機としての機能を発揮する。
【0039】
以上の構成により携帯電話機10は、電源キー1の操作によって電源ON/OFFの切替だけでなく、フリーズ状態時のリセット処理を行うことが可能となっている。なお以下適宜、ホスト部4に電力が供給されている状態を「電源ON」、供給されていない状態を「電源OFF」、電源OFFの状態から電源ONの状態に移行する処理を「電源起動処理」、電源ONの状態から電源OFFの状態に移行する処理を「電源遮断処理」と称する。ただし電源ON/OFFに関わらず、少なくとも電源キー検出部2の制御に必要な電力はホスト部4に供給されており、かかる制御は可能となっている。
【0040】
次に電源起動処理、電源遮断処理(電源キー検出部2が正常に作動する場合)、および電源キー検出部2がフリーズ状態となっているとき(以下、この状態を適宜「フリーズ状態」と称する)における電源再起動処理の各々について、その内容を具体的に説明する。
【0041】
[電源起動処理]
携帯電話機10が電源OFFの状態であるとき、電源キー1が1秒間押下されると、これが電源キー検出部2によって検出され、電源起動処理が開始される。なお先述の通り、電源OFF状態であっても、電源キー検出部2を機能させるために必要な電力については、電源部3から常時供給されている。
【0042】
電源起動処理の内容を具体的に説明する。まず電源OFF時にはLレベルであったPOWER−GOOD信号を、Hレベルとする。その後、電源OFF時には「遮断状態」を示していた起動開始レジスタ21の内容を「起動状態」とする。なおこのPOWER−GOOD信号は、電源部3を駆動させるときにはHレベルとなり、駆動させないときにはLレベルとなる。
【0043】
POWER−GOOD信号がHレベルとなったことを受け、電源部3はホスト部4に対し、各種電源回路VA〜VDを通じて電力の供給を開始する。ホスト部4は電力の供給を受け、電源OFF時にLレベルであったRESETB信号をHレベルに移行する。その後、必要なソフトウェア処理を起動させる。
【0044】
以上のようにして、電源キー1が1秒間押下された場合は、電源ONの状態となり、ホスト部4による各種ソフトウェア処理の実行が可能となる。
【0045】
[電源遮断処理]
携帯電話機10が電源ONの状態であるとき、電源キー1が1秒間押下されると、これが電源キー検出部2によって検出され、電源遮断処理が開始される。具体的には、現在実行中であるソフトウェア処理を終了させるとともに、電源ON時に「現状維持」を示していた遮断開始レジスタ22の内容を「遮断開始」とする。その後、電源ON時にはHレベルであったPOWER−GOOD信号を、Lレベルとする。
【0046】
これに伴って、電源部3は、各種電源回路VA〜VDを通じて供給していた電力を遮断する。また電源ON時にはHレベルであったRESETB信号は、電源遮断処理の完了とともに、Lレベルに移行する。以上のようにして、電源キー1が1秒間押下された場合は、携帯電話機10は電源OFFの状態に移行する。
【0047】
[再起動処理]
携帯電話機10の使用中(電源ONの状態)において、何らかの原因によりフリーズ状態が生じた場合における再起動処理について説明する。フリーズ状態となった場合、例え電源キー1が1秒間押下され続けたとしても、電源キー検出部2は、電源キー1の押下状態に応じた処理を行うことはできない。
【0048】
しかし電源キー1がそのまま4秒間押下され続けると、パルス発生回路5は20msのパルス信号を生成する。そしてこのパルス信号は、10秒遅延回路6によって10秒の遅延処理がなされた後、MOSFET7のゲート電極に入力される。
【0049】
ここでフリーズ状態が発生した場合であっても電源遮断処理はなされておらず、電源ONの状態であることには変わりないため、RESETB信号はHレベルを維持している。かかる状態で、MOSFET7のゲート電極にパルス信号が入力されると、このパルス幅に応じてRESETB信号が一時的にLレベルとなる。
【0050】
そうすると、ホスト部4はRESETB信号がLレベルとなったことに応じて、再起動を開始する。すなわち、電源キー1が4秒間押下されることにより、ホスト部4は一旦リセットされることになり、それまでのフリーズ状態は解消する。
【0051】
上述の通り、ホスト部4の異常等により電源キー検出部2が正常に動作しなくなるフリーズ状態となった場合であっても、電源キー1の押下操作のみで再起動処理を行わせ、かかるフリーズ状態を解消させることが可能となる。
【0052】
次に通常時において、電源キー1が4秒以上継続して押下された場合の処理内容を、電源起動時(すなわち電源キー1の押下直前に電源OFFであったとき)、および電源遮断時(すなわち電源キー1の押下直前に電源ONであったとき)に分けて説明する。
【0053】
[電源起動時に、電源キーが4秒以上押下された場合]
電源OFF状態において電源キー1が1秒間押下された場合は、先述した通り電源起動処理がなされ、ホスト部4への電力供給が開始される。ここで電源起動処理の中で、電源部3からホスト部4に伝送されるRESETB信号は、先述した通り、LレベルからHレベルへと移行する。
【0054】
このHレベルとなったRESETB信号は、30秒遅延回路8にも入力されるが、入力時から30秒の間、RESET−DELAY信号は依然としてLレベルのままである。そのためこの間、パルス発生回路5および10秒遅延回路はそれぞれ後段へパルス信号を出力しないので、MOSFET7を通じてRESETB信号が一旦Lレベルとなってしまうことがない。なおこの遅延時間は、MOSFET7へのパルス信号の出力を阻止し得るものである限り、30秒には限定されない。
【0055】
以上の結果、電源キー1が1秒間押下されて電源起動が開始された後、そのまま電源キー1が押下されて4秒以上経過した場合であっても、このことによってRESETB信号がLレベルとなることが回避される。
【0056】
なお、電源起動時に電源キー1が4秒以上押下された時における、各信号のタイミングチャートは図2にようになる。ここでは一例として、電源キーが5秒間押下された場合であって、あるソフトウェアの起動処理に20秒を要する場合を想定する。
【0057】
図2の2段目のタイミングチャートが示すように、仮に10秒遅延回路6および30秒遅延回路8を備えていないとすると、電源キー1を1秒押下した後にソフトウェアの起動が始まるが、そのまま4秒押下されると、RESETB信号は一旦Lレベルとなるため、無駄な再起動が開始されてしまう。
【0058】
ところが本実施例では30秒遅延回路8を備えており、図2の4段目のタイミングチャートに示すように、RESETB信号がLレベルからHレベルに移行した後も30秒間は、RESET−DELAY信号はLレベルを保持する。そのため先述した遅延回路を備えていないと仮定した場合のように、RESETB信号が一旦Lレベルとなることはなく、ひいては無駄な再起動が開始されてしまうこともない。その結果、ソフトウェアの起動を早く終了させることも可能となっている。
【0059】
[電源遮断時に、電源キーを4秒以上押下された場合]
電源ON状態において電源キー1が1秒間押下された場合は、先述した通り電源遮断処理がなされ、ホスト部4への電力供給が終了する。一方、RESETB信号は、電源遮断処理が終了するまではHレベルを維持している。またRESET−DELAY信号もHレベルとなっている。なおここでは、電源遮断処理の開始から終了まで5秒程度かかるものとする。
【0060】
電源遮断処理が開始された後、そのまま電源キー1が4秒以上押下された場合、電源遮断処理の途中(電源遮断処理が終了する前)に、パルス発生回路5で発生したパルス信号によって再起動処理がなされてしまうことが考えられる。しかし、10秒遅延回路6が備えられていることにより、パルス信号は10秒遅延されてMOSFET7に出力される。
【0061】
このように遅延された後の時点では既に電源遮断処理は終了しており、RESETB信号は既にLレベルとなっているため、RESETB信号の状態はMOSFET7の影響を受けない。なおこの遅延時間は、MOSFET7へのパルス信号の出力を、電源遮断処理の終了時以降にまで遅延させることができる限り10秒には限定されない。
【0062】
なお、電源遮断時に電源キー1が4秒以上押下された時における、各信号のタイミングチャートは図3にようになる。ここでは一例として、電源キーが5秒間押下された場合を想定する。
【0063】
図3の2段目のタイミングチャートが示すように、仮に10秒遅延回路6および30秒遅延回路8を備えていないとすると、電源キー1を1秒押下した後に電源の遮断処理が始まるが、そのまま4秒押下されると、RESETB信号は一旦Lレベルとなるため、無駄な再起動が開始されてしまう。
【0064】
ところが本実施例では10秒遅延回路6が備えられているため、RESETB信号は図3の3段目のタイミングチャートに示す通りとなる。すなわち、電源キー1が4秒押下されることによりパルス発生回路が生成するパルス信号は、10秒遅延回路6により遅延処理がなされる。そしてこの遅延がなされている間に電源の遮断処理は終了し、RESETB信号はHレベルからLレベルに移行する。その後に当該パルス信号はMOSFET7に出力されるが、既にRESETB信号はLレベルとなっているため、RESETB信号の状態はMOSFET7による影響を受けないこととなる。
【0065】
そのため先述した10秒遅延回路6を備えていないと仮定した場合のように、RESETB信号が一旦Lレベルとなることはなく、ひいては無駄な再起動が開始されてしまうこともない。
【0066】
なおこのように電源キー1を4秒以上押下することによる電源遮断処理の終了後、ただちに再度電源キー1を押下して電源起動処理を開始した場合、当該電源遮断処理の中で10秒遅延回路6により遅延されたパルス信号が、当該開始後にMOSFET7に出力されることが考えられる。しかしこの場合であっても、30秒遅延回路8等の作用によりRESET−DELAY信号はLレベルとなっているから、10秒遅延回路6からMOSFET7に当該パルス信号が出力されることはなく、ひいては無駄な再起動処理がなされることもない。
【0067】
上述したように、電源キー1が4秒以上押下されたとしても、無駄な再起動処理がなされることはない。つまり電源起動開始から電源遮断終了までの間は基本的にRESETB信号をHレベルとし、任意に電源キー1が4秒押下されることによる再起動処理を可能としつつ、電源起動もしくは電源遮断のために電源キー1が押下された場合については、4秒以上押下されても再起動処理が阻止されるようになっている。
【0068】
そしてこの実現方法として、電源起動時では、MOSFET7へのパルス信号の伝達自体を阻止することとしている。また電源遮断時では、少なくとも電源遮断終了によりRESETB信号がLレベルとなるまでは、MOSFET7へのパルス信号の伝達を遅延させ、当該パルス信号がRESETB信号に影響を与えないようにしている。
【0069】
[まとめ]
以上までに説明した、電源キー1の操作に対応する携帯電話機10の処理内容について、図4にその概要を示す。現状が電源OFF状態である場合は、電源キー1の操作により、正常な(無駄な再起動がなされない)電源起動が望まれる。この場合、電源キー1が1秒以上かつ4秒未満の間押下されたとき(図4のA)は通常通り電源起動がなされる一方、4秒以上押下されたとき(図4のB)であっても、再起動は行われない。その結果、電源キー1が1秒以上押下されている限り、例えそのまま4秒以上押下され続けたとしても、正常な電源起動がなされることとなる。
【0070】
また現状、何れのソフトウェア処理も正常(フリーズしていない状態)である場合は、電源キー1の操作により、正常な(無駄な再起動がなされない)電源遮断が望まれる。この場合、電源キー1が1秒以上かつ4秒未満の間押下されたとき(図4のC)は通常通り電源遮断がなされる一方、4秒以上押下されたとき(図4のD)であっても、再起動は行われない。その結果、電源キー1が1秒以上押下されている限り、例えそのまま4秒以上押下され続けたとしても、正常な電源遮断がなされることとなる。
【0071】
また現状は一部のソフトウェアについてフリーズしているものの、電源キー検出部2に関係する処理については正常に作動する場合、電源キー1の操作により、かかるフリーズの解消が望まれる。この場合、電源キー1が1秒以上かつ4秒未満の間押下されたとき(図4のE)は、電源が遮断されることでフリーズ状態が解消される。そして、電源キー1が4秒以上押下されたとき(図4のF)であっても、電源が遮断されることでフリーズ状態が解消される。結局、電源キー1が1秒以上押下されている限り、例えそのまま4秒以上押下され続けたとしても電源は遮断されるので、フリーズ状態は解消されることとなる。
【0072】
また現状、フリーズ状態により電源キー検出部2も正常に作動しない場合、電源キー1の操作により、かかるフリーズ状態の解消が望まれる。この場合、電源キー1が1秒以上かつ4秒未満の間押下されたとき(図4のG)であっても、これだけではフリーズ状態は解消されない。しかし、電源キー1が4秒以上押下されたとき(図4のH)は再起動がなされるので、かかるフリーズ状態は解消されることとなる。
【0073】
このように携帯電話機10は、電源キー1の押下操作だけで、電源の起動、電源の遮断、およびフリーズ状態の解消を、現状に応じて適切に(無駄な再起動を行うことなく)実行することができるものとなっている。
【0074】
また電源キー1が4秒押下されたことを検出してパルスを生成するパルス発生回路5、および、このパルス信号に応じてRESETB信号を一時的にLレベルとする(リセット信号をホスト部4に伝送する)MOSFET7は、ホスト部4のフリーズ状態を解消する手段として機能し、さらに、これらはハードウェア処理のみを行う。
【0075】
また電源起動処理がなされたことをRESETB信号によって検知するとともに、この検知された時から30秒間はRESET−DELAY信号をLレベルに維持する30秒遅延回路8は、電源スイッチ1が1秒押下されることにより電源起動処理がなされた場合、そのまま押下が継続されることによる再起動処理の実行を阻止する手段として機能する。さらに30秒遅延回路8も、ハードウェア処理のみを行うものである。
【0076】
このようにパルス発生回路5、MOSFET7、および30秒遅延回路8は、何れもハードウェア処理のみを行うものであるため、ホスト部4による制御を必要とせずに、一度の電源キー1の押下操作により電源起動処理とフリーズ状態を解消させる処理が重複してなされないようになっている。
【0077】
なお電源の再起動(電源ON状態からOFF状態後再びON状態)によるフリーズ解消を主に説明したが、電源OFF(電源ON状態からOFF状態)によるフリーズ解消も含む。以上の通り、本発明に係る一実施形態について説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態に係る携帯電話機の構成図である。
【図2】本実施形態に係る電源起動時のタイミングチャートである。
【図3】本実施形態に係る電源遮断時のタイミングチャートである。
【図4】本実施形態に係る電源キーの操作に対応した各処理の説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1 電源キー(スイッチ手段)
2 電源キー検出部
3 電源部
4 ホスト部(ソフトウェア処理実行部)
5 パルス発生回路
6 10秒遅延回路
7 MOSFET
8 30秒遅延回路
9 リセットライン
10 携帯電話機(電子機器)
21 起動開始レジスタ
22 遮断開始レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1状態と該第1状態以外の状態の何れかを選択できるスイッチ手段と、
該スイッチ手段が、前記第1状態に、所定の第1時間保持されたことを検出したとき、所定のソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理実行部と、
該スイッチ手段が、前記第1状態に、前記第1時間より長い第2時間保持されたことを検出したときに、前記ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行するフリーズ解消手段と、
前記スイッチ手段が前記第1状態に保持されることにより、前記ソフトウェア処理がなされた場合は、そのまま該保持が継続されることによる前記フリーズ状態を解消させる処理の実行を阻止する阻止手段と、を備え、
前記フリーズ解消手段および阻止手段が実行する処理は、ハードウェア処理のみからなることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ソフトウェア処理は、
前記ソフトウェア処理実行部への電力供給のON/OFFを切替える電力供給切替処理であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記ソフトウェア処理は、所定のリセット信号に応じて、前記フリーズ状態が解消するものであり、
前記フリーズ解消手段は、
前記スイッチ手段が前記第1状態に前記第2時間保持されたことを検出し、該検出に応じて、前記リセット信号を前記ソフトウェア処理実行部に伝送するものであり、
前記阻止手段は、
前記電力供給切替処理がなされたことを検知するとともに、該検知された時から所定期間内は、前記伝送を阻止するものであることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記スイッチ手段は、押しボタンスイッチであり、
前記第1状態は、該押しボタンスイッチが押下された状態であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電子機器。
【請求項5】
所定のスイッチが所定状態に保持されていることを検知し、該保持時間に応じた信号であるスイッチ信号を発生させるスイッチ信号発生部と、
該スイッチ信号に基づいて、前記保持時間が、所定の第1時間に達したことを検出したとき、所定のソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理実行部と、
該スイッチ信号に基づいて、前記保持時間が、前記第1時間より長い第2時間に達したことを検出したときに、前記ソフトウェア処理実行部のフリーズ状態を解消させる処理を実行するフリーズ解消部と、
前記保持時間が前記第1時間に達したことにより、前記ソフトウェア処理がなされた場合は、そのまま該保持が継続されることによる前記フリーズ状態を解消させる処理の実行を阻止する阻止部と、を備え、
前記フリーズ解消部および阻止部が実行する処理は、ハードウェア処理のみからなることを特徴とする電子回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−3768(P2008−3768A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171294(P2006−171294)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】